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特開2022-108591免震装置を備えた構造体の構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108591
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】免震装置を備えた構造体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220719BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E04H9/02 331D
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
F16F15/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003675
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】306045372
【氏名又は名称】櫻井 長五
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 長五
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬五
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC19
2E139CA13
2E139CA21
2E139CB04
2E139CC02
2E139CC11
3J048AA07
3J048AC01
3J048BG02
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する非常に実用的な免震装置及び免震装置を備えた構造体の構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上構造部30と下構造部31との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、前記下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、前記第一内面部4と前記第二内面部5とは対向するように構成され、前記第一内面部4と前記第二内面部5同士間には球体3が配され、また、前記上体1の第一内面部4及び前記下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上構造部と下構造部との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、前記下構造部に設けられ第二内面部を有する下体とを具備し、更に、前記第一内面部と前記第二内面部とは対向するように構成され、前記第一内面部と前記第二内面部同士間には球体が配され、また、前記上体の第一内面部及び前記下体の第二内面部の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部と前記下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体が転動することで前記上体と前記下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記上体は、前記上構造部に設けられる第一上部材と、前記上構造部に設けられた前記第一上部材に昇降自在に設けられ前記第一内面部を有する第二上部材とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
請求項1記載の免震装置において、前記第一上部材は筒状体であり、前記第二上部材は前記第一上部材の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の免震装置において、前記第一内面部及び前記第二内面部の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体を有する前記下構造部の構築工程を行い、続いて、前記下構造部の上に前記上体を有する前記上構造部の構築工程を行い、続いて、前記下体の第二内面部に前記球体を配した状態で前記上構造部に設けられた前記第一上部材に対して前記第二上部材を降下させて前記球体に対して前記第一内面部を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【請求項5】
上構造部と下構造部との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、前記下構造部に設けられ第二内面部を有する下体とを具備し、更に、前記第一内面部と前記第二内面部とは対向するように構成され、前記第一内面部と前記第二内面部同士間には球体が配され、また、前記上体の第一内面部及び前記下体の第二内面部の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部と前記下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体が転動することで前記上体と前記下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記下体は、前記下構造部に設けられる第一下部材と、前記下構造部に設けられた前記第一下部材に昇降自在に設けられ前記第二内面部を有する第二下部材とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項6】
請求項5記載の免震装置において、前記第一下部材は筒状体であり、前記第二下部材は前記第一下部材の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の免震装置において、前記第一内面部及び前記第二内面部の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項8】
請求項5~7いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体を有する前記下構造部の構築工程を行い、続いて、前記下構造部の上に前記上体を有する前記上構造部の構築工程を行い、続いて、前記下体の第二内面部に前記球体を配した状態で前記下構造部に設けられた前記第一下部材に対して前記第二下部材を上昇させて前記球体に対して前記第一内面部を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置及び免震装置を備えた構造体の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば建物における上構造部と、この上構造部の下に連設される下構造部との間に設けられる免震装置として、特開2002-129772に開示されるような免震装置(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、下構造部に設けられ第二内面部を有する下体と、第一内面部と第二内面部同士間に配される球体とで構成され、第一内面部及び第二内面部は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(テーパー面)として構成されたもので、上構造部と下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体が転動することで上体と下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されたものである。
【0004】
従って、例えば地震の際の横揺れに対応して建物の破損を可及的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例は、常態位置において、上構造部の荷重を、球体と該球体が当接する第一内面部及び第二内面部のみで支える構造であるため、当該部位が破損し易いという問題点がある。
【0007】
本発明は、前述した問題点を解消するもので、従来にない作用効果を発揮する非常に実用的な免震装置及び免震装置を備えた構造体の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
上構造部30と下構造部31との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、前記下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、前記第一内面部4と前記第二内面部5とは対向するように構成され、前記第一内面部4と前記第二内面部5同士間には球体3が配され、また、前記上体1の第一内面部4及び前記下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部30と前記下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体3が転動することで前記上体1と前記下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記上体1は、前記上構造部30に設けられる第一上部材6と、前記上構造部30に設けられた前記第一上部材6に昇降自在に設けられ前記第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されていることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の免震装置において、前記第一上部材6は筒状体であり、前記第二上部材7は前記第一上部材6の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の免震装置において、前記第一内面部4及び前記第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体2を有する前記下構造部31の構築工程を行い、続いて、前記下構造部31の上に前記上体1を有する前記上構造部30の構築工程を行い、続いて、前記下体2の第二内面部5に前記球体3を配した状態で前記上構造部30に設けられた前記第一上部材6に対して前記第二上部材7を降下させて前記球体3に対して前記第一内面部4を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【0013】
また、上構造部30と下構造部31との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、前記下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、前記第一内面部4と前記第二内面部5とは対向するように構成され、前記第一内面部4と前記第二内面部5同士間には球体3が配され、また、前記上体1の第一内面部4及び前記下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部30と前記下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体3が転動することで前記上体1と前記下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記下体2は、前記下構造部31に設けられる第一下部材8と、前記下構造部31に設けられた前記第一下部材8に昇降自在に設けられ前記第二内面部5を有する第二下部材9とで構成されていることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0014】
また、請求項5記載の免震装置において、前記第一下部材8は筒状体であり、前記第二下部材9は前記第一下部材8の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0015】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の免震装置において、前記第一内面部4及び前記第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置に係るものである。
【0016】
また、請求項5~7いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体2を有する前記下構造部31の構築工程を行い、続いて、前記下構造部31の上に前記上体1を有する前記上構造部30の構築工程を行い、続いて、前記下体2の第二内面部5に前記球体3を配した状態で前記下構造部31に設けられた前記第一下部材8に対して前記第二下部材9を上昇させて前記球体3に対して前記第一内面部4を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、例えば球体と該球体が当接する周辺部位の破損を防止することができ、しかも、この破損を防止する構造を簡易且つ確実に構築できるなど、従来にない作用効果を発揮する非常に実用的な免震装置及び免震装置を備えた構造体の構築方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施例に係る要部を説明する分解斜視図である。
【
図3】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図4】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図5】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図6】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【
図7】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【
図8】本実施例に係る制御ユニットを説明する分解斜視図である。
【
図9】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【
図10】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【
図11】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
例えば地震の際の横揺れにより、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する。
【0021】
従って、本発明に係る免震装置を備えた構造体の破損を可及的に防止することができる。
【0022】
ところで、本発明に係る上体1は、上構造部30に設けられる第一上部材6と、上構造部30に設けられた第一上部材6に昇降自在に設けられ第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されており、この構成から従来にない作用効果を奏することになる。
【0023】
即ち、例えば上構造部30の荷重を下構造部31が受ける状態で連設された常態位置において、第一上部材6の第一内面部4は、球体3に対して、しっかりした当接状態ではなく、軽く触れる程度の当接状態であるか、若しくは、必ずしも球体3に対して当接していなくても近接状態(常態位置においては当接していなくても水平方向へ相対移動した場合には当接する程度の近接状態)であれば、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する機能が十分、発揮される。
【0024】
しかしながら、球体3に対して第一内面部4を前記当接状態若しくは近接状態となるように設定するには、例えば上構造部30及び下構造部31がコンクリート製で、この上構造部30及び下構造部31を現場で型枠を組んでコンクリート打設して構築するのが一般的であるが、このような構築技術では極めて精度の高い技術が要求され、コスト面や工期面を考慮すると現実的ではない。
【0025】
この点、本発明は、前述した構成とすることで、下構造部31の上に上構造部30を構築した後、上構造部30に設けられた第一上部材6に対して第二上部材7を降下させるだけで、球体3に対して簡易に第一内面部4を前記当接状態若しくは近接状態にできる。
【0026】
従って、本発明によれば、常態位置において上構造部30の荷重を、球体3と該球体3が当接する第一内面部4及び第二内面部5以外の部位で受けるから、それだけ本装置の破損を防止することができ、しかも、この破損の防止を簡易な操作により実現できることになる。
【実施例0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、構造体としての基礎構造Yに設けられる免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)である。
【0029】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0030】
本実施例の基礎構造Yは、本出願人が特願2016-160959号及び実用新案登録第3208452号で提案するもので、
図1に図示したように地盤Eに設けられる下構造部31(下基礎部)と、この下構造部31の上に設けられ(載置され)、更に上部に建物Hが構築される上構造部30(上基礎部)とからなり、下構造部31と上構造部30とは接離可能に構成されている。尚、下構造部31は地盤Eでも良い。
【0031】
下構造部31は、
図1に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、底板31d上に所定高さの枠部31aを設け、この枠部31aの内方を所定高さの桟31bで格子状に適宜区画した構造である。
【0032】
この下構造部31の平面視形状は、後述する上構造部30と同様、建物Hの形状に合わせて適宜設計され、本実施例では平面視方形状に形成されている。
【0033】
また、下構造部31の桟31bは、上構造部30の桟30bとの間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
【0034】
具体的には、本実施例に係る基礎構造Yは、上下の桟30b,31bの一部同士が上下方向に合致しない位置に設けられており、この上下の桟30b,31b同士間に人通行空間が形成されている。
【0035】
また、下構造部31は、上面部所定位置(4隅部とその他の複数箇所(合計9カ所))に上構造部30と間隔を介して対設される支承部31cが設けられ、この支承部31cには免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)が設けられている。
【0036】
上構造部30は、
図1に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、所定高さの枠部30aの内方を所定高さの桟30bで格子状に適宜区画した構造である。
【0037】
この上構造部30の平面視形状は、前述した下構造部31と同様、建物Hの形状に合わせて平面視方形状に形成されており、上面部位には建物Hが構築される。
【0038】
また、前述したように、上構造部30の桟30bは、下構造部31の桟31bとの間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
【0039】
また、上構造部30は、下面部所定位置(4隅部とその間の合計9カ所)に下構造部31と間隔を介して対設される被支承部30cが設けられ、この被支承部30cには免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)が設けられている。
【0040】
本実施例の免震装置は、基礎構造Yの所定位置に設けられるリカバリーユニットX1及び制御ユニットX2とで構成されている。
【0041】
リカバリーユニットX1は、
図2,3に図示したように上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、第一内面部4と第二内面部5とは対向するように構成され、第一内面部4と第二内面部5同士間には球体3が配され、また、上体1の第一内面部4及び下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から一方が水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されたものである。
【0042】
具体的には、上体1は、上構造部30に設けられる第一上部材6と、上構造部30に設けられた第一上部材6に昇降自在に設けられ第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されている。
【0043】
第一上部材6は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、下端開口縁部には上鍔部6aが水平状に突設されている。
【0044】
この上鍔部6a(下端開口縁部)は、後述する下体2の下鍔部8aと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し(上構造部30下面と下構造部31上面とには間隙が形成される)、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0045】
また、第一上部材6の内面には、後述する第二上部材7を螺着する第一上螺子部6bが設けられている。
【0046】
また、第一上部材6の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は上構造部30に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部6cとして構成されている。
【0047】
第二上部材7は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有底筒状体であり、周面には第一上部材6の内面に設けられた第一上螺子部6bに螺着する第二上螺子部7bが設けられている。
【0048】
従って、第二上部材7は第一上部材6の上部開口部から螺入させることができ、この第二上部材7を螺動させることで第一上部材6に対して昇降自在となる。尚、第一上部材6に対する第二上部材7の昇降は螺動による構造に限らない。
【0049】
符号7aは、底壁部の上面中央から放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ7aは第二上部材7を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0050】
また、第二上部材7は、底壁部の下面に第一内面部4が設けられている。
【0051】
この第一内面部4は、
図3に図示したように面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(面中央の頂点に向けて上り傾斜状となる下向きテーパー面)として構成されている。
【0052】
また、第一内面部4の面中央には開口縁部が面取りされた上凹部4aが貫通状態に設けられている。
【0053】
この上凹部4aは、第一内面部4と後述する第二内面部5との間に球体3を配した際、球体3が嵌合係止するように構成されており、この係止力は、前述した上鍔部6aと下鍔部8aとの摩擦抵抗力に加え、後述する下凹部5aの係止力と共に、例えば比較的小規模な地震や台風など、上構造部30(建物H)を破損させない程度の横揺れにおいては係脱しない係止力が発揮されるように構成されている。
【0054】
また、上凹部4aは水抜き孔としての機能も発揮する。
【0055】
尚、この第一内面部4及び第二内面部5のうちのいずれか一方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面であれば、この傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する機能が発揮されるものであり、よって、いずれか他方が平坦面(水平面)でも良い。
【0056】
下体2は、下構造部31に設けられる第一下部材8と、下構造部31に設けられた第一下部材8に昇降自在に設けられ第二内面部5を有する第二下部材9とで構成されている。
【0057】
第一下部材8は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、上端開口縁部には下鍔部8aが水平状に突設されている。
【0058】
この下鍔部8a(上端開口縁部)は、前述した上体1の上鍔部6aと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0059】
また、第一下部材8の内面には、後述する第二下部材9を螺着する第一下螺子部8bが設けられている。
【0060】
また、第一下部材8の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は下構造部31に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部8cとして構成されている。
【0061】
第二下部材9は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有天筒状体であり、周面には第一下部材8の内面に設けられた第一上螺子部8bに螺着する第二下螺子部9bが設けられている。
【0062】
従って、第二下部材9は第一下部材8の下部開口部から螺入させることができ、この第二下部材9を螺動させることで第一下部材8に対して昇降自在となる。尚、第一下部材8に対する第二下部材9の昇降は螺動による構造に限らない。
【0063】
符号9aは、天壁部の下面中央から放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ9aは第二下部材9を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0064】
また、第二下部材9は、天壁部の上面に第二内面部5が設けられている。
【0065】
この第二内面部5は、
図2,3に図示したように面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(面中央の最下点に向けて下り傾斜状となる上向きテーパー面)として構成されている。
【0066】
また、第二内面部5の面中央には開口縁部が面取りされた下凹部5aが貫通状態に設けられている。
【0067】
この下凹部5aは、前述した第一内面部4と第二内面部5との間に球体3を配した際、球体3が嵌合係止するように構成されており、この係止力は、前述した上鍔部6aと下鍔部8aとの摩擦抵抗力に加え、前述した上凹部4aの係止力と共に、例えば比較的小規模な地震や台風など、上構造部30(建物H)を破損させない程度の横揺れにおいては係脱しない係止力が発揮されるように構成されている。
【0068】
また、下凹部5aは水抜き孔としての機能も発揮する。尚、この下凹部5aにグリースなどを貯めておくことで球体3の良好な転動を維持できる(下凹部5aの下部を適宜閉塞することが望ましい。)。
【0069】
球体3は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材(鋼材)で形成されたものである。
【0070】
この球体3が第一内面部4と第二内面部5との間に配されることにより、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した際、球体3が面中央から離れる方向へ向けて傾斜凹面を転動することで、相対移動に伴う力を吸収緩和することになり、その後、球体3が面中央へ向けて傾斜凹面を転動(落ち込み転動)することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動(復帰作動)することになる。
【0071】
また、本実施例に係るリカバリーユニットX1を備えた構造体の構築方法としては、次の通りとなる。
【0072】
下体2を有する下構造部31の構築工程を行い、続いて、この下構造部31の上に上体1を有する上構造部30の構築工程を行い、続いて、下体2の第二内面部5に球体3を配した状態で上構造部30に設けられた第一上部材6に対して第二上部材7を降下させて球体3に対して第一内面部4を当接状態とする球体配置工程を行い(
図3,4参照)、続いて、この構造体としての基礎構造Y(上構造部30)の上に建物Hを構築する(
図5参照)。
【0073】
尚、球体配置工程は、下体2の第二内面部5に球体3を配した状態で下構造部31に設けられた第一下部材8に対して第二下部材9を上昇させて球体3に対して第一内面部4を当接状態とさせるようにしても良く、また、前述したいずれの場合も球体3に対して第一内面部4を当接状態とせず近接状態(上構造部30と下構造部31とが常態位置においては球体3に対して第一内面部4が当接していなくても水平方向へ相対移動した場合には当接する程度の近接状態)としても良い。
【0074】
制御ユニットX2は、
図8,9に図示したように上構造部30に設けられる上筒体11と、この上筒体11が水平方向に相対移動自在に載置重合され下構造部31に設けられる下筒体12と、上筒体11の上筒孔11aに上方部位が相対移動自在に内装されるとともに、下筒体12の下筒孔12aに下方部位が相対移動自在に内装される軸状体13とからなり、例えば地震による横揺れにより生じた下構造部31と上構造部30との相対移動が、軸状体13の周面(緩衝材13b)が下筒孔12a及び上筒孔11aの内面に当接して阻止されるように構成されている。
【0075】
上筒体11は、
図8,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、下端開口縁部には上鍔部11bが水平状に突設されている。
【0076】
この上鍔部11b(下端開口縁部)は、後述する下筒体12の下鍔部12bと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し(上構造部30下面と下構造部31上面とには間隙が形成される)ことになり、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0077】
また、上筒体11の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は上構造部30に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部11dとして構成されている。
【0078】
また、上筒体11には、上筒孔11a内に円筒状の螺着体11’が螺着され、この螺着体11’内には後述する軸状体13の上端部を下筒体12の下支承部12cとともに倒れないように支承する上支承部11cが架設されている。
【0079】
また、上支承部11cの中央には水抜き孔が設けられている。
【0080】
符号11eは放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ11”は螺着体11’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0081】
下筒体12は、
図8,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、上端開口縁部には下鍔部12bが水平状に突設されている。
【0082】
この下鍔部12b(上端開口縁部)は、前述した上筒体11の下鍔部11bと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0083】
また、下筒体12の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は下構造部31に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部12dとして構成されている。
【0084】
また、下筒体12には、下筒孔12a内に円筒状の螺着体12’が螺着され、この螺着体12’内には後述する軸状体13の下端部を上筒体11の上支承部11cとともに倒れないように支承する下支承部12cが架設されている。
【0085】
また、この下支承部12cの中央には水抜き孔が設けられている。
【0086】
符号12eは放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ12eは螺着体12’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0087】
軸状体13は、
図8~10に図示したように適宜な金属製部材(鋼材)で形成された円筒状の基材13aと、この基材13aの周面に被嵌されるゴム製の緩衝材13bとで構成されたものであり、基材13aの上部開口部には上支承部11cに当接する天板材13cが配され、基材13aの下部開口部には下支承部12cに当接する底板材13dが配されている。
【0088】
また、天板材13cは付勢部材14(コイルバネ)により上方へ付勢されており、上筒体11の上支承部11cに圧接するように構成されている。
【0089】
従って、軸状体13は上支承部11cと下支承部12cとの間で突っ張った状態となって倒れるのが防止される。
【0090】
また、この軸状体13の径は、上筒体11及び下筒体12の相対移動量を考慮して設定される。
【0091】
また、軸状体13は、下端部が下支承部12cに支承された状態で下筒孔12aに配され、上端部が上支承部11cに支承された状態で上筒孔11aに配されるように構成されている。
【0092】
従って、上筒体11と下筒体12とが水平方向に相対移動した際、上筒体11の上筒孔11a及び下筒体12の下筒孔12a夫々の内面が軸状体13(緩衝材13b)に当接することでその相対移動(移動巾)は制御される。この際、軸状体13の周面は緩衝材13bがあり、且つ、上筒体11の上筒孔11aと下筒体12の下筒孔12aと軸状体13の周面とはいずれも円弧面での衝突となる為、衝突した際の衝撃は良好に緩和される。また、軸状体13は、天板材13c及び底板材13dの存在により強度があり、しかも、上筒体11と下筒体12との相対移動の際には上支承部11c及び下支承部12cに対する天板材13c及び底板材13dの円滑な摺動が行われ良好な相対移動が可能となる(
図11参照)。
【0093】
また、本実施例に係る制御ユニットX2を備えた構造体の構築方法としては、前述したリカバリーユニットX1を設ける際と同様である。
【0094】
以上の構成から成る免震装置に係るリカバリーユニットX1は四隅及び中心部の合計五箇所配設され、制御ユニットX2は端部中央位置の合計四箇所配設されている。
【0095】
例えば地震で水平方向への横揺れが生じた際、リカバリーユニットX1により小規模の揺れであれば下構造部31と上構造部30との相対移動は阻止される。
【0096】
即ち、下構造部31に設けられる下体2と上構造部30に設けられる上体1とが水平方向に相対移動しようとしても、この水平方向への力が、球体3における上凹部4a及び下凹部5aの係止力が解除される力、並びに、上鍔部6a,11bと下鍔部8a,12bとの摩擦抵抗を超える力となるまでは当該相対移動は阻止される。
【0097】
しかし、下体2と上体1とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上になると、下体2と上体1とは相対移動して建物Hの倒壊は阻止される。
【0098】
また、この下構造部31と上構造部30との相対移動は制御ユニットX2により制御され、所定の範囲以上とならない。
【0099】
即ち、下構造部31と上構造部30とが相対移動した際、下構造部31に設けられる下筒体12と上構造部30に設けられる上筒体11が相対移動することで、下筒体12の下筒孔12a内面及び上筒体11の上筒孔11a内面夫々が軸状体13(緩衝材13b)に当接し、あらゆる水平方向に揺れても下筒体12と上筒体11とは所定長さ以上に相対移動しない。
【0100】
つまり、建物Hに影響の少ない小さな揺れにはリカバリーユニットX1で耐え、影響の多い大きな揺れには敢えて耐えず、上構造部30に対して下構造部31を相対移動させることで揺れを吸収緩和し、更に、上構造部30に対して下構造部31が必要以上に相対移動しないようにして、万一、下構造部31から上構造部30が脱落することを防止するものである。
【0101】
よって、本実施例によれば、良好に揺れを吸収でき建物Hの破損を可及的に防止することができ、また、上構造部30の荷重を、球体3と該球体3が当接する第一内面部4及び第二内面部5以外の部位で受けるから、それだけ本装置の破損を防止することができ、しかも、この破損の防止を簡易な操作により実現できることになる。
【0102】
また、本実施例は、第一上部材6及び第一下部材8は筒状体であり、第二上部材7及び第二下部材9は第一上部材6の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であるから、簡易な構造でありながら確実に前述した作用効果を発揮することになる。
【0103】
また、本実施例は、第一内面部4及び第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されているから、いずれか一方の場合に比してより円滑な戻り動を発揮させることができる。
【0104】
また、本実施例は、下筒体12には、軸状体13の下端部を支承する下支承部12cが設けられ、上筒体11には、軸状体13の上端部を支承する上支承部11cが設けられているから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができる。
【0105】
また、本実施例は、下筒体12及び上筒体11は円筒形状体であるから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができ、しかも、円弧の面で衝撃を良好に緩和することができる。
【0106】
また、本実施例は、上構造部30及び下構造部31は、枠部30a,31aの内方に桟30b,31
bが設けられた構造であり、上構造部30及び下構造部31を当接した際、桟30b,31bが上下方向において合致しない位置に設けられているから、上下の桟30b,31b同士間に人が通行できる人通行空間が形成され、この人通行空間により本実施例に係る建物Hの傾斜修復方法を良好に実現することができ、基礎構造のメンテナンスも良好に行える。
【0107】
尚、本考案は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0108】
1 上体
2 下体
3 球体
4 第一内面部
5 第二内面部
6 第一上部材
7 第二上部材
8 第一下部材
9 第二下部材
30 上構造部
31 下構造部
【手続補正書】
【提出日】2022-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体を有する前記下構造部の構築工程を行い、続いて、前記下構造部の上に前記上体を有する前記上構造部の構築工程を行い、続いて、前記下体の第二内面部に前記球体を配した状態で前記上構造部に設けられた前記第一上部材に対して前記第二上部材を降下させて前記球体に対して前記第一内面部を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
記1
上構造部と下構造部との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、前記下構造部に設けられ第二内面部を有する下体とを具備し、更に、前記第一内面部と前記第二内面部とは対向するように構成され、前記第一内面部と前記第二内面部同士間には球体が配され、また、前記上体の第一内面部及び前記下体の第二内面部の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部と前記下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体が転動することで前記上体と前記下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記上体は、前記上構造部に設けられる第一上部材と、前記上構造部に設けられた前記第一上部材に昇降自在に設けられ前記第一内面部を有する第二上部材とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
請求項1記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一上部材は筒状体であり、前記第二上部材は前記第一上部材の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一内面部及び前記第二内面部の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【請求項4】
下記2の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体を有する前記下構造部の構築工程を行い、続いて、前記下構造部の上に前記上体を有する前記上構造部の構築工程を行い、続いて、前記下体の第二内面部に前記球体を配した状態で前記下構造部に設けられた前記第一下部材に対して前記第二下部材を上昇させて前記球体に対して前記第一内面部を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
記2
上構造部と下構造部との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、前記下構造部に設けられ第二内面部を有する下体とを具備し、更に、前記第一内面部と前記第二内面部とは対向するように構成され、前記第一内面部と前記第二内面部同士間には球体が配され、また、前記上体の第一内面部及び前記下体の第二内面部の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部と前記下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体が転動することで前記上体と前記下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記下体は、前記下構造部に設けられる第一下部材と、前記下構造部に設けられた前記第一下部材に昇降自在に設けられ前記第二内面部を有する第二下部材とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項5】
請求項4記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一下部材は筒状体であり、前記第二下部材は前記第一下部材の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【請求項6】
請求項4,5いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一内面部及び前記第二内面部の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を備えた構造体の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば建物における上構造部と、この上構造部の下に連設される下構造部との間に設けられる免震装置として、特開2002-129772に開示されるような免震装置(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、上構造部に設けられ第一内面部を有する上体と、下構造部に設けられ第二内面部を有する下体と、第一内面部と第二内面部同士間に配される球体とで構成され、第一内面部及び第二内面部は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(テーパー面)として構成されたもので、上構造部と下構造部とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体が転動することで上体と下体とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されたものである。
【0004】
従って、例えば地震の際の横揺れに対応して建物の破損を可及的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例は、常態位置において、上構造部の荷重を、球体と該球体が当接する第一内面部及び第二内面部のみで支える構造であるため、当該部位が破損し易いという問題点がある。
【0007】
本発明は、前述した問題点を解消するもので、従来にない作用効果を発揮する非常に実用的な免震装置を備えた構造体の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
下記1の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体2を有する前記下構造部31の構築工程を行い、続いて、前記下構造部31の上に前記上体1を有する前記上構造部30の構築工程を行い、続いて、前記下体2の第二内面部5に前記球体3を配した状態で前記上構造部30に設けられた前記第一上部材6に対して前記第二上部材7を降下させて前記球体3に対して前記第一内面部4を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
記1
上構造部30と下構造部31との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、前記下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、前記第一内面部4と前記第二内面部5とは対向するように構成され、前記第一内面部4と前記第二内面部5同士間には球体3が配され、また、前記上体1の第一内面部4及び前記下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部30と前記下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体3が転動することで前記上体1と前記下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記上体1は、前記上構造部30に設けられる第一上部材6と、前記上構造部30に設けられた前記第一上部材6に昇降自在に設けられ前記第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【0010】
また、請求項1記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一上部材6は筒状体であり、前記第二上部材7は前記第一上部材6の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一内面部4及び前記第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【0012】
また、下記2の免震装置を備えた構造体の構築方法であって、前記下体2を有する前記下構造部31の構築工程を行い、続いて、前記下構造部31の上に前記上体1を有する前記上構造部30の構築工程を行い、続いて、前記下体2の第二内面部5に前記球体3を配した状態で前記下構造部31に設けられた前記第一下部材8に対して前記第二下部材9を上昇させて前記球体3に対して前記第一内面部4を当接状態若しくは近接状態とする球体配置工程を行うことを特徴とする特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
記2
上構造部30と下構造部31との間に設けられる免震装置であって、前記上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、前記下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、前記第一内面部4と前記第二内面部5とは対向するように構成され、前記第一内面部4と前記第二内面部5同士間には球体3が配され、また、前記上体1の第一内面部4及び前記下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、前記上構造部30と前記下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、前記傾斜凹面を前記球体3が転動することで前記上体1と前記下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されており、前記下体2は、前記下構造部31に設けられる第一下部材8と、前記下構造部31に設けられた前記第一下部材8に昇降自在に設けられ前記第二内面部5を有する第二下部材9とで構成されていることを特徴とする免震装置。
【0013】
また、請求項4記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一下部材8は筒状体であり、前記第二下部材9は前記第一下部材8の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【0014】
また、請求項4,5いずれか1項に記載の免震装置を備えた構造体の構築方法において、前記第一内面部4及び前記第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されていることを特徴とする免震装置を備えた構造体の構築方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、例えば球体と該球体が当接する周辺部位の破損を防止することができ、しかも、この破損を防止する構造を簡易且つ確実に構築できるなど、従来にない作用効果を発揮する非常に実用的な免震装置を備えた構造体の構築方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本実施例に係る要部を説明する分解斜視図である。
【
図3】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図4】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図5】本実施例に係る免震装置を備えた構造体の構築方法の説明図である。
【
図6】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【
図7】本実施例に係る要部の動作説明断面図である。
【
図8】本実施例に係る制御ユニットを説明する分解斜視図である。
【
図9】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【
図10】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【
図11】本実施例に係る制御ユニットの動作説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
例えば地震の際の横揺れにより、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する。
【0019】
従って、本発明に係る免震装置を備えた構造体の破損を可及的に防止することができる。
【0020】
ところで、本発明に係る上体1は、上構造部30に設けられる第一上部材6と、上構造部30に設けられた第一上部材6に昇降自在に設けられ第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されており、この構成から従来にない作用効果を奏することになる。
【0021】
即ち、例えば上構造部30の荷重を下構造部31が受ける状態で連設された常態位置において、第一上部材6の第一内面部4は、球体3に対して、しっかりした当接状態ではなく、軽く触れる程度の当接状態であるか、若しくは、必ずしも球体3に対して当接していなくても近接状態(常態位置においては当接していなくても水平方向へ相対移動した場合には当接する程度の近接状態)であれば、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する機能が十分、発揮される。
【0022】
しかしながら、球体3に対して第一内面部4を前記当接状態若しくは近接状態となるように設定するには、例えば上構造部30及び下構造部31がコンクリート製で、この上構造部30及び下構造部31を現場で型枠を組んでコンクリート打設して構築するのが一般的であるが、このような構築技術では極めて精度の高い技術が要求され、コスト面や工期面を考慮すると現実的ではない。
【0023】
この点、本発明は、前述した構成とすることで、下構造部31の上に上構造部30を構築した後、上構造部30に設けられた第一上部材6に対して第二上部材7を降下させるだけで、球体3に対して簡易に第一内面部4を前記当接状態若しくは近接状態にできる。
【0024】
従って、本発明によれば、常態位置において上構造部30の荷重を、球体3と該球体3が当接する第一内面部4及び第二内面部5以外の部位で受けるから、それだけ本装置の破損を防止することができ、しかも、この破損の防止を簡易な操作により実現できることになる。
【実施例0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、構造体としての基礎構造Yに設けられる免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)である。
【0027】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0028】
本実施例の基礎構造Yは、本出願人が特願2016-160959号及び実用新案登録第3208452号で提案するもので、
図1に図示したように地盤Eに設けられる下構造部31(下基礎部)と、この下構造部31の上に設けられ(載置され)、更に上部に建物Hが構築される上構造部30(上基礎部)とからなり、下構造部31と上構造部30とは接離可能に構成されている。尚、下構造部31は地盤Eでも良い。
【0029】
下構造部31は、
図1に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、底板31d上に所定高さの枠部31aを設け、この枠部31aの内方を所定高さの桟31bで格子状に適宜区画した構造である。
【0030】
この下構造部31の平面視形状は、後述する上構造部30と同様、建物Hの形状に合わせて適宜設計され、本実施例では平面視方形状に形成されている。
【0031】
また、下構造部31の桟31bは、上構造部30の桟30bとの間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
【0032】
具体的には、本実施例に係る基礎構造Yは、上下の桟30b,31bの一部同士が上下方向に合致しない位置に設けられており、この上下の桟30b,31b同士間に人通行空間が形成されている。
【0033】
また、下構造部31は、上面部所定位置(4隅部とその他の複数箇所(合計9カ所))に上構造部30と間隔を介して対設される支承部31cが設けられ、この支承部31cには免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)が設けられている。
【0034】
上構造部30は、
図1に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、所定高さの枠部30aの内方を所定高さの桟30bで格子状に適宜区画した構造である。
【0035】
この上構造部30の平面視形状は、前述した下構造部31と同様、建物Hの形状に合わせて平面視方形状に形成されており、上面部位には建物Hが構築される。
【0036】
また、前述したように、上構造部30の桟30bは、下構造部31の桟31bとの間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
【0037】
また、上構造部30は、下面部所定位置(4隅部とその間の合計9カ所)に下構造部31と間隔を介して対設される被支承部30cが設けられ、この被支承部30cには免震装置(リカバリーユニットX1及び制御ユニットX2)が設けられている。
【0038】
本実施例の免震装置は、基礎構造Yの所定位置に設けられるリカバリーユニットX1及び制御ユニットX2とで構成されている。
【0039】
リカバリーユニットX1は、
図2,3に図示したように上構造部30に設けられ第一内面部4を有する上体1と、下構造部31に設けられ第二内面部5を有する下体2とを具備し、更に、第一内面部4と第二内面部5とは対向するように構成され、第一内面部4と第二内面部5同士間には球体3が配され、また、上体1の第一内面部4及び下体2の第二内面部5の少なくとも一方は面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成され、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から一方が水平方向へ相対移動した場合、傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動するように構成されたものである。
【0040】
具体的には、上体1は、上構造部30に設けられる第一上部材6と、上構造部30に設けられた第一上部材6に昇降自在に設けられ第一内面部4を有する第二上部材7とで構成されている。
【0041】
第一上部材6は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、下端開口縁部には上鍔部6aが水平状に突設されている。
【0042】
この上鍔部6a(下端開口縁部)は、後述する下体2の下鍔部8aと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し(上構造部30下面と下構造部31上面とには間隙が形成される)、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0043】
また、第一上部材6の内面には、後述する第二上部材7を螺着する第一上螺子部6bが設けられている。
【0044】
また、第一上部材6の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は上構造部30に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部6cとして構成されている。
【0045】
第二上部材7は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有底筒状体であり、周面には第一上部材6の内面に設けられた第一上螺子部6bに螺着する第二上螺子部7bが設けられている。
【0046】
従って、第二上部材7は第一上部材6の上部開口部から螺入させることができ、この第二上部材7を螺動させることで第一上部材6に対して昇降自在となる。尚、第一上部材6に対する第二上部材7の昇降は螺動による構造に限らない。
【0047】
符号7aは、底壁部の上面中央から放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ7aは第二上部材7を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0048】
また、第二上部材7は、底壁部の下面に第一内面部4が設けられている。
【0049】
この第一内面部4は、
図3に図示したように面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(面中央の頂点に向けて上り傾斜状となる下向きテーパー面)として構成されている。
【0050】
また、第一内面部4の面中央には開口縁部が面取りされた上凹部4aが貫通状態に設けられている。
【0051】
この上凹部4aは、第一内面部4と後述する第二内面部5との間に球体3を配した際、球体3が嵌合係止するように構成されており、この係止力は、前述した上鍔部6aと下鍔部8aとの摩擦抵抗力に加え、後述する下凹部5aの係止力と共に、例えば比較的小規模な地震や台風など、上構造部30(建物H)を破損させない程度の横揺れにおいては係脱しない係止力が発揮されるように構成されている。
【0052】
また、上凹部4aは水抜き孔としての機能も発揮する。
【0053】
尚、この第一内面部4及び第二内面部5のうちのいずれか一方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面であれば、この傾斜凹面を球体3が転動することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動する機能が発揮されるものであり、よって、いずれか他方が平坦面(水平面)でも良い。
【0054】
下体2は、下構造部31に設けられる第一下部材8と、下構造部31に設けられた第一下部材8に昇降自在に設けられ第二内面部5を有する第二下部材9とで構成されている。
【0055】
第一下部材8は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、上端開口縁部には下鍔部8aが水平状に突設されている。
【0056】
この下鍔部8a(上端開口縁部)は、前述した上体1の上鍔部6aと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0057】
また、第一下部材8の内面には、後述する第二下部材9を螺着する第一下螺子部8bが設けられている。
【0058】
また、第一下部材8の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は下構造部31に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部8cとして構成されている。
【0059】
第二下部材9は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有天筒状体であり、周面には第一下部材8の内面に設けられた第一上螺子部8bに螺着する第二下螺子部9bが設けられている。
【0060】
従って、第二下部材9は第一下部材8の下部開口部から螺入させることができ、この第二下部材9を螺動させることで第一下部材8に対して昇降自在となる。尚、第一下部材8に対する第二下部材9の昇降は螺動による構造に限らない。
【0061】
符号9aは、天壁部の下面中央から放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ9aは第二下部材9を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0062】
また、第二下部材9は、天壁部の上面に第二内面部5が設けられている。
【0063】
この第二内面部5は、
図2,3に図示したように面中央に向けて傾斜する傾斜凹面(面中央の最下点に向けて下り傾斜状となる上向きテーパー面)として構成されている。
【0064】
また、第二内面部5の面中央には開口縁部が面取りされた下凹部5aが貫通状態に設けられている。
【0065】
この下凹部5aは、前述した第一内面部4と第二内面部5との間に球体3を配した際、球体3が嵌合係止するように構成されており、この係止力は、前述した上鍔部6aと下鍔部8aとの摩擦抵抗力に加え、前述した上凹部4aの係止力と共に、例えば比較的小規模な地震や台風など、上構造部30(建物H)を破損させない程度の横揺れにおいては係脱しない係止力が発揮されるように構成されている。
【0066】
また、下凹部5aは水抜き孔としての機能も発揮する。尚、この下凹部5aにグリースなどを貯めておくことで球体3の良好な転動を維持できる(下凹部5aの下部を適宜閉塞することが望ましい。)。
【0067】
球体3は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材(鋼材)で形成されたものである。
【0068】
この球体3が第一内面部4と第二内面部5との間に配されることにより、上構造部30と下構造部31とが連設された常態位置から水平方向へ相対移動した際、球体3が面中央から離れる方向へ向けて傾斜凹面を転動することで、相対移動に伴う力を吸収緩和することになり、その後、球体3が面中央へ向けて傾斜凹面を転動(落ち込み転動)することで上体1と下体2とが常態位置まで水平方向に戻り動(復帰作動)することになる。
【0069】
また、本実施例に係るリカバリーユニットX1を備えた構造体の構築方法としては、次の通りとなる。
【0070】
下体2を有する下構造部31の構築工程を行い、続いて、この下構造部31の上に上体1を有する上構造部30の構築工程を行い、続いて、下体2の第二内面部5に球体3を配した状態で上構造部30に設けられた第一上部材6に対して第二上部材7を降下させて球体3に対して第一内面部4を当接状態とする球体配置工程を行い(
図3,4参照)、続いて、この構造体としての基礎構造Y(上構造部30)の上に建物Hを構築する(
図5参照)。
【0071】
尚、球体配置工程は、下体2の第二内面部5に球体3を配した状態で下構造部31に設けられた第一下部材8に対して第二下部材9を上昇させて球体3に対して第一内面部4を当接状態とさせるようにしても良く、また、前述したいずれの場合も球体3に対して第一内面部4を当接状態とせず近接状態(上構造部30と下構造部31とが常態位置においては球体3に対して第一内面部4が当接していなくても水平方向へ相対移動した場合には当接する程度の近接状態)としても良い。
【0072】
制御ユニットX2は、
図8,9に図示したように上構造部30に設けられる上筒体11と、この上筒体11が水平方向に相対移動自在に載置重合され下構造部31に設けられる下筒体12と、上筒体11の上筒孔11aに上方部位が相対移動自在に内装されるとともに、下筒体12の下筒孔12aに下方部位が相対移動自在に内装される軸状体13とからなり、例えば地震による横揺れにより生じた下構造部31と上構造部30との相対移動が、軸状体13の周面(緩衝材13b)が下筒孔12a及び上筒孔11aの内面に当接して阻止されるように構成されている。
【0073】
上筒体11は、
図8,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、下端開口縁部には上鍔部11bが水平状に突設されている。
【0074】
この上鍔部11b(下端開口縁部)は、後述する下筒体12の下鍔部12bと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し(上構造部30下面と下構造部31上面とには間隙が形成される)ことになり、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0075】
また、上筒体11の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は上構造部30に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部11dとして構成されている。
【0076】
また、上筒体11には、上筒孔11a内に円筒状の螺着体11’が螺着され、この螺着体11’内には後述する軸状体13の上端部を下筒体12の下支承部12cとともに倒れないように支承する上支承部11cが架設されている。
【0077】
また、上支承部11cの中央には水抜き孔が設けられている。
【0078】
符号11eは放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ11”は螺着体11’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0079】
下筒体12は、
図8,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、上端開口縁部には下鍔部12bが水平状に突設されている。
【0080】
この下鍔部12b(上端開口縁部)は、前述した上筒体11の下鍔部11bと重合して上構造部30及び建物Hの荷重を支持する荷重支持部として機能し、更に、例えば地震が起きた際などの上構造部30と下構造部31との横ずれに抵抗する摩擦抵抗力が発揮されるように構成されている。
【0081】
また、下筒体12の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片は下構造部31に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部12dとして構成されている。
【0082】
また、下筒体12には、下筒孔12a内に円筒状の螺着体12’が螺着され、この螺着体12’内には後述する軸状体13の下端部を上筒体11の上支承部11cとともに倒れないように支承する下支承部12cが架設されている。
【0083】
また、この下支承部12cの中央には水抜き孔が設けられている。
【0084】
符号12eは放射状に設けられる8枚の補強リブであり、この各補強リブ12eは螺着体12’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける部位として利用される。
【0085】
軸状体13は、
図8~10に図示したように適宜な金属製部材(鋼材)で形成された円筒状の基材13aと、この基材13aの周面に被嵌されるゴム製の緩衝材13bとで構成されたものであり、基材13aの上部開口部には上支承部11cに当接する天板材13cが配され、基材13aの下部開口部には下支承部12cに当接する底板材13dが配されている。
【0086】
また、天板材13cは付勢部材14(コイルバネ)により上方へ付勢されており、上筒体11の上支承部11cに圧接するように構成されている。
【0087】
従って、軸状体13は上支承部11cと下支承部12cとの間で突っ張った状態となって倒れるのが防止される。
【0088】
また、この軸状体13の径は、上筒体11及び下筒体12の相対移動量を考慮して設定される。
【0089】
また、軸状体13は、下端部が下支承部12cに支承された状態で下筒孔12aに配され、上端部が上支承部11cに支承された状態で上筒孔11aに配されるように構成されている。
【0090】
従って、上筒体11と下筒体12とが水平方向に相対移動した際、上筒体11の上筒孔11a及び下筒体12の下筒孔12a夫々の内面が軸状体13(緩衝材13b)に当接することでその相対移動(移動巾)は制御される。この際、軸状体13の周面は緩衝材13bがあり、且つ、上筒体11の上筒孔11aと下筒体12の下筒孔12aと軸状体13の周面とはいずれも円弧面での衝突となる為、衝突した際の衝撃は良好に緩和される。また、軸状体13は、天板材13c及び底板材13dの存在により強度があり、しかも、上筒体11と下筒体12との相対移動の際には上支承部11c及び下支承部12cに対する天板材13c及び底板材13dの円滑な摺動が行われ良好な相対移動が可能となる(
図11参照)。
【0091】
また、本実施例に係る制御ユニットX2を備えた構造体の構築方法としては、前述したリカバリーユニットX1を設ける際と同様である。
【0092】
以上の構成から成る免震装置に係るリカバリーユニットX1は四隅及び中心部の合計五箇所配設され、制御ユニットX2は端部中央位置の合計四箇所配設されている。
【0093】
例えば地震で水平方向への横揺れが生じた際、リカバリーユニットX1により小規模の揺れであれば下構造部31と上構造部30との相対移動は阻止される。
【0094】
即ち、下構造部31に設けられる下体2と上構造部30に設けられる上体1とが水平方向に相対移動しようとしても、この水平方向への力が、球体3における上凹部4a及び下凹部5aの係止力が解除される力、並びに、上鍔部6a,11bと下鍔部8a,12bとの摩擦抵抗を超える力となるまでは当該相対移動は阻止される。
【0095】
しかし、下体2と上体1とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上になると、下体2と上体1とは相対移動して建物Hの倒壊は阻止される。
【0096】
また、この下構造部31と上構造部30との相対移動は制御ユニットX2により制御され、所定の範囲以上とならない。
【0097】
即ち、下構造部31と上構造部30とが相対移動した際、下構造部31に設けられる下筒体12と上構造部30に設けられる上筒体11が相対移動することで、下筒体12の下筒孔12a内面及び上筒体11の上筒孔11a内面夫々が軸状体13(緩衝材13b)に当接し、あらゆる水平方向に揺れても下筒体12と上筒体11とは所定長さ以上に相対移動しない。
【0098】
つまり、建物Hに影響の少ない小さな揺れにはリカバリーユニットX1で耐え、影響の多い大きな揺れには敢えて耐えず、上構造部30に対して下構造部31を相対移動させることで揺れを吸収緩和し、更に、上構造部30に対して下構造部31が必要以上に相対移動しないようにして、万一、下構造部31から上構造部30が脱落することを防止するものである。
【0099】
よって、本実施例によれば、良好に揺れを吸収でき建物Hの破損を可及的に防止することができ、また、上構造部30の荷重を、球体3と該球体3が当接する第一内面部4及び第二内面部5以外の部位で受けるから、それだけ本装置の破損を防止することができ、しかも、この破損の防止を簡易な操作により実現できることになる。
【0100】
また、本実施例は、第一上部材6及び第一下部材8は筒状体であり、第二上部材7及び第二下部材9は第一上部材6の筒孔内に昇降自在に螺着される螺着体であるから、簡易な構造でありながら確実に前述した作用効果を発揮することになる。
【0101】
また、本実施例は、第一内面部4及び第二内面部5の双方が面中央に向けて傾斜する傾斜凹面として構成されているから、いずれか一方の場合に比してより円滑な戻り動を発揮させることができる。
【0102】
また、本実施例は、下筒体12には、軸状体13の下端部を支承する下支承部12cが設けられ、上筒体11には、軸状体13の上端部を支承する上支承部11cが設けられているから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができる。
【0103】
また、本実施例は、下筒体12及び上筒体11は円筒形状体であるから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができ、しかも、円弧の面で衝撃を良好に緩和することができる。
【0104】
また、本実施例は、上構造部30及び下構造部31は、枠部30a,31aの内方に桟30b,31
bが設けられた構造であり、上構造部30及び下構造部31を当接した際、桟30b,31bが上下方向において合致しない位置に設けられているから、上下の桟30b,31b同士間に人が通行できる人通行空間が形成され、この人通行空間により本実施例に係る建物Hの傾斜修復方法を良好に実現することができ、基礎構造のメンテナンスも良好に行える。
【0105】
尚、本考案は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。