(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109618
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220721BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220721BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220721BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01L29/78 616A
H01L29/78 612B
H01L29/78 616M
H01L29/78 616L
H01L29/78 616V
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
G09F9/00 338
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005017
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】境 武志
【テーマコード(参考)】
5C094
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA31
5C094AA43
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(57)【要約】
【課題】 信頼性が向上した半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法では、酸化物半導体層を形成し、前記酸化物半導体層に接し、前記酸化物半導体層を覆って、ゲート絶縁層を形成し、前記ゲート絶縁層上に、前記酸化物半導体層に重畳して、ゲート電極を形成し、前記ゲート電極形成後に、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層を通して、ホウ素を注入し、前記ゲート絶縁層のうち、前記ゲート電極と重畳する領域に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層に接し、前記酸化物半導体層を覆って、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に、前記酸化物半導体層に重畳して、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極形成後に、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層を通して、ホウ素を注入し、
前記ゲート絶縁層のうち、前記ゲート電極と重畳する領域に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁層は、酸化珪素膜である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ホウ素を注入する印加電圧は、30keV以上40keV以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層にホウ素を注入し、
前記ホウ素が注入された第1絶縁層に接して、酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層に接し、前記第1絶縁層及び前記酸化物半導体層を覆って、第2絶縁層を形成し、
前記第2絶縁層にホウ素を注入し、
前記ホウ素が注入された第2絶縁層上に、前記酸化物半導体層に重畳して、ゲート電極を形成し、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、それぞれ、酸化珪素膜である、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ素を注入する印加電圧は、30keV以上40keV以下である、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極を覆って、第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層に、ホウ素を注入し、
前記ホウ素が注入された第1絶縁層に接して、酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層の一部に重畳して、ソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記酸化物半導体層に接し、前記酸化物半導体層、前記ソース電極、及び前記ドレイン電極を覆って、第2絶縁層を形成し、
前記第2絶縁層に、ホウ素を注入し、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層は、それぞれ、酸化珪素膜である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ホウ素を注入する印加電圧は、30keV以上40keV以下である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置において、表示領域の画素回路に酸化物半導体を備えたトランジスタが設けられ、且つ、周辺領域の駆動回路にシリコン半導体を備えたトランジスタが設けられる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-254950号公報
【特許文献2】特開2020-129635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、信頼性が向上した半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る半導体装置の製造方法では、酸化物半導体層を形成し、前記酸化物半導体層に接し、前記酸化物半導体層を覆って、ゲート絶縁層を形成し、前記ゲート絶縁層上に、前記酸化物半導体層に重畳して、ゲート電極を形成し、前記ゲート電極形成後に、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層を通して、ホウ素を注入し、前記ゲート絶縁層のうち、前記ゲート電極と重畳する領域に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である。
【0006】
また、一実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層にホウ素を注入し、前記ホウ素が注入された第1絶縁層に接して、酸化物半導体層を形成し、前記酸化物半導体層に接し、前記第1絶縁層及び前記酸化物半導体層を覆って、第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層にホウ素を注入し、前記ホウ素が注入された第2絶縁層上に、前記酸化物半導体層に重畳して、ゲート電極を形成し、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である。
【0007】
一実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ゲート電極を形成し、前記ゲート電極を覆って、第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層に、ホウ素を注入し、前記ホウ素が注入された第1絶縁層に接して、酸化物半導体層を形成し、前記酸化物半導体層の一部に重畳して、ソース電極及びドレイン電極を形成し、前記酸化物半導体層に接し、前記酸化物半導体層、前記ソース電極、及び前記ドレイン電極を覆って、第2絶縁層を形成し、前記第2絶縁層に、ホウ素を注入し、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に含まれるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る半導体装置を備える表示装置の構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の半導体装置を備える表示装置の概念断面図である。
【
図3】
図3は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、トランジスタを構成する層の二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)プロファイルを示す図である。
【
図6】
図6は、加速試験下でのトランジスタ特性の経時変化を示す図である。
【
図7】
図7は、加速試験下でのトランジスタ特性の経時変化を示す図である。
【
図8】
図8は、加速試験下でのトランジスタ特性の経時変化を示す図である。
【
図9】
図9は、加速試験下でのトランジスタ特性の経時変化を示す図である。
【
図10】
図10は、トランジスタに定電流を流し続けたときのドレイン電流の経時変化を示す図である。
【
図11】
図11は、トランジスタに定電流を流し続けたときのドレイン電流の経時変化を示す図である。
【
図13】
図13は、積層構成におけるホウ素注入のシミュレーション結果を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態における半導体装置の他の構成例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【
図16】
図16は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【
図18】
図18は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態における半導体装置の他の構成例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る半導体装置について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。
【0011】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0012】
また、第3方向Zの矢印の先端側に半導体装置を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における半導体装置の断面を見ることを断面視という。
【0013】
図1は、本実施形態に係る半導体装置を備える表示装置の構成を示す平面図である。表示装置DSPは、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周囲の周辺領域(非表示領域)NDAと、を備えている。
図1に示す例では、周辺領域NDAは、表示領域DAを囲む額縁状に形成されている。周辺領域NDAを額縁領域FAともいう。
【0014】
表示装置DSPは、周辺領域NDAにおいて、ゲートドライバGD1及びGD2と、ソースドライバSDと、を備えている。ゲートドライバGD1及びGD2の各々は、トランジスタTr1を備えている。このように、ゲートドライバGD1及びGD2は、表示領域DAの各要素とともに、同一基板上に形成される。
【0015】
表示装置DSPは、表示領域DAにおいて、複数の画素PXと、複数の走査線GLと、複数の信号線SLと、を備えている。複数の画素PXは、第1方向X及び第2方向Yにおいて、マトリクス状に配列されている。
複数の走査線GLは、それぞれ第1方向Xに沿って延出し、間隔をおいて第2方向Yに並んでいる。走査線GLは、ゲート線と称する場合がある。走査線GLは、ゲートドライバGD1及びGD2と電気的に接続されている。例えば、奇数番目の走査線GLはゲートドライバGD1に接続され、偶数番目の走査線GLはゲートドライバGD2に接続されている。走査線GLの各々は、ゲートドライバGD1及びGD2によって駆動される。
【0016】
複数の信号線SLは、それぞれ第2方向Yに沿って延出し、間隔をおいて第1方向Xに並んでいる。信号線SLは、ソース線と称する場合がある。表示領域DAにおいて、複数の信号線SLは、複数の走査線GLと交差している。信号線SLは、ソースドライバSDと電気的に接続されている。信号線SLの各々は、ソースドライバSDによって駆動される。
【0017】
各画素PXは、後述するトランジスタTr2及び画素電極PEを備えている。詳細は後述するが、トランジスタTr1及びトランジスタTr2は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されている。トランジスタTr2は、走査線GL及び信号線SLと電気的に接続されている。走査線GLは、第1方向Xに並んだ画素PXの各々におけるトランジスタTr2と電気的に接続されている。信号線SLは、第2方向Yに並んだ画素PXの各々におけるトランジスタTr2と電気的に接続されている。
本実施形態では、トランジスタTr1及びTr2のそれぞれを半導体装置と称することもある。トランジスタTr1及びトランジスタTr2、各種配線、及び、各種電極を備えた基板を半導体装置と称することもある。
【0018】
図2は、実施形態の半導体装置を備える表示装置の概念断面図である。図面を見易くするために、一部の構成要素のハッチングは省略している。
図2に示す表示装置DSPは、基材BA1、絶縁層UC1、遮光層LS1、絶縁層UC2、トランジスタTr1、絶縁層ILI1、絶縁層ILI2、遮光層LS2、トランジスタTr2、絶縁層ILI3、絶縁層ILI4、絶縁層PAS1、絶縁層PLN1、接続電極NE、絶縁層PLN2、画素電極PE、有機EL層ELY、共通電極CE、絶縁層PAS2を有している。トランジスタTr1及びTr2は、それぞれ、第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタともいう。
【0019】
基材BA1の材料は、ガラスや樹脂である。このような樹脂として、例えば、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂が挙げられる。
絶縁層UC1は、ガラス等からの不純物をブロックするもので、例えば、酸化珪素や窒化珪素の単層又は積層で形成されている。
遮光層LS1は、トランジスタTr1の半導体層を遮光する機能を有する。遮光層LS1が、金属層である場合は、トランジスタTr1のバックゲートとしての機能を有していてもよい。その場合は、遮光層LS1は、トランジスタTr1に含まれるといえる。
【0020】
遮光層LS1及び絶縁層UC1上に、絶縁層UC2が設けられている。絶縁層UC2は、絶縁層UC1と同様の材料で形成されていればよい。
絶縁層UC2上に、トランジスタTr1の活性層である半導体層SC1が設けられている。半導体層SC1は、多結晶シリコンで形成されている。半導体層SC1を、第1半導体層又は多結晶シリコン層と呼ぶこともある。
半導体層SC1には、ゲート電極GE1と重畳するチャネル形成領域、ソース電極SE1と重畳するソース領域、ドレイン電極DE1と重畳するドレイン領域を有している。
【0021】
半導体層SC1及び絶縁層UC2上に、絶縁層GI1が設けられている。絶縁層GI1は、例えば酸化珪素で形成されている。絶縁層GI1は、トランジスタTr1のゲート絶縁層である。
絶縁層GI1上には、トランジスタTr1のゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2が設けられている。換言すると、絶縁層GI1は、半導体層SC1及びゲート電極GE1との間に設けられている。ゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2は、例えば、モリブデン・タングステン合金(MoW)や、アルミニウム合金をチタンで挟んだ積層体で形成される。
【0022】
電極LE1は、絶縁層UC2及びGI1に設けられたコンタクトホールを介して、遮光層LS1と接続されている。上述のように、遮光層LS1がトランジスタTr1のバックゲートとして機能する場合は、電極LE1を介して信号が入力される。
遮光層LS2は、トランジスタTr2の活性層を遮光する。遮光層LS2は、トランジスタTr2のバックゲートとして機能してもよい。その場合は、遮光層LS2は、トランジスタTr2に含まれるといえる。
【0023】
ゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2を覆って、絶縁層GI1上に、絶縁層ILI1が設けられている。絶縁層ILI1は、例えば、窒化珪素で形成されている。
絶縁層ILI1上には、絶縁層ILI2が設けられている。絶縁層ILI2は、例えば、酸化珪素で形成されている。絶縁層ILI1及びILI2は、トランジスタTr1の層間絶縁層として機能する。絶縁層ILI1及びILI2は、遮光層LS2と半導体層SC2の絶縁層としても機能する。
【0024】
絶縁層ILI2上に、遮光層LS2と重畳して、トランジスタTr2の活性層である半導体層SC2が設けられる。半導体層SC2は、酸化物半導体で形成されている。半導体層SC2を、第2半導体層又は酸化物半導体層と呼ぶこともある。酸化物半導体には、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)、ZnON(Zinc Oxide Nitride)、IGO(Indium Gallium Oxide)等がある。
【0025】
半導体層SC2には、ゲート電極GE2と重畳するチャネル形成領域、ソース電極SE2と重畳するソース領域、ドレイン電極DE2と重畳するドレイン領域を有している。ゲート電極GE2は、走査線GLと電気的に接続されている。ゲート電極GE2は、走査線GLと一体形成されていてもよい。
【0026】
半導体層SC2及び絶縁層ILI2上に、絶縁層GI2が設けられている。絶縁層GI2は、例えば、酸化珪素で形成される。絶縁層GI2は、トランジスタTr2のゲート絶縁層として機能する。半導体層SC2は、絶縁層ILI2及びGI2との間に設けられているともいえる。
絶縁層GI2の膜厚は、例えば、100nm程度であればよい。絶縁層ILI1及びILI2の膜厚は、例えば、300nm程度である。ただし、絶縁層ILI1、ILI2、及びGI2の膜厚はこれに限定されない。絶縁層ILI1及びILI2を併せた膜厚は、絶縁層GI2の膜厚よりも厚いことが好ましい。換言すると、半導体層SC2の上に位置する絶縁層GI2は、半導体層SC2の下に位置する絶縁層ILI1及びILI2の膜厚より薄い。
また絶縁層GI2の膜厚は、絶縁層GI1の膜厚と同じ程度の膜厚であることが好ましい。
【0027】
絶縁層GI2上に、半導体層SC2のチャネル形成領域と重畳してゲート電極GE2、半導体層SC1のソース領域と重畳してソース電極SE1a、半導体層SC1のドレイン領域と重畳してドレイン電極DE1、電極LE1と接続する電極LE2、遮光層LS2と接続される電極LE3が設けられている。換言すると、絶縁層GI2は、半導体層SC2及びゲート電極GE2との間に設けられている。ゲート電極GE2、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1、電極LE2、及び電極LE3は、それぞれ、後述する材料で形成されていればよい。
【0028】
絶縁層GI2、ゲート電極GE2、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1、電極LE2、及び電極LE3を覆って、絶縁層ILI3が設けられている。絶縁層ILI3上に、絶縁層ILI4が設けられている。絶縁層ILI3及びILI4は、それぞれ、窒化珪素及び酸化珪素で形成される。
【0029】
絶縁層ILI4上に、ソース電極SE1aと接続されるソース電極SE1b、半導体層SC2のソース領域と重畳してソース電極SE2、半導体層SC2のドレイン領域と重畳してドレイン電極DE2が設けられている。ソース電極SE1b、ソース電極SE2、及びドレイン電極DE2は、例えば、アルミニウム合金層をチタン膜で挟持した積層膜(チタン・アルミニウム・チタン(Ti/Al/Ti)の積層膜)で形成される。
ソース電極SE1a及びSE1bを併せて、ソース電極SE1とする。ソース電極SE1bは、信号線SLと一体形成されていてもよい。ソース電極SE1(ソース電極SE1a及びSE1b)が信号線SLと一体形成されていてもよい。
【0030】
絶縁層ILI4、ソース電極SE1b、ソース電極SE2、及びドレイン電極DE2を覆って、絶縁層PAS1が設けられている。絶縁層PAS1は、例えば酸化珪素で形成されている。
絶縁層PAS1を覆って、絶縁層PLN1が設けられている。絶縁層PLN1は、有機絶縁材料、例えばポリイミドで形成されている。
絶縁層PLN1上には、ドレイン電極DE2に接続される接続電極NEが設けられている。接続電極NEは、例えば、アルミニウム合金層をチタン膜で挟持した積層膜で形成される。本実施形態では、接続電極NEを設ける構成について説明したが、これに限定されない。接続電極NEを設けず、後述する画素電極PEを直接ドレイン電極DE2に接続する構成であってもよい。
【0031】
絶縁層PLN1及び接続電極NEを覆って、絶縁層PLN2が設けられている。絶縁層PLN2は、有機絶縁材料、例えばポリイミドで形成されている。絶縁層PLN1及びPLN2は、トランジスタ等により生じる、基板SUB1の凹凸を平坦化する機能を有する。
絶縁層PLN2上には、接続電極NEに接続する画素電極PEが設けられている。上述のように、画素電極PEは、ドレイン電極DE2と接続されていてもよい。
画素電極PEは、反射性を有する第1導電層、及び透光性を有する第2導電層の積層構造であってもよい。例えば、第1導電層の材料として、銀(Ag)、第2導電層の材料として、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)を用い、画素電極PEが、IZO、Ag、IZOがこの順に積層された積層構造で形成されていてもよい。
【0032】
隣り合う画素電極PEとの間に、バンクBK(凸部、リブ、隔壁ともいう)が設けられる。バンクBKの材料として、絶縁層PLN1及びPLN2の材料と同様の有機材料が用いられる。バンクBKは、画素電極PEの一部を露出するように開口される。また、開口部OPの端部は、なだらかなテーパ形状となることが好ましい。開口部OPの端部が急峻な形状となっていると、後に形成される有機EL層ELYにカバレッジ不良が生じる。
【0033】
画素電極PEと重畳して、隣り合うバンクBKとの間に、有機EL層ELYが設けられている。有機EL層ELYは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいる。なお本明細書では、有機EL層ELYを有機材料層ともいう。有機EL層ELYは、少なくとも発光層を含んでおり、他の層は必要に応じて適宜設ければよい。
【0034】
有機EL層ELY及びバンクBKを覆って、共通電極CEが設けられる。共通電極CEは、例えば、第1層及び第2層を含んでいてもよい。第2層は第1層よりも透過率が高くてもよい。例えば、第1層として、マグネシウム-銀合金(MgAg)やイッテルビウム-銀合金(YbAg)の薄膜を形成してもよい。第2層として、透明電極、例えばインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)や、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を形成する。
本実施形態では、画素電極PEが陽極となり、共通電極CEが陰極となる。有機EL層ELYで生じた発光は、上方に取り出される。すなわち表示装置DSPは、トップエミッション構造を有している。
【0035】
共通電極CEを覆って、絶縁層PAS2が設けられる。絶縁層PAS2は、外部から水分が有機EL層ELYに侵入することを防止する機能や光学調整機能を有している。絶縁層PAS2としてはガスバリア性の高いものが好適である。絶縁層PAS2として、例えば、有機絶縁層と窒素を含む無機絶縁層との積層であってもよい。あるいは絶縁層PAS2として、例えば、有機絶縁層を、窒素を含む無機絶縁層2層で挟持した絶縁層が挙げられる。さらにあるいは、無機絶縁層を2層積層した構造であってもよい。当該有機絶縁層の材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。当該窒素を含む無機絶縁層の材料としては、例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウムが挙げられる。
図示しないが、絶縁層PAS2上に、さらに有機樹脂層や、基材BA1に対向する基材BA2を設けてもよい。
【0036】
トランジスタTr2の半導体層SC2は、酸化珪素膜である絶縁層ILI2及びGI2に挟持されている。トランジスタTr2は、活性層たる半導体層SC2の上下の酸化珪素膜中に存在する欠陥準位のため、信頼性が低下する恐れがある。当該欠陥準位は、主として酸化珪素膜の余剰酸素に起因する。このような欠陥は、トランジスタTr2が駆動中に、電子トラップとして機能する。これによりトランジスタTr2の信頼性が低下してしまう。
【0037】
酸化珪素膜中の欠陥修復には、水素の終端化を利用することも可能である。しかしながら、酸化物半導体層が活性層であるトランジスタでは、過剰な水素によりしきい値Vthが大きくディプリートする恐れが生じる。極端なVthシフト(ディプリート)はトランジスタTr2を備える表示装置DSPの動作異常を引き起こす恐れがある。よって、表示装置DSPにおいては、水素による酸化珪素膜の終端化は好ましくない。
【0038】
本実施形態においては、水素の代わりにホウ素により、酸化珪素膜である絶縁層ILI2及びGI2の終端化を行う。これにより、トランジスタTr2がディプリートを起こすことなく、酸化珪素膜の欠陥修復を行うことができる。トランジスタTr2の信頼性向上を図り、トランジスタTr2を有する表示装置DSPの信頼性を向上させることが可能である。
【0039】
図3は、トランジスタの製造工程を示す断面図である。
図3に示すトランジスタTr2は、基材BA1上に、遮光層LS2、絶縁層ILI1、絶縁層ILI2、半導体層SC2、絶縁層GI2、及びゲート電極GE2が形成されている。基材BA1及び遮光層LS2との間には、
図2と同様に絶縁層を設けてもよい。
ゲート電極GE2形成後に、上述したホウ素Bの注入を行う。このとき、ホウ素Bの印加電圧(加速電圧ともいう)は、半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2と重畳しない領域では、ホウ素Bが、半導体層SC2又は半導体層SC2の下層である絶縁層ILI2に達するような電圧とする。当該電圧では、半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2と重畳する領域では、ゲート電極GE2を通して、絶縁層GI2にホウ素Bが注入される。
【0040】
絶縁層GI2は、上述の通り酸化珪素膜であり、その膜厚は、例えば、50nm以上200nm以下であればよい。このような範囲の膜厚の絶縁層GI2では、ゲート電極GE2と重畳しない領域においては、絶縁層GI2を通して、半導体層SC2にホウ素Bが注入される。上述の通り、ホウ素Bは、絶縁層ILI2に達してもよい。
絶縁層GI2が上記の膜厚である場合、半導体層SC2において、ゲート電極GE2と重畳する領域では、ゲート電極GE2だけでなく、絶縁層GI2もマスクとして機能するため、ホウ素Bは注入されない。
【0041】
図4は、トランジスタの断面図である。ホウ素Bの注入により、半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2に重畳しない領域では、半導体層SC2中に欠陥準位が形成される。当該領域では、欠陥準位が形成されることにより、低抵抗化される。当該低抵抗化された領域を、ソース領域RS2及びドレイン領域RD2として用いる。
【0042】
絶縁層GI2のうち、ゲート電極GE2と重畳する領域GI2cでは、ホウ素Bの注入により、過剰酸素が低減される。これにより、トランジスタTr2の信頼性の低下を抑制可能である。
領域GI2cは、チャネル形成領域RC2と重畳する。絶縁層GI2のうち、ゲート電極GE2と重畳しない領域であって、ソース領域RS2と重畳する領域をGI2s、ドレイン領域RD2と重畳する領域をGI2dとする。
【0043】
領域GI2c中のホウ素Bの濃度は、1E+16[atoms/cm
3]以上であればよい。本実施形態において、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E+16は1×10
16(1×10の16乗)を意味する。[atoms/cm
3(原子/立方cm)]は、1立方センチメートル当たりの原子数である。
図3で示したホウ素Bの注入工程では、領域GI2c中のホウ素Bの濃度が上記になるように、印加電圧を定める。
【0044】
ゲート電極GE2は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、またはこれらを含む合金、またはこれらの積層で形成されている。
絶縁層GI2は、半導体層SC2に接する領域は、酸化珪素で形成される。ただし、半導体層SC2に接しない領域は、酸化珪素に代えて、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、またはそれらの積層構造で形成されていてもよい。
【0045】
図5は、トランジスタを構成する層の二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)プロファイルを示す図である。
図5は、トランジスタTr2の絶縁層ILI2、半導体層SC2、絶縁層GI2、ゲート電極GE2における、ホウ素BのSIMSプロファイルを示している。絶縁層ILI2、半導体層SC2、絶縁層GI2、ゲート電極GE2は、下から順にこの順番で積層されている。
図5は、当該積層膜を下から上に向かって分析したSIMSプロファイルである。
図5の横軸は、絶縁層ILI2の下面を基準としたときの当該下面からの距離(深さ)であり、縦軸は、ホウ素濃度である。絶縁層ILI2、半導体層SC2、絶縁層GI2は、それぞれ、膜厚200nmの酸化珪素膜、膜厚30nmのIGZO膜、膜厚100nmの酸化珪素膜である。
【0046】
図5には、ゲート電極GE2及びホウ素Bの印加電圧を変えた条件でのSIMSプロファイルが示されている。ゲート電極GE2が膜厚300nmのモリブデン・タングステン(MoW)膜、印加電圧が29keVでのプロファイルをPF1とする。ゲート電極GE2が膜厚300nmのチタン・アルミニウム・チタン(Ti/Al/Ti(TAT))の積層膜、印加電圧が29keVでのプロファイルをPF2とする。ゲート電極GE2が膜厚100nmのチタン・アルミニウム・チタン(Ti/Al/Ti(TAT))の積層膜、印加電圧が29keVでのプロファイルをPF3とする。ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、印加電圧が29keVでのプロファイルをPF4とする。ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、印加電圧が35keVでのプロファイルをPF5とする。
プロファイルPF3からPF5までと比較して、プロファイルPF1は、絶縁層GI2中のホウ素濃度が低いことが分かる。
【0047】
図6、
図7、
図8、及び
図9は、加速試験下でのトランジスタ特性の経時変化を示す図である。本実施形態では、ゲート電極GE2に正の電圧を印加した、正ゲートバイアス温度ストレス(Positive Bias Temperature Stress:PBTS)試験により、トランジスタTr2のトランジスタ特性の経時変化を調べた。
図6、
図7、
図8、及び
図9は、それぞれ、プロファイルPF1、PF3、PF4、及びPF5の条件のトランジスタTr2における、ゲート電圧-ドレイン電流特性(Vg-Id特性)の経時変化を示している。より具体的には、
図6、
図7、
図8、及び
図9は、経過時間0秒、100秒、500秒、1000秒、1500秒、2000秒、3600秒でのVg-Id特性を示している。
図6、
図7、
図8、及び
図9において、ソース-ドレイン間電圧は、0.1V及び10Vと2つの異なる電圧を印加した。
図6、
図7、
図8、及び
図9それぞれにおいて、ソース-ドレイン間電圧が高くなると、ドレイン電流が高くなる。
【0048】
上述のように、
図6のトランジスタTr2では、ゲート電極GE2が膜厚300nmのモリブデン・タングステン(MoW)膜、ホウ素Bの印加電圧は29keVである。
図6において、経過時間0秒、すなわち初期のしきい値Vthは、0.52Vであり、試験後(経過時間3600秒)でのしきい値変動量ΔVthは、8.12Vであった。
【0049】
トランジスタTr2のしきい値変動量ΔVthは、1V程度であることが好ましい。しきい値変動量ΔVthが1V程度であれば、トランジスタTr2の動作異常が起こる可能性が低いからである。
しかしながら、
図6に示すトランジスタでは、しきい値変動量ΔVthは、8.12Vと、1Vよりはるかに大きい。このように、しきい値変動量ΔVthが大きいトランジスタTr2は、信頼性が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0050】
上述のように、
図7のトランジスタTr2では、ゲート電極GE2が膜厚300nmのチタン・アルミニウム・チタン(TAT)の積層膜、ホウ素Bの印加電圧は29keVである。
図7において、初期のしきい値Vthは、0.80Vであり、試験後でのしきい値変動量ΔVthは、1.35Vであった。このようなしきい値変動量ΔVthが小さいトランジスタTr2は、信頼性の低下が抑制されており、好適である。
【0051】
上述のように、
図8のトランジスタTr2では、ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、ホウ素Bの印加電圧が29keVである。
図8において、初期のしきい値Vthは、0.85Vであり、試験後でのしきい値変動量ΔVthは、0.91Vであった。このようなしきい値変動量ΔVthが小さいトランジスタTr2は、信頼性の低下が抑制されており、好適である。
【0052】
上述のように、
図9のトランジスタTr2では、ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、ホウ素Bの印加電圧は35keVである。
図9において、初期のしきい値Vthは、0.55Vであり、試験後でのしきい値変動量ΔVthは、0.51Vであった。このようなしきい値変動量ΔVthが小さいトランジスタTr2は、信頼性の低下が抑制されており、好適である。
図8及び
図9を比較すると、ゲート電極GE2が同一材料同一膜厚で形成されていても、印加電圧が高い方が、しきい値変動量ΔVthが小さい。印加電圧が高いと、ホウ素Bがより深く注入され、半導体層SC2近傍の絶縁層GI2のホウ素濃度が高くなり、当該領域の欠陥がより修復されるためと考えられる。
【0053】
図10及び
図11は、トランジスタに定電流を流し続けたときのドレイン電流の経時変化を示す図である。
図10は、プロファイルPF4(ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、ホウ素Bの印加電圧が29keV)、
図11は、プロファイルPF5(ゲート電極GE2が膜厚150nmのチタン(Ti)膜、ホウ素Bの印加電圧が35keV)のトランジスタTr2でのドレイン電流の経時変化を示している。
【0054】
図10は、ドレイン電流の変化量ΔI
DRTが、10時間で2.8%減であったことを示している。
図11は、ドレイン電流の変化量ΔI
DRTが、10時間で1.9%減であったことを示している。
図10(プロファイルPF4)及び
図11(プロファイルPF5)のトランジスタTr2は、ドレイン電流の変化量がこのように小さいことが明らかとなった。
図10(プロファイルPF4)よりも
図11(プロファイルPF5)に示すトランジスタの方が、よりドレイン電流の変化量が小さく、信頼性が維持されるということが分かった。
【0055】
図6から
図11までに示すSIMSプロファイルとPBTS試験の結果から、ゲート電極GE2の膜厚とホウ素B注入時の印加電圧をそれぞれ調整することで、トランジスタTr2の信頼性が向上することが分かった。膜厚が100nm以上150nm以下の範囲内では、酸化珪素の終端化に十分な量のホウ素Bが、絶縁層GI2に注入される。これにより、トランジスタTr2がディプリートを起こすことなく、酸化珪素膜の欠陥修復を行うことができる。以上からトランジスタTr2の信頼性が向上する。
【0056】
図12は、トランジスタTr2の積層構成、
図13は、当該積層構成におけるホウ素注入のシミュレーション結果を示す図である。
図12に示すトランジスタTr2では、絶縁層ILI2、半導体層SC2、絶縁層GI2、及びゲート電極GE2として、それぞれ、酸化珪素(SiO)、膜厚30nmのIGZO膜、膜厚100nmの酸化珪素(SiO)膜、膜厚100nmのモリブデン(Mo)膜が、この順に下から積層されている。ホウ素Bは、
図12に示すように、上方から注入されている。
【0057】
図13は、当該積層構成を上から下に向かって分析したシミュレーション結果である。
図13の横軸は、ゲート電極GE2の上面を基準としたときの当該上面からの距離(深さ)であり、縦軸は、ホウ素濃度である。
図13において、ホウ素Bの印加電圧は、30keV、35keV、37.5keV、40keV、及び45keVである。
図13に示すように、上記の印加電圧では、絶縁層GI2におけるホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm
3]以上となる。しかし、印加電圧45keVでは、半導体層SC2までホウ素Bが注入されてしまうことが分かった。よって、ゲート電極GE2が、膜厚100nmのモリブデン膜である場合には、ホウ素Bの印加電圧は、30keV以上40keV以下が好ましい。
図13に示すように、ゲート電極GE2は、5E+19[atoms/cm
3]以上5E+20[atoms/cm
3]以下のホウ素を含んでいる。
【0058】
本実施形態により、信頼性が向上したトランジスタTr2を得ることができる。トランジスタTr2の信頼性が向上することにより、それを有する表示装置DSPの信頼性を向上させることが可能である。
【0059】
<構成例1>
図14は、実施形態における半導体装置の他の構成例を示す断面図である。
図14に示した構成例では、
図3に示した構成例と比較して、ホウ素の注入を2回行うという点で異なっている。
図14及び
図15は、トランジスタTr2の製造工程を示す断面図である。まず基材BA1上に、遮光層LS2、絶縁層ILI1、及び絶縁層ILI2を形成する。基材BA1及び遮光層LS2との間には、
図2と同様に絶縁層を設けてもよい。絶縁層ILI2は、酸化珪素膜である。
【0060】
絶縁層ILI2形成後に、ホウ素Bの注入を行う。当該注入工程を、第1注入工程ともいう。
第1注入工程により、絶縁層ILI2にホウ素Bが印加される(
図14参照)。
より詳細には、絶縁層ILI2のうち、後述する半導体層SC2と接する領域にホウ素Bが注入される。当該領域にホウ素Bが注入されるように、印加電圧を設定すればよい。
【0061】
第1注入工程後、絶縁層ILI2上に半導体層SC2を形成する。半導体層SC2を覆い、半導体層SC2及び絶縁層ILI2に接して、絶縁層GI2を設ける。絶縁層GI2は、酸化珪素膜である。
第1注入工程にて、ホウ素Bが注入された絶縁層ILI2の領域を、ILI2uとする。上述のように、半導体層SC2及び領域ILI2uは接している。領域ILI2uは、絶縁層ILI2及び半導体層SC2の界面近傍に位置している。領域ILI2uは、絶縁層ILI2のうち上層の領域である。絶縁層ILI2、特に領域ILI2uのホウ素濃度は、
図13で示した例と同様、1E+16[atoms/cm
3]以上であればよい。
【0062】
絶縁層GI2形成後に、ホウ素Bの注入を行う。当該注入工程を、第2注入工程ともいう。第2注入工程により、絶縁層GI2にホウ素Bが注入される(
図15参照)。絶縁層GI2のホウ素濃度は、
図13で示した例と同様、1E+16[atoms/cm
3]以上であればよい。
半導体層SC2の上下で接する絶縁層ILI2及びGI2にホウ素Bを注入することにより、半導体層SC2の欠陥を増大させずに、絶縁層ILI2及びGI2中の余剰酸素による欠陥準位を低減させることができる。これにより、トランジスタTr2の信頼性を向上させることが可能である。
【0063】
図16、
図17、及び
図18は、トランジスタTr2の製造工程を示す断面図である。絶縁層GI2上に金属膜を形成し、当該金属膜を成形することにより、ゲート電極GE2を形成する(
図16参照)。
次いで、ゲート電極GE2をマスクとして、半導体層SC2にホウ素Bを注入する(
図17参照)。
半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2と重畳しない領域は、ホウ素Bが注入され、低抵抗化する。当該低抵抗化された領域を、ソース領域RS2及びドレイン領域RD2として用いる(
図18参照)。
半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2と重畳する領域は、ホウ素Bは注入されない。当該領域を、チャネル形成領域RC2として用いる。
【0064】
なお絶縁層ILI2及びGI2の欠陥量によっては、絶縁層ILI2及びGI2の一方、例えば絶縁層ILI2のみホウ素Bを注入してもよい。
本構成例においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
<構成例2>
図19は、実施形態における半導体装置の他の構成例を示す断面図である。
図19に示した構成例では、
図3に示した構成例と比較して、トランジスタTr2がボトムゲート型であるという点で異なっている。
図19及び
図20は、トランジスタTr2の製造工程を示す断面図である。まず基材BA1上に、ゲート電極GE2、絶縁層GI2a、絶縁層GI2bを形成する。基材BA1及び遮光層LS2との間には、
図2と同様に絶縁層を設けてもよい。絶縁層GI2bは、後の工程で形成される半導体層SC2と接する。絶縁層GI2bは酸化珪素であればよい。2層の絶縁層GI2a及びGI2bに代えて、絶縁層1層のみ(絶縁層GI2とする)を形成してもよい。
【0066】
絶縁層GI2b形成後、ホウ素Bを注入する。当該注入工程を、本構成例の第1注入工程とする。実施形態と同様に、絶縁層GI2b中のホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上であればよい。これにより、絶縁層GI2b中の余剰酸素による欠陥準位を低減させることができる。
絶縁層GI2bだけでなく、絶縁層GI2bと絶縁層GI2aを併せた2層の絶縁層(絶縁層GI2とする)中のホウ素濃度が、上記の範囲であってもよい。絶縁層1層のみを形成する場合においても、ホウ素濃度が、上記の範囲であればよい。
【0067】
次いで、絶縁層GI2b上に半導体層SC2を形成する。半導体層SC2は、ゲート電極GE2に絶縁層GI2(GI2a及びGI2b)を挟んで重畳している。
半導体層SC2を覆って金属膜を形成し、一部を除去して、ソース電極SE2及びドレイン電極DE2を形成する。半導体層SC2のうち、ソース電極SE2と重畳する領域がソース領域RS2、ドレイン電極DE2と重畳する領域がドレイン領域RD2である。ソース領域RS2及びドレイン領域RD2との間に、チャネル形成領域RC2が設けられる。
金属膜の一部を除去する際に、チャネル形成領域RC2の上層が一部除去されてもよい。
【0068】
絶縁層GI2b(絶縁層GI2)、半導体層SC2、ソース電極SE2、及びドレイン電極DE2を覆って、絶縁層ILI3を形成する。絶縁層ILI3は、半導体層SC2と接する。絶縁層ILI3は酸化珪素であればよい。
絶縁層ILI3形成後、ホウ素Bを注入する。当該注入工程を、本構成例の第2注入工程とする。絶縁層ILI3中のホウ素濃度は、1E+16[atoms/cm3]以上であればよい。これにより、絶縁層ILI3中の余剰酸素による欠陥準位を低減させることができる。
第2注入工程では、半導体層SC2にホウ素Bが注入されず、絶縁層ILI3にホウ素Bが注入されるように、注入時の印加電圧を決定する。
本構成例においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
本開示において、半導体層SC2と接し、半導体層SC2の下に形成される絶縁層を、第1絶縁層とする。半導体層SC2と接し、半導体層SC2の上に形成される絶縁層を、第2絶縁層とする。
図14から
図18に示すトランジスタTr2では、絶縁層ILI2及びGI2は、それぞれ、第1絶縁層及び第2絶縁層に相当する。
図19及び
図20に示されるトランジスタTr2では、絶縁層GI2及び絶縁層ILI3は、それぞれ、第1絶縁層及び第2絶縁層に相当する。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
GE2…ゲート電極、GI2…絶縁層、GI2a…絶縁層、GI2b…絶縁層、GI2c…領域、ILI1…絶縁層、ILI2…絶縁層、ILI2u…領域、ILI3…絶縁層、ILI4…絶縁層、PF1…プロファイル、PF2…プロファイル、PF3…プロファイル、PF4…プロファイル、PF5…プロファイル、SC1…半導体層、SC2…半導体層、Tr1…トランジスタ、Tr2…トランジスタ。