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特開2022-112361圧電振動子および圧電振動子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112361
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】圧電振動子および圧電振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/05 20060101AFI20220726BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20220726BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20220726BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H03H9/05
H03H3/02 B
H03H9/10
H03H9/19 D
C09J183/05
C09J183/07
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008175
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】乙村 治英
(72)【発明者】
【氏名】山口 章久
(72)【発明者】
【氏名】大代 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 政浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】渕瀬 啓太
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 不二夫
【テーマコード(参考)】
4J040
5J108
【Fターム(参考)】
4J040EK041
4J040EK081
4J040HA066
4J040HB08
4J040JA02
4J040JA13
4J040KA14
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA01
4J040NA19
4J040PA10
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC08
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF11
5J108FF14
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG16
5J108KK03
5J108MM04
(57)【要約】
【課題】動作の信頼性を高めることができる圧電振動子および圧電振動子の製造方法を提供する。
【解決手段】励振電極と励振電極に電気的に接続された接続電極とを有する圧電振動素子と、電極パッドを有するベース部材と、接続電極と電極パッドとを接続する導電性保持部材と、を備え、導電性保持部材は、導電性接着剤の硬化物であり、導電性接着剤は、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)前記(A)と前記(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極と前記励振電極に電気的に接続された接続電極とを有する圧電振動素子と、
電極パッドを有するベース部材と、
前記接続電極と前記電極パッドとを接続する導電性保持部材と、
を備え、
前記導電性保持部材は、導電性接着剤の硬化物であり、
前記導電性接着剤は、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、
(C)前記(A)と前記(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒と
を含む、
圧電振動子。
【請求項2】
前記(C)における白金触媒の配合比が30ppm以下である、
請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記(A)に対する前記(B)のモル比が11以上である、
請求項1または2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記圧電振動素子は、水晶振動素子である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)前記(A)と前記(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む導電性接着剤を、圧電振動素子の接続電極とベース部材の電極パッドとの間に設ける工程と、
前記導電性接着剤を硬化させた導電性保持部材により、前記接続電極と前記電極パッドとを接合する工程と、
を含む、
圧電振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子および圧電振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発振装置や帯域フィルタなどに用いられる基準信号の信号源に、圧電振動子が広く用いられている。圧電振動子は、例えば、ベースとなるパッケージに対して導電性保持部材を介して振動片を接合する。導電性保持部材は、例えば、導電性接着剤の硬化物である。
【0003】
特許文献1には、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子を含有し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を含有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つ水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)触媒量の白金系ヒドロシリル化触媒と、(D)導電性が発現するのに充分な量の導電性粉体と、を含み、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10-1~10-8molの範囲で白金系ヒドロシリル化触媒を用いる導電性接着剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子に結合した水酸基とアルコキシ基を有さない、4量体から20量体までの環状シロキサンの含有量が0.1質量%以下であるオルガノポリシロキサンを100質量部と、(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、アルケニル基、ケイ素原子に結合した水酸基とアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンと、(C)接着性付与剤を少なくとも0.05質量部と、(D)熱伝導性充填剤を100~2000質量部と、(E)ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、(A)のアルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が0.5~10モルとなる量(好ましくは0.5~3モル)であり、(E)は、(A)に対して(E)の金属原子が0.1~0.05質量%の範囲内の量となる、シリコーン接着剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基が分子中に2個以上のオルガノポリシロキサンと、(B)ケイ素原子に結合した水素原子が分子中に2個以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)1分子中に、ケイ素原子に結合するアルコキシ基を少なくとも1個有し、かつ、ケイ素原子に結合するシアノ基含有有機基を少なくとも1個有する接着促進剤と、(D)ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、(B)の添加量は(A)のアルケニル基1モルに対して、(B)のSi-H基が0.1~4.0モルとなる量であり、(D)の配合量は、硬化のための有効量で(A)、(B)、(C)の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1~500ppm、好ましくは0.5~100ppmの範囲である接着促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-119254号公報
【特許文献2】特開2011-153253号公報
【特許文献3】特開2017-88644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術においては、導電性保持部材の形成に用いる成分の一部が未反応のアウトガスとして残存した場合、当該成分が圧電振動子の周波数温度特性に影響を与える虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、動作の信頼性を高めることができる圧電振動子および圧電振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る圧電振動子は、励振電極と励振電極に電気的に接続された接続電極とを有する圧電振動素子と、電極パッドを有するベース部材と、接続電極と電極パッドとを接続する導電性保持部材と、を備え、導電性保持部材は、導電性接着剤の硬化物であり、導電性接着剤は、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)前記(A)と前記(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む。
【0010】
本発明の一側面に係る圧電振動子の製造方法は、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)(A)と(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む導電性接着剤を、圧電振動素子の接続電極とベース部材の電極パッドとの間に設ける工程と、導電性接着剤を硬化させた導電性保持部材により、接続電極と電極パッドとを接合する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性保持部材を介したベース部材と振動片との導電性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2】実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図3】比較例の導電性接着剤の周波数変動を示すグラフである。
図4】実施例1の導電性接着剤の周波数変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧電振動子の一例である水晶振動子の構成について説明する。なお、各図において、X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応している。X軸が電気軸(極性軸)、Y軸が機械軸、Z軸が光学軸に対応している。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に所定角度だけ回転させた軸である。
【0014】
図1及び図2に示すように、水晶振動子1は、圧電振動素子の一例である水晶振動素子10と、ベース部材30と、蓋部材40と、接合部材50と、を備えている。
【0015】
水晶振動素子10は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、圧電効果により水晶を振動させる素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、第1励振電極14aと、第2励振電極14bと、第1引出電極15aと、第2引出電極15bと、第1接続電極16aと、第2接続電極16bとを備えている。
【0016】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶片である。ATカット型の水晶片11は、互いに交差するX軸、Y´軸、及びZ´軸からなる直交座標系において、X軸及びZ´軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y´軸と平行な方向が厚さとなるように形成される。例えば、ATカット型の水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶体を切断及び研磨加工して得られる水晶基板(例えば、水晶ウェハ)をエッチング加工することで形成される。
【0017】
水晶振動素子10は、ATカット型の水晶片11を用いた場合、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶振動素子10は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)を主要振動として用いる。水晶片11のカット角は、例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。また、水晶振動素子は、Z板と呼ばれるカット角の水晶片を用いた音叉型水晶振動素子であってもよい。
【0018】
水晶片11は、例えば、矩形板状をなしており、励振部17と、励振部17に隣接する周辺部18,19とを有している。水晶片11は、いわゆる平板型構造であってもよいが、図1に示すように、いわゆるメサ型構造であってもよい。メサ型構造を有する水晶片11は、第1主面11A及び第2主面11Bの両側において、励振部17が周辺部18,19から突出している。なお、以下の説明においては、第1主面11Aは、水晶片11のY´軸を上から見た、励振部17および周辺部18,19のそれぞれの主たる面を含み、第2主面11Bは、水晶片11のY´軸を下から見た、励振部17および周辺部18,19のそれぞれの主たる面を含むものとする。
【0019】
第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、励振部17に設けられている。第1励振電極14aは水晶片11の第1主面11Aに設けられ、第2励振電極14bは水晶片11の第2主面11Bに設けられている。水晶片11の第1主面11Aを平面視したとき、第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ矩形状をなしており、互いの略全体が重なり合っている。
【0020】
第1引出電極15a及び第2引出電極15bは、周辺部18に設けられている。第1引出電極15aは水晶片11の第1主面11Aに設けられ、第2引出電極15bは水晶片11の第2主面11Bに設けられている。第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。例えば、第1引出電極15aの一端が第1励振電極14aに接続され、第1引出電極15aの他端が水晶片11の第1主面11Aと第2主面11Bとを繋ぐ側面に設けられた側面電極を介して第1接続電極16aに接続されている。また、第2引出電極15bの一端が第2励振電極14bに接続され、第2引出電極15bの他端が水晶片11の第1主面11Aと第2主面11Bとを繋ぐ側面に設けられた側面電極を介して第2接続電極16bに接続されている。
【0021】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、周辺部18に設けられている。第1接続電極16aは水晶片11の第1主面11Aに設けられ、第2接続電極16bは水晶片11の第2主面11Bに設けられている。第1接続電極16aは、第1励振電極14aをベース部材30に電気的に接続するための電極であり、第2接続電極16bは、第2励振電極14bをベース部材30に電気的に接続するための電極である。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、金(Au)を主成分とする電極である。第1接続電極16a及び第2接続電極16bの表面は、例えば、金(Au)を主成分とする金属層により構成されている。
【0022】
ベース部材30は、例えば、絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材からなり、水晶振動素子10を励振可能に保持する。ベース部材30の上面31Aには、水晶振動素子10が搭載され、ベース部材30の下面31Bには、図示しない外部の回路基板が接合される。
【0023】
ベース部材30は、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bを備えている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の上面31Aに設けられている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bのそれぞれの表面は、例えば、金(Au)を主成分とする金属層により構成されている。第1電極パッド33aの表面は第1導電性保持部材36aに接触し、第2電極パッド33bの表面は第2導電性保持部材36bに接触している。
【0024】
ベース部材30は、第1外部電極35a、第2外部電極35b、第3外部電極35c及び第4外部電極35dを備えている。第1外部電極35a~第4外部電極35dは、基体31の下面31Bに設けられている。第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、図示しない外部の基板と水晶振動子1とを電気的に接続するための端子である。第1電極パッド33aは、基体31をY´軸方向に沿って貫通する第1貫通電極34aを介して、第1外部電極35aに電気的に接続されている。第2電極パッド33bは、基体31をY´軸方向に沿って貫通する第2貫通電極34bを介して、第2外部電極35bに電気的に接続されている。第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、電気信号等が入出力されないダミー電極であるが、蓋部材40を接地させて蓋部材20の電磁シールド機能を向上させる接地電極であってもよい。なお、第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、省略されてもよい。
【0025】
ベース部材30は、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを備えている。第1導電性保持部材36aは、第1電極パッド33aおよび第1接続電極16aに接合され、第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2導電性保持部材36bは、第2電極パッド33bおよび第2接続電極16bに接合され、第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、励振部17が励振可能となるように、ベース部材30から間隔を空けて水晶振動素子10を保持している。
【0026】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物であり、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分はシリコーン樹脂である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは導電性粒子を含む。導電性粒子は、例えば銀(Ag)を含む金属粒子である。シリコーン樹脂の弾性率は、広い温度範囲でエポキシ樹脂よりも安定している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分をシリコーン樹脂とすることで、エポキシ樹脂を主成分とする場合に比べて、水晶振動素子10の周波数温度特性が改善される。
【0027】
導電性接着剤は、シリコーン導電性接着剤であり、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)(A)と(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む。(C)における白金触媒の配合比は、導電性接着剤の粘度の上昇を抑えるために、好ましくは、30ppm以下である。導電性接着剤は、好ましくは、(A)に対する(B)のモル比が11以上である。
【0028】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを設ける工程は、例えば、粘度が調整されてペースト状となった導電性接着剤を第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bの上に塗布する塗布工程と、導電性接着剤の上に水晶振動素子10を載置し第1接続電極16a及び第2接続電極16bの表面に濡れ広がった導電性接着剤によって水晶振動素子10を支持させる載置工程と、導電性接着剤を硬化させる硬化工程とを含む。
【0029】
(実施例1)
実施例1の導電性接着剤は、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子を含有し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を含有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンとを含み、(A)と(B)とを合わせたものに対する白金触媒の配合量が20ppmである。白金触媒は、例えば、白金と、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が3%含まれたイソプロピルアルコールとを含む。実施例1の導電性接着剤は、(A)に対する(B)のモル比が11である。実施例1の導電性接着剤の構成成分の重量比は、導電性粒子57%、シリコーン樹脂25%、溶剤18%である。比較例の導電性接着剤は、(A)と(B)とを合わせたものに対する白金触媒の配合量が10ppmであること以外は実施例1の導電性接着剤と共通である。
【0030】
(評価結果)
図3に示す例では、上述した比較例の導電性接着剤について、周波数変動の測定を行った。周波数変動の測定は、例えば、水晶振動素子10の接続電極16a,16bとベース部材30の電極パッド33a,33bとの間に導電性接着剤を設けた水晶振動子1を85℃の恒温槽に入れ、96時間、500時間、1000時間、2000時間後の水晶振動子1の周波数を測定した。同図に示すように、比較例の評価結果によれば、2000時間後の水晶振動子1の周波数変動は-1.6ppm~-5.7ppmとなる。
【0031】
これに対し、図4に示す例では、上述した実施例1の導電性接着剤について、周波数変動の測定を行った。周波数変動の測定は、図3に示した例と同様の方法で行った。同図に示すように、実施例1の評価結果によれば、2000時間後の水晶振動子1の周波数変動は-0.3ppm~-2.7ppmとなる。
【0032】
したがって、図3及び図4を比較して示すように、白金触媒の配合量が20ppmである場合には、白金触媒の配合量が10ppmである場合に比して、水晶振動子1の周波数変動が抑えられる。これは、白金触媒の配合量が20ppmである場合には、白金触媒の配合量が10ppmである場合に比して、導電性接着剤を硬化させる際に、(B)の成分が未反応のアウトガスとして残存することが抑えられる。これにより、残存した(B)の成分が水晶振動素子10に付着し、水晶振動子1の周波数が変動することが抑えられる。
【0033】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0034】
本発明の一態様によれば、励振電極と励振電極に電気的に接続された接続電極とを有する圧電振動素子と、電極パッドを有するベース部材と、接続電極と電極パッドとを接続する導電性保持部材と、を備え、導電性保持部材は、導電性接着剤の硬化物であり、導電性接着剤は、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)(A)と(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む、圧電振動子が提供される。
【0035】
本発明の一態様によれば、(C)における白金触媒の配合比が30ppm以下である、圧電振動子が提供される。
【0036】
本発明の一態様によれば、(A)に対する(B)のモル比が11以上である、圧電振動子が提供される。
【0037】
本発明の一態様によれば、圧電振動素子は、水晶振動素子である、圧電振動子が提供される。
【0038】
本発明の一態様によれば、(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子を有し、ケイ素原子1つに少なくとも1つの水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(C)(A)と(B)を合わせたものに対する配合比が20ppm以上である白金触媒とを含む導電性接着剤を、圧電振動素子の接続電極とベース部材の電極パッドとの間に設ける工程と、導電性接着剤を硬化させた導電性保持部材により、接続電極と電極パッドとを接合する工程と、を含む、圧電振動子の製造方法が提供される。
【0039】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0040】
1…水晶振動子
10…水晶振動素子
11…水晶片
14a…第1励振電極
14b…第2励振電極
15a…第1引出電極
15b…第2引出電極
16a…第1接続電極
16b…第2接続電極
30…ベース部材
33a…第1電極パッド
33b…第2電極パッド
36a…第1導電性保持部材
36b…第2導電性保持部材
40…蓋部材
50…接合部材。
図1
図2
図3
図4