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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112838
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008823
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】濱田 晃一
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理液の温度低下を抑制することにより、基板の処理レートの低下を抑制可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を保持する保持部と、保持部を備えるとともに、保持部に保持された基板に間隔を空けて対向する対向面111を有し、回転可能に設けられた回転体10と、保持部に保持された基板の、対向面111に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を供給する供給部と、対向面111と基板の対向面111に対向する面との間において、基板に非接触で対向する放熱抑制部材51と、放熱抑制部材51を基板1に対して進退させる駆動機構52とを有する保温部50と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持部と、
前記保持部を備えるとともに、前記保持部に保持された前記基板に間隔を空けて対向する対向面を有し、回転可能に設けられた回転体と、
前記保持部に保持された前記基板の、前記対向面に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を供給する供給部と、
前記対向面と前記基板の前記対向面に対向する面との間において、前記基板に非接触で対向する放熱抑制部材と、
前記放熱抑制部材を前記基板に対して進退させる駆動機構と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
複数の前記放熱抑制部材が、前記回転体の回転中心からの距離が異なる位置に、それぞれが独立に前記基板に対して進退可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記放熱抑制部材は、前記回転体の回転中心と同心のリング状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記放熱抑制部材は前記回転体に収納され、
前記放熱抑制部材は、前記対向面から露出して前記基板と対向する放熱抑制面を有し、
前記放熱抑制面は、前記対向面から出没可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、駆動源からの駆動力を、前記放熱抑制部材に非接触で伝達する伝達部を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記回転体は、外部への前記処理液の流出を遮る遮蔽部を有し、
前記遮蔽部は、前記駆動機構と前記放熱抑制部材とを連結する連結部が貫通する貫通孔を有し、
前記連結部と前記貫通孔との間には、ラビリンス構造の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、複数の前記放熱抑制部材を個別に駆動可能に設けられ、
前記基板の膜厚分布の情報に基づいて、前記駆動機構を制御する制御部と、
を有することを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板の膜厚分布の情報に基づいて、いずれかの前記放熱抑制部材を選択して、前記基板に近づく方向に駆動させることを特徴とする請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
対向面に対向するように保持部に保持された基板を、回転体が回転させ、
前記保持部に保持された前記基板の、前記対向面に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を、供給部が供給し、
前記対向面と前記基板の前記対向面に対向する面との間において、放熱抑制部材が前記基板に非接触で進退することを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
前記保持部に対する前記基板の搬入時及び搬出時には、前記放熱抑制部材が前記回転体に収容される収容位置となることにより、前記基板の前記対向面に対向する面と前記対向面との間に、前記基板が搬入及び搬出可能な間隔を形成し、
前記供給部による前記処理液の供給による前記基板の処理時には、前記搬入時及び前記搬出時よりも、前記放熱抑制部材が、前記保持部に保持された前記基板に向けて接近する接近位置となることを特徴とする請求項9記載の基板処理方法。
【請求項11】
複数の前記放熱抑制部材が、前記回転体の回転中心からの距離が異なる位置に、それぞれが独立に前記基板に対して進退可能に設けられ、
前記供給部による前記処理液の供給による基板の処理時には、前記基板の膜厚分布の情報に基づいて、前記基板の処理レートを上げる部分に対応する前記放熱抑制部材が、前記基板に近づく方向に移動することを特徴とする請求項9又は請求項10記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどの基板に積層された膜を、処理液によりエッチングするウェットエッチングの装置として、複数枚の基板を一括して処理液に浸漬させるバッチ式の基板処理装置が存在する。このようなバッチ式の基板処理装置は、複数枚を一括して処理できるので、生産性が高い。
【0003】
但し、バッチ式の基板処理装置は、複数枚の基板を共通の条件の処理液に内に浸漬させるので、各基板に形成された膜厚等の相違に応じて、基板ごとにエッチングの深さ等を細かく調整することが難しい。そこで、基板を回転させながら、基板の回転中心付近にエッチング用の処理液を供給して、基板の表面に処理液を展延させることにより、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が使用されている。
【0004】
エッチング用の処理液としては、フッ酸やリン酸、硫酸などの酸系の液体が用いられる。例えば、酸化膜と窒化膜が積層された基板において、窒化膜をエッチングする場合、処理液としてリン酸を利用する基板処理装置がある。リン酸は、温度が高いほどエッチング能力が高く、リン酸の温度が下がるとエッチング性能が低下してしまう。このため、所望のエッチングレートを得るには、リン酸を高温に維持しなければならない。例えば、リン酸の水溶液を150℃~160℃に加熱して基板に供給することにより、窒化膜をエッチングしている。
【0005】
しかしながら、シリコンウェーハ等の基板は、熱伝達率が高い。すると、基板の表面に供給されたリン酸は、その熱が基板を介して逃げてしまうため、温度が低下しやすい。つまり、回転中心付近に供給されたリン酸は高温が維持されているが、基板の外周に向かって移動するに従って、放熱によりリン酸の温度が低下していくことになる。
【0006】
このように基板の表面上の位置によって、リン酸の温度が相違すると、基板の位置によってエッチングレートに差が生じるため、基板の全体を均一に処理することが難しくなる。これに対処するため、基板の表面上のリン酸の温度を維持しながら、エッチング処理する基板処理装置がある(特許文献1参照)。
【0007】
この基板処理装置は、基板表面の上方に、基板の表面を覆う程度の大きさのヒータプレートを設け、ヒータプレートを基板の表面に接近させて、ヒータプレートの中心付近に設けられた吐出口から高温のリン酸を供給する。基板とヒータプレートとの間の距離は、数ミリ程度であり、リン酸はヒータプレートに接液もしくは一部接液して、加熱されながら基板表面上を流れることになる。これにより、リン酸のエッチング性能を維持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2011-090141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、基板は熱伝導率が高い。そのため、基板の表面に供給されたリン酸の温度を、ヒータプレートからの加熱によって維持しようとしても、基板の裏面から熱が逃げてしまう。特に、基板は回転しているため、基板の外周に行くほど周速が速く、熱が逃げやすくなり、リン酸の温度が下がる傾向にある。つまり、基板中心から外周に向かってリン酸の温度が下がるため、エッチングレートは、基板の中心から外周に向かって低下していくことになる。
【0010】
前述の基板処理装置では、ヒータプレート内のヒータを、基板の中心から外周に向かって内周領域、中間領域、外周領域の3つのエリアに分割することで、エリア毎に温度を制御することも可能にしている。そこで、外周の温度が下がる傾向にあることから、3つのエリアのうち、外周領域のヒータを、内周領域のエリアのヒータより温度を高くして、外周の温度が下がることを抑制している。しかし、このように処理液を加熱する温度を制御したとしても、基板の熱伝達率が高いために、基板の裏面からの放熱を抑えることはできない。さらに、回転する基板の外周側は周速があるため、外周側の処理液の温度は下がりやすい。
【0011】
このように、基板の外周側は温度が低下しやすいため、処理液による処理レートが低下する。このため、基板の面内の処理の要求が厳しい場合には、処理レート及び均一性ともに要求を満たすことが困難になる。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、処理液の温度低下を抑制することにより、基板の処理レートの低下を抑制できる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基板処理装置は、基板を保持する保持部と、前記保持部を備えるとともに、前記保持部に保持された前記基板に間隔を空けて対向する対向面を有し、回転可能に設けられた回転体と、前記保持部に保持された前記基板の、前記対向面に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を供給する供給部と、前記対向面と前記基板の前記対向面に対向する面との間において、前記基板に非接触で対向する放熱抑制部材と、前記放熱抑制部材を前記基板に対して進退させる駆動機構と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、処理液の温度低下を抑制することにより、基板の処理レートの低下を抑制可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の基板処理装置の構成を示す図である。
図2図1の基板処理装置の内部構造を示す軸方向の断面図である。
図3図2の基板処理装置の放熱抑制部材の動作を示す説明図である。
図4図1の基板処理装置の保持部の動作を示す平面図である。
図5図1の基板処理装置の処理液保持部を示す平面図である。
図6図1の基板処理装置の対向面及び放熱抑制部材を示す平面図である。
図7】実施形態の基板処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
本実施形態の基板処理装置1は、図1に示すように、基板100を回転体10とともに回転させながら、供給部40において加熱された処理液を、基板100の一方の面(以下、表面とする)に供給することにより、表面を処理する。このとき、図2及び図3に示すように、駆動機構52により、放熱抑制部材51を基板100の他方の面(以下、裏面とする)に接近させて、放熱抑制部材51と基板100との間の空間を狭めることにより、裏面からの熱を逃げ難くして、処理液の温度低下を抑制する。放熱抑制部材51は、基板100の裏面とこれに対向する回転体10の対向面111との間において、基板100に非接触で、且つ基板100に対して進退可能である。
【0017】
なお、本実施形態により処理される基板100は、例えば、窒化膜が形成されたシリコンウェーハであり、処理液としては、窒化膜をエッチングするためのリン酸を用いる。
【0018】
[構成]
基板処理装置1は、図1及び図2に示すように、回転体10、回転機構20、保持部30、供給部40、保温部50、制御部60を有する。
【0019】
(回転体)
回転体10は、保持部30に保持された基板100に間隔を空けて対向する対向面111を有し、保持部30とともに回転可能に設けられている。回転体10は、テーブル11、ベース12を有する。テーブル11は、一端が対向面111によって塞がれた円筒形状である。対向面111は、基板100よりも大きな径の円形の面である。対向面111の中央には、円形の貫通孔11aが形成されている。テーブル11の側面112には、処理液を排出する貫通孔である排出口11bが形成されている。
【0020】
ベース12は、テーブル11と同径で、対向面111と反対側に接続された円筒形状の部材である。ベース12は、テーブル11を支持する構造を有する部材である。ベース12には、テーブル11との境界に遮蔽部121が設けられている。遮蔽部121は、対向面111と平行な円板であり、貫通孔11aから流入した処理液の下方への流出を遮る。回転体10を構成するテーブル11及びベース12は、処理液に対して耐性を有する材料で形成されている。例えば、PTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂により、回転体10を構成することが好ましい。なお、このような回転体10は、図示しない設置面又は設置面に設置された架台に固定された固定ベース13上に、後述する回転機構20によって回転可能に設けられている。固定ベース13には、防護壁13aが設けられている。防護壁13aは、ベース12と同心であって、固定ベース13上に立ち上げられた二重の円筒形の壁であり、ベース12の下縁を非接触で挟むように覆っている。これにより、防護壁13aとベース12との間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、ベース12の外壁に沿って流れ落ちる処理液が、ベース12の内部に流入し難い構成となっている。
【0021】
(回転機構)
回転機構20は、回転体10を回転させる機構である。回転機構20は、固定軸21、駆動源22を有する。固定軸21は、回転体10と同軸に配置された円筒形状の部材である。固定軸21の下端部は、後述する駆動源22とともに、固定ベース13に固定されている。遮蔽部121には、固定軸21が挿通された貫通孔121aが設けられている。固定軸21の上端には、ノズルヘッド211が設けられ、対向面111の貫通孔11aに対向している。ノズルヘッド211には、図示はしないが、天面に先端を開口させた複数のノズルが設けられている。ノズルには、固定軸21の内部に設けられ、洗浄水、処理液等を供給する管路に接続されているが、詳細は省略する。
【0022】
貫通孔121aの周縁には、貫通孔11aに向かって突出した筒状の環状壁121bが立設されている。ノズルヘッド211は、遮蔽部121と非接触であり、環状壁121bを、隙間を空けて覆うように収容する環状溝131cを有している。これにより、環状壁121bと環状溝131cとの間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、対向面111の貫通孔11aを介して流入した処理液が、貫通孔121aを通って固定軸21に沿って外部へ流出することが抑制される。
【0023】
駆動源22は、中空の回転子22aとこれを回転させる固定子22bを有する中空モータである。駆動源22は、固定軸21とともに、固定ベース13に固定されている。貫通孔121aの環状壁121bと反対側には、固定軸21が非接触で挿通された回転筒121dが設けられている。駆動源22の中空の回転子22aは、回転筒121dに接続されるとともに、固定軸21が非接触で挿通されている。駆動源22は、固定子22bのコイルに通電することにより、回転子22aとともに回転筒121dが回転するので、ベース12とともにテーブル11が回転する。なお、基板処理装置1において、図2の一点鎖線の上側が、基板100とともに回転する部分であり、下側が基板100とともに回転しない部分である。
【0024】
(保持部)
保持部30は、対向面111と平行に且つ間隔を空けて、基板100を保持する。保持部30は、回動部材31、保持ピン32、駆動機構33を有する。回動部材31は、図4に示すように、基板100の周囲に沿って、等間隔で複数配置された円柱形状の部材である。回動部材31は、固定軸21と平行な軸を中心に回動可能に設けられている。回動部材31の天面は、対向面111から露出している。
【0025】
保持ピン32は、回動部材31の天面の回動の中心から偏心した位置に立設されている。保持ピン32は円柱形状であり、基板100の縁部が嵌る縊れを有する。保持ピン32は、回動部材31の回動に従って、基板100の縁部に接することにより基板100を保持する保持位置(図4(A)参照)と、基板100の縁部から離れることにより基板100を解放する解放位置(図4(B)参照)との間を移動する。
【0026】
駆動機構33は、回動部材31を回動させることにより、保持ピン32を保持位置と解放位置との間で移動させる。駆動機構33は、駆動軸331、小ギヤ332、大ギヤ333を有する。
【0027】
駆動軸331は、回動部材31の天面と反対側に、回動部材31の回動の軸と同軸に設けられた円柱形状の部材である。遮蔽部121には、駆動軸331が挿通された貫通孔121cが設けられている。貫通孔121cの周縁には、回動部材31に向かって突出した筒状の環状壁121eが立設されている。回動部材31は、遮蔽部121と非接触であり、環状壁121eを、隙間を空けて覆うように収容する環状溝31aを有している。これにより、環状壁121eと環状溝31aとの間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、処理液が、貫通孔121cを通って駆動軸331に沿って外部へ流出することが抑制される。
【0028】
小ギヤ332は、駆動軸331の回動部材31と反対側の端部に設けられたセクタギヤである。大ギヤ333は、小ギヤ332に対応して、ギヤ溝が間欠的に形成されたギヤである。大ギヤ333は、回転筒121dの外周に軸受(図示せず)によって回転自在に設けられている。大ギヤ333は、小ギヤ332と対応する間隔で、6つの凸部が周方向に所定間隔で形成されてなり、各凸部の先端外周面に、小ギヤ332に噛合するギヤ溝が形成されている。
【0029】
大ギヤ333は、図示しないバネ等の付勢部材によって、図4(A)に矢印αで示す回転方向(反時計方向)に付勢されている。これにより、小ギヤ332は、矢印β1で示す時計方向に付勢されるため、小ギヤ332の回動に回動部材31が連動し、保持ピン32が回転体10の中心方向へ移動して、基板100に当接する保持位置に維持される。なお、基板処理時には、この保持位置を維持した状態で、回動部材31、駆動軸331、保持ピン32、小ギヤ332、大ギヤ333は、回転体10とともに回転する。
【0030】
また、大ギヤ333は、図示しないストッパ機構によって、回転が阻止される。大ギヤ333の回転が阻止された状態で、図4(B)に示すように、回転体10を矢印γ方向へ回転させると、回転が阻止された大ギヤ333に噛合している小ギヤ332が、矢印β2で示す反時計方向に回動する。これにより、回動部材31が回動するので、保持ピン32が基板100の縁部から離れる方向に移動して、解除位置に来る。
【0031】
(供給部)
供給部40は、図1に示すように、基板100の表面、つまり保持部30に保持された基板100の対向面111と反対側の面に、処理液を供給する。供給部40は、処理液供給機構41、処理液保持部42、昇降機構43、加熱部44を有する。
【0032】
処理液供給機構41は、3種の処理液を供給する処理液供給部411、412、413を有する。処理液供給部411は、処理液として純水(HО)を供給する。処理液供給部412は、処理液としてリン酸(HPO)を含む水溶液(以下、リン酸溶液とする)を供給する。処理液供給部413は、フッ化水素(HF)を含む水溶液(以下、フッ酸溶液とする)を供給する。処理液供給部411、412、413は、それぞれの処理液を貯留する処理液槽41aを有している。
【0033】
各処理液槽41aからは、個別送通管41bが並列的に処理液供給管41cに結合されている。処理液供給管41cは、その先端部が保持部30に保持された基板100に対向している。これにより、各処理液槽41aからの処理液は、個別送通管41b及び処理液供給管41cを介して、基板100の表面に供給される。
【0034】
各個別送通管41bには、それぞれ流量調整バルブ41d、流量計41eが設けられている。各流量調整バルブ41dを調整することにより、対応する処理液槽41aから処理液供給管41cに流れ込む処理液の量を調整する。各個別送通管41bを流れる処理液の量は、対応する流量計41eにより検出される。なお、各処理液槽41aに貯留される処理液の生成設備及び生成方法は特定のものには限定されない。
【0035】
処理液保持部42は、基板100よりも大径の円形であり、周縁部に回転体10と反対側に立ち上がった壁が形成されることにより、盆形状をなしている。処理液保持部42は、耐熱性と耐液性を両立させるため、二重構造となっている。つまり、耐熱性を有する材料によって基体が形成され、その周囲が処理液に対して耐性のある材料で覆われている。例えば、石英を基体として、その周囲にPTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂のカバーを形成することにより、処理液保持部42が構成されていることが好ましい。処理液保持部42の外底面は、基板100に対向している。
【0036】
処理液保持部42には、処理液供給管41cの先端が挿通されて、基板100側に露出する吐出口42aが形成されている。吐出口42aは、図5に示すように、回転体10の回転の軸からずれている。これは、基板100の回転に伴って、基板100における吐出口42aとの対向部分を逐次変化させることにより、処理液の温度の均一化に寄与するためである。
【0037】
昇降機構43は、処理液保持部42を、基板100に対して接離する方向に移動させる機構である。昇降機構43としては、例えば、シリンダ、ボールねじ機構など、回転体10の軸に平行な方向に処理液保持部42を移動させる種々の機構を適用可能であるが、詳細は省略する。
【0038】
上方に待機している処理液保持部42と対向面111との間には、図示しない搬送ロボットのハンドに支持された基板100が搬入可能となる間隔D1が設けられる。昇降機構43は、処理液保持部42を、基板100の表面との間に間隔D2が形成される位置まで下降させる。この間隔D2は、例えば、4mm以下であるが、処理液が流れるように、処理液保持部42と基板100とは非接触が維持される。
【0039】
加熱部44は、供給部40により供給される処理液を加熱する。加熱部44は、処理液保持部42の基板100に対向する面と反対側の面に設けられたヒータ441を有する。ヒータ441は、円形のシート状である。ヒータ441は、発熱量を個別に制御可能な、例えば、3つのヒータ片によって構成されている。つまり、円形状のヒータ片の外側に、円環状の2つのヒータ片が同心で配置されている。このようなヒータ441によれば、同心で配置された3つのヒータ片の発熱量を個別に制御することで、同心状の部分毎に処理液の温度を変えることができる。なお、加熱部44の径は、基板100の外周側の温度低下を抑制するために、基板100の径以上、つまり同等かより大きな径であることが好ましい。
【0040】
ヒータ441には、処理液供給管41cが挿通された貫通孔441aが形成されている。貫通孔441aの位置は、処理液保持部42の吐出口42aに重なって連続する位置であり、回転体10の軸からずれている。なお、処理液は、供給部40における図示しない加熱装置によって予め設定された温度まで加熱されており、基板100に供給されて加熱部44により加熱される。これにより、基板100に供給された処理液を、予め設定された温度を維持したまま基板100の全面に行き渡らせることができる。特に、外周側のヒータ441を高温とすることにより、温度低下しやすい基板100の外周側の温度を上げる効果が得られる。
【0041】
(保温部)
保温部50は、図2及び図3に示すように、回転体10の対向面111と基板100との間において、基板100に非接触で対向する放熱抑制部材51を有する。本実施形態においては、図6に示すように、複数の放熱抑制部材51が、回転体10の回転中心からの距離が異なる位置に、それぞれが独立して基板100(基板100の裏面)に対して進退可能に設けられている。回転体10の回転中心に近い内周側から外周側に向かって、放熱抑制部材51A、放熱抑制部材51B、放熱抑制部材51Cとなっている。
【0042】
3つの放熱抑制部材51A、51B、51Cの基板100に対向する面は、放熱抑制面511a、511b、511cとして構成されている。3つの放熱抑制部材51A、51B、51Cは、回転体10の回転中心と同心のリング状である。つまり、径の異なるリング状の放熱抑制部材51A、51B、51Cが、回転体10の回転中心と同心で配置され、それぞれの上面が、放熱抑制面511a、511b、511cとなっている。本実施形態の放熱抑制部材51A、51B、51Cは、同心円状に配置されたリング状のプレートである。ここで、最外周の放熱抑制部材51Cの径、つまり放熱抑制面511cの径は、基板100の径以上となっている。つまり、放熱抑制面511cは、その最外周が、基板100の最外周と同じ位置か又はさらに外側に位置するように、径が設定されている。本実施形態では、放熱抑制面511cの径は、基板100よりも大きい。但し、図6に示すように、放熱抑制面511cの外縁は、保持部30の回動部材31がある部分だけ、回動部材31を回避するように、回転体10の回転中心側である内側に窪むように湾曲している。なお、以下の説明では、3つの放熱抑制部材51A、51B、51C、放熱抑制面511a、511b、511cを区別しない場合には、放熱抑制部材51、放熱抑制面511として説明する。
【0043】
対向面111には、放熱抑制部材51が収容される窪みが設けられている。各放熱抑制部材51は、テーブル11に収容され、テーブル11の一部又は回転体10の一部として構成されている。このため、各放熱抑制部材51は、回転体10とともに回転する。つまり、放熱抑制部材51は、回転体10に収容される収容位置と、基板100に向けて接近する接近位置との間で移動可能に設けられている。放熱抑制面511は、対向面111から露出して、基板100と対向する。放熱抑制部材51の移動に従って、各放熱抑制面511は、対向面111から出没可能に設けられている。放熱抑制部材51が収容位置にある場合の放熱抑制面511は、対向面111と面一となる。放熱抑制面511が対向面111と面一になることにより、基板100の搬入時及び搬出時、搬送ロボットのハンドを基板100の裏面と回転体10の対向面111との間に挿入可能な間隔が形成される。放熱抑制部材51が接近位置にある場合の放熱抑制面511は、対向面111から突出して基板100の裏面に接近する。
【0044】
また、保温部50は、放熱抑制部材51を基板100に対して進退させる駆動機構52を有する。駆動機構52は、放熱抑制部材51を個別に駆動することにより、放熱抑制面511を移動させる。
【0045】
駆動機構52は、放熱抑制部材51毎に独立して設けられている。各駆動機構52は、駆動源521、リンクアーム522、付勢アーム523、伝達部524、連結部525を有する。駆動源521は、回転体10の軸に平行な方向に進退する駆動ロッドを有するシリンダである。駆動源521は、固定ベース13から立ち上げられた支持壁13bに支持されている。リンクアーム522は、固定ベース13から立ち上げられた支柱13cに、軸522aを中心に回動可能に設けられ、一端が駆動源521の駆動ロッドに回動可能に連結されている。付勢アーム523は、駆動ロッドと平行な方向に進退可能な部材であり、下端がリンクアーム522の他端に回動可能に連結されている。付勢アーム523の上端には、ピン523aが立設されている。
【0046】
伝達部524は、非接触で動力を伝達する部材である。伝達部524は、一対の同径のリング状の磁石であるリングマグネットの組が、放熱抑制部材51A、51B、51Cに対応して3組設けられている。つまり、反発力によって非接触で上下に同軸で配置されたリングマグネット524A、524aの組、リングマグネット524B、524bの組、リングマグネット524C、524cの組が、内周側から外周側に同軸で配置されている。下方のリングマグネット524a、524b、524cは、付勢アーム523のピン523aに支持されており、付勢アーム523の上下動に応じて昇降する。上方のリングマグネット524A、524B、524Cは、リングマグネット524a、524b、524cの昇降に従って昇降する。
【0047】
連結部525は、回転体10の軸に平行に配置され、一端がそれぞれリングマグネット524A、リングマグネット524B、リングマグネット524Cに支持され、他端が放熱抑制部材51A、51B、51Cに連結されている。このため、駆動源521の下方への駆動力が、リンクアーム522を回動させて付勢アーム523を上昇させ、伝達部524、連結部525を介して、放熱抑制部材51を上昇させる。
【0048】
伝達部524のリングマグネット524A、524B、524C及び連結部525は、回転体10とともに回転する。一方、リングマグネット524a、524b、524cは回転しない。つまり、駆動源521、リンクアーム522、付勢アーム523は、上記のように固定ベース13に固定されていて回転せず、付勢アーム523に支持されたリングマグネット524a、524b、524cも回転しない。これにより、非接触の伝達部514によって、回転体10とともに放熱抑制部材51が回転することを許容しつつ、放熱抑制部材51の昇降を可能としている。このため、放熱抑制部材51は、基板100に対して進退可能となる。なお、図6に示すように、駆動機構52は、放熱抑制部材51毎に一対、つまり2か所を支持するように設けられている。
【0049】
遮蔽部121には、図2に示すように、各連結部525が挿通された貫通孔121fが設けられている。貫通孔121fの周縁には、放熱抑制部材51に向かって突出した筒状の環状壁121gが立設されている。連結部525は遮蔽部121と非接触であり、拡径した部分に、環状壁121gを、隙間を空けて覆うように収容する環状溝525aが設けられている。これにより、環状壁121gと環状溝525aとの間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、処理液が、貫通孔121fを通って連結部525に沿って外部へ流出することが抑制される。
【0050】
(制御部)
制御部60は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部60は、基板処理装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。つまり、制御部60は、回転機構20、処理液供給機構41、昇降機構43、加熱部44、駆動機構52などを制御する。
【0051】
本実施形態の制御部60は、基板100の面内における内周側、中間、外周側の処理レートの違いを、実験や実際の処理において検出しておき、この処理レートの相違に応じて、放熱抑制部材51を上昇させる。放熱抑制面511を基板100に近づけることにより、処理液の温度低下が抑制された処理レートが上がるため、検出された処理レートが低い位置の放熱抑制部材51を上昇させる。
【0052】
また、制御部60は、基板100の膜厚分布の情報に基づいて、放熱抑制部材51の昇降を制御できる。例えば、制御部60は、膜厚分布の情報に基づいて、いずれかの放熱抑制部材51を選択して、基板100に近づく方向に駆動する。膜厚分布の情報とは、基板100の面内において、除去すべき膜の厚さがどの位置が厚く、どの位置が薄いかを示す情報である。この情報は、例えば、基板100の内周領域、中間領域、外周領域における厚さの程度を数値で示した情報とすることができる。
【0053】
また、前工程における装置によって、膜厚分布が決まることから、前工程の装置と紐づけられた膜厚分布があらかじめメモリに記憶されており、装置を識別する情報に基づいて、膜厚分布が決定できるようにしてもよい。このような装置を識別する情報も、膜厚分布の情報に含まれる。膜厚分布の情報は、制御部60に接続された入力装置、通信装置を介してあらかじめ入力されてメモリに記憶される。
【0054】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、上記の図1~6に加えて、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、以下のような手順により基板を処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0055】
まず、図1に示すように、供給部40の処理液保持部42は上方の待機位置にあり、図2図3(A)に示すように、保温部50の放熱抑制面511は、回転体10の対向面111と面一となっている。このとき、処理液保持部42と対向面111との間には、図示しない搬送ロボットのハンドに支持された基板100が搬入可能となる間隔D1が設けられている。また、基板100の裏面と対向面111との間には、基板100を支持する搬送ロボットのハンドを挿入可能な間隔d1が設けられている。つまり、基板100の搬入時及び搬出時、搬送ロボットのハンドが基板100の裏面と回転体10との間に挿入されるときに邪魔にならない。
【0056】
また、あらかじめヒータ441に通電することにより、処理液保持部42の基板100に対向する面と逆側の面が加熱され、処理液保持部42が所定温度(例えば、温度範囲180℃~225℃内の温度)に保持されている。なお、例えば、外周領域は放熱により最も温度が低下するため、外周領域が、他の領域よりも高温となるように加熱してもよい。
【0057】
この状態で、図1及び図4(A)に示すように、搬送ロボットのハンドに搭載された基板100が、処理液保持部42と回転体10との間に搬入され、その周縁が複数の保持ピン32に支持されることにより、回転体10の対向面111上に保持される(ステップS01)。このとき、基板100の中心と回転体10回転の軸とが合致するように位置決めされる。
【0058】
次いで、回転体10が、比較的低速な所定速度(例えば、50rpm程度)にて回転する。これにより、基板100が保持部30とともに前記所定速度にて回転する(ステップS02)。
【0059】
そして、処理液保持部42の吐出口42aから、フッ酸溶液が、処理液保持部42と基板100の表面との間の隙間に供給される(ステップS03)。回転する基板100の表面にフッ酸溶液が供給されると、そのフッ酸溶液が基板100の外周に向けて順次移動するため、基板100の表面がエッチングされて、酸化膜、有機物が除去される。
【0060】
なお、基板100の外周に向かって流れ出す処理液は、図2の白抜きの矢印に示すように、保持ピン32の隙間から外部に排出される。また、回転体10の内部に流入した排液は、排出口11bから排出される。また、遮蔽部121の貫通孔121a、121c、121fの周囲は、ラビリンス構造となっているため、ベース12内に処理液が流出することが抑制される。この流れは、以下に述べる処理液でも同様である。
【0061】
次に、処理液保持部42は、フッ酸溶液の供給を停止して(ステップS04)、吐出口42aから、純水を処理液保持部42と基板100の表面との間の隙間に供給する(ステップS05)。回転する基板100の表面に純水が供給されると、その純水が基板100の外周に向けて順次移動することにより、基板100の表面のフッ酸が洗い流される。そして、処理液保持部42は、純水の供給を停止する(ステップS06)。
【0062】
処理液保持部42が、基板100の表面との間に所定の間隔D2(例えば、4mm以下)が形成される位置まで下降する(ステップS07)。そして、保温部50のあらかじめ設定された放熱抑制部材51が上昇して、基板100の対向面111に対向する面との間隔d1を、より接近した間隔d2まで狭める(ステップS08)。
【0063】
例えば、図3(B)に示すように、外周領域の放熱抑制部材51Cを駆動する駆動源521が動作すると、リンクアーム522が回動して付勢アーム523が上方に付勢される。すると、外周領域のリングマグネット524cが上昇するので、これに対応するリングマグネット524Cが反発力によって上昇する。これにより、連結部525が上昇して、放熱抑制部材51Cを上方に付勢するので、放熱抑制面511cが基板100に接近する。
【0064】
この動作は、図3(C)、(D)に示すように、放熱抑制面511b、511aを基板100に接近させる場合も同様である。なお、3つの放熱抑制面511a、511b、511cのいずれを基板100に接近させるか、接近させないかは自由に制御可能である。例えば、中間領域の膜厚が厚い基板100の場合に、放熱抑制面511bのみを基板100に接近させてもよい。この場合に、さらに外周領域の温度低下を考慮して、放熱抑制面511cも基板100に接近させてもよい。
【0065】
処理液保持部42は、リン酸を、処理液保持部42と基板100の表面との間の隙間に供給する(ステップS09)。このように、処理液保持部42と基板100の表面との間に供給されるリン酸溶液は、ヒータ441によって加熱される処理液保持部42によって加熱されて高温となっている。
【0066】
この状態で、リン酸溶液が処理液保持部42の吐出口42aから連続的に供給されると、基板100の表面に、リン酸溶液が基板100の外周に向けて順次移動することにより、基板100の表面の純水がリン酸によって置換されつつ、エッチングにより窒化膜が除去される。
【0067】
基板100の中心付近に供給されたリン酸溶液は、基板100の外周へ移動するに従って熱が逃げ易くなるが、本実施形態においては、基板100と対向面111との間隔d1が、放熱抑制面511cの基板100への接近によって、間隔d2にまで狭められて、基板100の裏面の放熱空間が狭く熱がこもり易くなるとともに、放熱抑制部材51Cの断熱によって外部への放熱が遮蔽される効果と相俟って、基板100の裏面からの放熱が抑制される。これにより、リン酸溶液の温度低下による処理レートの低下が抑制される。所定の処理時間が経過すると、処理液保持部42は、リン酸溶液の供給を停止する(ステップS10)。
【0068】
次に、処理液保持部42は、純水を、吐出口42aから処理液保持部42と基板100の表面との間の隙間に供給する(ステップS11)。回転する基板100の表面に純水が供給されると、その純水が基板100の外周に向けて順次移動することにより、基板100の表面のリン酸が洗い流される。そして、所定の洗浄時間が経過すると、処理液保持部42は、純水の供給を停止する(ステップS12)。
【0069】
基板100が回転を停止して、放熱抑制部材51Cが下降し、放熱抑制面511cが対向面111と面一となり(ステップS13)、処理液保持部42が上昇する(ステップS14)。なお、放熱抑制部材51Cの下降は、リン酸溶液を供給停止した直後でも良い。そして、搬送ロボットのハンドが基板100の下に挿入され、保持部30による基板100の保持が解放され、搬送ロボットのハンドによって基板100が搬出される(ステップS15)。
【0070】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の基板処理装置1は、基板100を保持する保持部30と、保持部30を備えるとともに、保持部30に保持された基板100に間隔を空けて対向する対向面111を有し、回転可能に設けられた回転体10と、保持部30に保持された基板100の、対向面111に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を供給する供給部40と、対向面111と基板100の対向面111に対向する面との間において、基板100に非接触で対向する放熱抑制部材51と、放熱抑制部材51を基板100に対して進退させる駆動機構52とを有する保温部50と、を有する。
【0071】
本実施形態の基板処理方法は、対向面111に対向するように保持部30に保持された基板100を、回転体10が回転させ、保持部30に保持された基板100の、対向面111に対向する面とは反対側の面に、加熱された処理液を供給部40が供給し、対向面111と基板100の対向面111に対向する面との間において、放熱抑制部材51が基板100に非接触で進退する。
【0072】
このため、放熱抑制部材51を基板100に接近させることにより、基板100の裏面からの放熱を抑えることができるので、処理液の温度低下が抑制され、基板100の処理レートの低下を抑制できる。なお、例えば、本実施形態のように、放熱抑制部材51の径を、基板100の径以上とすることにより、放熱抑制部材51の外周が、放熱抑制温度低下しやすい基板100の外周と同じ位置か外側に位置することになり、より熱がこもり易くなり、保温効果を高めることができる。また、処理液の加熱温度を調整する場合、つまり、処理液の温度を処理液保持部42の加熱部44によって調整する場合には、温度変化が反映するまでには時間がかかるが、本実施形態は、放熱抑制部材51の移動により、基板100の裏面からの放熱を抑えるため、応答性が良い。すなわち、処理液の温度低下を防いで、所望の温度になるまでの時間を短くすることができる。また、加熱部44に着目すると、加熱部44の出力を必要以上に上げなくてもよいので、消費電力を抑制できる。
【0073】
(2)複数の放熱抑制部材51が、回転体10の回転中心からの距離が異なる位置に、それぞれが独立して基板100に対して進退可能に設けられている。
【0074】
基板100の回転中心からの距離によって、処理液の温度が異なり、処理レートが異なる。本実施形態では、処理液の温度が低い箇所や、処理レートが低い箇所の放熱抑制部材51を基板100に接近させて温度低下を抑制して、処理レートを向上させることができるので、面内の処理の均一化が可能となる。また、基板100の個体差に応じて、接近させる放熱抑制部材51を変えることにより、バッチ処理では困難な面内の処理の調整ができる。さらに、敢えて面内での位置における処理レートを変えることもできる。
【0075】
(3)放熱抑制部材51は、回転体10の回転中心と同心のリング状である。このため、同心円状に異なる温度分布、処理レートを補正して、面内の処理の均一化を図ることができる。
【0076】
(4)放熱抑制部材51は、回転体10に収納され、放熱抑制部材51には、対向面111から露出して基板100と対向する放熱抑制面511を有し、放熱抑制面511は、対向面111から出没可能に設けられている。例えば、保持部30に対する基板100の搬入時及び搬出時には、放熱抑制部材51が回転体10に収容される収容位置となることにより、基板100の対向面111に対向する面と対向面111との間に、基板100が搬入及び搬出可能な間隔を形成し、供給部40による処理液の供給による基板100の処理時には、搬入時及び搬出時よりも、放熱抑制部材51が、保持部30に保持された基板100に向けて接近する接近位置となる。このため、基板100と対向面111との間に、基板100の搬入搬出のためのスペースを確保しつつ、処理中は放熱抑制面511を基板100に接近させて、処理レートの低下を抑制できる。
【0077】
(5)駆動機構52、駆動源521からの駆動力を、放熱抑制部材51に非接触で伝達する伝達部524を含む。このため、駆動機構52の回転体10とともに回転する部分と、固定された部分とが接触しないので、摺動による塵埃の発生が防止される。
【0078】
(6)回転体10は、外部への処理液の流出を遮る遮蔽部121を有し、遮蔽部121は、駆動機構52と放熱抑制部材51とを連結する連結部525が貫通する貫通孔121fを有し、連結部525と貫通孔121fとの間には、ラビリンス構造の隙間が形成されている。このため、遮蔽部121からの処理液が、貫通孔121fを通って連結部525に沿って外部へ流出することが抑制される。したがって、本実施形態のように、回転機構20、駆動機構33、昇降機構43、駆動機構52等の装置の下方に配置された部材が、処理液によって影響を受けることが防止される。
【0079】
(7)駆動機構52は、複数の放熱抑制部材51を個別に駆動可能に設けられ、基板100の膜厚分布の情報に基づいて、駆動機構52を制御する制御部60を有する。このため、基板100の膜厚分布の個性に応じて、処理レートを調整することができる。
【0080】
例えば、制御部60は、基板100の膜厚分布の情報に基づいて、いずれかの放熱抑制部材51を選択して、基板100に近づく方向に駆動させる。より具体的には、基板100の膜厚分布の情報に基づいて、基板100の処理レートを上げる部分に対応する放熱抑制部材51が、基板100に近づく方向に移動する。これにより、基板100の所望の領域の処理レートを高めることができる。膜厚の厚い領域に対応する放熱抑制部材51を、他の領域の放熱抑制部材51よりも近づけることにより、厚い領域の処理レートを高めて、基板100の全体の膜厚を均一にすることができる。また、基板100の全体の膜厚を均一にするのではなく、特定の領域を厚くしたい又は薄くしたいなど、所望の膜厚分布に調整したい場合には、薄くしたい箇所に対応する放熱抑制部材51を基板100に近づけて処理レートを高めることができる。つまり、ユーザが求める様々な膜厚の態様に対応することができる。
(変形例)
(1)放熱抑制部材51を基板100に接近させる場合の基板100との距離を、複数設定してもよい。また、放熱抑制部材51の数は、1つであっても、2つであっても、4つ以上であってもよい。1つ又は2つとすることにより、機構や制御を簡素化することができ、4つ以上とすることにより、面内での処理レートを、さらにきめ細かく調整することが可能となる。
【0081】
(2)駆動機構52は、上記の態様には限定されない。例えば、伝達部524をコロ、ベアリング等の接触により動力を伝達する部材によって構成してもよい。伝達部524又は放熱抑制部材51を駆動ロッドにより直接上昇させるシリンダによって、駆動機構52を構成してもよい。
【0082】
(3)基板処理装置1の処理は、処理液及び基板100の温度が処理レートに影響を与える処理であれば、処理の内容及び処理液は、上記で例示したものには限定されない。処理対象となる基板100及び膜についても、上記で例示したものには限定されない。
【0083】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 基板処理装置
10 回転体
11 テーブル
11a 貫通孔
11b 排出口
12 ベース
13 固定ベース
13a 防護壁
13b 支持壁
13c 支柱
20 回転機構
21 固定軸
22 駆動源
30 保持部
31 回動部材
31a 環状溝
32 保持ピン
33 駆動機構
40 供給部
41 処理液供給機構
41a 処理液槽
41b 個別送通管
41c 処理液供給管
41d 流量調整バルブ
41e 流量計
42 処理液保持部
42a 吐出口
43 昇降機構
44 加熱部
50 保温部
51、51A、51B、51C 放熱抑制部材
52 駆動機構
60 制御部
100 基板
111 対向面
112 側面
121 遮蔽部
121a 貫通孔
121b 環状壁
121c 貫通孔
121d 回転筒
121e 環状壁
121f 貫通孔
121g 環状壁
131c 環状溝
211 ノズルヘッド
331 駆動軸
332 小ギヤ
333 大ギヤ
411、412、413 処理液供給部
441 ヒータ
441a 貫通孔
511、511a、511b、511c 熱抑制面
514 伝達部
521 駆動源
522 リンクアーム
522a 軸
523 付勢アーム
523a ピン
524 伝達部
524A、524B、524C、524a、524b、524c リングマグネット
525 連結部
525a 環状溝

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7