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特開2022-114018鋳造装置、および、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法
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  • 特開-鋳造装置、および、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114018
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】鋳造装置、および、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20220729BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220729BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B22D17/22 H
B22D17/22 K
B22C9/06 A
B22C9/06 T
B22C9/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010102
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】593217753
【氏名又は名称】岐阜精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆義
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB03
4E093NB07
4E093QA04
4E093QB07
(57)【要約】
【課題】簡易な操作性を有し、かつ、離型の際の装置負荷をより軽減して離型工程を実施することを可能とする鋳造装置を提供する。
【解決手段】鋳造装置100は、キャビティ106を有する成型部105と、ネジ部108を先端に有し、軸方向上下に摺動可能であり、かつ、ネジ部108がキャビティ106内で上方に突出する鋳造位置と、ネジ部108がキャビティから下方に離脱する離型位置との間で移動する、回転軸107と、軸方向上下に駆動される駆動板111と、駆動板111の昇降に従って定位置で回転駆動されるネジ軸113と、ネジ軸113の回転を回転軸107に伝達するように構成されたギヤ機構115と、上昇する駆動板111に持ち上げられることによって、キャビティ106内に突出してキャビティ106内の一体成型品を上方に押し出すように動作する押出手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ネジ部を有する一体成型品を鋳造するための鋳造装置であって、
溶融材料が充填されるキャビティを有する成型部と、
前記一体成型品の雌ネジ部に対応するネジ部を先端に有し、前記成型部に形成された軸孔を介して前記成型部に対して軸方向上下に摺動可能であり、かつ、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する鋳造位置と、前記ネジ部が前記キャビティから下方に離脱する離型位置との間で移動する、回転軸と、
前記成型部に対して、軸方向上下に駆動される駆動板と、
前記駆動板に形成されたネジ孔に螺合し、前記駆動板の昇降に従って定位置で回転駆動されるネジ軸と、
前記ネジ軸の回転を前記回転軸に伝達するように構成され、前記駆動板が上昇したときに、前記回転軸を前記一体成型品の雌ネジ部から螺退させる方向に回転させる、ギヤ機構と、
上昇する前記駆動板に持ち上げられることによって、前記キャビティ内に突出して前記キャビティ内の一体成型品を上方に押し出すように動作する押出手段と、を備えることを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
前記押出手段は、前記成型部に対して軸方向上下に摺動可能に支持された押出部材を備え、前記押出部材は、前記成型部に形成されたピン孔に収容される押出ピンを有しており、上昇する前記駆動板に前記押出部材が持ち上げられることによって、前記押出ピンが前記ピン孔から前記キャビティ内に押し出されることを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。
【請求項3】
鋳造工程において、前記駆動板が基準位置に配置され、前記回転軸が前記鋳造位置に配置されるとともに、前記押出ピンが前記ピン孔に収容されており、
離型工程において、前記駆動板の前記基準位置からの上昇に従って、前記ネジ軸を介して前記回転軸が回転して、前記ネジ部が前記一体成型品の前記雌ネジ部から軸方向下方に螺退し、前記ネジ部が前記雌ネジ部から完全に離脱した後、前記押出部材がさらに上昇する前記駆動板によって持ち上げられて前記押出ピンが一体成型品を前記キャビティから上方に押し出すように動作することを特徴とする請求項2に記載の鋳造装置。
【請求項4】
前記回転軸は、上昇する前記駆動板に係合し、前記駆動板によって、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する位置まで持ち上げられるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項5】
前記ギヤ機構は、前記ネジ軸に結合された駆動ギヤ、および、前記回転軸に結合され、前記駆動ギヤに従動する従動ギヤを備え、前記ネジ軸の回転を所定の減速比で減速して前記回転軸に伝達することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項6】
前記回転軸を前記鋳造位置に選択的に固定するロック機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項7】
前記成型部は、ダイカスト金型を構成することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の鋳造装置を用いて、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法であって、
前記鋳造装置の前記回転軸を、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する鋳造位置に配置された状態を維持するように、前記駆動板を基準位置に保持する工程と、
前記鋳造装置の前記キャビティに溶融材料を充填し、前記一体成型品を形成する工程と、
前記駆動板を前記基準位置から、前記ネジ部が前記キャビティから下方に離脱する位置まで上昇させ、前記一体成型品から前記ネジ部を下方に離型させる工程と、
前記駆動板を、前記押出手段が前記キャビティ内への突出を開始する位置まで上昇させ、前記一定成型品を前記押出手段で押圧する工程と、
前記駆動板を、前記押出手段がキャビティ内に突出する位置まで上昇させ、前記一体成型品を前記キャビティから上方に離型させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造装置、および、該鋳造装置を用いて、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナットなどの雌ネジ部を有する一体成型品は、ダイカスト法などの鋳造により金型を用いて製造される。より具体的には、一体成型品の雌ネジ部形状に対応する雄ネジが内部に配置されたキャビティに、金属等の溶融材料が鋳込まれることにより、一体成型品が鋳造される。そして、鋳造された一体成型品は、雄ネジが雌ネジ部から回転により離脱した上で金型から離型される。
【0003】
例えば、特許文献1は、成型品の一側面に対し雌ネジ部を同時形成する成型用金型装置を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。金型(1)は、基台部(2)と、この基台部(2)の上面に立設された金型部(3)とを主体として構成されている。金型部(3)の上面には、キャビティ(4)が凹設されている。キャビティ(4)内に鋳込まれた成型品(W)の離型方向と平行する軸心を有する離型軸(5)は、その下端部が金型(1)の基台部(2)上面にベアリング(6)を介して支持され、上端部が金型部(2)にプッシュ(7)を介して支持され、金型(1)に対し定位置回転可能に取り付けられている。離型軸(5)の先端部はキャビティ(4)内に対し所定長さだけ突出しており、この部分には成型品(W)の雌ネジ(めねじ)に対応する雄ネジ(おねじ5a)が形成されている。離型軸(5)は、モータ駆動によって回転駆動され得る。上記の構成において、キャビティ(4)に成型品(W)が成型されると同時に、離型軸(5)の雄ネジ(5a)によって成型品(W)に雌ネジが成型される。次いで、離型軸(5)が回転すると、キャビティ(4)内の成型品(W)の回転運動が拘束されるため、離型軸(5)の雄ネジ(5a)が成型品(W)を離型する方向に押し上げる力となり、成型品(W)が離型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60-32983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の成型用金型装置(以下、鋳造装置という。)は、離型軸を回転駆動させることにより、成型品の雌ネジ部からの離型軸のネジ部を離脱させるのと同時に、成型品をキャビティから押し上げることによって、成型品を金型から離型する。しかしながら、成型品のキャビティ内での嵌合が強固であるほど、回転動作する離型軸には、捻れ(または回転)方向の過大な負荷がかかり易い。そのため、度重なる離型工程によって、離型軸が変形して偏心したり、回転駆動用のモータの焼き付きが発生したりなど、鋳造装置の耐久性の点で問題が生じることが1つの課題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡易な操作性を有し、かつ、離型の際の装置負荷をより軽減して離型工程を実施することを可能とする鋳造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の鋳造装置は、
雌ネジ部を有する一体成型品を鋳造するための鋳造装置であって、
溶融材料が充填されるキャビティを有する成型部と、
前記一体成型品の雌ネジ部に対応するネジ部を先端に有し、前記成型部に形成された軸孔を介して前記成型部に対して軸方向上下に摺動可能であり、かつ、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する鋳造位置と、前記ネジ部が前記キャビティから下方に離脱する離型位置との間で移動する、回転軸と、
前記成型部に対して、軸方向上下に駆動される駆動板と、
前記駆動板に形成されたネジ孔に螺合し、前記駆動板の昇降に従って定位置で回転駆動されるネジ軸と、
前記ネジ軸の回転を前記回転軸に伝達するように構成され、前記駆動板が上昇したときに、前記回転軸を前記一体成型品の雌ネジ部から螺退させる方向に回転させる、ギヤ機構と、
上昇する前記駆動板に持ち上げられることによって、前記キャビティ内に突出して前記キャビティ内の一体成型品を上方に押し出すように動作する押出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態の鋳造装置によれば、成型部のキャビティ内で凝固した一体成型品に対して、回転軸が回転しつつ軸方向下方に移動することで、その先端のネジ部が一体成型品の雌ネジ部から離脱する。ネジ部の離脱後、押出部材がキャビティ内に突出することにより、一体成型品をキャビティから押し出して、金型から一体成型品を離型することが可能である。そして、一体成型品がキャビティに強固に嵌合した場合であっても、駆動板の上昇に伴う押出手段による単純な押出し動作によって、一体成型品をキャビティから離型させることができる。また、駆動板の上下動という単純動作によって、必要以上に部品にねじれ方向の過度の負荷を与えることなく、一体成型品をキャビティから離型する一連の離型工程を実行することが可能である。したがって、本発明の鋳造装置は、離型の際の装置への負荷をより軽減し、かつ、簡易な操作で離型工程を実施することを可能とするものである。
【0009】
本発明のさらなる形態の鋳造装置によれば、前記押出手段は、前記成型部に対して軸方向上下に摺動可能に支持された押出部材を備え、前記押出部材は、前記成型部に形成されたピン孔に収容される押出ピンを有しており、上昇する前記駆動板に前記押出部材が持ち上げられることによって、前記押出ピンが前記ピン孔から前記キャビティ内に押し出されることを特徴とする。すなわち、鋳造装置は、押出部材および押出ピンが押出手段として動作することで、簡易な機構で一体成型品をキャビティから押し出して離型させることが可能である。
【0010】
本発明のさらなる形態の鋳造装置は、上記鋳造装置の構成に加えて、鋳造工程において、前記駆動板が基準位置に配置され、前記回転軸が前記鋳造位置に配置されるとともに、前記押出ピンが前記ピン孔に収容されており、離型工程において、前記駆動板の前記基準位置からの上昇に従って、前記ネジ軸を介して前記回転軸が回転して、前記ネジ部が前記一体成型品の前記雌ネジ部から軸方向下方に螺退し、前記ネジ部が前記雌ネジ部から完全に離脱した後、前記押出部材がさらに上昇する前記駆動板によって持ち上げられて前記押出ピンが一体成型品を前記キャビティから上方に押し出すように動作することを特徴とする。すなわち、本発明の鋳造装置は、駆動板の上昇に連動して、回転軸のネジ部が一体成型品の雌ネジ部から離脱し、その後、押出ピンがピン孔から突出するように動作する。したがって、本発明の鋳造装置は、簡易な操作で離型工程を実施することを可能とするものである。
【0011】
本発明のさらなる形態の鋳造装置は、上記鋳造装置の構成に加えて、前記回転軸は、上昇する前記駆動板に係合し、前記駆動板によって、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する前記鋳造位置まで持ち上げられるように構成されていることを特徴とする。すなわち、駆動板の上昇によって回転軸をキャビティ内へと突出させることで、回動軸を押出手段の少なくとも一部として動作させることが可能である。したがって、本発明の鋳造装置は、簡易な操作で離型工程を実施することを可能とするものである。
【0012】
本発明のさらなる形態の鋳造装置は、上記鋳造装置の構成に加えて、前記ギヤ機構は、前記ネジ軸に結合された駆動ギヤ、および、前記回転軸に結合され、前記駆動ギヤに従動する従動ギヤを備え、前記ネジ軸の回転を所定の減速比で減速して前記回転軸に伝達することを特徴とする。すなわち、ギヤ機構によって、駆動板の上昇に必要な力を軽減させるとともに、一体成型品と接触するネジ部を高トルクかつ低速で精密に動作させることができることから、一体成型品の損傷を効果的に防止することができる。
【0013】
本発明のさらなる形態の鋳造装置は、上記鋳造装置の構成に加えて、前記回転軸を前記鋳造位置に選択的に固定するロック機構をさらに備えることを特徴とする。ロック機構の操作により、回転軸を鋳造位置に選択的に保持することが可能である。
【0014】
本発明のさらなる形態の鋳造装置は、上記鋳造装置の構成に加えて、前記成型部は、ダイカスト金型の一部を構成することを特徴とする。すなわち、鋳造装置は、ダイカスト金型として一体成型品を成型することができる。
【0015】
本発明の一形態の雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法は、
上記形態の鋳造装置を用いて、雌ネジ部を有する一体成型品を製造する方法であって、
前記鋳造装置の前記回転軸を、前記ネジ部が前記キャビティ内で上方に突出する鋳造位置に配置された状態を維持するように、前記駆動板を基準位置に保持する工程と、
前記鋳造装置の前記キャビティに溶融材料を充填し、前記一体成型品を形成する工程と、
前記駆動板を前記基準位置から、前記ネジ部が前記キャビティから下方に離脱する位置まで上昇させ、前記一体成型品から前記ネジ部を下方に離型させる工程と、
前記駆動板を、前記押出手段が前記キャビティ内への突出を開始する位置まで上昇させ、前記一定成型品を前記押出手段で押圧する工程と、
前記駆動板を、前記押出手段がキャビティ内に突出する位置まで上昇させ、前記一体成型品を前記キャビティから上方に離型させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鋳造装置は、離型の際の装置への負荷をより軽減し、かつ、簡易な操作で離型工程を実施することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態の鋳造装置の概略斜視図。
図2図1の鋳造装置の平面図。
図3図1の鋳造装置のA-A断面図。
図4図1の鋳造装置のB-B断面図。
図5図1の鋳造装置において、一体成型品を鋳造する一工程であって、キャビティに溶融材料を充填し、一体成型品を形成する工程を示す模式図。
図6図1の鋳造装置において、一体成型品を鋳造する一工程であって、一体成型品からネジ部を下方に離型させる工程を示す模式図。
図7図1の鋳造装置において、一体成型品を鋳造する一工程であって、押出ピンにより一体成型品をキャビティから上方に離型させる工程を示す模式図。
図8図1の鋳造装置において、一体成型品を鋳造する一工程であって、一体成型品をキャビティから上方に完全に離型させた工程を示す模式図。
図9】本発明に係る別実施形態の鋳造装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、上下左右方向は、相互に入れ替えて解釈されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態の鋳造装置100は、アルミニウムなどの溶融金属から、ナットなどの雌ネジ部を有する一体成型品をダイカスト法によって鋳造する金型である。しかしながら、本発明の鋳造装置は、ダイカスト法に限定されず、他の鋳造法に用いられてもよい。また、一体成型品は、金属材料に限定されず、合成樹脂材料で製造されてもよい。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の鋳造装置100の概略斜視図である。図2は、該鋳造装置100の平面図である。図3は、該鋳造装置100のA-A断面図である。図4は、該鋳造装置100のB-B断面図である。なお、図1乃至図4は、溶融材料を鋳込む前の初期形態の鋳造装置100を示している。
【0021】
一実施形態の鋳造装置100は、底部フレーム101と、該底部フレーム101の上方に配置された頂部フレーム102と、底部フレーム101および頂部フレーム102を高さ方向に連結する複数のシャフト103とを備える。底部フレーム101、頂部フレーム102およびシャフト103は、各構成要素を可動式または定位置に支持するための本体フレームを協働して構成する。底部フレーム101は、水平方向に延在する矩形平板形状を有し、床などに載置されるように構成された。底部フレーム101の四隅には、軸方向(高さ方向)に延伸するシャフト103がそれぞれ立設している。また、頂部フレーム102は、水平方向に延在する矩形平板形状を有し、かつ、底部フレーム101の四隅に固定されたシャフト103の頂部に固着されている。そして、各シャフト103の下端には、より大径のスペーサ104が設けられている。
【0022】
一実施形態の鋳造装置100は、一体成型品を鋳込んで成型するための成型部105と、一体成型品の雌ネジ部に対応するネジ部108を先端に有し、軸方向上下に摺動可能に支持された回転軸107と、成型部105に対して軸方向上下に駆動される駆動板111と、該駆動板111の昇降に従って定位置で回転駆動されるネジ軸113と、該ネジ軸113の回転を回転軸107に伝達するように構成されたギヤ機構115と、成型部105に対して軸方向上下に摺動可能に支持され、キャビティ106内に突出可能な押出ピン117cを有する押出部材117(押出手段)と、回転軸107を所定の位置にロックするロック機構119と、を備える。以下、各構成要素についてより詳細に説明する。
【0023】
成型部105は、鋳造装置100の頂部フレーム102の上面の略中央に固定されている。成型部105は、一方側の固定型として図示され、ダイカスト金型を構成するものであるが、説明の便宜上、他方側の可動型の描写を省略する。成型部105は、頂部フレーム102上面に固定された底壁105a、および、該底壁105aから上方に立設した周壁105bを有し、周壁105bの内側にキャビティ106を定める。つまり、成型部105は、上方に開口し、溶融材料が充填されるキャビティ106を有する。周壁105bは、平面視略矩形状を有することから、離型工程の際、キャビティ106内部で一体成型品が軸回転することが規制される。図3に示すように、成型部105の底壁105aの中心には、回転軸107が挿通された軸孔105cが穿設されている。軸孔105cは、回転軸107の軸方向の摺動を許容する径を有する一方で、回転軸107を内挿した状態でキャビティ106内の溶融材料が内部に進入しない径で形成された。また、軸孔105cは、キャビティ106および頂部フレーム102の下部空間を連通させる。さらに、図4に示すように、成型部105の底壁105aの中心の両脇には、押出ピン117cを収容する一対のピン孔105dが設けられている。
【0024】
回転軸107は、図2に示す鋳造装置100平面視の略中心で垂直方向に延伸している。回転軸107は、一体成型品の雌ネジ部に対応する雄ネジ形状のネジ部108を先端(上端)に有する。つまり、ネジ部108は、一体成型品に雌ネジ部を成型するための型の一部である。回転軸107は、頂部フレーム102に形成された軸孔102aおよび成型部105に形成された軸孔105cを介して、成型部105に対して軸方向上下に摺動可能であり、かつ、回転可能に支持されている。また、回転軸107は、ネジ部108がキャビティ106内で上方に突出する鋳造位置と、ネジ部108がキャビティ106から下方に離脱する離型位置との間で移動可能である。そして、回転軸107は、その下端面で上昇する駆動板111に係合して持ち上げられ、キャビティ106内に突出してキャビティ106内の一体成型品を上方に押し出すように動作する押出手段としても機能し得る。さらに、回転軸107には、ギヤ機構115の一部である従動ギヤ115bが結合されている。従動ギヤ115bは、回転軸107を中心に回転軸107とともに回転する。
【0025】
駆動板111は、水平方向に延在する平板形状を有し、底部フレーム101と頂部フレーム102との間で軸方向に沿って昇降可能に支持されている。駆動板111は、シリンダやジャッキなどの外部の駆動手段によって駆動され得る。または、駆動板111は、手動操作による駆動手段によって昇降するように駆動されてもよい。駆動板111の四隅には、シャフト103が貫通するためのシャフト孔が穿設されている。シャフト孔は、シャフト103の径より大きく、かつ、スペーサ104の径より小さい。つまり、駆動板111は、シャフト103に沿って摺動可能である一方で、スペーサ104の上端面に係止されるように構成されている。本実施形態において、図1乃至図4に示すように、駆動板111がスペーサ104に当接する位置が、駆動板111の基準位置として定められる。鋳造工程の際、駆動板111が基準位置に配置される。また、駆動板111には、後述するロック機構119の第1リンク軸119aが摺動可能に貫通するための貫通孔111bが設けられている。貫通孔111bの径は、回転軸107の通過を許容しないように、回転軸107の下端部位の径よりも小さく定められた。そして、駆動板111は、略平坦形状の上面を有し、所定の高さを超えて上昇すると、押出部材117および回転軸107の下面に当接して押出部材117および回転軸107を軸方向上方に押し上げるようにも機能し得る。
【0026】
また、駆動板111には、内側にネジ孔を形成するボールナット111aが固定されている。ボールナット111aのネジ孔は、貫通するネジ軸113に螺合するように形成されている。つまり、駆動板111には、ボールナット111aを介してネジ孔が形成された。
【0027】
ネジ軸113は、垂直方向に延伸し、駆動板111に形成されたネジ孔に螺合し、駆動板111の昇降に従って定位置で回転駆動されるように構成されている。ネジ軸113は、その上端および下端で底部フレーム101および頂部フレーム102の間に回転可能に支持されている。本実施形態では、ネジ軸113は、軸方向全体に亘って雄ネジ部を有するが、雄ネジ部は軸方向の一部に形成されてもよい。そして、ボールナット111aおよびネジ軸113が協働してボールネジ機構を形成する。具体的には、ボールナット111aのネジ孔には、ネジ軸113に摺接するように複数のボール(図示せず)が配置されている。当該ボールによって、ボールナット111aは、ネジ軸113に対して滑らかに回転しつつ軸方向上下に移動可能である。すなわち、ボールネジ機構により、駆動板111の軸方向上下の移動が、ネジ軸113を定位置で回転させる駆動力に効率的に変換され得る。また、ネジ軸113の上端近傍には、駆動ギヤ115aが結合されている。駆動ギヤ115aは、ネジ軸113を中心にネジ軸113とともに回転する。後述するように、ネジ軸113の回転は、駆動ギヤ115aおよび従動ギヤ115bを介して、回転軸107に伝達される。
【0028】
ギヤ機構115は、ネジ軸113の回転を回転軸107に伝達するように構成され、駆動板111が上昇したときに、回転軸107を一体成型品の雌ネジ部から螺退させる方向に回転させるように構成されている。ギヤ機構115は、図3および図4に示すように、ネジ軸113に着設された平歯車状の駆動ギヤ115aと、(ネジ軸113から平面視において所定距離で離隔した)回転軸107に着設された平歯車状の従動ギヤ115bと、駆動ギヤ115aおよび従動ギヤ115bの両方に噛合する位置で頂部フレーム102に回転可能に支持された平歯車状の伝達ギヤ115cとを備える。駆動ギヤ115aの回転は、伝達ギヤ115cを介して従動ギヤ115bに伝達される。ここで、駆動ギヤ115aの歯数(径)が伝達ギヤ115cの歯数(径)よりも小さく、伝達ギヤ115cの歯数(径)が従動ギヤ115bの歯数(径)よりも小さく定められた。すなわち、ギヤ機構115は、所定の減速比を有し、駆動ギヤ115aの回転を減速してより力強い回転力で回転軸107を回転させることが可能となる。
【0029】
押出部材117は、キャビティ106内に突出してキャビティ106内の一体成型品を上方に押し出すように動作する押出手段として、成型部105に対して相対的に軸方向上下に摺動可能に支持されている。押出部材117は、図2に示す平面視の縦方向に長手状に延びるとともに水平方向に延在する底板117aと、頂部フレーム102に上端で支持され、該底板117aを吊下げ支持する一対の吊下げシャフト117bとを備える。一対の吊下げシャフト117bは、頂部フレーム102の成型部105の(図2に示す平面視の縦方向において)両脇に形成された支持孔102bをそれぞれ貫通している。各吊下げシャフト117bは、支持孔102bに軸方向に摺動可能に遊挿されている。一方で、各吊下げシャフト117bの上端部位は、支持孔102bを通過しないように拡径している。すなわち、一対の吊下げシャフト117bが支持孔102b周縁に係合する位置から軸方向上方に摺動することにより、押出部材117が初期形態の底位置(または鋳造位置)から上部へと移動可能である。
【0030】
底板117aの略中央には、回転軸107の下端部位および第1リンク軸119aが通過可能な貫通孔117dが設けられている。つまり、押出部材117および回転軸107(第1リンク軸119a)は、互いに干渉することなく軸方向上下に相対移動することが可能である。また、押出部材117の底板117a下面は、駆動板111上面に互いに当接可能に対向している。駆動板111が、底位置の底板117a底面の高さを超えて上昇することにより、駆動板111上面および底板117a下面が互いに当接する。すなわち、押出部材117は、上昇する駆動板111によって軸方向上方に移動するように構成されている。
【0031】
また、押出部材117の底板117aには、その上面から軸方向上方に所定の長さで突出する一対の押出ピン117cが設けられている。一対の押出ピン117cは、図2に示す平面視の縦方向に並設されている。一対の押出ピン117cは、頂部フレーム102の通孔を貫通し、成型部105の底壁105aに形成された一対のピン孔105dにそれぞれ収容されている。押出部材117が底位置に位置するとき、押出ピン117cの上端面が成型部105の底壁105a上面と面一になるように位置し、かつ、押出ピン117cがピン孔105dを封止している。つまり、押出ピン117cがピン孔105dに収容された状態では、一体成型品にピンによる凹凸が付くことが抑えられ、かつ、キャビティ106に充填された溶融材料がピン孔105dを介して漏れ出すことが防止される。そして、押出部材117が軸方向上方に所定の距離で移動することに従って、押出ピン117cが上方に変位してキャビティ106内に所定の長さで突出し得る。すなわち、押出部材117は、上昇する駆動板111に押出部材117が持ち上げられることによって、押出ピン117cがピン孔105dからキャビティ106内に押し出されるように構成されている。
【0032】
ロック機構119は、回転軸107を、ネジ部108がキャビティ106内で上方に突出する鋳造位置に選択的に固定するように構成されている。ロック機構119は、図3に示すように、回転軸107と同軸に下側で延伸する第1リンク軸119aと、該第1リンク軸119aから平面視において離隔して延伸する第2リンク軸119bと、底部フレーム101に回動可能に軸支され、第1リンク軸119aおよび第2リンク軸119bを連結するリンク片119cと、頂部フレーム102に設けられ、第2リンク軸119bの上方への移動を規制するための押さえ板119dとを備える。第1リンク軸119aは、上端面が回転軸107の下端面に係合可能に配置されている。第2リンク軸119bは、頂部フレーム102および駆動板111の孔を貫通可能な長さを有する。リンク片119cは、第1リンク軸119aおよび第2リンク軸119bの両方の下端部を支持し、一方のリンク軸が下がると、他方のリンク軸が上がるように回動する。また、押さえ板119dは、蝶ネジによって第2リンク軸119bの上端面(または頂部フレーム102の孔)を覆うように固定される。
【0033】
図3に示す初期形態の鋳造装置100では、第2リンク軸119bが下位置に維持され、リンク片119cを介して、第1リンク軸119aが上位置に維持されている。そして、第1リンク軸119aの上端面が回転軸107の下端面に係合し、回転軸107が鋳造位置に配置されている。このとき、押さえ板119dで第2リンク軸119bの上端がロックされていることにより、第1リンク軸119aの軸方向下方への移動が規制される。すなわち、ロック機構119は、回転軸107の軸方向下方への移動を規制することで、回転軸107を鋳造位置に維持することが可能である。他方、後述するように、押さえ板119dを外してロック機構119によるロックを解除することで、第2リンク軸119bが頂部フレーム102から上方に突出するように移動することが許容される。第2リンク軸119bに従って、第1リンク軸119aが軸方向下方に移動し、回転軸107が下方へと移動し得る(図5図6参照)。
【0034】
続いて、図5乃至図8を参照して、本実施形態の鋳造装置100を用いて、鋳造装置100の一連の動作に従って、雌ネジ部11を有する一体成型品10を製造する方法を説明する。
【0035】
まず、鋳造工程のために図1乃至図4で示した初期形態の鋳造装置100を準備する。すなわち、ネジ部108がキャビティ106内で上方に突出する鋳造位置に回転軸107が配置され、かつ、押出ピン117cがピン孔105dに収容された状態を維持するように、駆動板111を基準位置に保持する。また、ロック機構119がロック状態にあることを確認する。次いで、鋳造工程において、キャビティ106に所望の溶融材料を充填して凝固させることで、雌ネジ部11を有する一体成型品10を形成する。本実施形態では、図示しないが、ダイカスト法が採用された。雌ネジ部11を有する一体成型品10が凝固して成型されたことを確認し、以下に説明する離型工程に移る。
【0036】
離型工程を開始するにあたって、図5に示すように、ロック機構119のロックを解除すべく、押さえ板119dを固定する蝶ネジを緩め、押さえ板119dを移動させ、第2リンク軸119bの上方を開放させる。次いで、任意の駆動手段(図示せず)を作動し、基準位置にある駆動板111を軸方向上方への駆動を開始する。駆動板111の上昇に従って、図5に示す矢印のように、各構成要素が連動して動作を開始する。具体的には、ネジ軸113が回転を開始し、ギヤ機構115を介して回転軸107が回転を開始する。回転軸107の回転方向は、一体成型品10の雌ネジ部11からネジ部108が螺退する方向と合致する。回転軸107の回転動作に従って、回転軸107は軸方向下方に移動を開始する。このとき、(回転軸107の軸方向の移動の容易さに比べて)一体成型品10がキャビティ106に嵌合されて容易に動かないことから、回転軸107が一体成型品10(または成型部105)から相対的に離れる方向に移動する。回転軸107の軸方向の動きに連動して、回転軸107に係合する第1リンク軸119aが下方に押し下げられ、リンク片119cを介して、第2リンク軸119bが頂部フレーム102から上方に突出するように押し上げられる。
【0037】
図6は、図5に示す基準位置から駆動板111を、ネジ部108がキャビティ106から下方に離脱する第1位置まで移動させた形態を示している。図6に示すように、駆動板111を基準位置から第1位置まで移動させると、ネジ部108がキャビティ106から下方に離脱し、一体成型品10の雌ネジ部11からネジ部108を下方に離型させることができる。この工程において、回転軸107が軸方向下方に自由に摺動できるように鋳造装置100に支持されていることから、ネジ部108が雌ネジ部11から螺退動する以外のトルクが実質的に発生せず、回転軸107に過度のねじれ方向の負荷がかかることはない。図6に示すように、雌ネジ部11からのネジ部108の離脱が完了したとき、駆動板111の上面と押出部材117の底板117aの下面とが当接し、かつ、駆動板111の上面と回転軸107の下端面とが当接している。また、第1リンク軸119aが下位置に移動し、回転軸107と第1リンク軸119aとが係合している。すなわち、図6において、駆動板111は、押出ピン117cがキャビティ106内の一体成型品10の押圧を開始し得る段階にある。
【0038】
図7は、図6に示す第1位置から駆動板111を、押出ピン117cがキャビティ106内の突出を開始した第2位置まで上昇させた形態を示している。この工程では、一体成型品10が下方から押出ピン117cで押圧される。図7に示すように、駆動板111によって押出部材117が持ち上げられ、押出ピン117cがピン孔105dからキャビティ106内に突出する。駆動板111の駆動力により、押出ピン117cを介して一体成型品10が上方に持ち上げられる。また、押出ピン117cの上昇と同時に、回転軸107が回転しながら駆動板111によって押し上げられる。回転軸107の回転は、一体成型品10の雌ネジ部11の螺退方向であることから、ネジ部108が雌ネジ部11に進入することはない。このとき、押出ピン117cの上端面および回転軸107の上端面が同じ高さであることが好ましい。回転軸107および一対の押出ピン117cが、3点で一体成型品10の底面に当接し、押出手段として協働して、一体成型品10を上方に押し出すように作用し得るからである。なお、回転軸107の上昇に伴い、回転軸107の下端面と第1リンク軸119a上端面とが離隔する。
【0039】
図8は、図7に示す第2位置から駆動板111を、押出ピン117cがキャビティ106内に完全に突出した第3位置まで上昇させた形態を示している。このように、駆動板111を第3位置まで上昇させると、押出ピン117cおよび回転軸107がキャビティ106内に所定の最大長さで突出し、キャビティ106から一体成型品10を完全に離型させることができる。このとき、回転軸107は、ネジ部108がキャビティ106内で上方に突出する鋳造位置に配置される。作業者は、成型部105から離型された一体成型品10を容易に取り出すことが可能である。
【0040】
離型工程を完了した後、続く鋳造工程のために鋳造装置100を初期位置に復帰させる方法は以下のとおりである。まず、図8の形態において、第2リンク軸119bを下方に押し込み、第1リンク軸119a上端面を回転軸107下端面に当接させ、押さえ板119dで第2リンク軸119bを覆ってロックする。次いで、駆動板111を第3位置から基準位置まで下降させると、回転軸107が定位置(鋳造位置)で回転する一方で、押出部材117が自重で最下位置まで下降する。その結果、鋳造装置100を初期位置に復帰させることができる。
【0041】
以下、本発明に係る一実施形態の鋳造装置100における作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の鋳造装置100は、成型部105のキャビティ106内で凝固した一体成型品10に対して、回転軸107が回転しつつ軸方向下方に移動することで、その先端のネジ部108が一体成型品10の雌ネジ部11から離脱する。ネジ部108の離脱後、押出部材117の動作に従って押出ピン117cがキャビティ106内に突出することにより、一体成型品10をキャビティ106から押し出して、金型から一体成型品10を離型することが可能である。そして、一体成型品10がキャビティ106に強固に嵌合した場合であっても、駆動板111の上昇駆動に伴う押出ピン107cによる単純な押出し動作によって、一体成型品10をキャビティ106から離型させることができる。すなわち、駆動板111の上下動という単純動作によって、部品に対して過度のねじれ方向の負荷を与えることなく、一体成型品10をキャビティ106から離型する一連の離型工程を実行することが可能である。よって、鋳造装置100の耐久性を効果的に改善することができる。また、鋳造装置100の構成は、回転モータを用いることを必要とせず、回転モータの寿命や焼き付きによる装置トラブルをも回避することができる。したがって、本実施形態の鋳造装置100は、離型の際の装置への負荷をより軽減し、かつ、簡易な操作で離型工程を実施することを可能とするものである。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の複数の変形例を説明する。
【0044】
(1)本発明の別実施形態の鋳造装置200は、図8に示すように、押出部材が省略され、押出手段としての回転軸207の上下動によって一体成型品10を押し出すように構成されている。すなわち、鋳造装置200は、溶融材料が充填されるキャビティ206を有する成型部205と、一体成型品10の雌ネジ部11に対応するネジ部208を先端に有し、成型部205に形成された軸孔205cを介して成型部205に対して軸方向上下に摺動可能であり、かつ、ネジ部208がキャビティ206内で上方に突出する鋳造位置と、ネジ部208がキャビティ206から下方に離脱する離型位置との間で移動する、回転軸207と、成型部205に対して、軸方向上下に駆動される駆動板211と、駆動板211に形成されたネジ孔に螺合し、駆動板211の昇降に従って定位置で回転駆動されるネジ軸213と、ネジ軸213の回転を回転軸207に伝達するように構成され、駆動板211が上昇したときに、回転軸207を一体成型品10の雌ネジ部11から螺退させる方向に回転させる、ギヤ機構215と、を備える。回転軸207は、上昇する駆動板211に係合し、駆動板211によって、ネジ部208がキャビティ206内で上方に突出する位置まで持ち上げられるように構成されている。
【0045】
本実施形態の鋳造装置200は、一体成型品10がキャビティ206に強固に嵌合した場合であっても、駆動板211の上昇に伴う回転軸207による単純な押出し動作によって、一体成型品10をキャビティ206から離型させることができることから、一実施形態の鋳造装置100と同様に本発明の作用効果を発揮することができる。
【0046】
(2)本発明の鋳造装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態の鋳造装置では、回動軸が駆動板によって上方に押し出されるように構成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、押出手段として押出ピンのキャビティ内への突出動作のみで、一体成型品をキャビティから離型させてもよい。
【0047】
(3)本発明の鋳造装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態の鋳造装置では、ギヤ機構は3つのギヤから構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ギヤ機構を構成するギヤの数は増減されてもよく、また、平歯車に限らず、他の種類のギヤが採用されてもよい。
【0048】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0049】
10 一体成型品
11 雌ネジ部
100 鋳造装置
101 底部フレーム
102 頂部フレーム
102a 軸孔
102b 支持孔
103 シャフト
104 スペーサ
105 成型部
105a 底壁
105b 周壁
105c 軸孔
105d ピン孔
106 キャビティ
107 回転軸
108 ネジ部
111 駆動板
111a ボールナット
111b 貫通孔
113 ネジ軸
115 ギヤ機構
115a 駆動ギヤ
115b 従動ギヤ
115c 伝達ギヤ
117 押出部材
117a 底板
117b 吊下げシャフト
117c 押出ピン
117d 貫通孔
119 ロック機構
119a 第1リンク軸
119b 第2リンク軸
119c リンク片
119d 押さえ板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9