(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115882
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム、および耐擦傷層付きハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20220802BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220802BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220802BHJP
B32B 23/08 20060101ALI20220802BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20220802BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220802BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/30 A
B32B27/36
B32B23/08
C08J7/046 Z CEP
C08J7/046 CEZ
C08J7/046 CFD
C08J7/046 CFG
G02B1/14
C08J7/046 CEY
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071040
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2020504924の分割
【原出願日】2019-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018043373
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185805
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 千裕
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れるハードコートフィルム、および耐擦傷性に優れる耐擦傷性層付きハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層の、支持体側とは反対側の面からハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率をE10、ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率をE2としたとき、下記式(1)、(2)、(3)を満たし、ハードコート層を内側とし、曲率半径1.0mmで折り曲げる耐屈曲性試験において割れまたは破断が生じるまでの回数が50万回以上である。
E10-E2≧2GPa…(1)
E10≧8GPa…(2)
E2≦8GPa…(3)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の、前記支持体側とは反対側の面から、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、前記ハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率をE10、前記ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率をE2としたとき、下記式(1)、(2)、(3)を満たし、
前記支持体が、トリアセチルセルロースフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエステルイミドフィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムから選択され、
前記ハードコート層を内側とし、折り曲げ曲率半径1.0mmで折り曲げる耐屈曲性試験において、ハードコートフィルムに割れまたは破断が生じるまでの回数が50万回以上である、ハードコートフィルム。
E10-E2≧2GPa …(1)
E10≧8GPa …(2)
E2≦8GPa …(3)
【請求項2】
JIS K5600-5-4(1999)に従って測定した鉛筆硬度が、4H以上である、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、粒子を含まない、又は、粒子を含む場合は前記粒子の平均一次粒径が3~100nmである、請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が、粒子を含まない、又は、粒子を含む場合は前記粒子が無機微粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの、前記ハードコート層の前記支持体側とは反対側の面に耐擦傷層を有する、耐擦傷層付きハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、および耐擦傷層付きハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットのようなモバイルディスプレイの表面には、タッチパネル操作やペン入力に耐える必要性や、表示部の保護のために、化学強化ガラスなどの薄くて硬いガラスが用いられることが多い。一方で、ガラスは、基本的に硬い特性を持つが、重くて割れ易いという問題点がある。
ガラスのように硬く、透明なプラスチックフィルムがあれば、軽くて割れないメリットがあると考えられるため、様々な提案がされている。例えば、透明樹脂フィルムの表面に有機樹脂と金属酸化物粒子からなるハードコート層を塗布することで、透明性、表面硬度、耐擦傷性に優れるフィルムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
ところが近年、フレキシブルなディスプレイに対するニーズが高まってきており、既存の技術では可撓性が低くフレキシブルなディスプレイの表面保護には適さない。
例えば、特許文献2には、基材フィルム上に、多官能(メタ)アクリレートの硬化物とシリカ微粒子とを含有する第一ハードコート層と、多官能(メタ)アクリレートモノマーの硬化物を含有する第二ハードコート層を設けることで、硬度、耐擦傷性、耐久折り畳み性能がある程度優れたタッチパネル用ハードコートフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2016-01217号公報
【特許文献2】日本国特開2017-33032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、耐久折り畳み試験における折り曲げ半径が大きく、繰り返しの折り曲げ耐性が充分であるとは言い難い。
本発明の課題は、硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れるハードコートフィルム、および耐擦傷性に優れる耐擦傷層付きハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
<1>
支持体の少なくとも一方の面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
上記ハードコート層の、上記支持体側とは反対側の面から、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、上記ハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率をE10、上記ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率をE2としたとき、下記式(1)、(2)、(3)を満たし、
上記支持体が、トリアセチルセルロースフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエステルイミドフィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムから選択され、
上記ハードコート層を内側とし、折り曲げ曲率半径1.0mmで折り曲げる耐屈曲性試験において、ハードコートフィルムに割れまたは破断が生じるまでの回数が50万回以上である、ハードコートフィルム。
E10-E2≧2GPa …(1)
E10≧8GPa …(2)
E2≦8GPa …(3)
<2>
JIS K5600-5-4(1999)に従って測定した鉛筆硬度が、4H以上である、<1>に記載のハードコートフィルム。
<3>
上記ハードコート層が、粒子を含まない、又は、粒子を含む場合は上記粒子の平均一次粒径が3~100nmである、<1>又は<2>に記載のハードコートフィルム。
<4>
上記ハードコート層が、粒子を含まない、又は、粒子を含む場合は上記粒子が無機微粒子である、<1>から<3>のいずれかに記載のハードコートフィルム。
<5>
<1>から<4>のいずれかに記載のハードコートフィルムの、上記ハードコート層の上記支持体側とは反対側の面に耐擦傷層を有する、耐擦傷層付きハードコートフィルム。
本発明は、上記<1>~<5>に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
[1]
支持体の少なくとも一方の面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
上記ハードコート層が、マトリクス成分と、平均一次粒子径が3~100nmの無機微粒子とを含み、
上記無機微粒子の、上記ハードコート層中の含有率が50体積%以上90体積%以下であり、
上記ハードコート層の、上記支持体側とは反対側の面から、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、上記ハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率をE10、上記ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率をE2としたとき、下記式(1)、(2)、(3)を満たすことを特徴とする、ハードコートフィルム。
E10-E2≧2GPa …(1)
E10≧8GPa …(2)
E2≦8GPa …(3)
[2]
上記マトリクス成分の押込み弾性率をEMとしたとき、EM≦1.5GPaである、[1]に記載のハードコートフィルム。
[3]
上記マトリクス成分が、マトリクス形成用組成物の硬化物であり、
上記マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量が250以上である、[1]または[2]のハードコートフィルム。
[4]
上記無機微粒子が、1分子内に2つ以上の重合性官能基を有するシランカップリング剤で修飾された粒子である、[1]から[3]のいずれかのハードコートフィルム。
[5]
上記支持体が、トリアセチルセルロースフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエステルイミドフィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムから選択される、[1]から[4]のハードコートフィルム。
[6]
[1]から[5]のハードコートフィルムの、上記ハードコート層の上記支持体側とは反対側の面に耐擦傷層を有する、耐擦傷層付きハードコートフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れるハードコートフィルム、および耐擦傷性に優れる耐擦傷層付きハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0009】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、
支持体の少なくとも一方の面にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
上記ハードコート層が、マトリクス成分と、平均一次粒子径が3~100nmの無機微粒子とを含み、
上記無機微粒子の、上記ハードコート層中の含有率が50体積%以上90体積%以下であり、
上記ハードコート層の、上記支持体側とは反対側の面から、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、上記ハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率をE10、上記ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率をE2としたとき、下記式(1)、(2)、(3)を満たす、ハードコートフィルムである。
E10-E2≧2GPa …(1)
E10≧8GPa …(2)
E2≦8GPa …(3)
【0010】
鉛筆硬度試験時にかかる応力によって膜厚方向に変形(厚みのおよそ10%)するが、その変形時の弾性率E10が高いほどよい。E10が高いほどそれ以上変形が起きにくくなり、脆性破壊領域の変形まで到達しないため、鉛筆硬度を高めることができる。一方、繰り返しの折曲げは、2%程度の小さな歪量を繰り返し与えるため、2%押し込んだ時の弾性率E2が低いほどよい。繰り返しの折り曲げでフィルム内部に微小なクラックが発生し、それが広がり破断に至ると考えられ、折り曲げ変形領域での弾性率E2を下げることで、クラックが発生しない応力にすることができ、繰り返しの折曲げ耐性を付与することができる。一般的に硬度と繰り返しの折曲げ耐性は両立しないが、本発明者らは、これら試験での変形量の違いに着目し、E10とE2を式(1)~(3)を満たす範囲にすることで、両立することを見出した。
【0011】
(押込み弾性率)
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層の、支持体側とは反対側の面から、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、以下に示す押込み弾性率を有する。押込み弾性率の詳細な測定方法については後述する。
ハードコート層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率E2は、8GPa以下であり、7.5GPa以下であることが好ましく、7GPa以下であることがより好ましい。E2をこの範囲にすることで、繰り返しの折り曲げ耐性に優れたハードコートフィルムが得られる。
E2の下限については特に限定されないが、例えば、1MPa(0.001GPa)以上であってもよい。
また、ハードコート層の厚みに対して10%押込んだときの押込み弾性率E10は、8GPa以上であり、9GPa以上であることが好ましい。E10をこの範囲にすることで、硬度が高いハードコートフィルムが得られる。
E10の上限については特に限定されないが、例えば、80Gpa以下であってもよい。
また、E10-E2は2GPa以上であり、2.5GPa以上であることが好ましい。
【0012】
(繰り返しの折り曲げ耐性)
ハードコートフィルムの繰り返しの折り曲げ耐性は、ハードコート層を内側とし、折り曲げ曲率半径1.0mmで折り曲げたとき、ハードコートフィルムに割れまたは破断が生じるまでの回数が50万回以上であることが好ましく、80万回以上であることがより好ましく、100万回以上であることがさらに好ましい。折り曲げ試験の詳細な測定方法については後述する。
【0013】
(鉛筆硬度)
ハードコートフィルムの硬度は、日本工業規格(JIS) K5600-5-4(1999)に従って測定した鉛筆硬度が、5H以上であることが好ましく、6H以上であることがより好ましく、8H以上であることが更に好ましい。
【0014】
<支持体>
本発明のハードコートフィルムの支持体について説明する。
【0015】
支持体は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。支持体はポリマー樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
(ポリマー樹脂)
ポリマー樹脂としては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
【0017】
例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体や上記ポリマー同士を混合したポリマーも例として挙げられる。
【0018】
支持体は、トリアセチルセルロースフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエステルイミドフィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムから選択されるいずれかであることが好ましい。
【0019】
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS P8115(2001)に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、支持体として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報及び特表2016-521216号公報に記載のポリイミドを支持体として好ましく用いることができる。
【0020】
また、支持体は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0021】
(柔軟化素材)
支持体は、上記のポリマー樹脂を更に柔軟化する素材を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
【0022】
柔軟化素材は、ポリマー樹脂に単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、樹脂と混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて支持体としても良い。
【0023】
これらの柔軟化素材を混合する量は、とくに制限はなく、単独で十分な破断折り曲げ回数を持つポリマー樹脂を単独でフィルムの支持体としても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
【0024】
(その他の添加剤)
支持体には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は支持体を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
【0025】
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾオキサジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。ベンゾオキサジン化合物としては、例えば特開2014-209162号公報段落0031に記載されているものを用いることができる。支持体中の紫外線吸収剤の含有量は、例えば支持体に含まれる樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013-111835号公報段落0032も参照できる。なお、本発明においては、耐熱性が高く揮散性の低い紫外線吸収剤が好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、例えば、UVSORB 101(富士フイルムファインケミカルズ株式会社製)、TINUVIN 360、TINUVIN 460、TINUVIN 1577(BASF社製)、LA-F70、LA-31、LA-46(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0027】
支持体は、透明性の観点から、支持体に用いる柔軟性素材及び各種添加剤と、ポリマー樹脂との屈折率の差が小さいことが好ましい。
【0028】
(支持体の厚み)
支持体の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。支持体の厚みが薄くなれば、折れ曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折れ曲げでも、支持体の破断が生じなくなる。一方、支持体取り扱いの容易さの観点から支持体の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
【0029】
(支持体の作製方法)
支持体は、熱可塑性のポリマー樹脂を熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、支持体を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0030】
<ハードコート層>
本発明のハードコートフィルムのハードコート層について説明する。ハードコート層は、マトリクス成分及び無機微粒子を含有する。
【0031】
(マトリクス成分)
マトリクス成分は、繰り返しの折り曲げ耐性の観点から、押込み弾性率EMが0.001GPa以上1.5GPa以下であることが好ましく、0.01GPa以上1.0GPa以下であることがより好ましく、0.1GPa以上0.5GPa以下であることが更に好ましい。ここで、マトリクス成分の押込み弾性率EMとは、マトリクス成分からなる層(マトリクス層)に対し、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、マトリクス層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率である。後述するように、マトリクス成分がマトリクス形成用組成物の硬化物である場合は、マトリクス形成用組成物を硬化してなる層に対し、ダイヤモンド製knoop圧子を用いて垂直に荷重を加える押込み試験において、マトリクス層の厚みに対して2%押込んだときの押込み弾性率である。
【0032】
マトリクス成分は、重合性官能基を有する化合物を含むマトリクス形成用組成物を電離放射線の照射又は加熱により重合した重合体(硬化物)であることが好ましい。さらに、押込み弾性率EMを上記の範囲とするためには、マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量が250以上であることが好ましく、250以上1000以下であることがより好ましい。なお、マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量が大きすぎる場合には、後述する無機微粒子表面に修飾された官能基との化学結合が少なくなり、硬度や繰り返しの折り曲げ耐性が悪化することがあるが、無機微粒子の平均一次粒径や表面修飾剤を適切なものにすることで結合を補うことができる。
【0033】
マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量eは、下記式(4)から求める。
式中、マトリクス形成用組成物中に含まれる成分1、成分2、…、成分nについて、各成分の質量比率をそれぞれR1、R2、…Rn、各成分の重量平均分子量(低分子化合物の場合は分子量)をそれぞれM1、M2、…、Mn、各成分の1分子中の重合性官能基数をそれぞれC1、C2、…、Cnと表す。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、特段の断りがない限り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置はHLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、屈折率(RI)で検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、m-クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
【0034】
【0035】
(重合性官能基を有する化合物)
マトリクス形成用組成物は、少なくとも重合性官能基を有する化合物を含む。重合性官能基を有する化合物としては、各種モノマー、オリゴマーやポリマーを用いる事ができ、重合性官能基(重合性基)としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
【0036】
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性不飽和基(炭素-炭素不飽和二重結合性基)、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2-ビス{4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2-2-ビス{4-(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
更には、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性モノマーとして、好ましく用いられる。
【0038】
マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量を250以上1000以下にするため、重合性官能基を有する化合物は、重合性官能基当量が250以上1000以下の化合物であることが好ましい。また、重合性官能基を有する化合物は二種類以上を併用してもよく、このとき、重合性官能基当量が250以上の化合物と同250以下の化合物との併用により、マトリクス形成用組成物中の重合性官能基当量が250以上1000以下となるように調整してもよい。
重合性官能基を有する化合物についての重合性官能基当量は、重合性官能基を有する化合物の分子量又は重量平均分子量Mを重合性官能基を有する化合物の1分子中の重合性官能基の数Cで除した値(M/C)である。
【0039】
重合性官能基を有する化合物がモノマーである場合、1分子中の重合性官能基が1個以上6個以下である化合物が好ましく、1個以上3個以下である化合物が更に好ましく、2個である化合物が特に好ましい。重合性官能基を有する化合物がオリゴマーやポリマーである場合、重合性官能基は主鎖末端に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。
【0040】
重合性官能基当量が250以上の化合物の具体例としては、日本化薬(株)製DPCA-120(分子量1947、重合性官能基数6、重合性官能基当量325)、日本合成化学(株)製紫光UV-3000B(分子量18000、官能基数2、官能基当量9000)、同UV-3200B(分子量10000、官能基数2、官能基当量5000)、同UV-3210EA(分子量9000、官能基数2、官能基当量4500)、同UV-3310B(分子量5000、官能基数2、官能基当量2500)、同UV-3700B(分子量38000、官能基数2、官能基当量19000)、同UV-6640B(分子量5000、官能基数2、官能基当量2500)、同UV-2000B(分子量13000、官能基数2、官能基当量6500)、同UV-2750B(分子量3000、官能基数2、官能基当量1500)、新中村化学工業(株)製ATM-35E(分子量1892、官能基数4、官能基当量473)A-GLY-9E(分子量811、官能基数3、官能基当量270)、同A-GLY-20E(分子量1295、官能基数3、官能基当量432)、同A-400(分子量508、官能基数2、官能基当量254)、同A-600(分子量708、官能基数2、官能基当量354)、同A-1000(分子量1108、官能基数2、官能基当量554)、同UA-160TM(分子量2700、官能基数2、官能基当量1350)、同UA-290TM(分子量2900、官能基数2、官能基当量1450)、同UA-4200(分子量1000、官能基数2、官能基当量500)、同UA-4400(分子量1400、官能基数2、官能基当量700)等が挙げられる。
【0041】
ハードコート層中のマトリクス成分の含有量は、10~50体積%であることが好ましく、25~45体積%であることがより好ましい。
【0042】
(重合開始剤)
マトリクス形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
【0043】
重合性官能基を有する化合物が光重合性化合物である場合は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009-098658号公報の段落[0133]~[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65~148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
マトリクス形成用組成物中の重合開始剤の含有率は、マトリクス形成用組成物中の全固形分に対して、0.5~8質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0044】
(その他添加剤)
マトリクス形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0045】
(無機微粒子)
本発明のハードコートフィルムのハードコート層は、無機微粒子を含有する。
ハードコート層に無機微粒子を添加することで硬度を高くすることができる。無機微粒子としては例えば、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、ジルコニア粒子、酸化アルミニウム粒子、ダイヤモンドパウダー、サファイア粒子、炭化ホウ素粒子、炭化ケイ素粒子、五酸化アンチモン粒子などが挙げられる。中でも修飾のしやすさの観点から、シリカ粒子、ジルコニア粒子が好ましい。
【0046】
無機微粒子の表面は有機セグメントを含む表面修飾剤で処理するのが好ましい。表面修飾剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。無機微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましく、中でも修飾のしやすさの観点から、シランアルコキシド表面修飾剤(シランカップリング剤)が好ましい。さらに有機成分との親和性の高い官能基としては単にマトリクス成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、マトリクス成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和二重結合基、もしくは開環重合性基が好ましい。本発明において好ましい無機微粒子表面修飾剤は金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和二重結合基もしくは開環重合性基を同一分子内に有する硬化性樹脂である。同一分子内のエチレン性不飽和二重結合基もしくは開環重合性基の数は、1.0以上5.0以下が好ましく、1.1以上3.0以下であることが更に好ましい。同一分子内のエチレン性不飽和二重結合基もしくは開環重合性基の数を上記の範囲にすることで、マトリクス成分と無機微粒子との結合を強固にすることができる。
【0047】
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン等のエチレン性不飽和二重結合基を有するシランカップリング剤や、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の開環重合性基を有するシランカップリング剤が挙げられる。より具体的には、KBM-303、KBM-403、KBM-503、KBM-5103(いずれも信越化学工業(株)製)や、下記構造式で表されるシランカップリング剤C-1、C-2等が挙げられる。
【0048】
【0049】
【0050】
無機微粒子は、1分子内に2つ以上の重合性官能基を有するシランカップリング剤で修飾された粒子であることがより好ましい。
【0051】
無機微粒子は、無機微粒子の表面積1nm2当たり0.2~4.0個の表面修飾剤が結合または吸着していることが好ましく、1nm2当たり0.5~3.0個がより好ましく、1nm2当たり0.8~2.0個が更に好ましい。1nm2当たり0.2個よりも少ないと、十分な表面修飾の効果が得られない場合がある。また、1nm2当たり4.0個よりも多いと、無機微粒子表面から遊離する修飾剤が生じやすい。
【0052】
これらの無機微粒子の表面修飾は、溶液中でなされることが好ましい。溶液中で無機微粒子を合成したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、無機微粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、さらには無機微粒子を微細分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でも良い。表面修飾剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0053】
無機微粒子の平均一次粒径は、3~100nmであり、4~50nmであることが好ましく、5~20nmであることがより好ましい。平均一次粒径を上記の範囲にすることで、マトリクス成分と無機微粒子との結合を強固にすることができる。
ハードコートフィルム中の無機微粒子の平均一次粒径は、ハードコートフィルムを薄片化して得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて適切な倍率(40万倍程度)で観察し、一次粒子100個のそれぞれの直径を測長してその体積を算出し、累積の50%粒径を平均一次粒径とすることで求める。粒子が球形でない場合には、長径と短径の平均値をその一次粒子の直径とみなす。薄片試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた薄片加工法などにより作成できる。粉体粒子または粒子分散液中の粒子を測定する場合は、粉体粒子または粒子分散液を上記同様TEMで観察して、平均一次粒径を算出する。
【0054】
無機微粒子は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は粒径が異なるものを用いるのが、ハードコート層中の粒子の体積充填率を上げる観点で好ましい。
【0055】
ハードコート層中の無機微粒子の体積比率は、50体積%以上、90体積%以下である。50体積%以上とすることで、ハードコートフィルムのE10-E2を2GPa以上にすることができる。また、90体積%以下とすることで、膜を形成しやすくなる。
【0056】
無機微粒子は、粒子の強度の観点から中実粒子であることが好ましい。無機微粒子の形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であってもよい。
【0057】
(膜厚)
ハードコート層の膜厚は特に限定されないが、1~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、10~20μmであることが更に好ましい。
ハードコート層の厚みは、ハードコートフィルムの断面を光学顕微鏡で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
【0058】
<その他の層>
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層以外の層を有してもよい。例えば、基材とハードコート層との間に密着性を向上させるための易接着層を有する態様、帯電防止性を付与するための帯電防止層を有する態様や、ハードコート層の上に、防汚性を付与するための防汚層や耐擦傷性を付与するための耐擦傷層を有する態様が好ましく挙げられ、これらを複数備えていても良い。
例えば、ハードコートフィルムのハードコート層の支持体とは反対側の最表面に、更に耐擦傷層を設けることも好ましく、これにより耐擦傷性を向上することができる。
本発明における式(1)~(3)を満たすハードコート層を有するハードコートフィルムは、前述したマトリクス形成用組成物と無機微粒子とを含むハードコート層形成用組成物(塗布液)を調製し、ハードコート層形成用組成物を支持体上に塗布して、光又は熱により硬化させてハードコート層を形成することにより製造することが好ましい。また、本発明の耐擦傷層付きハードコートフィルムは、本発明のハードコートフィルムのハードコート層上に、後述の1分子中の重合性官能基数が3つ以上の化合物を含有する耐擦傷層形成用組成物(塗布液)を塗布し、光又は熱により硬化させて耐擦傷層を形成することにより製造することが好ましい。
【0059】
ハードコート層形成用組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、無機微粒子と極性が近い物を選ぶのが分散性を向上させる観点で好ましい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、カーボネート系溶剤、芳香族系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、分散性を著しく悪化させない範囲で複数種混ぜて用いてもよい。
【0060】
(耐擦傷層)
耐擦傷層としては、1分子中の重合性官能基数が3つ以上の化合物の硬化物を耐擦傷層の全質量に対して80質量%以上含有する層であることが好ましい。
【0061】
1分子中の重合性官能基数が3つ以上の化合物は、モノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよい。化合物の1分子中の重合性官能基数が3つ以上であると、緻密な三次元架橋構造が形成しやすく、重合性官能基当量(重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を持つ場合は一般的にアクリル当量と呼ばれる)の小さな化合物を用いても、耐擦傷層の押し込み硬度を高くすることができる。耐擦傷層の押し込み硬度は300MPa以上であることが好ましい。
1分子中の重合性官能基数が3つ以上の化合物の硬化物の含有率は、耐擦傷層の全質量に対して85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0062】
重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0063】
1分子中の重合性官能基数が3つ以上のモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
【0064】
耐擦傷層の膜厚は、0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0065】
(その他添加剤)
耐擦傷層は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、表面改質剤、重合開始剤等を含有していてもよい。
【0066】
(耐擦傷性)
耐擦傷層は、1000g/cm2の荷重をかけたスチールウールで表面を擦る耐擦傷試験において、目視で観察できる傷が生じるまでの擦り回数が100往復以上であることが好ましく、1000往復以上であることがより好ましく、10000往復以上であることが更に好ましい。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
【0068】
[基材の作製]
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
【0069】
[基材S-1の作製]
100gのポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの基材S-1を得た。
【0070】
[シランカップリング剤の合成]
(シランカップリング剤C-1の合成)
還流冷却器、温度計を付けたフラスコに信越化学工業製KBE-9007 13.6gとペンタエリスリトールトリアクリレート16.4gとジラウリン酸ジブチル錫0.1g、トルエン70.0gを添加し、室温で12時間撹拌した。撹拌後、メチルハイドロキノン500ppm(parts per million)を加え、減圧留去を行い、構造式(1)で表わされるシランカップリング剤C-1を得た。
【0071】
【0072】
[シランカップリング剤C-2の合成]
還流冷却器、温度計を付けたフラスコに信越化学工業製KBE-9007 9.1gとジペンタエリスリトールペンタアクリレート 20.9g ジラウリン酸ジブチル錫0.1g、トルエン70.0gを添加し、室温で12時間撹拌した。撹拌後減圧留去を行い、構造式(2)で表わされるシランカップリング剤C-2を得た。
【0073】
【0074】
[シリカ粒子の作製]
(シリカ粒子P-1の作製)
撹拌機、滴下装置および温度計を備えた容量200Lの反応器に、純水89.46kgと、28質量%アンモニア水0.10kgとを仕込み、撹拌しながら液温を90℃に調節した。反応器中の液温を90℃に保持しながら、滴下装置からテトラメトキシシラン10.44kgを102分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに120分間、液温を上記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行った。得られたコロイド溶液をロータリーエバポレーターにより13.3kPaの減圧下において38.8kgまで濃縮し、SiO2濃度10.0質量%のシリカ粒子P-1を得た。シリカ粒子P-1の平均一次粒径は5nmであった。
【0075】
(シリカ粒子P-2の作製)
テトラメトキシシランを114分かけて滴下した以外はシリカ粒子P-1と同様の方法で、シリカ粒子P-2を得た。シリカ粒子P-2の平均一次粒径は15nmであった。
【0076】
(シリカ粒子P-3の作製)
テトラメトキシシランを156分かけて滴下した以外はシリカ粒子P-1と同様の方法で、シリカ粒子P-3を得た。シリカ粒子P-3の平均一次粒径は50nmであった。
【0077】
(シリカ粒子P-4の作製)
テトラメトキシシランを240分かけて滴下した以外はシリカ粒子P-1と同様の方法で、シリカ粒子P-4を得た。シリカ粒子P-4の平均一次粒径は120nmであった。
【0078】
(シリカ粒子P-13の作製)
テトラメトキシシランを216分間かけて滴下した以外はシリカ粒子P-1と同様の方法で、シリカ粒子P-13を得た。シリカ粒子P-13の平均一次粒径は100nmであった。
【0079】
(シリカ粒子P-5の作製)
300gのシリカ粒子P-1を、撹拌機を備えた内容積1Lのガラス製反応器に仕込んだ。これに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM-503)6.75gを、メチルアルコール20gに溶解させた溶液を滴下して混合した。その後、混合撹拌しながら95℃で約2時間加熱処理を行った。冷却後、1-メトキシ-2-プロパノール100gを加え、副生したメタノールを減圧留去した。さらに1-メトキシ-2-プロパノール300gを数回に分けて加え、固形分が60質量%となるように共沸により水を減圧留去し、シリカ粒子P-5を得た。なお、固形分は、150℃で30分間加熱を行い、前後の重量変化から算出した。
【0080】
(シリカ粒子P-6の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-2に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2.25gに変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-6を得た。
【0081】
(シリカ粒子P-7の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-3に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.68gに変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-7を得た。
【0082】
(シリカ粒子P-8の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-4に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.28gに変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-8を得た。
【0083】
(シリカ粒子P-14の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-13に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.34gに変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-14を得た。
【0084】
(シリカ粒子P-9の作製)
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(6.75g)をシランカップリング剤C-1(13.7g)に変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-9を得た。
【0085】
(シリカ粒子P-10の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-2に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(6.75g)をシランカップリング剤C-1(4.6g)に変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-10を得た。
【0086】
(シリカ粒子P-11の作製)
シリカ粒子P-1をシリカ粒子P-2に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(6.75g)をシランカップリング剤C-2(6.6g)に変更した以外はシリカ粒子P-5と同様の方法で、シリカ粒子P-11を得た。
【0087】
(シリカ粒子P-12の作製)
シリカ粒子P-2(300g)に対して1-メトキシ-2-プロパノール(100g)を加え、副生したメタノールを減圧留去した。さらに1-メトキシ-2-プロパノール(300g)を数回に分けて加え、固形分が60質量%となるように共沸により水を減圧留去し、シリカ粒子P-12を得た。
【0088】
[ハードコートフィルムの作製]
(ハードコート層形成用塗布液の調製)
下記表1及び表2に記載の組成(質量%)で各成分を混合してハードコート層形成用塗布液HC-1~HC-20を調製した。なお、シリカ粒子の組成は、固形分60質量%の分散液としての値である。
【0089】
【0090】
【0091】
A-400:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
A-200:ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
A-1000:ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
DPCA-120:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名KAYARAD DPCA-120(日本化薬(株)製)
DPCA-60:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名KAYARAD DPCA-60(日本化薬(株)製)
DPCA-20:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名KAYARAD DPCA-20(日本化薬(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
DCP-A:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、商品名ライトアクリレート DCP-A(共栄化学(株)製)
UA-33H:ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製)
A-DPH-6E:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド付加物(新中村化学工業(株)製)
イルガキュア184:光重合開始剤(BASF製)
【0092】
(ハードコートフィルムAの作製)
基材S-1上に、ハードコート層形成用塗布液HC-1を、硬化後の厚みが17μmとなるようにグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムAを作製した。
【0093】
(ハードコートフィルムB~Tの作製)
塗布液HC-1の代わりに塗布液HC-2~20を使用した以外は、ハードコートフィルムAと同様にしてハードコートフィルムB~Tを作製した。
【0094】
[ハードコートフィルムの評価]
作製したハードコートフィルムを、以下の方法によって評価した。
【0095】
(押込み弾性率)
各ハードコートフィルムのハードコート層表面に対し、HM2000型硬度計(フィッシャーインスツルメンツ社製、ダイヤモンド製Knoop圧子)を用い、最大押込み深さが0.34μm(ハードコート層の厚みに対して2%)および1.7μm(同10%)になるように最大荷重を調整し、押し込み速度10秒、クリープ5秒の条件で押込み試験を行い、各押込み深さでの押込み弾性率を求めた。
【0096】
(ハードコート層の無機微粒子体積比率)
ハードコートフィルム表面をスクレーパーでそぎ取り、ハードコート層を10g以上回収して質量を測定した。回収したハードコート層を大気雰囲気下において600℃で3時間加熱し、マトリクス成分を燃焼させて無機微粒子を回収し、質量を測定した。マトリクス成分の比重を1.2、シリカ粒子の比重を2.2とし、ハードコート層中の無機微粒子体積比率を求めた。
【0097】
(鉛筆硬度)
JIS K 5600-5-4(1999)に準拠して測定した。
【0098】
(耐屈曲性(繰り返しの折り曲げ耐性)評価)
ハードコートフィルムから幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型、折り曲げ曲率半径1.0mm)を用いて、ハードコート層側が曲げ内側になるようにして繰り返しの耐屈曲性試験を行った。試料フィルムに割れまたは破断が生じるまでの回数により、以下の基準で評価した。
A:100万回以上
B:80万回以上、100万回未満
C:50万回以上、80万回未満
D:10万回以上、50万回未満
E:10万回未満
【0099】
(マトリクス成分の押込み弾性率)
それぞれのハードコート層形成用塗布液に対して、シリカ粒子を添加せずに調製したマトリクス層形成用組成物を作製し、ハードコート層と同様の方法により基材S-1上にマトリクス層を形成した。マトリクス層の厚みは17μmになるように塗布量を調整した。マトリクス層表面に対し、最大押込み深さが0.34μm(マトリクス層の厚みに対して2%)になるように最大荷重を調整した以外はハードコートフィルムA~Tと同様の押込み試験を行い、マトリクス成分の押込み弾性率EMを測定した。評価結果を下記表3及び表4に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
[耐擦傷層付きハードコートフィルムの作製]
(ハードコートフィルムA-2の作製)
基材S-1上に、硬化後の厚みが17μmとなるようにハードコート層形成用塗布液HC-1をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.5%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら20W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量20mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムA-2を作製した。
【0103】
(耐擦傷層形成用塗布液の調製)
下記表5に記載の組成(質量%)で各成分を混合して耐擦傷層形成用塗布液SC-1、SC-2を調製した。
【0104】
【0105】
イルガキュア127:重合開始剤(BASF製)
RS-90:表面改質剤、商品名 メガファック RS-90(DIC(株)製)
【0106】
(耐擦傷層付きハードコートフィルムUの作製)
ハードコートフィルムA-2のハードコート層上に、耐擦傷層形成用塗布液SC-1をグラビアコーターを用いて、硬化後の厚みが0.1μmになるように塗布し、100℃で乾燥した。その後、80℃のホットプレート上において、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるよう窒素パージしながら160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量1200mJ/cm2の紫外線を塗膜側から照射して硬化させて、耐擦傷層付きハードコートフィルムUを作成した。
【0107】
(耐擦傷層付きハードコートフィルムVの作製)
耐擦傷層形成用塗布液をSC-2に変更し、硬化後の厚みを1.0μmとした以外は耐擦傷層付きハードコートフィルムUと同様にして、耐擦傷層付きハードコートフィルムVを作成した。
【0108】
[耐擦傷層付きハードコートフィルムの評価]
作製した耐擦傷層付きハードコートフィルムを、以下の方法によって評価した。
【0109】
(耐擦傷性)
耐擦傷層付きハードコートフィルムの耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:1000g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復、10000往復
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を評価した。
A :非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B :注意深く見ると弱い傷が見えるが、問題にならない
C :一目見ただけで分かる傷があり、非常に目立つ
【0110】
評価結果を下記表6に示す。
【0111】
【0112】
表3及び表4に示したように、実施例のハードコートフィルムは、硬度と繰り返しの折り曲げ耐性の両方に優れていた。一方、比較例1~6、9のハードコートフィルムは、E2が8GPaより大きく、繰り返しの折り曲げ耐性が劣り、比較例7、8、11のハードコートフィルムは、E10が8GPaより小さいため、鉛筆硬度が劣っていた。また、比較例10のハードコートフィルムは、平均一次粒径が100nmより大きいため、鉛筆硬度、繰り返しの折り曲げ耐性ともに劣っていた。また、表6に示したように、耐擦傷層を設けた実施例10、11は、硬度、繰り返しの折り曲げ性、耐擦傷性に優れていた。
本発明によれば、硬度が高く、繰り返し折り曲げ耐性に優れるハードコートフィルム、および耐擦傷性に優れる耐擦傷層付きハードコートフィルムを提供することができる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年3月9日出願の日本特許出願(特願2018-43373)、及び2018年9月28日出願の日本特許出願(特願2018-185805)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。