(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116309
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】細菌株を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20220802BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220802BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20220802BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220802BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220802BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220802BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K35/741 ZNA
A61P1/04
A61K39/02
A61P37/04
A23L33/135
C12N1/20 E
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091401
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2018217285の分割
【原出願日】2017-03-06
(31)【優先権主張番号】1603817.6
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1612191.5
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1616022.8
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518031664
【氏名又は名称】フォーディー ファーマ ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】4D PHARMA PLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ベルナリエ-ドナディレ アニク
(72)【発明者】
【氏名】クロウゼット ロウリーン
(72)【発明者】
【氏名】ハボウジット クロエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内臓過敏を処置及び防止するための組成物を提供する。
【解決手段】内臓過敏を処置または防止する方法における使用のための、Blautia属の細菌株を含む組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、哺乳動物の消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び疾患の処置におけるかかる組成物の使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸は、子宮内では無菌と考えられているが、出生直後に様々な母体及び環境微生物に曝される。その後、微生物の定着及び遷移の動的期間が生じ、これは、分娩様式、環境、食事及び宿主遺伝子型などの因子によって影響され、これらの因子の全てが、特に若年期において、腸内微生物叢の組成に影響を及ぼす。その後、微生物叢は安定して成人様になる[1]。ヒト腸内微生物叢は、2つの主要な細菌分類(門):Bacteroidetes及びFirmicutes;が存在度レベルにおいて多数派を占める1500を超える種々のファイロタイプを含有する[2]及び[3]。ヒト腸の細菌定着から生じる成功裏の共生関係は、広範な代謝的、構造的、保護的及び他の有益な機能を生じさせてきた。定着した腸の代謝活性の向上は、さもなければ難消化性の食事成分が副生成物の放出と共に分解されて宿主に重要な栄養源及びさらなる健康効果をもたらすということを確実にする。同様に、腸内微生物叢の免疫学的重要性は、よく認識されており、共生細菌の導入後に機能的に再構成される損なわれた免疫系を有する無菌動物において実証されている[4、5、6]。
【0003】
微生物叢組成の劇的な変化は、胃腸障害、例えば、炎症性腸疾患(IBD)において記録されてきた。例えば、ClostridiumクラスターXIVa及びClostridiumクラスターXI(F.prausnitzii)細菌のレベルは、IBD患者において低減されているが、E.Coliの数は増加しており、腸内の共生生物と病原性共生生物とのバランスのシフトを示唆している[7、8、9、10及び11]。
【0004】
ある特定の細菌株が動物の腸において有し得る潜在的なプラス効果の認識において、種々の株が、種々の疾患の処置における使用のために提案されてきた(例えば、[12]、[13]、[14]、[15]を参照されたい)。大部分のLactobacillus及びBifidobacterium株を含めた多くの株が、種々の腸障害を処置する際の使用のために提案されてきた(レビューには[16]を参照されたい)。また、Blautia属の株が、消化生態系の微生物バランスを調節する際の使用のために提案されてきた(WO01/85187)。しかし、種々の細菌株と種々の疾患との間の関係、ならびに、特定の細菌株の、腸に対する、全身レベルでの、及びいずれか特定のタイプの疾患に対しての正確な効果は、あまり特徴付けられていない。
【0005】
腸細菌を使用した新規の治療を開発することができるように特徴付けられる腸細菌の潜在的効果が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】[12]WO2013/050792
【特許文献2】[13]WO03/046580
【特許文献3】[14]WO2013/008039
【特許文献4】[15]WO2014/167338
【特許文献5】WO01/85187
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】[1]Spor et al.(2011) Nat Rev Microbiol.9(4):279-90.
【非特許文献2】[2]Eckburg et al.(2005) Science.10;308(5728):1635-8.
【非特許文献3】[3]Tap et al.(2009),Environ Microbiol,11(10):2574-84.
【非特許文献4】[4]Macpherson et al.(2001) Microbes Infect.3(12):1021-35
【非特許文献5】[5]Macpherson et al.(2002) Cell Mol Life Sci.59(12):2088-96.
【非特許文献6】[6]Mazmanian et al.(2005) Cell 15;122(1):107-18.
【非特許文献7】[7]Frank et al.(2007) PNAS 104(34):13780-5.
【非特許文献8】[8]Scanlan et al.(2006) J Clin Microbiol.44(11):3980-8.
【非特許文献9】[9]Kang et al.(2010) Inflamm Bowel Dis.16(12):2034-42.
【非特許文献10】[10]Machiels et al.(2013) Gut.63(8):1275-83.
【非特許文献11】[11]Lopetuso et al.(2013),Gut Pathogens,5:23
【非特許文献12】[16]Lee and Lee(2014) World J Gastroenterol.20(27):8886-8897.
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、内臓過敏を処置及び防止するための新規の治療を開発した。特に、本発明者らは、Blautia属由来の細菌株が内臓過敏を低減させるのに有効であり得るということを確認した。実施例において記載されているように、Blautia hydrogenotrophicaを含む組成物の経口投与は、内臓過敏及び過敏性腸症候群(IBS)のラットモデルにおいて内臓過敏を低減させ得る。そのため、第1実施形態において、本発明は、内臓過敏を処置または防止する方法における使用のための、Blautia属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSと診断された対象において内臓過敏を処置または防止する方法における使用のための、Blautia属の細菌株を含む組成物を提供する。他の好ましい実施形態において、本発明は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛または、より好ましくは、IBSと診断された対象において内臓過敏を処置または防止する方法における使用のための、Blautia属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0010】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、腹部における、好ましくは胃腸管における、最も好ましくは下部胃腸管における内臓過敏を処置または防止する際の使用のための、Blautia属の細菌株を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、盲腸、結腸または直腸において内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、組成物における細菌株は、Blautia hydrogenotrophicaのものである。近縁の株、例えば、Blautia hydrogenotrophicaの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%
、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する細菌株が使用されてもよい。好ましくは、細菌株は、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。最も好ましくは、組成物における細菌株は、受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株である。
【0012】
本発明のさらなる実施形態において、組成物における細菌株は、Blautia stercorisのものである。近縁の株、例えばBlautia stercorisの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する細菌株が使用されてもよい。好ましくは、細菌株は、配列番号1または3と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号3に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号3によって表される16s rRNA配列を有する。
【0013】
本発明のさらなる実施形態において、組成物における細菌株は、Blautia wexleraeのものである。近縁の株、例えば、Blautia wexleraeの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する細菌株が使用されてもよい。好ましくは、細菌株は、配列番号2または4と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号4に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号4によって表される16s rRNA配列を有する。
【0014】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、経口投与用である。本発明の株の経口投与は、内臓過敏を処置するのに有効であり得る。また、経口投与は、患者及び施術者にとって便利であり、腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にする。
【0015】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、1以上の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌株を含む。凍結乾燥は、細菌の送達を可能にする安定な組成物を調製するのに有効かつ便利な技術であり、実施例において有効な組成物を提供することが示されている。
【0017】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含む食品を提供する。
【0018】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記に記載されている組成物を含むワクチン組成物を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、内臓過敏を処置または防止する方法であって、Blautia属の細菌株を含む組成物を投与することを含む上記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】BH集団のqPCRによる測定であり、BH凍結乾燥物が与えられた動物の14及び28日目のBHの増加を示している。
【
図2】膨張への動物の応答に対するBH培養物及び凍結乾燥物の影響であり、BH組成物が与えられた動物に関する濃度の低減を示している。
【
図3】微生物叢に対するBH培養物の影響であり、1日量のBH培養物が与えられたラットにおけるSRBの1logの減少を示している。
【
図5】微生物叢発酵-短鎖脂肪酸に対するBH凍結乾燥物の影響であり、BHで処置したラットの酢酸産生を示している。
【
図6】微生物叢発酵-硫化物に対するBH凍結乾燥物の影響であり、硫化物産生の減少を示している。
【
図7】膨張への動物の応答に対するBH凍結乾燥物の影響。ラットMIH IBS+BH:CRD試験。
【
図8】膨張への動物の応答に対するBH凍結乾燥物の影響。ラットMIH IBS+BH:全データ-CRD試験。
【
図9-2】硫化物に対するBH凍結乾燥物の影響。ラットMIH IBS+BH:硫化物濃度(mg/L)。
図9aは、BH凍結乾燥物または対照溶液による処置後の各ラットについての盲腸の硫化物濃度を示す。
図9bは、BH凍結乾燥物または対照溶液による処置後のIBS-微生物叢関連ラットにおいて測定された盲腸の硫化物濃度の平均+/-標準偏差を示す。
【
図10-2】硫化物に対するBH凍結乾燥物の影響。ラットMIH IBS+BH:全データ-硫化物濃度(mg/L)。
図10aは、BH凍結乾燥物または対照溶液による処置後の各ラットについての盲腸の硫化物濃度を示す。
図10bは、BH凍結乾燥物または対照溶液による処置後のIBS-微生物叢関連ラットにおいて測定された盲腸の硫化物濃度の平均+/-標準偏差を示す。
【
図11】異なる濃度の細菌種が与えられた健常なHIMラットの糞便サンプルにおけるB.hydrogenotrophicaのHIMラット-RT-PCR定量での投与研究。
【
図12】健常なHIMラットへの経口投与(10
9/日)後のB.hydrogenotrophicaの通過時間。
【
図13】14日間投与後(B.hydrogenotrophicaを10
10/日/ラットで投与)の健常なHIMラット(RT-PCR定量)の糞便及び盲腸サンプルにおいて見られるB.hydrogenotrophicaレベルの比較。
【
図14】健常なHIMラットの盲腸内容物における短鎖脂肪酸産生(RMN
1H)に対するB.hydrogenotrophica(10
10/日で14日間)の効果。
【
図15】IBS-HIMラットにおける微生物集団に対するB.hydrogenotrophica投与の影響。
【
図16】B.hydrogenotrophicaで処置した(10
10/日で14日間)IBS-HIMラットにおける硫化物産生。対照ラットは処置しなかった。
【
図17】第一相臨床試験の投与期間(1~16日目)の間の患者の症状の変化。
【
図18】第一相臨床試験のウオッシュアウト期間の間の患者の症状の変化。
【
図19】B.hydrogenotrophica(BlautiX)を含む組成物で28日間処置したまたは処置していないIBS-HMAラットの糞便サンプルにおけるB.hydrogenotrophica集団のqPCR評価。
【
図20】B.hydrogenotrophica(BlautiX)で28日間処置したまたは処置していないIBS-HMAラットにおける、及び非処置の健常なHMAラットにおける結腸直腸膨張への腹部の応答。
【
図21】対照溶液と比較したB.hydrogenotrophica(BlautiX)投与後のIBS HMA-ラット糞便サンプルにおける細菌の計数。
【
図22】B.hydrogenotrophica(Blautix)で28日間処置したまたは処置していないIBS HMAラットの盲腸サンプルにおける硫化物濃度。
【
図23-2】B.hydrogenotrophica(Blautix)で28日間処置したまたは処置していないIBS-HMAラットの盲腸サンプルにおける短鎖脂肪酸(SCFA)濃度。
図23aは、全SCFAの濃度を示す。
図23bは、酢酸、プロピオン酸及び酪酸の濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
細菌株
本発明の組成物は、Blautia属の細菌株を含む。実施例は、この属の細菌が、内臓過敏を処置または防止するのに有用であることを実証している。好ましい細菌株は、Blautia hydrogenotrophica、Blautia stercoris及びBlautia wexlerae種のものである。本発明で使用される他の好ましい細菌株は、Blautia producta、Blautia coccoides及びBlautia hanseniiである。
【0022】
本発明で使用されるBlautia株の例として、Blautia hydrogenotrophica、B.stercoris、B.faecis、B.coccoides、B.glucerasea、B.hansenii、B.luti、B.producta、B.schinkii及びB.wexleraeが挙げられる。Blautia種は、球形または楕円形のいずれであってもよいグラム反応陽性の非運動性細菌であり、全てが、グルコース発酵の主な最終産物として酢酸を産生する偏性嫌気性菌である[17]。Blautiaは、ヒト腸から単離されてよいが、B.productaは、敗血症サンプルから単離されたものである。
【0023】
Blautia hydrogenotrophica(Ruminococcus hydrogenotrophicusとしてこれまでに知られている)は、哺乳動物の腸から単離されており、偏性嫌気性であり、また、H2/CO2を、ヒトの栄養及び健康に重要であり得る酢酸塩に代謝する。Blautia hydrogenotrophicaのタイプの株は、S5a33=DSM10507=JCM14656である。Blautia hydrogenotrophica株S5a36の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、X95624.1である(配列番号5として本明細書に開示されている)。この例示的なBlautia hydrogenotrophica株は、[17]及び[18]に記載されている。S5a33株及びS5a36株は、健常な対象の糞便サンプルから単離した株の2つのサブクローンに相当する。これらは、同一の形態、生理機能及び代謝を示し、同一の16S rRNA配列を有している。そのため、いくつかの実施形態において、本発明で使用されるBlautia hydrogenotrophicaは、配列番号5の16S rRNA配列を有する。
【0024】
受託番号DSM10507で、また、受託番号DSM14294でも寄託されているBlautia hydrogenotrophica細菌を実施例において試験した。該細菌は、本明細書において株BHとも称される。株BHを、1996年1月に受託番号DSM10507で「Ruminococcus hydrogenotrophicus」として、また、2001年5月10日には「S5a33」として受託番号DSM14294でもDeutsche Sammlung von Mikroorganismen[German Microorganism Collection](Mascheroder Weg 1b,38124 Braunschweig,Germany)に寄託した。寄託者は、INRA Laboratoire de Microbiologie CR de Clermont-Ferrand/Theix 63122
Saint Genes Champanelle,Franceである。寄託物の所
有者は、譲渡により4D Pharma Plcに移った。
【0025】
Blautia stercoris株GAM6-1Tの16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号はHM626177である(本明細書において配列番号1と開示されている)。例示的なBlautia stercoris株は、[19]に記載されている。Blautia wexleraeのタイプの株は、WAL14507=ATCC BAA-1564=DSM19850である[17]。Blautia wexlerae株WAL14507Tの16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号はEF036467である(本明細書において配列番号2と開示されている)。この例示的なBlautia wexlerae株は、[17]に記載されている。
【0026】
好ましいBlautia stercoris株は、本明細書において株830とも称されている、受託番号NCIMB42381で寄託されている株である。830株の16S rRNA配列は、配列番号3において付与されている。株830を、「Blautia stercoris830」として2015年3月12日にGT Biologics Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21
9YA,Scotland)に寄託し、受託番号NCIMB42381が割り当てられた。GT Biologics Ltd.は、その後、その名称を4D Pharma Research Limitedに変更した。
【0027】
好ましいBlautia wexlerae株は、本明細書において株MRX008とも称されている、受託番号NCIMB42486で寄託されている株である。MRX008株の16S rRNA配列は、配列番号4において付与されている。株MRX008を、「Blaqutia/Ruminococcus MRx0008」として2015年11月16日に4D Pharma Research Ltd.(Life Sciences Innovation Building,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって国際寄託当局NCIMB、Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託し、受託番号NCIMB42486が割り当てられた。
【0028】
実施例において試験されている株と近縁の細菌株もまた、内臓過敏を処置または防止するのに有効であると期待される。ある特定の実施形態において、本発明において使用される細菌株は、Blautia hydrogenotrophicaの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。
【0029】
ある特定の実施形態において、本発明において使用される細菌株は、Blautia stercorisの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号1または配列番号3と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号3に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号3によって表される16s rRNA配列を有する。ある特定の実施形態において、本発明において使用される細菌株は、Blautia wexleraeの細菌株の16s rRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一
である16s rRNA配列を有する。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号2または配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一である16s rRNA配列を有する。好ましくは、配列同一性は、配列番号4に対するものである。好ましくは、本発明において使用される細菌株は、配列番号4によって表される16s rRNA配列を有する。
【0030】
受託番号DSM10507/14294で寄託されている細菌のバイオタイプである、または受託番号NCIMB42381及びNCIMB42486で寄託されている細菌のバイオタイプである細菌株もまた、内臓過敏を処置または防止するのに効果的であることが期待されている。バイオタイプは、同じまたは非常に類似する生理的及び生化学的特徴を有する近縁の株である。
【0031】
受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌のバイオタイプであり、本発明での使用に好適である株は、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌の他のヌクレオチド配列をシークエンスすることによって同定されてよい。例えば、実質的に全ゲノムがシークエンスされてよく、本発明で使用するバイオタイプ株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%もしくは99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有していてよい。例えば、いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、そのゲノムの少なくとも98%にわたって少なくとも98%の配列同一性、またはそのゲノムの99%にわたって少なくとも99%の配列同一性を有する。バイオタイプ株を同定するのに使用される他の好適な配列は、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)5、もしくはREPまたは[20]を含んでいてよい。バイオタイプ株は、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有していてよい。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、DSM10507/14294として寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の対応する配列と少なくとも97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有しており、配列番号5と少なくとも99%同一である(例えば、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%同一である)16S rRNA配列を含む。いくつかの実施形態において、バイオタイプ株は、DSM10507/14294として寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の対応する配列と少なくとも97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有する配列を有し、配列番号5の16S rRNA配列を有する。
【0032】
代替的には、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明での使用に好適である株は、受託番号DSM10507/14294の寄託物、受託番号NCIMB42381の寄託物、または受託番号NCIMB42486の寄託物、ならびに制限断片分析及び/またはPCR分析を使用することによって、例えば、蛍光増幅断片長多型分析(FAFLP)及び反復DNA要素(rep)-PCR指紋検査、またはタンパク質プロファイリング、または部分16Sもしくは23s rDNAシークエンシングを使用することによって同定されてよい。好ましい実施形態において、かかる技術は、他のBlautia hydrogenotrophica、Blautia stercorisまたはBlautia wexlerae株を同定するのに使用されてよい。
【0033】
ある特定の実施形態において、受託番号DSM10507/14294、NCIMB4
2381またはNCIMB42486で寄託されている細菌のバイオタイプでありかつ本発明での使用に好適である株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析されるとき、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば[21]を参照されたい)を使用するとき、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌と同じパターンを付与する株である。代替的には、バイオタイプ株は、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0034】
本発明の組成物及び方法において有用である他のBlautia株、例えば、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌のバイオタイプは、実施例において記載されているアッセイを含め、いずれの適切な方法またはストラテジーを使用して同定されてもよい。例えば、本発明で使用される株は、細菌を培養してラットに投与し、膨張アッセイ(distension assay)において試験することによって同定されてよい。特に、受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている細菌と同様の成長パターン、代謝型及び/または表面抗原を有する細菌株は、本発明において有用であり得る。有用な株は、DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486株に匹敵する微生物叢調節活性を有する。特に、バイオタイプ株は、実施例において示されている効果に匹敵する、内臓過敏モデルに対する効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。
【0035】
本発明の特に好ましい株は、受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株である。これは、実施例において試験されて、疾患を処置するのに効果的であることが示される例示的なBH株である。そのため、本発明は、特に、本明細書に記載されている疾患の治療に使用される、受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株またはその誘導体の細胞、例えば単離細胞を提供する。
【0036】
受託番号DSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486で寄託されている株の誘導体は、娘株(子孫)、またはオリジナルから培養された(サブクローニングされた)株であってよい。本発明の株の誘導体は、生物活性を取り除くことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾されてよい。特に、本発明の誘導体株は、治療的に活性である。誘導体株は、オリジナルのDSM10507/14294、NCIMB42381またはNCIMB42486株と匹敵する微生物叢調節活性を有する。特に、誘導体株は、実施例において示されている効果と匹敵する、内臓過敏モデルに対しての効果を引き出し、これは、実施例において記載されている培養及び投与プロトコルを使用することによって同定されてよい。DSM10507/14294株の誘導体は、概して、DSM10507/14294株のバイオタイプである。NCIMB42381株の誘導体は、概して、NCIMB42381株のバイオタイプである。NCIMB42486株の誘導体は、概して、NCIMB42486株のバイオタイプである。
【0037】
受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株の細胞への言及は、受託番号DSM10507/14294で寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するいずれの細胞も包含し、かかる細胞は本発明によって包含される。受託番号NCIMB42381で寄託されているBlautia stercoris株の細胞への言及は、受託番号NCIMB42381で寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するいずれの細胞も包含し、かかる細胞は本発明によって包含される。受託番号NCIMB42486で寄託されているBla
utia wexlerae株の細胞への言及は、受託番号NCIMB42486で寄託されている株と同じ安全及び治療効能特性を有するいずれの細胞も包含し、かかる細胞は本発明によって包含される。
【0038】
好ましい実施形態において、本発明の組成物における細菌株は生存可能であり、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0039】
治療的使用
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、内臓過敏を処置する際の使用のためのものである。内臓過敏は、胸部、骨盤内、または腹部臓器(器官)の侵害受容器の活性化から結果として生じる、腹部領域に位置する、主観的に疼痛を伴う知覚によって特徴付けられる特定のタイプの疼痛である。内臓過敏は、概して拡散し、局所化が困難であるため、概してより鋭くかつより局所化している体性痛とは対照をなしている。また、内臓過敏は、体性痛とは違って、具体的な構造的病変とは概して関連しない。内臓侵害受容器は、皮膚及び大部分の他の非内臓侵害受容器とは本質的に異なる[22]。
【0040】
内臓過敏は、腹部において概して経験されるが、全ての腹部疼痛が内臓過敏であるというわけではない。対照的に、腹部疼痛には多くの潜在的原因があり、腹部疼痛は、体性痛、関連痛または内臓痛である場合がある。腹部において、体性痛は、炎症器官が原因である場合があり、概して鋭い痛みであり局所化されている。腹部疼痛は、身体(皮膚及び筋肉)過敏症の状態である線維筋痛が原因である場合がある。関連痛は、罹病器官から遠位の皮膚部位において感じられる。
【0041】
内臓過敏は、多くの場合、機能性消化不良及び過敏性腸症候群(IBS)と関連する。しかし、機能性消化不良及びIBSに関連する全ての疼痛が内臓過敏であるというわけではない。実際、IBSを罹っている多くの患者もまた、様々な身体症状を、腹部領域(背痛、胸焼け)及び非腹部領域(腸から体部位的に遠位の体領域における偏頭痛、性交疼痛、筋肉痛)において示す[23]。
【0042】
いくつかの実施形態において、疾患または状態の病因は、腸に影響する。いくつかの実施形態において、疾患または状態の病因は、腸に影響しない。いくつかの実施形態において、疾患または状態の病因は、腸において局所化されていない。いくつかの実施形態において、処置または防止は、腸以外の部位で生じる。いくつかの実施形態において、処置または防止は、腸において、また、腸以外の部位においても生じる。ある特定の実施形態において、疾患または状態は全身性である。
【0043】
内臓過敏は、内臓痛としても知られており、これら2つの用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0044】
実施例において実証されているように、本発明の細菌組成物は、内臓過敏を低減するのに有効であり得る。特に、本発明の細菌組成物は、多くの患者に影響する内臓過敏の兆候である結腸直腸膨張に対する応答を低減することができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腹部における、好ましくは胃腸管における、最も好ましくは下部胃腸管における内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、盲腸、結腸または直腸において内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛または、より好ましくは、IBSに関連する内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クロ
ーン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛、または、より好ましくは、IBSと診断された対象において内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛、または、より好ましくは、IBSの処置において内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSに関連する内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSと診断された対象において内臓過敏の処置または防止における使用のためのものである。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSの処置において内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管、特に結腸または直腸の疼痛を伴う膨張に苦しむ患者において内臓過敏を処置する際の使用のためのものである。
【0047】
IBS及び他の腸状態に関連する不快感及び苦痛のある特定の態様は、胃腸管におけるガスの過剰生成及びこれらの蓄積されたガスのかさ体積が原因である場合がある。種々のガスの体積が増加することで、例えば、腹部膨満を結果として生じさせる場合がある。実施例において示されているように、本発明の細菌組成物は、IBS及び他の腸状態の特定の態様-内臓過敏を処置するのに有効であり得る。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、内臓過敏に対する本発明の細菌組成物の観察される効果は、特定のガス-H2Sに対する細菌の効果、及び腸においてH2Sを合成する硫酸塩還元細菌(SRB)に対する効果に関連し得る。H2Sは、疼痛シグナル伝達分子として重要な役割を有し得、また、実施例において観察される内臓過敏に対する本発明の組成物の効果は、ガス体積に関係するいずれの膨満効果からも独立して疼痛シグナル伝達に影響することによって内臓過敏に寄与し得る、腸におけるH2Sの産生を低減することに関係し得る。実施例は、本発明の細菌組成物が、SRBを低減しかつH2Sを低減するのに有効であり得ることを実証している。いくつかの実施形態において、本発明の細菌組成物は、盲腸においてSRBを低減しかつ/またはH2Sを低減する。SRBは、エネルギーの発生に硫酸還元を使用する嫌気性細菌であり、SRBの例として、Desulfovibrio属、特に、最も豊富な種であるDesulfovibrio piger属のメンバー、また、Desulfobacter、Desulfobulbus及びDesulfotomaculum属のメンバーも挙げられる。
【0048】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、内臓過敏の処置においてSRBによる胃腸管への定着を低減する際の使用のためのものである。かかる実施形態において、組成物は、好ましくは細菌培養物の形態であってよい。かかる実施形態において、組成物は、好ましくは凍結乾燥物であってよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、内臓過敏の処置において胃腸管におけるH2Sレベルを低下させるまたはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。かかる実施形態において、組成物は、好ましくは凍結乾燥物であってよい。
【0049】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、内臓過敏の処置においてSRBによる胃腸管への定着、群生及び/または集団レベルを低減する際の使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、内臓過敏の処置においてSRBによる盲腸への定着、群生及び/または集団レベルを低減する際の使用のためのものである。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、IBSに関連する内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着を低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2
Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または乳児疝痛に関連する内臓過敏の処置において、例えば、クローン病、潰瘍性結腸炎または機能性消化不良に関連する内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着を低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、IBSに関連する内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着、群生及び/もしくは集団レベルを低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または乳児疝痛に関連する内臓過敏の処置において、例えば、クローン病、潰瘍性結腸炎または機能性消化不良に関連する内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着、群生及び/もしくは集団レベルを低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腹部における、好ましくは胃腸管における、より好ましくは下部胃腸管における、盲腸における、結腸における、または直腸における内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着を低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腹部における、好ましくは胃腸管における、より好ましくは下部胃腸管における、盲腸における、結腸における、または直腸における内臓過敏の処置において、SRBによる胃腸管への定着、群生及び/もしくは集団レベルを低減する、H2Sレベルを低下させる、またはH2Sレベルの上昇を防止する際の使用のためのものである。
【0053】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、SRBによる胃腸管への定着を処置する、防止するまたは低減する方法における使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、SRBによる胃腸管への定着、群生及び/または集団レベルを処置する、防止するまたは低減する方法における使用のためのものである。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管におけるH2Sレベルを低下させるまたはH2Sレベルの上昇を防止する方法における使用のためのものである。
【0054】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、健常な対象、または健常な対象の集団と比較したとき、胃腸管におけるSRB及び/またはH2Sのレベルの増加を示すまたは示すことが予期される患者を処置する際の使用のためのものである。
【0055】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、抗生物質処置を受けているもしくは受けた、または細菌性胃腸炎に罹患しているもしくは罹患していた対象において内臓過敏を防止する際の使用のためのものである。抗生物質処置及び細菌性胃腸炎は、内臓過敏より前に起こる場合がありかつ本発明の組成物によって防止される場合がある腸内微生物叢の変化に関連する。本発明の組成物は、抗生物質処置と同時に投与されてよい。
【0056】
好ましい実施形態において、本発明の組成物による処置は、内臓過敏の低減、SRBによる定着の低減、及び/またはH2Sレベルの低減を結果として生じさせる。
【0057】
内臓過敏の処置または防止とは、例えば、症状の重篤度の軽減、または患者にとって問題である増悪の頻度もしくは誘因の範囲の低減を称してよい。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、重篤な内臓過敏を処置または防止する際の使用のためのものである。いくつかの実施形態において、重篤な内臓過敏を有する対象は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛、または、より好ましくは、IBSと診断さ
れた対象である。いくつかの実施形態において、重篤な内臓過敏を有する対象は、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSと診断された対象である。
【0058】
投与の形態
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達及び/または腸への部分もしくは全体定着を可能にするために胃腸管に投与されるべきである。概して、本発明の組成物は、経口で投与されるが、これらは、経直腸的に、鼻腔内に、または頬側もしくは舌下経路を介して投与されてよい。
【0059】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、フォームとして、スプレーまたはゲルとして投与されてよい。
【0060】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、坐薬、例えば肛門坐薬として、例えば、カカオ脂(ココアバター)、合成硬質脂肪(例えば、坐剤用基材、ウィテップゾール)、グリセロ-ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石鹸グリセリン組成物の形態で投与されてよい。
【0061】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、チューブ、例えば、鼻腔栄養チューブ、経口胃チューブ、胃チューブ、経空腸チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、またはポート、例えば胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを付与する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
【0062】
本発明の組成物は、一度で投与されてよく、または処置レジメンの部分として逐次的に投与されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、連日投与されるべきである。実施例は、連日投与が、内臓過敏のラットモデルにおいて成功裏に定着及び臨床的利益を付与することを実証している。
【0063】
実施例はまた、BH投与は、腸への永久定着を結果として生じない場合があり、そのため、長期にわたる定期的投与が、より大きな治療的利益を付与する場合があることも実証している。そのため、実施例は、連日投与に従った、結腸への本発明の細菌株の成功裏の送達を示している。
【0064】
したがって、ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば毎日、2日おきに、または週1回、長期にわたって、例えば少なくとも1週間、2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、6ヶ月間、または1年間定期的に投与される。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、7日間、14日間、16日間、21日間もしくは28日間、または7日、14日、16日、21日もしくは28日以下の間投与される。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、16日間投与される。
【0066】
本発明のある特定の実施形態において、本発明による処置は、患者の腸内微生物叢のアセスメントによって達成される。処置は、本発明の株の送達及び/またはそれによる部分的もしくは全体的定着が達成されず、その結果、効能が観察されないことになるとき、繰り返されてよく、あるいは、処置は、送達及び/または部分的もしくは全体的定着が成功裏でありかつ効能が観察されるときに中止されてよい。
【0067】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、妊娠した動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに、その子宮内の胎児及び/または生まれた後の小児において内臓過敏が発
症するのを防止するために投与されてよい。
【0068】
本発明の組成物は、内臓過敏または内臓過敏に関連する疾患もしくは状態と診断された、あるいは内臓過敏のリスクがあると同定された患者に投与されてよい。組成物は、健常な患者における内臓過敏の発症を防止するための予防対策として投与されてもよい。
【0069】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与されてよい。例えば、患者は、Blautia、特にBlautia hydrogenotrophica、Blautia stercorisまたはBlautia wexleraeによる定着が低減されているか、または該定着がないかであり得る。
【0070】
本発明の組成物は、食品、例えば栄養補助食品として投与されてよい。
【0071】
概して、本発明の組成物は、ヒトの処置のためのものであるが、単胃哺乳動物、例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギを含めた動物を処置するのに使用されてよい。本発明の組成物は、動物の成長及びパフォーマンスを向上させるのに有用である場合がある。動物に投与されるとき、経口胃管栄養法が使用されてよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、組成物が投与されるべき対象は、ヒト成人である。いくつかの実施形態において、組成物が投与されるべき対象は、ヒト乳児である。
【0073】
組成物
概して、本発明の組成物は、細菌を含む。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、凍結乾燥形態で調合される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルを含んでいてよい。
【0074】
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、確立された手順であり、関連のガイダンスは、例えば、参照文献[24、25、26]において入手可能である。実施例は、凍結乾燥物組成物が特に有効であることを実証している。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含んでおり、IBSに関連する内臓過敏の処置のためのもの、好ましくはIBSに関連する内臓過敏の処置においてH2Sレベルを低下させるまたはH2Sレベルの上昇を防止するためのものである。さらに好ましい実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含んでおり、IBSに関連する内臓過敏の処置のためのもの、好ましくは内臓過敏の処置においてSRBによる胃腸管への定着を低減させる際の使用のためのものである。さらに好ましい実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌を含んでおり、IBSに関連する内臓過敏の処置のためのもの、好ましくは、内臓過敏の処置においてSRBによる胃腸管への定着、群生及び/または集団レベルを低減する際の使用のためのものである。
【0075】
代替的には、本発明の組成物は、生きている、活性な細菌培養物を含んでいてよい。実施例は、本発明の細菌の培養物が治療的に有効であることを実証している。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、不活性化されていない、例えば、熱不活性化されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、例えば、熱殺傷されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、弱毒化されていない、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、殺傷されていない、不活性化されていない及び/または弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生きている。例えば、い
くつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、生存可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物における細菌株は生存可能であり、腸に部分的または全体的に定着することが可能である。
【0077】
いくつかの実施形態において、組成物は、生きている細菌株と殺傷されている細菌株との混合物を含む。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化されている。カプセル化は、目標箇所に送達するまで、例えばpHの変化によって引き起こされる場合がある化学的または物理的刺激、例えば圧力、酵素活性または物理的崩壊による破断を通しての劣化から組成物を保護する。いずれの適切なカプセル化方法が使用されてもよい。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリクス内への取り込み、固体担体表面への付着または吸着、凝集によるまたは架橋剤を用いた自己会合、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの後の機械的拘束が挙げられる。本発明の組成物を調製するのに有用であり得るカプセル化についてのガイダンスは、例えば、参照文献[27][28]において入手可能である。
【0079】
組成物は、経口で投与されてよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。カプセル化された製品が好ましい、なぜなら、Blautiaが嫌気性生物であるからである。他の成分(例えばビタミンCなど)が、生体内での送達及び/または部分的もしくは全体的定着ならびに生存を改善するように脱酸素剤及びプレバイオティック基質として含まれていてよい。代替的には、本発明のプロバイオティック組成物は、食品もしくは栄養製品、例えばミルクもしくはホエイベースの発酵乳製品として、または医薬製品として経口で投与されてよい。
【0080】
組成物は、プロバイオティックとして調合されてよい。
【0081】
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株を含む。治療有効量の細菌株は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または部分的もしくは全体的定着を結果として生じさせるのに十分であり得る。
【0082】
例えばヒト成人への細菌の好適な1日量は、約1×103~約1×1011個のコロニー形成単位(CFU);例えば、約1×107~約1×1010CFU;別の例において、約1×106~約1×1010CFU;別の例において、約1×107~約1×1011CFU;別の例において、約1×108~約1×1010CFU;別の例において、約1×108~約1×1011CFUであってよい。
【0083】
ある特定の実施形態において、細菌の用量は、少なくとも109細胞/日、例えば少なくとも1010、少なくとも1011、または少なくとも1012細胞/日である。
【0084】
ある特定の実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して約1×106~約1×1011CFU/g;例えば約1×108~約1×1010CFU/gの量で細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g及び10gであってよい。
【0085】
典型的には、プロバイオティック、例えば本発明の組成物は、少なくとも1の好適なプレバイオティック化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティック化合物は、通常、上部消化管において分解または吸収されない、非消化性炭水化物、例えば、オリゴ-もしくは多糖、または糖アルコールである。公知のプレバイオティクスとして、市販品
、例えば、インスリン及びトランスガラクト-オリゴ糖が挙げられる。
【0086】
ある特定の実施形態において、本発明のプロバイオティック組成物は、組成物の合計重量に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量でプレバイオティック化合物を含む。炭水化物は:フラクト-オリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクト-オリゴ糖、インスリン、イソマルト-オリゴ糖、ペクチン、キシロ-オリゴ糖(またはXOS)、キトサン-オリゴ糖(またはCOS)、β-グルカン、アラビアガム変性及び耐性デンプン(arable gum modified and resistant starches)、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシアファイバ、イナゴマメ、オート麦、ならびにシトラスファイバ;からなる群から選択されてよい。一態様において、プレバイオティクスは短鎖フラクト-オリゴ糖(簡潔のために、以下本明細書においてFOSs-c.cと示す)であり;該FOSs-c.c.は、テンサイ糖の転換によって一般に得られ、3のグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含んでいる消化性炭水化物ではない。
【0087】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含んでいてよい。かかる好適な賦形剤の例は、参照文献[29]において見出され得る。治療的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、薬剤分野において周知されており、例えば参照文献[30]において記載されている。好適な担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例として、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準の薬務に関して選択され得る。医薬組成物は、上記担体、賦形剤または希釈剤として、またはこれに加えて、いずれの好適な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含んでいてもよい。好適な結合剤の例として、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、染料、及びさらなる香味剤が医薬組成物において付与されていてよい。防腐剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられ、例えば、いくつかの実施形態において、防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルから選択される。酸化防止剤及び懸濁剤が使用されてもよい。好適な担体のさらなる例は、サッカロースである。防腐剤のさらなる例は、システインである。
【0088】
本発明の組成物は、食品として調合されてよい。例えば、食品は、例えば栄養補助食品において、本発明の治療効果に加えて、栄養的利益を付与してよい。同様に、食品は、本発明の組成物の風味を向上するように、または組成物を、医薬組成物よりもむしろ、一般食料とより類似することによって、消費するのにより魅力的であるようにするように調合されてよい。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として調合される。用語「ミルクベースの製品」は、変動する脂肪分を有する、いずれの液体または半固体のミルク-またはホエイベースの製品も意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、いずれの処理もしていない粉ミルク及びホエイからの還元ミルク、または加工品、例えばヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であり得る。別の重要な群として、ミルク飲料、例えばホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;ミルク含有食品、例えば、スイーツが挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、Blautia属の1以上の細菌株を含み、いずれの他の属からの細菌も含有せず、または、ほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む。
【0090】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、単一の細菌株または種を含有し、いずれの他の細菌株または種も含有しない。かかる組成物は、ほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の他の細菌株または種を含んでいてよい。かかる組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってよい。いくつかの実施形態において、かかる組成物は、他の種の生物を実質的に含まない凍結乾燥物であってよい。
【0091】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Blautia属の1以上の細菌株、例えば、Blautia hydrogenotrophicaを含み、かついずれの他の細菌属も含有せず、またはほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の属からの細菌を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、単一のBlautia種、例えば、Blautia hydrogenotrophicaを含み、かついずれの他の細菌種も含有せず、またはほんの僅少なもしくは生物学的に関連のない量の別の種からの細菌を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、Blautia、例えば、Blautia hydrogenotrophicaの単一株を含み、かついずれの他の細菌株もしくは種も含有せず、またはほんの僅少なまたは生物学的に関連のない量の別の株または種からの細菌を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1を超える細菌株または種を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1を超える株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45を超える株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3未満の株)を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同種内からの1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、または31~50株を含み、任意選択的に、いずれの他の種からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの1を超える種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35または40を超える種)を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4または3未満の種)を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同属内からの1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、または31~50種を含み、任意選択的に、いずれの他の属からの細菌も含有しない。本発明は、上記のいずれの組み合わせも含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、組成物は、微生物共同体を含む。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、微生物共同体の部分としてBlautia細菌株を含む。例えば、いくつかの実施形態において、Blautia細菌株は、腸において生体内で共生的に生きることができる、他の属からの1以上の(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15または20の)他の細菌株において存在する。例えば、いくつかの実施形態に
おいて、組成物は、異なる属からの細菌株と組み合わせたBlautia hydrogenotrophicaの細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物共同体は、単一の生物、例えば、ヒトの糞便サンプルから得られた2以上の細菌株を含む。いくつかの実施形態において、微生物共同体は、本来は一緒には見られない。例えば、いくつかの実施形態において、微生物共同体は、少なくとも2の異なる生物の糞便サンプルから得られた細菌株を含む。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、同種、例えば、2の異なるヒトからのものである。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、ヒト乳児及びヒト成人である。いくつかの実施形態において、該2の異なる生物は、ヒト及び非ヒト哺乳動物である。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株と同じ安全及び治療効能特性を有するが、受託番号DSM10507/14294で寄託されているBlautia hydrogenotrophica株ではない、またはBlautia hydrogenotrophicaでもなくBlautiaでもない細菌株をさらに含む。
【0095】
本発明の組成物が1を超える細菌株、種または属を含むいくつかの実施形態において、個々の細菌株、種または属は、別々、同時または逐次投与用であってよい。例えば、組成物は、1を超える細菌株、種もしくは属の全てを含んでいてよく、または細菌株、種もしくは属は、別々に貯蔵されてよく、また、別々に、同時にもしくは逐次的に投与されてよい。いくつかの実施形態において、1を超える細菌株、種または属は、別々に貯蔵されているが、使用前に一緒に混合される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明において使用される細菌株は、ヒト成人の糞便から得られる。本発明の組成物が1を超える細菌株を含むいくつかの実施形態において、細菌株の全てがヒト成人の糞便から得られ、または、他の細菌株が存在するとき、ほんの僅少な量で存在する。細菌は、ヒト成人の糞便から得られ本発明の組成物において使用された後に培養されてよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、1以上のBlautia細菌株は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。いくつかの実施形態において、組成物における細菌株(複数可)は、本発明の組成物において唯一の治療的活性剤(複数可)である。
【0098】
本発明による使用のための組成物は、販売承認を必要としてもしなくてもよい。
【0099】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が噴霧乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生きている、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、細菌株が、凍結乾燥または噴霧乾燥されており、また、生存可能でありかつ腸に部分的または全体的に定着することが可能である、上記医薬組成物を提供する。
【0100】
いくつかの場合において、凍結乾燥または噴霧乾燥されている細菌株は、投与前に再構成される。いくつかの場合において、再構成は、本明細書に記載されている希釈剤の使用による。
【0101】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を含んでいてよい。
【0102】
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と;薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって;細菌株が、障害の処置を必要とする対象に投与されるときに該処置に十分な量であり;該障害が、内臓過敏、例えば、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良、乳児疝痛または、より好ましくは、IBSに関連する内臓過敏である、上記医薬組成物を提供する。
【0103】
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と;薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物であって;細菌株が、障害の処置を必要とする対象に投与されるときに該処置に十分な量であり;該障害が、内臓過敏、例えば、クローン病、潰瘍性結腸炎、機能性消化不良または、より好ましくは、IBSに関連する内臓過敏である、上記医薬組成物を提供する。
【0104】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記医薬組成物であって、細菌株の量が、組成物の重量に対してグラム当たり約1×103~約1×1011個のコロニー形成単位である、上記医薬組成物を提供する。
【0105】
ある特定の実施形態において、本発明は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0106】
ある特定の実施形態において、本発明は、経口、直腸、皮下、鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0107】
ある特定の実施形態において、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む上記医薬組成物を提供する。
【0108】
ある特定の実施形態において、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む上記医薬組成物を提供する。
【0109】
ある特定の実施形態において、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0110】
ある特定の実施形態において、本発明は、防腐剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0111】
ある特定の実施形態において、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0112】
ある特定の実施形態において、本発明は、上記細菌株が凍結乾燥されている、上記医薬組成物を提供する。
【0113】
ある特定の実施形態において、本発明は、組成物が約4℃または約25℃で密閉容器に
貯蔵されて容器が50%の相対湿度を有する雰囲気に置かれているとき、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の期間の後に残存している、上記医薬組成物を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含む密閉容器において付与される。いくつかの実施形態において、密閉容器は、サチェまたはボトルである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている組成物を含むシリンジにおいて付与される。
【0115】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、医薬製剤として付与されてよい。例えば、組成物は、錠剤またはカプセルとして提供されてよい。いくつかの実施形態において、カプセルは、ゼラチンカプセル(「gel-cap」)である。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、経口投与される。経口投与は、嚥下を含んでいてよく、その結果、化合物が、胃腸管に入ることになり、かつ/または頬側、舌側、もしくは舌下投与によって化合物が口から直接血流に入ることになる。
【0117】
経口投与に好適な医薬製剤として、固体プラグ、固体微粒子状物、半固体及び液体(多相及び分散系を含む)、例えば錠剤;多-またはナノ-粒子状物を含有する軟質または硬質カプセル、液体(例えば、水溶液)、エマルジョンまたは粉末;ロゼンジ(液体が充填されたものを含む);咀嚼剤;ゲル;急速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;ならびに頬側/粘膜接着パッチが挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による腸への本発明の組成物の送達に好適である胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性)である。腸溶性製剤は、組成物の細菌または別の成分が酸感受性である、例えば、胃条件下で分解しやすいとき、特に有用であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングされた剤形である。例えば、該製剤は、腸溶性コーティングされた錠剤または腸溶性コーティングされたカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、経口送達のための従来の腸溶性コーティング、例えば、錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。該製剤は、フィルムコーティング、例えば、腸溶性ポリマー、例えば酸不溶性ポリマーの薄膜層を含んでいてよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要とすることない胃耐性である。そのため、いくつかの実施形態において、該製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態において、該製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態において、熱ゲル化材料は、セルロース系材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態において、カプセルは、いずれのフィルム形成ポリマーも含有しないシェルを含む。いくつかの実施形態において、カプセルは、シェルを含み、該シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、いずれのフィルム形成ポリマーも含まない(例えば、[31]を参照されたい)。いくつかの実施形態において、該製剤は、本質的に腸溶性のカプセル(例えば、Capsugel製Vcaps(登録商標))である。
【0121】
いくつかの実施形態において、該製剤は、軟質カプセルである。軟質カプセルは、カプセルシェルに存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及び
ポリエチレングリコールなどの添加のおかげで、ある特定の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチンまたはデンプンベースで製造され得る。ゼラチンベースの軟質カプセルは、種々の供給者から市販されている。例えば経口または経直腸などの投与方法に応じて、軟質カプセルは、種々の形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長方形または魚雷型であり得る。軟質カプセルは、従来のプロセス、例えば、Schererプロセス、Accogelプロセスまたは液滴もしくは発泡プロセスなどによって製造され得る。
【0122】
培養方法
本発明における使用のための細菌株は、例えば、参照文献[32、33、34]に詳述されている標準の微生物学的技術を使用して培養され得る。
【0123】
培養に使用される固体または液体培地は、例えば、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地として(100ml当たりの近似値):Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO3(0.4g)、システイン(0.1g)、K2HPO4(0.045g)、KH2PO4(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NH4)2SO4(0.09g)、MgSO4・7H2O(0.009g)、CaCl2(0.009g)、レザズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p-アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)を挙げることができる。
【0124】
総則
本発明の実施は、別途示さない限り、当業者の範囲内の、化学、生化学、分子生物、免疫学及び薬理学の従来の方法を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。例えば、参照文献[35]及び[36、37、38、39、40、41、42]などを参照されたい。
【0125】
用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」及び「consisting(からなる)」を包含し、例えば、組成物がXを「comprising(含む)」は、Xから排他的になってもよく、またはさらなる何か、例えば、X+Yを含んでいてもよい。
【0126】
数値xに関係する用語「約」は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0127】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0128】
2つのヌクレオチド配列間の百分率の配列同一性への言及は、整列しているとき、ヌクレオチドの百分率が、2つの配列を比較したときに同じであることを意味する。このアラインメント及びパーセント相同性または配列同一性は、当該分野において公知のソフトウエアプログラム、例えば、参照文献[43]のセクション7.7.18に記載されているものを使用して決定され得る。好ましいアラインメントは、12のギャップオープンペナルティ及び2のギャップエクステンションペナルティ、62のBLOSUMマトリクスによるアフィンギャップ検索を使用してSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、参照文献[44]に開示されている。
【0129】
特に記述されていない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、方法の開始及び終了時にさらなるステップを含んでいてよく、またはさらなる介在するステップを含
んでいてよい。また、ステップは、適切な場合、代替の順序で、組み合わされ、省略され、または実施されてよい。
【0130】
本発明の種々の実施形態は本明細書に記載されている。各実施形態において特定されている特徴は、他の特定されている特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を付与してよいことが認識される。特に、好適な、典型的なまたは好ましいとして本明細書において強調されている実施形態は、互いに組み合わされてよい(これらが互いに排他的であるときを除く)。
【実施例0131】
本発明を実施するための形態
実施例1-内臓過敏のラットモデルにおける細菌接種の効能
概要
ラットに、内臓過敏を示すヒトIBS対象からの糞便微生物叢を接種した。次いで、ラットに、本発明による細菌株を含む組成物を投与し、次いで、膨張アッセイを使用して試験して、内臓過敏を測定した。本発明の組成物は、膨張に対するラットの応答を低減することが分かり、これは内臓過敏の低減を示唆した。
【0132】
株
Blautia hydrogenotrophica(BH)株DSM10507/14294。
【0133】
組成物及び投与
BH培養物(16H)または凍結乾燥物-経口胃管栄養法によって投与
対照溶液を経口胃管栄養法によって投与
【0134】
ラット
IBS対象からのヒト腸微生物叢を接種した。
【0135】
研究デザイン
14日目-ラットにIBS対象からのヒト腸微生物叢を接種した
0~28日目-BH培養物もしくは凍結乾燥物、または対照溶液を連日投薬
0、14及び28日目-糞便サンプル中のBH集団のqPCR
14日目と28日目との間-腹部内に電極を埋め込む操作(膨張アッセイ用)
28日目-膨張アッセイ、盲腸サンプルを硫化物及び短鎖脂肪酸(SCFA)分析用に収集し、選択培地における糞便サンプル中の微生物叢を計数した
【0136】
結果
図1は、対照溶液(IBS)またはBH凍結乾燥物(IBS+BH)を投与したラットからの糞便サンプル中のBH集団のqPCR分析の結果を表す。BH集団の増加は、ラットにBH凍結乾燥物が与えられた14及び28日目に見られ、成功裏の定着が確認された。
【0137】
図2は、膨張アッセイの結果を表す。ラットを結腸直腸膨張に供し、1分当たりの収縮の数を内臓過敏の具体的尺度として記録した。本発明の組成物で処置したラットは、収縮の低減及び内臓過敏の低減を示した。
【0138】
図3及び4は、糞便サンプル中の微生物叢に対するBH培養物及び凍結乾燥物の投与の効果について報告する。BH培養物の投与は、硫酸塩還元細菌(SRB)の顕著な低減(1log)を結果として生じさせた。
【0139】
図5は、盲腸サンプルにおける短鎖脂肪酸濃度で測定される微生物叢発酵に対するBH凍結乾燥物の投与の影響について報告する。BH凍結乾燥物の投与は、酢酸産生の増加を結果として生じさせた。
【0140】
図6は、盲腸サンプルにおける硫化物濃度(H
2S)で測定される微生物叢発酵に対するBH凍結乾燥物の投与の影響について報告する。BHの投与は、硫化物産生の減少を結果として生じさせた。
【0141】
結論
Blautia hydrogenotrophicaを含む組成物の投与は、膨張アッセイを使用して測定される、成功裏の定着及び内臓過敏の顕著な低減をもたらした。この効果は、Blautia hydrogenotrophicaを培養物として及び凍結乾燥物として投与したときに観察された。Blautia hydrogenotrophicaの投与もまた、SRB及び硫化物産生の低減が観察されつつも、微生物叢の構成及び発酵に顕著な効果があった。これらのデータは、Blautia hydrogenotrophicaが、内臓過敏、特にIBSに関連する内臓過敏を低減するのに有用であり得ることを示唆している。内臓過敏の低減は、観察されるSRB及び硫化物産生の低減と関連し得る。
【0142】
実施例2-内臓過敏のラットモデルにおける細菌凍結乾燥物の効能
実施例1の観察を、Blautia hydrogenotrophica(BH)株DSM10507/14294の凍結乾燥物及びIBSのラットモデルを使用してさらなる実験において確認した。
図7及び8に示すように、BH凍結乾燥物の投与は、膨張に応答した腹部収縮の数の統計的に有意な低減を付与し、内臓過敏の低減を示唆した。
図7において、1つのIBS対象からの糞便サンプルを使用してラットに接種した。
図8において、3つのIBS対象からの糞便サンプルを使用してラットに接種し、これらのIBS対象の1つは、
図7において使用したIBS対象と同じであった。さらに、
図9及び10に示すように、BH凍結乾燥物の投与は、硫化物の統計的に有意な低減を付与した。
図9において、1つのIBS対象からの糞便サンプルを使用してラットに接種した。
図10において、3つのIBS対象からの糞便サンプルを使用してラットに接種し、これらのIBS対象の1つは、
図9において使用したIBS対象と同じであった。
【0143】
実施例3-健常なラット対する細菌凍結乾燥物の効果
健常なHIMラットに対するBlautia hydrogenotrophica(BH)株DSM10507/14294の凍結乾燥物の投与の効果を研究した。結果を
図11~14に報告する。実験に関するさらなる詳細は図の説明において上記に付与している。
図11は、ラットにおけるBHの適切な用量が10
9細胞/日以上であることを示している。
図12は、これらの実験においてBHがラット消化管に永久には定着しなかったことを示している。
図13は、BHが盲腸において主に見られることを示している。
図14は、BHの投与が酢酸及び酪酸産生の増加を誘発することを示している。
【0144】
実施例4-内臓過敏のラットモデルにおける細菌凍結乾燥物の効能
IBSのラットモデルに対するBlautia hydrogenotrophica(BH)株DSM10507/14294の凍結乾燥物の投与の効果をさらに調査した。無菌ラットにC-IBS(便秘あり)またはU-IBS(非亜型)患者からの糞便サンプルを接種した。実験の大部分を、内臓過敏(圧調節器によって測定したVH)を示しているIBS患者からの糞便サンプルを用いて実施した。結果は
図15及び16に報告されており、実験に関するさらなる詳細は図の説明において上記に付与している。
図15において、BH凍結乾燥物の投与が硫酸塩還元細菌の統計的に有意な低減を引き起こすことが確
認されている。予期されるように、BHの増加もまた観察される。
図16は、BH投与が、IBS HIMラットによって産生されるH
2Sの量の統計的に有意な減少を誘発したことを示している。腸内微生物叢による盲腸でのH
2Sの過剰産生は、内臓過敏に関連する。
【0145】
実施例5-第一相臨床試験の際の患者の症状の変化
Blautia hydrogenotrophica(受託番号DSM10507及び受託番号DSM14294でも寄託されている株「Blautix」)を、過敏性腸症候群(IBS)を有するヒト患者に投与する第一相臨床試験を行った。患者にBlautixを投与期間(1~16日目)に投与し、ウオッシュアウト期間が19~23日目であった。Blautixは、安全かつ耐容性良好の両方であることが分かった。4つの症状をモニタリングし、そのうちの1つが腹部疼痛であった。研究において、患者がこれらの症状の改善を経験したか、変化が無かったか、または悪化したかを記録した。Blautixが投与された患者からの結果を、プラセボが投与された患者を使用して得たものと比較した。症状を3つの時点:研究の1日目、15/16日目、及び最後;でモニタニングした。結果を
図17及び18に示す。
【0146】
16日目の患者の報告されている症状を、1日目からのベースラインと比較したとき、Blautixが与えられた17のIBS患者の82%において症状の改善が報告された(
図17)。その1つが腹部疼痛である症状の改善は、内臓過敏を処置または防止するためのBlautixの使用をサポートする。とりわけ、患者3.02、3.17及び3.24は、全てが研究の開始時には重篤な腹部疼痛を有していたが、15/16日目には、それぞれ、軽度の腹部疼痛、軽度の腹部疼痛及び腹部疼痛無しであった。
【0147】
プラセボが与えられた患者の50%において症状の改善が報告された(
図17)。高いプラセボ応答率は、IBS臨床研究において、確立された現象である。プラセボよりもかなり小さい改善を基準にしてIBSを処置するXifaxanが最近承認された[45]。
【0148】
投薬完了時(16日目)に存在する症状と比較した研究完了時(19~23日目)の症状の悪化は、本明細書に提示されている教示を基準にして予期される。この症状の悪化は、第一相臨床試験において見られ:IBS患者の41%においてBlautix投薬の中止後に症状の悪化が報告された(
図18)。Blautix投薬の中止後の、その1つが腹部疼痛である症状の悪化もまた、そのため、内臓過敏を処置または防止する際のBlautixの使用をサポートする。
【0149】
実施例6-ヒト細菌叢関連ラット(HMAラット)モデルにおいて研究した、内臓過敏に対するB.hydrogenotrophicaの効能
概要
16匹の無菌ラット群(対照群における8匹のラットと処置群における8匹のラットとを含む)にヒトIBS対象からの糞便微生物叢を接種した(IBS-HMAラット)。3つの連続実験を3の異なるIBS患者からの糞便サンプルを使用して実施した。2つの他のラット群(n=10)に、健常な対象(n=2対象;2つの健常なHMAラット群)の糞便サンプルを内臓感受性対照として接種した。こうして、24のIBS-微生物叢関連ラット(対照)、Blautixで処置した24のIBS微生物叢関連ラット、及び20の健常な微生物叢関連ラットとした。IBS-HMAラットの半分に、本発明によるB.hydrogenotrophicaの細菌株を含む組成物を28日間投与しながら、他の半分の動物には対照溶液を与えた。投与の28日後、全てのHMAラットを、結腸膨張アッセイを使用して試験し、内臓感受性を測定した。本発明の組成物は、膨張に対するIBS-HMAラットの応答を低減することが見出され、健常な-HMAラットにおいて観
察されたように正常な感度に達した内臓過敏の低減を示唆した。
【0150】
株
Blautia hydrogenotrophica(BH)株DSM10507T/14294。
【0151】
組成物及び投与
BH凍結乾燥物を1010細菌/mlの濃度で無菌鉱液に懸濁した。2mlのこの懸濁液を経口胃管栄養法によって28日間、IBS-HMAラットごとに連日投与した。
【0152】
対照溶液は、IBS-HMAラットの対照群に経口胃管栄養法によって連日投与した(2ml/ラット)無菌鉱液であった。
【0153】
ラット
無菌雌Fisherラット(10週齢)にIBS対象(IBS-HMAラット)からのヒト糞便微生物叢を接種した。16匹のラットに同じヒト糞便接種材料を接種した。3つの連続実験を3つの異なるIBS対象からの糞便サンプルによって実施した。10匹のラットのうちの2つの他の群に2の健常な対象(正常な感度の対照群)からの糞便サンプルを接種した。
【0154】
研究デザイン
14日目-ヒト糞便微生物叢を無菌ラットに接種。
0~28日目-経口胃管栄養法によりBH凍結乾燥物(アッセイ群)または対照溶液(対照群)を連日投薬
14日目と22日目との間-腹部内に電極を埋め込む操作(膨張アッセイ用)
22~28日目-ラットを適応させて膨張試験に関連するストレスを回避する。
28日目-膨張アッセイ、ならびに動物の安楽死により硫化物及び短鎖脂肪酸(SCFA)分析用の盲腸サンプルを収集する。
0、14及び28日目-微生物の分析用の糞便サンプルの収集:BH集団及び他の片利共生微生物群の評価のためのqPCR、ならびに選択培地及び偏性嫌気性方法を使用した微生物の機能群の計数。
【0155】
結果
図19は、対照溶液またはBH凍結乾燥物が与えられたIBS-HMAラットからの糞便サンプルのB.hydrogenotrophica集団のqPCR分析の結果を表す。BH凍結乾燥物が与えられたラットにおいて投与期間の最後(28日目)にBH集団の有意な増加が観察され、結腸におけるBHの成功裏の送達を確認した。
【0156】
図20は、膨張アッセイの結果を表す。ラットを結腸直腸膨張に供し、5分当たりの収縮の数を内臓過敏の具体的尺度として記録した。本発明の組成物で処置したIBS-HMAラットは、収縮の低減を示し、内臓過敏の低減を反映していた。B.hydrogenotrophica処置後、IBS-HMAラットは、健常なHMAラットにおいて測定したものと比較して正常な内臓感受性を示した。
【0157】
図21は、IBS患者において影響されることが以前に見出されている、糞便微生物叢からのいくつかの微生物群に対するB.hydrogenotrophicaの投与の効果について報告する。BHの投与は、硫酸塩還元細菌(SRB)の有意な低減を結果として生じさせた。
【0158】
図22は、IBS-HMAラットの盲腸サンプルにおける硫化物(H
2S)濃度に対す
るBHの投与の影響について報告する。BHの投与は、硫化物産生の有意な減少を結果として生じさせた。
図22におけるデータは
図10におけるものと同じであるが、スケールは異なる。
【0159】
図23は、IBS-HMAラットの盲腸サンプルにおける主な発酵代謝産物である短鎖脂肪酸に対するBHの投与の影響について報告する。BHの投与は、酢酸塩濃度の有意な増加及び酪酸塩濃度の有意な増加を結果として生じさせた(
図23b)。
【0160】
結論
Blautia hydrogenotrophicaを含む組成物の投与は、膨張アッセイを使用して測定される内臓過敏の有意な低減をもたらした。処置後、IBS-HMAラットの内臓感受性は、健常な-HMAラットにおいて測定したものと同様であることが見出された。B.hydrogenotrophicaを含む組成物の投与は、正常なものへのIBS-HMA動物の内臓感受性を復元することができる。Blautia hydrogenotrophicaの投与もまた、微生物叢の構成及び発酵に対する有意な効果があり、SRB及び硫化物産生の重要な低減を特に誘発した。これらのデータは、Blautia hydrogenotrophicaが、内臓過敏、特にIBSに関連する内臓過敏を低減するのに有用であり得ることを示唆している。内臓過敏の低減は、観察されるSRB及び硫化物産生の低減と関連し得る。
【0161】
実施例7-安定性試験
本明細書に記載されている少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載されている組成物を、25℃または4℃の密閉容器に貯蔵し、該容器を30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の相対湿度を有する雰囲気に置く。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年後、標準のプロトコルによって決定されるコロニー形成単位で測定したとき、細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が残存する。
【0162】
配列
配列番号1(Blautia stercoris株GAM6-1 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列-HM626177)
【0163】
配列番号2(Blautia wexlerae株WAL14507 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列-EF036467)
【0164】
配列番号3(Blautia stercoris株830に関するコンセンサス16S rRNA配列)
【0165】
配列番号4(Blautia wexlerae株MRX008に関するコンセンサス16S rRNA配列)
【0166】
配列番号5(Blautia hydrogenotrophica株S5a36 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列-X95624.1)
【0167】
参照文献
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