(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117448
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】飲食品の香味劣化抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20220803BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220803BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20220803BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20220803BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20220803BHJP
C12G 3/04 20190101ALN20220803BHJP
A23C 9/123 20060101ALN20220803BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20220803BHJP
A23C 9/12 20060101ALN20220803BHJP
A23G 1/48 20060101ALN20220803BHJP
A23G 9/42 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L27/00 Z
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/38 P
C12G3/04
A23C9/123
A23C9/13
A23C9/12
A23G1/48
A23G9/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004551
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021013449
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000121512
【氏名又は名称】塩野香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中永 博章
(72)【発明者】
【氏名】稲津 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 普克
(72)【発明者】
【氏名】三京 敦裕
(72)【発明者】
【氏名】羽倉 由香子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B047
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC31
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC99
4B001EC01
4B014GB01
4B014GB18
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK03
4B014GK07
4B014GK08
4B014GK12
4B014GL03
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4B117LK01
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4B117LK18
4B117LK25
4B117LL09
4B117LP01
(57)【要約】
【課題】飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制しつつ、保存環境に起因する香味の劣化を抑制する香味劣化抑制剤を提供する。
【解決手段】飲食品の香味劣化抑制剤は、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食品の香味劣化抑制剤。
【請求項2】
緑茶抽出物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の香味劣化抑制剤。
【請求項3】
前記飲食品における前記テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の各含有量が0.1ppm以上500ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤。
【請求項4】
前記飲食品における前記緑茶抽出物の含有量が0.1ppm以上500ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載の香味劣化抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飲食品の香味劣化抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食品、特に飲用品に関しては、従来から、経時的な香味の劣化だけでなく、保存環境(例えば光や熱など)による香味劣化が問題となっている。そのため、飲食品に配合することで保存環境に起因する香味の劣化を抑制することを目的とした香味劣化抑制剤が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、羅布麻抽出物を有効成分とする香味劣化抑制剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の香味劣化抑制剤は、十分な香味の劣化抑制効果を得るためには、比較的高濃度で飲食品中に含有される必要があり、飲食品本来の香味や外観に影響を与えるおそれがある。一方、この香味劣化抑制剤を、飲食品本来の香味や外観に影響を与えない範囲(含有量)で使用した場合には、十分な香味の劣化抑制効果が得られない。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制しつつ、保存環境に起因する香味の劣化を抑制する香味劣化抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の飲食品の香味劣化抑制剤は、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0008】
前記飲食品における前記テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の各含有量が0.1ppm以上500ppm以下でもよい。
【0009】
本開示の飲食品の香味劣化抑制剤は、緑茶抽出物をさらに含有するものでもよい。この場合、前記飲食品における緑茶抽出物の含有量が0.1ppm以上500ppm以下でもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制しつつ、保存環境に起因する香味の劣化を抑制する香味劣化抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
<香味劣化抑制剤>
本開示の香味劣化抑制剤は、飲食品に配合することで、光や熱などの保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を抑制するものである。また、香味劣化抑制剤は、飲食品の香味を改善する香味改善剤ともいえる。そのため、香味劣化抑制剤は、従来の酸化防止のみを目的とした酸化防止剤(抗酸化剤)とは異なり、香味改善機能や嗜好性向上機能を伴った機能性フレーバーと称される香料群やそれに用いられる素材としても使用できる。
【0013】
本開示の香味劣化抑制剤は、飲食品の中でも特に飲用品に好適に使用できる。飲用品としては、例えば、酸性乳飲料、柑橘系飲料、果汁飲料、清涼飲料、炭酸飲料、コーヒー、茶類などのソフトドリンク;チューハイ、リキュール、ビール、発泡酒などのハードドリンク(アルコール飲料、酒類)などが挙げられる。食品としては、例えば、ヨーグルト;チョコレート、ビスケット、スナック、キャラメル、キャンディなどの製菓;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓などの冷菓などが挙げられる。
【0014】
本開示の香味劣化抑制剤は、有効成分として、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。つまり、香味劣化抑制剤は、テトラヒドロクルクミンのみを含有するものでもよく、ターミナリアベリリカ抽出物のみを含有するものでもよく、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物の2成分を含有するものでもよい。
【0015】
ここで、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物は、本願発明者らが、酸性乳飲料に対する光安定性を指標とした香味劣化を抑制する素材のスクリーニングを行った結果、生体三次機能を伴う健康食品素材より見出したものである。これら有効成分は、酸乳劣化臭、特に「漬物臭」を引き起こすDMDS(ジメチルジスルフィド)やDMTS(ジメチルトリスルフィド)などの硫黄系成分、「イモ臭」を引き起こすMethional(メチオナール)、脂肪酸の劣化臭を引き起こすHexanal(ヘキサナール)など飲食品の香味を劣化する要因となり得る異臭物質(オフフレーバー)の発生を抑制する効果が高い。また、これら有効成分は、レモン等のシトラス系・乳含有系飲食品では、「金属臭」を引き起こすフォトシトラール、「アーモンド臭」を引き起こすp-メチルアセトフェノン、「薬品臭」を引き起こすp-クレゾールなどの異臭物質;果汁含有飲食品又は野菜汁含有飲食品では、「果汁劣化臭」又は「野菜汁劣化臭」を引き起こすDMS(ジメチルスルフィド)などの異臭物質;コーヒー、特にブラックコーヒーでは、後味に酸味を伴う「劣化酸味」を引き起こすカフェ酸、メラノイジンなどの劣化酸味原因物質;ビールや発泡酒などのビール類では、ビール香味の劣化臭として「厚紙(カードボード)臭(酸化臭、老化臭)」を引き起こすtrans-2-ノネナールをはじめとするアルデヒド類、「日光臭」を引き起こす3-メチル-2-ブテン-1-チオールなどの異臭物質などの発生を抑制する効果が高いと考えられる。テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物は、生体内抗酸化効果を狙った健康食品などに用いられているものの、飲食品の中でも特に飲用品に関して香味劣化抑制、香味改善、香味向上などの目的を期待した開発商品群は知られていない。
【0016】
テトラヒドロクルクミン(還元型クルクミン)は、ウコン抽出物より得られるクルクミンを水素添加することにより製造される物質(化合物)であり、主に機能性食品に利用されている。このテトラヒドロクルクミンは、抗酸化作用を有するため、生体内抗酸化効果を狙った健康食品商品などに使用され、酸化変性LDL複合体抑制剤、癌治療薬、非アルコール性脂肪肝炎予防・治療用組成物、スキンケア用品、白内障治療薬などにも使用されている。つまり、テトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤は、安全性が高いといえる。また、テトラヒドロクルクミンは、白色(溶解色は薄い黄色から無色の透明液)を有しており、飲食品本来の外観、特に色の点で影響を与え難い。なお、テトラヒドロクルクミンは、一般の市販品を使用できる。
【0017】
飲食品(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミンの含有量(有効濃度)は、好ましくは0.1ppm以上500ppm以下である。具体的には、当該含有量の下限値は、保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を優位に抑制する観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、より一層好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上である。当該含有量の上限値は、飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制する観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下、より一層好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに一層好ましくは30ppm以下である。このように、テトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤は、飲食品におけるテトラヒドロクルクミンの含有量が比較的低濃度であるため、飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与え難い。
【0018】
ターミナリアベリリカ抽出物は、シクンシ科の広葉樹ターミナリアベリリカ(Terminalia bellirica)の果実から抽出した機能性素材である。また、ターミナリアベリリカ抽出物は、その主成分がタンニンであり、ポリフェノールを豊富に含有しており、主に機能性食品に利用されている。つまり、ターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤は、安全性が高いといえる。また、ターミナリアベリリカ抽出物は、後述する緑茶抽出物と比較すると、苦渋味が少ないため、飲食品に用いて飲食品本来の香味に影響を与え難い。なお、ターミナリアベリリカ抽出物は、一般の市販品を使用できる。
【0019】
飲食品(最終製品)におけるターミナリアベリリカ抽出物の含有量(有効濃度)は、好ましくは0.1ppm以上500ppm以下である。具体的には、当該含有量の下限値は、保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を優位に抑制する観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、より一層好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上である。当該含有量の上限値は、飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制する観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下、より一層好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに一層好ましくは30ppm以下である。このように、ターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤は、飲食品におけるターミナリアベリリカ抽出物の含有量が比較的低濃度であるため、飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与え難い。
【0020】
本開示の香味劣化抑制剤は、緑茶抽出物をさらに含有するものでもよい。緑茶抽出物は、ツバキ科Camellia sinensis (L.) O. Kuntzeの葉から抽出した機能性素材であり、カテキンを豊富に含有しており、主に機能性食品に利用されている。なお、緑茶抽出物は、一般の市販品を使用できる。
【0021】
飲食品における緑茶抽出物の含有量は、0ppm以上であり、保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を優位に抑制する観点から、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5ppm以上、より一層好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上である。当該含有量の上限値は、飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制する観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下、より一層好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに一層好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm以下、10ppm以下である。
【0022】
以上のように構成される本開示の香味劣化抑制剤は、保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を優位に抑制する観点から、有効成分として、テトラヒドロクルクミンを含有するものが好ましく、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物の2成分を含有するものがより好ましく、テトラヒドロクルクミン、ターミナリアベリリカ抽出物及び緑茶抽出物の3成分を含有するものがさらに好ましい。
【0023】
本開示の香味劣化抑制剤は、上記の有効成分を溶解するための溶媒を含有するものでもよい。つまり、香味劣化抑制剤は、上記の有効成分と溶媒とを含有する溶液として用いてもよい。上記の有効成分含有溶液を得るために使用する溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級脂肪族アルコール;アセトン;酢酸エチルなどのエステル類;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレンアルコール、グリセリンなどのグリコール類;アセトン;酢酸などの極性溶媒、炭化水素などが挙げられる。溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これら溶媒の中では、水、エタノール及びこれらの混合物(含水物)が好ましい。
【0024】
本開示の香味劣化抑制剤は、本開示の目的や効果を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、香料素材、その他添加剤(酸化防止剤及び香料素材以外の公知の食品添加物)などをさらに含有するものでもよい。
【0025】
酸化防止剤(食品添加物)としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、γ-オリザノール、カテキン、カンゾウ油性抽出物、グアヤク脂、クエルセチン、クエン酸イソプロピル、クローブ抽出物、酵素処理イソクエルシトリン、酵素処理ルチン(抽出物)、酵素分解リンゴ抽出物、ゴマ油不けん化物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、次亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、単糖・アミノ酸複合物、チャ抽出物、トコトリエノール、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、生コーヒー豆抽出物、二酸化硫黄、ヒマワリ種子抽出物、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェルラ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ種子抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、没食子酸、没食子酸プロピル、ミックストコフェロール、メラロイカ精油、ヤマモモ抽出物、ルチン酵素分解物、ルチン(抽出物)、アズキ全草抽出物、エンジュ抽出物、ソバ全草抽出物、ローズマリー抽出物などが挙げられる。酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
香料素材としては、公知の精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出物、合成香料、溶剤抽出、水蒸気蒸留品、酵素処理食品原料(リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼなど)、アミノ酸・タンパク質と糖の加熱反応を利用した食品や香料素材など、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。香料素材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
<香味劣化抑制剤の製造方法>
本開示の香味劣化抑制剤は、例えば、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種、必要に応じて緑茶抽出物などを、各所定量で配合し、これら配合物を前記した溶媒で溶解又は懸濁することにより、容易に調製できる。配合物を溶媒で溶解又は懸濁するときは、室温(25℃程度)で行ってもよく、40~80℃程度の温浴下で行ってもよい。この方法では、溶液状の香味劣化抑制剤が得られる。なお、香味劣化抑制剤は、溶液に限定されず、当該溶液を濃縮乾固した濃縮物(固形物、乾燥物)などとして使用してもよい。
【0028】
<香味劣化抑制剤の使用方法>
本開示の香味劣化抑制剤を飲食品に配合する方法は、特に限定されず、香味劣化抑制剤を飲食品に直接添加(混合)してもよく、予め香味劣化抑制剤を含む香料や機能性フレーバーを調製して得られたものを飲食品に添加してもよい。また、香味劣化抑制剤を飲食品に配合する時期は特に限定されず、飲食品の製造工程における任意段階で適宜配合すればよい。
【0029】
<効果>
以上説明したように、本開示の香味劣化抑制剤によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本開示の飲食品の香味劣化抑制剤は、有効成分として、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。これら有効成分は、比較的低濃度でも、「漬物臭」を引き起こすDMDSやDMTSなどの硫黄系成分、「イモ臭」を引き起こすMethional、脂肪酸の劣化臭を引き起こすHexanalなどの異臭物質の飲食品からの発生を抑制する効果が高く、安全性も高い。そのため、これら有効成分を含有する本開示の香味劣化抑制剤は、飲食品に用いて飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制しつつ、保存環境に起因する香味の劣化を抑制できる。
(2)本開示の飲食品の香味劣化抑制剤は、上記の有効成分を組み合わせる、即ちテトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物を併用する(2成分系)、さらに緑茶抽出物を併用する(3成分系)ことにより、上記の効果をより高めることができる。
【実施例0030】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
【0031】
(1)各有効成分による、酸性乳飲料の香味の劣化抑制効果の比較
<試験サンプルの調製>
(対照例1)
発酵乳(小岩井乳業株式会社製ヨーグルト、無脂乳固形分12.8%、乳脂肪分0.4%、以下同じ。)71重量%(85.2g)、果糖ブドウ糖液糖(サンエイ糖化株式会社社製、製品名:フジフラクトH-100、果糖55%以上、固形分75%、以下同じ。)7重量%(8.4g)及び合計100重量%(120g)となるように精製水を配合し、これら配合成分を攪拌混合することにより、酸性乳飲料を調製した。得られた酸性乳飲料を対照例1とした。
【0032】
(実施例1)
ホワイトクルクミノイド(テトラヒドロクルクミン、サビンサジャパンコーポレーション社製、成分規格:テトラヒドロクルクミン95%以上の規格品、以下同じ。)を10g計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で60℃の温浴下にて溶解した後、30gの精製水を加えることにより、テトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤(10w/w%テトラヒドロクルクミン含有含水エタノール溶液)を調製した。続いて、発酵乳71重量%(85.2g)、果糖ブドウ糖液糖7重量%(8.4g)、前記で得られた香味劣化抑制剤0.02重量%(0.024g)及び合計100重量%(120g)となるように精製水を配合し、これら配合成分を攪拌混合することにより酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミンの含有量を以下の表1に示す。
【0033】
(実施例2)
ターミナリアレベリカ抽出物(サビンサジャパンコーポレーション社製、成分規格:ポリフェノール35.0%以上の規格品、以下同じ。)を10g計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で懸濁した後、30gの精製水を加えて溶解することにより、ターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤(10w/w%ターミナリアベリリカ抽出物含有含水エタノール溶液)を調製した。続いて、発酵乳71重量%(85.2g)、果糖ブドウ糖液糖7重量%(8.4g)、前記で得られた香味劣化抑制剤0.02重量%(0.024g)及び合計100重量%(120g)となるように精製水を配合し、これら配合成分を攪拌混合することにより酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるターミナリアベリリカ抽出物の含有量を以下の表1に示す。
【0034】
(比較例1)
ルチン香料(東洋精糖株式会社製、ルチン成分24%含有)4.1gを精製水にて10gに調製することにより、41w/w%ルチン香料含有水溶液(添加剤)を得た。続いて、香味劣化抑制剤の代わりに、前記で得られた添加剤0.02重量%(0.024g)を配合したこと以外は実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるルチン成分の含有量を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
特開2005-323547号公報の実施例1の記載に従い、羅布麻抽出物を含有する羅布麻抽出物含有エタノール水溶液製剤(添加剤、固形分4%)を調製した。続いて、香味劣化抑制剤の代わりに、前記で得られた添加剤0.05重量%(0.06g)を配合したこと以外は実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)における羅布麻抽出物の含有量を表1に示す。
【0036】
(比較例3)
ヤマモモ抽出物(福田龍株式会社製)を5g計量し、40重量%エタノール(95度特定アルコール1級を精製水で60重量%に調製したもの)にて100gに調製することにより、5w/w%ヤマモモ抽出物含有含水エタノール溶液(添加剤)を得た。続いて、香味劣化抑制剤の代わりに、前記で得られた添加剤0.05重量%(0.06g)を配合したこと以外は実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるヤマモモ抽出物の含有量を表1に示す。
【0037】
(比較例4)
生コーヒー豆抽出物(オリザ油化株式会社製、製品名:生コーヒー豆エキス-P)を5g計量し、40重量%エタノール(95度特定アルコール1級を精製水で60重量%に調製したもの)にて100gに調製することにより、5w/w%生コーヒー豆抽出物含有含水エタノール溶液(添加剤)を得た。続いて、香味劣化抑制剤の代わりに、前記で得られた添加剤0.05重量%(0.06g)を配合したこと以外は実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)における生コーヒー豆抽出物の含有量を表1に示す。
【0038】
(比較例5)
緑茶抽出物(サビンサジャパンコーポレーション社製、成分規格:総カテキン75.0%以上の規格品、75.0%ポリフェノール含有、以下同じ。)を10g計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で懸濁した後、30gの精製水を加えて溶解することにより、10w/w%緑茶抽出物含有含水エタノール溶液(添加剤)を調製した。続いて、香味劣化抑制剤の代わりに、前記で得られた添加剤0.02重量%(0.024g)を配合したこと以外は実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)における緑茶抽出物の含有量を表1に示す。
【0039】
<試験サンプルの評価>
〔耐光試験〕
前記で得られた各酸性乳飲料を130mLガラス瓶容器(光透過率約85%)に充填し密閉した。続いて、このガラス瓶容器を以下の暗所保管条件及び明所保管(光劣化)条件でそれぞれ保管した後、各酸性乳飲料の香味の劣化の程度を以下の評価基準に基づいて官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
(暗所保管条件)
各酸性乳飲料が充填されたガラス瓶容器を、アルミホイルで覆って遮光した状態(暗所)で、温度10℃にて15時間保管した。
【0041】
(明所保管(光虐待)条件)
蛍光灯人工照射機(TAITEC社製、製品名:BIO PHOTOCHAMBER LX-3200F)を用いて、各酸性乳飲料が充填されたガラス瓶容器に9600Luxの光を照射した状態(明所)で、当該ガラス瓶容器を10℃にて15時間(光照射量:144,000Lux)保管した。
【0042】
(評価基準)
暗所保管条件で保管した後の対照例1の香味の程度を5点(以下の保管劣化臭が全くない状態、非虐待区)とし、明所保管条件で保管した後の対照例1の香味の程度を1点(保管劣化臭を強く感じる状態、虐待区)とした5段階の基準を設定し、各試験区の点数を官能評価した。香味劣化の指標としては、酸性乳飲料の保管劣化官能項目である「漬物臭」、「イモ臭」及び「脂肪酸酸化臭」(以下「保管劣化臭」ともいう)とした。官能評価は、官能能力力量のあるフレーバリストより選定されたパネリスト7名にて実施した。なお、表1に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。
【0043】
【0044】
表1の結果から、実施例1及び2は、比較例1~4と比較して、光による香味劣化が抑制された。したがって、テトラヒドロクルクミン又はターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤を、例えば酸性乳飲料などの飲食品に配合することにより、光などの保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を抑制できることが分かった。
【0045】
また、表1の結果から、実施例1及び2は、比較例1~5と比較して、暗所保管条件において香味優位性(改善)がみられた。したがって、テトラヒドロクルクミン又はターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤を、例えば酸性乳飲料などの飲食品に配合することにより、飲食品の香味を改善できることが分かった。
【0046】
ここで、実施例1及び2における有効成分の含有量は、比較例1~5における有効成分の含有量と同等かそれよりも少ないため、テトラヒドロクルクミン又はターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤は、低濃度でも上記の効果が得られることが分かった。また、この香味劣化抑制剤は、少量でも十分な効果が得られるため、飲食品本来の香味や外観に影響を与えることを抑制できることが分かった。
【0047】
(2)最終製品における有効成分の含有量(有効濃度)の確認
<試験サンプルの調製>
(実施例3~5)
酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミンの含有量を以下の表2に示す含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0048】
(実施例6及び7)
酸性乳飲料(最終製品)におけるターミナリアベリリカ抽出物の含有量を表2に示す含有量に変更したこと以外は、実施例2と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0049】
(比較例6及び7)
酸性乳飲料(最終製品)における緑茶抽出物の含有量を表2に示す含有量に変更したこと以外は、比較例5と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0050】
<試験サンプルの評価>
官能評価について、官能能力力量のあるフレーバリストより選定されたパネリスト6名にて実施したこと以外は実施例1と同様にして、前記で得られた各酸性乳飲料の香味の劣化(保管劣化臭)の程度について官能評価を行った。その結果を表2に示す。なお、表2に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。
【0051】
【0052】
表2の結果から、テトラヒドロクルクミン又はターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤は、最終製品におけるこれら有効成分の含有量がより少なくても(10ppm、5ppmなど)、上記の効果が十分に得られることが分かった。
【0053】
(3)各有効成分の組み合わせによる、酸性乳飲料の香味の劣化抑制効果の確認
<試験サンプルの調製>
(実施例8)
酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミンの含有量を以下の表3に示す含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0054】
(実施例9)
ホワイトクルクミノイドを2g、ターミナリアレベリカ抽出物を2gそれぞれ計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で懸濁した後、36gの精製水を加えて溶解することにより、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアレベリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤(2w/w%テトラヒドロクルクミン及び2w/w%ターミナリアレベリカ抽出物含有含水エタノール溶液)を調製した。続いて、発酵乳71重量%(85.2g)、果糖ブドウ糖液糖7重量%(8.4g)、前記で得られた香味劣化抑制剤0.1重量%(0.12g)及び合計100重量%(120g)となるように精製水を配合し、これら配合成分を攪拌混合することにより酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミン及びターミナリアレベリカ抽出物の含有量を以下の表3に示す。
【0055】
(実施例10)
酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミン及びターミナリアレベリカ抽出物の含有量を表3に示す含有量に変更したこと以外は、実施例9と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0056】
(実施例11)
緑茶抽出物を5g計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で懸濁した後、35gの精製水を加えて溶解することにより、5w/w%緑茶抽出物含有含水エタノール溶液(添加剤)を調製した。続いて、発酵乳71重量%(85.2g)、果糖ブドウ糖液糖7重量%(8.4g)、実施例9で得られた香味劣化抑制剤0.1重量%(0.12g)、さらに前記で得られた添加剤0.012重量%(0.014g)及び合計100重量%(120g)となるように精製水を配合し、これら配合成分を攪拌混合することにより酸性乳飲料を調製した。酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミン、ターミナリアレベリカ抽出物及び緑茶抽出物の含有量を以下の表3に示す。
【0057】
(実施例12)
酸性乳飲料(最終製品)におけるテトラヒドロクルクミン、ターミナリアレベリカ抽出物及び緑茶抽出物の含有量を表3に示す含有量に変更したこと以外は、実施例11と同様にして酸性乳飲料を調製した。
【0058】
<試験サンプルの評価>
官能評価について、官能能力力量のあるフレーバリストより選定されたパネリスト6名にて実施したこと以外は実施例1と同様にして、前記で得られた各酸性乳飲料の香味の劣化(保管劣化臭)の程度について官能評価を行った。その結果を表3に示す。なお、表3に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。
【0059】
【0060】
表3の結果から、実施例10は、有効成分の含有量が同じ実施例8と比較して、光による香味劣化がより一層抑制されると共に、暗所保管条件においてさらなる香味優位性(改善)がみられた。したがって、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物を併用する香味劣化抑制剤を、例えば酸性乳飲料などの飲食品に添加することにより、光などの保存環境に起因する飲食品の香味劣化抑制効果及び香味改善効果をより一層高めることが分かった。
【0061】
また、表3の結果から、実施例12は、緑茶抽出物を含有しないこと以外は同じ組成の比較例10と比較して、光による香味劣化がより一層抑制されると共に、暗所保管条件においてさらなる香味優位性(改善)がみられた。したがって、テトラヒドロクルクミン及びターミナリアベリリカ抽出物と共に、さらに緑茶抽出物を併用する香味劣化抑制剤を、例えば酸性乳飲料などの飲食品に添加することにより、光などの保存環境に起因する飲食品の香味劣化抑制効果及び香味改善効果をさらに高めることが分かった。
【0062】
(4)保管劣化臭の指標成分に関するGC-MS分析(酸性乳飲料)
酸性乳飲料の保管劣化官能項目である「漬物臭」、「イモ臭」及び「脂肪酸酸化臭」(保管劣化臭)を分析学的に評価するために、GC-MSにて指標となる物質(指標物質)の増減を確認した。指標物質としては、「漬物臭」を想起させるDMDS及びDMTS、「イモ臭」を想起させるMethionalなどの含硫アミノ酸の劣化指標となる硫黄系化合物;Hexanalなどの脂肪酸の光劣化による酸化臭原因物質であるアルデヒド類を用いた。
【0063】
試験サンプルとして、対照例1及び実施例12で得られた酸性乳飲料を、上記の(暗所保管条件)又は(明所保管条件)と同じ条件で保管したものを用いた。
【0064】
固相マイクロ抽出(SPME)法を用い、検体(試験サンプル)5gに対し、50℃で30分間吸着させた後、GC-MS分析に供した。その分析結果を表4に示す。
【0065】
具体的な各測定条件を以下に示す。
(SPME)
・SPMEファイバー:DVB/CAR/PDME(ジビニルベンゼン分散とCarboxen分散ポリジメチルシロキサンの2層)
・SPME条件:バイアル加熱温度50℃、抽出時間30分間
(GC条件)
・装置:Agilent社製GC-MS
・注入法 :スプリットレス
・キャリアガス:ヘリウム
・注入口温度:250℃
・カラム :DB-WAX、60m、0.25mm、0.25μm
・カラム温度プログラム:50℃保持(開始から5分間)⇒50℃~230℃(5℃/分で昇温)
(MS条件)
・イオン化モード:EI、電子エネルギー:70eV
・イオン源温度:230℃
・測定モード:選択イオン検出法(SIM)
【0066】
【0067】
表4に基づいて、対照例1のGC-MS分析値を基準とした各指標物質の低減率を求めた結果を以下の表5に示す。なお、各指標物質の低減率は、以下の式(1)により求めた。
[数1]
指標物質の低減率(%)={(対照例1の各GC-MS分析値)-(実施例12の各GC-MS分析値)}/(対照例1の各GC-MS分析値)×100・・・(1)
【0068】
【0069】
表4及び5の結果から、実施例12は、対照例1と比較して、酸性乳飲料の香味劣化の指標となる物質DTDS、DMTS、Methional及びHexanalの発生が有意に抑制されていることが分かった。特に、暗所保管条件同士又は明所保管条件同士の比較において、「漬物臭」を想起させるDMDS及びDMTS、並びに「脂肪酸酸化臭」を想起させるHexanalは70%程度も発生が抑制されており、これにより官能評価での香味劣化抑制や香味改善の効果が発現されると考えられる。また、明所保管後の実施例12では、DMDS及びDMTS(特にDMTS)の発生が、暗所保管後の対照例1よりも抑制されていることが分かった。
【0070】
(4)香味劣化抑制による、各飲食品の香味の劣化抑制効果の比較
(実施例13)~(実施例28)
<飲食品の調製>
以下に記載の方法に従い飲食品をそれぞれ調製した。得られた飲食品を各対照例(試験サンプル)とした。
(レモンチューハイ)
ウォッカ(一般市販品、アルコール度数50%、以下同じ。)10.10重量%、クエン酸(結晶)0.41重量%、クエン酸三ナトリウム0.12重量%、果糖ぶどう糖液糖3.70重量%、レモン香料(塩野香料株式会社製、レモンフレーバー:SW-87107、以下同じ。)0.10重量%、精製水6.30重量%及び合計100重量%となるように炭酸水を配合し、常法に従い、レモンチューハイ(酒類)を調製した。
(ピーチチューハイ)
ウォッカ8.23重量%、りんご酸0.18重量%、クエン酸三ナトリウム0.10重量%、砂糖(グラニュー糖)0.70重量%、果糖ぶどう糖液糖8.50重量%、ピーチ香料(塩野香料株式会社製、ピーチフレーバー:SW-91296)、0.10重量%、精製水5.19重量%及び合計100重量%となるように炭酸水を配合し、常法に従い、ピーチチューハイ(酒類)を調製した。
(ミルクティー)
紅茶葉(石光商事株式会社製、アッサムGBOP、以下同じ。)0.75重量%、抽出液(精製水)22.15重量%、砂糖(グラニュー糖、一般市販品、以下同じ。)7.30重量%、牛乳(一般市販品、以下同じ。)6.60重量%、全粉乳(一般市販品、以下同じ。)0.50重量%、脱脂粉乳(一般市販品、以下同じ。)0.20重量%、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、三菱ケミカル株式会社製、リョートー(登録商標)シュガーエステルP-1670、以下同じ。)0.05重量%、アスコルビン酸ナトリウム(VC-Na)0.03重量%、重曹0.02重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ミルクティー(茶類)を調製した。
(ミルクコーヒー)
牛乳10重量%、砂糖(グラニュー糖)6重量%、コーヒーエキス(ハニー珈琲株式会社製、HE-C15、以下同じ。)25重量%、インスタントコーヒー(一般市販品)0.10重量%、全粉乳1.40重量%、デキストリン(松谷化学工業株式会社製、TK-16)0.50重量%、食塩0.05重量%、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)0.05重量%、重曹0.08重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ミルクコーヒー(茶類)を調製した。
(ニアウォーター(レモン))
砂糖(グラニュー糖)5重量%、クエン酸(結晶)0.08重量%、クエン酸三ナトリウム0.02重量%、レモン香料0.10重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ニアウォーター(レモン)(清涼飲料)を調製した。
(ニアウォーター(グレープフルーツ))
砂糖(グラニュー糖)5重量%、クエン酸(結晶)0.08重量%、クエン酸三ナトリウム0.02重量%、グレープフルーツ香料(塩野香料株式会社製、グループフレーツフレーバー:SW-8548)0.10重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ニアウォーター(グレープフルーツ)(清涼飲料)を調製した。
(炭酸飲料(レモン))
果糖ぶどう糖液糖5.30重量%、砂糖(グラニュー糖)4.00重量%、クエン酸(結晶)0.27重量%、クエン酸三ナトリウム0.10重量%、精製水10.33重量%及び合計100重量%となるように炭酸水を配合し、常法に従い、炭酸飲料(レモン)(清涼飲料(炭酸))を調製した。
(ブラックコーヒー)
コーヒーエキス10重量%、重曹0.03重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ブラックコーヒー(コーヒー)を調製した。
(抹茶ラテ)
砂糖(グラニュー糖)5.60重量%、抹茶(一般市販品)0.60重量%、全粉乳2重量%、脱脂粉乳1.40重量%、微結晶セルロース製剤(旭化成株式会社製、セオラス(登録商標)RC-N30)0.15重量%、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)0.05重量%、カゼインナトリウム0.05重量%、重曹0.02重量%、アスコルビン酸ナトリウム(VC-Na)0.03重量%、甘味料(アセスルファムカリウム)0.012重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、抹茶ラテ(茶類)を調製した。
(果汁飲料(リンゴ))
果糖ぶどう糖液糖12.50重量%、リンゴ濃縮果汁(混濁、一般市販品)5.10重量%、クエン酸(結晶)0.15重量%、クエン酸三ナトリウム0.10重量%、リンゴ酸0.10重量%、リンゴ香料(塩野香料株式会社製、アップルベースRKZ-029)0.10重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、果汁飲料(リンゴ)を調製した。
(果汁飲料(オレンジ))
果糖ぶどう糖液糖10.50重量%、オレンジ濃縮果汁(一般市販品)4重量%、クエン酸(結晶)0.25重量%、クエン酸三ナトリウム0.05重量%、オレンジ香料(塩野香料株式会社製、オレンジエッセンス:14314)0.10重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、果汁飲料(オレンジ)を調製した。
(炭酸飲料(グレープ))
濃縮グレープ果汁(一般市販品)1.80重量%、グレープ5倍濃縮透明果汁(白、一般市販品)2重量%、果糖ぶどう糖液糖11重量%、クエン酸(結晶)0.20重量%、クエン酸三ナトリウム0.05重量%、精製水4.95重量%及び合計100重量%となるように炭酸水を配合し、常法に従い、炭酸飲料(グレープ)(清涼飲料(炭酸))を調製した。
(ヨーグルト)
プレーンヨーグルト(小岩井乳業株式会社製、小岩井生乳100%ヨーグルト)を用いた。
(紅茶飲料(レモンティー))
紅茶抽出液(紅茶葉(石光商事株式会社製、アッサムGBOP)を3重量%で熱水抽出し濾過した抽出液、以下同じ。)26重量%、果糖ぶどう糖液糖6.250重量%、砂糖(グラニュー糖)2重量%、クエン酸(結晶)0.055重量%、クエン酸三ナトリウム0.040重量%、透明レモン果汁(雄山株式会社製、品番:6392)0.015重量%、アスコルビン酸(VC)0.030重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、紅茶飲料(レモンティー)(茶類)を調製した。
(紅茶飲料(ストレートティー))
紅茶抽出液26重量%、果糖ぶどう糖液糖3.100重量%、砂糖(グラニュー糖)1.500重量%、重曹0.012重量%、アスコルビン酸(VC)0.030重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、紅茶飲料(ストレートティー)(茶類)を調製した。
(緑茶飲料)
緑茶抽出液(緑茶葉(三井農林株式会社製、煎茶B)を2重量%で70℃温水抽出した抽出液)、重曹0.030重量%、アスコルビン酸(VC)0.050重量%、アスコルビン酸ナトリウム(VC-Na)0.015重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、緑茶飲料(茶類)を調製した。
【0071】
<香味劣化抑制剤の調製>
ホワイトクルクミノイドを1g計量し、60gのエタノール(95度特定アルコール1級)で60℃の温浴下にて溶解した後、39gの精製水を加えることにより、テトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤(1w/w%テトラヒドロクルクミン含有含水エタノール溶液)を調製した。
【0072】
<香味劣化抑制剤含有飲食品の調製>
前記<飲食品の調製>の欄に記載の飲食品をそれぞれ調製するときに、前記で得られた香味劣化抑制剤(1w/w%テトラヒドロクルクミン含有含水エタノール溶液)0.025重量%(飲食品におけるテトラヒドロクルクミンの含有量:2.5ppm)、0.05重量%(当該含有量:5ppm)又は0.1重量%(当該含有量:10ppm)をさらに配合し、合計100重量%となるように精製水又は炭酸水を配合したこと以外は、前記と同様にして、当該香味劣化抑制剤を含有する飲食品(試験サンプル)をそれぞれ調製した。なお、ヨーグルトでは、ヨーグルトにおける香味劣化抑制剤(1w/w%テトラヒドロクルクミン含有含水エタノール溶液)の含有量が5ppm又は10ppmとなるように当該香味劣化抑制剤をプレーンヨーグルトに配合した。
【0073】
<試験サンプルの評価>
〔耐光試験〕
前記(明所保管(光虐待)条件)において、照射時間を168時間(光照射量:1,612,800Lux)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、耐光試験を実施した。なお、官能評価については、暗所保管条件で保管した後の各対照例の香味の程度を10点(表6又は7の「評価の焦点」欄に示す光劣化臭(保管劣化臭)が全くない状態、非虐待区)とし、明所保管条件で保管した後の各対照例の香味の程度を0点(保管劣化臭を強く感じる状態、虐待区)とした11段階の基準を設定し、官能能力力量のあるフレーバリストより選定されたパネリスト8~11名にて実施したこと以外は実施例1と同様にして、前記で得られた各試験サンプルの香味の劣化(保管劣化臭)の程度について官能評価を行った。その結果を表6又は7に示す。なお、表6又は7に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。また、各点数の下に記載の(括弧書き)は、各試験サンプルにおける香味劣化抑制剤の含有量を示す。
【0074】
〔耐熱試験〕
前記で得られた各試験サンプルを130mLガラス瓶容器(光透過率約85%)に充填し密閉した。続いて、このガラス瓶容器を以下の冷温保管条件及び高温保管(熱劣化)条件でそれぞれ保管した後、各試験サンプルの香味の劣化の程度を以下の評価基準に基づいて官能評価を行った。その結果を表6又は7に示す。
【0075】
(冷温保管条件)
各試験サンプルが充填されたガラス瓶容器を、アルミホイルで覆って遮光し(暗所)、温度10℃で、表6又は7に記載の所定期間保管した。
【0076】
(高温保管(熱劣化)条件)
各試験サンプルが充填されたガラス瓶容器を、アルミホイルで覆って遮光し(暗所)、且つ恒温器(アドバンテック社製インキュベーター、品番:CI-610)を用いて、55℃に加温した状態で、表6又は7に記載の所定期間保管した。
【0077】
(評価基準)
冷温保管条件で保管した後の各対照例の香味の程度を10点(表6又は7の「評価の焦点」欄に示す熱劣化臭(保管劣化臭)が全くない状態、非虐待区)とし、高温保管条件で保管した後の各対照例の香味の程度を0点(保管劣化臭を強く感じる状態、虐待区)とした11段階の基準を設定し、官能能力力量のあるフレーバリストより選定されたパネリスト8~11名にて実施したこと以外は実施例1と同様にして、前記で得られた各試験サンプルの香味の劣化(保管劣化臭)の程度について官能評価を行った。その結果を表6又は7に示す。なお、表6又は7に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。また、各点数の下に記載の(括弧書き)は、各試験サンプルにおける香味劣化抑制剤の含有量を示す。
【0078】
【0079】
【0080】
(実施例29)~(実施例31)
<食品の調製>
以下に記載の方法に従い食品をそれぞれ調製した。得られた食品を各対照例(試験サンプル)とした。
(ホワイトチョコレート)
ホワイトチョコ(一般市販品)99.90重量%に乳化剤(ポリグリセリンエステル、阪本薬品工業株式会社製、SYグリスターCRS-75、以下同じ。)0.01重量%を配合し、常法に従い、ホワイトチョコレート(製菓)を調製した。
(チョコレート)
スイートチョコ(一般市販品)99.90重量%に乳化剤(ポリグリセリンエステル)0.01重量%を配合し、常法に従い、チョコレート(製菓)を調製した。
(ラクトアイス)
精製ヤシ油(一般市販品)10重量%、脱脂粉乳7.40重量%、上白糖(一般市販品)11.50重量%、水飴(酵素糖化水飴、固形75%、一般市販品)3重量%、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、太陽化学株式会社製、サンソフトNo.298)0.25重量%、増粘多糖類(太陽化学株式会社製、ネオソフトIS-10)0.25重量%及び合計100重量%となるように精製水を配合し、常法に従い、ラクトアイス(冷菓)を調製した。
【0081】
<香味劣化抑制剤の調製>
ホワイトクルクミノイドを1g計量し、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社、CITROFLEX2)49g及び中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオ株式会社)と混合し、60℃の温浴下にて溶解することにより、テトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤(1w/w%テトラヒドロクルクミン含有溶液)を調製した。
【0082】
<香味劣化抑制剤含有食品の調製>
前記<食品の調製>の欄に記載の食品をそれぞれ調製するときに、前記で得られた香味劣化抑制剤(1w/w%テトラヒドロクルクミン含有溶液)0.05重量%(食品におけるテトラヒドロクルクミンの含有量:5ppm)又は0.1重量%(当該含有量:10ppm)をさらに配合したこと以外は、前記と同様にして、当該香味劣化抑制剤を含有する食品(試験サンプル)をそれぞれ調製した。
【0083】
<試験サンプルの評価>
〔耐光試験〕
表8に示す保管容器に変更したこと以外は実施例13と同様にして、前記で得られた各試験サンプルの香味の劣化(保管劣化臭)の程度について官能評価を行った。その結果を表8に示す。なお、表8に記載の各点数は、パネリストによる官能評価(点数)の平均点である。また、各点数の下に記載の(括弧書き)は、各試験サンプルにおける香味劣化抑制剤の含有量を示す。
【0084】
【0085】
表6~8の結果から、有効成分としてテトラヒドロクルクミンを含有する香味劣化抑制剤は、例えば、酒類、茶類、清涼飲料(炭酸飲料を含む)、コーヒー、果汁飲料(炭酸飲料を含む)、ヨーグルト、製菓、冷菓などの種々の飲食品に配合することで、光や熱などの保存環境に起因する飲食品の香味の劣化を抑制できることが分かった。そして、表1~3の結果をふまえると、有効成分としてターミナリアベリリカ抽出物を含有する香味劣化抑制剤や複数の有効成分を含有する香味劣化抑制剤についても、同様の効果が得られることが予想される。したがって、本開示の香味劣化抑制剤は、酸性乳飲料のみならず、種々の飲食品に対しても、光劣化や熱劣化などに起因する香味の劣化を抑制できる。