(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117961
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】撥水構造及びその製造方法、並びにそれに用いる撥水コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20220804BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20220804BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C09K3/18 104
B05D5/00 G
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009965
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021014574
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 淳
(72)【発明者】
【氏名】三田 浩
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4H020
【Fターム(参考)】
4D075CA36
4D075DA06
4D075DA07
4D075DA13
4D075DB01
4D075DB13
4D075DB20
4D075DB21
4D075DB31
4D075DB35
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4D075EA37
4D075EB16
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4D075EC01
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4D075EC07
4F100AA20B
4F100AA37B
4F100AJ11B
4F100AK03B
4F100AK17B
4F100AK45A
4F100AK52B
4F100AK70B
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA23B
4F100EH46B
4F100JB06B
4H020AA01
4H020AA03
4H020BA32
4H020BA36
(57)【要約】
【課題】非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得ることができる撥水構造を提供する。
【解決手段】撥水構造10は、基材11と、基材11の表面上に設けられた撥水層12とを備える。撥水層12は、撥水性粒子121と、バインダー樹脂122と、ポリオレフィンワックス123とを含有する。バインダー樹脂122は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面上に設けられた撥水層と、
を備えた撥水構造であって、
前記撥水層は、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含有し、
前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む撥水構造。
【請求項2】
請求項1に記載された撥水構造において、
前記撥水性粒子が、ヒュームドシリカ及び/又は未造粒カーボンブラックを含む撥水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された撥水構造において、
前記ポリオレフィンワックスが、酸化ポリオレフィンワックスを含む撥水構造。
【請求項4】
請求項3に記載された撥水構造において、
前記酸化ポリオレフィンワックスが、エチレン-アクリル酸共重合ワックス及び/又は酸化ポリエチレンワックスを含む撥水構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された撥水構造において、
前記撥水層が、充填粒子を更に含有する撥水構造。
【請求項6】
基材の表面に対して撥水コーティング剤を塗工して撥水層を形成する撥水構造の製造方法であって、
前記撥水コーティング剤は、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含有し、
前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む撥水構造の製造方法。
【請求項7】
撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含有する撥水コーティング剤であって、
前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む撥水コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水構造及びその製造方法、並びにそれに用いる撥水コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水や氷の付着に起因する破損等を回避する手段として、種々の物品の表面に撥水処理が施される。例えば、特許文献1には、かかる撥水処理に用いられる紙用撥水組成物として、塗膜形成樹脂、ワックス及び粒状物を含有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得ることができる撥水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材と、前記基材の表面上に設けられた撥水層とを備えた撥水構造であって、前記撥水層は、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスとを含有し、前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む。
【0006】
本発明は、基材の表面に対して撥水コーティング剤を塗工して撥水層を形成する撥水構造の製造方法であって、前記撥水コーティング剤は、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスとを含有し、前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む。
【0007】
本発明は、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスとを含有する撥水コーティング剤であって、前記バインダー樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撥水層が、撥水性粒子と、バインダー樹脂と、ポリオレフィンワックスとを含有することにより、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】実施形態1に係る撥水構造の断面図である。
【
図1B】実施形態1に係る撥水構造の表層の断面部分拡大図である。
【
図2】実施形態1に係る撥水構造の製造方法を示す説明図である。
【
図3】実施形態2に係る撥水構造の表層の断面部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1A及びBは、実施形態1に係る撥水構造10を示す。実施形態1に係る撥水構造10は、基材11と、その基材11の表面上に設けられた撥水層12とを備える。
【0012】
基材11の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属、木、ガラス、樹脂、ゴム、織布、不織布等が挙げられる。基材11は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、樹脂であることが好ましい。
【0013】
樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)等が挙げられる。樹脂は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、ポリカーボネート樹脂及び/又はポリ塩化ビニル樹脂を含むことがより好ましい。
【0014】
基材11の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、シート状、板状、管状、塊状等が挙げられる。基材11における撥水層12が設けられる表面は、平滑面であっても、凹凸面であっても、どちらでもよい。
【0015】
撥水層12は、撥水性粒子121と、バインダー樹脂122と、ポリオレフィンワックス123とを含有する。実施形態1に係る撥水構造10によれば、撥水層12が、撥水性粒子121と、バインダー樹脂122と、ポリオレフィンワックス123とを含有することにより、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得ることができる。これは、ポリオレフィンワックス123が、撥水層12における撥水性粒子121同士の密着性、及び、撥水性粒子121とバインダー樹脂122との密着性をそれぞれ向上させると共に、ポリオレフィンワックス123自体の疎水性能によって撥水層12の表面自由エネルギーをより低下させるためであると推測される。
【0016】
撥水性粒子121としては、例えば、ナノシリカ、未造粒カーボンブラック等が挙げられる。撥水性粒子121は、これらのナノシリカ及び未造粒カーボンブラックのうちの一方又は両方を含むことが好ましく、非黒色の非常に高い撥水性能を得る観点から、ナノシリカを含むことがより好ましい。
【0017】
本出願における「ナノシリカ」とは、平均粒子径(一次粒子径)が1μm未満のシリカ粒子を意味する。ナノシリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。ナノシリカは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能を得る観点から、ヒュームドシリカを含むことがより好ましい。市販のヒュームドシリカとしては、例えば日本アエロジル社製のアエロジルシリーズが挙げられる。
【0018】
ヒュームドシリカには、表面処理が施されていない親水性ヒュームドシリカと、シラノール基部分がシラン及び/又はシロキサンで化学的に表面処理された疎水性ヒュームドシリカとがある。ナノシリカは、これらの親水性ヒュームドシリカ及び疎水性ヒュームドシリカのうちの一方又は両方を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能を得る観点から、親水性ヒュームドシリカを含むことがより好ましい。
【0019】
本出願における「未造粒カーボンブラック」とは、一次粒子が凝集した造粒物を形成していないカーボンブラックを意味する。したがって、本出願における「未造粒カーボンブラック」には、造粒剤を含まない微粉末状のカーボンブラック、造粒のための表面処理がなされていない微粉末状のカーボンブラック、造粒に寄与する酸素及び/又は水素を含む官能基を有することを意図的に排除した、そのような官能基を実質的に有さない微粉末状のカーボンブラックが含まれる。
【0020】
その一方、本出願における「未造粒カーボンブラック」には、造粒剤を含む粒状のカーボンブラック、造粒のための表面処理がなされた粒状のカーボンブラック、並びに造粒に寄与する酸素及び/又は水素を含む官能基が意図的に導入された粒状のカーボンブラックは含まれない。但し、これらの粒状のカーボンブラックも、焼成処理等が施されて粒状の形態を喪失して微粉末状となったものは、本出願における「未造粒カーボンブラック」に含まれる。また、本出願の未造粒カーボンブラックには、未造粒カーボンナノチューブ及び未造粒カーボングラファイトも含まれる。
【0021】
未造粒カーボンブラックは、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS分析)により、分析温度範囲を50℃以上800℃以下としたとき、H2O(-OH)、CO(CHO、>CO)、及びCO2(-COOH)のそれぞれの強度のピークが検出されないことが好ましい。未造粒カーボンブラックは、官能基に起因する酸素含有量が、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0022】
未造粒カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック;チャネルブラック;SAF、ISAF、N339、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック等が挙げられる。未造粒カーボンブラックは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。未造粒カーボンブラックは、非常に高い撥水性能を得る観点から、アセチレンブラックを含むことが好ましい。市販の未造粒のアセチレンブラックとしては、例えばデンカ社製の商品名:デンカブラックの粉状品が挙げられる。
【0023】
撥水性粒子121の平均粒子径(一次粒子径)は、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上70nm以下、更に好ましくは15nm以上50nm以下である。撥水性粒子121の平均粒子径は、電子顕微鏡観察による測定に基づいて算出される。
【0024】
撥水性粒子121のBET比表面積は、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは10mm2/g以上300mm2/g以下、より好ましくは20mm2/g以上200mm2/g以下、更に好ましくは35mm2/g以上130mm2/g以下である。撥水性粒子121のBET比表面積は、JIS Z8830:2013に基づいて測定される。
【0025】
バインダー樹脂122としては、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。バインダー樹脂122は、これらの複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂及びフッ素樹脂のうちの一方又は両方を含むことが好ましく、撥水性粒子121の基材11への定着性を高め且つ高い撥水性能を得る観点から、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂を含むことがより好ましい。
【0026】
シリコーン樹脂は、複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーである。一般的に、シリコーン樹脂は、Q単位、T単位、D単位、M単位と呼ばれる4種類の基本構成単位により構成されている。Q単位は、式(SiO4/2)で示され、置換基を有しない。T単位は、式(RSiO3/2)で示され、置換基を1つ有する。D単位は、式(R2SiO2/2)で示され、置換基を2つ有する。M単位は、式(R3SiO1/2)で示され、置換基を3つ有する。置換基は、有機基であり、例えば、アルコキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。この置換基は、同一であっても異なっていてもよい。本出願のシリコーン樹脂は、Q単位を形成するモノマー、T単位を形成するモノマー、及びD単位を形成するモノマーのうちの2種以上がシロキサン結合して構成されたコポリマーであることが好ましく、T単位を形成するモノマー及びD単位を形成するモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーであることがより好ましい。
【0027】
また、シリコーン樹脂は、シリコーンオリゴマーを含むことが好ましい。ここで、シリコーンオリゴマーとは、一般に分子量が10000以下の低分子量重合体であり、直鎖構造、分岐構造又は3次元網目構造となっているシリコーン化合物である。本出願のシリコーン樹脂は、Q単位、T単位及びD単位のうちの2種以上を含むことが好ましく、3次元網目構造であることが好ましい。バインダー樹脂122を形成する市販の複数種のモノマーがシロキサン結合して構成されたコポリマーのシリコーン樹脂材料としては、例えばモメンティブジャパン社製の商品名:XR31-B2733等が挙げられる。
【0028】
バインダー樹脂122は、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)等が挙げられる。バインダー樹脂122を形成する市販のフッ素樹脂材料としては、例えばフロロテクノロジー社製の商品名:フロロサーフ等が挙げられる。
【0030】
フッ素樹脂は、非常に高い撥水性能を得るという観点から、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0031】
撥水層12におけるバインダー樹脂122の含有量は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは9質量%以上21質量%以下、より好ましくは10質量%以上18質量%以下、更に好ましくは11質量%以上15質量%以下である。
【0032】
また、バインダー樹脂122の100質量部に対する撥水性粒子121の含有量は、撥水性粒子121の基材11への定着性を高め且つ非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは20質量部以上70質量部以下、より好ましくは25質量部以上50質量部以下、更に好ましくは33質量部以上39質量部以下である。
【0033】
撥水層12に含有されるポリオレフィンワックス123とは、一般的に分子量10000以下の低分子量のポリオレフィンである。ポリオレフィンワックス123としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びこれらの高密度重合型、低密度重合型、酸化型等が挙げられる。ポリオレフィンワックス123は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。なお、ポリオレフィンワックス123のうち、一般に、密度が0.95g/cm3以上のポリオレフィンワックス123を高密度重合型、密度が0.94g/cm3以下のポリオレフィンワックス123を低密度重合型と分類する。
【0034】
ポリオレフィンワックス123は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、酸化型のポリオレフィンワックス(以下、酸化ポリオレフィンワックスという。)を含むことが好ましい。この酸化ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンワックス123を酸化処理し、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の極性基を導入したワックスであり、酸化型ポリオレフィンワックス等の名称で一般に知られ、市販されている。
【0035】
酸化ポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合ワックス、エチレン-酢酸ビニル共重合ワックス、酸化エチレン-酢酸ビニル共重合ワックス、エチレン-無水マレイン酸共重合ワックス、プロピレン-無水マレイン酸共重合ワックス、酸化ポリエチレンワックス及びこれの高密度重合型等が挙げられる。酸化ポリオレフィンワックスは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0036】
酸化ポリオレフィンワックスは、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、エチレン-アクリル酸共重合ワックス及び/又は酸化ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。市販のエチレン-アクリル酸共重合ワックスとしては、例えば、ハネウェル社製の商品名:AC540等が挙げられる。また、市販の酸化ポリエチレンワックスとしては、例えば、ハネウェル社製の商品名:AC320等が挙げられる。
【0037】
バインダー樹脂122の100質量部に対するポリオレフィンワックス123の含有量は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは1質量部以上42質量部以下、より好ましくは7質量部以上28質量部以下、更に好ましくは10質量部以上20質量部以下である。
【0038】
撥水層12の厚さは、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上であり、また、撥水層12の強度を保持する観点から、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
【0039】
実施形態1に係る撥水構造10の静的な撥水性の指標となる水との接触角は、好ましくは130°以上、より好ましくは140°以上、更に好ましくは150°以上である。この接触角は、温度25±5℃及び湿度50±10%の条件下において、実施形態1に係る撥水構造10の表面に純水の水滴を滴下して接線法により測定される。
【0040】
実施形態1に係る撥水構造10の水滴除去性の指標となる水の滑落角は、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下、更に好ましくは20°以下である。この滑落角は、温度25±5℃及び湿度50±10%の条件下において、実施形態1に係る撥水構造10の表面に純水の水滴を滴下して滑落法により測定される。
【0041】
以上のような実施形態1に係る撥水構造10は、例えば、
図2に示すように、基材11の表面に対して、撥水性粒子121と、バインダー樹脂122と、ポリオレフィンワックス123とを含有する撥水コーティング剤20を塗工して基材11の表面上に撥水層12を形成することにより得ることができる。
【0042】
撥水コーティング剤20は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を発現する均一な撥水層12を形成する観点から、撥水性粒子121及びポリオレフィンワックス123を分散させ且つバインダー樹脂122を溶解させる有機溶剤を更に含有することが好ましい。
【0043】
かかる有機溶剤としては、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。有機溶剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を発現する均一な撥水層12を形成する観点から、芳香族炭化水素溶媒を含むことが好ましく、トルエン及び/又はキシレンを含むことがより好ましい。
【0044】
撥水コーティング剤20は、バインダー樹脂122の硬化反応の触媒を含有していてもよい。バインダー樹脂122がシリコーン樹脂の場合、かかる触媒としては、例えば、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機スズ化合物、有機コバルト化合物、リン酸化合物等が挙げられる。触媒は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、有機チタン化合物を含むことがより好ましい。触媒の含有量は、バインダー樹脂122の100質量部に対して、例えば3質量部以上9質量部以下である。
【0045】
撥水コーティング剤20における有機溶剤以外の全固形分濃度は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を発現する均一な撥水層12を形成する観点から、好ましくは5質量%以上65質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、更に好ましくは15質量%以上25質量%以下である。なお、この全固形分濃度は、撥水コーティング剤20が所望の粘度になるように、上記数値範囲外に設定してもよい。
【0046】
基材11の表面への撥水コーティング剤20の塗工手段としては、例えば、マイヤーバーコート、アプリケーターコート、スプレーコート、ローラーコート、グラビアコーターコート、ダイコーターコート、リップコーターコート、コンマコーターコート、ナイフコーターコート、リバースコ-ターコート、スピンコーターコート、ディップコート、刷毛塗り等が挙げられる。塗工手段は、施工性が良好であるという観点から、これらのうちのスプレーコートが好ましい。
【0047】
以上の構成の実施形態1に係る撥水構造10は、例えば屋外用のテント、傘等に適用することができる。また、実施形態1に係る撥水構造10は、林業用苗木保護資材の積雪対策に適用することができる。
【0048】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る撥水構造10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0049】
実施形態2に係る撥水構造10では、撥水層12が、充填粒子124を更に含有する。
【0050】
撥水層12は、撥水性粒子121と、バインダー樹脂122と、ポリオレフィンワックス123と、更に充填粒子124とを含有する。実施形態2に係る撥水構造10によれば、更に撥水性能を向上させることができる。これは、
図3に示すように、充填粒子124間に撥水性粒子121が入り込むとともに、充填粒子124により形成される表面凹凸によって撥水性粒子121が存在できる表面積が拡大し、その表面に沿って多くの撥水性粒子121が分布することとなり、これによって撥水性粒子121による撥水性能が高められるためであると推測される。
【0051】
充填粒子124としては、例えば、平均粒子径が1μm以上のシリカ粒子(以下「大粒径シリカ」という。)、カルシウム粒子、モンモリロナイト粒子、マイカ粒子、タルク粒子などの無機粒子;アクリル系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子などの有機粒子等が挙げられる。充填粒子124は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能を得る観点から、大粒径シリカを含むことがより好ましい。
【0052】
大粒径シリカには、表面処理が施されていない親水性大粒径シリカと、シラノール基部分がシラン及び/又はシロキサンで化学的に表面処理された疎水性大粒径シリカとがある。大粒径シリカは、これらの親水性大粒径シリカ及び疎水性大粒径シリカのうちの一方又は両方を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能を得る観点から、親水性大粒径シリカを含むことがより好ましい。
【0053】
充填粒子124の平均粒子径は、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは2μm以上50μm以下、更に好ましくは3μm以上5μm以下である。充填粒子124の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される。
【0054】
充填粒子124は、撥水性粒子121よりも平均粒子径が大きい。充填粒子124の平均粒子径は、非常に高い撥水性能を得る観点から、撥水性粒子121の平均粒子径の好ましくは20倍以上250倍以下、より好ましくは30倍以上200倍以下、更に好ましくは40倍以上100倍以下、より更に好ましくは50倍以上70倍以下である。
【0055】
充填粒子124は、多孔質であることが好ましい。充填粒子124のBET比表面積は、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは150mm2/g以上700mm2/g以下、より好ましくは200mm2/g以上400mm2/g以下、更に好ましくは250mm2/g以上350mm2/g以下である。充填粒子124のBET比表面積も、撥水性粒子121と同様、JIS Z8830:2013に基づいて測定される。
【0056】
充填粒子124のBET比表面積の撥水性粒子121のBET比表面積に対する比は、非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは2以上20以下、より好ましくは3以上15以下、更に好ましくは4以上10以下である。充填粒子124のBET比表面積は、非常に高い撥水性能を得る観点から、撥水性粒子121のBET比表面積よりも大きいことが好ましい。
【0057】
実施形態2に係る撥水構造10における充填粒子124の質量含有量は、非常に高い撥水性能を得る観点から、撥水性粒子121の質量含有量よりも少ないことが好ましい。実施形態2に係る撥水構造10における撥水性粒子121の含有量の充填粒子124の含有量に対する質量比は、好ましくは3以上20以下、より好ましくは5以上13以下、更に好ましくは6以上11以下である。
【0058】
バインダー樹脂122の100質量部に対する撥水性粒子121及び充填粒子124の合計含有量は、それらの基材11への定着性を高め且つ非常に高い撥水性能を得る観点から、好ましくは21質量部以上80質量部以下、より好ましくは27質量部以上52質量部以下、更に好ましくは36質量部以上46質量部以下である。バインダー樹脂122の100質量部に対する充填粒子124の含有量は、同様の観点から、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは2質量部以上10質量部以下、更に好ましくは3質量部以上7質量部以下である。
【0059】
撥水性粒子121、バインダー樹脂122及び充填粒子124の含有量の和に対するポリオレフィンワックス123の含有量は、非常に高い撥水性能及び優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0060】
実施形態2に係る撥水構造10は、実施形態1と同様の方法で製造することができる。また、その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同一である。
【0061】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、基材11の直上に撥水層12が設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、必要に応じて基材11と撥水層12との間に下地層が介設されていてもよい。
【実施例0062】
(撥水構造)
以下の実施例1~6及び比較例1の撥水構造を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0063】
<実施例1>
有機溶剤のトルエンに、バインダー樹脂となるシリコーン樹脂(XR31-B2733 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)と、硬化剤の有機チタン化合物(TC-750 松本ファインケミカル社製、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート))と、撥水性粒子の親水性ヒュームドシリカ(アエロジルOX50 日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm、BET比表面積:50±15m2/g)と、充填粒子の親水性大粒径シリカ(サイリシア310P 富士シリシア化学社製、平均粒子径:2.7μm、BET比表面積:300m2/g)と、エチレン-アクリル酸共重合ワックス(AC540 ハネウェル社製)を投入して撹拌することにより撥水コーティング剤を調製した。撥水コーティング剤における有機チタン化合物、親水性ヒュームドシリカ、親水性大粒径シリカ、及びエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、それぞれ6質量部、36質量部、4質量部、及び7質量部とした。このとき、撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、5質量%である。そして、この撥水コーティング剤を、ポリカーボネート樹脂板の基材の表面にスプレーコートした後、80℃で30分間放置して乾燥させることにより、基材上に撥水層を形成した撥水構造を得た。この撥水構造を実施例1とした。
【0064】
<実施例2>
エチレン-アクリル酸共重合ワックスを、シリコーン樹脂100質量部に対して14質量部投入した撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た撥水構造を実施例2とした。なお、実施例2の撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、10質量%である。
【0065】
<実施例3>
親水性ヒュームドシリカを、シリコーン樹脂100質量部に対して35質量部、エチレン-アクリル酸共重合ワックスを、シリコーン樹脂100質量部に対して21質量部投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及び、ポリカーボネート樹脂板に代えて、ポリ塩化ビニル樹脂板を用いたこと除いて実施例1と同様にして得た撥水構造を実施例3とした。なお、実施例3の撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、15質量%である。
【0066】
<実施例4>
エチレン-アクリル酸共重合ワックスを、シリコーン樹脂100質量部に対して28質量部投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及び、ポリカーボネート樹脂板に代えて、ポリ塩化ビニル樹脂板を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た撥水構造を実施例4とした。なお、実施例4の撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、20質量%である。
【0067】
<実施例5>
エチレン-アクリル酸共重合ワックスに代えて、酸化ポリエチレンワックス(AC320 ハネウェル社製)を投入した撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た撥水構造を実施例5とした。なお、実施例5の撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対する酸化ポリエチレンワックスの含有量は、5質量%である。
【0068】
<実施例6>
酸化ポリエチレンワックスを、シリコーン樹脂100質量部に対して14質量部投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及び、撥水コーティング剤を150℃で2分間放置して乾燥させたことを除いて実施例5と同様にして得た撥水構造を実施例6とした。なお、実施例6の撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対する酸化ポリエチレンワックスの含有量は、10質量%である。
【0069】
<比較例1>
エチレン-アクリル酸共重合ワックスを含まない撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た撥水構造を比較例1とした。
【0070】
【0071】
(試験方法)
<接触角>
実施例1~6及び比較例1のそれぞれについて、接触角計(DM-500 協和界面科学社製)を用い、温度25℃及び湿度50%の条件下において、撥水構造の表面に純水の水滴1.6μlを滴下して接線法により接触角を測定した。
【0072】
<滑落角>
実施例1~6及び比較例1のそれぞれについて、接触角計(DM-500 協和界面科学社製)を用い、温度25℃及び湿度50%の条件下において、撥水構造の表面に純水の水滴1.6μlを滴下して滑落法により滑落角を測定した。
【0073】
<摩耗>
実施例1~6及び比較例1のそれぞれについて、撥水構造の撥水層を手で擦って摩耗させた後に、撥水構造における撥水性の低下の有無を確認した。撥水性の顕著な低下がない場合はA、撥水性の顕著な低下がある場合はB、として判定した。
【0074】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1によれば、実施例1~6のいずれも、接触角が140°以上のいわゆる超撥水性が得られ、また滑落角が小さく、更に顕著な撥水低下がなく耐摩耗性に優れることが分かる。一方で、ポリオレフィンワックスを含有しない比較例1は、接触角が140°以上であるが、滑落角が大きく、撥水性の顕著な低下があり摩耗しやすいことが分かる。
【0075】
実施例1~4の滑落角を比較すると、撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量が20質量%の実施例4が最も大きいことが分かる。これに対して、撥水性粒子、シリコーン樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量が15質量%以下の実施例1~3は、特に滑落角が小さく、優れた撥水性を有することが分かる。
【0076】
(撥水構造)
次いで、以下の実施例7~11及び比較例2の撥水構造を作製した。それぞれの構成は表2にも示す。
【0077】
<実施例7>
有機溶剤のトルエンに、バインダー樹脂となるフッ素樹脂溶液(フロロサーフ2060-15 フロロテクノロジー社製 15質量%溶液)と、撥水性粒子の疎水性ヒュームドシリカ(アエロジルR972 日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm、BET比表面積:110±20m2/g)と、エチレン-アクリル酸共重合ワックス(AC540 ハネウェル社製)とを投入して撹拌することにより撥水コーティング剤を調製した。撥水コーティング剤における疎水性ヒュームドシリカ及びエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、フッ素樹脂溶液100質量部(フッ素樹脂固形分15質量部)に対して、それぞれ6質量部及び2質量部とした。このとき、撥水性粒子及びフッ素樹脂の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、10質量%である。そして、この撥水コーティング剤を、ポリエチレンテレフタレート樹脂板の基材の表面にスプレーコートした後、80℃で30分間放置して乾燥させることにより、基材上に撥水層を形成した撥水構造を得た。この撥水構造を実施例7とした。
【0078】
<実施例8>
疎水性ヒュームドシリカを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して12質量部、エチレン-アクリル酸共重合ワックスを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して3質量部投入した撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例7と同様にして得た撥水構造を実施例8とした。なお、実施例8の撥水性粒子、フッ素樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、11質量%である。
【0079】
<実施例9>
疎水性ヒュームドシリカを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して9質量部投入した投入した撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例7と同様にして得た撥水構造を実施例9とした。なお、実施例9の撥水性粒子、フッ素樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、8質量%である。
【0080】
<実施例10>
疎水性ヒュームドシリカを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して9質量部、充填粒子の疎水性大粒径シリカ(サイロホービック100 富士シリシア化学社製、平均粒子径:2.7μm、BET比表面積:300m2/g)を、フッ素樹脂溶液100質量部に対して2質量部、エチレン-アクリル酸共重合ワックスを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して3質量部投入した投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及びポリエチレンテレフタレート樹脂板に代えて、ポリカーボネート樹脂板を用いたことを除いて実施例7と同様にして得た撥水構造を実施例10とした。なお、実施例10の撥水性粒子、フッ素樹脂及び充填粒子の含有量の和に対するエチレン-アクリル酸共重合ワックスの含有量は、10質量%である。
【0081】
<実施例11>
疎水性ヒュームドシリカを、フッ素樹脂溶液100質量部に対して9質量部投入した投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及びエチレン-アクリル酸共重合ワックスに代えて、酸化ポリエチレンワックス(AC320 ハネウェル社製)を、フッ素樹脂溶液100質量部に対して2質量部投入した投入した撥水コーティング剤を用いたこと、及びポリエチレンテレフタレート樹脂板に代えて、ポリカーボネート樹脂板を用いたことを除いて実施例7と同様にして得た撥水構造を実施例11とした。なお、実施例11の撥水性粒子、フッ素樹脂及び充填粒子の含有量の和に対する酸化ポリエチレンワックスの含有量は、8質量%である。
【0082】
<比較例2>
エチレン-アクリル酸共重合ワックスを含まない撥水コーティング剤を用いたことを除いて実施例10と同様にして得た撥水構造を比較例2とした。
【0083】
【0084】
(試験方法)
実施例7~11及び比較例2についても、実施例1~6及び比較例1と同様に、接触角及び滑落角の測定、並びに摩耗の判定を行った。
【0085】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。表2によれば、実施例7~11のいずれも、接触角が140°以上のいわゆる超撥水性が得られ、また滑落角が小さく、更に顕著な撥水低下がなく耐摩耗性に優れることが分かる。一方で、ポリオレフィンワックスを含有しない比較例2は、接触角が140°以上であり、滑落角も小さいが、撥水性の顕著な低下があり摩耗しやすいことが分かる。表4によれば、実施例7~11はいずれも、接触角及び耐摩耗性において、実施例2よりも優れることが分かる。