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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119083
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】二次空気供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/22 20060101AFI20220808BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
F01N3/22 301P
F01N11/00
F01N3/22 301Z
F01N3/22 301S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016076
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓哉
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA14
3G091AA17
3G091AA28
3G091BA29
3G091CA22
3G091EA34
3G091FA02
3G091GB17X
3G091HA36
3G091HB07
(57)【要約】
【課題】二次空気供給通路内の圧力の脈動を正確に検出することができる技術を提供する。
【解決手段】二次空気供給装置は、エンジンと、エンジンに吸入される空気が流れる吸気通路と、エンジンから排出される排ガスが流れる排気通路と、排気通路に配置されており、排気通路を流れる排ガスを浄化する触媒を含む排ガス浄化部材と、吸気通路に連通しており、排ガス浄化部材よりも上流側の排気通路に接続されている二次空気供給通路と、二次空気供給通路に配置されており、二次空気供給通路を開閉する制御弁と、制御弁の開状態と閉状態とを切り替える制御部と、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路に配置されており、排気通路に向かう方向に空気を圧送するエアポンプと、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の上流側圧力を検出する上流側圧力センサと、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の下流側圧力を検出する下流側圧力センサと、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに吸入される空気が流れる吸気通路と、
前記エンジンから排出される排ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路に配置されており、前記排気通路を流れる排ガスを浄化する触媒を含む排ガス浄化部材と、
前記吸気通路に連通しており、前記排ガス浄化部材よりも上流側の前記排気通路に接続されている二次空気供給通路と、
前記二次空気供給通路に配置されており、前記二次空気供給通路を開閉する制御弁と、
前記制御弁の開状態と閉状態とを切り替える制御部と、
前記制御弁よりも上流側の前記二次空気供給通路に配置されており、前記排気通路に向かう方向に空気を圧送するエアポンプと、
前記制御弁よりも上流側の前記二次空気供給通路内の上流側圧力を検出する上流側圧力センサと、
前記制御弁よりも下流側の前記二次空気供給通路内の下流側圧力を検出する下流側圧力センサと、を備えている、二次空気供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記上流側圧力センサにより検出される前記上流側圧力の脈動と、前記下流側圧力センサにより検出される前記下流側圧力の脈動と、に基づいて、前記制御弁の開閉状態を判断する、二次空気供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記制御弁を前記開状態または前記閉状態に制御する指令と、前記上流側圧力の前記脈動と、前記下流側圧力の前記脈動と、に基づいて、前記制御弁の前記開閉状態に異常が生じているか否かを判断する、二次空気供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記上流側圧力の前記脈動の振幅と、前記下流側圧力の前記脈動の振幅と、の差に基づいて、前記制御弁の前記開閉状態に異常が生じているか否かを判断する、二次空気供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記上流側圧力の前記脈動の前記振幅と前記下流側圧力の前記脈動の前記振幅との差、および振幅判定値に基づいて、前記制御弁の前記開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能であり、
前記制御部は、前記エンジンの運転条件に応じて、前記振幅判定値を変更可能である、二次空気供給装置。
【請求項6】
請求項3に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記上流側圧力の前記脈動の位相と、前記下流側圧力の前記脈動の位相と、の差に基づいて、前記制御弁の前記開閉状態に異常が生じているか否かを判断する、二次空気供給装置。
【請求項7】
請求項6に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御部は、前記上流側圧力の前記脈動の前記位相と前記下流側圧力の前記脈動の前記位相との差、および位相判定値に基づいて、前記制御弁の前記開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能であり、
前記制御部は、前記エンジンの運転条件に応じて、前記位相判定値を変更可能である、二次空気供給装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御弁が前記閉状態にある場合に、前記上流側圧力の前記脈動の前記位相と、前記下流側圧力の前記脈動の前記位相と、が異なっている、二次空気供給装置。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか一項に記載の二次空気供給装置であって、
前記上流側圧力センサよりも上流側の前記二次空気供給通路に配置されているチャンバーをさらに備えており、
前記チャンバーの通路断面積は、前記二次空気供給通路の通路断面積よりも大きい、二次空気供給装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の二次空気供給装置であって、
前記上流側圧力センサと前記下流側圧力センサは、前記制御弁の近傍に配置されている、二次空気供給装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の二次空気供給装置であって、
前記制御弁と前記上流側圧力センサと前記下流側圧力センサとは、一体的に作製されている、二次空気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、二次空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に二次空気供給装置が開示されている。特許文献1の二次空気供給装置は、エンジンと、エンジンから排出される排ガスが流れる排気通路と、排気通路に配置されており、排気通路を流れる排ガスを浄化する触媒を含む排ガス浄化部材と、吸気通路に連通しており、排ガス浄化部材よりも上流側の排気通路に接続されている二次空気供給通路と、二次空気供給通路を開閉する制御弁と、制御弁の開状態と閉状態とを切り替える制御部と、二次空気供給通路内の空気を排気通路に向かう方向に圧送するエアポンプと、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の上流側圧力を検出する上流側圧力センサと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-83048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の二次空気供給装置では、二次空気供給通路が吸気通路に連通しているため、吸気通路内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路内の空気に上流側圧力の脈動が生じることがある。また、二次空気供給通路が排気通路に接続されているため、排気通路内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の空気に下流側圧力の脈動が生じることがある。
【0005】
上記の二次空気供給装置では、上流側圧力センサにより、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の空気に生じた上流側圧力の脈動のみが検出される。このため、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の空気に生じた下流側圧力の脈動を検出することができない。これにより、二次空気供給通路内の圧力の脈動を正確に検出することができない。
【0006】
本明細書は、二次空気供給通路内の圧力の脈動を正確に検出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する二次空気供給装置は、エンジンと、エンジンに吸入される空気が流れる吸気通路と、エンジンから排出される排ガスが流れる排気通路と、排気通路に配置されており、排気通路を流れる排ガスを浄化する触媒を含む排ガス浄化部材と、吸気通路に連通しており、排ガス浄化部材よりも上流側の排気通路に接続されている二次空気供給通路と、二次空気供給通路に配置されており、二次空気供給通路を開閉する制御弁と、制御弁の開状態と閉状態とを切り替える制御部と、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路に配置されており、排気通路に向かう方向に空気を圧送するエアポンプと、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の上流側圧力を検出する上流側圧力センサと、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の下流側圧力を検出する下流側圧力センサと、を備えている。
【0008】
上記の構成によれば、二次空気供給通路が吸気通路に連通しているため、吸気通路内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路内の空気に上流側圧力の脈動が生じることがある。また、二次空気供給通路が排気通路に接続されているため、排気通路内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路内の空気に下流側圧力の脈動が生じることがある。上記の構成によれば、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の上流側圧力の脈動が上流側圧力センサにより検出され、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の下流側圧力の脈動が下流側圧力センサにより検出される。このため、二次空気供給通路内の圧力の脈動を正確に検出することができる。
【0009】
本明細書に開示する制御部は、上流側圧力センサにより検出される上流側圧力の脈動と、下流側圧力センサにより検出される下流側圧力の脈動と、に基づいて、制御弁の開閉状態を判断してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、制御弁が閉状態である場合、吸気通路内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の空気に上流側圧力の脈動が生じ、また、排気通路内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の空気に下流側圧力の脈動が生じる。一方、制御弁が開状態である場合、吸気通路内の空気の圧力の脈動と排気通路内の空気の圧力の脈動の両方に起因して、制御弁よりも上流側の二次空気供給通路内の空気に上流側圧力の脈動が生じるとともに、制御弁よりも下流側の二次空気供給通路内の空気にも下流側圧力の脈動が生じる。上記の構成によれば、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動とが検出されることにより、制御弁が閉状態と開状態のいずれの状態にあるか否かを容易に判断することができる。
【0011】
本明細書に開示する制御部は、制御弁を開状態または閉状態に制御する指令と、上流側圧力の脈動と、下流側圧力の脈動と、に基づいて、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断してもよい。
【0012】
例えば、制御弁と二次空気供給通路との間に異物が挟まると、制御部が制御弁を閉状態に制御する指令を発している場合であっても、制御弁が閉状態とならずに開状態となることがある。また、例えば、制御弁が固着していると、制御部が制御弁を開状態に制御する指令を発している場合であっても、制御弁が開状態とならず閉状態に維持されることがある。上記の構成によれば、制御部は、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動とに基づいて制御弁の実際の開閉状態を判断することができる。このため、制御部が、制御弁の実際の開閉状態と、制御弁を開状態または閉状態に制御する指令とを比較することにより、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0013】
本明細書に開示する制御部は、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅と、の差に基づいて、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、上流側圧力の脈動の振幅と下流側圧力の脈動の振幅との差を比較する簡便な手法により、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断することができる。
【0015】
本明細書に開示する制御部は、上流側圧力の脈動の振幅と下流側圧力の脈動の振幅との差、および振幅判定値に基づいて、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能であってもよい。制御部は、エンジンの運転条件に応じて、振幅判定値を変更可能であってもよい。
【0016】
吸気通路に生じる圧力の脈動の振幅と、排気通路に生じる圧力の脈動の振幅は、エンジンの運転条件に応じて変化することがある。このため、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅も、エンジンの運転条件に応じて変化することがある。上記の構成によれば、制御部がエンジンの運転条件に応じて振幅判定値を変化させるため、エンジンの運転条件によらず、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0017】
本明細書に開示する制御部は、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相と、の差に基づいて、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、上流側圧力の脈動の位相と下流側圧力の脈動の位相との差を比較する簡便な手法により、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断することができる。
【0019】
本明細書に開示する制御部は、上流側圧力の脈動の位相と下流側圧力の脈動の位相との差、および位相判定値に基づいて、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能であってもよい。制御部は、エンジンの運転条件に応じて、位相判定値を変更可能であってもよい。
【0020】
吸気通路に生じる圧力の脈動の位相と、排気通路に生じる圧力の脈動の位相は、エンジンの運転条件に応じて変化することがある。このため、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相も、エンジンの運転条件に応じて変化することがある。上記の構成によれば、制御部がエンジンの運転条件に応じて位相判定値を変化させるため、エンジンの運転条件によらず、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0021】
本明細書に開示する二次空気供給装置において、制御弁が閉状態にある場合に、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相と、が異なっていてもよい。
【0022】
例えば、制御弁が閉状態にある場合に、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相が等しいと、制御部は、制御弁が開状態であると誤って判断してしまい、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができない。上記の構成によれば、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0023】
本明細書に開示する二次空気供給装置は、上流側圧力センサよりも上流側の二次空気供給通路に配置されているチャンバーをさらに備えていてもよい。チャンバーの通路断面積は、二次空気供給通路の通路断面積よりも大きくてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、チャンバーを用いることにより、吸気通路内の空気に圧力の脈動が生じる場合に、その脈動に起因して、二次空気供給通路内の空気に生じる上流側圧力の脈動の振幅を低減することができ、また、上流側圧力の脈動の位相を変化させることができる。これにより、制御弁の開閉状態に異常が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【0025】
本明細書に開示する上流側圧力センサと下流側圧力センサは、制御弁の近傍に配置されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、制御弁近傍の上流側圧力の脈動が上流側圧力センサにより検出され、制御弁近傍の下流側圧力の脈動が下流側圧力センサにより検出される。このため、上流側圧力センサと下流側圧力センサとの間の距離が圧力の脈動に与える影響を考慮することなく、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動、例えば、脈動の位相を比較することができる。
【0027】
本明細書に開示する制御弁と上流側圧力センサと下流側圧力センサとは、一体的に作製されていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、制御弁と上流側圧力センサと下流側圧力センサとが別体で作製されている場合と比較して、部品点数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施例に係る二次空気供給装置の模式図である。
図2】圧力の脈動のパターンの一例を示す図である。
図3】第1実施例に係る脈動解析処理のフローチャートである。
図4】第1実施例に係る異常判定処理のフローチャートである。
図5】第2実施例に係る異常判定処理のフローチャートである。
図6】第3実施例に係る異常判定処理のフローチャートである。
図7】第4実施例に係る異常判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施例)
第1実施例に係る二次空気供給装置1について図面を参照して説明する。二次空気供給装置1は、例えば、ガソリン自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されている。図1に示すように、二次空気供給装置1は、エンジン10と、エンジン10に接続されている吸気通路12と、エンジン10に接続されている排気通路14と、を備えている。また、二次空気供給装置1は、排気通路14に接続されている二次空気供給通路16と、制御部52と、を備えている。
【0031】
エンジン10は、例えば、4気筒型のエンジンである。なお、変形例では、エンジン10は、4気筒型以外のエンジンであってもよい。エンジン10は、ガソリン等の燃料と空気を吸入し、その燃料を燃焼させることにより、エンジン10のクランクシャフト10aを回転させる。クランクシャフト10aの回転に伴うエンジン10の駆動力により車両が走行する。エンジン10で燃料が燃焼すると排ガスが排出される。
【0032】
クランクシャフト10aには、クランク角センサ11が取り付けられている。クランク角センサ11は、クランクシャフト10aの回転角を検出する。クランク角センサ11の検出値は、制御部52により取得される。
【0033】
吸気通路12は、エンジン10に空気を供給する。吸気通路12の下流端部は、エンジン10の吸入口18に接続されている。吸気通路12を流れた空気がエンジン10に吸入される。吸気通路12の上流端部には、エアクリーナ20が取り付けられている。エアクリーナ20は、入口部22と、フィルタ部26と、出口部24と、を備えている。入口部22は、外気側に配置されており、入口部22から空気が吸入される。フィルタ部26は、入口部22と出口部24との間に配置されている。入口部22から吸入された空気がフィルタ部26を通過する。フィルタ部26は、入口部22から吸入された空気に含まれているゴミやチリ等の異物を除去する。出口部24は、吸気通路12側に配置されており、フィルタ部26を通過した空気が出口部24から吸気通路12に流入する。吸気通路12の上流端部は、エアクリーナ20の出口部24に接続されている。
【0034】
エアクリーナ20よりも下流側の吸気通路12には、上流側から順に、エアフローメータ30、スロットル弁32、燃料噴射装置33が配置されている。エアフローメータ30は、吸気通路12を流れてエンジン10に吸入される空気の流量を検出する。スロットル弁32は、吸気通路12の流路面積を変化させることによりエンジン10に吸入される空気の流量を変化させる。燃料噴射装置33は、例えば、ガソリン等の液体の燃料を霧状に噴射する。燃料噴射装置33は、エンジン10の近傍の吸気通路12内に燃料を噴射する。燃料噴射装置33から噴射された燃料は、吸気通路12を流れる空気とともにエンジン10に吸入される。エンジン10に吸入された燃料が燃焼することによりエンジン10が駆動する。
【0035】
排気通路14の上流端部は、エンジン10の排気口19に接続されている。エンジン10から排出される排ガスが排気通路14に流入する。排気通路14は、エンジン10から排出される排ガスを外部に排出する。
【0036】
排気通路14内には、排ガス浄化部材36が配置されている。排ガス浄化部材36は、例えば、多孔質のセラミックスから構成されている円筒状の部材であり、触媒を保持する。触媒は、排気通路14を流れる排ガスを浄化する性質を有する。触媒は、排ガスに含まれている炭化水素と一酸化炭素を酸化し、窒素酸化物を還元する性質を有する。排ガス浄化部材36の触媒により浄化された後の排ガスが排気通路14から外部に排出される。
【0037】
排ガス浄化部材36よりも上流側の排気通路14には、空燃比センサ34が配置されている。空燃比センサ34は、エンジン10から排出されて排気通路14を流れる排ガスの空燃比を検出する。空燃比センサ34は、排ガス浄化部材36に供給される排ガスの空燃比を検出することができる。
【0038】
次に、二次空気供給通路16について説明する。二次空気供給通路16は、エアクリーナ20と排気通路14との間に配置されている。二次空気供給通路16の上流端部は、エアクリーナ20の出口部24に接続されている。二次空気供給通路16の上流端部は、エアクリーナ20の出口部24を介して吸気通路12の上流端部と連通している。二次空気供給通路16と吸気通路12が1個の共通のエアクリーナ20に接続されており、エアクリーナ20の共通化が図られている。二次空気供給通路16の下流端部は、空燃比センサ34と排ガス浄化部材36よりも上流側の排気通路14に接続されている。二次空気供給通路16は、空燃比センサ34と排ガス浄化部材36よりも上流側の排気通路14に空気を供給する。二次空気供給通路16は、排ガス浄化部材36に供給するための空気を排気通路14に供給する。
【0039】
二次空気供給通路16が吸気通路12に連通しているため、吸気通路12内の空気の状態が二次空気供給通路16内の空気の状態に影響を及ぼすことがある。例えば、吸気通路12内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に圧力の脈動が生じることがある。空気の圧力の脈動は、空気の圧力変動により生じる。また、二次空気供給通路16が排気通路14に連通しているため、排気通路14内の排ガスの状態が二次空気供給通路16内の空気の状態に影響を及ぼすことがある。例えば、排気通路14内の排ガスに圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に圧力の脈動が生じることがある。排ガスの圧力の脈動は、排ガスの圧力変動により生じる。なお、エンジン10が駆動すると、吸気通路12内の空気と排気通路14内の空気に圧力の脈動が生じる。
【0040】
二次空気供給通路16には、上流側から順に、チャンバー38と、エアポンプ40、上流側圧力センサ46、制御弁42、下流側圧力センサ48、リード弁44が配置されている。チャンバー38は、二次空気供給通路16とエアクリーナ20の接続箇所の近傍に配置されている。チャンバー38の空気の流れる方向に直交する面における通路断面積は、二次空気供給通路16の空気の流れる方向に直交する面における通路断面積よりも大きい。即ち、チャンバー38の空気の流れる方向における単位長さ当たりの容積は、二次空気供給通路16の空気の流れる方向における単位長さ当たりの容積よりも大きい。このため、例えば、二次空気供給通路16内の空気に圧力の脈動が生じる場合、チャンバー38は、その脈動を低減することができ、例えば、圧力の脈動の振幅を低減することができる。また、二次空気供給装置1がチャンバー38を備えていない場合と比較して、圧力の脈動の位相を変化させることができる。
【0041】
エアポンプ40は、エアクリーナ20よりも下流側の二次空気供給通路16に配置されている。エアポンプ40は、排ガス浄化部材36に空気を供給するために二次空気供給通路16内の空気を下流側に圧送する。エアポンプ40は、例えば、遠心ポンプであり、上流側の吸入部401と、下流側の吐出部402と、を備えている。エアポンプ40は、吸入部401から吸入した空気を吐出部402から吐出することにより空気を下流側に圧送する。エアポンプ40の吸入部401と吐出部402は、連通している。このため、エアポンプ40よりも上流側の二次空気供給通路16内の空気に圧力の脈動が生じると、エアポンプ40よりも下流側の二次空気供給通路16内の空気に圧力の脈動が生じる。
【0042】
制御弁42は、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48と一体的に作製されている。制御弁42は、電磁弁50の駆動により二次空気供給通路16を開閉する。制御弁42が開いている開状態では、制御弁42よりも上流側から下流側に空気が流れる。また、制御弁42が開状態である場合、排気通路14内の排ガスに圧力の脈動が生じると、その脈動が制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の空気に伝わる。制御弁42が閉じている閉状態では、二次空気供給通路16内の空気の流れが遮断されて制御弁42よりも下流側に空気が流れなくなる。また、制御弁42が閉状態にある場合、排気通路14内の排ガスに圧力の脈動が生じたとしても、その脈動が制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の空気に伝わらない。以下では、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16を、上流側二次空気供給通路16aと呼ぶことがあり、制御弁42よりも下流側の二次空気供給通路16を、下流側二次空気供給通路16bと呼ぶことがある。
【0043】
リード弁44は、逆止弁である。リード弁44は、二次空気供給通路16の上流側から下流側に空気が流れることを許容し、下流側から上流側に空気が流れることを禁止する。
【0044】
上流側圧力センサ46は、制御弁42の近傍に配置されている。上流側圧力センサ46は、エアポンプ40よりも下流側で制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内に配置されている。上流側圧力センサ46は、上流側二次空気供給通路16a内の空気の圧力を検出する。上流側圧力センサ46は、上流側二次空気供給通路16a内の空気に圧力の脈動が生じるとその脈動を検出する。例えば、制御弁42が閉状態にあり、かつエアポンプ40が停止している場合、吸気通路12内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、上流側二次空気供給通路16a内の空気に圧力の脈動が生じる。この場合、上流側圧力センサ46は、例えば、図2に示すパターン1の圧力の脈動を検出する。一方、制御弁42が開状態にあり、かつエアポンプ40が停止している場合、吸気通路12内の空気の圧力の脈動と、排気通路14内の空気の圧力の脈動の両方に起因して、上流側二次空気供給通路16a内の空気に圧力の脈動が生じる。この場合、上流側圧力センサ46は、例えば、図2に示すパターン3の圧力の脈動を検出する。パターン3の圧力の脈動の周波数は、パターン1の圧力の駆脈動の周波数と等しい。また、パターン3の圧力の脈動の振幅と位相は、パターン1の圧力の脈動の振幅と位相と異なる。なお、上流側圧力センサ46が検出する圧力の脈動の振幅と位相は、エンジン10の運転条件に応じて変化する。ここで、エンジン10の運転条件は、エンジン10の回転数と、エンジン10への吸入空気量と、スロットル弁32の開度と、エンジン10の負荷の少なくとも1つから構成される条件のことをいう。
【0045】
図1に示すように、下流側圧力センサ48は、制御弁42の近傍に配置されている。下流側圧力センサ48は、制御弁42よりも下流側でリード弁44よりも上流側の二次空気供給通路16内に配置されている。下流側圧力センサ48は、下流側二次空気供給通路16b内の空気の圧力を検出する。下流側圧力センサ48は、下流側二次空気供給通路16b内の空気に圧力の脈動が生じるとその脈動を検出する。例えば、制御弁42が閉状態にあり、かつエアポンプ40が停止している場合、排気通路14内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、下流側二次空気供給通路16b内の空気に圧力の脈動が生じる。この場合、下流側圧力センサ48は、例えば、図2に示すパターン2の圧力の脈動を検出する。パターン2の圧力の脈動の周波数は、パターン1、3の圧力の脈動の周波数と等しい。また、パターン2の圧力の脈動の振幅と位相は、パターン1、3の圧力の脈動の振幅と位相と異なる。なお、パターン1、2の圧力の脈動の振幅と位相が異なるように、下流側圧力センサ48と上流側圧力センサ46の位置が調整されている。一方、制御弁42が開状態にあり、かつエアポンプ40が停止している場合、吸気通路12内の空気の圧力の脈動と、排気通路14内の空気の圧力の脈動の両方に起因して、下流側二次空気供給通路16b内の空気に圧力の脈動が生じる。この場合、下流側圧力センサ48は、例えば、図2に示すパターン3の圧力の脈動を検出する。なお、下流側圧力センサ48が検出する圧力の脈動の振幅と位相は、エンジン10の運転条件に応じて変化する。
【0046】
次に、制御部52について説明する。制御部52は、CPUと、メモリ(ROMやRAM)と、を備えている。制御部52は、クランク角センサ11と、エアフローメータ30と、スロットル弁32と、燃料噴射装置33と、空燃比センサ34と、エアポンプ40と、上流側圧力センサ46と、下流側圧力センサ48と、電磁弁50に電気的に接続されている。制御部52は、メモリに記憶されているプログラムに基づいて様々な処理を実行する。制御部52が実行する処理については後述する。
【0047】
次に、二次空気供給装置1の動作について説明する。二次空気供給装置1は、例えば、車両の始動初期等、排ガス浄化部材36が低温であるときに動作する。二次空気供給装置1では、エンジン10が駆動することにより、エンジン10から排ガスが排出される。エンジン10は、吸気通路12を通じてエンジン10に吸入される空気と、燃料噴射装置33からエンジン10に噴射される燃料との混合気体が燃焼することにより駆動する。混合気体が燃焼することにより、排ガスが排出される。エンジン10から排出された排ガスは、排気通路14を流れる過程で、排ガス浄化部材36を通過して浄化される。浄化された排ガスは、外部に排出される。
【0048】
また、上記の二次空気供給装置1では、エアポンプ40が駆動すると、二次空気供給通路16内の空気が制御弁42側(下流側)に圧送される。制御弁42が開状態であるときに、二次空気供給通路16内の空気が排気通路14に供給される。これにより、排気通路14を流れる排ガスの空燃比(排ガス内の空気の比率)が大きくなる。即ち、排ガス浄化部材36に供給される排ガスにおける空燃比が大きくなる。排ガス中の空気とエンジン10で燃焼しなかった燃料成分が燃焼することにより、排ガス浄化部材36の温度が上昇する。これにより、排ガス浄化部材36による排ガスの浄化性能が高まる。
【0049】
(脈動解析処理)
次に、二次空気供給装置1で実行される処理について説明する。まず、脈動解析処理について説明する。脈動解析処理は、上流側圧力センサ46により検出される上流側二次空気供給通路16a内の空気の圧力の脈動と、下流側圧力センサ48により検出される下流側二次空気供給通路16b内の空気の圧力の脈動について、それらの脈動の振幅と位相を解析する処理である。以下では、上流側圧力センサ46により検出される上流側二次空気供給通路16a内の空気の圧力の脈動を、上流側圧力の脈動と呼び、下流側圧力センサ48により検出される下流側二次空気供給通路16b内の空気の圧力の脈動を、下流側圧力の脈動と呼ぶ。脈動解析処理は、例えば、二次空気供給装置1が搭載されている車両のエンジンスタートボタンが押されると開始される。また、脈動解析処理は、制御弁42の開閉状態によらず実行される。脈動解析処理は、上流側圧力の脈動を解析する処理と、下流側圧力の脈動を解析する処理の2種類の処理と、を含む。まず、上流側圧力の脈動を解析する処理について説明する。
【0050】
図3に示すように、脈動解析処理のS2では、制御部52は、カウント値をゼロにする。カウント値は、ゼロから所定値までの範囲の数値である。カウント値の範囲は、制御部52が後述するS4からS20を実行するサイクルの数により変化する。
【0051】
S4では、制御部52は、上流側圧力センサ46が検出した検出値を取得する。S6では、制御部52は、取得した検出値が最大圧力検出値よりも大きいか否かを判断する。最大圧力検出値は、制御部52が脈動解析処理を実行すると同時にリセットされる値である。制御部52が、脈動解析処理が実行されてから初めてS6を実行した場合には、最大圧力検出値が存在しないため、制御部52は、S6でYESと判断し、S8に進む。また、2回目以降に実行されたS6では、制御部52は、取得した検出値が最大圧力検出値よりも大きいと判断した場合(S6でYES)、S8に進む。一方、制御部52は、取得した検出値が最大圧力検出値以下であると判断した場合(S6でNO)、S12に進む。
【0052】
まず、S8について説明する。S8では、制御部52は、最大圧力検出値を取得した検出値に置き換える。このため、最大圧力検出値は、上流側圧力センサ46により検出された検出値の大きさに応じて、随時変化する。S10では、制御部52は、最大クランク角を現在のカウント値に置き換える。最大クランク角は、制御部52が脈動解析処理を実行すると同時にリセットされる値である。制御部52は、S10を実行した後、S18に進む。
【0053】
次に、S12について説明する。S12では、制御部52は、S4で取得した検出値が最小圧力検出値よりも小さいか否かを判断する。最小圧力検出値は、制御部52が脈動解析処理を実行すると同時にリセットされる値である。制御部52が、脈動解析処理が実行されてから初めてS12を実行した場合には、最小圧力検出値が存在しないため、制御部52は、S12でYESと判断し、S14に進む。また、2回目以降に実行されたS12では、制御部52は、取得した検出値が最小圧力検出値よりも小さいと判断した場合(S12でYES)、S14に進む。一方、制御部52は、取得した検出値が最小圧力検出値以上であると判断した場合(S12でNO)、S18に進む。
【0054】
S14では、制御部52は、最小圧力検出値を取得した検出値に置き換える。このため、最小圧力検出値は、上流側圧力センサ46により検出された検出値の大きさに応じて、随時変化する。S16では、制御部52は、最小クランク角を現在のカウント値に置き換える。最小クランク角は、制御部52が脈動解析処理を実行すると同時にリセットされる値である。制御部52は、S16を実行した後、S18に進む。
【0055】
S18では、制御部52は、クランク角センサ11から検出値を取得して、クランクシャフト10aのクランク角が180°を経過しているか否かを判断する。本実施例では、エンジン10は、4気筒型のエンジンであるため、クランクシャフト10aが180°回転すると、エンジン10の1気筒分の燃料と空気の吸入が完了する。制御部52は、クランク角が180°を経過していないと判断した場合(S18でNO)、S20に進む。一方、制御部52は、クランク角が180°を経過したと判断した場合(S18でYES)、S22に進む。
【0056】
まず、S20について説明する。S20では、制御部52は、カウント値を1だけ増加させる。その後、制御部52は、上述したS4からS18までの一連の処理を実行する。カウント値は、クランクシャフト10aの回転角に対応した値である。カウント値は、クランクシャフト10aがゼロから180°まで回転する間に制御部52が上流側圧力センサ46から検出値を取得する頻度に応じて変化する。例えば、クランクシャフト10aが1°回転する毎に制御部52が上流側圧力センサ46から検出値を取得する場合、カウント値は、ゼロから180の範囲となる。
【0057】
S22では、制御部52は、最大圧力検出値から最小圧力検出値を減算することにより、圧力の脈動の振幅を算出する。
【0058】
次に、下流側圧力の脈動を解析する処理ついて説明する。下流側圧力の脈動を解析する処理は、上述した上流側圧力の脈動を解析する処理と同じフローチャート(図3参照)で説明できる。以下では、上流側圧力の脈動を解析する処理と異なる点のみを説明する。下流側圧力の脈動を解析する処理では、S4で、制御部52は、上流側圧力センサ46が検出した検出値に替えて、下流側圧力センサ48が検出した検出値を取得する。また、制御部52は、下流側圧力センサ48から取得した検出値に基づいて、S8からS22を実行する。
【0059】
(異常判定処理)
次に、異常判定処理について説明する。異常判定処理は、脈動解析処理による上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動の解析結果に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断する処理である。異常判定処理は、脈動解析処理が実行された後に実行される。
【0060】
図4に示すように、異常判定処理のS32では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているか否かを判断する。制御弁42を閉状態に制御する指令は、排ガス浄化部材36に供給するための空気を二次空気供給通路16から排気通路14に供給することが停止される場合に発せられる。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発していない場合、即ち、制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合(S32でNO)、異常判定処理を終了する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合(S32でYES)、S34に進む。
【0061】
S34では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合に実行された脈動解析処理の解析結果に基づいて、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅との差が、振幅判定値以下であるか否かを判断する。
【0062】
ここで、上述したように、制御弁42が開状態にある場合、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48はともに、例えば、図2に示すパターン3の圧力の脈動を検出する。このため、上流側圧力の脈動の振幅A3は、下流側圧力の脈動の振幅A3と等しくなる。この結果、制御弁42が開状態にある場合、脈動の振幅の差はゼロに等しく、振幅判定値よりも小さくなる。一方、制御弁42が閉状態にある場合、上流側圧力センサ46は、例えば、図2に示すパターン1の圧力の脈動を検出し、下流側圧力センサ48は、例えば、図2に示すパターン2の圧力の脈動を検出する。このため、上流側圧力の脈動の振幅A1は、下流側圧力の脈動の振幅A2と異なる。この結果、制御弁42が閉状態にある場合、脈動の振幅の差は、ゼロよりも大きくなる。なお、振幅判定値は、ゼロよりも大きく、かつ振幅A1と振幅A2の差よりも小さく設定される値である。また、振幅判定値は、振幅判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、振幅判定値を変更可能である。振幅判定値は、エンジン10の運転条件に応じて変化してもよい。例えば、エンジン10の負荷が大きくなるにつれて、振幅判定値が大きくなってもよい。振幅判定値に関するデータマップは、予め実験により特定されており、メモリに記憶されている。
【0063】
S34では、制御部52は、脈動の振幅の差が振幅判定値以下であると判断した場合(S34でYES)、S36で、制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断する。具体的には、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているにも関わらず、制御弁42が開状態にあると判断する。一方、制御部52は、脈動の振幅の差が振幅判定値よりも大きいと判断した場合(S34でNO)、S38で、制御弁42の開閉状態が正常であると判断する。
【0064】
(効果)
本明細書に開示する二次空気供給装置1は、エンジン10と、エンジン10に吸入される空気が流れる吸気通路12と、エンジン10から排出される排ガスが流れる排気通路14と、排気通路14に配置されており、排気通路14を流れる排ガスを浄化する触媒を含む排ガス浄化部材36と、吸気通路12に連通しており、排ガス浄化部材36よりも上流側の排気通路14に接続されている二次空気供給通路16と、二次空気供給通路16に配置されており、二次空気供給通路16を開閉する制御弁42と、制御弁42の開状態と閉状態とを切り替える制御部52と、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16に配置されており、排気通路14に向かう方向に空気を圧送するエアポンプ40と、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の上流側圧力を検出する上流側圧力センサ46と、制御弁42よりも下流側の二次空気供給通路16内の下流側圧力を検出する下流側圧力センサ48と、を備えている。
【0065】
上記の構成によれば、二次空気供給通路16が吸気通路12に連通しているため、吸気通路12内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に上流側圧力の脈動が生じることがある。また、二次空気供給通路16が排気通路14に接続されているため、排気通路14内の空気に圧力の脈動が生じると、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に下流側圧力の脈動が生じることがある。上記の構成によれば、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の上流側圧力の脈動が上流側圧力センサ46により検出され、制御弁42よりも下流側の二次空気供給通路16内の下流側圧力の脈動が下流側圧力センサ48により検出される。このため、二次空気供給通路16内の圧力の脈動を正確に検出することができる。
【0066】
また、制御部52は、上流側圧力センサ46により検出される上流側圧力の脈動と、下流側圧力センサ48により検出される下流側圧力の脈動と、に基づいて、制御弁42の開閉状態を判断する。
【0067】
上記の構成によれば、制御弁42が閉状態である場合、吸気通路12内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の空気に上流側圧力の脈動が生じ、また、排気通路14内の空気の圧力の脈動にのみ起因して、制御弁42よりも下流側の二次空気供給通路16内の空気に下流側圧力の脈動が生じる。一方、制御弁42が開状態である場合、吸気通路12内の空気の圧力の脈動と排気通路14内の空気の圧力の脈動の両方に起因して、制御弁42よりも上流側の二次空気供給通路16内の空気に上流側圧力の脈動が生じるとともに、制御弁42よりも下流側の二次空気供給通路16内の空気にも下流側圧力の脈動が生じる。上記の構成によれば、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動とが検出されることにより、制御弁42が閉状態と開状態のいずれの状態にあるか否かを容易に判断することができる。
【0068】
また、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令と、上流側圧力の脈動と、下流側圧力の脈動と、に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断する。
【0069】
例えば、制御弁42と二次空気供給通路16との間に異物が挟まると、制御部52が制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合であっても、制御弁42が閉状態とならずに開状態となることがある。上記の構成によれば、制御部52は、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動とに基づいて制御弁42の実際の開閉状態を判断することができる。このため、制御部52が、制御弁42の実際の開閉状態と、制御弁42を閉状態に制御する指令とを比較することにより、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0070】
また、制御部52は、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅と、の差に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断する。
【0071】
上記の構成によれば、上流側圧力の脈動の振幅と下流側圧力の脈動の振幅との差を比較する簡便な手法により、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断することができる。
【0072】
また、制御部52は、上流側圧力の脈動の振幅と下流側圧力の脈動の振幅との差、および振幅判定値に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能である。制御部52は、エンジン10の運転条件に応じて、振幅判定値を変更可能である。
【0073】
吸気通路12に生じる圧力の脈動の振幅と、排気通路14に生じる圧力の脈動の振幅は、エンジン10の運転条件に応じて変化することがある。このため、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅も、エンジン10の運転条件に応じて変化することがある。上記の構成によれば、制御部52がエンジン10の運転条件に応じて振幅判定値を変化させるため、エンジン10の運転条件によらず、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0074】
また、二次空気供給装置1は、上流側圧力センサ46よりも上流側の二次空気供給通路16に配置されているチャンバー38をさらに備えている。チャンバー38の通路断面積は、二次空気供給通路16の通路断面積よりも大きい。
【0075】
上記の構成によれば、チャンバー38を用いることにより、吸気通路12内の空気に圧力の脈動が生じる場合に、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に生じる上流側圧力の脈動の振幅を低減することができる。これにより、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【0076】
また、制御弁42と上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48とは、一体的に作製されている。
【0077】
上記の構成によれば、制御弁42と上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48とが別体で作製されている場合と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0078】
(第2実施例)
第2実施例に係る二次空気供給装置1について図面を参照して説明する。第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第2実施例の異常判定処理は、第1実施例の異常判定処理と異なる。第2実施例の異常判定処理は、脈動解析処理により解析された脈動の位相に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断する処理である。
【0079】
図5に示すように、異常判定処理のS132では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているか否かを判断する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発していない場合、即ち、制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合(S132でNO)、異常判定処理を終了する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合(S132でYES)、S134に進む。
【0080】
S134では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合に実行された脈動解析処理の解析結果に基づいて、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相との差が、位相判定値以下であるか否かを判断する。具体的には、制御部52は、上流側圧力の脈動の最大圧力検出値に対応する最大クランク角と下流側圧力の脈動の最大圧力検出値に対応する最大クランク角との差(または、上流側圧力の脈動の最小圧力検出値に対応する最小クランク角と下流側圧力の脈動の最小圧力検出値に対応する最小クランク角との差)が位相判定値以下であるか判断する。なお、最大クランク角は、圧力の脈動の最大圧力検出値を示すときの位相を、エンジン10のクランクシャフト10aのクランク角で表した値である。また、最小クランク角は、圧力の脈動の最小圧力検出値を示すときの位相を、クランクシャフト10aのクランク角で表した値である。以下では、圧力の脈動の最大圧力検出値に対応する最大クランク角を、単に、圧力の脈動の最大クランク角と呼び、圧力の脈動の最小圧力検出値に対応する最小クランク角を、単に、圧力の脈動の最小クランク角と呼ぶことがある。
【0081】
ここで、第1実施例で説明したように、制御弁42が開状態にある場合、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48はともに、例えば、図2に示すパターン3の圧力の脈動を検出する。このため、上流側圧力の脈動の最大クランク角T31(または最小クランク角T32)は、下流側圧力の脈動の最大クランク角T31(または最小クランク角T32)と等しくなる。この結果、制御弁42が開状態にある場合、最大クランク角の差(または最小クランク角の差)は、ゼロに等しく、位相判定値よりも小さくなる。一方、制御弁42が閉状態にある場合、上流側圧力センサ46は、例えば、図2に示すパターン1の圧力の脈動を検出し、下流側圧力センサ48は、例えば、図2に示すパターン2の圧力の脈動を検出する。このため、上流側圧力の脈動の最大クランク角T11(または最小クランク角T12)は、下流側圧力の脈動の最大クランク角T21(または最小クランク角T22)と異なる。この結果、制御弁42が閉状態にある場合、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)は、ゼロよりも大きくなる。なお、位相判定値は、ゼロよりも大きく、かつ最大クランク角T11と最大クランク角T21との差(または、最小クランク角T12と最小クランク角T22)との差よりも小さく設定される値である。また、位相判定値は、位相判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、位相判定値を変更可能である。位相判定値は、エンジン10の運転条件に応じて変化してもよい。例えば、クランクシャフト10aの回転数が大きくなるにつれて、位相判定値が大きくなってもよい。位相判定値に関するデータマップは、予め実験により特定されており、メモリに記憶されている。
【0082】
S134では、制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が位相判定値以下であると判断した場合(S134でYES)、S136で制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断する。具体的には、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているにも関わらず、制御弁42が開状態にあると判断する。一方、制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が位相判定値よりも大きいと判断した場合(S134でNO)、S138で、制御弁42の開閉状態が正常であると判断する。
【0083】
(効果)
制御部52は、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相と、の差に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断する。
【0084】
上記の構成によれば、上流側圧力の脈動の位相と下流側圧力の脈動の位相との差を比較する簡便な手法により、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断することができる。
【0085】
また、制御部52は、上流側圧力の脈動の位相と下流側圧力の脈動の位相との差、および位相判定値に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断可能である。制御部52は、エンジン10の運転条件に応じて、位相判定値を変更可能である。
【0086】
吸気通路12に生じる圧力の脈動の位相と、排気通路14に生じる圧力の脈動の位相は、エンジン10の運転条件に応じて変化することがある。このため、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相も、エンジン10の運転条件に応じて変化することがある。上記の構成によれば、制御部52がエンジン10の運転条件に応じて位相判定値を変化させるため、エンジン10の運転条件によらず、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0087】
また、制御弁42が閉状態にある場合に、上流側圧力の脈動の位相(最大クランク角または最小クランク角)と、下流側圧力の脈動の位相(最大クランク角または最小クランク角)と、が異なっている。
【0088】
例えば、制御弁42が閉状態にある場合に、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相が等しいと、制御部52は、制御弁42が開状態であると誤って判断してしまい、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができない。上記の構成によれば、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0089】
また、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48は、制御弁42の近傍に配置されている。
【0090】
上記の構成によれば、制御弁42近傍の上流側圧力の脈動が上流側圧力センサ46により検出され、制御弁42近傍の下流側圧力の脈動が下流側圧力センサ48により検出される。このため、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48との間の距離が圧力の脈動に与える影響を考慮することなく、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動、例えば、脈動の位相を比較することができる。
【0091】
また、二次空気供給装置1は、上流側圧力センサ46よりも上流側の二次空気供給通路16に配置されているチャンバー38をさらに備えている。チャンバー38の通路断面積は、二次空気供給通路16の通路断面積よりも大きい。
【0092】
上記の構成によれば、チャンバー38を用いることにより、吸気通路12内の空気に圧力の脈動が生じる場合に、その脈動に起因して、二次空気供給通路16内の空気に生じる上流側圧力の位相を変化させることができる。これにより、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【0093】
(第3実施例)
第3実施例に係る二次空気供給装置1について図面を参照して説明する。第3実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第3実施例の異常判定処理は、第1実施例の異常判定処理と異なる。
【0094】
図6に示すように、異常判定処理のS232では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているか否かを判断する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発していない場合、即ち、制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合(S232でNO)、異常判定処理を終了する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合(S232でYES)、S234に進む。
【0095】
S234では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合に実行された脈動解析処理の解析結果に基づいて、上流側圧力の脈動の振幅と、下流側圧力の脈動の振幅との差が、第1振幅判定値以下であるか否かを判断する。第1振幅判定値は、ゼロよりも大きく、かつ第1実施例の振幅判定値よりも小さく設定される値である。また、第1振幅判定値は、第1振幅判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、第1振幅判定値を変更可能である。例えば、エンジン10の負荷が大きくなるにつれて、第1振幅判定値が大きくなる。制御部52は、脈動の振幅の差が第1振幅判定値以下であると判断した場合(S234でYES)、S236で、制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断する。具体的には、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているにも関わらず、制御弁42が開状態にあると判断する。一方、制御部52は、脈動の振幅の差が第1振幅判定値よりも大きいと判断した場合(S234でNO)、S238に進む。
【0096】
S236では、脈動の振幅の差が、第2振幅判定値以下であるか否かを判断する。第2振幅判定値は、第1実施例の振幅判定値と第1振幅判定値よりも大きく、かつ振幅A1と振幅A2の差よりも小さく設定される値である。また、第2振幅判定値は、第2振幅判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、第2振幅判定値を変更可能である。例えば、エンジン10の負荷が大きくなるにつれて、第2振幅判定値が大きくなる。制御部52は、脈動の振幅の差が第2振幅判定値以下であると判断した場合(S238でYES)、S240で、制御弁42の開閉状態に関して、現在の判定を維持する。具体的には、1回前に実行された異常判定処理において、制御部52は、制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断した場合には、その異常判定を維持し、制御弁42の開閉状態が正常であると判断した場合には、その正常判定を維持する。これにより、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48による検出値の検出誤差等により、制御弁42の開閉状態が異常であるにも関わらず制御弁42の開閉状態が正常であると判定され、または、制御弁42の開閉状態が正常であるにも関わらず制御弁42の開閉状態が異常であると判定されることを抑制することができる。一方、制御部52は、一方、制御部52は、脈動の振幅の差が第2振幅判定値よりも大きいと判断した場合(S238でNO)、S242で、制御弁42の開閉状態が正常であると判断する。
【0097】
(第4実施例)
第4実施例に係る二次空気供給装置1について図面を参照して説明する。第4実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第4実施例の異常判定処理は、第1実施例の異常判定処理と異なる。
【0098】
図7に示すように、異常判定処理のS332では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているか否かを判断する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発していない場合、即ち、制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合(S332でNO)、異常判定処理を終了する。制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合(S332でYES)、S334に進む。
【0099】
S334では、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発している場合に実行された脈動解析処理の解析結果に基づいて、上流側圧力の脈動の位相と、下流側圧力の脈動の位相との差が、第1位相判定値以下であるか否かを判断する。具体的には、制御部52は、上流側圧力の脈動の最大クランク角と下流側圧力の脈動の最大クランク角との差(または、上流側圧力の脈動の最小クランク角と下流側圧力の脈動の最小クランク角との差)が第1位相判定値以下であるか否かを判断する。第1位相判定値は、ゼロよりも大きく、かつ第2実施例の位相判定値よりも小さく設定される値である。また、第1位相判定値は、第1位相判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、第1位相判定値を変更可能である。例えば、クランクシャフト10aの回転数が大きくなるにつれて、第1位相判定値が大きくなる。制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が第1位相判定値以下であると判断した場合(S334でYES)、S336で制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断する。具体的には、制御部52は、制御弁42を閉状態に制御する指令を発しているにも関わらず、制御弁42が開状態にあると判断する。一方、制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が第1位相判定値よりも大きいと判断した場合(S334でNO)、S338に進む。
【0100】
S338では、制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が第2位相判定値以下であるか否かを判断する。第2位相判定値は、第2実施例の位相判定値と第1位相判定値よりも大きく、かつ最大クランク角T11と最大クランク角T21との差(または、最小クランク角T12と最小クランク角T22との差)よりも小さく設定される値である。また、第2位相判定値は、第2位相判定値に関するデータマップとエンジン10の運転条件に基づいて制御部52により決定される値である。制御部52は、第2位相判定値を変更可能である。例えば、クランクシャフト10aの回転数が大きくなるにつれて、第2位相判定値が大きくなる。制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が第2位相判定値以下であると判断した場合(S338でYES)、S340で、制御弁42の開閉状態に関して、現在の判定を維持する。具体的には、1回前に実行された異常判定処理において、制御部52は、制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断した場合には、その異常判定を維持し、制御弁42の開閉状態が正常であると判断した場合には、その正常判定を維持する。これにより、上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48による検出値の検出誤差等により、制御弁42の開閉状態が異常であるにも関わらず制御弁42の開閉状態が正常であると判定され、または、制御弁42の開閉状態が正常であるにも関わらず制御弁42の開閉状態が異常であると判定されることを抑制することができる。一方、制御部52は、脈動の最大クランク角の差(または最小クランク角の差)が第2位相判定値よりも大きいと判断した場合(S338でNO)、S342で、制御弁42の開閉状態が正常であると判断する。
【0101】
以上、実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上記の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
(変形例)
(1)上記の実施例では、異常判定処理において、制御部52は、脈動の振幅の差と、脈動の位相の差の両方に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断してもよい。
【0103】
(2)上記の実施例では、異常判定処理において、制御部52は、制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合に実行された脈動解析処理の解析結果に基づいて、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを判断してもよい。この変形例では、制御部52が制御弁42の開閉状態に異常が生じていると判断した場合、制御弁42を開状態に制御する指令を発しているにも関わらず、制御弁42が閉状態となっていることとなる。
【0104】
上記の構成では、例えば、制御弁42が固着していると、制御部52が制御弁42を開状態に制御する指令を発している場合であっても、制御弁42が開状態とならず閉状態に維持されることがある。上記の構成によれば、制御部52は、上流側圧力の脈動と下流側圧力の脈動とに基づいて制御弁42の実際の開閉状態と判断することができる。このため、制御部52が、制御弁42の実際の開閉状態と、制御弁42を開状態に制御する指令とを比較することにより、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0105】
(3)上記の実施例では、二次空気供給装置1は、チャンバー38を備えていなくてもよい。二次空気供給装置1がチャンバー38を備えていない場合、上流側圧力センサ46により検出される上流側圧力の位相と下流側圧力センサ48により検出される下流側圧力の位相が異なるように、上流側圧力センサ46の位置と下流側圧力センサ48の位置が調整されてもよく、二次空気供給通路16の通路長や通路断面積が調整されてもよい。これにより、制御弁42の開閉状態に異常が生じているか否かを正確に判断することができる。
【0106】
(4)上記の実施例では、制御弁42と上流側圧力センサ46と下流側圧力センサ48とは、一体的に作製されていなくてもよい。
【0107】
(5)上記の実施例では、下流側圧力センサ48は、リード弁44よりも下流側に配置されていてもよい。また、下流側圧力センサ48は、排ガス浄化部材36よりも上流側の排気通路14に配置されていてもよい。
【0108】
(6)上記の実施例では、制御部52は、エンジン10が駆動している間、即ち、クランクシャフト10aが回転している間、常に脈動解析処理と異常判定処理を実行してもよい。また、制御部52は、車両の始動初期等、排ガス浄化部材36が低温であるときにのみ、脈動解析処理と異常判定処理を実行してもよい。
【0109】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0110】
1 :二次空気供給装置
10 :エンジン
10a :クランクシャフト
11 :クランク角センサ
12 :吸気通路
14 :排気通路
16 :二次空気供給通路
20 :エアクリーナ
32 :スロットル弁
33 :燃料噴射装置
36 :排ガス浄化部材
38 :チャンバー
40 :エアポンプ
42 :制御弁
44 :リード弁
46 :上流側圧力センサ
48 :下流側圧力センサ
52 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7