(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119776
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20220809BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220809BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20220809BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220809BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G09F9/30 310
G09F9/30 308Z
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H01L27/32
H05B33/02
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075782
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2017209446の分割
【原出願日】2017-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畠 弘志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配線間のショートを防止すること。
【解決手段】半導体装置は、複数の配線74の下でフレキシブル基板10に積層する第1無機絶縁膜28と、共通の最低面78Lを含むとともに相互に高さが異なって第2方向D2に隣り合う複数の上面78と、最上面78Uを除く複数の上面78から立ち上がる蹴上面80と、をそれぞれ含み第1方向に並ぶ複数の階段部STを第2領域に含む。複数の配線74の各々の下地面は、複数の階段部のうち対応する一つと、第2領域にて接する。第1無機絶縁膜は、複数の階段部の各々において、少なくとも、最低面を除く複数の上面及び蹴上面を構成する。半導体装置は、第2領域において、互いに隣り合う2つの階段部の間に窪み部をさらに有する。最低面は、窪み部の部分において、複数の階段部の最上面を除く複数の上面より第1領域側に延在して、窪み部の底面を構成する。隣同士の配線は、窪み部により分離されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の幅及び前記第1方向に直交する第2方向の長さを有し、前記第2方向に隣り合うように、第1領域及び第2領域を有するフレキシブル基板と、
前記第1領域で前記フレキシブル基板に積層された回路層と、
前記第1領域から前記第2方向に延び、相互に電気的に接続しないように前記第1方向に並び、前記第2領域で前記フレキシブル基板に積層する複数の配線と、
前記複数の配線の下で前記フレキシブル基板に積層する第1無機絶縁膜と、
を含む半導体装置において、
共通の最低面を含むとともに相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の上面と、最上面を除く前記複数の上面から立ち上がる蹴上面と、をそれぞれ含み前記第1方向に並ぶ複数の階段部を前記第2領域にさらに含み、
前記複数の配線のそれぞれの下地面は、前記複数の階段部のうち対応する一つと、前記第2領域にて接し、
前記第1無機絶縁膜は、前記複数の階段部のそれぞれにおいて、少なくとも、最低面を除く前記複数の上面及び前記蹴上面を構成し、
前記半導体装置は、前記第2領域において、互いに隣り合う2つの前記階段部の間に窪み部をさらに有し、
前記最低面は、前記窪み部の部分において、前記複数の階段部の前記最上面を除く前記複数の上面より前記第1領域側に延在して、前記窪み部の底面を構成し、
隣同士の前記配線は、前記窪み部により分離されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体装置において、
前記複数の配線は、隣同士の前記配線から平面視で相互に対向する方向に突出する一対の凸部を有し、
前記一対の凸部は、間隔があいて電気的に絶縁されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載された半導体装置において、
前記一対の凸部は、前記最上面を除く前記複数の上面のそれぞれと前記蹴上面とで構成される入角部に沿って前記第1方向に突出することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記複数の上面の前記最低面は、前記フレキシブル基板の上面の一部であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記複数の上面のいずれもが、前記第1無機絶縁膜の上面の一部であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記複数の配線の上で前記フレキシブル基板に積層する第2無機絶縁膜をさらに有し、
前記第2無機絶縁膜は、少なくとも前記窪み部を避けて設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載された半導体装置において、
前記第2無機絶縁膜は、前記複数の上面の前記最低面では、前記複数の配線のそれぞれの少なくとも一部との重複を避けるように設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載された半導体装置において、
前記第2無機絶縁膜は、前記複数の上面の前記最低面では、前記第1方向の全幅にわたる領域を避けるように設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記第2無機絶縁膜は、前記最低面を除く前記複数の上面では、前記複数の配線の全体と重複するように設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記第2無機絶縁膜の上で前記フレキシブル基板に積層する有機絶縁膜をさらに有し、
前記有機絶縁膜は、前記窪み部において前記フレキシブル基板の上面に接触することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記第1無機絶縁膜は、複数の絶縁層からなり、
前記階段部は、複数段になるように構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載された半導体装置において、
前記フレキシブル基板は、前記第1方向に延びる軸AXの周りに屈曲していることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
第1方向の幅及び前記第1方向に直交する第2方向の長さを有し、前記第2方向に隣り合うように、第1領域及び第2領域を有するフレキシブル基板と、
前記第1領域で前記フレキシブル基板に積層された回路層と、
前記第1領域から前記第2方向に延び、相互に電気的に接続しないように前記第1方向に並び、前記第2領域で前記フレキシブル基板に積層する複数の配線と、
前記複数の配線の下で前記フレキシブル基板に積層する第1無機絶縁膜と、
を含む半導体装置において、
共通の最低面を含むとともに相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の上面と、最上面を除く前記複数の上面から立ち上がる蹴上面と、をそれぞれ含み前記第1方向に並ぶ複数の階段部を前記第2領域にさらに含み、
前記複数の配線のそれぞれの下地面は、前記複数の階段部のうち対応する一つと、前記第2領域にて接し、
前記第1無機絶縁膜は、前記複数の階段部のそれぞれにおいて、少なくとも、最低面を除く前記複数の上面及び前記蹴上面を構成し、
前記半導体装置は、それぞれが前記第2領域の前記階段部よりも低く相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の他の上面と、前記複数の他の上面から立ち上がる蹴上面とを含む第2階段部を、前記第2領域において、互いに隣り合う2つの前記階段部の間に持ち、
前記第2階段部により隣り合う前記複数の配線は分離されている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、可撓性を有するフレキシブルディスプレイが開発されている。例えば、可撓性を有する樹脂基板上に回路層及び有機エレクトロルミネッセンス層が形成された表示装置が知られている(特許文献1)。可撓性を有する樹脂基板は、樹脂層をガラス基板の上に形成し、硬化させ、ガラス基板から剥離することで製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-227369号公報
【特許文献2】特開2001-272685号公報
【特許文献3】特開平11-52417号公報
【特許文献4】特開平11-24101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂基板には、絶縁層及び配線層が積層されており、屈曲させる領域から絶縁層を除去することで、フレキシブルディスプレイを曲がりやすくしている。絶縁層は、一部が除去されることで段差が形成される。そのため、絶縁層の上に配線を形成するときに行われる導電膜のエッチングで、隣同士の配線の間に導電膜が残りやすく、ショートの原因になる。
【0005】
特許文献2には、配線の下に反射板を配置することで、フォトリソグラフィ工程で段差部からレジスト残渣を無くすことが開示されているが、レジスト残渣以外の原因で隣同士の配線の間に導電膜が残った場合の対策が開示されていない。
【0006】
特許文献3には、層間絶縁膜に開口を形成することが開示されているが、下地面の段差部を下段から上段にわたって配線が通る構造に対応していない。
【0007】
特許文献4には、厚い層間絶縁膜に凸部を形成することで、その上に形成されるフォトレジストを露光及び洗浄したときのレジスト残渣を無くすことが開示されているが、レジスト残渣以外の原因で隣同士の配線の間に導電膜が残った場合の対策が開示されていない。
【0008】
本発明は、配線間のショートを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、第1方向の幅及び前記第1方向に直交する第2方向の長さを有し、前記第2方向に隣り合うように、第1領域及び第2領域を有するフレキシブル基板と、前記第1領域で前記フレキシブル基板に積層された回路層と、前記第1領域から前記第2方向に延び、相互に電気的に接続しないように前記第1方向に並び、前記第2領域で前記フレキシブル基板に積層する複数の配線と、前記複数の配線の下で前記フレキシブル基板に積層する第1無機絶縁膜と、を含み、共通の最低面を含むとともに相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の上面と、最上面を除く前記複数の上面から立ち上がる蹴上面と、をそれぞれ含み前記第1方向に並ぶ複数の階段部を前記第2領域にさらに含み、前記複数の配線のそれぞれの下地面は、前記複数の階段部のうち対応する一つと、前記第2領域にて接し、前記第1無機絶縁膜は、前記複数の階段部のそれぞれにおいて、少なくとも、最低面を除く前記複数の上面及び前記蹴上面を構成し、前記半導体装置は、前記第2領域において、互いに隣り合う2つの前記階段部の間に窪み部をさらに有し、前記最低面は、前記窪み部の部分において、前記複数の階段部の前記最上面を除く前記複数の上面より前記第1領域側に延在して、前記窪み部の底面を構成し、隣同士の前記配線は、前記窪み部により分離されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数の配線を形成するときに階段部に導電膜が残ったとしても、隣同士の配線の導通を切断することができ、配線間のショートを防止することができる。
【0011】
本発明に係る半導体装置は、第1方向の幅及び前記第1方向に直交する第2方向の長さを有し、前記第2方向に隣り合うように、第1領域及び第2領域を有するフレキシブル基板と、前記第1領域で前記フレキシブル基板に積層された回路層と、前記第1領域から前記第2方向に延び、相互に電気的に接続しないように前記第1方向に並び、前記第2領域で前記フレキシブル基板に積層する複数の配線と、前記複数の配線の下で前記フレキシブル基板に積層する第1無機絶縁膜と、を含み、共通の最低面を含むとともに相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の上面と、最上面を除く前記複数の上面から立ち上がる蹴上面と、をそれぞれ含み前記第1方向に並ぶ複数の階段部を前記第2領域にさらに含み、前記複数の配線のそれぞれの下地面は、前記複数の階段部のうち対応する一つと、前記第2領域にて接し、前記第1無機絶縁膜は、前記複数の階段部のそれぞれにおいて、少なくとも、最低面を除く前記複数の上面及び前記蹴上面を構成し、前記半導体装置は、それぞれが前記第2領域の前記階段部よりも低く相互に高さが異なって前記第2方向に隣り合う複数の他の上面と、前記複数の他の上面から立ち上がる蹴上面とを含む第2階段部を、前記第2領域において、互いに隣り合う2つの前記階段部の間に持ち、前記第2階段部により隣り合う前記複数の配線は分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る表示装置の平面概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る表示装置の側面概略図である。
【
図3】
図1に示す表示装置のIII-III線断面の拡大図である。
【
図7】本発明を適用した実施形態の表示装置の屈曲状態を示す図である。
【
図8】本発明を適用した実施形態の表示装置の使用形態を示す図である。
【
図11】
図9に示す構造のXI-XI線断面図である。
【
図12】
図9に示す構造のXII-XII線断面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0015】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の平面概略図である。
図2は、本発明の実施形態に係る表示装置の側面概略図である。表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。表示装置は、例えば、赤、緑及び青からなる複数色の単位画素(サブピクセル)を組み合わせて、フルカラーの画素(ピクセル)を形成し、表示領域DAにフルカラーの画像を表示するようになっている。表示装置には、フレキシブルプリント基板FPが接続されている。フレキシブルプリント基板FPには、画像を表示するための素子を駆動するための集積回路チップICが搭載されている。
【0017】
図3は、
図1に示す表示装置のIII-III線断面の拡大図である。表示装置は、フレキシブル基板10を有する。フレキシブル基板10は、
図1に示す第1方向D1の幅及び第1方向D1に直交する第2方向D2の長さを有する。フレキシブル基板10は、表示領域DAを含む第1領域A1を有する。第1領域A1には、画像を表示するための表示回路層12が積層されている。フレキシブル基板10は、第2方向D2に第1領域A1に隣り合う第2領域A2を有する。
【0018】
フレキシブル基板10には、不純物に対するバリアとなるように、無機絶縁材料からなるアンダーコート層14が形成され、その上に半導体層16が形成されている。半導体層16にソース電極18及びドレイン電極20が電気的に接続し、半導体層16を覆って、無機絶縁材料からなるゲート絶縁膜22が形成されている。ゲート絶縁膜22の上にはゲート電極24が形成され、ゲート電極24を覆って、無機絶縁材料からなる層間絶縁膜26が形成されている。ソース電極18及びドレイン電極20は、ゲート絶縁膜22及び層間絶縁膜26を貫通している。半導体層16、ソース電極18、ドレイン電極20及びゲート電極24によって薄膜トランジスタTFTの少なくとも一部が構成される。
【0019】
第1領域A1に配置されるアンダーコート層14、ゲート絶縁膜22及び層間絶縁膜26は、第2領域A2にも至る。第2領域A2では、アンダーコート層14、ゲート絶縁膜22及び層間絶縁膜26が積層して、必要に応じてその他の無機絶縁膜を加えて、全体的に無機絶縁材料からなる第1無機絶縁膜28が構成される。第1無機絶縁膜28は、複数の絶縁層からなる。
【0020】
第1領域A1では、層間絶縁膜26の上には、薄膜トランジスタTFTを覆うように、平坦化層30が設けられている。平坦化層30は、有機絶縁材料からなる。平坦化層30は、表示回路層12が積層される第1領域A1に設けられるが、第2領域A2には設けられないようになっている。平坦化層30の上には、画像信号を保持するための容量を構成する一対の電極の間に介在する第2無機絶縁膜32が積層している。第2無機絶縁膜32は、平坦化層30を超えて、その下の層間絶縁膜26に接触して重なる。つまり、透湿性の高い平坦化層30は、透湿性の低い第2無機絶縁膜32及び層間絶縁膜26に挟まれることで、水分から遮断されている。
【0021】
第2無機絶縁膜32の上には、複数の単位画素それぞれに対応するように構成された複数の画素電極34(例えば陽極)が設けられている。画素電極34は、上述した容量を構成するための一対の電極の一方である。平坦化層30は、第2無機絶縁膜32において少なくとも画素電極34が設けられる面が平坦になるように形成される。画素電極34は、第2無機絶縁膜32及び平坦化層30を貫通して、半導体層16上のソース電極18及びドレイン電極20の一方に電気的に接続している。
【0022】
第2無機絶縁膜32及び画素電極34上に、有機絶縁材料からなるバンク層36が形成されている。バンク層36は、画素電極34の周縁部に載り、画素電極34の一部(例えば中央部)を開口させるように形成されている。バンク層36によって、画素電極34の一部を囲むバンクが形成される。画素電極34は、発光素子38の一部である。発光素子38は、複数の画素電極34に対向する対向電極40(例えば陰極)と発光層42をさらに含む。
【0023】
発光層42は、画素電極34ごとに別々に(分離して)設けられ、バンク層36にも載るようになっている。この場合は各画素に対応して青、赤又は緑で発光層42が発光するようになる。各画素に対応する色はこれに限られず、例えば、黄又は白等でもよい。発光層42は、例えば、蒸着により形成される。あるいは、発光層42は、表示領域DAを覆う全面に、複数の画素電極34に亘るように形成してもよい。つまり、発光層42をバンク層36上で連続するように形成してもよい。この場合、発光層42は溶媒分散による塗布により形成する。発光層42を複数の画素電極34に亘るように形成する場合は、全サブピクセルにおいて白色で発光し、図示しないカラーフィルタを通して所望の色波長部分を取り出す構成になる。
【0024】
画素電極34と発光層42との間に、図示しない正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方が介在する。正孔注入層又は正孔輸送層は、1つの画素電極34ごとに分離して設けてもよいが、
図1に示す表示領域DAの全体にわたって連続してもよい。正孔注入層は、画素電極34及びバンク層36に接触する。
【0025】
対向電極40と発光層42との間に、図示しない電子注入層及び電子輸送層の少なくとも一方が介在する。電子注入層又は電子輸送層は、1つの画素電極34ごとに分離して設けてもよいが、
図1に示す表示領域DAの全体にわたって連続してもよい。電子注入層は、対向電極40に接触する。
【0026】
発光層42は、画素電極34及び対向電極40に挟まれ、両者間を流れる電流によって輝度が制御されて発光する。対向電極40は、金属薄膜などからなり光透過性を有し、発光層42で生じた光を透過させて画像を表示する。画素電極34は、発光層42で生じた光を対向電極40の方向に反射する反射膜を含み、複数層の最下層が反射膜であり、それよりも上の層が透明導電膜であってもよい。
【0027】
発光素子38は、封止層44によって封止されて水分から遮断される。封止層44は、窒化ケイ素などの無機材料からなる一対の無機膜46a,46bが有機膜48を挟む構造になっている。一対の無機膜46a,46bの少なくとも一方は、バンク層36を超えるように設けられて、その下の第2無機絶縁膜32に接触して重なる。つまり、透湿性の高いバンク層36は、透湿性の低い無機膜46a,46bの少なくとも一方及び第2無機絶縁膜32に挟まれることで、水分から遮断される。無機膜46a、46bは平坦化層30の端部までを覆って水分や酸素を遮断するようになっている。また、有機層50は、無機膜46a、46bをエッチングするときに、マスクとして使用されるので、無機膜46a、46bと先端がそろうようになっている。以上説明したように、画像を表示するための素子を表示回路層12は含む。表示回路層12には、有機層50を介して、タッチセンシングを行うためにタッチ電極52が設けられている。
【0028】
図4は、タッチ電極52の一部を拡大した平面図である。タッチ電極52は、第1パッド54と第2パッド56を有する。第1パッド54及び第2パッド56のいずれか一方は、タッチセンシング信号を送信する側にあり、他方は、タッチセンシング信号を受信する側にある。隣同士の第1パッド54又は隣同士の第2パッド56(この例では第1パッド54)は、接続配線58で接続されている。隣同士の第1パッド54又は隣同士の第2パッド56(この例では第2パッド56)は、ジャンパ配線60で接続されている。
【0029】
図5は、第1パッド54及び第2パッド56を示す図である。第1パッド54及び第2パッド56のそれぞれの外形は、ダイヤモンド形状又は矩形になっている。第1パッド54及び第2パッド56は、同一層にあるので入射した外光が反射したときに光路長が等しくなり、反射の差が表れにくく、光学的に視認されにくい。また、第1パッド54及び第2パッド56のそれぞれは、メッシュ状に形成され、網目の中に発光素子38が配列される。したがって、第1パッド54及び第2パッド56を金属で形成しても、光が遮断されないようになっている。なお、隣り合う第1パッド54及び第2パッド56の間に、いずれにも電気的に接続しないダミー電極(図示せず)を配置してもよい。そうすることで、第1パッド54及び第2パッド56の容量性カップリングを適度に小さくでき、その結果、タッチによる容量変化を相対的に大きくすることができる。
【0030】
第1パッド54及び第2パッド56を構成する層とジャンパ配線60を構成する層との間に、
図3に示すように、タッチ層間絶縁膜62が介在する。タッチ層間絶縁膜62を貫通して、タッチ電極52にタッチ配線64が接続する。タッチ配線64は、タッチ層間絶縁膜62の上に設けられ、ジャンパ配線60と同一層にある。
【0031】
図6は、タッチ電極の変形例を示す平面図である。この例では、複数の第1パッド154と複数の第2パッド156が異なる層にあり、両者間にタッチ層間絶縁膜が介在する。この構造では、ジャンパ配線を接続するためのコンタクトを開口する必要がないため、開口不良やパーティクルの発生などの工程上の不良が生じにくい。
【0032】
図3に示すように、第1領域A1では、タッチ電極52を覆うように、接着層63を介して表ラミネーションフィルム66が貼り付けられ、その上に偏光板68が貼り付けられている。接着層63は、タッチ層間絶縁膜62の上に設けられ、タッチ層間絶縁膜62の表面の凹凸を平坦化する厚みを有し、上面が平らである。フレキシブル基板10の裏面には、第1領域A1で、裏ラミネーションフィルム70が貼り付けられ、その下に熱拡散シート72が貼り付けられている。裏ラミネーションフィルム70は、第2領域A2にも、少なくともフレキシブルプリント基板FPとの接続部と重なる位置に貼り付けられている。
【0033】
フレキシブル基板10には、第2領域A2に、複数の配線74が積層されている。複数の配線74は、第1領域A1から第2方向D2に延びる。複数の配線74は、相互に電気的に接続しないように、第1方向D1に並ぶ(
図9参照)。複数の配線74は、タッチ電極52に接続される配線を含む。例えば、
図3に示す配線74は、タッチ配線64に接続される。詳しくは、第2領域A2では、第2無機絶縁膜32が、タッチ配線64と配線74の間に介在するように延びており、第2無機絶縁膜32の開口32aを介して、タッチ配線64と配線74が電気的に接続するようになっている。なお、タッチ電極64と配線74の間には、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜75が介在している。透明導電膜75は、画素電極34の一部を構成する膜と同時に形成されるものである。第2無機絶縁膜32の上方には、有機絶縁膜76が載っている。複数の配線74は、端部でフレキシブルプリント基板FPに電気的に接続する。電気的接続は、異方性導電フィルム77を使用することで導電粒子77aによってなされ、熱硬化性樹脂77bによって機械的接続が図られる。
【0034】
図7は、本発明を適用した実施形態の表示装置の屈曲状態を示す図である。
図7に示すように、表示装置は、屈曲させられるようになっている。詳しくは、
図3に示すフレキシブル基板10の第2領域A2(フレキシブルプリント基板FPとの接合部を除く)が屈曲する。屈曲により、表示装置の一部を重ねて小型化することができ、フレキシブルプリント基板FPを表示装置の裏側に配置することも可能になる。
【0035】
図8は、本発明を適用した実施形態の表示装置の使用形態を示す図である。表示装置は、フレキシブル基板10及び表示回路層12並びに複数の配線74を含む本体Bを有する。第1領域A1では、本体Bの表側に、表ラミネーションフィルム66及び偏光板68が設けられている。これらに隣接して、第2領域A2には有機絶縁膜76が設けられている。本体B(フレキシブル基板10)は、第1方向D1に延びる軸AXの周りに屈曲する。屈曲の内側にスペーサ90が配置されており、曲率が大きくなり過ぎないよう規制している。本体Bの裏側には、少なくとも屈曲する部分を除いて、裏ラミネーションフィルム70が貼り付けられている。
【0036】
図9は、
図1にIXで示す部分の拡大図である。
図10は、
図9に示す構造のX-X線断面図である。
図11は、
図9に示す構造のXI-XI線断面図である。
図12は、
図9に示す構造のXII-XII線断面図である。
【0037】
複数の配線74の下には第1無機絶縁膜28がある。本実施形態では、複数の配線74の下地面は、フレキシブル基板10及び第1無機絶縁膜28から構成されている。フレキシブル基板10から構成される下地面には、第1無機絶縁膜28が存在しない領域がある(
図10参照)。硬い第1無機絶縁膜28を設けないことで、フレキシブル基板10が屈曲しやすくなっている。
【0038】
複数の配線74の下地面は、第2領域A2に階段部STを有する。第1無機絶縁膜28の一部を除去するときに階段部STが形成される。第1無機絶縁膜28が複数層からなるときには、階段部STは複数段になる。階段部STは、相互に高さが異なって第2方向D2に隣り合う複数の上面78を含む。複数の上面78の最低面78Lは、フレキシブル基板10の上面78の一部である。階段部STは、最上面78Uを除く複数の上面78から立ち上がる蹴上面80を含む。第1無機絶縁膜28は、少なくとも、最低面78Lを除く複数の上面78及び蹴上面80を構成する。階段部STにおいて、最上面78Uを除く複数の上面78のそれぞれと蹴上面80によって、入角部82が構成される。
【0039】
それぞれの配線74は、隣の配線74に対向する方向に突出する凸部84を有する(
図9及び
図11参照)。凸部84は、入角部82に沿って第1方向D1に突出する。隣同士の配線74が有する一対の凸部84が、相互に対向する方向に突出する。一対の凸部84は、間隔があいて電気的に絶縁されている(
図9参照)。凸部84は、後述する導電膜86をエッチングして複数の配線74を形成するときの、エッチング残りである。
【0040】
複数の配線74の上には第2無機絶縁膜32がある。第2無機絶縁膜32は、少なくとも階段部STでは、隣同士の配線74の間で第2方向D2に連続する領域Rを避けて設けられている。第2無機絶縁膜32が設けられない領域Rは、後述する無機膜88からエッチングによって除去される部分である。第2無機絶縁膜32が除去される領域Rでは、その下に存在していた導電膜86のエッチング残りも、無機膜88とともに除去される(詳しくは後述する)。これにより、上述した一対の凸部84の間に間隔が形成される。
【0041】
第2無機絶縁膜32が避ける領域Rは、複数の上面78の最低面78Lに限定して言えば、隣同士の配線74の間で、第2方向D2の全長にわたって連続する(
図9参照)。第2無機絶縁膜32は、複数の上面78の最低面78Lでは、複数の配線74のそれぞれの少なくとも一部との重複を避けるように設けられている。第2無機絶縁膜32は、複数の上面78の最低面78Lに限定して言えば、第1方向D1の全幅にわたる領域Rを避けるように設けられている。
【0042】
第2無機絶縁膜32の上に有機絶縁膜76がある。有機絶縁膜76は、第2無機絶縁膜32が避ける領域Rで下地面に接触する。一対の凸部84の間に有機絶縁膜76が介在して、隣同士の配線74のショートを防止している。
【0043】
図13~
図17は、本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明する図である。
図13に示すように、フレキシブル基板10には、第1無機絶縁膜28までの積層構造を形成する。第1無機絶縁膜28は、
図3に示すように複数層(アンダーコート層14、ゲート絶縁膜22、層間絶縁膜26)からなり、フォトリソグラフィを適用したエッチングによってパターニングする。パターニングされた第1無機絶縁膜28は、
図10~12に示すように、階段部STの少なくとも一部を構成する。
【0044】
図14に示すように、第1無機絶縁膜28に導電膜86を形成し、
図15に示すように、導電膜86をパターニングして複数の配線74を形成する。パターニングは、フォトリソグラフィを適用したエッチングによって行う。なお、導電膜86からソース電極18及びドレイン電極20も形成する。この時点では、複数の配線74の下地面にある階段部STの入角部82(
図9~
図12参照)には、エッチャント(例えばエッチング液)が入りにくいため、導電膜86が残ってしまう。そのため、隣同士の配線74がショートすることがある。
【0045】
図16に示すように、複数の配線74を覆うように無機膜88を形成し、
図17に示すように、無機膜88をパターニングする。パターニングによって、少なくとも階段部STでは、隣同士の配線74の間で第2方向D2に連続する領域Rから無機膜88を除去して、第2無機絶縁膜32を形成する(
図9参照)。無機膜88の除去に連続して、隣同士の配線74の間に残った導電膜86(一対の凸部84の間にある部分)を除去する(
図9参照)。こうすることで、隣同士の配線74の導通を切断することができる。その後、
図3に示す構造から自明なプロセスを行う。
【0046】
図18は、
図10に示す構造の変形例を示す図である。この例では、複数の上面278のいずれもが、第1無機絶縁膜228の上面278の一部である。つまり、複数の配線274の全体にわたって、第1無機絶縁膜228が下に存在している。
【0047】
図19は、
図9に示す構造の変形例を示す図である。この例では、第2無機絶縁膜332は、階段部STを構成する複数の上面378でも、複数の配線374の全体と重複するように設けられている。
【0048】
図20は、
図12に示す構造の変形例1を示す図である。
図12の例では、第1無機絶縁膜28は、隣同士の配線74の導通を切断するときのプロセスで、第2無機絶縁膜32からはみ出す部分が除去されている。これに対して、
図20の例では、第1無機絶縁膜428は、第2無機絶縁膜432からはみ出す部分を有する。ただし、隣同士の配線74の導通を切断するときのプロセスで、第2無機絶縁膜432からはみ出す部分では、第1無機絶縁膜428は、その表層が削れて低くなった第2階段部ST2を有する。このように、第1無機絶縁膜428は、第2無機絶縁膜432から完全にはみ出さないようにする必要はない。
【0049】
図21は、
図12に示す構造の変形例2を示す図である。
図12の例では、隣同士の配線74の導通を切断するときのプロセスを、第2無機絶縁膜32を形成するための無機膜88のパターニングプロセスで行った。これに対して、
図21の例では、隣同士の配線74の導通を切断した後に、第2無機絶縁膜532を形成するための無機膜を形成し、これをパターニングする。そのため、第2無機絶縁膜532は、第1無機絶縁膜528の側面を覆い、その周縁を超えるようになっている。
図21の例では、
図10又は
図11に示す階段部STがある個所よりも少し広めに第1無機絶縁膜528がエッチングされるので、第2階段部ST2が低く形成され、
図10又は
図11では平坦な領域に段数が1段増えて第3階段部ST3が形成される。
【0050】
なお、表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置には限定されず、量子ドット発光素子(QLED:Quantum‐Dot Light Emitting Diode)のような発光素子を各画素に備えた表示装置であってもよいし、液晶表示装置であってもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 フレキシブル基板、12 表示回路層、14 アンダーコート層、16 半導体層、18 ソース電極、20 ドレイン電極、22 ゲート絶縁膜、24 ゲート電極、26 層間絶縁膜、28 第1無機絶縁膜、30 平坦化層、32 第2無機絶縁膜、32a 開口、34 画素電極、36 バンク層、38 発光素子、40 対向電極、42 発光層、44 封止層、46a 無機膜、46b 無機膜、48 有機膜、50 有機層、52 タッチ電極、54 第1パッド、56 第2パッド、58 接続配線、60 ジャンパ配線、62 タッチ層間絶縁膜、63 接着層、64 タッチ配線、66 表ラミネーションフィルム、68 偏光板、70 裏ラミネーションフィルム、72 熱拡散シート、74 配線、75 透明導電膜、76 有機絶縁膜、77 異方性導電フィルム、77a 導電粒子、77b 熱硬化性樹脂、78 上面、78L 最低面、78U 最上面、80 蹴上面、82 入角部、84 凸部、86 導電膜、88 無機膜、90 スペーサ、154 第1パッド、156 第2パッド、228 第1無機絶縁膜、274 配線、278 上面、332 第2無機絶縁膜、374 配線、378 上面、428 第1無機絶縁膜、432 第2無機絶縁膜、528 第1無機絶縁膜、532 第2無機絶縁膜、A1 第1領域、A2 第2領域、B 本体、D1 第1方向、D2 第2方向、DA 表示領域、FP フレキシブルプリント基板、IC 集積回路チップ、R 領域、ST 階段部、ST2 第2階段部、TFT 薄膜トランジスタ。