(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120009
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ベンラリツマブを使用して喘息の増悪率を低減する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220809BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220809BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220809BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P11/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/58
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092216
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2020067797の分割
【原出願日】2014-08-07
(31)【優先権主張番号】61/864,944
(32)【優先日】2013-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】300022641
【氏名又は名称】アストラゼネカ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ワード,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ロスコス,ローリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】レイブル,ドナルド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】喘息増悪率を低減させる方法、および喘息を治療する方法を提供する。
【解決手段】喘息の年間増悪率を低減する方法であって、喘息患者に有効量の抗インターロイキン5受容体(IL-5R)抗体ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与が前記患者の憎悪率を低減する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喘息の年間増悪率を低減する方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与が前記患者の憎悪率を低減する方法。
【請求項2】
喘息の治療方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する方法。
【請求項3】
喘息の治療方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に予測値の少なくとも75%の努力肺活量(FEV1)を有する方法。
【請求項4】
喘息の治療方法であって、喘息患者にベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを少なくとも2回投与することを含む方法。
【請求項5】
前記投与は、前記患者の憎悪率を低減する請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与は、前記患者の憎悪率を低減する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記喘息は、好酸球性喘息である請求項1または3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者は、少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する請求項1または3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者は、前記投与前に予測値の少なくとも75%の努力肺活量(FEV1)を有する請求項1、2または4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者は、前記投与前に少なくとも1.5の喘息コントロール質問票スコアを有する請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者にベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが少なくとも2回投与される請求項1~3または5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメント投与後に年間憎悪率を低減する請求項1または6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
年間憎悪率が少なくとも35%低減される請求項1または6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
年間憎悪率が少なくとも40%低減される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
年間憎悪率が少なくとも50%低減される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
年間憎悪率が少なくとも60%低減される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者は高用量の吸入コルチコステロイド薬(ICS)を使用する請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者は長時間作用性β2刺激薬(LABA)を使用する請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者は増悪歴を有する請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記増悪歴は、前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメント投与前の1年に少なくとも2回の増悪を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記増悪歴は、前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメント投与前の1年に6回以下の増悪を含む請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約2mg~約100mg投与される請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約20mg投与される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約30mg投与される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約100mg投与される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週~12週毎に1回投与される請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、8週毎に1回投与される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、非経口的に投与される請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは皮下投与される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、コルチコステロイド療法に加えて投与される請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
喘息の年間憎悪率を低減する方法であって、喘息患者に20~100mgのベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する方法。
【請求項34】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを20mg投与することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを30mg投与することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、8週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを100mg投与することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
喘息患者の喘息を治療する方法であって、前記患者に少なくとも2mg、100mg未満の用量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項42】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは20mg投与される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは30mg投与される請求項41に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも20mg、100mg未満の用量の前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが投与される請求項41に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも30mg、100mg未満の用量の前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが投与される請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントの投与が喘息の増悪率を減少させる請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントの投与が喘息の年間増悪率を減少させる請求項41~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記投与が皮下に行われる請求項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体を参照により本明細書に組み込むものとする。2014年7月16日に作成された前記ASCIIのコピーは、ファイル名IL5R-603WO1_SL.txtであり、サイズは15,960バイトである。
【0002】
背景
世界中で3億を超える人々が喘息を患っている。長時間作用性気管支拡張剤および吸入コルチコステロイドの使用にもかかわらず、喘息憎悪による予定外の通院、救急部(ED)の受診および入院が頻繁に起こり、喘息に起因する医療費のかなりの部分を占めている(Masoli M,et al.Allergy 59:469-78(2004))。
【0003】
急性喘息増悪後の再発は、退院時の全身性ステロイドの使用にもかかわらず、12週目で41~52%の範囲であると報告されている(Lederle F,et al.Arch Int Med 147:2201-03(1987))。これらの患者の管理によれば、大変な難病であること、または治療に適合しない、および/もしくは治療に従う気がないことのために、問題の解決が困難であることがわかっている。入院患者に関するある研究では、幾人かの致命的な喘息患者の50%で、退院後7日目で全身性コルチコステロイドに対するコンプライアンスが低くなっていた(Krishnan J,et al.AJRCCM 170:1281-85(2004))。日常的健康管理の利用が困難である(特にスラム街で)、彼らの病気に関する教育または理解が不足している、彼らの病気が慢性的なものであることを受け入れる気がない、または薬物治療を受けることができない、などの多くの因子が低コンプライアンスの原因であり得る。
【0004】
喘息性気道炎症の主な原因細胞の1つが好酸球であることを、多くの証拠が暗に示している(James A.Curr Opin Pulm Med 11(1):1-6(2005))。末梢血(PB)中の好酸球増加は、急性喘息再発のリスク因子である(Janson C and Herala M. Resp Med 86(2):101-104(1992))。末梢血中の好酸球が増加している患者では、好酸球増加がみられない患者と比べて、喘息による死亡のリスクは7.4(信頼区間、2.8~19.7)倍高かった(Ulrik C and Fredericksen J.Chest 108:10-15(1995))。剖検の結果、致命的な喘息の、2つの明確に区別できる病原性炎症メカニズムが特定された(Restrepo R and Peters J.Curr Opin Pulm Med 14:13-23(2008))。突然(症状が発現してから約2時間以内)死亡した患者では好中球浸潤がより顕著であり、一方、好酸球浸潤は、より長い喘息の危機を経過して死亡した患者によく見られる。急な喘息症状の発現のために救急部を受診する患者では、痰および血中の好酸球もまた増加することがある(Bellido-Casado J,et al.Arch Bronconeumol 46(11):587-93(2010))。好酸球を標的とする治療は、診療ガイドラインの使用と比較すると、喘息増悪の回数と重症度の低減をもたらしている(Green R,et al.Lancet 360:1715-21(2002);Haldar P,et al.NEJM 360:973-84(2009))。
【0005】
Benralizumab(ベンラリツマブ;MEDI-563)は、好酸球および好塩基球上に発現するインターロイキン5受容体アルファ(IL-5Rα)のアルファ鎖に結合する、ヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。それは、抗体依存性細胞障害を通してこれらの細胞のアポトーシスを誘導する。軽い喘息の成人にBenralizumabを静注(IV)により1回投与すると、この標的を発現する好酸球/好塩基球骨髄前駆細胞に対する影響によるものと思われるが、PB中好酸球が長期間減少した(Busse W,et al.JACI 125:1237-1244 e2(2010))。さらに、Benralizumabの1回の投与により、重度の喘息増悪のために救急部を受診した患者の血中好酸球数が著しく減少した(国際公開第13/066780号パンフレット)。Benralizumabは骨髄または末梢の他の細胞系譜には影響しない(Kolbeck R,et al.JACI 125:1344-53(2010))。
【0006】
過去の研究で、痰中の好酸球の減少に的を絞った外来患者への治療計画によって、その後の喘息増悪の回数が減少することが示されている(Green R,et al.Lancet 360:1715-21(2002);Haldar P,et al.NEJM 360:973-84(2009))。
【0007】
このように、喘息増悪の低減に対する強い満たされていない要求があり、また、喘息患者の中には好酸球的要素を有するものがいることから、成人患者の喘息増悪率に対するBenralizumabの効果を調べた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願においては、年間の喘息増悪率を低減させる方法が提供される。ある態様では、喘息の年間増悪率を低減する方法は、喘息患者に有効量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0009】
本願においては、喘息を治療する方法も提供される。ある態様では、喘息の治療方法は、投与前の血中好酸球数が少なくとも300個/μlの喘息患者に、有効量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0010】
ある態様では、喘息の治療方法は、投与前の努力肺活量(FEV1)が予測値の少なくとも75%である喘息患者に、有効量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0011】
ある態様では、喘息の治療方法は、喘息患者にBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを少なくとも2回投与することを含む。
【0012】
本願で提供される方法のある態様では、投与によって患者の増悪率を低下させる。ある態様では、投与によって患者の年間増悪率を低下させる。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後の年間増悪率が、少なくとも35%低下する。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後の年間増悪率が、少なくとも40%低下する。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後の年間増悪率が、少なくとも50%低下する。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後の年間増悪率が、少なくとも60%低下する。
【0013】
本願で提供される方法のある態様では、喘息は好酸球性喘息である。ある態様では、患者の血中好酸球数は少なくとも300個/μlである。
【0014】
本願で提供される方法のある態様では、患者は投与前に予測値の少なくとも75%の努力肺活量(FEV1)を有する。ある態様では、患者は、投与前に少なくとも1.5の喘息コントロール質問票スコアを有する。ある態様では、患者は高用量の吸入コルチコステロイド薬(ICS)を使用する。ある態様では、患者は長時間作用性β2刺激薬(LABA)を使用する。ある態様では、患者は増悪歴を有する。ある態様では、増悪歴は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメント投与前の1年に少なくとも2回の増悪を含む。ある態様では、増悪歴は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメント投与前の1年に6回以下の増悪を含む。
【0015】
本願で提供される方法のある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、患者に少なくとも2回投与される。
【0016】
本願で提供される方法のある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約2mg~約100mg投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約20mg投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約30mg投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約100mg投与される。
【0017】
本願で提供される方法のある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、4週~12週毎に1回投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、8週毎に1回投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される。
【0018】
本願で提供される方法のある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、非経口的に投与される。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、皮下投与される。
【0019】
本願で提供される方法のある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、コルチコステロイド療法と併用して投与される。
【0020】
ある態様では、年間の喘息増悪率を低減させる方法は、投与前の血中好酸球数が少なくとも300個/μlの喘息患者に、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントを20~100mg投与することを含む。ある態様では、本方法はBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを20mg投与することを含む。ある態様では、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回、Benralizumab 20mgが投与される。ある態様では、本方法はBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを30mg投与することを含む。ある態様では、8週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回、Benralizumab 30mgが投与される。ある態様では、4週毎に1回、Benralizumab 30mgが投与される。ある態様では、本方法はBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを100mg投与することを含む。ある態様では、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回、Benralizumab 100mgが投与される。
【0021】
ある態様では、喘息患者の喘息を治療する方法は、少なくとも2mg、100mg未満の用量の、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントを患者に投与することを含む。ある態様では、本方法はBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを20mgの投与することを含む。ある態様では、本方法はBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを30mg投与することを含む。ある態様では、本方法は少なくとも20mg、100mg未満の用量の、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。ある態様では、本方法は少なくとも30mg、100mg未満の用量の、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。ある態様では、本方法は喘息の増悪率を低下させる。ある態様では、本方法は喘息の年間増悪率を低下させる。ある態様では、投与は皮下に行われる。
【0022】
提供する方法のある態様では、
図2~8に示すように、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与により増悪率が低下する。
【0023】
提供する方法のある態様では、実施例1~2に示すように、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与により増悪率が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2は、300好酸球/μl未満の患者および少なくとも300好酸球/μlの患者を、プラセボ、2mgのBenralizumab、20mgのBenralizumabまたは100mgのBenralizumabで治療した後の、中間(24週)および年間(ステージI;52週)の増悪率を示す。
【
図3】
図3は、中用量または高用量の吸入コルチコステロイド薬(ICS)を使用している患者を、プラセボ、2mgのBenralizumab、20mgのBenralizumabまたは100mgのBenralizumabで治療した後の、中間(24週)および年間(ステージI;52週)の増悪率を示す。
【
図4】
図4は、300好酸球/μl未満で、(i)中用量のICSを使用、または(ii)高用量のICSを使用している患者を、プラセボ、2mgのBenralizumab、20mgのBenralizumabまたは100mgのBenralizumabで治療した後の、中間(24週)および年間(ステージI;52週)増悪率を示す。
【
図5】
図5は、少なくとも300好酸球/μlで、(i)中用量のICSを使用、または(ii)高用量のICSを使用している患者を、プラセボ、2mgのBenralizumab、20mgのBenralizumabまたは100mgのBenralizumabで治療した後の、中間(24週)および年間(ステージI;52週)増悪率を示す。
【
図6】
図6は、300好酸球/μl未満の患者および少なくとも300好酸球/μlの患者の年間増悪率を示す図である。
【
図8】
図8は、少なくとも300好酸球/μlの患者の好酸球減少の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
用語「a」または「an」を前置する実体は、1つ以上のその実体を指すことに留意すべきであり、例えば、「an 抗-IL-5α抗体」は、1種以上の抗-IL-5α抗体を意味すると理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同義語として使用することができる。
【0026】
本願で提供されるのは、喘息の増悪を低減する方法である。提供される方法は、有効量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0027】
本願で提供される方法で使用するBenralizumab(またはそのフラグメント)に関する情報は、米国特許出願公開第2010/0291073A1号明細書に見出すことができ、参照によりその開示の全体が本明細書に組み込まれる。本願で提供される方法で使用するBenralizumabおよびその抗原結合フラグメントは、重鎖および軽鎖、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。さらなる態様では、本願で提供される方法で使用するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:1~4のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。ある特定の態様では、本願で提供される方法で使用するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、本願で提供される方法で使用するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:2のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。ある特定の態様では、本願で提供される方法で使用するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、配列番号:7~9のKabatによる定義のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号:10~12のKabatによる定義のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。当業者であれば、Chothiaによる定義のCDR、Abmによる定義のCDR、または他のCDRを容易に見分けることができるであろう。ある特定の態様では、本願で提供される方法で使用するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、本明細書で開示されている、KM1259抗体の可変重鎖および可変軽鎖のCDR配列を含む。米国特許第6,018,032号明細書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
ある態様では、喘息により病院またはEDを受診する患者に、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントが投与される。Benralizumabが、12週以上の間、好酸球数を低下ないし減少させることができるとすれば(米国特許出願公開第2010/0291073号明細書を参照)、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、増悪を減らす恩恵がなおも患者にもたらされている間は、1回のみ、または非常に少ない回数、投与することができる。さらなる態様では、患者はさらに追加投与される。追加投与は、患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床的評価、好酸球数(血中または痰中の好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)測定値、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値、および、主治医の判断などの他の因子に応じて、様々な時間間隔で行うことができる。投与間隔は、4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、10週毎、12週毎、またはこれより長い間隔とすることができる。ある態様では、投与間隔は4週毎、8週毎、または12週毎とすることができる。ある態様では、喘息患者が増悪、例えば、軽度、中度、または重度の増悪を発症した後、すぐに患者に単回投与、または最初の投与が行われる。例えば、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、診療所もしくは病院の受診時に投与することができるが、急性憎悪後、1、2、3、4、5、6、7日もしくはそれを超える日数、例えば7日以内の非常に重度の増悪の場合には、Benralizumabの投与の前に患者の症状を安定化させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、患者に少なくとも2回投与される。いくつかの実施形態では、患者に、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、または少なくとも7回の投与が行われる。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、4週にわたって、8週にわたって、12週にわたって、24週にわたって、または1年にわたって投与される。
【0030】
患者に投与するBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントの量は、患者の年齢、体重、臨床的評価、好酸球数(血中または痰中の好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)測定値、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値、および、主治医の判断などの他の因子などの各種パラメータに依るであろう。ある態様では、用量または投与間隔は好酸球値には依らない。
【0031】
ある態様では、患者は、約2mg~約100mg、例えば約20mg~約100mg、または約30mg~約100mgの用量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントが1回以上投与される。ある態様では、患者は、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mgまたは約100mgの用量のBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントが1回以上投与される。いくつかの実施形態では、用量は約20mgである。いくつかの実施形態では、用量は約30mgである。いくつかの実施形態では、用量は約100mgである。
【0032】
ある態様では、本願で提供される方法によるBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与は、非経口投与である。例えば、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、静脈注入または皮下注射により投与することができる。
【0033】
ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントは、別の喘息療法と組み合わせて、または併用して、本願で提供される方法により投与される。そのような療法としては、吸入コルチコステロイド療法、長期作用型または短期作用型の気管支拡張剤治療、酸素補充、または、例えばNational Asthma Education and Prevention Program(NAEPP)Guidelinesに記載されているような他の標準療法が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様では、喘息治療管理の標準的形態に従うことが困難な状況において、増悪歴を有する喘息患者に対する、本願で提供される方法の使用、すなわちBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与は、補助的療法となる。
【0034】
本願で提供される方法は、喘息の増悪を顕著に減少させることができる。減少は、大きな患者個体群、または個々の患者の増悪歴をもとに推測される予測増悪に基づいて測定することができる。ある態様では、患者の個体群は、過去1年以内に≧2回の、全身性コルチコステロイドバーストの必要な増悪を経験した患者群である。ある態様では、患者の個体群は、過去1年以内に≧2回の、全身性コルチコステロイドバーストの必要な増悪を経験し、かつ過去1年以内に≦6回の、全身性コルチコステロイドバーストの必要な増悪を経験した患者群である。ある態様では、患者の個体群は、好酸球数が少なくとも300個/μlの患者群である。
【0035】
ある態様では、本願で提供される方法の使用により、すなわち、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与することにより、患者の病歴から予測される増悪回数と比べて、同等の患者個体群で予測される平均増悪回数と比べて、あるいは同一期間プラセボで治療されていた同等の個体群と比べて、患者が経験する増悪の回数が、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後24週にわたって減少する。ある態様では、患者は定期的に、例えば4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、12週毎、または、患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床的評価、好酸球数(血中または痰中の好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)測定値、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値、および、主治医の判断などの他の因子に基づいて決められた間隔で、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの追加投与を受けることができる。本願で提供される方法を使用すれば、24週にわたって増悪の頻度を、10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%減少させることができる。
【0036】
他の態様では、本願で提供される方法を使用すれば、すなわち、喘息患者にBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与すれば、患者の病歴から予測される増悪回数と比べて、同等の患者個体群で予測される平均増悪回数と比べて、あるいは同一期間プラセボで治療されていた同等の個体群と比べて、患者が経験する増悪の回数が、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与後52週にわたって(すなわち年間増悪率)減少する。ある態様では、患者は定期的に、例えば4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、12週毎、または、患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床的評価、好酸球数(血中または痰中の好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン(EDN)測定値、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値、および、主治医の判断などの他の因子に基づいて決められた間隔で、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの追加投与を受けることができる。ある態様では、その間隔は4週毎、8週毎または12週毎である。本願で提供される方法を使用すれば、年間の増悪を、10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%減少させることができる。
【0037】
ある態様では、本願で提供される方法を使用すれば、すなわち、喘息患者にBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントを投与すれば、年間増悪率が減少し、努力肺活量(FEV1)が増加し、かつ/または喘息質問票のスコア(例えば、喘息コントロール質問票(ACQ))が改善される。
【0038】
ある態様では、患者は「好酸球陽性」であり、これはその患者が好酸球性喘息である可能性が高いことを意味する。
【0039】
ある態様では、喘息患者は、例えばBenralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前には、特定の血中好酸球数を有している。血中好酸球数は、例えば、血球分類とともに全血球計算(CBC)を行うことにより測定できる。
【0040】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する。ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、少なくとも350個/μl、少なくとも400個/μl、少なくとも450個/μl、または少なくとも500個/μlの血中好酸球数を有する。
【0041】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、300個/μl未満の血中好酸球数を有する。ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、少なくとも100個/μl、少なくとも150個/μl、少なくとも180個/μl、少なくとも200個/μl、または少なくとも250個/μlの血中好酸球数を有する。
【0042】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、中用量の吸入コルチコステロイド(ICS)を処方されたか、あるいは使用してきている。中用量のICSは、1日量が少なくとも600μg~1,200μgのブデソニドであるか、または等価用量の別のICSのであり得る。
【0043】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、高用量のICSを処方されたか、あるいは使用してきている。高用量のICSは、1日量が少なくとも1,200μgのブデソニドであるか、等価用量の別のICSであり得る。高用量のICSはまた、1日量が1,200μg超~2000μgのブデソニドであるか、等価用量の別のICSであり得る。
【0044】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、経口コルチコステロイド薬を処方されたか、あるいは使用してきている。ある態様では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与により、喘息患者の経口コルチコステロイドの使用が減少する。ある態様では、その投与により喘息患者の経口コルチコステロイドの使用が少なくとも50%減少する。
【0045】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、長時間作用性ベータ刺激剤(LABA)を処方されたか、あるいは使用してきている。
【0046】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、ICSおよびLABAの両者を処方されたか、あるいは使用してきている。
【0047】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有し、かつ高用量のICSを使用している。
【0048】
ある態様では、喘息患者は、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、予測値の少なくとも40%、90%未満の1秒量(FEV1)を有していた。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の70%超であった。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の70%超、90%未満であった。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の少なくとも75%であった。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の少なくとも75%であり、90%未満であった。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の少なくとも80%であった。いくつかの実施形態では、Benralizumabまたはその抗原結合フラグメントの投与前に、FEV1が予測値の少なくとも80%、90%未満であった。
【実施例0049】
実施例1:患者および方法
患者
本試験の患者は18~75歳で、体重が45kg超150kg以下(100ポンド超330ポンド以下)であることが要求された。彼らはまた、スクリーニング前の少なくとも12ヶ月間喘息を患っていたという医師の診断がなければならず、また、スクリーニング前の少なくとも12ヶ月間、医師処方による中用量または高用量の吸入コルチコステロイド薬(ICS)と長時間作用性ベータ刺激剤(LABA)を毎日使用していたか、または中用量もしくは高用量ICS/LABAの連続投与の任意の組み合わせを毎日使用していなければならなかった。本試験で定義したICSの中用量および高用量を下記表1に示す。
【0050】
【0051】
他の喘息コントロール剤の用量は、スクリーニング前、少なくとも30日間は患者に安定して投与されていなければならなかった。患者はまた、スクリーニングの前12ヶ月以内に、少なくとも2回、しかし6回以下の、書類に記載された、全身性コルチコステロイドバーストの使用が必要な喘息増悪を起こしていなければならなかった。患者はまた、スクリーニング/準備期間(後述)において、午前の気管支拡張剤使用前の1秒量(FEV1)が予測値の少なくとも40%、90%未満でなければならなかった。患者はまた、以下の基準の1つを満たしていなければならなかった。
(a)気管支拡張剤使用後の気流制限可逆性が≧12%で、かつ≧200mLであるという、ランダム化前、36か月以内に書類に記載された証拠、またはメタコリン負荷に対して陽性応答[PC20≦8mg/mL]があったという、ランダム化前、36か月以内に書類に記載された証拠;
(b)-3週スクリーニング受検時に、気管支拡張剤使用後のFEV1が≧12%で、かつ≧200mLの増加があったこと;または
(c)a)およびb)は満たさないが、他の全ての包含/除外の基準は満たしている場合、-2週スクリーニング受検時にFEV1が≧1.5Lで、かつ予測値の≧60%の患者は、-2週スクリーニング受検時に、メタコリン試験を受けられる場所でメタコリン負荷を受ける資格があった。患者が陽性応答(PC20≦8mg/mL)を示せば、この包含基準を満たした。
【0052】
患者はまた、スクリーニング/準備期間に少なくとも2回、少なくとも1.5の喘息コントロール質問票(ACQ)のスコアを取らなければならなかった。
【0053】
患者がスクリーニングの前に年間10箱以上のたばこに暴露されていたか、または12ヶ月以内にずっと喫煙していたなら、あるいは、試験者またはメディカルモニターの判定で評価を妨げるような健康状態(例えば、喘息以外の好酸球性下気道疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または嚢胞性繊維症など)であったなら、患者は参加できなかった。また、スクリーニングの前30日以内に、またはスクリーニング/準備期間に、患者が経口コルチコステロイドバーストまたは短期作用性全身性コルチコステロイド療法を受けていた場合にも、彼らは参加できなかった。
【0054】
試験計画
試験は、第2b相の、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、投与量決定、他施設試験とし、そこでは、喘息患者にBenralizumabを複数回皮下投与した(ClinicalTrials.gov番号:NCT01238861)。Benralizumabは2、20、または100mgの用量で投与され、患者は1年間経過観察された。試験のフロー図を
図1に示す。
【0055】
Benralizumabまたはプラセボの投与前に、3週間のスクリーニング/準備期間があった。その3週の間、試験に参加する前に、患者は同じ中用量または高用量のICS/LABAの複合製品を使用し続けた(ICS/LABAの用量は、3週間のスクリーニング/準備期間に先立つ30日間は安定していることが要求された)。患者は、全試験期間にわたって同一用量のICS/LABAの使用を続けた。
【0056】
投与したBenralizumab組成物は、Benralizumab(50mg/mL)、10mMのヒスチジン、10mMのヒスチジン塩酸塩一水和物、9%(重量/体積)のトレハロース二水和物、および0.004%(重量/体積)のポリソルベート20、pH6を含んだ。投与したプラセボ組成物は、10mMのヒスチジン、10mMのヒスチジン塩酸塩一水和物、9%(重量/体積)のトレハロース二水和物、および0.02%(重量/体積)のポリソルベート20、pH6を含んだ。
【0057】
患者は、第1週目(1日目)、第4週目および第8週目の最初の3回の投与では4週毎に、その後、第16週目、第24週目、第32週目および第40週目の最後の4回の投与では8週毎に、1mlのBenralizumabまたはプラセボの皮下(SC)注射を2回受けた。40週後、急性増悪の評価のために、さらにその後の12週間(52週目まで)、患者を経過観察した。Benralizumabまたはプラセボの最初の投与を受けた日を第1日目とした。
【0058】
本試験の目的のために、喘息増悪を、救急薬の投与開始後も解決せず、患者にとって困難な状態が続き、1)試験者もしくは医療提供者の処方もしくは投与による、少なくとも3日間にわたる全身性コルチコステロイド薬(錠剤、懸濁液または注射)の使用もしくは安定した全身性維持量の増加、または2)少なくとも3日間の患者による全身性コルチコステロイド薬の開始のいずれかが必要になるような、喘息症状(咳、喘鳴、胸部絞扼感および/または息切れ)の漸進的増加と定義した。喘息増悪の発症は、最後の経口コルチコステロイド薬の投与後7日で解決すると見なした(注射用コルチコステロイドの投与後10日)。この期間後に開始されたコルチコステロイドの治療単位は、別の新たな喘息増悪と見なした。喘息増悪は、悪化する症状が全身性コルチコステロイド薬を必要とするならば「軽度」と、悪化する症状が全身性コルチコステロイド薬と、救急手当の評価および/または入院を必要とするならば「重度」と分類した。
【0059】
喘息増悪を、-3、-2、-1、1(1日目と6日目)、4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、46および52週目に評価した。
【0060】
年間増悪率は、1週目(1日目)~52週目の増悪の回数と定義した。患者が52週目の診察の前に中断した場合、その患者の年間増悪率は次式により算出した:観察された喘息増悪回数/観察日数×364。
【0061】
加重平均喘息増悪率は、ある治療群の全ての喘息増悪回数を合計し、その治療群の追跡期間で除すことにより推定した。
【0062】
安全性評価
プラセボまたはBenralizumab投与後の有害事象を監視した。その他の評価には、身体的検査、バイタルサインのモニタリングおよび研究室測定が含まれた。
【0063】
実施例2:結果
登録およびベースライン特性
試験品の何らかの投与を受けた無作為化した全患者のベースライン特性を下記表2に示す。ICS個体群の平均用量は、全体としては1100ブデソニドと等価であり、中用量層では700ブデソニドと等価、高用量層では1600ブデソニドと等価であった。
【0064】
【0065】
試験品の何らかの投与を受け、ベースラインの好酸球数が少なくとも300個/μlの無作為化した患者のベースライン特性を下記表3に示す。
【0066】
【0067】
有効性
増悪率に対するBenralizumabの投与の効果を
図2~8に示す。僅かに約30%の患者が増悪を発症した。さらに、20mgまたは100mgのBenralizumabを投与すると、血中好酸球数が少なくとも300個/μlの患者、および血中好酸球数が少なくとも300個/μlで、かつベースラインICSが高い状態の喘息患者の年間増悪率は有意に減少した(p<0.169)。
【0068】
血中好酸球数が少なくとも300個/μlの患者では、20mgのBenralizumabの投与により、年間増悪率が、プラセボによる治療と比べて、57%減少(p=0.014)し、100mgのBenralizumabの投与により、年間増悪率は43%減少(p=0.049)した(
図2)。
【0069】
血中好酸球数が少なくとも300個/μlであり、かつベースラインICSが高い状態の患者では、20mgのBenralizumabの投与により、年間増悪率が、プラセボによる治療と比べて、52%減少(p=0.118)し、100mgのBenralizumabの投与により、年間増悪率は46%減少(p=0.102)した(
図5)。
【0070】
増悪率の減少はまた、血中好酸球数が300個/μl未満の患者(
図2および4)、および中または高ベースラインICSの患者(
図3)でも観察された。
【0071】
治療前に300個/μl未満であった患者と、少なくとも300個/μlであった患者の増悪率減少の比較を
図6に示し、各種好酸球数における増悪回数を
図7に示す。
【0072】
さらに、Benralizumabの何らかの投与を受けた患者では、プラセボを受けた患者と比較して、好酸球が減少した。
図8。
【0073】
安全性
Benralizumabで治療された患者では、治療下で発現した有害事象(TEAE)が、プラセボで治療された患者と比べて、約10パーセントポイント高い頻度で発生した。治療下で発現した重度の有害事象(TE-SAE)は、Benralizumabとプラセボで治療された患者において類似の頻度で生じた。Benralizumabで治療された患者では、TEAEとTE-SAEは用量に依存しなかった。
【0074】
抗薬物抗体
Benralizumabに対する抗薬物抗体の生成は、用量とは逆の関係を示し、ADA陽性患者の割合が最も高いのは2mgの用量においてであった(下記表4参照)。高力価のADA(≧400)の発生率は、20mg用量群および100mg用量群でそれぞれ12%および9%であった。高力価のADAは、それが存在すれば、Benralizumab濃度の低下および好酸球の様々な程度の回復に関連した。高力価ADAの薬物動態/薬力学(PK/PD)的影響は、より高レベルの薬物曝露の場合に低下した。TEAEとADAの間にはいかなる関係も観察されなかった。
【0075】
【0076】
PKおよび免疫学的考察に基づき、追加の患者群に用量30mgのBenralizumabを投与する。何人かの患者には、4週毎に用量30mgのBenralizumabを投与する。何人かの患者には、3回の投与は4週毎に1回、その後は8週毎に1回、用量30mgのBenralizumabを投与する。
【0077】
考察
本試験は、中用量または高用量のICS/LABAで治療中の好酸球性喘息患者(すなわち、ベースラインの血中好酸球数数が少なくとも300個/μlの患者)の増悪がBenralizumabにより低減されたことを示している。特に、Benralizumabにより、血中好酸球数が少なくとも300個/μlの喘息患者、および血中好酸球数が少なくとも300個/μlで、かつ高ICS状態にある患者の増悪率が顕著に低減された。これらの患者では、中間(24週)および年間(52週)の両時点で、またBenralizumabを20mgまたは100mg受けた患者で、増悪率が低減された。
【0078】
実施例3:追加用量の評価
年間増悪率を低減し、安全で十分に許容されるBenralizumabの追加用量を特定するために、用量-有効性のモデル化を行った。モデル化により、約30mgが最大治療効果の90%を達成するのに最少の有効用量であることが示された。したがって、非管理の喘息患者は30mgのBenralizumabまたはプラセボの皮下注射を受ける。30mgの用量が、(i)4週毎、または(ii)8週間は4週毎(3回投与)、その後は8週毎(すなわち、4週目の追加投与を含む8週毎)に投与される。30mgの用量のBenralizumabにより年間増悪率が減少することを示すために、30mgのBenralizumabを受けた患者の増悪回数と、プラセボを受けた患者の増悪回数を比較する。さらに、30mgの用量のBenralizumabが、ベースラインの血中好酸球数が少なくとも300個/μlの患者の年間増悪率を減少させるのに有効であることを示すために、そうした患者の増悪回数を分析した。
【0079】
当業者であれば、ルーチン以下の実験により、本明細書に記載されている開示の特定の態様に等価な多くのものを認識するであろうし、あるいは確認することができるであろう。そのような等価なものは、次の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0080】
本明細書では種々の刊行物が参照されているが、それらの開示の全体は参照により組み込まれる。
【0081】
以上、本発明を、明確に理解されることを目的に、説明と実施例により多少詳しく記載してきたが、添付の特許請求の範囲内で一定の変更と修正を加えることができることは明らかであろう。
【0082】
配列番号:1
>US20100291073_1 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列1 生物名:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【化1】
配列番号:2
>US20100291073_2 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列2 生物名:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【化2】
配列番号:3
>US20100291073_3 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列3 生物名:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【化3】
配列番号:4
>US20100291073_4 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列4 生物名:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【化4】
配列番号:5
>US20100291073_5 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列5 生物名:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【化5】
配列番号:6
>US20100291073_6 米国特許出願公開第2010/0291073号明細書の配列6 生物名:ハツカネズミ(Mus musculus)
【化6】
配列番号:7-VH CDR1
【化7】
配列番号:8-VH CDR2
【化8】
配列番号:9-VH CDR3
【化9】
配列番号:10-VL CDR1
【化10】
配列番号:11-VL CDR2
【化11】
配列番号:12-VL CDR3
【化12】
喘息の年間増悪率を低減する治療における使用のための有効量のベンラリツマブであって、ベンラリツマブは喘息患者に投与され、前記投与は患者の増悪率を低減し、かつベンラリツマブは12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回、30mgの用量で投与される、前記ベンラリツマブ。
年間増悪率が少なくとも35%、場合により少なくとも40%、場合により少なくとも50%、場合により少なくとも60%低減される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのベンラリツマブ。
前記患者は増悪歴を有し、場合により前記増悪歴が、前記ベンラリツマブの投与前の1年に少なくとも2回の増悪を含み、場合により前記増悪歴が、前記ベンラリツマブの投与前の1年に6回以下の増悪を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのベンラリツマブ。
以上、本発明を、明確に理解されることを目的に、説明と実施例により多少詳しく記載してきたが、添付の特許請求の範囲内で一定の変更と修正を加えることができることは明らかであろう。
本願は以下の態様も提供する。
[1]喘息の年間増悪率を低減する方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与が前記患者の憎悪率を低減する方法。
[2]喘息の治療方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する方法。
[3]喘息の治療方法であって、喘息患者に有効量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に予測値の少なくとも75%の努力肺活量(FEV
1
)を有する方法。
[4]喘息の治療方法であって、喘息患者にベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを少なくとも2回投与することを含む方法。
[5]前記投与は、前記患者の憎悪率を低減する[2]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記投与は、前記患者の憎悪率を低減する[5]に記載の方法。
[7]前記喘息は、好酸球性喘息である[1]または[3]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記患者は、少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する[1]または[3]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記患者は、前記投与前に予測値の少なくとも75%の努力肺活量(FEV
1
)を有する[1]、[2]または[4]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記患者は、前記投与前に少なくとも1.5の喘息コントロール質問票スコアを有する[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記患者にベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが少なくとも2回投与される[1]~[3]または[5]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記抗体またはその抗原結合フラグメント投与後に年間憎悪率を低減する[1]または[6]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]年間憎悪率が少なくとも35%低減される[1]または[6]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]年間憎悪率が少なくとも40%低減される[13]に記載の方法。
[15]年間憎悪率が少なくとも50%低減される[14]に記載の方法。
[16]年間憎悪率が少なくとも60%低減される[15]に記載の方法。
[17]前記患者は高用量の吸入コルチコステロイド薬(ICS)を使用する[1]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記患者は長時間作用性β2刺激薬(LABA)を使用する[1]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]前記患者は増悪歴を有する[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記増悪歴は、前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメント投与の前年に少なくとも2回の増悪を含む[19]に記載の方法。
[21]前記増悪歴は、前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメント投与の前年に6回以下の増悪を含む[19]または[20]に記載の方法。
[22]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約2mg~約100mg投与される[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約20mg投与される[22]に記載の方法。
[24]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約30mg投与される[23]に記載の方法。
[25]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、1回当たり約100mg投与される[24]に記載の方法。
[26]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週~12週毎に1回投与される[1]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される[26]に記載の方法。
[28]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、8週毎に1回投与される[26]に記載の方法。
[29]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される[26]に記載の方法。
[30]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、非経口的に投与される[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは皮下投与される[30]に記載の方法。
[32]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、コルチコステロイド療法に加えて投与される[1]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33]喘息の年間憎悪率を低減する方法であって、喘息患者に20~100mgのベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記患者が前記投与前に少なくとも300個/μlの血中好酸球数を有する方法。
[34]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを20mg投与することを含む[33]に記載の方法。
[35]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される[34]に記載の方法。
[36]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを30mg投与することを含む[33]に記載の方法。
[37]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、8週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される[36]に記載の方法。
[38]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される[36]に記載の方法。
[39]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを100mg投与することを含む[33]に記載の方法。
[40]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは、12週間は4週毎に1回、その後は8週毎に1回投与される[39]に記載の方法。
[41]喘息患者の喘息を治療する方法であって、前記患者に少なくとも2mg、100mg未満の用量のベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
[42]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは20mg投与される[41]に記載の方法。
[43]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントは30mg投与される[41]に記載の方法。
[44]少なくとも20mg、100mg未満の用量の前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが投与される[41]に記載の方法。
[45]少なくとも30mg、100mg未満の用量の前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントが投与される[41]に記載の方法。
[46]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントの投与が喘息の増悪率を減少させる[41]~[45]のいずれかに記載の方法。
[47]前記ベンラリツマブまたはその抗原結合フラグメントの投与が喘息の年間増悪率を減少させる[41]~[46]のいずれかに記載の方法。
[48]前記投与が皮下に行われる[41]~[47]のいずれかに記載の方法。