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特開2022-120459復旧計画策定装置、復旧計画策定方法、及び、復旧計画策定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120459
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】復旧計画策定装置、復旧計画策定方法、及び、復旧計画策定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20220810BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20220810BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017368
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小阪 尚子
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】越村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】村嶋 陽一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】災害発生時に想定された被害度のリアルタイム予測値と事前に想定していた被害度とのギャップを加味した復旧計画を策定可能な技術を提供する。
【解決手段】復旧計画策定装置11は、復旧対象施設又は復旧対象エリアである復旧対象において、所定の災害により発生する被害の被害度の発生確率密度を示す確率密度分布を復旧対象ごとに算出する確率密度分布算出部(算出部)113と、前記災害の発生時に前記災害を基に想定された各復旧対象での被害の被害度のリアルタイム予測値を受信し、前記被害度のリアルタイム予測値と前記確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に前記各復旧対象の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定する優先度算出部(設定部)114と、前記各復旧対象に前記復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示する優先度表示部(表示部)115と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
復旧対象施設又は復旧対象エリアである復旧対象において、所定の災害により発生する被害の被害度の発生確率密度を示す確率密度分布を復旧対象ごとに算出する算出部と、
前記災害の発生時に前記災害を基に想定された各復旧対象での被害の被害度のリアルタイム予測値を受信し、前記被害度のリアルタイム予測値と前記確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に前記各復旧対象の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定する設定部と、
前記各復旧対象に前記復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示する表示部と、
を備える復旧計画策定装置。
【請求項2】
前記被害は、津波による前記復旧対象での浸水であって、
前記算出部は、
前記復旧対象のすべり量とすべり角とに基づくシナリオモデルを用いて前記復旧対象での最大浸水深をシミュレーションし、前記最大浸水深に対してモンテカルロシミュレーションを適用することで前記復旧対象での最大浸水深の確率密度分布を算出する請求項1に記載の復旧計画策定装置。
【請求項3】
前記算出部は、
複数のすべり量と複数のすべり角とを基にシミュレーションした前記復旧対象での複数の最大浸水深を用いて、前記復旧対象での最大浸水深の確率密度分布を算出する請求項2に記載の復旧計画策定装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記複数の最大浸水深を次元圧縮することで生成した代理モデルを用いて、前記復旧対象での最大浸水深の確率密度分布を算出する請求項3に記載の復旧計画策定装置。
【請求項5】
復旧計画策定装置で行う復旧計画策定方法において、
復旧対象施設又は復旧対象エリアである復旧対象において、所定の災害により発生する被害の被害度の発生確率密度を示す確率密度分布を復旧対象ごとに算出するステップと、
前記災害の発生時に前記災害を基に想定された各復旧対象での被害の被害度のリアルタイム予測値を受信し、前記被害度のリアルタイム予測値と前記確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に前記各復旧対象の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定するステップと、
前記各復旧対象に前記復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示するステップと、
を行う復旧計画策定方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の復旧計画策定装置としてコンピュータを機能させる復旧計画策定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然災害などの危機事象の発生時において設備等が被害を受けた際に、各種被害予測情報に基づき迅速に復旧計画を策定する復旧計画策定装置、復旧計画策定方法、及び、復旧計画策定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然災害発生時に想定される被害を予測する技術が知られている。例えば、地震発生後の津波による設備等の最大浸水深を予測する技術がある。非特許文献1では、現実の地震の物理現象に近い予測モデルを用いて海岸エリア付近の浸水深を予測し、その予測値をリアルタイムに配信することで、これまで被害想定になかった避難エリアでの迅速な避難行動を可能にしている。非特許文献2、3では、最大津波高さの確率密度分布等を用いて津波によるハザードやリスクを確率論的に評価している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Akihiro Musa、外9名、“Real-time tsunami inundation forecast system for tsunami disaster prevention and mitigation”、J Supercomput (2018) 74、https://doi.org/10.1007/s11227-018-2363-0、2018年4月16日、p.3093-p.3113
【非特許文献2】小谷 拓磨、外7名、“応答曲面を用いた数値解析援用確率論的津波ハザード評価”、土木学会論文集A2(応用力学)、Vol.72、No.1、2016年、p.58-p.69
【非特許文献3】福谷 陽、外3名、“応答曲面法を用いた確率論的津波損害評価-相模トラフ地震への適用-”、土木学会論文集B2(海岸工学)、Vol.74、No.2、2018年、p.I_463-p.I_468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1-3より、地震や津波などの災害発生時に当該災害を基に想定される被害度のリアルタイム予測値を算出可能である。しかしながら、当該被害度のリアルタイム予測値の通りに実際の被害が生じるとは言い難い。また、非特許文献1-3には、当該実際の被害に関する情報を災害発生時に復旧計画に反映する手順が確立されていない。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、災害発生時に想定された被害度のリアルタイム予測値と事前に想定していた被害度とのギャップを加味した復旧計画を策定可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の復旧計画策定装置は、復旧対象施設又は復旧対象エリアである復旧対象において、所定の災害により発生する被害の被害度の発生確率密度を示す確率密度分布を復旧対象ごとに算出する算出部と、前記災害の発生時に前記災害を基に想定された各復旧対象での被害の被害度のリアルタイム予測値を受信し、前記被害度のリアルタイム予測値と前記確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に前記各復旧対象の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定する設定部と、前記各復旧対象に前記復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示する表示部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様の復旧計画策定方法は、復旧対象施設又は復旧対象エリアである復旧対象において、所定の災害により発生する被害の被害度の発生確率密度を示す確率密度分布を復旧対象ごとに算出するステップと、前記災害の発生時に前記災害を基に想定された各復旧対象での被害の被害度のリアルタイム予測値を受信し、前記被害度のリアルタイム予測値と前記確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に前記各復旧対象の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定するステップと、前記各復旧対象に前記復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示するステップと、を行う。
【0008】
本発明の一態様の復旧計画策定プログラムは、上記復旧計画策定装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、災害発生時に想定された被害度のリアルタイム予測値と事前に想定していた被害度とのギャップを加味した復旧計画を策定可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、復旧計画策定システムの全体構成を示す図である。
図2A図2Aは、復旧計画策定装置の処理シーケンスを示す図である。
図2B図2Bは、復旧計画策定装置の処理シーケンスを示す図である。
図3図3は、確率密度分布の生成手順を示す図である。
図4図4は、業務計画(チェックリスト)の設定例を示す図である。
図5図5は、タスクの設定例を示す図である。
図6図6は、優先度の算出手順を示す図である。
図7図7は、優先度の算出方法を示す図である。
図8図8は、復旧計画策定装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0012】
[発明の概要]
災害発生時に当該災害を基に想定される被害度のリアルタイム予測値を算出可能である。しかしながら、当該被害度のリアルタイム予測値に絶対的にぶれがないとは言い難い。また、実際の被害に関する情報を災害発生時に復旧計画に反映する手順が確立されていない。
【0013】
それ故、災害発生時に想定される被害と実際の被害とではギャップがあることを前提に事前対策を設定し、事前の訓練時にも同様にギャップがあるという訓練を実施する必要がある。また、当該ギャップにより生じた事前対策の計画変更を次の活動サイクルの復旧計画に反映する必要がある。特に、当該ギャップが大きくなった場合には、限られた人的リソースを配分する優先度を決める必要がある。
【0014】
そこで、本発明は、災害発生時に想定される被害度のリアルタイム予測値を決定論的に活用するのではなく、当該被害度のリアルタイム予測値が当初の想定からずれる度合いを加味して、当該被害度のリアルタイム予測値を確率論的に活用する。
【0015】
つまり、本発明では、復旧対象ごとに、災害発生後にリアルタイムに得られる被害度のリアルタイムの予測値と事前に想定したモデルから得られる被害度とを比較し、事前想定した被害度に対する確率密度をリアルタイムの予測値と事前の想定値(真値)との差分の区間で積算し、積算値が大きい順に復旧対象の優先度を設定する。
【0016】
これにより、災害発生時に想定される被害と実際の被害とのギャップを加味した復旧計画を策定可能となり、実際の災害発生時にも同様の方法により復旧計画策定を支援可能となる。また、事前の想定と異なる被害が発生した場合であっても、優先度に基づいた復旧計画の手順を提示できる。更に、事前の被害予測と異なる被害が発生しても落ち着いて対応できるようになり、想定されるリアルタイム予測値とギャップがあった場合にもリソース配分の優先度に基づいた手順に則り、迅速で的確な復旧計画の策定が可能となり、少ない人的リソースを効率的に配分できるという効果がある。
【0017】
以降、本実施形態では、災害の例として地震による津波を用いる。被害の例として津波による復旧対象での浸水を用いる。復旧対象の例として重要施設を用いる。その他、地震による建物の損壊度、亀裂幅、亀裂長等にも適用可能である。また、指定設備、指定施設、重要エリア、指定エリア等にも適用可能である。
【0018】
[復旧計画策定システム]
図1は、本実施形態に係る復旧計画策定システム1の全体構成を示す図である。復旧計画策定システム1は、復旧計画策定装置11と、複数のクライアント端末12と、リアルタイム津波浸水深予測システム13と、を備える。復旧計画策定装置11、複数のクライアント端末12、及び、リアルタイム津波浸水深予測システム13は、通信ネットワーク14を介して相互通信可能である。
【0019】
[クライアント端末12について]
クライアント端末12は、重要施設の復旧計画を作成し、復旧業務を実行するユーザ(業務指示者、業務遂行者)が使用するコンピュータ端末である。クライアント端末12は、パソコン、スマートフォン端末、タブレット端末等である。
【0020】
[リアルタイム津波浸水深予測システム13について]
リアルタイム津波浸水深予測システム13は、地震発生時に想定される重要施設での津波浸水深のリアルタイム予測値を算出する既存システムである。リアルタイム津波浸水深予測システム13は、例えば、関東沖合を震源地とする地震が発生した場合、当該地震による重要施設Aでの津波浸水深のリアルタイム予測値として50cmを算出し、重要施設Bでの津波浸水深のリアルタイム予測値として1mを算出する。
【0021】
[復旧計画策定装置11の機能]
復旧計画策定装置11は、図1に示したように、業務計画管理部111と、タスク管理部112と、確率密度分布算出部113と、優先度算出部114と、優先度表示部115と、業務計画情報記憶部116と、タスク情報記憶部117と、確率密度分布情報記憶部118と、優先度情報記憶部119と、重要設備情報記憶部120と、を備える。
【0022】
業務計画管理部111は、事前に設定された業務計画(チェックリスト)を業務計画情報記憶部116に格納する機能を備える。業務計画管理部111は、業務計画情報記憶部116から業務計画を読み出し、当該業務計画に設定された各行の実施項目に紐付くタスクを起票し、当該タスクの進捗状況に基づき実施項目の完了状態を更新することで、当該業務計画の進捗を管理する機能を備える。
【0023】
タスク管理部112は、業務指示者が指定したタスクを起票し、当該タスクに付与されたフラグ(対応状態、優先度、期日など)に基づき当該タスクの優先度や進捗状況を管理する機能を備える。タスク管理部112は、当該タスクをタスク情報記憶部117に格納し、業務指示者と業務遂行者との間で交わされたメッセージのスレッドを当該タスクに関連付けてタスク情報記憶部117に格納する機能を備える。
【0024】
確率密度分布算出部(算出部)113は、重要施設のすべり量とすべり角とに基づくシナリオモデルを用いて、当該重要施設での最大浸水深をシミュレーションする機能を備える。確率密度分布算出部113は、複数のすべり量と複数のすべり角とを基にシミュレーションした複数の最大浸水深を次元圧縮することで代理モデルを生成する機能を備える。確率密度分布算出部113は、当該代理モデルに対してモンテカルロシミュレーションを適用することで、上記重要施設で発生する最大浸水深の確率密度分布(各最大浸水深の発生確率を示す確率密度分布)を重要施設ごとに算出する機能を備える。確率密度分布算出部113は、当該最大浸水深の確率密度分布データを確率密度分布情報記憶部118に格納する機能を備える。
【0025】
優先度算出部(設定部)114は、リアルタイム津波浸水深予測システム13から津波発生時に当該津波を基に想定された重要施設での最大浸水深のリアルタイム予測値を受信する機能を備える。優先度算出部114は、確率密度分布情報記憶部118から最大浸水深の確率密度分布データを読み出し、リアルタイム津波浸水深予測システム13からの最大浸水深のリアルタイム予測値と当該読み出した確率密度分布の最大浸水深の真値との差分区間の確率密度を積算することで、リアルタイム予測値の揺らぎの大きさ(真値からのずれ)を算出する機能を備える。優先度算出部114は、積算値が大きい順に各重要施設の復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定し、当該各重要施設の復旧計画変更の優先度情報を優先度情報記憶部119に格納する機能を備える。
【0026】
優先度表示部(表示部)115は、重要設備情報記憶部120から事前設定された各重要施設の復旧計画の優先度情報を読み出し、優先度のレベル分けに応じて各重要施設の優先度を色分け表示、又は、上位から所定件数(例えば10件ずつ)に応じてレベル分けして画面に表示する機能を備える。優先度表示部115は、優先度情報記憶部119から各重要施設の復旧計画変更の優先度情報を読み出し、各重要施設に当該復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示する機能を備える。
【0027】
[復旧計画策定装置11の動作]
図2A図2Bは、復旧計画策定装置11の処理シーケンスを示す図である。
【0028】
ステップS1;
まず、確率密度分布算出部113は、比較的頻度の高い津波(一般にレベル1やレベルIと称される津波)を初期値として想定し、重要施設Aでの複数のすべり量と複数のすべり角との複数パターンのシナリオについて当該重要施設Aでの最大浸水深をシミュレーションでそれぞれ求め、その次元を圧縮して1つの代理モデルを生成する。確率密度分布算出部113は、重要施設B~Dに係る各代理モデルも生成する。
【0029】
例えば、確率密度分布算出部113は、5パターンのすべり量と5パターンのすべり角との合計25パターンのシナリオモデルについて重要施設Aでの最大浸水深をそれぞれシミュレーションし、固有直交分解法を用いて当該25パターンの最大浸水深のシミュレーション値の次元圧縮を行い1つの代理モデルを生成する(図3(a),(b)参照)。
【0030】
ステップS2;
次に、確率密度分布算出部113は、上記各代理モデルに対してモンテカルロシミュレーションをそれぞれ適用することで、各重要施設A~Dでの最大浸水深の確率密度分布をそれぞれ算出する(図3(c)参照)。その後、確率密度分布算出部113は、当該各重要施設A~Dでの最大浸水深の確率密度分布データを確率密度分布情報記憶部118に格納する。
【0031】
最大浸水深の確率密度分布とは、最大浸水深値(例えば、10cm、20cm、…)を横軸とし、各最大浸水深値の浸水がそれぞれ発生する確率密度を縦軸とした分布グラフである。最大浸水深の確率密度分布は、非特許文献2,3、「外里健太、外6名、“数値解析結果の空間モード解析による津波のリスク評価”、Transactions of JSCES, Paper No.20200003」、「T.Kotani、外9名、“Probabilistic tsunami hazard assessment with simulation-based response surfaces”、Coastal Engineering 160 (2020) 103719、2020年5月20日」より算出可能である。
【0032】
ステップS3;
地震発生後、業務計画管理部111は、地震発生時に対応すべき段階ごとにユーザが設定した業務計画(チェックリスト)を管理する。
【0033】
例えば、業務計画管理部111は、図4に示すように、No.、完了状態、ToDoリスト、対応組織、完了タスク、備考、タスク等からなる実施項目を行ごとにチェックリスト形式で管理する。1行の実施項目から1つ又は複数のタスクを作成可能であり、完了タスクの列でタスク状態の内訳が示される。実施項目内のタスクが全て完了すれば、当該実施項目のタスク状態を完了とする。各種災害の様々な状況に柔軟に対応するため、実施項目は手動で設定可能である。
【0034】
地震発生直後は、事前設定された各重要施設A-Dの復旧優先度に基づき、自組織の職員の安全確保を図りつつ初動を開始する。但し、文面で記載された実施事項がどの地域のどの施設に該当するのかを示せないと実行性が低くなり、また、各地域の地質や重要施設の設置位置等の状況に応じて事前設定された復旧優先度と本来の優先度は異なるため、以降では地域・重要施設に即した復旧計画を示す。
【0035】
ステップS4,S5;
次に、業務計画管理部111は、チェックリスト内で業務指示者が指定したタスクをチェックリスト内の実施項目に関連付けて起票し、タスク管理部112は、当該タスクに付与されたフラグ(対応状態、優先度、期日等)に基づき当該タスクの優先度や進捗状況を管理する。
【0036】
例えば、タスク管理部112は、図5に示すように、タスクID、優先度、状態、完了予定、タスク名、関連タスク、起票日時、送信元、送信先、連絡内容、位置情報、添付、操作等といった項目を管理する。各項目には、危機対応に係わる命令・指示、報告等が登録される。
【0037】
フラグの優先度は、例えば、緊急かつ重要、重要、緊急、通常の4段階を設定できる。フラグの対応状態は、例えば、未対応、対応中、完了、周知の4段階を設定できる。フラグの対応状態、優先度、期日等は、タスクの状態により適宜変更可能である。更に、タスクの位置情報により、地図上にタスクをプロット可能である。タスク起票後に当該タスクに対して報告等のメッセージがユーザ間で交わされた場合、タスク管理部112は、当該メッセージをスレッドとして当該タスクに紐付けて管理し、タスク情報記憶部117に格納する。
【0038】
ステップS6;
次に、タスク管理部112は、リアルタイム津波浸水深予測システム13から発生した地震による津波を基に想定された各重要施設A~Dでの最大浸水深のリアルタイム予測値を受信すると、リアルタイム予測結果通知用のタスクを起票し、当該各重要施設A~Dにおける復旧優先度の算出処理を優先度算出部114に要求する。
【0039】
ステップS7;
次に、優先度算出部114は、リアルタイム津波浸水深予測システム13から受信した各重要施設A~Dでの最大浸水深のリアルタイム予測値と、ステップS1,S2で所定のシナリオモデルに基づき算出していた各重要施設A~Dでの最大浸水深の確率密度分布の真値と、の差分を算出し、当該差分の大きい順に各重要施設A~Dの復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定する(図6参照)。
【0040】
具体的には、優先度算出部114は、確率密度分布情報記憶部118から各重要施設A~Dでの最大浸水深の確率密度分布を読み出し、重要施設A~Dごとに最大浸水深のリアルタイム予測値と確率密度分布の最大浸水深の真値(確率密度が最大である最大浸水深)との差分区間の確率密度を積算(積分)する(図7(a),(b)参照)。
【0041】
ステップS8;
次に、優先度表示部115は、各重要施設A~Dの対応計画変更の優先度に関する優先度情報を画面に表示する(図7(c)参照)。例えば、優先度が最も高い重要施設や当該重要施設を含むエリア上に赤色ドットを描画し、優先度が最高であることを示す文字を表示する。
【0042】
真値からのずれが正の方向であれば、事前想定よりもリアルタイム予測値が上回っている。一方、真値からのずれが負の方向であれば、事前想定よりもリアルタイム予測値が下回っている。そこで、基本的には、真値から上振れした箇所について、対応計画変更の優先度レベルを、(1)想定値(真値)を基に各重要施設をグループ分けした後に、確率密度分布の積算順に色分けする方法、(2)想定値からのずれが同じ重要施設に対して、確率密度分布の積算順に色分けする方法、(3)想定値からのずれがある重要施設を全対象として、確率密度分布の積算順に色分けする方法、(4)重要施設の種類ごとに上記(1)~(3)のいずれかの方法で色分けする方法、のうちいずれかの方法で設定する。
【0043】
その後、ユーザは、優先度表示された箇所を確認し、段階に応じてパトロールや復旧指示を当該箇所に指定して、タスク起票により指示を発出する。
【0044】
ステップS9,S10;
次に、タスク管理部112は、各重要施設A~Dの対応計画変更の優先度をタスクに設定し、当該タスクの進捗を管理する。例えば、タスク管理部112は、事前設定されていた重要施設Aの復旧優先度を、ステップS7で設定された対応計画変更の優先度に変更する。
【0045】
ステップS11;
次に、業務計画管理部111は、当該タスクの進捗状況に応じて、当該タスクに関連するチェックリスト内の実施項目の進捗を管理する。例えば、業務計画管理部111は、重要施設の復旧処理が完了した場合、当該処理を実施した業務遂行者によるタスク状態の設定変更を基に、実施項目内の完了タスクのタスク状態を完了とする。
【0046】
以降、チェックリスト内の次行に他の実施項目がある場合、ステップS4に戻る。
【0047】
[変形例1]
ステップS1において、確率密度分布算出部113は、レベル1の津波に代えて、最大クラスの津波(一般にレベル2やレベルIIと称される津波)を想定した代理モデルを生成してもよい。
【0048】
[変形例2]
ステップS1において、確率密度分布算出部113は、処理時間を削減するために代理モデルを生成したが、メモリ等の計算リソースが潤沢にある場合には代理モデルを生成しないようにしてもよい。
【0049】
[変形例3]
代理モデルを生成しない場合、確率密度分布算出部113は、複数パターンのシナリオモデルに対応する複数の最大浸水深に対してそれぞれモンテカルロシミュレーションを適用することになり、計算時間が長くなる可能性がある。そこで、この場合には、確率密度分布算出部113は、複数パターンのうち重要度の高いパターンやより重要度の高い重要施設のみを選定してモンテカルロシミュレーションを適用してもよい。
【0050】
[効果]
以上より、本実施形態によれば、復旧計画策定装置11において、確率密度分布算出部113が、所定のシナリオモデルに基づき各重要施設A-Dでの最大浸水深の確率密度分布をそれぞれ算出し、優先度算出部114が、津波を基に想定された各重要施設A-Dでの最大浸水深のリアルタイム予測値と当該各重要施設A-Dでの確率密度分布の被害度の真値との差分区間の確率密度を積算し、積算値が大きい順に各重要施設A-Dの復旧計画変更の優先度をそれぞれ設定し、優先度表示部115が、各重要施設A-Dに当該復旧計画変更の優先度をそれぞれ関連付けて画面に表示するので、災害発生時に想定された被害度のリアルタイム予測値と事前に想定していた被害度とのギャップを加味した復旧計画を策定可能な技術を提供できる。
【0051】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。本実施形態に係る復旧計画策定装置11は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0052】
例えば、本実施形態に係る復旧計画策定装置11は、図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)901と、メモリ902と、ストレージ(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、復旧計画策定装置11の各機能が実現される。
【0053】
復旧計画策定装置11は、1つのコンピュータで実装されてもよい。復旧計画策定装置11は、複数のコンピュータで実装されてもよい。復旧計画策定装置11は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。復旧計画策定装置11用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。復旧計画策定装置11用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…復旧計画策定システム
11…復旧計画策定装置
12…クライアント端末
13…リアルタイム津波浸水深予測システム
14…通信ネットワーク
111…業務計画管理部
112…タスク管理部
113…確率密度分布算出部
114…優先度算出部
115…優先度表示部
116…業務計画情報記憶部
117…タスク情報記憶部
118…確率密度分布情報記憶部
119…優先度情報記憶部
120…重要設備情報記憶部
901…CPU
902…メモリ
903…ストレージ
904…通信装置
905…入力装置
906…出力装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8