(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121030
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果デバイス及び周波数変換器
(51)【国際特許分類】
H01L 43/08 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
H01L43/08 U
H01L43/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018157
(22)【出願日】2021-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】出川 直通
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AA20
5F092AB10
5F092AC05
5F092AC08
5F092AC12
5F092AC14
5F092AD23
5F092AD24
5F092BB10
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB30
5F092BB31
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC12
5F092BC13
5F092DA01
(57)【要約】
【課題】光を利用した新たな磁気抵抗効果デバイス及び周波数変換器を提供する。
【解決手段】この磁気抵抗効果デバイスは、磁気抵抗効果素子を有し、高周波電流が前記磁気抵抗効果素子を流れ、高周波信号を含む光強度変化する光が前記磁気抵抗効果素子に照射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果素子を有し、
高周波電流が前記磁気抵抗効果素子を流れ、高周波信号を含む光強度変化する光が前記磁気抵抗効果素子に照射される、磁気抵抗効果デバイス。
【請求項2】
前記磁気抵抗効果素子を複数有し、
前記磁気抵抗効果素子のうち第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とには、同一の前記光が照射され、
前記第1磁気抵抗効果素子を流れる高周波電流と前記第2磁気抵抗効果素子を流れる高周波電流とは、周波数が異なる、請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果素子を複数有し、
前記磁気抵抗効果素子のうち第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とには、同一の周波数の高周波電流が流れ、
前記第1磁気抵抗効果素子に照射される前記光と前記第2磁気抵抗効果素子に照射される前記光とは、波長が異なる、請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイスを用いた周波数変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果デバイス及び周波数変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会に伴い、GHzの高周波帯域の高周波部品に注目が集まっている。新しい高周波部品に応用できる可能性のある分野として研究されているのがスピントロニクスである。
【0003】
例えば、特許文献1には、高周波電流及び高周波磁場を利用した混合器が記載されている。特許文献1に記載の混合器は、2つの高周波信号を乗算して乗算信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミリ波等で送受信した信号の周波数を処理しやすい周波数に変換することが行われている。当該処理は、周波数変換器で行われる。情報通信技術の発展に伴い、新たな周波数変換器の開発が求められている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、光を利用した新たな磁気抵抗効果デバイス及び周波数変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様にかかる磁気抵抗効果デバイスは、磁気抵抗効果素子を有し、高周波電流が前記磁気抵抗効果素子を流れ、高周波信号を含む光強度変化する光が前記磁気抵抗効果素子に照射される。
【0009】
(2)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスは、前記磁気抵抗効果素子を複数有し、前記磁気抵抗効果素子のうち第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とには、同一の前記光が照射され、前記第1磁気抵抗効果素子を流れる高周波電流と前記第2磁気抵抗効果素子を流れる高周波電流とは、周波数が異なってもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスは、前記磁気抵抗効果素子を複数有し、前記磁気抵抗効果素子のうち第1磁気抵抗効果素子と第2磁気抵抗効果素子とには、同一の周波数の高周波電流が流れ、前記第1磁気抵抗効果素子に照射される前記光と前記第2磁気抵抗効果素子に照射される前記光とは、波長が異なってもよい。
【発明の効果】
【0011】
この磁気抵抗効果デバイス及び周波数変換器は、光を利用した新たな素子である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイスの回路構成を模式的に示す図である。
【
図2】第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子の抵抗変化の第1メカニズムを説明するための図である。
【
図4】第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子の抵抗変化の第2メカニズムを説明するための図である。
【
図5】第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイスの回路構成を模式的に示す図である。
【
図6】第3実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイスの回路構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
「第1実施形態」
(磁気抵抗効果デバイス)
図1は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100の回路構成を示す図である。磁気抵抗効果デバイス100は、磁気抵抗効果素子10を備える。磁気抵抗効果素子10には、高周波電流I
Rが流れ、光Lが照射される。図に示す高周波電流I
Rの矢印は、電流の正の向きを表している。
【0015】
本明細書における光Lは、可視光線に限らず、可視光線よりも波長の長い赤外線や、可視光線よりも波長の短い紫外線も含む。可視光線の波長は例えば、380nm以上800nm未満である。赤外線の波長は例えば、800nm以上1mm以下である。紫外線の波長は例えば、200nm以上380nm未満である。光Lは、高周波信号を含み、光強度が変化する。高周波信号は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。
【0016】
図1に示す磁気抵抗効果デバイス100は、その他に、入力ポートp1と出力ポートp2と基準電位端子pr1とコンデンサCとフィルタFと信号線路SL1~SL3とを有する。
【0017】
図1において、信号線路SL1は、入力ポートp1と磁気抵抗効果素子10とを接続する。信号線路SL2は、磁気抵抗効果素子10と出力ポートp2とを接続する。信号線路SL3は、信号線路SL2と基準電位端子pr1とを接続する。コンデンサCは、例えば、信号線路SL3にある。フィルタFは、例えば、信号線路SL2にある。
【0018】
<磁気抵抗効果素子>
図2は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の断面図である。
図2では、第1電極E1及び第2電極E2を同時に図示し、強磁性体の初期状態における磁化の向きを矢印で表している。磁気抵抗効果素子10は、照射される光Lの状態が変化すると、光Lの状態の変化に応じて積層方向の抵抗値が変化する。積層方向は、磁気抵抗効果素子10の積層方向であり、以下z方向と称する。またz方向と直交する一方向をx方向、x方向及びz方向と直交する方向をy方向と称する。
【0019】
磁気抵抗効果素子10は、少なくとも第1強磁性層1と第2強磁性層2とスペーサ層3とを有する。スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に位置する。磁気抵抗効果素子10は、これらの他に、第3強磁性層4、磁気結合層5、下地層6、垂直磁化誘起層7、キャップ層8、側壁絶縁層9を有してもよい。
【0020】
磁気抵抗効果素子10は、外部からの光が照射されると抵抗値が変化する光検知素子である。磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性層1の磁化M1の状態と第2強磁性層2の磁化M2の状態との相対的な変化に応じて、z方向の抵抗値(z方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する。
【0021】
第1強磁性層1は、外部から光が照射されると磁化の状態が変化する光検知層である。第1強磁性層1は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が変化する磁性体を含む層である。所定の外部からのエネルギーは、例えば、外部から照射される光、磁気抵抗効果素子10の積層方向に流れる電流、外部磁場である。第1強磁性層1の磁化M1は、照射される光の強度に応じて状態が変わる。
【0022】
第1強磁性層1は、強磁性体を含む。第1強磁性層1は、例えば、Co、FeまたはNi等の磁性元素のいずれかを少なくとも含む。第1強磁性層1は、上述のような磁性元素と共に、B、Mg、Hf、Gd等の非磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層1は、例えば、磁性元素と非磁性元素とを含む合金でもよい。第1強磁性層1は、複数の層から構成されていてもよい。第1強磁性層1は、例えば、CoFeB合金、CoFeB合金層をFe層で挟んだ積層体、CoFeB合金層をCoFe層で挟んだ積層体である。
【0023】
第1強磁性層1は、膜面内方向(xy面内のいずれかの方向)に磁化容易軸を有する面内磁化膜でも、膜面直方向(z方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜でもよい。
【0024】
第1強磁性層1の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。第1強磁性層1の膜厚は、例えば、1nm以上2nm以下であることが好ましい。第1強磁性層1が垂直磁化膜の場合、第1強磁性層1の膜厚が薄いと、第1強磁性層1の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が強まり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が高まる。つまり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が高いと、磁化M1がz方向に配向しようとする力が強まる。一方、第1強磁性層1の膜厚が厚いと、第1強磁性層1の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が相対的に弱まり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が弱まる。
【0025】
第1強磁性層1の膜厚が薄くなると強磁性体としての体積は小さくなり、厚くなると強磁性体としての体積は大きくなる。外部からのエネルギーが加わったときの第1強磁性層1の磁化の反応しやすさは、第1強磁性層1の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)に反比例する。つまり、第1強磁性層1の磁気異方性と体積との積が小さくなると、光に対する反応性が高まる。このような観点から、光に対する反応を高めるためには、第1強磁性層1の磁気異方性を適切に設計したうえで第1強磁性層1の体積を小さくすることが好ましい。
【0026】
第1強磁性層1の膜厚が2nmより厚い場合は、例えばMo,Wからなる挿入層を第1強磁性層1内に設けてもよい。すなわち、z方向に強磁性層、挿入層、強磁性層が順に積層された積層体を第1強磁性層1としてもよい。挿入層と強磁性層との界面における界面磁気異方性により第1強磁性層1全体の垂直磁気異方性が高まる。挿入層の膜厚は、例えば、0.1nm~0.6nmである。
【0027】
第2強磁性層2は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい。また、例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の大きさが磁化自由層よりも変化しにくい。第2強磁性層2の保磁力は、例えば、第1強磁性層1の保磁力よりも大きい。第2強磁性層2は、例えば第1強磁性層1と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層2は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
【0028】
第2強磁性層2を構成する材料は、例えば、第1強磁性層1と同様である。第2強磁性層2は、例えば、0.4nm~1.0nmの厚みのCo、0.1nm~0.5nmの厚みのMo、0.3nm~1.0nmの厚みのCoFeB合金、0.3nm~1.0nmの厚みのFeが順に積層された積層体でもよい。
【0029】
第2強磁性層2の磁化は、例えば、磁気結合層5を介した第3強磁性層4との磁気結合によって固定してもよい。この場合、第2強磁性層2、磁気結合層5及び第3強磁性層4を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
【0030】
第3強磁性層4は、例えば、第2強磁性層2と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層4を構成する材料は、例えば、第1強磁性層1と同様である。第3強磁性層4は、例えば、CoとPtとが交互に積層された積層膜、CoとNiとが交互に積層された積層膜である。磁気結合層5は、例えば、Ru、Ir等である。磁気結合層5の膜厚は、例えば、RKKY相互作用によって第2強磁性層2と第3強磁性層4とが反強磁性的に結合する膜厚である。
【0031】
スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に配置される非磁性層である。スペーサ層3は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層3の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2の配向方向に応じて調整できる。
【0032】
例えば、スペーサ層3が絶縁体からなる場合は、磁気抵抗効果素子10はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果素子となり、スペーサ層3が金属からなる場合は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果素子となる。
【0033】
スペーサ層3が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化ケイ素等を含む材料を用いることができる。また、これら絶縁材料に、Al、B、Si、Mgなどの元素や、Co、Fe、Niなどの磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層3の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、1.0~2.5nm程度としてもよい。
【0034】
スペーサ層3を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、2.0~3.0nm程度としてもよい。
【0035】
スペーサ層3を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層3の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
【0036】
スペーサ層3として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、Cu、Au、Alなどの非磁性の導体によって構成される通電点を含む構造としてもよい。また、Co、Fe、Niなどの磁性元素によって導体を構成してもよい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、1.0~2.5nm程度としてもよい。通電点は、例えば、膜面に垂直な方向からみたときの直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。
【0037】
図2に示す下地層6は、例えば、第2電極E2上にある。下地層6は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
【0038】
垂直磁化誘起層7は、第1強磁性層1が垂直磁化膜の場合に形成される。垂直磁化誘起層7は、第1強磁性層1上に積層される。垂直磁化誘起層7は、第1強磁性層1の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層7は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層7が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層7の膜厚は、例えば、0.5nm以上2.0nm以下である。
【0039】
キャップ層8は、第1強磁性層1と第1電極E1との間にある。キャップ層8は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層8の膜厚は、第1強磁性層1に十分な光が照射されるように、例えば3nm以下である。
【0040】
側壁絶縁層9は、第1強磁性層1及び第2強磁性層2を含む積層体の周囲を覆う。側壁絶縁層9は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。側壁絶縁層9は、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、炭化ケイ素(SiC)、窒化クロム、炭窒化ケイ素(SiCN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)等である。
【0041】
図2では磁気抵抗効果素子10の一例を示したが、磁気抵抗効果素子は光の照射により磁化が変化する強磁性体を有し、磁化の変化に伴い抵抗値が変化するものであればよい。磁気抵抗効果素子には、例えば、上述のトンネル磁気抵抗効果素子又は巨大磁気抵抗効果素子のほか、異方性磁気抵抗(AMR:Anisotronipic Magnetoresistance)効果素子、超巨大磁気抵抗(CMR:Colossal Magnetoresistance)効果素子等を用いることができる。
【0042】
第1電極E1は、例えば、磁気抵抗効果素子10に照射される光の波長域に対して透過性を有する。第1電極E1は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を含む透明電極である。第1電極E1は、こられの透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。この場合、第1電極E1の膜厚は、例えば10nm~300nmである。
【0043】
第1電極E1として上記のような透明電極材料を用いることは必須ではなく、Au、CuまたはAlなどの金属材料を薄い膜厚で用いることで、外部からの光を第1強磁性層1に到達させるようにしてもよい。第1電極E1の材料として金属を用いる場合、第1電極E1の膜厚は、例えば、3~10nmである。特にAuは、青色近辺の波長の光の透過率が他の金属材料よりも高い。また第1電極E1は、光が照射される照射面に反射防止膜を有してもよい。
【0044】
第2電極E2は、導電性を有する材料からなる。第2電極E2は、例えば、Cu、AlまたはAuなどの金属により構成される。これらの金属の上下にTaやTiを積層してもよい。また、CuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜を用いてもよい。また、第2電極E2として、TiNやTaNを用いてもよい。第2電極E2の膜厚は、例えば200nm~800nmである。
【0045】
第2電極E2は、磁気抵抗効果素子10に照射される光に対して透過性を有するようにしてもよい。第2電極E2の材料として、第1電極E1と同様に、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を用いてもよい。第1電極E1のほうから光が照射される場合においても、光の強度によっては光が第2電極E2まで到達する場合もありうるが、この場合、第2電極E2が酸化物の透明電極材料を含んで構成されていることで、第2電極E2が金属で構成されている場合に比べて、第2電極E2とそれに接する層との界面における光の反射を抑制できる。
【0046】
<入力ポート>
入力ポートp1は、磁気抵抗効果デバイス100の入力端子である。入力ポートp1には、例えば、交流信号源、アンテナ等が接続される。アンテナが磁気抵抗効果デバイスの一部として磁気抵抗効果デバイスと一体化している場合は、アンテナが第1入力ポートとなる。
【0047】
入力ポートp1には高周波信号S1が入力される。高周波信号S1は、信号線路SL1を介して、高周波電流IRとして磁気抵抗効果素子10に印加される。高周波電流IRは、磁気抵抗効果素子10を流れる。高周波信号S2の周波数は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。高周波電流IRの周波数は、高周波信号S1の周波数と一致する。
【0048】
<出力ポート>
出力ポートp2は、磁気抵抗効果デバイス100の出力端子である。出力ポートp2には、例えば、出力された信号を処理する信号処理装置、電圧をモニターする例えば電圧計、電流をモニターする電流計又は外部に高周波信号を出力するアンテナ等が接続される。出力ポートp2は、信号線路SL2及びフィルタFを介して磁気抵抗効果素子10に接続されている。出力ポートp2からは、磁気抵抗効果素子10からの出力に起因する信号が出力される。
【0049】
<基準電位端子>
基準電位端子pr1は基準電位に接続され、磁気抵抗効果デバイス100の基準電位を決める。基準電位端子pr1は、信号線路SL3に接続されている。
図1における基準電位は、グラウンドGである。グラウンドGは磁気抵抗効果デバイス100の外部に設けられてもよい。基準電位は、グラウンドG以外でもよい。
【0050】
<コンデンサ>
コンデンサCは、信号の高周波成分を通し、信号の不変成分をカットする。コンデンサCは直流信号の流れを抑制したい部分に配置する。
図1におけるコンデンサCは、信号線路SL3にある。コンデンサCは、信号線路SL2の信号線路SL3との分岐点より入力ポートp1側にあってもよい。コンデンサCには、公知のものを用いることができる。
【0051】
<フィルタF>
フィルタFは、磁気抵抗効果素子10と出力ポートp2との間にある。フィルタFは、例えば、信号線路SL2にある。フィルタFは、特定の周波数の信号をカットし、特定の周波数の信号のみを通過させる。フィルタFは、例えば、インダクタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタである。インダクタは、例えば、チップインダクタ、パターン線路によるインダクタ、インダクタ成分を有する抵抗素子等でもよい。インダクタのインダクタンスは、例えば10nH以上としてもよい。出力ポートp2に接続される電圧計または電流計が、フィルタ機能を有する場合、フィルタFは無くてもよい。
【0052】
<信号線路>
信号線路SL1~SL3は、磁気抵抗効果デバイス100の構成要素と端子との間又は構成要素間を接続する。信号線路SL1~SL3の形状は、マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に規定してもよい。マイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型に設計する場合、信号線路SL1~SL5の特性インピーダンスと、回路系のインピーダンスとが等しくなるように、線路幅やグラウンド間距離を設計してもよい。このように設計することによって信号線路SL1~SL3の伝送損失を抑えることができる。
【0053】
(磁気抵抗効果デバイスの用途及び動作)
磁気抵抗効果デバイス100は、例えば、周波数変換器として用いることができる。
【0054】
磁気抵抗効果素子10の抵抗値は、第1強磁性層1に光Lが照射されることにより変化する。光Lは、例えば、図示略の光照射部から照射される。光照射部は、光源から伝搬した光Lが出射する部分である。光Lは高周波信号を含む。そのため、光Lの強度は、高周波信号に応じて変化する。光Lの強度は、例えば、第1強度と第2強度との間で変化する。第2強度の光の強度は、第1強度の光の強度より大きいものとする。第1強度は、第1強磁性層1に照射される光の強度がゼロの場合でもよい。
【0055】
図3及び
図4は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子10の第1強磁性層1に光Lが照射された際の磁化M1,M2の状態の変化を示す図である。
図3は、第1メカニズムを説明するための図であり、
図4は、第2メカニズムを説明するための図である。
図3及び
図4の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層1に照射される光の強度であり、横軸が時間である。
図3及び
図4の下のグラフは、縦軸が磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0056】
まず第1強磁性層1に第1強度の光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2とは平行の関係にあり、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は第1抵抗値R1を示す。
【0057】
次いで、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化する。第2強度は、第1強度より大きく、第1強磁性層1の磁化M1は初期状態から変化する。第1強磁性層1に光が照射されていない状態における第1強磁性層1の磁化M1の状態と、第2強度における第1強磁性層1の磁化M1の状態とは異なる。磁化M1の状態とは、例えば、z方向に対する傾き角、大きさ等である。
【0058】
例えば、
図3に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1はz方向に対して傾く。また例えば、
図4に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1の大きさが小さくなる。例えば、第1強磁性層1の磁化M1が光の照射強度によってz方向に対して傾く場合、その傾き角度は、0°より大きく90°より小さい。
【0059】
第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から変化すると、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は第2抵抗値R2を示す。第2抵抗値R2は、第1抵抗値R1より大きい。第2抵抗値R2は、磁化M1と磁化M2とが平行である場合の抵抗値(第1抵抗値R1)と、磁化M1と磁化M2とが反平行である場合の抵抗値との間である。
【0060】
図3に示す場合は、第1強磁性層1は垂直磁化膜である。第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化すると、第1強磁性層1の垂直磁気異方性により磁化M1は磁化M2と平行状態に戻り、磁気抵抗効果素子10は初期状態に戻る。
図4に示す場合は、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層1の磁化M1の大きさは元に戻り、磁気抵抗効果素子10は初期状態に戻る。いずれの場合も磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は、第1抵抗値R
1に戻る。つまり、第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R
2から第1抵抗値R
1へ変化する。
【0061】
ここでは初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行な場合を例に説明したが、初期状態において磁化M1と磁化M2とが反平行でもよい。この場合、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は、磁化M1の状態が変化するほど(例えば、磁化M1の初期状態からの角度変化が大きくなるほど)小さくなる。
【0062】
磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は、第1強磁性層1に照射される光の強度の変化に対応して変化する。第1強磁性層1に照射される光の強度は、光Lに含まれる高周波信号の周波数f1に応じて変化する。従って、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は、周波数f1で変化する。例えば、磁気抵抗効果素子10の抵抗R10は、R10=C・sin(2πf1t)+R0と表される。Cは磁気抵抗効果素子10の抵抗R10の振幅である。R0は、磁気抵抗効果素子10の抵抗のうち、第1強磁性層1の磁化M1の状態と第2強磁性層2の磁化M2の状態との相対的な変化に依存しない抵抗成分である。
【0063】
また
図1に示すように、入力ポートp1に周波数f
2の高周波信号S
1を入力すると、磁気抵抗効果素子10に高周波電流I
Rが流れる。高周波電流I
Rは、例えば、I
R=D・sin(2πf
2t)で表される。Cは高周波電流I
Rの振幅であり、f
2は高周波信号S
1の波数である。
【0064】
磁気抵抗効果素子10は、変動する抵抗R10と磁気抵抗効果素子10を流れる高周波電流IRに起因して、電圧Vを出力する。電圧Vは、オームの法則から以下の式で表される。
V=IR×R10
=(C・D/2)・cos(2π・(f2-f1)・t)-(C・D/2)・cos(2π・(f2+f1)・t)+D・R0・sin(2πf2t)
【0065】
|f2-f1|の周波数の信号が通過し、f2+f1の周波数の信号がカットされるようにフィルタFの通過周波数を設定すると、電圧Vのうち、上式の右辺第1項である(C・D/2)・cos(2π・(f2-f1)・t)を出力ポートp2から取り出すことができる。
【0066】
f2+f1の周波数の信号が通過し、|f2-f1|の周波数の信号がカットされるようにフィルタFの通過周波数を設定すると、電圧Vのうち、上式の右辺第2項である-(C・D/2)・cos(2π・(f2+f1)・t)を出力ポートp2から取り出すことができる。
【0067】
すなわち、磁気抵抗効果デバイス100は、光Lに含まれる高周波信号の周波数f1と、入力ポートp1から入力される高周波信号S1の周波数f2との、和分又は差分の周波数の信号を出力ポートp2から出力する。つまり、磁気抵抗効果デバイス100は、周波数変換器として機能する。
【0068】
磁気抵抗効果デバイス100がこれらの周波数の差分|f2-f1|の周波数を出力する場合、その差分の周波数(|f2-f1|)は1GHz以下であることが好ましい。出力される周波数が1GHZ以下であれば、入力された高周波信号は十分ダウンコンバートされており、その後の信号処理が容易になる。
【0069】
以上、上述の磁気抵抗効果デバイス100を例に、第1実施形態について図面を参照して詳述したが、第1実施形態はこの例に限られるものではない。
【0070】
「第2実施形態」
図5は、第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス110の回路構成を示す図である。磁気抵抗効果デバイス110は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス100を複数有する。磁気抵抗効果デバイス100のそれぞれの構成は、第1実施形態と同様である。複数の磁気抵抗効果デバイス100のうちの2つをそれぞれ、第1磁気抵抗効果デバイス100A、第2磁気抵抗効果デバイス100Bと称する。
【0071】
磁気抵抗効果デバイス110は、複数の磁気抵抗効果素子10を有する。複数の磁気抵抗効果素子10のうちの2つを第1磁気抵抗効果素子10A、第2磁気抵抗効果素子10Bと称する。第1磁気抵抗効果素子10Aは、第1磁気抵抗効果デバイス100Aに属し、第2磁気抵抗効果素子10Bは、第2磁気抵抗効果デバイス100Bに属する。第1磁気抵抗効果素子10A及び第2磁気抵抗効果素子10Bの構成は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子10と同じである。
【0072】
第1磁気抵抗効果素子10Aには光L1が照射され、第2磁気抵抗効果素子10Bには光L2が照射されている。光L1及び光L2は、スプリッタ50で分割された光Lであり、これらは同一である。光L1と光L2とは、例えば、周波数が同一であり、含まれる高周波信号が同一である。スプリッタ50は、光の周波数等を変化させずに光を分割できるものであればよく、例えばハーフミラーに置き換えることもできる。また第1磁気抵抗効果素子10Aと第2磁気抵抗効果素子10Bを近接させて、スプリッタ50を省略し、第1磁気抵抗効果素子10Aと第2磁気抵抗効果素子10Bとが、光Lのスポット内に配置されるようにして、第1磁気抵抗効果素子10Aと第2磁気抵抗効果素子10Bとに同一の光Lが照射されるようにしてもよい。
【0073】
また第1磁気抵抗効果素子10Aには、高周波電流IR1が流れる。高周波電流IR1は、入力ポートp1に入力された高周波信号S11により生じる。例えば、周波数f11の高周波信号S11が入力ポートp1に入力されると、周波数f11の高周波電流IR1が磁気抵抗効果素子10に流れる。他方、第2磁気抵抗効果素子10Bには、高周波電流IR2が流れる。高周波電流IR2は、入力ポートp1に入力された高周波信号S12により生じる。例えば、周波数f12の高周波信号S12が入力ポートp1に入力されると、周波数f12の高周波電流IR2が磁気抵抗効果素子10に流れる。
【0074】
第1磁気抵抗効果素子10Aは、変動する抵抗R10と第1磁気抵抗効果素子10Aを流れる高周波電流IR1に起因して、電圧VAを出力する。
VA=IR1×R10
=(C・D/2)・cos(2π・(f11-f1)・t)-(C・D/2)・cos(2π・(f11+f1)・t)+D・R0・sin(2πf11t)
【0075】
第2磁気抵抗効果素子10Bは、変動する抵抗R10と第2磁気抵抗効果素子10Bを流れる高周波電流IR2に起因して、電圧VBを出力する。
VB=IR2×R10
=(C・D/2)・cos(2π・(f12-f1)・t)-(C・D/2)・cos(2π・(f12+f1)・t)+D・R0・sin(2πf12t)
【0076】
第1磁気抵抗効果デバイス100Aは、フィルタFの通過周波数を設定することで、|f11-f1|の情報を持つ信号、又は、f11+f1の情報を持つ信号を出力ポートp2から取り出すことができる。また第2磁気抵抗効果デバイス100Bは、フィルタFの通過周波数を設定することで、|f12-f1|の情報を持つ信号、又は、f12+f1の情報を持つ信号を出力ポートp2から取り出すことができる。
【0077】
光L(光L1、光L2)が複数の周波数の高周波信号を含んでいる場合、例えば、光Lが80GHzと60GHzの高周波信号を有している場合に、第1磁気抵抗効果デバイス100Aに79.9GHzの高周波信号S11を入力し、第2磁気抵抗効果デバイス100Bに59.9GHzの高周波信号S12を入力する。この場合、第1磁気抵抗効果デバイス100A及び第2磁気抵抗効果デバイス100Bからは、フィルタFを調整することで、それぞれ4つの異なる周波数の信号を取り出すことができる。
【0078】
第1磁気抵抗効果デバイス100Aは、79.9GHzの周波数(高周波信号S11の周波数)の信号の他に、159.9GHz、139.9GHz、19.9GHz、100MHzの4つの周波数の信号を出力できる。第2磁気抵抗効果デバイス100Bは、59.9GHzの周波数(高周波信号S12の周波数)の信号の他に、139.9GHz、119.9GHz、20.1GHz、100MHzの4つの周波数の信号を出力できる。
【0079】
したがって、フィルタFを調整すれば、第1磁気抵抗効果デバイス100A及び第2磁気抵抗効果デバイス100Bのそれぞれから100MHzの周波数の信号を取り出すこともできる。第1磁気抵抗効果デバイス100Aは、80GHzの信号の情報(位相等)を含む信号を100MHzの信号に変換して出力する。第2磁気抵抗効果デバイス100Bは、60GHzの信号の情報(位相等)を含む信号を100MHzの信号に変換して出力する。すなわち、磁気抵抗効果デバイス110全体としては、広い周波数帯域の光Lの信号から周波数毎に信号を抽出することができ、大容量の通信が可能である。
【0080】
「第3実施形態」
図6は、第3実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス120の回路構成を示す図である。磁気抵抗効果デバイス120は、入力ポートp1と、分岐部60と、分岐部60にそれぞれ繋がる複数のユニットと、波長分光器70と、備える。複数のユニットのそれぞれは、磁気抵抗効果素子10とフィルタFと出力ポートp2とを有する。
【0081】
磁気抵抗効果デバイス120は、複数の磁気抵抗効果素子10を有する。複数の磁気抵抗効果素子10のうちの2つを第1磁気抵抗効果素子10C、第2磁気抵抗効果素子10Dと称する。第1磁気抵抗効果素子10C及び第2磁気抵抗効果素子10Dの構成は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子10と同じである。磁気抵抗効果デバイス120のそれぞれの素子は、信号線路SL4~SL6で接続されている。
【0082】
図6において、信号線路SL4は、入力ポートp1と分岐部60とを接続する。信号線路SL5は、分岐部60と出力ポートp2とを接続する。信号線路SL6は、信号線路SL5と磁気抵抗効果素子10とを接続する。コンデンサCは、例えば、信号線路SL4上にある。フィルタFは、例えば、信号線路SL5上の信号線路SL6との分岐より出力ポートp2側のそれぞれにある。
【0083】
分岐部60は、信号を分岐する。分岐部60は、例えば、方向性結合器である。信号線路SL4を流れる高周波電流IRは、分岐部60で分岐され、信号線路SL5のそれぞれに流れる。
【0084】
波長分光器70は、光Lを波長ごとに分光する。波長分光器70は、例えば、プリズム、回折格子、分波器、カプラ、カラーフィルター等である。波長分光器70は、例えば、光Lを赤色光LRと青色光LBに分光する。赤色光LRは、例えば、波長が600nm以上800nm以下である。青色光LBは、例えば、波長が380nm以上450nm未満である。
【0085】
例えば、第1磁気抵抗効果素子10Cには赤色光LRが照射され、第2磁気抵抗効果素子10Dには青色光LBが照射される。第1磁気抵抗効果素子10Cと第2磁気抵抗効果素子10Dとは、異なる波長の光が照射されている。第1磁気抵抗効果素子10Cは、赤色光LRの強度変化に応じて抵抗値が変化する。第2磁気抵抗効果素子10Dは、青色光LBの強度変化に応じて抵抗値が変化する。
【0086】
また第1磁気抵抗効果素子10C及び第2磁気抵抗効果素子10Dには、それぞれ高周波電流IRが流れる。高周波電流IRは、分岐部60で分岐し、第1磁気抵抗効果素子10Cと第2磁気抵抗効果素子10Dとのそれぞれを流れる。第1磁気抵抗効果素子10Cと第2磁気抵抗効果素子10Dには、同一周波数の高周波電流IRが流れる。
【0087】
第1磁気抵抗効果素子10Cは、赤色光LRに基づいて変動する抵抗R10Cと第1磁気抵抗効果素子10Cを流れる高周波電流IRに起因して、電圧VCを出力する。第2磁気抵抗効果素子10Dは、青色光LBに基づいて変動する抵抗R10Dと第2磁気抵抗効果素子10Dを流れる高周波電流IRに起因して、電圧VDを出力する。
【0088】
磁気抵抗効果デバイス120は、複数の波長の光が含まれ、波長ごとに高周波信号を含む光Lを用いた場合、光Lから波長ごとに信号を取り出すことができる。すなわち、磁気抵抗効果デバイス120は、光Lから多数の信号を取り出すことができ、大容量の通信が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…第1強磁性層、2…第2強磁性層、3…スペーサ層、4…第3強磁性層、5…磁気結合層、6…下地層、7…垂直磁化誘起層、8…キャップ層、9…側壁絶縁層、10…磁気抵抗効果素子、10A,10C…第1磁気抵抗効果素子、10B,10D…第2磁気抵抗効果素子、50…スプリッタ、60…分岐部、70…波長分光器、100,110,120…磁気抵抗効果デバイス、100A…第1磁気抵抗効果デバイス、100B…第2磁気抵抗効果デバイス、C…コンデンサ、E1…第1電極、E2…第2電極、F…フィルタ、IR,IR1,IR2…高周波電流、L,L1,L2…光、LB…青色光、LR…赤色光、M1,M2…磁化、p1…入力ポート、p2…出力ポート、pr1…基準電位端子、S1,S2,S11,S12…高周波信号、SL1~SL6…信号線路