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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121578
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
A61B6/00 333
A61B6/00 350S
A61B6/00 350D
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104249
(22)【出願日】2022-06-29
(62)【分割の表示】P 2021502141の分割
【原出願日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019036590
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 隆浩
(57)【要約】
【課題】放射線画像において被写体が含む構造物を個別に特定する放射線画像処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】放射線画像処理装置30は、特定の被写体Objについて、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する放射線画像取得部33と、1または複数の放射線画像を用いて、被写体が含む構造物を認識する構造物認識部34と、構造物認識部の認識結果と、複数の放射線画像と、を用いて、構造物認識部34が認識した1または複数の構造物について放射線の減弱係数μを算出する減弱係数算出部35と、複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像に対して、減弱係数を用いて画像処理を行う画像処理部36と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の被写体について、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、
1または複数の前記放射線画像を用いて、前記被写体が含む構造物を認識する構造物認識部と、
前記構造物認識部の認識結果と、複数の前記放射線画像と、を用いて、前記構造物認識部が認識した1または複数の前記構造物について前記放射線の減弱係数を算出する減弱係数算出部と、
複数の前記放射線画像のうち1または複数の前記放射線画像に対して、前記減弱係数を用いて画像処理を行う画像処理部と、
を備える放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記構造物認識部は、認識する前記構造物を前記被写体の中から相対的に決定する請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記構造物認識部は、前記被写体における前記構造物の位置、大きさ、または、形状を認識する請求項1または2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記減弱係数算出部は、2以上の前記放射線画像の対応する画素における画素値の比または差を用いて前記減弱係数を算出する請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記構造物認識部は、2つの前記放射線画像を用いて3以上の前記構造物を認識し、かつ、
前記減弱係数算出部は、前記構造物認識部が認識処理に使用する2つの前記放射線画像を用いて、前記構造物認識部が認識した3以上の前記構造物の前記減弱係数を算出する請求項1~4のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記構造物認識部の認識結果と、前記減弱係数と、を用いて、前記構造物ごとの組成量を算出する組成量算出部を備える請求項1~5のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記構造物認識部が認識した複数の前記構造物のうち1または複数の前記構造物を強調した強調画像を生成する請求項1~6のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、サブトラクション処理によって前記強調画像を生成する請求項7に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、少なくとも1つの前記構造物の色または濃度を変調した前記強調画像を生成する請求項7または8に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記構造物の前記組成量に対応した色または濃度を有する組成量画像を生成する請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項11】
特定の被写体を撮影した放射線画像であって前記撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の前記放射線画像の入力により、前記被写体が含む1または複数の構造物を前記放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、前記被写体が含む前記構造物を認識するプログラム。
【請求項12】
特定の被写体を撮影した放射線画像であって前記撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の前記放射線画像の入力により、前記被写体が含む1または複数の構造物と、前記構造物の減弱係数と、を前記放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、前記被写体が含む前記構造物を分類するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像について画像処理をする放射線画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線等の放射線を用いて被写体を撮影する放射線撮影装置が普及している。例えば、被写体が人または動物である場合、放射線画像は病変の診断等に使用する。近年においては、診断等に使用する放射線画像はいわゆる投影画像に限らず、被写体の軟部組織を抽出(あるいは強調)した軟部画像、及び/または、被写体の骨部を抽出した骨部画像を用いる場合がある。軟部画像及び/または骨部画像は、いわゆるサブトラクション処理により生成する。サブトラクション処理は、撮影に使用した放射線のエネルギー等が異なる2種類の放射線画像に、所定の重み付けをして差分を算出する処理であり、組成ごとに放射線の減弱係数が異なることを利用した処理である。例えば、組成ごとに定まるX線の減弱係数の違いにより、被写体である乳房を、組成ごとに分解するマンモグラフィ装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-050708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるサブトラクション処理によって診断等に使用し得る軟部画像及び/または骨部画像を生成できるのは、軟部及び/または骨部の減弱係数が実験等によって既知であり、かつ、被写体による相違が問題とならない程度にその差が大きいからである。
【0005】
ところで、サブトラクション処理において「軟部」と一括りにする組織等は当然に複数の組織等を含む。例えば、肺、心臓、脂肪、筋肉、または、これらの組織の一部が異常形成した病変等である。これら軟部組織は、通常は減弱係数の差が僅かであり、かつ、被写体ごとに分量の相違等もある。このため、従来のサブトラクション処理ではこれらを各々に特定し、個別に強調等した画像を得ることが難しい。
【0006】
本発明は、放射線画像において被写体が含む構造物を個別に特定する放射線画像処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線画像処理装置は、特定の被写体について、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、1または複数の放射線画像を用いて、被写体が含む構造物を認識する構造物認識部と、構造物認識部の認識結果と、複数の放射線画像と、を用いて、構造物認識部が認識した1または複数の構造物について放射線の減弱係数を算出する減弱係数算出部と、複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像に対して、減弱係数を用いて画像処理を行う画像処理部と、を備える。
【0008】
構造物認識部は、認識する構造物を被写体の中から相対的に決定することが好ましい。
【0009】
構造物認識部は、被写体における構造物の位置、大きさ、または、形状を認識することが好ましい。
【0010】
減弱係数算出部は、2以上の放射線画像の対応する画素における画素値の比または差を用いて減弱係数を算出することが好ましい。
【0011】
構造物認識部は、2つの放射線画像を用いて3以上の構造物を認識し、かつ、減弱係数算出部は、構造物認識部が認識処理に使用する2つの放射線画像を用いて、構造物認識部が認識した3以上の構造物の減弱係数を算出することが好ましい。
【0012】
構造物認識部の認識結果と、減弱係数と、を用いて、構造物ごとの組成量を算出する組成量算出部を備えることが好ましい。
【0013】
画像処理部は、構造物認識部が認識した複数の構造物のうち1または複数の構造物を強調した強調画像を生成することが好ましい。
【0014】
画像処理部は、サブトラクション処理によって強調画像を生成することが好ましい。
【0015】
画像処理部は、少なくとも1つの構造物の色または濃度を変調した強調画像を生成することが好ましい。
【0016】
画像処理部は、構造物の組成量に対応した色または濃度を有する組成量画像を生成することが好ましい。
【0017】
本発明のプログラムは、特定の被写体を撮影した放射線画像であって撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力により、被写体が含む1または複数の構造物を放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、被写体が含む構造物を認識する。
【0018】
本発明の別のプログラムは、特定の被写体を撮影した放射線画像であって撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力により、被写体が含む1または複数の構造物と、構造物の減弱係数と、を放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、被写体が含む構造物を分類する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射線画像処理装置及びプログラムによれば、放射線画像において被写体が含む構造物を個別に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】放射線撮影装置の構成を示す説明図である。
図2】放射線画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】組成の違い起因した放射線画像の画素値の相違を示すグラフである。
図4】組成ごとの減弱係数を示すグラフである。
図5】放射線画像処理装置の作用を示すフローチャートである。
図6】第1放射線画像の模式図である。
図7】第2放射線画像の模式図である。
図8】構造物認識部が認識した骨部の模式図である。
図9】構造物認識部が認識した肺の模式図である。
図10】構造物認識部が認識した心臓の模式図である。
図11】肺を強調した強調画像の模式図である。
図12】色または明るさを変調して各構造物を強調した強調画像の模式図である。
図13】第2実施形態の放射線画像処理装置のブロック図である。
図14】組成量画像の模式図である。
図15】構造物を特定する学習済みモデルである。
図16】構造物及びその減弱係数を特定する学習済みモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、放射線撮影システム10は、放射線源13、放射線撮影パネル14、及びコンソール20と、放射線画像処理装置30と、を備える。放射線源13、放射線撮影パネル14、及び、コンソール20は、放射線撮影装置を構成する。
【0022】
放射線源13は、撮影に必要な放射線Raを発生する装置であり、放射線Raを発生する放射線管と、放射線管が放射線Raを発生するために必要な高電圧を発生する高電圧発生回路等からなる。放射線源13は、放射線管の管電圧及び管電流等を調節することにより、線質(エネルギー分布(以下、単にエネルギーという))が異なる複数種類の放射線を発生できる。放射線源13が発生する放射線のエネルギーは撮影条件の1つである。本実施形態においては、放射線源13はX線を発生するX線源である。このため、このため、放射線撮影システム10はX線を用いて被写体Objを撮影することにより、被写体ObjのX線画像を取得するX線撮影システムである。被写体Objは例えば人であり、本実施形態においては被写体Objの胸部を撮影する。
【0023】
放射線撮影パネル14は、放射線源13が発生した放射線Raを用いて被写体Objを撮影する。すなわち、放射線撮影パネル14は、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)であり、被写体Objを透過した放射線Raを検出して電気信号に変換することにより、被写体Objの放射線画像を出力する。放射線撮影パネル14を用いた撮影においては、必要に応じてグリッド(図示しない)を併用できる。グリッドは、放射線の散乱線成分を除去する装置であり、例えば、静止型のリスホルムブレンデ、または、移動型のブッキーブレンデ等である。
【0024】
本実施形態においては、放射線撮影パネル14は、第1放射線検出器15と第2放射線検出器16の2個の検出器を備える。第1放射線検出器15及び第2放射線検出器16のうち、相対的に被写体Obj及び放射線源13の近くに配置する検出器が第1放射線検出器15であり、被写体Obj及び放射線源13から相対的に遠くに配置する検出器が第2放射線検出器16である。第1放射線検出器15及び第2放射線検出器16は、被写体Objを透過した放射線Raを画素ごとに検出する。また、第1放射線検出器15と第2放射線検出器16は被写体Objの放射線画像をそれぞれに出力する。但し、放射線撮影パネル14は、第1放射線検出器15と第2放射線検出器16の間に放射線エネルギー変換フィルタ17を備える。放射線エネルギー変換フィルタ17は、例えば銅板等であり、放射線Raの低エネルギー成分を吸収する。このため、放射線Raは、第1放射線検出器15を透過した後、第2放射線検出器16に到達するまでにエネルギーが変化する。したがって、放射線撮影パネル14は、特定の被写体Objを同じ撮影条件(同じ放射線Ra)で同時に撮影するが、第1放射線検出器15が出力する第1放射線画像G1(図6参照)と第2放射線検出器16が出力する第2放射線画像G2(図7参照)は、実質的に撮影に使用した放射線Raのエネルギーが互いに異なる放射線画像となる。
【0025】
なお、第1放射線検出器15及び第2放射線検出器16は、間接変換型の検出器または直接変換型の検出器のいずれでもよく、第1放射線検出器15と第2放射線検出器16とで異なるタイプの検出器を採用できる。間接変換型の検出器とは、CsI(ヨウ化セシウム)等からなるシンチレータを用いて放射線Raを可視光に変換し、その可視光を光電変換することにより、間接的に電気信号を得る検出器である。直接変換型の検出器とは、アモルファスセレン等からなるシンチレータを用いて放射線Raを直接的に電気信号に変換する検出器である。また、第1放射線検出器15及び第2放射線検出器16は、それぞれPSS(Penetration Side Sampling)方式の検出器でもよく、ISS(Irradiation Side Sampling)方式の検出器でもよい。PSS方式とは、電気信号の読み出しを行うTFT(Thin Film Transistor)に対してシンチレータを被写体Obj側に配置する方式である。ISS方式とは、PSS方式とは逆に、シンチレータとTFTを、被写体Obj側からTFT、シンチレータの順に配置する方式である。
【0026】
コンソール20は、放射線源13及び放射線撮影パネル14の動作を制御する制御装置(コンピュータ)であり、表示部21及び操作部22等を備える。表示部21は、例えば液晶ディスプレイ等であり、撮影した放射線画像その他操作または設定等に係る必要な表示をする。操作部22は、撮影条件等の設定入力、放射線源13及び放射線撮影パネル14の操作に用いる、例えばキーボード及び/またはポインティングデバイス等である。表示部21及び操作部22はタッチパネルで構成することができる。
【0027】
放射線画像処理装置30は、診断等における表示のために、または、診断等に係る詳細な画像解析のために、被写体Objを撮影した放射線画像を用いて画像処理を行う。放射線画像処理装置30は、コンソール20と直接的に接続し、被写体Objを撮影した放射線画像をリアルタイムに取得して画像処理に使用できる。また、放射線画像処理装置30は、コンソール20に直接的に接続する代わりに、RIS(Radiology Information Systems)、HIS(Hospital Information Systems)、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)、または、PACSが含むDICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)サーバ等を介して間接的に放射線画像を取得して画像処理に使用できる。
【0028】
図2に示すように、放射線画像処理装置30はいわゆるコンピュータであり、表示部31、操作部32、放射線画像取得部33、構造物認識部34、減弱係数算出部35、及び、画像処理部36等を備える。
【0029】
表示部31は液晶ディスプレイ等であり、撮影した放射線画像及び放射線画像処理装置30が生成した画像等を表示する。操作部32は、放射線画像処理装置30を操作するためのキーボード及び/またはポインティングデバイス等である。表示部31及び操作部32はタッチパネルで構成することができる。なお、本実施形態においは、放射線画像処理装置30は、コンソール20とは別体の装置であるが、放射線画像処理装置30の一部または全部をコンソール20に設けることができる。この場合、放射線画像処理装置30の表示部31及び/または操作部32には、コンソール20の表示部21及び/または操作部22を使用できる。また、放射線画像処理装置30の全部をコンソール20に設ける場合、コンソール20が放射線画像処理装置30を構成する。
【0030】
放射線画像取得部33は、特定の被写体Objについて、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する。「特定の被写体Obj」とは、被写体Objが特定の人または物であることをいう。また、「特定の被写体Objについて複数の放射線画像を取得する」とは、被写体Objが同一であり、かつ、当該被写体Objの撮影部位(撮影部分)及びその撮影方向が共通する複数の放射線画像を取得することをいう。「撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる」とは、放射線画像の形成(放射線Raの検出)の際に実質的に放射線Raの線質が異なることをいい、放射線源13が曝射する放射線Raの線質が異なる場合の他、放射線エネルギー変換フィルタ17等を介して線質が変化した放射線Raを用いて放射線画像を形成することを含む。すなわち、放射線画像取得部33は、例えば、放射線検出器を1つ備えるFPDを用いて放射線撮影をした場合、特定の被写体Objを放射線Raの線質を変えて複数回撮影した複数の放射線画像を取得する。また、放射線画像取得部33は、例えば放射線エネルギー変換フィルタ17等を介した複数の放射線検出器を含むFPDを用いて放射線撮影をした場合、これらの各放射線検出器が出力する各放射線画像を取得する。本実施形態においては、放射線画像取得部33は、第1放射線検出器15が出力する第1放射線画像G1と、第2放射線検出器16が出力する第2放射線画像G2と、を取得する。なお、放射線画像取得部33は、上記複数の放射線画像を取得する際に、いわゆる原画像(画像処理等を施していない画像)だけでなく、散乱線補正処理またはその他の画像処理等の各種処理を施した放射線画像を取得する場合がある。また、放射線画像取得部33は、取得する上記複数の放射線画像のうち1または複数もしくは全部を、散乱線補正処理等を施した放射線画像にすることができる。散乱線補正処理とは、放射線Raの被写体Objその他による散乱線を低減する補正する画像処理である。
【0031】
構造物認識部34は、1または複数の放射線画像を用いて、被写体Objが含む構造物を認識する。被写体Objが含む構造物とは、被写体Objを構成する組織(物質)等のうち、他の組織等と区別し得る組織等の単位をいう。「区別し得る」とは、境界を識別または推定できることをいう。例えば、被写体Objが人(患者)であり、その胸部が撮影対象である場合には、肋骨その他の骨、心臓、肺、脂肪、筋肉等、これらの一部または全部の異形成体(病変または病変の可能性がある部分等)、または、被写体Objに埋め込まれた人工物等のそれぞれが、構造物認識部34が認識する構造物である。肋骨その他の骨はいわゆる骨部(骨部組織)であり、心臓、肺、脂肪、及び筋肉等はいわゆる軟部(軟部組織)である。すなわち、構造物認識部34は、結果として骨部と軟部をそれぞれ認識するが、軟部を構成する各組織等も区別して認識し得る。被写体Objが物である場合、あるいは、被写体Objの撮影部位が胸部以外である場合も同様である。
【0032】
構造物認識部34は、放射線画像取得部33が取得した特定の被写体Objについての複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像を任意に選択して認識処理に使用できる。本実施形態においては、構造物認識部34は第1放射線画像G1を構造物の認識に使用するが、第1放射線画像G1の代わりに、または、第1放射線画像G1に加えて、第2放射線画像G2を使用できる。なお、構造認識部34は、散乱線補正処理等を施した放射線画像を用いて上記認識処理を行うことができる。例えば、放射線画像取得部33が散乱線補正処理等を施した放射線画像を取得する場合、構造認識部34は、その放射線画像を認識処理に使用できる。また、放射線画像取得部33が散乱線補正処理等を施していない放射線画像を取得する場合であっても、放射線画像処理装置30において散乱線補正処理等を実施する場合には、構造認識部34は、放射線画像取得部33が取得する散乱線補正処理等を施していない放射線画像に代えて、あるいは、これとともに、散乱線補正処理等を施した放射線画像を用いて上記認識処理を行うことができる。放射線画像処理装置30は、画像処理部36において、放射線画像に対して散乱線補正処理等の各種処理を行うことができる。
【0033】
構造物認識部34は、認識する構造物を、放射線画像に写る被写体Objの中から相対的に決定する。すなわち、構造物認識部34は、認識すべき対象を予め決定してあるのではなく、被写体Objの中で相対的に区別し得る部分をそれぞれ「構造物」として認識する。例えば、人体の胸部の場合、構造物認識部34は、予め骨部と軟部を認識するというのではなく、構造物を認識した結果として、骨部、心臓、肺、その他組織の部分を認識する。
【0034】
構造物認識部34は、少なくとも、放射線画像に写る被写体Objにおける構造物の位置、大きさ、及び/または、形状等を認識する。すなわち、構造物認識部34が行う認識処理は、放射線画像に写る被写体Objにおいて、他の組織等との境界を有する構造物の位置、大きさ、及び/または、形状等を特定する処理である。したがって、構造物認識部34は、認識した構造物の組成(認識した構造物がどのような組織であるか)まで認識するか否かは任意である。認識した構造物の組成を認識する場合、構造物認識部34は、認識した構造物の位置、大きさ、及び/または、形状等を用いて、その組成を認識する。例えば、人体の胸部において、肺の位置、大きさ、及び、形状等は概ね定まっているので、構造物認識部34は、認識した構造物のうち特定の構造物が肺であることを特定(認識)できる。本実施形態においては、構造物認識部34は被写体Objの構造物の組成までは特定しないが、説明の便宜上、構造物認識部34が認識した構造物は、骨部、肺、または、心臓等、その組成を表す名称で表す。
【0035】
減弱係数算出部35は、構造物認識部34の認識結果と、複数の放射線画像と、を用いて、構造物認識部34が認識した1または複数の構造物について、放射線Raの減弱係数μを算出する。減弱係数算出部35が算出する減弱係数μはいわゆる線源弱係数であり、吸収または散乱等によって放射線Raが減弱する程度(割合)を表す。減弱係数μは、放射線Raが透過する構造物の具体的な組成(密度等)及び厚さ(質量)によって異なる。
【0036】
減弱係数算出部35は、2以上の放射線画像の対応する画素における画素値の比または差を用いて減弱係数を算出する。例えば、図3に示すように、第1放射線画像G1において組成が「Ca」「Cb」及び「Cc」の3種類の構造物があり、これらの第1放射線画像G1における画素値がいずれも「V1」であったとする。一方、第2放射線画像G2において対応する画素の画素値それぞれ「Va」「Vb」及び「Vc」となる。この画素値の減少程度は、各構造物(各組成物)による放射線Raの減弱の程度に対応する。このため、図4に示すように、減弱係数算出部35は、第1放射線画像G1の画素値と、対応する第2放射線画像G2の画素値の比または差を用いて、組成「Ca」の構造物の減弱係数μa、組成「Cb」の構造物の減弱係数μb、及び、組成「Cc」の構造物の減弱係数μcを算出することができる。
【0037】
なお、上記の通り、第1放射線画像G1における画素値と第2放射線画像G2における対応する画素の画素値の比または差がわかれば減弱係数μを算出できるので、簡単のため、各組成「Ca」「Cb」及び「Cc」の画素値が第1放射線画像G1において共通の「V1」であることとしたが、第1放射線画像G1において各組成「Ca」「Cb」及び「Cc」の画素値が共通である必要はない。また、4以上の構造物がある場合も上記と同様に、減弱係数算出部35は構成物(組成)ごとに減弱係数μを算出できる。
【0038】
減弱係数算出部35が算出する各構造物の減弱係数μは、被写体Objが含む構造物(特に構造物認識部34が認識した構造物)間における相対値である。このため、減弱係数算出部35が算出する減弱係数μは、組成によって定まる固有の減弱係数とは値が相違する場合があるが、本発明の実施においてこれらの差異は問題とならない。また、被写体Objの全体をほぼ一様に覆う構造物等(例えば皮膚等)にも固有の減弱係数μがあるが、減弱係数算出部35が算出する減弱係数μは、構造物認識部34が認識しない構造物を重畳した状態の構造物として、減弱係数μを算出する。この点においても、減弱係数算出部35が算出する減弱係数μは、組成によって定まる固有の減弱係数とは値が相違する場合があるが、本発明の実施においてこれらの差異は問題とならないことは同様である。
【0039】
画像処理部36は、放射線画像に対して1または複数の画像処理を施す。画像処理部36は、各構造物の減弱係数μを用いて画像処理を行うことができる。画像処理部36が画像処理の対象とする放射線画像は、少なくとも、放射線画像取得部33が取得する複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像である。また、画像処理部36は、画像処理を行う際に、必要に応じて構造物認識部34の認識結果(構造物の位置等の情報)を用いることができる。
【0040】
本実施形態においては、画像処理部36は、構造物認識部34が認識した複数の構造物のうち1または複数の構造物を強調した強調画像Ge(図11等参照)を生成する。被写体Objが含む構造物について「強調」とは、他の構造物に対して特定の構造物の視認性または識別性を向上することをいい、特定の構造物の視認性等を直接的に向上することの他、他の構造物の視認性等を低下することによって間接的に特定の構造物の視認性等を向上することを含む。上記強調画像Geの生成のため、画像処理部36は、例えば、サブトラクション処理部41、コントラスト調節部42、及び、色彩調節部43等を備える。
【0041】
サブトラクション処理部41は、減弱係数μを用いて、いわゆるサブトラクション画像を生成する。サブトラクション画像とは、被写体Objが含む特定の構造物を強調する強調画像であり、画素ごとに、あるいは、認識した構造物がある領域ごとに、その構造物の減弱係数μを乗じて放射線画像の減算処理をすることにより生成する。
【0042】
コントラスト調節部42は、放射線画像取得部33が取得した放射線画像またはサブトラクション画像について、画素値と表示濃度(表示時の明るさ)との対応関係を制御することにより、コントラストを調節する。コントラスト調節部42がコントラストの調節対象とするのは、放射線画像またはサブトラクション画像の一部または全部である。例えば、コントラスト調節部42は、被写体Objが含む構造物ごとに濃度(明るさ)を調節することにより、そのコントラストを変更できる。すなわち、画像処理部36は、コントラスト調節部42を用いて、少なくとも1つの構造物の濃度を変調した強調画像Geを生成することができる。被写体Objが含む構造物の濃度の変調は、その構造物またはその構造物と区別する他の構造物の視認性及び/または識別性を向上する。
【0043】
色彩調節部43は、放射線画像取得部33が取得した放射線画像またはサブトラクション画像について、必要に応じて色彩を付与する。放射線画像は、本来的にはグレースケール画像であるが、色彩調節部43が色付けをすることにより、構造物の視認性、及び、他の構造物との識別性が向上する。色彩調節部43が色付けをする対象は、放射線画像またはサブトラクション画像の一部または全部である。例えば、色彩調節部43は、被写体Objが含む構造物ごとに異なる色彩を付与することができる。すなわち、画像処理部36は、色彩調節部43を用いて、少なくとも1つの構造物の色または色彩を変調した強調画像Geを生成することができる。被写体Objが含む構造物の色または色彩の変調は、その構造物またはその構造物と区別する他の構造物の視認性及び/または識別性を向上する。
【0044】
以下、上記のように構成する放射線画像処理装置30の作用を説明する。図5に示すように、放射線画像取得部33は、特定の被写体Objについて、撮影に使用した放射線Raのエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する(ステップS101)。本実施形態においては、放射線源13一定の放射線Raを曝射して被写体Objを撮影するが、放射線エネルギー変換フィルタ17を介して第1放射線検出器15及び第2放射線検出器16を有する放射線撮影パネル14を用いて被写体Objを撮影する。このため、第1放射線検出器15を用いて撮影した第1放射線画像G1と、第2放射線検出器16を用いて撮影した第2放射線画像G2と、では実質的に撮影に用いた放射線Raのエネルギーが変化する。このため、放射線画像取得部33は、特定の被写体Objについて、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2を取得する。
【0045】
また、本実施形態においては、被写体Objは人であり、その胸部が主な撮影部位である。このため、図6に示すように、第1放射線画像G1には、肋骨等の骨部121、肺122、心臓123、肩部または上腕等の筋肉126、及び、脂肪127等が現れる。また、これら胸部及び胸部近傍の各組織等は重畳的に現れる。すなわち、これらの組織等の像(陰影)は、一部または全部が他の組織等の像と重なっている場合がある。なお、第1放射線画像G1には、いわゆる素抜領域128もある。素抜領域128は、放射線Raが被写体Objを透過せず、放射線撮影パネル14に直接に到達した領域である。
【0046】
図7に示すように、第2放射線画像G2にも同様にこれらの組織等の像が現れる。但し、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とは、実質的に撮影に用いた放射線Raのエネルギーが異なるので、第1放射線画像G1の各組織の像と、第2放射線画像G2の各組織の像と、を比較すると、対応する部分であっても各組織の相対的な画素値の大小関係が相違する。その結果、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2では、各組織の相対的な明るさ及び/またはコントラスト等が相違する。
【0047】
放射線画像取得部33が、特定の被写体Objについて第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2を取得すると、構造物認識部34は、第1放射線画像G1及び/または第2放射線画像G2を用いて、これらに写る被写体Objが含む構造物を認識する(ステップS102)。本実施形態においては、構造物認識部34は、被写体Objが含む上記各組織、すなわち、骨部121、肺122、心臓123、肩部または上腕等の筋肉126、及び、脂肪127等を被写体Objが含む構造物として、それぞれの位置、大きさ、及び/または、形状等を特定する。例えば、図8に示すように、構造物認識部34は、肺122等の軟部組織と区別して、第1放射線画像G1において骨部121を特定する。同様に、図9に示すように、構造物認識部34は、心臓123等の他の軟部組織及び骨部121と区別して、第1放射線画像G1において肺122を特定する。また、図10に示すように、肺122等の他の軟部組織及び骨部121と区別して、第1放射線画像G1において心臓123を特定する。筋肉126及び脂肪127等についても同様である。
【0048】
構造物認識部34が被写体Objの構造物を認識すると、減弱係数算出部35は、構造物認識部34の認識結果と、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2と、を用いて、各構造物の減弱係数μを算出する(ステップS103)。具体的には、減弱係数算出部35は、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2の対応する画素値の比または差を算出する。一方、減弱係数算出部35は、構造物認識部34の認識結果である各構造物の位置、大きさ、及び/または、形状等を用いて、各構造物の重なり等を考慮することで、上記画素値の比または差から各構造物の相対的な減弱係数μを求める。
【0049】
減弱係数算出部35が各構造物の減弱係数μを算出すると、画像処理部36が、各構造物の減弱係数μを用いて、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2にサブトラクション処理をすることにより、強調画像Geを生成する(ステップS104)。図11に示すように、画像処理部36は、例えば、肺122の部分を強調した強調画像Geを生成する。画像処理部36が生成した強調画像Geは表示部31が表示することにより、医師等に提供する。このため、医師等は、強調画像Geを用いて診断等をすることができる。
【0050】
上記のように、放射線画像処理装置30は、被写体Objの構造物を認識することにより、放射線画像において被写体Objが含む構造物を個別に特定する。その上で、各構造物の減弱係数μを算出し、減弱係数μを用いて画像処理を行い、その結果を医師等に提供する。このため、医師等は、放射線画像処理装置30の画像処理の結果によって、放射線画像において被写体Objが含む構造物を個別に、正確かつ容易に特定することができる。したがって、放射線画像処理装置30は、医師等による診断等を支援することができる。
【0051】
また、放射線画像処理装置30は、具体的には、構造物を強調した強調画像Geを生成し、これを医師等に提供する。このため、医師等は、被写体Objが含む構造物を強調画像Geにおいて視覚的に明瞭に捉えることができる。その結果、医師等は、診断等を正確かつ効率的に行うことができる。
【0052】
さらに、放射線画像処理装置30は、構造物認識部34において、被写体Objが含む構造物を、放射線画像において相対的に認識する。このため、放射線画像処理装置30は、認識対象の構造物を予め定めておかなくても、構造物認識部34が他の組織と区別し得る範囲において任意の構造物(未知及び/または未定数の構造物)を認識し、これを強調等できる。したがって、被写体Objの個体差の影響を受けにくく、被写体Objが含む構造物を正確に特定できる。また、実質的に被写体Objに固有の構造物(例えば病変または病変の可能性がある部分)または埋め込まれた人工物等についても、その位置等を特定し、強調等することができる。
【0053】
また、放射線画像処理装置30は、減弱係数算出部35において、被写体Objが含む構造物について、それぞれ相対的な減弱係数μを算出する。このため、放射線画像処理装置30は、従来のサブトラクション処理をする放射線撮影装置等のように被写体Objが含む各構造物に固有の減弱係数μを予め実験等により定めておく必要がなく、未知かつ未定数の構造物、特に実質的に被写体Objに固有の構造物(例えば病変または病変の可能性がある部分)または埋め込まれた人工物等についても、減弱係数μを算出できる。この結果、放射線画像処理装置30は、被写体Objの個体差の影響を殆受けずにサブトラクション処理等によって、未知かつ未定数の構造物を個別に強調等し、その有無及び位置等についての情報を提供できる。
【0054】
なお、上記第1実施形態の通り、構造物認識部34は、2つの放射線画像を用いて3以上の構造物を認識することができ、かつ、減弱係数算出部35は、構造物認識部34が認識処理に使用する2つの放射線画像を用いて、構造物認識部が認識した3以上の構造物の減弱係数μを算出することができる。すなわち、放射線画像処理装置30は、最小で2つの放射線画像から、3以上の構造物の減弱係数μを求めて、これら3以上の構造物をそれぞれに強調等できる。構造物認識部34における認識対象に任意性があり、かつ、減弱係数算出部35における減弱係数μの算出が構造物間の相対的なものであるからである。例えば、従来のサブトラクション処理をする放射線撮影装置等においては、2つの放射線画像から骨部画像と軟部画像を得ることができるが、放射線画像処理装置30によれば、軟部をさらに峻別して、肺122の強調画像Ge及び/または心臓123の強調画像Ge等、軟部組織の組成ごとの強調画像Geを得ることができる。
【0055】
なお、上記第1実施形態においては、画像処理部36は、構造物認識部34が認識した構造物の1つである肺122を強調した強調画像Geを生成するが、構造物認識部34が認識した複数の構造物を強調した強調画像を生成できる。例えば、図12に示すように、画像処理部36は、設定等に基づいて、肺122の他、心臓123及び脂肪127を強調した強調画像Geを生成できる。また、複数の構造物を強調する場合、各構造物をそれぞれ異なる態様で強調することができる。例えば、構造物ごとに異なる色彩を付与する、等である。このように、各構造物をそれぞれ異なる態様で強調する場合、各構造物をそれぞれ強調しつつ、かつ、強調した各構造物の相互の識別性を維持できる。
【0056】
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、サブトラクション処理等により、構造物認識部34が認識した構造物ごとに強調をした強調画像Geを生成しているが、各構造物の組成量を表す組成量画像Gc(図14参照)を生成することができる。この場合、図13に示すように、放射線画像処理装置30には、組成量算出部201を設ける。組成量算出部201は、構造物認識部34の認識結果(構造物の位置等)と、減弱係数算出部35が算出した減弱係数μと、を用いて、構造物ごとの組成量を算出する。「組成量」とは、各構造物のうち、放射線Raが透過した部分の質量(実質的に構造物の厚さ)である。
【0057】
例えば、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2の対応する画素の画素値を比較する場合、構造物の組成量によってこれら画素値の比または差が異なる。このため、減弱係数算出部35が各構造物の減弱係数μを算出して減弱係数μが既知となっていれば、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2の対応する画素の画素値の比または差から、各構造物の特定の位置(例えば画素ごと)におけるその構造物の組成量を逆算できる。但し、組成量算出部201が算出する組成量は、特定の構造物内における相対的な値である。
【0058】
上記のように組成量算出部201を設ける場合、画像処理部36は、組成量算出部201が算出した組成量を用いることで、各構造物の強調する際に、各構造物を組成量に対応した色または濃度(他の構造物等に対するコントラスト)を有する組成量画像Gcを生成することができる。「組成量に対応した色または濃度」とは、組成量によって定められた色または濃度をいい、例えば、組成量に比例した色または濃度(コントラスト)である。図14に示すように、組成量画像Gcは、例えば、サブトラクション処理等により脂肪127を強調した強調画像Geについて、さらに、脂肪127の部分について組成量に応じた色または濃度を付与した画像である。図14においては、脂肪127の中央部分227Aと、中間部分227Bと、外周部分227Cと、でそれぞれ異なる濃度を有する。
【0059】
上記のように、組成量画像Gcを生成して提供すれば、医師等は、被写体が含む構造物を特定できるだけでなく、その組成量をも同時に把握できる。このため、診断等に利用しやすい。
【0060】
上記第1実施形態、第2実施形態、及びこれらの変形例において、構造物認識部34はいわゆる学習済みのAI(artificial intelligence)プログラム(以下、学習済みモデルという)を用いて構成することができる。例えば、図15に示すように、学習済みモデル301は、特定の被写体Objを撮影した放射線画像であって撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力により、被写体Objが含む1または複数の構造物を放射線画像において特定する。すなわち、学習済みモデル301は、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2等、特定の被写体Objについて撮影に使用した放射線Raのエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力を受ける。そして、これらの放射線画像において被写体Objが含む1または複数の構造物を認識し、例えば、骨部121の位置、大きさ、形状等に係る認識結果である位置等情報321、肺122の位置等情報322、心臓123の位置等情報323、及び、脂肪127の位置等情報327等、を出力する。上記学習済みモデル301は、例えば、ディープラーニング等公知の学習方法により学習できる。
【0061】
上記学習済みモデル301を用いて構造物認識部34を構成する場合、構造物認識部34は、学習済みモデル301を用いて、被写体Objが含む構造物を認識するプログラムである。
【0062】
また、上記第1実施形態、第2実施形態、及びこれらの変形例において、学習済みモデルを用いて構造物認識部34及び減弱係数算出部35を構成することができる。例えば、図16に示すように、学習済みモデル302は、特定の被写体Objを撮影した放射線画像であって、撮影に使用した放射線Raのエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力により、被写体Objが含む1または複数の構造物と、構造物の減弱係数μと、を放射線画像において特定する。すなわち、学習済みモデル302は、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2等、特定の被写体Objについて撮影に使用した放射線Raのエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力を受ける。そして、これらの放射線画像において被写体Objが含む1または複数の構造物の位置等と、各構造物の減弱係数μと、を含む構造物特定情報を出力する。例えば、骨部121の位置等情報321とその減弱係数μ1、肺122の位置等情報322とその減弱係数μ2、心臓123の位置等情報323とその減弱係数μ3、及び、脂肪127の位置等情報327とその減弱係数μ4、等を出力する。上記学習済みモデル302は、例えば、ディープラーニング等公知の学習方法により学習できる。
【0063】
上記学習済みモデル302を用いて構造物認識部34及び減弱係数算出部35を構成する場合、構造物認識部34及び減弱係数算出部35は、学習済みモデル302を用いて、被写体Objが含む構造物を分類するプログラムである。
【0064】
上記実施形態等において、放射線画像取得部33、構造物認識部34、減弱係数算出部35、画像処理部36及び画像処理部36を構成する各部、組成量算出部201といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0065】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0066】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0067】
10 放射線撮影システム
13 放射線源
14 放射線撮影パネル
15 第1放射線検出器
16 第2放射線検出器
17 放射線エネルギー変換フィルタ
20 コンソール
21 表示部
22 操作部
30 放射線画像処理装置
31 表示部
32 操作部
33 放射線画像取得部
34 構造物認識部
35 減弱係数算出部
36 画像処理部
41 サブトラクション処理部
42 コントラスト調節部
43 色彩調節部
121 骨部
122 肺
123 心臓
126 筋肉
127 脂肪
128 素抜領域
201 組成量算出部
227A 中央部分
227B 中間部分
227C 外周部分
301 学習済みモデル
302 学習済みモデル
321、322、323、327 位置等情報
G1 第1放射線画像
G2 第2放射線画像
Gc 組成量画像
Ge 強調画像
Obj 被写体
Ra 放射線
S101~S104 動作ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の被写体について、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、
1または複数の前記放射線画像を用いて、前記被写体が含む構造物を認識する構造物認識部と、
前記構造物認識部の認識結果と、複数の前記放射線画像と、を用いて、前記構造物認識部が認識した1または複数の前記構造物について前記放射線の減弱係数を算出する減弱係数算出部と、
備える放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記構造物は、軟部、骨部、病変、病変の可能性がある部分、又は、人工物である請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記軟部は、心臓、肺、脂肪、及び、筋肉の少なくとも一つである請求項2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記放射線画像取得部は、散乱性補正処理を施した前記放射線画像を取得する請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
複数の前記放射線画像のうち1または複数の前記放射線画像に対して、前記減弱係数を用いて画像処理を行う画像処理部を備える請求項2から4のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記構造物認識部の認識結果と、前記減弱係数と、を用いて、前記構造物ごとの組成量を算出する組成量算出部を備える請求項5に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記構造物の前記組成量に対応した色または濃度を有する組成量画像を生成する請求項6に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記放射線画像又は前記画像処理部が生成した画像を表示する表示部を備える請求項5に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記放射線画像に基づき前記減弱係数を用いてサブトラクション画像を生成するサブトラクション処理部と、
前記サブトラクション画像を前記表示部に表示する際に、前記サブトラクション画像の画素値と表示濃度との対応関係を制御することによりコントラストを調節するコントラスト調節部と、
を備える請求項8に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
前記構造物認識部は、認識する前記構造物を前記被写体の中から相対的に決定する請求項1から9のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項11】
前記構造物認識部は、前記被写体における前記構造物の位置、大きさ、または、形状を認識する請求項1から10のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置
【請求項12】
前記減弱係数算出部は、2以上の前記放射線画像の対応する画素における画素値の比または差を用いて前記減弱係数を算出する請求項1から11のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項13】
前記構造物認識部は、2つの前記放射線画像を用いて3以上の前記構造物を認識し、かつ、
前記減弱係数算出部は、前記構造物認識部が認識処理に使用する2つの前記放射線画像を用いて、前記構造物認識部が認識した3以上の前記構造物の前記減弱係数を算出する請求項1から12のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項14】
前記画像処理部は、前記構造物認識部が認識した複数の前記構造物のうち1または複数の前記構造物を強調した強調画像を生成する請求項5に記載の放射線画像処理装置。
【請求項15】
前記画像処理部は、サブトラクション処理によって前記強調画像を生成する請求項14に記載の放射線画像処理装置。
【請求項16】
前記画像処理部は、少なくとも1つの前記構造物の色または濃度を変調した前記強調画像を生成する請求項14に記載の放射線画像処理装置。
【請求項17】
特定の被写体を撮影した放射線画像であって前記撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の前記放射線画像の入力により、前記被写体が含む1または複数の構造物の減弱係数を前記放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、前記被写体が含む前記構造物を分類するプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の放射線画像処理装置は、特定の被写体について、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、1または複数の放射線画像を用いて、被写体が含む構造物を認識する構造物認識部と、構造物認識部の認識結果と、複数の放射線画像と、を用いて、構造物認識部が認識した1または複数の構造物について放射線の減弱係数を算出する減弱係数算出部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
構造物は、軟部、骨部、病変、病変の可能性がある部分、又は、人工物であることが好ましい。軟部は、心臓、肺、脂肪、及び、筋肉の少なくとも一つであることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
放射線画像取得部は、散乱性補正処理を施した放射線画像を取得することが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像に対して、減弱係数を用いて画像処理を行う画像処理部を備えることが好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
構造物認識部の認識結果と、減弱係数と、を用いて、構造物ごとの組成量を算出する組成量算出部を備えることが好ましい。画像処理部は、構造物の組成量に対応した色または濃度を有する組成量画像を生成することが好ましい。放射線画像又は画像処理部が生成した画像を表示する表示部を備えることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
放射線画像に基づき減弱係数を用いてサブトラクション画像を生成するサブトラクション処理部と、サブトラクション画像を表示部に表示する際に、サブトラクション画像の画素値と表示濃度との対応関係を制御することによりコントラストを調節するコントラスト調節部と、を備えることが好ましい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
構造物認識部は、認識する構造物を被写体の中から相対的に決定することが好ましい。構造物認識部は、被写体における構造物の位置、大きさ、または、形状を認識することが好ましい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
減弱係数算出部は、2以上の放射線画像の対応する画素における画素値の比または差を用いて減弱係数を算出することが好ましい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
構造物認識部は、2つの放射線画像を用いて3以上の構造物を認識し、かつ、減弱係数算出部は、構造物認識部が認識処理に使用する2つの放射線画像を用いて、構造物認識部が認識した3以上の構造物の減弱係数を算出することが好ましい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
画像処理部は、構造物認識部が認識した複数の構造物のうち1または複数の構造物を強調した強調画像を生成することが好ましい。画像処理部は、サブトラクション処理によって強調画像を生成することが好ましい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
画像処理部は、少なくとも1つの構造物の色または濃度を変調した強調画像を生成することが好ましい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明のプログラムは、特定の被写体を撮影した放射線画像であって撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像の入力により、被写体が含む1または複数の構造物の減弱係数を放射線画像において特定する学習済みモデルを用いて、被写体が含む構造物を分類する。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
放射線源13は、撮影に必要な放射線Raを発生する装置であり、放射線Raを発生する放射線管と、放射線管が放射線Raを発生するために必要な高電圧を発生する高電圧発生回路等からなる。放射線源13は、放射線管の管電圧及び管電流等を調節することにより、線質(エネルギー分布(以下、単にエネルギーという))が異なる複数種類の放射線を発生できる。放射線源13が発生する放射線のエネルギーは撮影条件の1つである。本実施形態においては、放射線源13はX線を発生するX線源である。このため、放射線撮影システム10はX線を用いて被写体Objを撮影することにより、被写体ObjのX線画像を取得するX線撮影システムである。被写体Objは例えば人であり、本実施形態においては被写体Objの胸部を撮影する。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
表示部31は液晶ディスプレイ等であり、撮影した放射線画像及び放射線画像処理装置30が生成した画像等を表示する。操作部32は、放射線画像処理装置30を操作するためのキーボード及び/またはポインティングデバイス等である。表示部31及び操作部32はタッチパネルで構成することができる。なお、本実施形態においては、放射線画像処理装置30は、コンソール20とは別体の装置であるが、放射線画像処理装置30の一部または全部をコンソール20に設けることができる。この場合、放射線画像処理装置30の表示部31及び/または操作部32には、コンソール20の表示部21及び/または操作部22を使用できる。また、放射線画像処理装置30の全部をコンソール20に設ける場合、コンソール20が放射線画像処理装置30を構成する。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
放射線画像取得部33は、特定の被写体Objについて、撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる複数の放射線画像を取得する。「特定の被写体Obj」とは、被写体Objが特定の人または物であることをいう。また、「特定の被写体Objについて複数の放射線画像を取得する」とは、被写体Objが同一であり、かつ、当該被写体Objの撮影部位(撮影部分)及びその撮影方向が共通する複数の放射線画像を取得することをいう。「撮影に使用した放射線のエネルギーが互いに異なる」とは、放射線画像の形成(放射線Raの検出)の際に実質的に放射線Raの線質が異なることをいい、放射線源13が曝射する放射線Raの線質が異なる場合の他、放射線エネルギー変換フィルタ17等を介して線質が変化した放射線Raを用いて放射線画像を形成することを含む。すなわち、放射線画像取得部33は、例えば、放射線検出器を1つ備えるFPDを用いて放射線撮影をした場合、特定の被写体Objを放射線Raの線質を変えて複数回撮影した複数の放射線画像を取得する。また、放射線画像取得部33は、例えば放射線エネルギー変換フィルタ17等を介した複数の放射線検出器を含むFPDを用いて放射線撮影をした場合、これらの各放射線検出器が出力する各放射線画像を取得する。本実施形態においては、放射線画像取得部33は、第1放射線検出器15が出力する第1放射線画像G1と、第2放射線検出器16が出力する第2放射線画像G2と、を取得する。なお、放射線画像取得部33は、上記複数の放射線画像を取得する際に、いわゆる原画像(画像処理等を施していない画像)だけでなく、散乱線補正処理またはその他の画像処理等の各種処理を施した放射線画像を取得する場合がある。また、放射線画像取得部33は、取得する上記複数の放射線画像のうち1または複数もしくは全部を、散乱線補正処理等を施した放射線画像にすることができる。散乱線補正処理とは、放射線Raの被写体Objその他による散乱線を低減して補正する画像処理である。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
構造物認識部34は、放射線画像取得部33が取得した特定の被写体Objについての複数の放射線画像のうち1または複数の放射線画像を任意に選択して認識処理に使用できる。本実施形態においては、構造物認識部34は第1放射線画像G1を構造物の認識に使用するが、第1放射線画像G1の代わりに、または、第1放射線画像G1に加えて、第2放射線画像G2を使用できる。なお、構造物認識部34は、散乱線補正処理等を施した放射線画像を用いて上記認識処理を行うことができる。例えば、放射線画像取得部33が散乱線補正処理等を施した放射線画像を取得する場合、構造物認識部34は、その放射線画像を認識処理に使用できる。また、放射線画像取得部33が散乱線補正処理等を施していない放射線画像を取得する場合であっても、放射線画像処理装置30において散乱線補正処理等を実施する場合には、構造物認識部34は、放射線画像取得部33が取得する散乱線補正処理等を施していない放射線画像に代えて、あるいは、これとともに、散乱線補正処理等を施した放射線画像を用いて上記認識処理を行うことができる。放射線画像処理装置30は、画像処理部36において、放射線画像に対して散乱線補正処理等の各種処理を行うことができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
減弱係数算出部35は、構造物認識部34の認識結果と、複数の放射線画像と、を用いて、構造物認識部34が認識した1または複数の構造物について、放射線Raの減弱係数μを算出する。減弱係数算出部35が算出する減弱係数μはいわゆる線減弱係数であり、吸収または散乱等によって放射線Raが減弱する程度(割合)を表す。減弱係数μは、放射線Raが透過する構造物の具体的な組成(密度等)及び厚さ(質量)によって異なる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
なお、上記の通り、第1放射線画像G1における画素値と第2放射線画像G2における対応する画素の画素値の比または差がわかれば減弱係数μを算出できるので、簡単のため、各組成「Ca」「Cb」及び「Cc」の画素値が第1放射線画像G1において共通の「V1」であることとしたが、第1放射線画像G1において各組成「Ca」「Cb」及び「Cc」の画素値が共通である必要はない。また、4以上の構造物がある場合も上記と同様に、減弱係数算出部35は構造物(組成)ごとに減弱係数μを算出できる。