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特開2022-121904自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラム
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  • 特開-自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121904
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20220815BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20220815BHJP
   G01M 17/007 20060101ALN20220815BHJP
   B62D 25/20 20060101ALN20220815BHJP
   B62D 25/08 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
G06F17/50 604A
G06F17/50 680Z
G06F17/50 612H
G01M17/007 Z
B62D25/20 E
B62D25/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018883
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 功一
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 毅
【テーマコード(参考)】
3D203
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
3D203AA05
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB09
3D203BB23
3D203BB24
3D203BB25
3D203BB56
3D203BB73
3D203BC04
3D203BC10
3D203BC15
5B046AA04
5B046FA06
5B046JA07
5B046KA05
5B146AA05
5B146DC01
5B146DJ07
5B146DL08
5B146EA08
(57)【要約】
【課題】自動車の車体部品の振動性能に対する該車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法は、板厚が予め設定されてメッシュでモデル化された車体部品モデルを備えた車体メッシュモデルを取得し(S1)、板厚最適化対象車体部品モデルを選択し(S3)、車体部品モデルの中から選択した振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する板厚最適化解析条件を設定し(S5)、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析を行って最適な板厚を求め(S7)、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と予め設定された板厚との比を、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する(S9)、ものである。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを行い、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析方法であって、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得ステップと、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップと、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定ステップと、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析ステップと、
該板厚最適化解析ステップにおいて求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出ステップと、を含むことを特徴とする自動車の車体部品の板厚感度解析方法。
【請求項2】
複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析装置であって、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得部と、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択部と、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定部と、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析部と、
該板厚最適化解析部により求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出部と、を有することを特徴とする自動車の車体部品の板厚感度解析装置。
【請求項3】
複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得手段と、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択手段と、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定手段と、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析手段と、
該板厚最適化解析手段により求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出手段と、して実行させる機能を有する自動車の車体部品の板厚感度解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラムに関し、特に、自動車の車体部品の振動性能に対する該車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車産業においては環境問題に起因した車体の軽量化が進められるとともに、車体性能向上による商品競争力を高める車体開発が行われている。車体性能としては、例えば、衝突性能、車体剛性や耐久性能等が挙げられるが、特に車体部品からの騒音等の振動性能は車室内における乗員の快適性に関わる性能として着目されている。
【0003】
車体の振動性能の向上に対して効果の高い部位に対策を行うことは車体設計における従来の手法である。車体設計においてCAE解析は欠かせない技術であり、CAE解析により車体の振動性能の向上に対して効果の高い部位を早期に割り出すことは、車体の設計や開発期間の短縮に影響し、重要な技術開発課題となっている。
【0004】
車体の振動性能の向上に対して効果の高い部位を特定して対策を施す技術として、例えば特許文献1には、自動車の起振源から振動騒音の低減対象とするパネル部品に到るまでの振動の伝達経路となる振動伝達骨格部品のうち、前記パネル部品の振動に起因する振動騒音に対する寄与の大きい振動伝達骨格部品を特定し、該特定した振動伝達骨格部品の振動伝達を抑制する最適な板厚を求めることができる板厚最適化解析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6769536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている板厚最適化解析方法により各車体部品の最適な板厚を求めたとしても、車体全体としてどの車体部品が振動性能に対して感度が高いかを判別することはできなかった。そのため、車体部品の振動性能を効率的に向上させるためには、車体全体に対してどの部位の板厚を増加させればよいか、明らかでなかった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、自動車の車体部品の振動性能に対する該車体部品の板厚の感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析方法、板厚感度解析装置及び板厚感度解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法は、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを行い、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析するものであって、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得ステップと、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップと、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定ステップと、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析ステップと、
該板厚最適化解析ステップにおいて求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
(2)本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析装置は、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析するものであって、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得部と、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択部と、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定部と、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析部と、
該板厚最適化解析部により求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出部と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
(3)本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析プログラムは、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析するものであって、
コンピュータを、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得手段と、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択手段と、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定手段と、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析手段と、
該板厚最適化解析手段により求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出手段と、して実行させる機能を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能の向上に対して最適な板厚を車体部品モデルのメッシュごとに算出し、該メッシュごとに算出した最適な板厚を用いて振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する各車体部品モデルのメッシュごとの板厚に対する比を板厚感度として求めることにより、板厚の増加により振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能を効率的に向上させることができる部位を特定する指標を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る自動車の車体部品の板厚感度解析装置のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態において、一例として対象とした、車体部品としてパネル部品及び骨格部品とを備えてなる車体を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法における処理の流れを示すフロー図である。
図4】本発明の実施の形態において、一例として、車体の一部を解析対象とし、車体部品モデルとしてパネル部品モデルと骨格部品モデルとを備えてなる車体メッシュモデルを示す図である。
図5】本発明の実施の形態において、一例として、車体メッシュモデルに与える振動条件を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態において、板厚最適化解析により求めた板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚のコンター図である((a)斜視図、(b)側面図)。
図7】本発明の実施の形態において、車体メッシュモデルにおける板厚最適化対象車体部品モデルについて求めたメッシュごとの板厚感度のコンター図である((a)斜視図、(b)側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について説明するに先立ち、本発明で対象とする自動車の車体について説明する。
【0014】
本発明で対象とする自動車の車体は、複数の車体部品を備えてなるものであり、複数の車体部品には、パネル部品と骨格部品とがある。
パネル部品は、薄板構造の部品である外板パネルや内板パネルであり、図2に示す車体100においては、リア部110のリアフロア111やホイルハウス113等が例示される。
骨格部品は、自動車の車体骨格を構成する部品であり、図2に示す車体100においては、リア部110のCピラー115等が例示される。
そして、骨格部品から構成される車体骨格は、自動車の走行時にエンジンや路面からの振動による動的な荷重が入力して車体を加振する加振部(例えば、リアショック取付部117)を有する。
【0015】
<自動車の車体部品の板厚感度解析装置>
次に、本発明の実施の形態に係る自動車の車体部品の板厚感度解析装置(以下、単に「板厚感度解析装置」という)の構成について、以下に説明する。
【0016】
本実施の形態に係る板厚感度解析装置1は、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する車体部品の板厚感度を解析するものであって、図1に示すように、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、表示装置3、入力装置5、記憶装置7、作業用データメモリ9及び演算処理部11を有している。
【0017】
そして、表示装置3、入力装置5、記憶装置7及び作業用データメモリ9は、演算処理部11に接続され、演算処理部11からの指令によってそれぞれの機能が実行される。
【0018】
≪表示装置≫
表示装置3は、解析結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。
【0019】
≪入力装置≫
入力装置5は、車体メッシュモデルファイル23の表示指示や操作者の条件入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。
【0020】
≪記憶装置≫
記憶装置7は、車体メッシュモデルファイル23等の各種ファイルの記憶等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
【0021】
車体メッシュモデルとは、後述するように、車体の全部又は一部におけるパネル部品及び骨格部品からなる車体部品を細分化された複数のメッシュ(平面要素)でモデル化したパネル部品モデル及び骨格部品モデルからなる車体部品モデルを備えてなるものである。そして、車体メッシュモデルファイル23は、各車体部品モデルのメッシュや節点に関する情報や材料特性に関する情報等を格納している。
【0022】
≪演算処理部≫
演算処理部11は、図1に示すように、車体メッシュモデル取得部13と、板厚最適化対象車体部品モデル選択部15と、板厚最適化解析条件設定部17と、板厚最適化解析部19と、板厚感度算出部21と、を備え、PC等のCPU(中央演算処理装置)によって構成される。これらの各部は、CPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
演算処理部11における上記の各部の機能を以下に説明する。
【0023】
(車体メッシュモデル取得部)
車体メッシュモデル取得部13は、車体の全部又は一部について、振動性能評価対象車体部品を含む複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得するものである。
【0024】
車体メッシュモデルは、記憶装置7に記憶された車体メッシュモデルファイル23から要素情報や材料特性情報を読み込むことにより取得することができる。
【0025】
(板厚最適化対象車体部品モデル選択部)
板厚最適化対象車体部品モデル選択部15は、車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択するものである。
【0026】
(板厚最適化解析条件設定部)
板厚最適化解析条件設定部17は、車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定するものである。
【0027】
最適化解析条件としては、目的関数と制約条件の2種類がある。
目的関数とは、振動性能評価対象車体部品モデルの評価対象とする振動性能に応じて設定する最適化解析条件であり、評価対象とする振動性能としては、振動性能評価対象車体部品モデルの等価放射パワー、振動速度、振動加速度、音圧、固有値、等がある。
【0028】
例えば、評価対象とする振動性能を等価放射パワーとする場合、目的関数は、振動性能評価対象車体部品の特定周波数帯における等価放射パワーの最小化、とすることができる。
【0029】
等価放射パワーとは、振動する振動性能評価対象車体部品モデルから放射される音響特性を表す指標であり、音響を放射する放射面(振動性能評価対象車体部品モデルの表面)の面積と該放射面の振動速度の2乗の積に比例する。
【0030】
また、特定周波数帯とは、等価放射パワーの周波数特性において最大値を含む所定の周波数範囲のことをいう。特定周波数帯は、車体メッシュモデルを用いて周波数応答解析等の振動解析を予め行って振動性能評価対象車体部品モデルの等価放射パワーの周波数特性を求め、該求めた周波数特性から等価放射パワーが大きい周波数範囲とすることができる。
もっとも、特定周波数帯は、等価放射パワーの大きい周波数帯に限るものではなく、等価放射パワーを低減したい周波数範囲としてもよい。
【0031】
制約条件は、板厚最適化解析を行う上で課す制約であり、例えば、車体メッシュモデルの総重量を所定の重量以下、メッシュごとに求められる最適な板厚の範囲(下限値、上限値)等がある。制約条件は、複数の制約条件を設定することができる。
【0032】
制約条件としてメッシュごとの最適な板厚の範囲を設定する場合、板厚の範囲の上限値が過度に大きかったり下限値が過度に小さかったりすると、振動性能評価対象車体部品モデルの固有値が大きく変化してしまい、板厚最適化解析において振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能を適切に評価できない場合がある。そのため、制約条件として板厚の範囲を設定する場合、車体部品モデルに予め設定された板厚の0.25倍以上10倍以下の範囲内とすることが好ましい。
【0033】
なお、制約条件は、板厚最適化解析において必須ではないため、板厚最適化解析条件設定部17は、制約条件を与えず、目的関数のみを最適化解析条件として設定してもよい。
【0034】
また、最適化解析条件を設定するに際して、上記のとおり、等価放射パワーの最小化を目的関数とする場合、板厚最適化解析条件設定部17は、等価放射パワーの算出に用いる振動性能評価対象車体部品モデルの振動速度を求めるための周波数応答解析等の振動解析で与える振動条件を設定する。
【0035】
同様に、振動速度、振動加速度又は音圧等の最小化を目的関数とする場合においても、板厚最適化解析条件設定部17は、振動性能評価対象車体部品モデルの振動速度等を算出するための振動解析で与える振動条件を設定する。
【0036】
さらに、振動性能評価対象車体部品モデルの固有値の最大化を目的関数とする場合、板厚最適化解析条件設定部17は、最適化解析条件に加えて、振動性能の評価対象とする振動モード等を設定する。
【0037】
(板厚最適化解析部)
板厚最適化解析部19は、板厚最適化解析条件設定部17により設定された最適化解析条件の下で、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求めものである。
【0038】
ここで、メッシュごとに設定する設計変数(板厚)の数値や範囲は、実際の車体のパネル部品や骨格部品の製造に供する鋼板等の板厚の種類に応じて設定するとよい。
【0039】
(板厚感度算出部)
板厚感度算出部21は、板厚最適化解析部19により求められた板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出するものである。
【0040】
ここで、本発明における板厚感度とは、板厚最適化対象車体部品モデルにおけるメッシュのごとの最適な板厚が振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する寄与の度合いを表す指標である。そして、板厚感度が高い車体部品や車体部品の一部分ほど、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能向上(例えば、振動騒音の低減)に対する寄与が大きいことを表す。
【0041】
<自動車の車体部品の板厚感度解析方法>
次に、本実施の形態に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法(以下、単に「板厚感度解析方法」という)の構成について、以下に説明する。
【0042】
本実施の形態に係る板厚感度解析方法は、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、コンピュータが以下の各ステップを行い、複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する車体部品の板厚感度を解析するものであり、図3に示すように、車体メッシュモデル取得ステップS1と、板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップS3と、板厚最適化解析条件設定ステップS5と、板厚最適化解析ステップS7と、板厚感度算出ステップS9と、を含むものである。
【0043】
以下、図3に示すフローチャートに基づいて、上記の各ステップについて説明する。なお、以下の説明では、上記の各ステップとも、コンピュータによって構成された本発明の実施の形態に係る板厚感度解析装置1(図1)を用いて実行する。
【0044】
≪車体メッシュモデル取得ステップ≫
車体メッシュモデル取得ステップS1は、車体の全部又は一部について、振動性能評価対象車体部品を含む複数の車体部品がメッシュ(平面要素)でモデル化された車体部品モデルを備え、車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得するものである。
本実施の形態において、車体メッシュモデル取得ステップS1は、板厚感度解析装置1の車体メッシュモデル取得部13が行う(図1参照)。
【0045】
≪板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップ≫
板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップS3は、車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択するものである。
本実施の形態において、板厚最適化対象車体部品モデル選択ステップS3は、板厚感度解析装置1の板厚最適化対象車体部品モデル選択部15が行う(図1参照)。
【0046】
≪板厚最適化解析条件設定ステップ≫
板厚最適化解析条件設定ステップS5は、車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定するものである。
本実施の形態において、板厚最適化解析条件設定ステップS5は、板厚感度解析装置1の板厚最適化解析条件設定部17が行う(図1参照)。
【0047】
≪板厚最適化解析ステップ≫
板厚最適化解析ステップS7は、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、板厚最適化解析条件設定ステップS5において設定された最適化解析条件の下で、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求めものである。
本実施の形態において、板厚最適化解析ステップS7は、板厚感度解析装置1の板厚最適化解析部19が行う(図1参照)。
【0048】
≪板厚感度算出ステップ≫
板厚感度算出ステップS9は、板厚最適化解析ステップS7において求めた板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出するものである。
本実施の形態において、板厚感度算出ステップS9は、板厚感度解析装置1の板厚感度算出部21が行う(図1参照)。
【0049】
次に、本実施の形態に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法及び解析装置の作用効果を説明する。ここでは、図2に示すような、複数の車体部品(リアフロア111、ホイルハウス113、Cピラー115等)を備えてなる自動車の車体100の一部であるリア部110におけるリアフロア111を振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品とし、リアフロア111の振動性能に対する車体部品の板厚感度を解析した場合について、板厚感度解析装置1の動作とともに説明する。
なお、本願の図面中に示すX方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ、車体前後方向、車体左右方向及び車体上下方向を表す。
【0050】
まず、車体メッシュモデル取得部13(図1)により、車体100のリア側の一部であるリア部110について、図4に示すように、振動性能評価対象車体部品であるリアフロア111を含む車体部品(ホイルハウス113、Cピラー115等)がメッシュ(平面要素)でモデル化された車体部品モデル(リアフロアモデル201、ホイルハウスモデル203、Cピラーモデル205等)を備え、車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデル200を取得する。
【0051】
車体メッシュモデル200の各車体部品モデルに予め設定された板厚の範囲は、0.55mmから2.4mmであり、ホイルハウスモデル203に予め設定された板厚は0.65mm、Cピラーモデル205に予め設定された板厚は1.4mmであった。
【0052】
次に、板厚最適化対象車体部品モデル選択部15(図1)により、車体メッシュモデル200における車体部品モデルのうちホイルハウスモデル203及びCピラーモデル205等を板厚最適化対象車体部品モデルとして選択した。
【0053】
続いて、板厚最適化解析条件設定部17(図1)により、車体メッシュモデル200における車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルとしてリアフロアモデル201を選択し、リアフロアモデル201の振動性能に対する板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定した。ここでは、リアフロアモデル201の等価放射パワーを評価対象の振動性能とし、特定周波数帯における等価放射パワーの最小化を目的関数とする最適化解析条件を設定した。
【0054】
ここで、等価放射パワーを最小化する特定周波数帯は、車体メッシュモデル200を用いて予め周波数応答解析を行い、該周波数応答解析により求めた等価放射パワーの周波数特性から、等価放射パワーの大きい30~40Hzとした。
【0055】
また、板厚最適化解析条件設定部17は、最適化解析条件として、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚の範囲を、車体メッシュモデル200に予め設定された板厚の下限値(0.55mm)の0.5倍である0.275mmから板厚の上限値(2.4mm)の1.5倍である3.6mmとする制約条件を設定した。
【0056】
さらに、板厚最適化解析条件設定部17は、リアフロアモデル201の特定周波数帯における等価放射パワーを算出するための周波数応答解析で与える振動条件を設定した。
振動条件は、図5に示すように、車体メッシュモデル200におけるリアショック取付部207を加振部とし、当該加振部に車体上下方向(図5中のZ方向)上向きに周期的な荷重を与えるものとした。
【0057】
続いて、板厚最適化解析部19により、板厚最適化解析条件設定部17によって設定された最適化解析条件の下で、車体メッシュモデル200における板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求めた。
【0058】
図6に、車体メッシュモデル200における板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚の結果を示す。
図6(b)に示すように、Cピラーモデル205における部位Aとホイルハウスモデル203における部位Bにおける最適な板厚は、最適化解析条件で設定した板厚範囲の上限3.6mmと等しく、車体メッシュモデル200における他の部位に比べて板厚が大きい結果であった。
【0059】
最後に、板厚感度算出部21により、板厚最適化解析部19により求められた板厚最適化対象車体部品モデル(ホイルハウスモデル203及びCピラーモデル205等)のメッシュごとの最適な板厚と、板厚最適化対象車体部品モデルごとに予め設定された板厚と、の比を、リアフロアモデル201の振動性能に対する板厚最適化対象車体部品モデルにおけるメッシュごとの板厚感度として算出した。
【0060】
図7に、車体メッシュモデル200における板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度の結果を示す。
前述したように、Cピラーモデル205における部位Aとホイルハウスモデル203における部位Bの最適な板厚はいずれも3.6mmであり同程度であった(図6(b)参照)。しかしながら、部位Aに係るCピラーモデル205について予め設定された板厚は1.4mmであるのに対し、部位Bに係るホイルハウスモデル203について予め設定された板厚は0.65mmであった。そのため、部位A及び部位Bの板厚感度は、それぞれ、2.5及び5.5となり、両者に差異が生じた。
【0061】
図7に示す感度の結果から、Cピラーモデル205の部位Aと比べて、ホイルハウスモデル203における部位Bは、リアフロアモデル201の等価放射パワー最小化への感度が大きく、リアフロアモデル201の振動性能の向上、すなわち、振動騒音を低減するために板厚増加による対策を施すべき部位として特定された。
【0062】
本発明により求められた車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度が、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する感度となり得る理由は、以下のとおりである。
【0063】
板厚最適化解析部19により求められた板厚最適化対象車体部品モデルにおけるメッシュごとの最適な板厚が厚くなる部位は、当該メッシュの板厚を増して最適な板厚とすることで板厚最適化対象車体部品モデルの剛性が高くなり、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能の向上(振動騒音の低減、等)に大きく寄与することを示す。
【0064】
しかしながら、図6に示すように、最適な板厚が同程度のCピラーモデル205の部位Aとホイルハウスモデル203の部位Bとを比較すると、予め設定された板厚が大きいCピラーモデル205の部位Aは、最適な板厚に変更することによる剛性の向上代が小さいのに対し、予め設定された板厚が小さいホイルハウスモデル203の部位Bは、最適な板厚に変更することによる剛性の向上代が大きく、板厚変更による振動性能の向上(等価放射パワーの最小化)に対する感度が高いと言える。
【0065】
このように、板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を算出することで、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する感度の高い部位を特定することができる。
【0066】
以上、本発明によれば、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能の向上に対して最適な板厚を板厚最適化解析により車体部品モデルのメッシュごとに算出し、予め設定された板厚との比を用いて振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する各車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度を求めることにより、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能の向上に対して板厚増加による寄与の大きい部位を特定する指標を得ることができる。
さらに、実車体で振動性能を評価する前の車体設計の段階において、車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度に基づいて、板厚増加による対策を施す部位を特定することで、車体の設計及び開発期間を短縮することができる。
【0067】
板厚増加による対策を施す部位として特定された車体部品における当該部位に対しては、パッチ(鋼板等)を貼り付けて当該部位の板厚を増加する、又は、当該部位に相当する部位の板厚を大きくしたテーラードブランク(TWB)を用いて車体部品を製造する、等の対策を施すとよい。
【0068】
あるいは、車体部品を製造する過程において当該特定された部位にビード形状を付与する、又は、当該部位が曲げ加工された曲げ稜線である場合には稜線形状を変更する、等の当該部位の剛性の増加する対策を施してもよい。
【0069】
なお、車体性能への車体部品における各部位の感度を求める手法として、メッシュ(平面要素)でモデル化された車体部品を備えた車体を解析対象にし、密度法を適用したトポロジー最適化により算出される各メッシュの材料密度を感度として求める感度解析方法もある。
【0070】
しかしながら、一般にトポロジー最適化を用いた感度解析方法は、車体に静的な荷重が作用したときの車体の剛性に対する各車体部品の最適な材料密度(感度)を求めるものであり、動的な荷重が作用した場合において必要となる車体部品の質量の影響を考慮したものではない。そのため、本発明で対象とするような車体メッシュモデルに動的な荷重が作用して振動している場合において、静的な荷重付与を前提とする材料密度から特定された感度の高い部位は、必ずしも車体部品の振動性能に寄与する部位であるとは限らない。
【0071】
これに対し、本発明は、車体メッシュモデルを振動させるように動的な荷重が作用した場合において、各車体部品モデルの質量の影響を考慮して各車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求めるものである。そして、剛性と質量を考慮した板厚最適化により求めた最適な板厚を用いて感度を算出しているので、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能の向上に対して効果の高い部位を特定することができる。
【0072】
なお、上記の説明では、パネル部品であるリアフロア111(図2)を振動性能の評価対象とする車体部品としたものであったが、本発明は、振動性能評価対象車体部品をパネル部品に限定するものではなく、Cピラー等の骨格部品を振動性能評価対象車体部品としてもよい。
【0073】
また、板厚最適化対象車体部品モデルには、振動性能評価対象車体部品モデルを含めてもよく、振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する当該振動性能評価対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を算出し、該最適な板厚を用いて当該振動性能評価対象車体部品モデルのメッシュごとの感度を求めてもよい。
【0074】
さらに、上記の説明は、車体100(図2参照)のリア側の一部であるリア部110について、振動性能の評価対象とする車体部品の振動性能に対する車体部品の板厚感度を解析するものであったが、本発明は、車体100の全部について、車体部品の板厚感度を解析するものであってもよい。
【0075】
また、上記の説明では、図4に示す車体メッシュモデル200における一部の車体部品モデル(ホイルハウスモデル203及びCピラーモデル205等)を板厚最適化の対象としていたが、本発明は、車体メッシュモデルにおける全ての車体部品モデルを板厚最適化の対象としてもよい。
すなわち、本発明において車体メッシュモデルを構成する車体部品モデルから選択される板厚最適化対象車体部品モデルの数は特に限定されず、1又は複数(全てを含む)である。
【0076】
なお、上記の本発明に係る説明は、板厚感度解析装置及び板厚感度解析方法についてのものであったが、本発明は、複数の車体部品を備えてなる自動車の車体の全部又は一部について、前記複数の車体部品のうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品の振動性能に対する前記車体部品の板厚感度を解析する自動車の車体部品の板厚感度解析プログラムを含む。
【0077】
本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析プログラムは、
コンピュータを、
前記車体の全部又は一部について、前記振動性能評価対象車体部品を含む前記複数の車体部品がメッシュでモデル化された車体部品モデルを備え、該車体部品モデルごとに板厚が予め設定された車体メッシュモデルを取得する車体メッシュモデル取得手段と、
前記車体部品モデルのうち1又は複数を板厚最適化の対象とする板厚最適化対象車体部品モデルとして選択する板厚最適化対象車体部品モデル選択手段と、
前記車体部品モデルのうち振動性能の評価対象とする振動性能評価対象車体部品モデルを選択し、該振動性能評価対象車体部品モデルの振動性能に対する前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚最適化解析に関する最適化解析条件を設定する板厚最適化解析条件設定手段と、
前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚を設計変数として設定し、前記最適化解析条件の下で、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚を求める板厚最適化解析手段と、
該板厚最適化解析手段により求めた前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの最適な板厚と、前記板厚最適化対象車体部品モデルについて予め設定された板厚と、の比を、前記板厚最適化対象車体部品モデルのメッシュごとの板厚感度として算出する板厚感度算出手段と、して実行させる機能を有するものである。
【0078】
そして、本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析プログラムをコンピュータで実行することにより、上記で説明した本発明に係る自動車の車体部品の板厚感度解析方法及び装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
1 板厚感度解析装置
3 表示装置
5 入力装置
7 記憶装置
9 作業用データメモリ
11 演算処理部
13 車体メッシュモデル取得部
15 板厚最適化対象車体部品モデル選択部
17 板厚最適化解析条件設定部
19 板厚最適化解析部
21 板厚感度算出部
23 車体メッシュモデルファイル
100 車体
110 リア部
111 リアフロア
113 ホイルハウス
115 Cピラー
117 リアショック取付部
200 車体メッシュモデル
201 リアフロアモデル
203 ホイルハウスモデル
205 Cピラーモデル
207 リアショック取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7