(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121940
(43)【公開日】2022-08-22
(54)【発明の名称】保護部材貼着装置及び保護部材の貼着方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220815BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220815BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/68 N
H01L21/78 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018942
(22)【出願日】2021-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 良典
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA16
5F063BA20
5F063DF12
5F063DG28
5F063DG31
5F063EE09
5F131BA51
5F131CA12
5F131EA07
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC34
5F131EC53
5F131EC63
5F131EC64
5F131EC65
(57)【要約】
【課題】糊層の無いシートを皺が寄ることを抑制して基板に貼着することができること。
【解決手段】保護部材貼着装置1は、上部筐体11と下部筐体12とを備えた減圧チャンバー10と、下部筐体12の内部に設けられ基板200が載置される支持テーブル20と、減圧チャンバー10の内部空間17を第1空間171と第2空間172に仕切るようにシート210を固定するシート固定部30と、シート210を加熱して軟化させる加熱ユニット40と、制御部50と、を備え、シート固定部30は、シート210の外周212を固定する外周固定部32と、シート210の中央部211を支持テーブル20に載置された基板200と隙間を介して仮固定する仮固定部31と、を有し、仮固定部31は、シート210をタック力で保持する樹脂層33を下面に備える支持板34であり、樹脂層33及び支持板34には通気孔35が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に凹凸を備えた基板の該表面に熱可塑性樹脂のシートを貼着する保護部材貼着装置であって、
上部筐体と、下部筐体とに分離でき、該上部筐体、該下部筐体それぞれに減圧ユニットと大気開放ユニットが接続された減圧チャンバーと、
該下部筐体の内部に設けられ、該基板が載置される支持テーブルと、
該上部筐体と該下部筐体とが一体になった際に、該減圧チャンバーの内部空間を該上部筐体側と該下部筐体側に仕切るように該シートを固定するシート固定部と、
該シートを加熱して軟化させる加熱ユニットと、
該減圧チャンバーと該加熱ユニットとを制御し、該上部筐体と該下部筐体とを減圧した後に、該上部筐体を大気開放することで発生した差圧により該シートを該支持テーブルに載置された該基板に軟化させて密着させる制御部と、を備え、
該シート固定部は、
該シートの外周を固定する外周固定部と、
該シートの該支持テーブルと対面する領域を該上部筐体側から保持し、該支持テーブルに載置された該基板と隙間を介して該シートを仮固定する仮固定部と、を有し、
該仮固定部は、
該シートをタック力で保持する樹脂層を下面に備える支持板であり、該樹脂層及び該支持板には通気孔が形成されている保護部材貼着装置。
【請求項2】
該加熱ユニットは、該支持テーブルを加熱する請求項1に記載の保護部材貼着装置。
【請求項3】
請求項1の保護部材貼着装置を用い、表面側に凹凸を備えた基板の該表面に熱可塑性樹脂のシートを貼着する保護部材の貼着方法であって、
該加熱ユニットを稼働させる加熱ステップと、
該シート固定部に該シートを固定し、該支持テーブルに基板を載置する準備ステップと、
該加熱ステップ及び該準備ステップ実施後、該上部筐体と該下部筐体とを一体化させ、該基板の上方で該仮固定部に保持された該シートが該基板と対面する状態で、該上部筐体及び該下部筐体を減圧する減圧ステップと、
該減圧ステップ実施後、該上部筐体の内部の気圧を大気圧に近づけて該下部筐体の内部と上部筐体の内部との気圧差を所定以上に設定する事で、該シートが該仮固定部から離れて該基板に密着するシート密着ステップと、を備える保護部材の貼着方法。
【請求項4】
該シート密着ステップは、
該上部筐体の内部を大気圧に近づけて、該シートの中央を該基板に密着させる予備密着ステップと、
該上部筐体の内部を大気圧にして、該予備密着ステップで密着した該シートの中央から外側へと密着面積を広げる最終密着ステップと、を備える請求項3に記載の保護部材の貼着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材貼着装置及び保護部材貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられる半導体デバイスや各種デバイスチップは、デバイスが形成された基板を、研削砥石で研削して薄化したり、分割予定ラインに沿って分割する事で製造される。研削されたり分割されたりする際、デバイスを保護したり、チップがバラバラにならないよう、保護テープが貼着された状態で加工されるのが一般的である。
【0003】
保護テープは、貼着される面に形成された糊層で基板に貼着されるが、剥離すると基板の表面に残渣が残り、デバイスに悪影響を及ぼす恐れがある。特に、電極となるバンプが搭載された半導体ウェーハでは、バンプの凹凸を吸収する厚い糊層のある保護テープが用いられるため、糊の残渣が発生しやすい。
【0004】
そこで、糊層の無いシートを熱で軟化させつつ圧着させ基板に貼着する加工方法が考案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された方法により、残渣の問題は解消されるが、糊層の無いシートを確実に基板に固定するためには、基板である半導体ウェーハとの間に空気の噛み込み無く密着させる事が重要になる。
【0007】
そこで、減圧チャンバーを用いて貼着する方法が考案された。しかしながら、僅かでも差圧が発生すると、外周だけ固定されたシートが撓むように揺れながら基板に貼り込まれ、シートに皺が寄ってしまうという課題が有った。ほかにも、チャンバー内部の温度が高くなっていることでも、シートが縮み安く皺が寄り易いという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、糊層の無いシートを皺が寄ることを抑制して基板に貼着することができる保護部材貼着装置および保護部材の貼着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護部材貼着装置は、表面側に凹凸を備えた基板の該表面に熱可塑性樹脂のシートを貼着する保護部材貼着装置であって、上部筐体と、下部筐体とに分離でき、該上部筐体、該下部筐体それぞれに減圧ユニットと大気開放ユニットが接続された減圧チャンバーと、該下部筐体の内部に設けられ、該基板が載置される支持テーブルと、該上部筐体と該下部筐体とが一体になった際に、該減圧チャンバーの内部空間を該上部筐体側と該下部筐体側に仕切るように該シートを固定するシート固定部と、該シートを加熱して軟化させる加熱ユニットと、該減圧チャンバーと該加熱ユニットとを制御し、該上部筐体と該下部筐体とを減圧した後に、該上部筐体を大気開放することで発生した差圧により該シートを該支持テーブルに載置された該基板に軟化させて密着させる制御部と、を備え、該シート固定部は、該シートの外周を固定する外周固定部と、該シートの該支持テーブルと対面する領域を該上部筐体側から保持し、該支持テーブルに載置された該基板と隙間を介して該シートを仮固定する仮固定部と、を有し、該仮固定部は、該シートをタック力で保持する樹脂層を下面に備える支持板であり、該樹脂層及び該支持板には通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記保護部材貼着装置において、該加熱ユニットは、該支持テーブルを加熱しても良い。
【0011】
本発明の保護部材の貼着方法は、前記保護部材貼着装置を用い、表面側に凹凸を備えた基板の該表面に熱可塑性樹脂のシートを貼着する保護部材の貼着方法であって、該加熱ユニットを稼働させる加熱ステップと、該シート固定部に該シートを固定し、該支持テーブルに基板を載置する準備ステップと、該加熱ステップ及び該準備ステップ実施後、該上部筐体と該下部筐体とを一体化させ、該基板の上方で該仮固定部に保持された該シートが該基板と対面する状態で、該上部筐体及び該下部筐体を減圧する減圧ステップと、該減圧ステップ実施後、該上部筐体の内部の気圧を大気圧に近づけて該下部筐体の内部と上部筐体の内部との気圧差を所定以上に設定する事で、該シートが該仮固定部から離れて該基板に密着するシート密着ステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記保護部材の貼着方法において、該シート密着ステップは、該上部筐体の内部を大気圧に近づけて、該シートの中央を該基板に密着させる予備密着ステップと、該上部筐体の内部を大気圧にして、該予備密着ステップで密着した該シートの中央から外側へと密着面積を広げる最終密着ステップと、を備えても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、糊層の無いシートを皺が寄ることを抑制して基板に貼着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る保護部材貼着装置の構成例の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された保護部材貼着装置によりシートが貼着される基板の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る保護部材の貼着方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された保護部材の貼着方法の準備ステップを示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された保護部材の貼着方法の減圧ステップを示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップの予備密着ステップを示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップの最終密着ステップを示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップ後の基板の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る保護部材貼着装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る保護部材貼着装置の構成例の断面図である。
図2は、
図1に示された保護部材貼着装置によりシートが貼着される基板の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示された基板の要部の断面図である。
【0017】
実施形態1に係る
図1に示す保護部材貼着装置1は、表面201側に凹凸202(
図2に示す)を備えた基板200の表面201に熱可塑性のシート210を貼着する装置である。実施形態1では、基板200は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基材とする円板状の半導体ウェーハ、又は光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、
図1は、基板200の表面201側の凹凸202を省略している。
【0018】
基板200は、
図2に示すように、交差する複数の分割予定ライン203で区画された表面201の各領域それぞれにデバイス204が形成されている。デバイス204は、
図2及び
図3に示すように、デバイス204の電極に接続して、表面201よりも突出したバンプ205を有している。デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。バンプ205は、導電性の金属により構成され、実施形態1では、球状に形成されている。
【0019】
バンプ205は、デバイス204とこのデバイス204が実装される基板等の電極とを電気的に接続するものである。実施形態1において、基板200は、表面201よりも突出したバンプ205を有することで、表面201に凹凸202が形成されている。また、実施形態1では、基板200は、バンプ205を有して表面201に凹凸202を備えている。
【0020】
実施形態1において、基板200は、表面201側にシート210が貼着され、シート210を介して表面201側が研削装置のチャックテーブルに保持された状態で表面201の裏側の裏面206が研削されて、所定の仕上げ厚さまで薄化される。基板200は、薄化された後、分割予定ライン203に沿って個々のデバイス204に分割される。
【0021】
シート210は、熱可塑性樹脂によりシート状に形成され、平面形状が基板200よりも大径なシート状に形成されている。実施形態1では、シート210は、表面及び裏面の双方が平坦に形成されている。シート210は、柔軟性と非粘着性の熱可塑性樹脂により構成され、粘着性を有する樹脂で構成された糊層を備えないものである。また、シート210を構成する熱可塑性樹脂は、伸縮性を有するとともに、軟化点を超えて加熱されると軟化し、更に加熱されると収縮する。実施形態1では、シート210は、可視光に対して透明または半透明な樹脂により構成されている、実施形態1では、シート210は、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーのシートであり、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレン等により構成されている。実施形態1において、シート210の厚みは、50μm以上でかつ150μm以下である。
【0022】
実施形態1に係る保護部材貼着装置1は、
図1に示すように、減圧チャンバー10と、支持テーブル20と、シート固定部30と、加熱ユニット40と、制御部50とを備える。
【0023】
減圧チャンバー10は、上部筐体11と、下部筐体12とに分離でき、上部筐体11、下部筐体12それぞれに減圧ユニット13,14と、大気開放ユニット15,16とが接続されている。
【0024】
上部筐体11および下部筐体12は、それぞれ平坦な平坦板111,121と、平坦板111,121の外縁から立設した周板112,122とを備えている。上部筐体11および下部筐体12は、平坦板111,121の平面形状が同形状に形成されている。上部筐体11および下部筐体12は、周板112,122の平坦板111,121から離れた側の縁113,123が互いに重なる位置と、縁113,123が互いに離れた位置とに亘って図示しない移動ユニットにより移動される。上部筐体11および下部筐体12は、周板112,122の平坦板111,121から離れた側の縁113,123が互いに重なると、一体化する。
【0025】
減圧ユニット13,14は、一端が図示しない吸引源に接続しかつ他端が筐体11,12内の開口した配管131,141と、配管131,141に設けられた開閉弁132,142とを備える。減圧ユニット13,14は、開閉弁132,142が開き、吸引源により吸引されることで筐体11,12内を減圧する。
【0026】
大気開放ユニット15,16は、一端が大気開放しかつ他端が筐体11,12内の開口した配管151,161と、配管151,161に設けられた開閉弁152,162とを備える。大気開放ユニット15,16は、開閉弁152,162が開くことで筐体11,12内を大気開放する。また、上部筐体11の大気開放ユニット15の配管151は、平坦板111の内面の中央に開口している。
【0027】
支持テーブル20は、下部筐体12の内部に設けられ、基板200の表面201の裏側の裏面206が載置される。支持テーブル20は、基板200よりも大きく形成され、下部筐体12の平坦板121上に設置されている。支持テーブル20の上面21は、下部筐体12の周板122の縁123に沿って平坦に形成されて、基板200の裏面206が載置される。
【0028】
また、周板122の縁123から支持テーブル20の上面21までの距離22は、基板200の厚さ207よりも長く、バンプ205が設けられた位置の基板200の厚さ207よりも長い。このために、支持テーブル20の上面21に載置された基板200の表面201およびバンプ205は、下部筐体12の周板122の縁123よりも平坦板121寄り即ち下部筐体12の内側に配置される。
【0029】
シート固定部30は、上部筐体11と下部筐体12とが一体になった際に、シート210が減圧チャンバー10の内部空間17を上部筐体11側の内部である第1空間171と下部筐体12側の内部である第2空間172とに仕切るようにシート210を固定するものである。シート固定部30は、仮固定部31と、外周固定部32とを有する。
【0030】
仮固定部31は、シート210の支持テーブル20と対面する領域である中央部211を上部筐体11側から保持し、支持テーブル20に載置された基板200と隙間を介してシート210を仮固定するものである。なお、シート210の中央部211とは、シート210の支持テーブル20と、基板200の表面201に対して直交する方向に沿って対面する領域である。また、仮固定とは、シート210が離れることを許容する程度に固定することを示している。
【0031】
実施形態1では、仮固定部31は、シート210をタック力で保持する樹脂層33を下面に備える支持板34である。支持板34は、上部筐体11の平坦板111と外形が等しい平板状に形成され、上部筐体11の周板112の縁113で囲まれる開口を塞いだ格好で上部筐体11に取り付けられている。実施形態1では、支持板34は、アルミニウム合金により構成され、厚さが15mmである。
【0032】
支持板34は、下面に厚さ一定の樹脂層33が積層されている。樹脂層33は、シート210が位置ずれしない程度のタック力(接着力ともいう)を発揮して、タック力によりシート210を固定する(以下、仮固定する、と記載する)樹脂により構成されている。実施形態1では、樹脂層33は、例えば、アスカーC硬度で30度一家のウレタン樹脂(クッション性と粘着力を有し、耐震、防振、防音、耐衝撃性を有する所謂、ウレタンゲル)により構成され、厚さが1mmである。また、支持板34は、樹脂層33及び支持板34には、これらを貫通した通気孔35が形成されている。通気孔35は、間隔をあけて樹脂層33及び支持板34に複数設けられ、実施形態1では、樹脂層33及び支持板34の全体に亘って一様に設けられている。
【0033】
支持板34は、樹脂層33のタック力により、樹脂層33にシート210の支持テーブル20と対面する領域である中央部211を固定し、上部筐体11側に保持する。また、支持板34は、樹脂層33のシート210を固定する下面が上部筐体11の周板112の縁113と同一平面上に配置されている。このために、周板112,122の縁113,123同士が互いに重なる位置に筐体11,12が位置付けられると、支持板34は、前述した距離22が厚さ207よりも長いために、支持テーブル20に載置された基板200と隙間を介してシート210を仮固定することとなる。
【0034】
外周固定部32は、シート210の中央部211よりも外周212を固定するものである。実施形態1において、外周固定部32は、上部筐体11の周板112の縁113の全周に取り付けられている。実施形態1において、外周固定部32は、ゴムなどの弾性変形可能な弾性体で構成され、仮固定部31に仮固定されたシート210の外周212に当接して、シート210の外周212を固定する。
【0035】
また、外周固定部32は、周板112,122の縁113,123が互いに重なる位置に筐体11,12が位置付けられると、厚さが薄くなる方向に弾性変形して、上部筐体11の周板112の縁113とシート210の外周212との間をシールして、上部筐体11とシート210との間を気体が通ることを規制する。
【0036】
加熱ユニット40は、シート210を加熱して軟化させるものである。実施形態1において、加熱ユニット40は、支持テーブル20内に設置されたヒータであって、支持テーブル20を加熱することで、支持テーブル20及び基板200を介して、シート210を加熱する。実施形態1において、加熱ユニット40は、シート210を構成する熱可塑性樹脂の軟化点を超えて加熱して、シート210を軟化する。
【0037】
制御部50は、保護部材貼着装置1の上述した構成要素即ち減圧チャンバー10と加熱ユニット40とを制御し、上部筐体11と下部筐体12とを減圧した後に、上部筐体11を大気開放することで発生した筐体11,12内の差圧によりシート210を支持テーブル20に載置された基板200に軟化させて密着させるものである。即ち、制御部50は、シート210の基板200への貼着動作を保護部材貼着装置1に実施させるものである。
【0038】
なお、制御部50は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御部50の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、保護部材貼着装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して保護部材貼着装置1の上述した構成要素に出力する。
【0039】
制御部50は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0040】
また、実施形態1において、保護部材貼着装置1は、
図1に示すように、ゴムなどの弾性変形可能な弾性体で構成されたシール部材60を下部筐体12の周板122の縁123の全周に取り付けている。シール部材60は、周板112,122の縁113,123が互いに重なる位置に筐体11,12が位置付けられると、厚さが薄くなる方向に弾性変形して、下部筐体12の周板122の縁123とシート210の外周212との間をシールして、下部筐体12とシート210との間を気体が通ることを規制する。
【0041】
次に、本発明の実施形態1に係る保護部材の貼着方法を図面に基づいて説明する。
図4は、実施形態1に係る保護部材の貼着方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る保護部材の貼着方法は、前述した保護部材貼着装置1を用い、表面201側の凹凸202を備えた基板200の表面201に熱可塑性樹脂のシート210を貼着する方法である。即ち、実施形態1に係る保護部材の貼着方法は、前述した保護部材貼着装置1の貼着動作でもある。実施形態1に係る保護部材の貼着方法は、
図4に示すように、加熱ステップ101と、準備ステップ102と、減圧ステップ103と、シート密着ステップ104とを備える。
【0042】
(加熱ステップ)
加熱ステップ101は、加熱ユニット40を稼働させるステップである。実施形態1において、加熱ステップ101では、保護部材貼着装置1が、入力ユニットを介して貼着動作の加工条件を制御部50が受け付けて記憶装置に記憶し、制御部50がオペレータからの貼着動作の開始指示を受け付けると、貼着動作を開始し、加熱ユニット40を稼働して、加熱ユニット40を加工条件で定められた温度(例えば、100℃)まで加熱する。
【0043】
(準備ステップ)
図5は、
図4に示された保護部材の貼着方法の準備ステップを示す断面図である。準備ステップ102は、シート固定部30にシート210を固定し、支持テーブル20に基板200を載置するステップである。
【0044】
準備ステップ102では、保護部材貼着装置1は、減圧チャンバー10の筐体11,12を、縁113,123同士が離れた位置に位置付けて、開閉弁142,162を閉じて、下部筐体12の内部に設けられた支持テーブル20に図示しない搬送手段等により基板200の裏面206側が載置される。また、準備ステップ102では、保護部材貼着装置1は、開閉弁132,152を閉じて、シート固定部30の樹脂層33に中央部211が当接し、外周固定部32に外周212が当接するように、シート搬送手段等によりシート210が搬入される。
【0045】
準備ステップ102では、保護部材貼着装置1は、
図5に示すように、タック力により樹脂層33にシート210の中央部211を仮固定し、外周固定部32にシート210の外周212を固定する。
【0046】
(減圧ステップ)
図6は、
図4に示された保護部材の貼着方法の減圧ステップを示す断面図である。減圧ステップ103は、加熱ステップ101及び準備ステップ102実施後、上部筐体11と下部筐体12とを一体化させ、基板200の上方で仮固定部31に保持されたシート210が基板200と対面する状態で、上部筐体11及び下部筐体12を減圧するステップである。
【0047】
減圧ステップ103では、保護部材貼着装置1は、
図6に示すように、周板112,122の縁113,123が互いに重なる位置に筐体11,12を位置付けて、筐体11,12を一体化する。すると、保護部材貼着装置1は、シート210、外周固定部32及びシール部材60のシールにより減圧チャンバー10の内部空間17が密閉され、減圧チャンバー10の内部空間17が第1空間171と第2空間172とに仕切られる。
【0048】
減圧ステップ103では、保護部材貼着装置1は、開閉弁132,142を開いて、減圧ユニット13,14により筐体11,12内即ち第1空間171と第2空間172とを減圧する。このとき、シート210は、樹脂層33に密着して、支持テーブル20上の基板との間に隙間を設けている。なお、実施形態1において、減圧ステップ103では、保護部材貼着装置1は、所定時間、開閉弁132,142を開いて、減圧ユニット13,14により第1空間171及び第2空間172を減圧し、空間171,172の減圧後、開閉弁132,142を閉じる。
【0049】
(シート密着ステップ)
図7は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップの予備密着ステップを示す断面図である。
図8は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップの最終密着ステップを示す断面図である。
図9は、
図4に示された保護部材の貼着方法の密着ステップ後の基板の要部の断面図である。
【0050】
シート密着ステップ104は、減圧ステップ103実施後、上部筐体11の内部である第1空間171の気圧を大気圧に近づけて下部筐体12の内部である第2空間172と上部筐体11の第1空間171との気圧差を所定以上に設定する事で、シート210が仮固定部31から離れて基板200に密着するステップである。
【0051】
シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、開閉弁132,142,162を閉じた状態で、開閉弁152を開く。すると、大気開放ユニット15の配管151を通して、第1空間171に気体が侵入して、第1空間171の気圧が大気圧に近付く。また、配管151が平坦板111の中央に開口しているために、第1空間171に侵入した気体が、支持板34及び樹脂層33を貫通した通気孔35のうち配管151の開口寄りの中央の通気孔35を通って、シート210の中央を基板200の表面201に向かって押圧する。第2空間172と上部筐体11の第1空間171との気圧差が所定以上になると、保護部材貼着装置1は、
図7に示すように、樹脂層33のタック力に抗してシート210の中央が仮固定部31の樹脂層33から離れて、シート210の中央が基板200の表面201に接触する。
【0052】
シート210は、基板200の表面201に接触すると、支持テーブル20内の加熱ユニット40により基板200が加熱されているために、基板200を介して、軟化点を超える温度まで加熱され、基板200の表面201に密に接着(即ち密着)するとともに、バンプ205の表面に密に接着(即ち密着)する。
【0053】
シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、
図7に示すように、シート210の中央部211の中央を基板200の表面201に密着するとともに、バンプ205の表面に密着する。なお、
図7は、上部筐体11の第1空間171を大気圧に近づけて、シートの中央を基板200に密着させるとともに、中央部211の外周212側を基板200との間に隙間を設けた予備密着ステップ104-1を示す。
【0054】
シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、大気開放ユニット15の配管151を通して、第1空間171に気体が侵入するのにしたがって、シート210の中央部211が中央から外周212側に向かって順に基板200の表面201に密着するとともに、バンプ205の表面に密着する。シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、
図8に示すように、第1空間171が大気圧になると、シート210の中央部211全体が基板200の表面201に密着するとともに、バンプ205の表面に密着する。
【0055】
なお、
図8は、上部筐体11の第1空間171を大気圧にして、予備密着ステップ104-1で密着したシート210の中央から外周212側へと密着面積を広げる最終密着ステップ104-2を示す。こうして、シート密着ステップ104は、
図4に示すように、上部筐体11の第1空間171を大気圧に近づけて、シート210の中央を基板200に密着させる予備密着ステップ104-1と、上部筐体11の第1空間171を大気圧にして、予備密着ステップ104-1で密着したシート210の中央から外周212側へと密着面積を広げる最終密着ステップ104-2と、を備える。
【0056】
シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、開閉弁152を開いてから所定時間が経過すると、
図9に示すように、シート210の中央部211全体を基板200の表面201及びバンプ205の表面に密着する。シート密着ステップ104では、保護部材貼着装置1は、開閉弁162を開いて、下部筐体12の第2空間172を大気開放し、周板112,122の縁113,123が互いに離れた位置に筐体11,12を位置付けて、図示しない搬送手段により支持テーブル20上のシート210が密着した基板200が搬出されて、保護部材の貼着方法即ち保護部材貼着装置1の貼着動作が終了する。
【0057】
以上説明したように、実施形態1に係る保護部材貼着装置1及び保護部材の貼着方法は、シート210を基板200に隙間を介して対面させた状態でタック力のある樹脂層33で仮固定するため、第1空間171と第2空間172との気圧差が所定以上になって初めてシート210が樹脂層33から離れて、基板200に密着する。また、保護部材貼着装置1及び保護部材の貼着方法は、シート210の外周固定部32から最も離れた位置である中央が最初に仮固定部31から離れるため、支持テーブル20の中央をシート210の中央に合わせる事で、基板200の中央から外周212に向けて徐々にシート210を基板200に貼着させることが出来、基板200に貼着されたシート210に皺が寄るのを抑制できるという効果を奏する。
【0058】
その結果、保護部材貼着装置1及び保護部材の貼着方法は、糊層の無いシート210を皺が寄ることを抑制して基板200に貼着することができるという効果を奏する。
【0059】
また、保護部材貼着装置1及び保護部材の貼着方法は、縁113,123が互いに離れた位置に減圧チャンバー10の筐体11,12を位置付けて、シート210を樹脂層33にタック力で仮固定した後、縁113,123が互いに重なる位置に減圧チャンバー10の筐体11,12を位置付けてからシート210を基板200に貼着する。このために、保護部材貼着装置1及び保護部材の貼着方法は、閉じられた減圧チャンバー10内でシート210が加熱されても、基板200に貼着されるまでシート210が樹脂層33に仮固定されるので、シート210が縮みにくく皺が発生しにくい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本発明では、上部筐体11は、外周固定部32に加え、シート210の外周212をクランプ等で保持するシート保持部を備えていても良い。また、本発明では、基板200の凹凸は、バンプ205以外にも、デバイス204を形成するパターンの凹凸も含んでも良い。また、本発明では、基板200は、ウェーハの他に、樹脂パッケージ基板でも良い。
【符号の説明】
【0061】
1 保護部材貼着装置
10 減圧チャンバー
11 上部筐体
12 下部筐体
13,14 減圧ユニット
15,16 大気開放ユニット
17 内部空間
20 支持テーブル
30 シート固定部
31 仮固定部
32 外周固定部
33 樹脂層
34 支持板
35 通気孔
101 加熱ステップ
102 準備ステップ
103 減圧ステップ
104 シート密着ステップ
104-1 予備密着ステップ
104-2 最終密着ステップ
171 第1空間(上部筐体側、上部筐体の内部)
172 第2空間(下部筐体側、下部筐体の内部)
200 基板
201 表面
202 凹凸
210 シート
211 中央部(支持テーブルと対面する領域)