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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123724
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】フィルム膜構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/34 20060101AFI20220817BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
E04B1/34 F
E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021228
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】390023353
【氏名又は名称】協立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 佳央
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141EE03
2E141EE33
(57)【要約】
【課題】荷重に対するフィルム膜材の耐性低下を抑制しつつ膜パネルを大きくできるようにする。
【解決手段】フィルム膜構造は、建築物の屋根に用いられ、膜パネル6を有する。膜パネル6はフィルム膜材7と支持体8と補強ベルト9とを備える。フィルム膜材7は透光性を有する樹脂によって形成される。支持体8は、フィルム膜材7の外縁に沿って延びるように配置され、その外縁に対し連結される。補強ベルト9は、フィルム膜材7よりも強度の高い膜材によって形成されており、フィルム膜材7の上面と下面との少なくとも一方に接した状態で同膜材7を横切り、補強ベルト9の両端部が支持体8に接続される。積雪や風などによってフィルム膜材7に対し大きな荷重が作用したときには、その荷重を補強ベルト9で受けることができる。更に、その荷重が補強ベルト9を介して支持体8に伝達される。これにより、荷重に対するフィルム膜材7の耐性を高めることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根に用いられ、膜パネルを有するフィルム膜構造であって、
前記膜パネルは、フィルム膜材と支持体と補強用索状体とを備えており、
前記フィルム膜材は、透光性を有する樹脂によって形成されており、
前記支持体は、前記フィルム膜材の外縁に沿って延びるように配置され、その外縁に対し連結されるものであり、
前記補強用索状体は、前記フィルム膜材よりも強度の高い膜材によって形成されており、前記フィルム膜材における上面と下面との少なくとも一方に接した状態で同フィルム膜材を横切り、前記補強用索状体の両端部が前記支持体に接続されているフィルム膜構造。
【請求項2】
前記補強用索状体は、複数の補強用索状体であり、互いに交差するように延びている請求項1に記載のフィルム膜構造。
【請求項3】
前記補強用索状体は、複数の補強用索状体であり、互いに平行となるように延びている請求項1又は2に記載のフィルム膜構造。
【請求項4】
前記補強用索状体は、その端部が複数に分岐した状態で前記支持体に接続されている請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム膜構造。
【請求項5】
前記補強用索状体は、前記フィルム膜材の下面に接する補強用索状体、及び、前記フィルム膜材の上面に接する補強用索状体である請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム膜構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根に用いられるフィルム膜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
競技場といった建築物の屋根に用いられるフィルム膜構造として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。このフィルム膜構造は膜パネルを有している。膜パネルはフィルム膜材と支持体とを備えている。フィルム膜材は、一般に透光性を有する樹脂によって形成されている。支持体は、フィルム膜材の外縁に沿って延びるように配置されている。支持体は、フィルム膜材の外縁に対し連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-151763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記フィルム膜構造では、膜パネルを大きくしたい要望がある。ただし、膜パネルのフィルム膜材を大きくすると、荷重に対するフィルム膜材の耐性が低下する。従って、荷重に対するフィルム膜材の耐性低下を抑制しつつ膜パネルを大きくする点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するフィルム膜構造は、建築物の屋根に用いられ、膜パネルを有する。膜パネルは、フィルム膜材と支持体と補強用索状体とを備える。フィルム膜材は、透光性を有する樹脂によって形成されている。支持体は、フィルム膜材の外縁に沿って延びるように配置され、その外縁に対し連結されるものである。補強用索状体は、膜材よりも強度の高い膜材によって形成されており、上記フィルム膜材における上面と下面との少なくとも一方に接した状態で同膜材を横切り、補強用索状体の両端部が支持体の異なる位置に接続されている。
【0006】
上記構成によれば、フィルム膜材に作用する荷重を補強用索状体で受けることができる。更に、その荷重が補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、膜パネルを大きくしたときの荷重に対するフィルム膜材の耐性低下を抑制することができる。言い換えれば、荷重に対するフィルム膜材の耐性低下を抑制しつつ膜パネルを大きくすることができる。
【0007】
上記膜構造において、補強用索状体は、複数の補強用索状体であり、互いに交差して延びるものとすることが考えられる。
この構成によれば、膜パネルのフィルム膜材に作用する荷重を、互いに交差するように延びる複数の補強用索状体で受けることができ、その荷重が複数の上記補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、荷重に対するフィルム膜材の耐性を、複数の上記補強用索状体によって効果的に高めることができる。
【0008】
上記膜構造において、補強用索状体は、複数の補強用索状体であり、互いに平行となるように延びるものとすることが考えられる。
この構成によれば、膜パネルのフィルム膜材に作用する荷重を、互いに平行となるように延びる複数の補強用索状体で受けることができ、その荷重が複数の上記補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、荷重に対するフィルム膜材の耐性を、複数の上記補強用索状体によって効果的に高めることができる。
【0009】
上記膜構造において、補強用索状体は、その端部が複数に分岐した状態で支持体に接続されるものとすることが考えられる。
この構成によれば、膜パネルのフィルム膜材に作用する荷重を、端部が複数に分岐した補強用索状体で受けることができ、その荷重が上記補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、荷重に対するフィルム膜材の耐性を、上記補強用索状体によって効果的に高めることができる。
【0010】
上記膜構造において、補強用索状体は、フィルム膜材の下面に接する補強用索状体、及び、フィルム膜材の上面に接する補強用索状体とすることが考えられる。
膜パネルのフィルム膜材に作用する荷重としては、積雪等による下方に向かう荷重と、風等によってフィルム膜材が持ち上げられることに伴う上方に向かう荷重とがある。上記構成によれば、積雪等によって膜パネルのフィルム膜材に対し下方に向かう荷重が作用したとき、その荷重をフィルム膜材の下面に接する補強用索状体で受けることができ、その荷重が上記補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、上記荷重に対するフィルム膜材の耐性を高めることができる。また、風等によって膜パネルのフィルム膜材が持ち上げられてフィルム膜材に対し上方に向かう荷重が作用したとき、その荷重をフィルム膜材の上面に接する補強用索状体で受けることができ、その荷重が上記補強用索状体を介して支持体に伝達される。このため、上記荷重に対するフィルム膜材の耐性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フィルム膜構造が適用される競技場を示す略図。
図2】フィルム膜構造を形成するためのクッション構造を有する膜パネルを示す断面図。
図3】フィルム膜材の強度と補強ベルトに使用する膜材の強度とを比較するためのグラフ。
図4】クッション構造を有する膜パネルのフィルム膜材を斜め上方から見た状態を示す斜視図。
図5】同膜パネルの支持体及びその周辺の構造を示す断面図。
図6】同膜パネルの支持体及びその周辺を図5の上方から見た状態を示す平面図。
図7】テンション構造を有する膜パネルを示す断面図。
図8】同膜パネルのフィルム膜材を斜め上方から見た状態を示す斜視図。
図9】同膜パネルの支持体及びその周辺の構造を示す断面図。
図10】同膜パネルの支持体及びその周辺を図9の上方から見た状態を示す平面図。
図11】クッション構造を有する膜パネルの他の例を示す断面図。
図12】膜パネルの他の例を示す平面図。
図13】膜パネルの他の例を示す平面図。
図14】膜パネルの他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、フィルム膜構造の第1実施形態について、図1図6を参照して説明する。
図1に示すように、フィルム膜構造1は、競技場2といった建築物の屋根として用いられる。競技場2は、グラウンド3と観客席4と構造部材5とを備えている。
【0013】
グラウンド3には芝が群生されている。観客席4は、グラウンド3を囲むように配置されている。構造部材5は、観客席4の上の屋根を支えるためのものである。フィルム膜構造1は、複数の膜パネル6を有しており、それら膜パネル6を並べることによって形成されている。複数の膜パネル6は、競技場2の構造部材5によって支持されている。
【0014】
この実施形態のフィルム膜構造1は、いわゆるクッション構造となっている。すなわち、フィルム膜構造1の膜パネル6は、図2に示すようにクッション構造を有するものとされている。膜パネル6は、フィルム膜材7と支持体8と補強ベルト9とを備えている。補強ベルト9は補強用索状体としての役割を担う。図2においては、フィルム膜材7の断面が実線で示されており、補強ベルト9の断面が破線で示されている。
【0015】
フィルム膜材7は、第1フィルム7aと第2フィルム7bとを有している。第1フィルム7aの外縁と第2フィルム7bの外縁とは、厚さ方向に重ねられ、互いに熱溶着されて一体化されている。第1フィルム7aと第2フィルム7bとの間には、空気層Sが存在している。これにより、フィルム膜材7は、空気層Sを第1フィルム7aと第2フィルム7bとの間に挟む構造となっている。
【0016】
第1フィルム7a及び第2フィルム7bは、密閉性及び耐候性が高く且つ透光性を有する樹脂によって形成されている。第1フィルム7a及び第2フィルム7bを形成する樹脂としては、例えばフッ素樹脂を用いることができる。こうしたフッ素樹脂としては、例えば4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)があげられる。
【0017】
支持体8は、フィルム膜材7の外縁に沿って延びるように配置されている。この支持体8は、競技場2の構造部材5(図1)によって支持されている。支持体8は、全体として枠状に形成されており、フィルム膜材7の外縁に対し連結されている。従って、フィルム膜材7は、支持体8を介して、競技場2の構造部材5に支持されている。
【0018】
補強ベルト9は、フィルム膜材7よりも強度の高い膜材によって形成されている。この膜材は、基布に対し例えばフッ素樹脂をコーティングすることによって形成されている。こうしたフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を採用することが考えられる。上記基布としては、ガラス繊維を縦糸及び横糸とする繊維布を採用することが考えられる。補強ベルト9の幅は、例えば50~500mmとされている。
【0019】
補強ベルト9は、フィルム膜材7の下と上とにそれぞれ配置されている。フィルム膜材7の下に位置する補強ベルト9は、フィルム膜材7(第1フィルム7a)の下面に接した状態で同フィルム膜材7を横切っている。この補強ベルト9の両端部は、支持体8に接続されている。フィルム膜材7の上に位置する補強ベルト9は、フィルム膜材7(第2フィルム7b)の上面に接した状態で同フィルム膜材7を横切っている。この補強ベルト9の両端部も、支持体8に接続されている。
【0020】
図3は、フィルム膜材7の第1フィルム7a及び第2フィルム7bの強度と、補強ベルト9に使用する膜材の強度を比較するためのグラフである。図3のグラフの横軸は歪みであり、縦軸は応力である。図3において、実線L1はETFEからなるフィルムに作用する応力と歪みとの関係を示しており、破線L2は上記フィルムをフィルム膜材7として用いるに当たっての許容応力を示している。
【0021】
図3において、実線L3は補強ベルト9の基布を形成するガラス繊維からなる縦糸に作用する応力と歪みとの関係を示しており、破線L4は上記縦糸を補強ベルト9の基布として用いるに当たっての許容応力を示している。図3において、実線L5は補強ベルト9の基布を形成するガラス繊維からなる横糸に作用する応力と歪みとの関係を示しており、破線L6は上記横糸を補強ベルト9の基布として用いるに当たっての許容応力を示している。図3から分かるように、補強ベルト9は、第1フィルム7a及び第2フィルム7bに対し、約3倍の強度を有している。
【0022】
次に、膜パネル6における補強ベルト9の配置について説明する。
図4は、膜パネル6のフィルム膜材7を斜め上方から見た状態を示している。図4から分かるように、この例におけるフィルム膜材7は円形とされている。フィルム膜材7の上面及び下面には複数の上記補強ベルト9が配置されている。
【0023】
フィルム膜材7の上面に配置された複数の補強ベルト9では、一群の補強ベルト9が互いに平行となっており、それら補強ベルト9と直交する別の一群の補強ベルト9も互いに平行となっている。また、フィルム膜材7の下にも、フィルム膜材7の上と同様に、複数の補強ベルト9が配置されている。すなわち、フィルム膜材7の下面に配置された複数の補強ベルト9でも、一群の補強ベルト9が互いに平行となっており、それら補強ベルト9と直交する別の一群の補強ベルト9も互いに平行となっている。
【0024】
次に、膜パネル6の支持体8について説明する。
図5は支持体8及びその周辺の構造を示しており、図6は支持体8及びその周辺を図5の上方から見た状態を示している。図5に示すように、競技場2の構造部材5は柱材12及び梁材13を備えており、梁材13に膜パネル6の支持体8が固定されている。支持体8は、フィルム膜材7の外縁を挟み込む膜下地ボックス14とカバー15とを備えており、それら膜下地ボックス14及びカバー15によってフィルム膜材7の外縁と接続されている。図5及び図6に示すように、フィルム膜材7の上及び下に配置された補強ベルト9の端部にはベルト調整金具16が固定されている。このベルト調整金具16を支持体8に取り付けることにより、補強ベルト9の端部が支持体8に接続されている。
【0025】
次に、本実施形態のフィルム膜構造1の作用について説明する。
フィルム膜構造1のフィルム膜材7は、ETFEからなる第1フィルム7a及び第2フィルム7bによって形成されている。このため、膜パネル6を軽くすることができる。そして、競技場2の屋根を複数の膜パネル6で形成することにより、その屋根を軽量なものとすることができる。
【0026】
第1フィルム7a及び第2フィルム7bを形成する樹脂(ETFE)は、透光性を有している。詳しくは、第1フィルム7a及び第2フィルム7bをETFEで形成することにより、第1フィルム7a及び第2フィルム7bの透光性が、例えば80%と高い値とされている。このため、太陽光を観客席4及びグラウンド3に効果的に取り入れることができる。その結果、観客席4及びグラウンド3を明るくすることができ、グラウンド3に群生する芝を育ちやすくすることができる。一方、観客席4からは空が見やすくなるため、観客席4にいる人が開放感を抱きやすい。
【0027】
また、フィルム膜構造1の下に発色の異なる発光体を適宜配置することにより、その発光体からの光をフィルム膜材7を介して競技場2の外に向けて発するようにすれば、競技場2の外に向けた光による演出を行うことができる。
【0028】
ところで、競技場2といった建築物の屋根に用いられるフィルム膜構造1では、積雪等によってフィルム膜材7に対し下方に向かう大きな荷重が作用したり、風等によってフィルム膜材7が持ち上げられて上方に向かう大きな荷重が作用したりする。
【0029】
フィルム膜材7における第1フィルム7a及び第2フィルム7bが透光性を有する樹脂(この例ではETFE)で形成される場合、上述した荷重に対するフィルム膜材7の耐性を高めることは難しい。このため、フィルム膜構造1ではフィルム膜材7を比較的小さく形成することにより、上記荷重に対する耐性をフィルム膜材7に持たせるようにしなければならない。一方で、フィルム膜構造1における膜パネル6を大きくしたい要望がある。ただし、こうした要望に応じて膜パネル6を大きくすると、上述した荷重に対するフィルム膜材7の耐性がたらなくなるおそれがある。このことに対処するため、フィルム膜構造1では、膜パネル6におけるフィルム膜材7の下と上とにそれぞれ補強ベルト9が配置されている。
【0030】
フィルム膜材7の下に位置する補強ベルト9は、フィルム膜材7の下面に接した状態で同フィルム膜材7を横切っている。この補強ベルト9の両端部は、支持体8に接続されている。これにより、積雪等によってフィルム膜材7に対し下方に向かう大きな荷重が作用したとき、その荷重を上記補強ベルト9で受けることができる。更に、その荷重が補強ベルト9を介して支持体8に伝達される。このため、上記荷重に対するフィルム膜材7の耐性を高めることができる。
【0031】
フィルム膜材7の上に位置する補強ベルト9は、フィルム膜材7の上面に接した状態で同フィルム膜材7を横切っている。この補強ベルト9の両端部も、支持体8に接続されている。これにより、風等によってフィルム膜材7が持ち上げられてフィルム膜材7に対し上方に向かう大きな荷重が作用したとき、その荷重を上記補強ベルト9で受けることができる。更に、その荷重が補強ベルト9を介して支持体8に伝達される。このため、上記荷重に対するフィルム膜材7の耐性を高めることができる。
【0032】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)荷重に対するフィルム膜材7の耐性低下を抑制しつつ、膜パネル6を大きくすることができる。
【0033】
(2)補強ベルト9は膜材によって形成されており、膜材は基布に対しフッ素樹脂等をコーティングすることによって形成されている。このため、フィルム膜材7に対し荷重が作用したとき、フィルム膜材7が変位することによって補強ベルト9とフィルム膜材7とが擦れたとしても、それによってフィルム膜材7に傷が付きにくい。
【0034】
(3)フィルム膜材7の上面及び下面に配置された複数の補強ベルト9では、一群の補強ベルト9が互いに平行となっており、それら補強ベルト9と直交する別の一群の補強ベルト9も互いに平行となっている。そして、フィルム膜材7に作用する荷重を、それら補強ベルト9によって受けることができ、その荷重が上記補強ベルト9を介して支持体8に伝達される。このため、荷重に対するフィルム膜材7の耐性を、上記補強ベルト9によって効果的に高めることができる。
【0035】
(4)補強ベルト9がフィルム膜材7を横切っているとしても、その補強ベルト9がフィルム膜材7と重なる面積は非常に小さいため、補強ベルト9がフィルム膜材7(第1フィルム7a及び第2フィルム7b)の透光性低下の原因になることはない。従って、膜パネル6に補強ベルト9を設けたとしても、グラウンド3での芝生の育成やグラウンド3内への採光に必要とされるフィルム膜材7の透光性を確保することができる。
【0036】
(5)膜パネル6がクッション構造を有するものであるため、フィルム膜材7の上面及び下面が曲面となり、外部からの荷重に対するフィルム膜材7の耐性を確保しやすい。また、積雪をフィルム膜材7の上面によって押し上げることができるため、その上面に水たまりが生じることを抑制できる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、フィルム膜構造の第2実施形態について、図7~10を参照して説明する。
この実施形態のフィルム膜構造1は、いわゆるテンション構造となっている。すなわち、フィルム膜構造1の膜パネル6が、図7に示すようにテンション構造を有するものとされている。膜パネル6のフィルム膜材7は、一つのフィルム11によって形成されている。このフィルム膜材7(フィルム11)の外縁が支持体8に対し連結されている。膜パネル6におけるフィルム膜材7と支持体8との連結は、フィルム膜材7に対して支持体8に向けた引っ張り力が作用するように行われる。
【0038】
図8は、膜パネル6のフィルム膜材7を斜め上方から見た状態を示している。図8から分かるように、この例におけるフィルム膜材7は長方形とされている。フィルム膜材7の上面及び下面には複数の補強ベルト9(図8にはフィルム膜材7の上面の補強ベルト9のみ図示)配置されている。フィルム膜材7の上面に配置された複数の補強ベルト9は、互いに平行となっており、且つ、フィルム膜材7の短辺方向に延びている。なお、フィルム膜材7の下にも、フィルム膜材7の上と同様に、複数の補強ベルト9が配置されている。フィルム膜材7の下面に配置された複数の補強ベルト9も、互いに平行となっており、且つ、フィルム膜材7の短辺方向に延びている。
【0039】
図9は上記膜パネル6の支持体8及びその周辺の構造を示しており、図10は支持体8及びその周辺を図5の上方から見た状態を示している。図10に示すように、支持体8は、構造部材5の梁材13に固定されている。支持体8は、膜下地プレート17とクランプ18とを備えており、クランプ18によってフィルム膜材7の外縁と接続されている。図9及び図10に示すように、フィルム膜材7の上及び下に配置された補強ベルト9の端部にはベルト調整金具16が固定されている。このベルト調整金具16を支持体8に取り付けることにより、補強ベルト9の端部が支持体8に接続されている。
【0040】
この実施形態によれば、第1実施形態における(1)~(4)の効果と同様の効果が得られるようになる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・第1実施形態において、図11に示すように、フィルム膜材7は、第1フィルム7aと第2フィルム7bとの間に不燃シート10を配置したものであってもよい。不燃シート10の外縁は、第1フィルム7a及び第2フィルム7bの外縁と共に、支持体8に対して連結されている。不燃シート10は、建築基準法で定められる防火性能を有する材料、例えばPTFEでコーティングされたガラス繊維布を用いることが考えられる。
【0042】
・第1実施形態において、一群の補強ベルト9と別の一群の補強ベルト9とが必ずしも直交している必要はなく、それら一群の補強ベルト9と別の一群の補強ベルト9との交差が直交以外の交差であってもよい。
【0043】
・第1実施形態において、フィルム膜材7が第2実施形態のように長方形とされていてもよい。この場合、支持体8もフィルム膜材7に対応して長方形の枠状とされる。
・フィルム膜材7が長方形とされるとともに支持体8が長方形の枠状とされる場合、図12に示すように、膜パネル6を支持体8の長辺方向に延びる補強ベルト9と支持体8の短辺方向に延びる補強ベルト9とを有するものとしてもよい。図12の例では、支持体8の短辺方向に延びる補強ベルト9が互いの間に間隔をおいて平行となるように複数設けられており、それら補強ベルト9に対して支持体8の長辺方向に延びる一つの補強ベルト9が直交している。
【0044】
図12の例において、支持体8の短辺方向に延びる複数の補強ベルト9は、必ずしも互いに平行に延びている必要はない。
図12の例において、支持体8の長辺方向に延びる補強ベルト9が、互いに間隔をおいて複数設けられていてもよい。
【0045】
・フィルム膜材7が長方形とされるとともに支持体8が長方形の枠状とされる場合、図13に示すように、補強ベルト9が支持体8の長辺及び短辺に対しそれぞれ傾斜するように配置されていてもよい。図13の例では、複数の補強ベルト9のうち、一群の補強ベルト9が互いに平行となるように延びているとともに、それら補強ベルト9とは別の一群の補強ベルト9も互いに平行となるように延びており、各群の補強ベルト9が互いに交差している。
【0046】
図14に示すように、補強ベルト9の端部が複数に分岐した状態で支持体8に接続されていてもよい。この場合、フィルム膜材7に作用する荷重を、端部が複数に分岐した補強ベルト9で受けることができ、その荷重が上記補強ベルト9を介して支持体8に伝達される。このため、上記補強ベルト9によって、フィルム膜材7の強度を効果的に高めることができる。
【0047】
・補強ベルト9は、フィルム膜材7の下のもののみ設けられていたり、フィルム膜材7の上のもののみ設けられていたりしてもよい。
・フィルム膜材7を形成するためのフィルムは、ETFE以外の樹脂によって形成されていてもよい。
【0048】
・補強ベルト9を形成するための膜材はガラス繊維を縦糸及び横糸とする繊維布からなる基布に対しフッ素系樹脂をコーティングすることによって形成されているが、上記基布はガラス繊維を縦糸及び横糸とする繊維布以外の布であってもよい。また、上記基布は、PTFE以外の樹脂によってコーティングされていてもよい。
【0049】
・上記基布は、必ずしもコーティングされている必要はない。
・補強用索状体として補強ベルト9を例示したが、これに代えてフィルム膜材7よりも強度の高い膜材によって形成されたロープ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…フィルム膜構造
2…競技場
3…グラウンド
4…観客席
5…構造部材
6…膜パネル
7…フィルム膜材
7a…第1フィルム
7b…第2フィルム
8…支持体
9…補強ベルト
10…不燃シート
11…フィルム
12…柱材
13…梁材
14…膜下地ボックス
15…カバー
16…ベルト調整金具
17…膜下地プレート
18…クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14