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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124114
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20220818BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20220818BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B24B27/06 Q
B28D5/04 C
H01L21/304 611W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021695
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】篠原 武宏
(72)【発明者】
【氏名】百中 幸久
【テーマコード(参考)】
3C069
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB01
3C069BC02
3C069CA04
3C069EA01
3C158AA05
3C158AA07
3C158AA14
3C158AA16
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB04
3C158DA03
5F057AA02
5F057AA37
5F057BA01
5F057CA02
5F057DA15
5F057EB24
(57)【要約】
【課題】ローラユニットに対するメインローラの締結態様を均一化するとともに、メインローラの脱着に係る作業効率を向上することにより、加工品の品質及び生産効率を向上することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置2は、軸部20を有するメインローラ6と、軸部20の内周面20bに締結具30を介して嵌挿される回転軸28を有するローラユニット4とを備え、締結具30は、圧力媒体が封入される加圧室40が区画される締結部32と、圧力媒体が封入されるともに加圧室40に連通する導圧室42が区画された操作部34とを有し、操作部34を操作することにより、導圧室42の圧力媒体を導入して加圧室40を加圧することにより締結部32を軸径方向Yに変形させ、締結部32と回転軸28の外周面28a及び軸部20の内周面20bとの間にそれぞれ生じる摩擦力により軸部20の内周面20bに回転軸28を締結する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをワイヤでスライス加工する加工装置であって、
内周面を有する軸部、及び前記ワイヤが巻き掛けられる多数の溝が周方向に沿って螺旋状に、且つ軸線方向に所定の間隔で形成された樹脂層を有し、前記樹脂層で前記軸部の外周面が覆われたメインローラと、
前記軸部の内周面に締結具を介して嵌挿される回転軸を有し、前記回転軸を前記メインローラの前記軸部と一体に回転可能に支持するローラユニットと
を備え、
前記締結具は、
前記回転軸の外周面と前記軸部の内周面との間に嵌挿され、非圧縮性の圧力媒体が封入される加圧室が区画されるとともに、軸径方向への可撓性を有する締結部と、
前記圧力媒体が封入されるともに前記加圧室に連通する導圧室が区画された操作部と
を有し、
前記操作部を操作することにより、前記導圧室の前記圧力媒体を前記加圧室に導入し、当該導入された前記圧力媒体によって前記加圧室を加圧することにより、前記締結部を前記軸径方向に変形させ、前記締結部と前記回転軸の外周面及び前記軸部の内周面との間にそれぞれ生じる摩擦力により前記軸部の内周面に前記回転軸を締結する、加工装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記導圧室に連通されるボルト孔、及び前記ボルト孔に螺合されるボルトを有し、
前記ボルトを前記ボルト孔において螺進させることにより、前記導圧室の前記圧力媒体を前記加圧室に導入し、当該導入された前記圧力媒体によって前記加圧室を加圧することにより、前記締結部を前記軸径方向に変形させ、前記締結部と前記回転軸の外周面及び前記軸部の内周面との間にそれぞれ生じる摩擦力により前記軸部の内周面に前記回転軸を締結する、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記締結部は、前記回転軸の外周面に当接する内スリーブと、前記軸部の内周面に当接する外スリーブとにより前記加圧室を区画し、
前記操作部を操作することにより、前記導圧室の前記圧力媒体を前記加圧室に導入し、当該導入された前記圧力媒体によって前記加圧室を加圧することにより、前記内スリーブが前記軸径方向に縮径されて前記回転軸の外周面に押し付けられるとともに、前記外スリーブが前記軸径方向に拡径されて前記軸部の内周面に押し付けられ、前記内スリーブと前記回転軸の外周面との間に生じる摩擦力と、前記外スリーブと前記軸部の内周面との間に生じる摩擦力とにより前記軸部の内周面に前記回転軸を締結する、請求項1又は2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関し、特にワークをワイヤでスライス加工するワイヤソーやワイヤ放電加工装置などの加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤソーやワイヤ放電加工装置は、ワークをワイヤでスライス加工する加工装置である。このような加工装置は、ワイヤが巻き掛けられる多数の溝が周方向に沿って螺旋状に、且つ軸線方向に所定の間隔で形成されたメインローラを備えている。メインローラは、内周面を有する軸部(芯材)と、軸部の外周面を覆うとともに前述した多数の溝が形成される樹脂層とを有している。
【0003】
特許文献1には、メインローラ及びローラユニットを備えたワイヤソーが開示されている。ローラユニットは、メインローラの軸部の内周面に締結具を介して嵌挿される回転軸を有し、この回転軸をメインローラの軸部と一体に回転可能に支持する。特許文献1に記載の締結具は、外周面がテーパ状のスリーブであり、いわゆるクサビ方式の摩擦式締結具である。
【0004】
メインローラをローラユニットに組み付ける際、作業者は、スリーブをメインローラの軸部の内周面とローラユニットの回転軸の外周面との間に配置し、スリーブの端面を直接打ち込む、或いは、スリーブの端面をローラユニットの回転軸やメインローラの軸部を介して間接的に打ち込む。これにより、スリーブが回転軸の外周面とメインローラの軸部の内周面との間に嵌挿され、締結具と回転軸の外周面及び軸部の内周面との間にそれぞれ生じる摩擦力によって、メインローラの軸部の内周面にローラユニットの回転軸が締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-221383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クサビ方式の機械的な締結を行う摩擦式締結具は、締結具の打ち込み作業を要するため、作業者の作業の熟練度に応じてメインローラの軸部とローラユニットの回転軸との締結態様にばらつきを生じ得る。具体的には、作業者の熟練度が低い場合、メインローラの軸部とローラユニットの回転軸とが同芯とならないことがある。
【0007】
この場合には、メインローラがローラユニットの回転軸に対し偏芯して回転してしまうため、メインローラの回転方向における変位(振れ)が大きくなり、メインローラの溝に巻き掛けられたワイヤの繰り出しが不安定となる。従って、スライス加工された加工品であるウェハの厚みや反りが変化し、ウェハの品質に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
また、メインローラをメンテナンス時に脱着する場合、締結具を打ち込んで取り付けたり、締結具を取り外したりしなければならない。この際、現場では、比較的大型の工具を用いて複数の比較的大型のボルトを締結するなどの作業が発生する。また、複数の大型のボルトを所定のトルクで締結するために、各ボルトを予め定められた順番で複数回に分けて締結する作業が発生することもある。
【0009】
また、締結具の打ち込み状態を調整するために、締結具であるスリーブのテーパ面を現場で切削加工してテーパ角度を調整する作業(テーパ縁切り作業)が発生することもある。これらの作業は、メインローラの脱着作業の作業効率を著しく低下させる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ローラユニットに対するメインローラの締結態様を均一化するとともに、メインローラの脱着に係る作業効率を向上することにより、加工品の品質及び生産効率を向上することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の加工装置は、ワークをワイヤでスライス加工する加工装置であって、内周面を有する軸部、及びワイヤが巻き掛けられる多数の溝が周方向に沿って螺旋状に、且つ軸線方向に所定の間隔で形成された樹脂層を有し、樹脂層で軸部の外周面が覆われたメインローラと、軸部の内周面に締結具を介して嵌挿される回転軸を有し、回転軸をメインローラの軸部と一体に回転可能に支持するローラユニットとを備え、締結具は、回転軸の外周面と軸部の内周面との間に嵌挿され、非圧縮性の圧力媒体が封入される加圧室が区画されるとともに、軸径方向への可撓性を有する締結部と、圧力媒体が封入されるともに加圧室に連通する導圧室が区画された操作部とを有し、操作部を操作することにより、導圧室の圧力媒体を加圧室に導入し、当該導入された圧力媒体によって加圧室を加圧することにより、締結部を軸径方向に変形させ、締結部と回転軸の外周面及び軸部の内周面との間にそれぞれ生じる摩擦力により軸部の内周面に回転軸を締結することを特徴としている。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1において、操作部は、導圧室に連通されるボルト孔、及びボルト孔に螺合されるボルトを有し、ボルトをボルト孔において螺進させることにより、導圧室の圧力媒体を加圧室に導入し、当該導入された圧力媒体によって加圧室を加圧することにより、締結部を軸径方向に変形させ、締結部と回転軸の外周面及び軸部の内周面との間にそれぞれ生じる摩擦力により軸部の内周面に回転軸を締結することを特徴としている。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、締結部は、回転軸の外周面に当接する内スリーブと、軸部の内周面に当接する外スリーブとにより加圧室を区画し、操作部を操作することにより、導圧室の圧力媒体を加圧室に導入し、当該導入された圧力媒体によって加圧室を加圧することにより、内スリーブが軸径方向に縮径されて回転軸の外周面に押し付けられるとともに、外スリーブが軸径方向に拡径されて軸部の内周面に押し付けられ、内スリーブと回転軸の外周面との間に生じる摩擦力と、外スリーブと軸部の内周面との間に生じる摩擦力とにより軸部の内周面に回転軸を締結することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
従って、請求項1記載の加工装置によれば、従来のクサビ方式の摩擦式締結具を用いる際に発生する締結具の打ち込み作業は不要となり、操作部を操作するだけの作業でローラユニットに対しメインローラを締結することができる。従って、作業者の作業の熟練度が低い場合であっても、ローラユニットの回転軸に対してメインローラの軸部を同芯に位置決めして締結可能となり、ローラユニットに対するメインローラの締結態様を均一化することができる。
【0015】
また、メインローラをローラユニットに同芯に締結することができるため、メインローラの回転方向における変位が抑制され、メインローラからのワイヤの繰り出しを安定化することができる。従って、スライス加工された加工品の品質を向上することができる。また、前述した打ち込み作業に加え、この打ち込み作業に付随する、大型のボルトを大型の工具を用いて順に段階的に締結する作業や、テーパ縁切り作業も不要となる。従って、メインローラの脱着作業の作業効率を向上することができる。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、操作部は、導圧室に連通されるボルト孔、及びボルト孔に螺合されるボルトを有し、操作部の操作はボルトをボルト孔において螺進させることにより行われる。これにより、ボルトを工具で回動させるだけの簡単な作業でローラユニットに対するメインローラの締結が可能となる。従って、ローラユニットに対するメインローラの締結態様の均一化及びメインローラの脱着に係る作業効率の向上をさらに確実に実現することができる。
【0017】
また、請求項3記載の発明によれば、締結部は、回転軸の外周面に当接する内スリーブと、軸部の内周面に当接する外スリーブとにより加圧室を区画する。加圧室の加圧により、内スリーブは軸径方向に縮径されて回転軸の外周面に押し付けられるとともに、外スリーブは軸径方向に拡径されて軸部の内周面に押し付けられる。これにより、内スリーブ及び外スリーブによって締結部の全周に亘る高精度な締結が可能となる。従って、ローラユニットに対するメインローラの締結態様の均一化及びメインローラの脱着に係る作業効率の向上をより一層確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤソーの概略図である。
図2】ローラユニットの回転軸に締結されたメインローラの横断面図である。
図3】締結前の締結具の(a):横断面図、(b):図3(a)のA-A方向から見た縦断面図である。
図4】締結後の締結具の(a):横断面図、(b):図4(a)のB-B方向から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る加工装置について図面を参照して説明する。
図1は、ワークWをワイヤ1でスライス加工する加工装置の一例として、ワイヤソー2の概略図を示す。ワイヤソー2は、ローラユニット4を備え、ローラユニット4は一対のメインローラ6を有している。一対のメインローラ6は、ワイヤ経路8において互いに離間して配置され、ローラユニット4に設けられた後述の回転軸28にそれぞれ締結されている。これらの回転軸を図示しないモータで駆動することにより各メインローラ6をそれぞれ正逆回転可能である。
【0020】
ワイヤソー2は、一対のワイヤリール10と一対のガイドローラ12とを備えている。各ワイヤリール10は、ワイヤ経路8においてローラユニット4及び各ガイドローラ12を隔てた位置に互いに離間して配置され、図示しないモータによりそれぞれ正逆回転可能である。各ワイヤリール10は、回転方向に応じて繰り出しリール又は巻き取りリールとして使用される。
【0021】
繰り出しリールとして使用されるワイヤリール10は、その回転に伴ってワイヤ1を繰り出し、繰り出されたワイヤ1はワイヤ経路8に沿って一方のガイドローラ12を介してローラユニット4に向けて案内される。各ガイドローラ12は、方向変換ローラであって、ワイヤ経路8においてローラユニット4を隔てた位置に互いに離間して配置されている。
【0022】
ワイヤリール10から繰り出されたワイヤは、一方のガイドローラ12を経てローラユニット4に導かれる。ローラユニット4に導かれたワイヤ1は、一対のメインローラ6間に所定の回数巻き掛けられた後、ローラユニット4から導出され、他方のガイドローラ12を経て、巻き取りリールとして使用されるワイヤリール10に巻き取られる。
【0023】
各ワイヤリール10は、図示しないトラバース制御機構にそれぞれ連結され、各トラバース制御機構は、連結されたワイヤリール10をその軸線方向に往復動させる。これにより、ワイヤ経路8におけるワイヤ1の安定した繰り出し又は巻き取りが可能となる。ローラユニット4の上方の一対のメインローラ6間には昇降テーブル14が配置されている。昇降テーブル14の下面には接着部16が設けられ、接着部16にはスライス加工の対象となるワークWが取り付けられる。
【0024】
ワイヤ1がローラユニット4を通過して走行中、ワークWは、昇降テーブル14とともに徐々に降下され、一対のメインローラ6間に位置するワイヤ1によって複数のスライス品に切断される。この際、メインローラ6間に位置するワイヤ1にはクーラントが供給される。
【0025】
クーラントは、ワイヤ1及び各メインローラ6を冷却するための冷却液として使用され、クーラントに砥粒を含有する場合、ワークWを切断するための研削液としても使用される。クーラントが砥粒を含有しない場合、ワイヤ1自体に砥粒が固着される。クーラントは、メインローラ6間に位置するワイヤ1に供給された後、回収槽18にて回収されて再利用される。
【0026】
図2は、ローラユニット4の回転軸28に締結されたメインローラ6の横断面図を示す。メインローラ6は、芯材である中空の軸部20と、軸部20の外周面20aを覆う樹脂層22と、樹脂層22を軸部20の軸線方向Xの両側にて保持する一対のリング状の保持部24とを備えている。樹脂層22には、ワイヤ1が所定の回数巻き掛けられる多数の溝26が軸部20の周方向に沿って螺旋状に、且つ軸線方向Xに所定の間隔(溝ピッチ)で形成されている。
【0027】
メインローラ6の軸部20の内周面20bには、締結具30を介してローラユニット4の回転軸28が嵌挿されて締結されている。締結具30を介して軸部20と回転軸28とが締結されることにより、ローラユニット4は、複数のベアリング31を介して回転軸28をメインローラ6と一体に回転可能に支持する。
【0028】
締結具30は、締結部32と操作部34とを備えている。締結部32は、回転軸28の外周面28aと軸部20の内周面20bとの間に嵌挿されている。また、操作部34は、回転軸28に挿通されるとともに、軸線方向Xにおいてメインローラ6の外側に位置付けられる。
【0029】
図3は、締結前の締結具30の(a):横断面図と、(b):図3(a)のA-A方向から見た縦断面図とをそれぞれ示す。締結部32は、スリーブ状の部位であり、回転軸28の外周面28aに当接する内スリーブ36と、軸部20の内周面20bに当接する外スリーブ38とから構成されている。
【0030】
内スリーブ36及び外スリーブ38は、少なくとも軸径方向Yへの可撓性を有する材料から形成されている。締結部32の内部には、内スリーブ36と外スリーブ38との間に周方向に亘って加圧室40が区画されている。加圧室40には、非圧縮性の流体からなる例えばオイルなどの圧力媒体が封入されている。
【0031】
操作部34は、締結部32よりも拡径されたフランジ状の部位であり、内部に加圧室40に連通する導圧室42が区画されている。導圧室42と加圧室40とは連通路44を介して連通される。導圧室42及び連通路44にも圧力媒体が封入されている。圧力媒体は、操作部34の外周面34aに開口された封入口46から、加圧室40、導圧室42、及び連通路44に予め封入される。
【0032】
操作部34は、導圧室42に連通されるボルト孔48と、ボルト孔48に螺合されたボルト50とを有する。ボルト50は例えば六角穴付ボルトであり、ボルト孔48は、操作部34において回転軸28を回避した位置に延設されている。操作部34の外周面34aには切欠部52が設けられ、切欠部52からはボルト50のヘッド部50aに形成された六角穴が露出している。ボルト50のネジ部50bの先端は、導圧室42に面しており、導圧室42の一部を密閉状態で区画している。
【0033】
図4は、締結後の締結具30の(a):横断面図と、(b):図4(a)のB-B方向から見た縦断面図とをそれぞれ示す。図4(b)に示すように、作業者がヘッド部50aの六角穴に六角レンチなどの工具54を係合させ、図示する矢印方向に回動させてボルト50を螺進させる。これにより、ネジ部50bが矢印方向に移動し、導圧室42の容積が減じられ、導圧室42の圧力媒体が連通路44を介して加圧室40に導入される。このような操作部34の操作により、加圧室40は導圧室42から導入された圧力媒体によって加圧される。
【0034】
内スリーブ36及び外スリーブ38は軸径方向Yへの可撓性を有するため、加圧室40の加圧により、内スリーブ36は軸径方向Yに縮径されて回転軸28の外周面28aに押し付けられる。また、外スリーブ38は軸径方向Yに拡径されて軸部20の内周面20bに押し付けられる。
【0035】
これにより、内スリーブ36と回転軸28の外周面28aとの間に生じる摩擦力と、外スリーブ38と軸部20の内周面20bとの間に生じる摩擦力とにより、軸部20の内周面20bに回転軸28が締結され、ローラユニット4に対するメインローラ6の取り付けが完了する。
【0036】
以上のように本実施形態のワイヤソー2は、圧力媒体の圧力を利用した油圧式(ハイドロ式)の摩擦式締結具30を備え、操作部34を操作することにより、操作部34の導圧室42の圧力媒体を締結部32の加圧室40に導入し、この導入された圧力媒体によって加圧室40を加圧する。
【0037】
そして、加圧室40の加圧により締結部32を軸径方向Yに変形させ、締結部32と回転軸28の外周面28a及び軸部20の内周面20bとの間にそれぞれ生じる摩擦力により軸部20の内周面20bに回転軸28を締結する。これにより、ローラユニット4に対するメインローラ6の締結態様を均一化することができるとともに、メインローラ6の脱着に係る作業効率を向上することができるため、ワイヤソー2で加工する加工品の品質及び生産効率を向上することができる。
【0038】
より具体的には、従来のクサビ方式の摩擦式締結具を用いる際に発生する締結具の打ち込み作業は不要となり、操作部34を操作するだけの作業でローラユニット4に対しメインローラ6を締結することができる。従って、作業者の作業の熟練度が低い場合であっても、ローラユニット4の回転軸28に対してメインローラ6の軸部20を同芯に位置決めして締結可能となり、ローラユニット4に対するメインローラ6の締結態様を均一化することができる。
【0039】
また、メインローラ6をローラユニット4に同芯に締結することができるため、メインローラ6の回転方向における変位が抑制され、メインローラ6からのワイヤ1の繰り出しを安定化することができる。従って、スライス加工された加工品であるウェハの厚みや反りが均一となり、ウェハの品質を向上することができる。また、前述した打ち込み作業に加え、この打ち込み作業に付随する、大型のボルトを大型の工具を用いて順に段階的に締結する作業や、テーパ縁切り作業も不要となる。従って、メインローラ6の脱着作業の作業効率を向上することができる。
【0040】
特に本実施形態では、操作部34は、導圧室42に連通されるボルト孔48、及びボルト孔48に螺合されるボルト50を有し、操作部34の操作はボルト50をボルト孔48において螺進させることにより行われる。これにより、ボルト50を工具54で回動させるだけの簡単な作業でローラユニット4に対するメインローラ6の締結が可能となる。従って、ローラユニット4に対するメインローラ6の締結態様の均一化及びメインローラ6の脱着に係る作業効率の向上をさらに確実に実現することができる。
【0041】
また、本実施形態では、締結部32は、回転軸28の外周面28aに当接する内スリーブ36と、軸部20の内周面20bに当接する外スリーブ38とにより加圧室40を区画する。加圧室40の加圧により、内スリーブ36は軸径方向Yに縮径されて回転軸28の外周面28aに押し付けられるとともに、外スリーブ38は軸径方向Yに拡径されて軸部20の内周面20bに押し付けられる。
【0042】
加圧室40の圧力上昇は、圧力媒体を介して加圧室40の周方向の全周に亘って均一に行われる。これにより、内スリーブ36及び外スリーブ38によって締結部32の周方向の全周に亘る均一且つ高精度な締結が可能となる。従って、ローラユニット4に対するメインローラ6の締結態様の均一化及びメインローラ6の脱着に係る作業効率の向上をより一層確実に実現することができる。
【0043】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、圧力媒体の圧力を利用した油圧式(ハイドロ式)の締結具30が構成され、導圧室42の圧力媒体を加圧室40に導入できるのであれば、操作部34はボルト50をボルト孔48に螺進させる構成に限定されない。また、加圧室40を加圧することにより締結部32を軸径方向Yに変形させて締結が可能となるのであれば、締結部32は内スリーブ36及び外スリーブ38により加圧室40を区画する構成に限定されない。
【0044】
また、上記実施形態において、操作部34は軸線方向Xにおいてメインローラ6の外側に位置する。これにより、メインローラ6に干渉しない位置で操作部34を操作することができるため、操作部34の操作性が向上し、このことはメインローラ6の脱着に係る作業効率の向上に寄与する。しかし、操作部34の位置はこれに限らず、例えば、操作部34をローラユニット4の回転軸28に設けても良く、この場合には、回転軸28内に導圧室42が形成される。
【0045】
また、本発明は、上記実施形態で説明したワイヤソー2に限らず、ワイヤ放電加工装置なども含めたワークをワイヤでスライス加工する加工装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ワイヤ
2 ワイヤソー(加工装置)
4 ローラユニット
6 メインローラ
20 軸部
20a 外周面
20b 内周面
22 樹脂層
26 溝
28 回転軸
28a 外周面
30 締結具
32 締結部
34 操作部
36 内スリーブ
38 外スリーブ
40 加圧室
42 導圧室
48 ボルト孔
50 ボルト
P 溝ピッチ(間隔)
X 軸線方向
Y 軸径方向
図1
図2
図3
図4