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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125531
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/22 20060101AFI20220822BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20220822BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20220822BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20220822BHJP
   F24F 8/192 20210101ALI20220822BHJP
   F24F 8/98 20210101ALI20220822BHJP
【FI】
A61L9/22
B03C3/02 A
B03C3/40 A
F24F8/80 400
F24F8/192
F24F8/98
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023166
(22)【出願日】2021-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山城 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】浅田 規
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸
(72)【発明者】
【氏名】大栗 延章
(72)【発明者】
【氏名】瑞慶覧 章朝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 翔
【テーマコード(参考)】
4C180
4D054
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA10
4C180CC02
4C180DD03
4C180DD12
4C180DD20
4C180EA54X
4C180HH02
4C180HH05
4D054AA11
4D054BA02
4D054BA04
4D054EA11
4D054EA23
4D054EA28
(57)【要約】
【課題】捕集したウイルスを不活化可能な空気清浄機を提供すること。
【解決手段】吸い込み口と吹き出し口との間に介在する内部空間と、前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、前記空気を加湿する加湿装置と、前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、を備える、空気清浄機。前記帯電装置は、例えば、前記微粒子をコロナ放電により帯電させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸い込み口と吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、を備える、空気清浄機。
【請求項2】
前記帯電装置は、前記微粒子をコロナ放電により帯電させる、請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記帯電装置は、接地電極と正極性の放電電極とを有し、前記接地電極と前記放電電極との間にコロナ放電を発生させる、請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記加湿装置は、前記空気の湿度を67%以上に加湿する、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記加湿装置は、前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記加湿装置は、前記帯電装置を通過中の前記空気を加湿する、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記捕集装置は、前記帯電装置と前記吹き出し口との間で前記微粒子を捕集する、請求項1から6のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記排出装置は、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気を前記吹き出し口から排出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項9】
オゾンをろ過するフィルタを、前記捕集装置と前記吹き出し口との間に備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中に含まれる塵埃粒子を帯電させ、帯電した塵埃粒子を静電吸着によって捕集する電気集塵式の空気清浄機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-79077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病院、映画館、各種交通機関、船など、罹患者や多くの人がいる環境では、新型コロナウィルス感染症やインフルエンザの対策のニーズが急激に高まっている。そのため、空気に含まれるウイルス又は病原性細菌を不活化する手段が求められている。
【0005】
しかしながら、電気集塵機能だけでは、微粒子(ウイルス又は細菌。ウイルス又は細菌を含む塵埃などの微小物質でもよい)を捕集できるものの、その捕集したウイルス又は細菌を不活化できない。
【0006】
本開示は、捕集したウイルス又は細菌を不活化可能な空気清浄機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
吸い込み口と吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、を備える、空気清浄機を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、捕集したウイルス又は細菌を不活化可能な空気清浄機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の空気清浄機の一例を示す図である。
図2】一実施形態の空気清浄機における帯電装置の第1構成例を示す模式図である。
図3】一実施形態の空気清浄機における帯電装置の第2構成例を示す模式図である。
図4】一実施形態の空気清浄機における捕集装置の構成例を示す模式図である。
図5】一実施形態の空気清浄機の第1構造例を示す模式図である。
図6】一実施形態の空気清浄機の第2構造例を示す模式図である。
図7】内部空間内の各位置における、加湿前の黄色ブドウ球菌の生存率の検証結果の一例を示す図である。
図8】内部空間内の各位置における、加湿後の黄色ブドウ球菌の生存率の検証結果の一例を示す図である。
図9】内部空間内の各位置における、加湿前のウイルスの生存率の検証結果の一例を示す図である。
図10】内部空間内の各位置における、加湿後のウイルスの生存率の検証結果の一例を示す図である。
図11】帯電装置における放電電極の極性の違いによる、印加電圧と放電電流との関係の一例を示す図である。
図12】帯電装置における放電電極の極性の違いによる、放電電流とオゾン濃度との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の技術を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、一実施形態の空気清浄機の一例を示す図である。図1に示す空気清浄機100は、空気を清浄化するための機器である。空気清浄機100は、空気を清浄化するための装置類を収納する筐体10を備える。筐体10は、空気清浄機100の外部の空気を吸い込む吸い込み口11と、筐体10内の装置類により清浄化された空気を空気清浄機100の外部に吹き出す吹き出し口12とを有する。
【0012】
図1に示す例では、吸い込み口11は、筐体10の一方の端部(例えば、下部)に設けられ、吹き出し口12は、筐体10の他方の端部(例えば、上部)に設けられる。吸い込み口11及び吹き出し口12の各々の位置は、これに限られず、他の箇所でもよい。吸い込み口11及び吹き出し口12の各々の設置数は、一つでも複数でもよい。
【0013】
空気清浄機100は、内部空間20、帯電装置30、加湿装置40、捕集装置50、排出装置60及び制御装置80を備える。図1に示す各装置の位置関係は、単なる一例であり、ウイルス又は細菌を不活化する所望の効果を奏すれば、これに限定されない。
【0014】
内部空間20は、吸い込み口11と吹き出し口12との間に介在し、筐体10の内部に存在する空間である。図1に示す例では、内部空間20は、吸い込み口11から吹き出し口12まで接続される流路であり、吸い込み口11から流入する空気が流れる。
【0015】
帯電装置30は、吸い込み口11から内部空間20に流れる空気(以下、"空気A"とも称する)に含まれる微粒子を帯電させる装置である。微粒子とは、ウイルス又は細菌であるが、ウイルス又は細菌を含む塵埃などの微小物質でもよい。微粒子には、微小粒子状物質(PM2.5)が含まれてもよい。PM2.5とは、空気中に浮遊する粒子のうち、大きさが2.5μm以下の粒子をいう。
【0016】
加湿装置40は、内部空間20に流れる空気Aを加湿する機構であり、空気Aの湿度を上昇させる。加湿装置40の加湿方式の具体例として、スチーム式(加熱式)、気化式、ハイブリッド式(加熱気化式)、超音波式などが挙げられるが、加湿方式は、これらに限られない。
【0017】
捕集装置50は、内部空間20に流れる空気Aから、帯電した微粒子を静電気力により捕集する。捕集装置50は、例えば10nm以上100μm以下の大きさの微粒子を捕集する能力を有する場合、30nm程度の小さなウイルス、100nm程度の新型コロナウィルス(COVID-19)、又は数μmのウイルス飛沫や病原性細菌を捕集できる。なお、捕集装置50が捕集可能な微粒子の大きさは、特に制限されない。
【0018】
排出装置60は、捕集装置50から吹き出し口12に空気Aを排出する。排出装置60は、空気清浄機100の外部の空気を吸い込み口11から内部空間20に導入し、捕集装置50を通過した空気Aを吹き出し口12に排出する。排出装置60は、例えば、ファン及びモータを有し、ファンをモータによって回転させることで、空気Aを吹き出し口12に排出する。
【0019】
制御装置80は、ユーザからの操作指示内容に応じて、帯電装置30、加湿装置40、捕集装置50及び排出装置60を作動又は停止させる。
【0020】
このように、空気清浄機100は、内部空間20に流れる空気Aを加湿する加湿装置40を備える。空気Aに含まれるオゾン(O)と空気Aに含まれる水分(HO)とが混ざると、ウイルス又は細菌を不活化させるヒドロキシルラジカル(OHラジカル)が生成される。したがって、加湿装置40が空気Aを加湿することで、OHラジカルを生成できるので、空気Aに含まれるウイルス又は細菌や捕集装置50により捕集されたウイルス又は細菌を不活化できる。
【0021】
ウイルス又は細菌は、オゾンでも不活化するが、過多なオゾンは、人体に有害である。そのため、オゾン濃度は、できるだけ微小にすることが好ましい。本実施形態の空気清浄機100は、加湿装置40が空気Aを加湿することで、オゾンが比較的少量でも、ウイルス又は細菌を不活化させるOHラジカルを効率的に生成できる。よって、空気清浄機100は、空気Aに含まれるウイルス又は細菌や捕集装置50により捕集されたウイルス又は細菌を不活化できる。
【0022】
帯電装置30は、空気Aに含まれる微粒子をコロナ放電によって帯電させてもよい。加湿装置40により加湿された空気Aに含まれる水分は、コロナ放電によって空気A中に生成されたオゾンと反応しやすくなる。よって、空気清浄機100は、ウイルス又は細菌を不活化させるOHラジカルを効率的に生成できる。その結果、空気Aに含まれるウイルス又は細菌や捕集装置50により捕集されたウイルス又は細菌を不活化する効果が高まる。
【0023】
空気Aに含まれるオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)は、加湿装置40により加湿された空気Aに含まれる水分と反応することで分解されやすくなる。これにより、空気Aに含まれるオゾン濃度は低減するので、排出装置60は、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気を吹き出し口12から排出できる。
【0024】
加湿装置40は、空気Aの湿度を67%以上に加湿すると、加湿された空気Aに含まれる水分は、空気Aに含まれるオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)との反応が促進する。これにより、OHラジカルの生成効率が高まり、ウイルス又は細菌を不活化させる効果がより向上する。OHラジカルの生成効率がアップする点(ウイルス又は細菌の不活化効果がアップする点)で、加湿装置40は、空気Aの湿度を、70%以上に加湿すると好ましく、75%以上に加湿するとより好ましく、80%以上に加湿するとさらに好ましい。
【0025】
加湿装置40は、所望の加湿機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。図1に示す例では、加湿装置40は、吸い込み口11と帯電装置30との間で気体Aを加湿する。これにより、加湿装置40により加湿された空気Aが帯電装置30に供給されやすくなるので、空気Aに含まれる水分とオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)との反応は、より促進する。その結果、OHラジカルの生成効率が高まり、ウイルス又は細菌を不活化させる効果がより向上する。
【0026】
加湿装置40は、帯電装置30を通過中の空気Aを加湿してもよい。これにより、空気Aに含まれる水分とオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)との反応は、より促進する。その結果、OHラジカルの生成効率が高まり、ウイルスを不活化させる効果がより向上する。
【0027】
捕集装置50は、所望の捕集機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。図1に示す例では、捕集装置50は、帯電装置30と吹き出し口12との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電気力により捕集する。これにより、帯電装置30において帯電した微粒子が捕集装置50に供給されやすくなるので、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。排出装置60が帯電装置30と吹き出し口12との間に介在する場合、捕集装置50は、帯電装置30と排出装置60との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電気力により捕集するのが好ましい。これにより、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。
【0028】
排出装置60は、所望の排出機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。図1に示す例では、排出装置60は、捕集装置50と吹き出し口12との間に配置されている。空気Aに含まれる微粒子は、捕集装置50において捕集されるので、排出装置60が捕集装置50と吹き出し口12との間に配置されることで、排出装置60が汚れた空気Aで汚染し難くなる。その結果、例えば、排出装置60の交換や洗浄などのメンテナンスにおける安全性が向上する。
【0029】
空気清浄機100は、オゾンをろ過するフィルタ90を、捕集装置50と吹き出し口12との間に備えてもよい。これにより、吹き出し口12から吹き出す空気に含まれるオゾンの濃度を低減する効果が高まる。排出装置60が捕集装置50と吹き出し口12との間に介在する場合、フィルタ90は、排出装置60と吹き出し口12との間に介在するのが好ましい。これにより、吹き出し口12から吹き出す空気に含まれるオゾンの濃度を低減する効果が高まる。フィルタ90の触媒として、例えば、酸化マンガンを使用することで、オゾン濃度の低減効果は向上する。
【0030】
図2は、一実施形態の空気清浄機における帯電装置の第1構成例を示す模式図である。図2に示す帯電装置30Aは、上記の帯電装置30の一例である。帯電装置30Aは、コロナ放電を発生させる放電部31を有する。放電部31は、内部空間20に配置された放電線32と、放電線32に対向する接地電極33,34とを有する。放電線32は、放電電極の一例である。接地電極34は、接地電極33と同じ電位で接地されている。帯電装置30Aは、放電線32と接地電極33,34との間に高電圧HV1を印加することで、放電線32と接地電極33,34との間にコロナ放電を発生させる。
【0031】
図3は、一実施形態の空気清浄機における帯電装置の第2構成例を示す模式図である。図3に示す帯電装置30Bは、上記の帯電装置30の一例である。帯電装置30Bは、コロナ放電を発生させる放電部36を有する。放電部36は、内部空間20に配置される放電電極37と、放電電極37に対向する接地電極38と、放電電極37と支持部(内壁など)との間を絶縁する碍子39とを有する。
【0032】
放電電極37は、複数の尖鋭な突起が放射状に延びる円盤状電極である。放電部36は、複数の放電電極37が間隔を空けて積層する放電電極群35を有する。複数の放電電極群35は、格子状の接地電極38で仕切られた複数の空間に配置されている。帯電装置30Bは、放電電極37(複数の放電電極群35)と接地電極38との間に高電圧HV1を印加することで、放電電極37(複数の放電電極群35)と接地電極38との間にコロナ放電を発生させる。
【0033】
帯電装置30の放電電極(図2の場合、放電線32、図3の場合、放電電極37)は、正極性でも負極性でもよい。正極性の放電電極とは、接地電極に対してプラスの高電圧が印加される電極であり、負極性の放電電極とは、接地電極に対してマイナスの高電圧が印加される電極である。
【0034】
帯電装置30は、接地電極と正極性の放電電極との間にプラスの高電圧HV1を印加して両電極間にコロナ放電を発生させることで、内部空間20内のオゾン濃度の抑制と、捕集装置50での微粒子の捕集率の向上とが可能となる。
【0035】
図4は、一実施形態における空気清浄機における捕集装置の構成例を示す模式図である。図4に示す捕集装置50Aは、上記の捕集装置50の一例である。捕集装置50Aは、静電界を発生させる電界発生部51を有する。電界発生部51は、内部空間20に配置された高電圧電極54と、高電圧電極54に対向する捕集電極52,53とを有する。高電圧電極54は、例えば、導電性のプレートである。捕集電極53は、捕集電極53と同電位で接地されている。捕集装置50Aは、高電圧電極54と捕集電極52,53との間に高電圧HV2を印加することで、高電圧電極54と捕集電極52,53との間に静電界を発生させる。これにより、帯電した微粒子は、静電気力によって捕集電極52,53に吸い寄せられ、捕集電極52,53に付着する。
【0036】
図5は、一実施形態の空気清浄機の第1構造例を示す模式図である。図5に示す空気清浄機100Aは、上記の空気清浄機100の一例である。空気清浄機100Aは、帯電装置の放電部31と捕集装置の電界発生部51とが分離した構造を有する。放電線32及び高電圧電極54は、内部空間20内で空気の流れる方向に配列されている。排出装置60は、ファン61をモータによって回転させることで、内部空間20内の空気Aを吹き出し口に排出する。
【0037】
図6は、一実施形態の空気清浄機の第2構造例を示す模式図である。図6に示す空気清浄機100Bは、上記の空気清浄機100の一例である。空気清浄機100Bは、帯電装置の放電部31と捕集装置の電界発生部51とが一体化した構造を有する。複数の放電線32は、内部空間20内で空気の流れる方向に配列されている。排出装置60は、ファン61をモータによって回転させることで、内部空間20内の空気Aを吹き出し口に排出する。
【0038】
次に、本開示に係る一実施形態の空気清浄機について、捕集した微粒子が不活化したかどうかを検証した結果の一例について説明する。
【0039】
図7は、内部空間20内の各位置B1~B6における、加湿前(空気Aの湿度:38%~66%)の細菌の生存率の検証結果の一例を示す図である。図8は、内部空間20内の各位置B1~B6における、加湿後(空気Aの湿度:75%~90%)の細菌の生存率の検証結果の一例を示す図である。図7及び図8は、空気清浄機100A(図5参照)において、内部空間20内の各位置B1~B6に同数配置した細菌の生存率の検証結果の一例を示す。図7及び図8の縦軸の生存率は、内部空間20内の最も上流側の位置B0に配置した細菌の生存数に対して、各位置に配置した細菌の生存数の割合を示す。また、図7及び図8において、"電界あり"は、電界発生部51で電界を発生させた場合を示し、"電界なし"は、電界発生部51で電界を発生させない場合を示す。
【0040】
各位置B1~B6に配置した細菌は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)である。検証時の処理条件については、内部空間20内の空気Aの流速(風速)を0.5m/s、処理時間を1時間、空気Aの湿度を90%、放電部31において印加される高電圧HV1を-8.5kV~9.5kV、電界発生部51において印加される高電圧HV2を-5kVとした。
【0041】
図7及び図8によれば、加湿時の黄色ブドウ球菌は、加湿前の黄色ブドウ球菌よりも不活化する割合が高い結果が得られた。このように、空気Aを加湿することで、捕集した細菌を不活化する効果が高まる結果が得られた。
【0042】
また、図8に示すように、加湿を施すことによって、電界発生部51の壁面において電界を発生させなくても、電界を発生させた場合と同程度の不活化の効果が得られた。よって、コロナ放電処理した加湿空気を室内に放出することで、高電界を発生させなくても、壁面、机上又はドアノブなどの表面に付着したウイルス又は細菌を不活化できるといえる。
【0043】
なお、図7及び図8に示す結果は、内部空間20内のオゾン濃度が1ppmの場合の例示であるが、オゾンの外部への放出上限0.1ppmの場合でも、図7,8に示す加湿及び電界あり時と同様の結果が得られた。
【0044】
以上の結果は,黄色ブドウ球菌に対する不活性化効果に関する説明であったが、ウイルスに対しても、コロナ放電による不活性化の効果が確認できた。実験装置は、図5と同様である。接地電極上の各位置B1~B6に大腸菌ファージであるMS2を塗布し、コロナ放電処理を行った。
【0045】
常湿22%~28%、オゾン濃度8ppmにおいて、5時間運転後の各塗布位置のMS2の生存率を図9に示す。各位置B1~B6における生存率は、70%~100%であり、ほとんど不活性化できなかった。一方、流通ガスの相対湿度を75~90%に加湿し,コロナ放電処理を1時間としたときの生存率を図10に示す。各位置B2~B6における生存率は、11~39%であり、図9の常湿時と比べると、低オゾン濃度かつ短時間でウイルスを不活性化できた。
【0046】
なお,位置B1は、放電線32よりも上流に位置し、オゾンやOHラジカルが到達しないため、不活性化効果は得られていない。しかしながら、位置B1は放電線32よりも上流に位置するので、位置B1には、そもそも、浮遊する微粒子は、ほとんど捕集されない。そのため、実用上は、問題とならない。なお、試験に用いたMS2は、日本電機工業会規格JEM1467で推奨され、代替評価に多く活用されるウイルスとして知られる大腸菌ファージである。
【0047】
次に、本開示に係る一実施形態の空気清浄機について、帯電装置における放電電極の極性の違いによる特性変化を検証した結果の一例について説明する。
【0048】
図11は、帯電装置における放電電極の極性の違いによる、印加電圧と放電電流との関係の一例を示す図である。図12は、帯電装置における放電電極の極性の違いによる、放電電流とオゾン濃度との関係の一例を示す図である。図11及び図12は、空気清浄機100A(図5参照)において、放電線32の極性の違いによる特性変化を検証した結果の一例を示す。図11及び図12は、内部空間20内の空気Aの流速(風速)が9m/sの場合を例示する。
【0049】
図11において、横軸の電圧は、放電線32に印加する高電圧HV1を示し、縦軸の電流は、放電線32に流れる放電電流を示す。図11によれば、放電線32の極性が負極性に比べて正極性の方が、同一電流で比較すると、放電線32に印加する高電圧HV1が高くなる結果が得られた。放電線32に印加する高電圧HV1が高いほど、捕集装置50での微粒子の捕集率が高くなる。よって、放電線32の極性を正極性にすることで、捕集装置50での微粒子の捕集率の向上が可能となった。
【0050】
一方、図12において、横軸の電流は、放電線32に流れる放電電流を示し、横軸のオゾン濃度は、内部空間20内のオゾン濃度を示す。図12によれば、放電線32の極性が負極性に比べて正極性の方が、同一電流で比較すると、オゾン濃度が低くなる結果が得られた。例えば、放電電流200mAで比較すると、正極性のときのオゾン濃度は、負極性のときのオゾン濃度の約1/8であった。よって、放電線32の極性を正極性にすることで、内部空間20内のオゾン濃度が抑制された。
【0051】
以上のように、オゾン濃度は放電電流が大きいほど多く発生するのに対し、微粒子を捕集するための集塵率は、放電線に印加する電圧が大きいほど高くなる。そのため、オゾン濃度は抑制しつつ高い集塵率を確保する為には、放電電流が小さく印加電圧が高い条件が有効となる。したがって、図11及び図12によれば、帯電装置における放電電極の極性を正極性にすることで、内部空間20内のオゾン濃度の抑制と、捕集装置50での微粒子の捕集率の向上とが可能となる。
【0052】
以上、実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0053】
例えば、空気清浄機は、ウイルスを不活化させる紫外線を内部空間20に照射する照射装置を更に備えてもよい。これにより、ウイルスを不活化する効果が更に向上する。
【符号の説明】
【0054】
10 筐体
11 吸い込み口
12 吹き出し口
20 内部空間
30,30A,30B 帯電装置
31 放電部
32 放電線
33,34 接地電極
35 放電電極群
36 放電部
37 放電電極
38 接地電極
39 碍子
40 加湿装置
50,50A 捕集装置
51 電界発生部
52,53 捕集電極
54 高電圧電極
60 排出装置
61 ファン
80 制御装置
90 フィルタ
100,100A,100B 空気清浄機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、
オゾンをろ過するフィルタと、を備え
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置、前記フィルタおよび前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有する、空気清浄機。
【請求項2】
前記複数の放電電極群は、それぞれ、間隔を空けて積層する複数の放電電極を有する、請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記複数の放電電極は、正極性である、請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記放電部は、前記複数の放電電極との間を絶縁する碍子を有する、請求項2又は3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記加湿装置は、前記空気の湿度を67%以上に加湿する、請求項1からのいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記排出装置は、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気を前記吹き出し口から排出する、請求項1からのいずれか一項に記載の空気清浄機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示は、
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、
オゾンをろ過するフィルタと、を備え
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置、前記フィルタおよび前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有する、空気清浄機を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、
オゾンの濃度を触媒により低減するフィルタと、を備え、
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置、前記フィルタおよび前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有する、空気清浄機。
【請求項2】
前記複数の放電電極群は、それぞれ、間隔を空けて積層する複数の放電電極を有する、請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記複数の放電電極は、正極性である、請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記放電部は、前記複数の放電電極との間を絶縁する碍子を有する、請求項2又は3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記加湿装置は、前記空気の湿度を67%以上に加湿する、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記排出装置は、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気を前記吹き出し口から排出する、請求項1から5のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示は、
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、
オゾンの濃度を触媒により低減するフィルタと、を備え、
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置、前記フィルタおよび前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有する、空気清浄機を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、を備え、
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置および前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有し、
前記空気に含まれるオゾンは、コロナ放電によって生成されたオゾンを含み、
前記空気に含まれるオゾンは、前記加湿装置により加湿された前記空気に含まれる水分と反応することで、低減し、OHラジカルが生成され、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気が前記吹き出し口から排出される、空気清浄機。
【請求項2】
前記空気に含まれるオゾンは、前記加湿装置により67%以上に加湿された前記空気に含まれる水分と反応する、請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
オゾンの濃度を触媒により低減するフィルタを前記捕集装置と前記吹き出し口との間に備える、請求項1又は2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記フィルタを前記排出装置と前記吹き出し口との間に備える、請求項3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記複数の放電電極群は、それぞれ、間隔を空けて積層する複数の放電電極を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記複数の放電電極は、正極性である、請求項5に記載の空気清浄機。
【請求項7】
前記放電部は、前記複数の放電電極との間を絶縁する碍子を有する、請求項6に記載の空気清浄機。
【請求項8】
前記加湿装置は、前記捕集装置が電界を発生させない状態で、前記空気を加湿する、請求項1から7のいずれか一項に記載の空気清浄機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示は、
筐体と、
前記筐体の下部に設けられた吸い込み口と前記筐体の上部に設けられた吹き出し口との間に介在する内部空間と、
前記吸い込み口から前記内部空間に流れる空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電装置と、
前記吸い込み口と前記帯電装置との間で前記空気を加湿する加湿装置と、
前記空気から、帯電した微粒子を静電気力により捕集する捕集装置と、
前記捕集装置から前記吹き出し口に前記空気を排出する排出装置と、を備え、
前記吸い込み口、前記加湿装置、前記帯電装置、前記捕集装置、前記排出装置および前記吹き出し口は、この順に、前記下部から前記上部に向けて配置されており、
前記帯電装置は、コロナ放電を発生させる放電部を有し、
前記放電部は、格子状の接地電極と、前記接地電極で仕切られた複数の空間に配置された複数の放電電極群とを有し、
前記空気に含まれるオゾンは、コロナ放電によって生成されたオゾンを含み、
前記空気に含まれるオゾンは、前記加湿装置により加湿された前記空気に含まれる水分と反応することで、低減し、OHラジカルが生成され、オゾン濃度が0.1ppm以下の空気が前記吹き出し口から排出される、空気清浄機を提供する。