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  • 特開-インバータ制御油圧ユニット 図1
  • 特開-インバータ制御油圧ユニット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126145
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】インバータ制御油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20220823BHJP
   F04C 14/22 20060101ALI20220823BHJP
   F04C 14/08 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
F04B49/06 321A
F04C14/22 A
F04C14/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024055
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 邦人
(72)【発明者】
【氏名】渡會 晃正
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 幸治
【テーマコード(参考)】
3H044
3H145
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC21
3H044DD03
3H044DD18
3H044DD24
3H044DD28
3H044DD33
3H145AA05
3H145AA12
3H145AA24
3H145AA42
3H145BA12
3H145CA21
3H145CA29
3H145DA05
3H145EA20
3H145EA42
3H145GA15
3H145GA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インバータに信号を出力する流量スイッチ等の機器を不要にして簡便な構成で安価なインバータ制御油圧ユニットを提供する。
【解決手段】可変容量型ベーンポンプ4と、可変容量型ベーンポンプ4を回転駆動するモータ5と、モータ5の回転数を変更自在に制御するインバータ6とを具備する。インバータ6は、内部の電流値を検出して第1しきい値および第1しきい値より低い値の第2しきい値と比較する。検出する電流値が第1しきい値より高くモータ5の回転数が低速回転では回転数を高速回転に切換制御する。また、検出する電流値が第2しきい値より低くモータ5の回転数が高速回転では回転数を低速回転に切換制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出圧力に基づく油圧制御によって吐出量可変要素の位置を機械的に制御する圧力調整機構を有する可変容量型油圧ポンプと、可変容量型油圧ポンプを回転駆動するモータと、モータの回転数を変更自在に制御するインバータとを具備し、インバータはモータの回転数を低速回転と低速回転より高速の高速回転とに切換制御自在に設け、インバータ内部の電流値を検出して第1しきい値および第1しきい値より低い値の第2しきい値と比較し、検出する電流値が第1しきい値より高くモータの回転数が低速回転では回転数を高速回転に切換制御し、検出する電流値が第2しきい値より低くモータの回転数が高速回転では回転数を低速回転に切換制御することを特徴とするインバータ制御油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型油圧ポンプをモータで回転駆動し、モータの回転数をインバータで制御するインバータ制御油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインバータ制御油圧ユニットは、吐出圧力に基づく油圧制御によって吐出量可変要素としての斜板の位置を機械的に制御する圧力調整機構を有する可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプを回転駆動するモータと、モータの回転数を制御するインバータと、可変容量型油圧ポンプのドレン量を検出してON信号をインバータへ出力する流量スイッチとを備えている。そして、ドレン量が増加して流量スイッチからON信号を出力すると、インバータはモータを低速回転に切換制御する。また、ドレン量が減少して流量スイッチからのON信号がOFFになると、インバータはモータを高速運転に切換制御する。このようにして、圧力センサと専用のコントローラとを不要にして簡便な構成にできている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6619053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来のインバータ制御油圧ユニットは、モータを低速回転と高速回転とに切換制御するのに、可変容量型油圧ポンプのドレン量を検出する流量スイッチを必要とするため、いまだ満足のいく簡便な構成ではないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、インバータに信号を出力する流量スイッチ等の機器を不要にして簡便な構成で安価なインバータ制御油圧ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
吐出圧力に基づく油圧制御によって吐出量可変要素の位置を機械的に制御する圧力調整機構を有する可変容量型油圧ポンプと、可変容量型油圧ポンプを回転駆動するモータと、モータの回転数を変更自在に制御するインバータとを具備し、インバータはモータの回転数を低速回転と低速回転より高速の高速回転とに切換制御自在に設け、インバータ内部の電流値を検出して第1しきい値および第1しきい値より低い値の第2しきい値と比較し、検出する電流値が第1しきい値より高くモータの回転数が低速回転では回転数を高速回転に切換制御し、検出する電流値が第2しきい値より低くモータの回転数が高速回転では回転数を低速回転に切換制御することを特徴とするインバータ制御油圧ユニットがそれである。
【発明の効果】
【0007】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、インバータはモータの回転数を低速回転と低速回転より高速の高速回転とに切換制御自在に設け、インバータ内部の電流値を検出して第1しきい値および第1しきい値より低い値の第2しきい値と比較し、検出する電流値が第1しきい値より高くモータの回転数が低速回転では回転数を高速回転に切換制御し、検出する電流値が第2しきい値より低くモータの回転数が高速回転では回転数を低速回転に切換制御する。このため、インバータは内部の電流値を検出して第1しきい値および第2しきい値と比較し、モータの回転数を低速回転と高速回転に切換制御するから、従来ユニットに比し、インバータに信号を出力する流量スイッチ等の機器を不要にでき、簡便な構成で安価にすることができる。また、第1しきい値および第2しきい値は任意に設定することができ、用途に応じて最適に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示したインバータ制御油圧ユニットの回路図である。
図2図1の特性を示し、(A)はインバータの電流―時間の特性図、(B)はモータの回転数―時間の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1は図示しないワークをクランプするクランプシリンダで、キャップ側室1Aへの作動油の供給でピストンロッド1Bが図示左方向へ移動してワークをクランプすると共に、ロッド側室1Cへの作動油の供給でピストンロッド1Bが図示右方向へ移動してワークのクランプを解除する。2は4ポート2位置の電磁方向切換弁で、クランプシリンダ1のロッド側室1Cへ作動油を供給してキャップ側室1Bの作動油をタンクTに排出する第1位置2Aと、キャップ側室1Aへ作動油を供給してロッド側室1Cの作動油をタンクTに排出する第2位置2Bとを切換操作自在に有している。
【0010】
3はインバータ制御油圧ユニットで、可変容量型油圧ポンプとしての可変容量型ベーンポンプ4とモータ5とインバータ6と作動油を貯蔵するタンクTとから構成している。可変容量型ベーンポンプ4は、吐出量可変要素としての可動リング7を偏心自在に有し、可動リング7の偏心量を減少する圧力調整機構8を備え、可動リング7の偏心量の減少により吐出量を減少する。可変容量型ベーンポンプ4の圧力調整機構8は、可変容量型ベーンポンプ4の吐出圧力が、カットオフ開始圧力に達すると可動リング4の偏心量を減少するよう作動して吐出量を最大吐出量から減少し、以後、吐出圧力の上昇に応じて可動リング7の偏心量が減少して吐出量をさらに減少し、フルカットオフ圧力に達すると可動リング7の偏心量がなくなり、吐出量を最小吐出量の略0にする。圧力調整機構8には、フルカットオフ圧力をばね力に基づき設定するばね9を有し、ばね9のばね力を調整ねじ9Aで調整自在にしてフルカットオフ圧力を変更自在に設けている。なお、カットオフ開始圧力はフルカットオフ圧力より若干低い圧力となる。
【0011】
モータ5は可変容量型ベーンポンプ4と直接結合し、可変容量型ベーンポンプ4を回転駆動する。インバータ6は図2(B)に示す如く、モータ5の回転数Nを変更自在に制御し、モータ5の回転数Nを低速回転N2と低速回転N2より高速の高速回転N1とに切換制御自在に設けている。インバータ6は、図2(A)に示す如く、内部の電流値Cを検出し、第1しきい値a1および第2しきい値a2と比較する。第2しきい値a2は第1しきい値a1より低い値に設定している。インバータ6は、検出する電流値Cが第1しきい値a1より高く、モータ5の回転数Nが低速回転N2では回転数Nを高速回転N1に切換制御する。また、インバータ6は、検出する電流値Cが第2しきい値a2より低く、モータ5の回転数Nが高速回転N1では回転数Nを低速回転N2に切換制御する。
【0012】
図2(A)のDは原位置停止状態で、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが図1の原位置に停止している状態である。Eは作動状態で、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが図1の左方向に移動している状態である。Fはクランプ状態で、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが図1の左方端に移動してワークをクランプしている状態である。原位置停止状態Dでの電流値CはC1で示し、電流値C1は第1しきい値a1より低く第2しきい値a2より高い略一定値である。作動状態Eでの電流値CはC2で示し、電流値C2はクランプシリンダ1のピストンロッド1Bが原位置停止状態Dから作動状態Eへの過渡期に始動トルクの増加に伴い増加し、移動し始めると減少に転じる。クランプ状態Fでの電流値CはC3で示し、電流値C3はクランプシリンダ1のピストンロッド1Bが作動状態Eからクランプ状態Fへの過渡期に慣性で第2しきい値a2より低い値まで減少し、その後第2しきい値a2より高い値まで増加して電流値C1と同等の略一定値となる。
【0013】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1の状態は、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが原位置に停止し、図2(A)の原位置停止状態Dである。電磁方向切換弁2は第1位置2Aに位置し、クランプシリンダ1のロッド側室1Cへ作動油を供給してキャップ側室1Aの作動油をタンクTに排出する。インバータ6の電流値CはC1で、モータ5は低速回転N2で可変容量型ベーンポンプ4を回転駆動し、可変容量型ベーンポンプ4は可動リング7の偏心量がなく、吐出量を略0にしている。
【0014】
この状態で、電磁方向切換弁2を第2位置2Bに切換操作すると、クランプシリンダ1のキャップ側室1Aへ作動油を供給してロッド側室1Cの作動油をタンクTに排出する。クランプシリンダ1はピストンロッド1Bが図示左方向へ移動し、図2(A)の作動状態Eになる。インバータ6の電流値CはC2になり、電流値C2が第1しきい値a1より高くなると、インバータ6は回転数Nを高速回転N1に切換制御する。モータ5は高速回転N1で可変容量型ベーンポンプ4を回転駆動し、可変容量型ベーンポンプ4は、圧力調整機構8が可動リング7の偏心量を増加するよう作動して吐出量を増加し、最大吐出量を吐出する。
【0015】
そして、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが図1左方端に到達すると、図2(A)のクランプ状態Fになり、ワークをクランプする。インバータ6の電流値CはC3になり、電流値C3が第2しきい値a2より低くなると、インバータ6は回転数Nを低速回転N2に切換制御する。モータ5は低速回転N2で可変容量型ベーンポンプ4を回転駆動し、可変容量型ベーンポンプ4は、圧力調整機構8が可動リング7の偏心量を減少するよう作動して吐出量を減少し、吐出量を略0にする。
【0016】
この状態で、ワークのクランプが完了し、電磁方向切換弁2を第1位置2Aに切換操作すると、クランプシリンダ1のロッド側室1Cへ作動油を供給してキャップ側室1Aの作動油をタンクTに排出する。クランプシリンダ1はピストンロッド1Bが図示右方向へ移動する。そして、クランプシリンダ1のピストンロッド1Bが図1の原位置に復帰すると、モータ5を停止する。
【0017】
かかる作動で、インバータ6はモータ5の回転数Nを低速回転N2と低速回転N2より高速の高速回転N1とに切換制御自在に設け、インバータ6内部の電流値Cを検出して第1しきい値a1および第1しきい値a1より低い値の第2しきい値a2と比較し、検出する電流値Cが第1しきい値a1より高くモータ5の回転数Nが低速回転N2では回転数Nを高速回転N1に切換制御し、検出する電流値Cが第2しきい値a2より低くモータ5の回転数Nが高速回転N1では回転数Nを低速回転N2に切換制御する。このため、インバータ6は内部の電流値Cを検出して第1しきい値a1および第2しきい値a2と比較し、モータ5の回転数Nを低速回転N2と高速回転N1に切換制御するから、従来ユニットに比し、インバータに信号を出力する流量スイッチ等の機器を不要にでき、簡便な構成で安価にすることができる。
【0018】
また、第1しきい値a1および第2しきい値a2は任意に設定することができ、用途に応じて最適に設定することができる。
【0019】
なお、一実施形態では、可変容量型油圧ポンプを可変容量型ベーンポンプ4としたが、可変容量型ピストンポンプでも良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
4:可変容量型ベーンポンプ(可変容量型油圧ポンプ)
5:モータ
6:インバータ
7:可動リング(吐出量可変要素)
8:圧力調整機構
a1:第1しきい値
a2:第2しきい値
C:電流値
N:回転数
N1:高速回転
N2:低速回転
図1
図2