(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126429
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ポリマーフィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220823BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220823BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/34
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024495
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々田 泰行
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK41B
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DC21D
4F100EH46
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100GB43
4F100JA04B
4F100JD04B
4F100JG05A
4F100JG05B
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】吸湿による電気特性の変動が抑制されるポリマーフィルム、及び、上記ポリマーフィルムを用いた積層体の提供。
【解決手段】層Aと、層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有し、層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含み、層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下である、ポリマーフィルム及び上記ポリマーフィルムを用いた積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層Aと、前記層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有し、
前記層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含み、
前記層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下である、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記誘電正接が0.01以下であるポリマーは、ポリイミドである、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含む、請求項1又は請求項2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記誘電正接が0.01以下であるポリマーは、液晶ポリマーである、請求項3に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記液晶ポリマーは、融点が280℃以上である、請求項4に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を含む、請求項4又は請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位、芳香族ジオールに由来する構成単位、及び、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含む、請求項4又は請求項5に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
層Cを更に有し、
前記層Bと、前記層Aと、前記層Cとをこの順で有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
温度25℃、相対湿度10%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Aとし、
温度25℃、相対湿度80%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Bとしたとき、
誘電正接Aと誘電正接Bとの差の絶対値は0.005以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のポリマーフィルムと、前記ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に配置された金属層又は金属配線と、を有する積層体。
【請求項11】
前記ポリマーフィルムと、前記金属層との剥離強度は、0.5kN/m以上である請求項10に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーフィルム及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器に使用される周波数は非常に高くなる傾向にある。高周波帯域における伝送損失を抑えるため、回路基板に用いられる絶縁材料の比誘電率と誘電正接とを低くすることが要求されている。
従来、回路基板に用いられる絶縁材料として、ポリイミドが多く用いられてきたが、高耐熱性及び低吸水性であり、かつ、高周波帯域での損失が小さい液晶ポリマーが注目されている。
【0003】
従来の液晶ポリマーフィルムとしては、例えば、特許文献1には、少なくとも液晶ポリエステルを含む液晶ポリエステルフィルムであって、第1の配向度を、上記液晶ポリエステルフィルムの主面に平行な第1の方向に対する配向度とし、第2の配向度を、上記主面に平行であり、かつ上記第1の方向と直交する第2の方向に対する配向度としたとき、上記第1の配向度と上記第2の配向度との比である第1の配向度/第2の配向度が0.95以上1.04以下であり、上記主面に平行な方向において広角X線散乱法により測定される上記液晶ポリエステルの第3の配向度が60.0%以上である、液晶ポリエステルフィルムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、溶剤と、上記溶剤に溶解される可溶性液晶ポリマーと、少なくとも1つの有機ポリマー又は無機フィラーを含み、上記溶剤に分散され又は溶解される添加物と、を備える液晶ポリマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-26474号公報
【特許文献2】特開2019-52288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、吸湿による電気特性の変動が抑制されるポリマーフィルムを提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記ポリマーフィルムを用いた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>層Aと、層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有し、層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含み、層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下である、ポリマーフィルム。
<2>誘電正接が0.01以下であるポリマーは、ポリイミドである、<1>に記載のポリマーフィルム。
<3>層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含む、<1>又は<2>に記載のポリマーフィルム。
<4>誘電正接が0.01以下であるポリマーは、液晶ポリマーである、<3>に記載のポリマーフィルム。
<5>ポリマーは、融点が280℃以上である、<4>に記載のポリマーフィルム。
<6>液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を含む、<4>又は<5>に記載のポリマーフィルム。
<7>液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位、芳香族ジオールに由来する構成単位、及び、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含む、<4>又は<5>に記載のポリマーフィルム。
<8>層Cを更に有し、層Bと、層Aと、層Cとをこの順で有する<1>~<7>のいずれか1つに記載のポリマーフィルム。
<9>温度25℃、相対湿度10%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Aとし、温度25℃、相対湿度80%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Bとしたとき、誘電正接Aと誘電正接Bとの差の絶対値は0.005以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のポリマーフィルム。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載のポリマーフィルムと、ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に配置された金属層又は金属配線と、を有する積層体。
<11>ポリマーフィルムと金属層との剥離強度は、0.5kN/m以上である<10>に記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、吸湿による電気特性の変動が抑制されるポリマーフィルムを提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記ポリマーフィルムを用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤PFP(ペンタフルオロフェノール)/クロロホルム=1/2(質量比)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0010】
[ポリマーフィルム]
本開示に係るポリマーフィルムは、層Aと、層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有し、層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含み、層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下である。
【0011】
特許文献1に記載されているポリマーフィルムでは、吸湿によって電気特性が変動することが分かった。
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、吸湿による電気特性の変動が抑制されるポリマーフィルムを提供できることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示に係るポリマーフィルムでは、層Bの、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下であるため、吸湿しにくく、電気特性(特に、誘電正接)の変動が抑制されると考えられる。
【0012】
<層A>
本開示に係るポリマーフィルムは、層Aと、層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有する。層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含む。
【0013】
本開示において、誘電正接は、以下の方法により測定するものとする。
誘電正接の測定は周波数10GHzで共振摂動法により実施する。ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「E8363B」)に10GHzの空洞共振器((株)関東電子応用開発CP531)を接続し、空洞共振器にフィルムのサンプル(幅:2.0mm×長さ:80mmを挿入し、温度25℃、湿度60%RH環境下、96時間の挿入前後の共振周波数の変化から、ポリマー、ポリマーフィルム、及び各層の誘電正接を測定する。
【0014】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの誘電正接は、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0015】
誘電正接が0.01以下であるポリマーとしては、液晶ポリマー、フッ素系ポリマー、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0016】
中でも、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、誘電正接が0.01以下であるポリマーは、ポリイミドであることが好ましい。
【0017】
層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量は、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、層Aの全質量に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0019】
層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外にフィラーを含んでいてもよい。
【0020】
フィラーとしては、粒子状のものであればよく、無機フィラーであっても、有機フィラーであってもよい。
本開示に係るポリマーフィルムにおいて、上記フィラーの数密度は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、上記ポリマーフィルムの表面より内部の方が大きいことが好ましい。
【0021】
無機フィラーとしては、公知の無機フィラーを用いることができる。
【0022】
無機フィラーの材質としては、例えば、BN、Al2O3、AlN、TiO2、SiO2、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、及び、これらを2種以上含む材質が挙げられる。
【0023】
中でも、無機フィラーとしては、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、金属酸化物粒子が好ましく、シリカ粒子、又は、チタニア粒子がより好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
【0024】
無機フィラーの平均粒径は、層Aの厚みの約20%~約40%であることが好ましく、例えば、層Aの厚みの25%、30%又は35%にあるものを選択してもよい。
【0025】
また、無機フィラーの平均粒径は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~1μmであることがより好ましく、20nm~500nmであることが更に好ましく、25nm~90nmであることが特に好ましい。
【0026】
有機フィラーとしては、公知の有機フィラーを用いることができる。
【0027】
有機フィラーの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、尿素-ホルマリンフィラー、ポリエステル、セルロース、アクリル樹脂、フッ素樹脂、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂、及び、これらを2種以上含む材質が挙げられる。
【0028】
また、有機フィラーは、中空樹脂粒子であってもよい。
【0029】
中でも、有機フィラーとしては、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、フッ素樹脂粒子であることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子であることがより好ましい。
【0030】
有機フィラーの平均粒径は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~1μmであることがより好ましく、20nm~500nmであることが更に好ましく、25nm~90nmであることが特に好ましい。
【0031】
層Aは、フィラーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
層Aがフィラーを含む場合、フィラーの含有量は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、層Aの全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが特に好ましい。
【0032】
-その他の添加剤-
層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマー及びフィラー以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができる。具体的には、例えば、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
【0034】
また、層Aは、その他の添加剤として、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂を含んでいてもよい。
誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0035】
層Aにおけるその他の添加剤の総含有量は、誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量100質量部に対して、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以下である。
【0036】
層Aの平均厚みは、特に制限はないが、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、5μm~90μmであることが好ましく、10μm~70μmであることがより好ましく、15μm~50μmであることが特に好ましい。
【0037】
本開示に係るポリマーフィルムにおける各層の平均厚みの測定方法は、以下の通りである。
【0038】
ポリマーフィルムを、ポリマーフィルムの面方向に垂直な面で切断し、その断面において、5点以上厚みを測定し、それらの平均値を平均厚みとする。
【0039】
<層B>
本開示に係るポリマーフィルムは、層Aと、上記層Aの少なくとも一方の面に層Bとを有する。層Bは、表面層(最外層)であることが好ましい。
【0040】
層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下である。
【0041】
層Bの透湿度を100g/(m2・day)以下とするために、層Bを構成する主材料として、公知の疎水的な材料、及び/又は自由体積の小さな材料を用いることが好ましい。具体的には、層Bとしては、結晶性を有するポリマー層、無機スパッタ膜、無機スパッタ膜とゾルゲル有機膜との複層膜等が挙げられる。また、層Bを構成する材料としてポリマー材料を用いる場合は、熱処理、延伸等によって結晶化度を上げることが、層Bの透湿度を100g/(m2・day)以下とするのに有効である。また、層Bの透湿度を100g/(m2・day)以下とするために、自由体積を小さくする効果のある添加剤を添加することも有効である。
【0042】
本開示において、透湿度は、以下の方法で測定される。
まず、塩化カルシウムを入れたカップの開口部をポリマーフィルムで蓋をする。カップを密閉した状態で、温度40℃、相対湿度90%の環境下で24時間放置する。透湿度は、調湿前後の質量変化(g/(m2・day))から算出する。なお、層Bの透湿度は、ポリマーフィルム全体の透湿度(R1)、及び、層Bを削り取ったポリマーフィルムの透湿度(R2)をそれぞれ算出し、{(1/R1)-(1/R2)}-1より算出される。
【0043】
層Bの透湿度は、吸湿による電気特性の変動を抑制する観点から、10g/(m2・day)以下であることが好ましく、5g/(m2・day)以下であることがより好ましく、2g/(m2・day)以下であることが更に好ましい。
【0044】
層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含むことが好ましい。層Bに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーは、層Aに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーと異なることが好ましい。
【0045】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの誘電正接は、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0046】
誘電正接が0.01以下であるポリマーとしては、液晶ポリマー、フッ素系ポリマー、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0047】
中でも、誘電正接が0.01以下であるポリマーは、吸湿による電気特性の変動を抑制する観点から、液晶ポリマーであることが好ましい。
【0048】
-液晶ポリマー-
【0049】
本開示において、液晶ポリマーの種類は特に限定されず、公知の液晶ポリマーを用いることができる。
【0050】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルにアミド結合が導入された液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルにエーテル結合が導入された液晶ポリエステルエーテル、液晶ポリエステルにカーボネート結合が導入された液晶ポリエステルカーボネートなどを挙げることができる。
また、液晶ポリマーは、液晶性、及び、熱膨張係数の観点から、芳香環を有するポリマーであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることがより好ましい。
更に、液晶ポリマーは、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合などのイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
また、液晶ポリマーは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリマーであることが好ましい。
【0051】
液晶ポリマーの例としては、例えば、以下が挙げられる。
1)(i)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸と、(iii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重縮合させてなるもの。
3)(i)芳香族ジカルボン酸と、(ii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
4)(i)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、(ii)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重縮合させてなるもの。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンはそれぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重縮合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0052】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0053】
液晶ポリマーは、液晶性、及び、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0054】
また、液晶ポリマーは、液晶性、及び、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位、芳香族ジオールに由来する構成単位、及び、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含むことが好ましい。
【0055】
液晶ポリマーは、下記式(1)~式(3)のいずれかで表される構成単位(以下、式(1)で表される構成単位等を、単位(1)等ということがある。)を有することが好ましく、下記式(1)で表される構成単位を有することがより好ましく、下記式(1)で表される構成単位と、下記式(2)で表される構成単位と、下記式(2)で表される構成単位とを有することが特に好ましい。
式(1) -O-Ar1-CO-
式(2) -CO-Ar2-CO-
式(3) -O-Ar3-O-
式(1)~式(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し、Ar2及びAr3はそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表し、Ar1~Ar3で表される上記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
式(4) -Ar4-Z-Ar5-
式(4)中、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキレン基を表す。
【0056】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
上記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基及びn-デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1~10である。
上記アリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6~20である。
上記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される上記基毎にそれぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個である。
【0057】
上記アルキレン基の例としては、メチレン基、1,1-エタンジイル基、1-メチル-1,1-エタンジイル基、1,1-ブタンジイル基及び2-エチル-1,1-ヘキサンジイル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1~10である。
【0058】
単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位である。
単位(1)としては、Ar1がp-フェニレン基である構成単位(p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位)、Ar1が2,6-ナフチレン基である構成単位(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位)、又は、Ar1が4,4’-ビフェニリレン基(4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸に由来する構成単位)である構成単位が好ましく、Ar1がp-フェニレン基又は2,6-ナフチレン基である構成単位がより好ましい。
【0059】
単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位である。
単位(2)としては、Ar2がp-フェニレン基である構成単位(テレフタル酸に由来する構成単位)、Ar2がm-フェニレン基である構成単位(イソフタル酸に由来する構成単位)、Ar2が2,6-ナフチレン基である構成単位(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位)、又は、Ar2がジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基である構成単位(ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸に由来する構成単位)が好ましく、Ar2がp-フェニレン基又は2,6-ナフチレン基である構成単位がより好ましい。
【0060】
単位(3)は、所定の芳香族ジオールに由来する構成単位である。
単位(3)としては、Ar3がp-フェニレン基である構成単位(ヒドロキノンに由来する構成単位)、Ar3がm-フェニレン基である構成単位(イソフタル酸に由来する構成単位)、又は、Ar3が4,4’-ビフェニリレン基である構成単位(4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構成単位)が好ましい。
【0061】
中でも、液晶ポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位、及び、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、液晶ポリマーは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位、芳香族ジオール化合物に由来する構成単位、テレフタル酸に由来する構成単位、及び、ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0062】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、全構成単位の合計量(液晶ポリマーを構成する各構成単位の質量をその各構成単位の式量で割ることにより、各構成単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%~80モル%、更に好ましくは30モル%~60モル%、特に好ましくは30モル%~40モル%である。
芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、全構成単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%~35モル%、更に好ましくは20モル%~35モル%、特に好ましくは30モル%~35モル%である。
芳香族ジオールに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%~35モル%、更に好ましくは20モル%~35モル%、特に好ましくは30モル%~35モル%である。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位の含有量が多いほど、耐熱性、強度及び剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0063】
芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量と芳香族ジオールに由来する構成単位の含有量との割合は、[芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量]/[芳香族ジオールに由来する構成単位の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1~1/0.9、より好ましくは0.95/1~1/0.95、更に好ましくは0.98/1~1/0.98である。
【0064】
なお、液晶ポリマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位、及び芳香族ジオールに由来する構成単位をそれぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリマーは、上記構成単位以外の構成単位を有してもよいが、その含有量は、全構成単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0065】
液晶ポリマーは、液晶ポリマーを構成する構成単位に対応する原料モノマーを溶融重合させることにより製造することが好ましい。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物などが挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。なお、溶融重合は、必要に応じて、更に固相重合させてもよい。
【0066】
液晶ポリマーは、特定の有機溶媒に可溶性の液晶ポリマー(以下、「可溶性液晶ポリマー」ともいう。)であることが好ましい。
具体的には、本開示における可溶性液晶ポリマーは、25℃において、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒100gに、0.1g以上溶解する液晶ポリマーであることが好ましい。
【0067】
-融点Tm-
液晶ポリマーは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリマーであることが好ましい。液晶ポリマーは、誘電正接、及び、破断強度の観点から、融点Tmが280℃以上であることが好ましく、300℃以上であることよりが好ましく、315℃以上であることがさらに好ましく、330℃~400℃であることが特に好ましい。
【0068】
融点Tmは、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリマーを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4,800Pa・s(48,000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリマーの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0069】
-重量平均分子量-
液晶ポリマーは、重量平均分子量が13,000以下であることが好ましく、3,000~13,000であることがより好ましく、5,000~12,000であること更に好ましく、5,000~10,000であることが特に好ましい。この液晶ポリマーの重量平均分子量が上記範囲であると、熱処理後のフィルムにおいて、厚み方向の熱伝導性、耐熱性、強度及び剛性に優れる。
【0070】
-フッ素系ポリマー-
本開示において、フッ素系ポリマーの種類は特に限定されず、公知のフッ素系ポリマーを用いることができる。
フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体、エチレン/四フッ化エチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
中でも、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく挙げられる。
【0071】
-環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物-
環状脂肪族炭化水素基の環構造としては、単環であっても、2以上の環が縮合した縮合環であっても、橋掛け環であってもよい。
環状脂肪族炭化水素基の環構造としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、イソボロン環、ノルボルナン環、ジシクロペンタン環等が挙げられる。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物としては、特に制限はなく、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミド化合物、環状脂肪族炭化水素基を有するビニル化合物等が挙げられる。中でも、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく挙げられる。また、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物は、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物における環状脂肪族炭化水素基の数は、1以上であればよく、2以上有していてもよい。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、少なくとも1種の環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物を重合してなる重合体であればよく、2種以上環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物であってもよいし、環状脂肪族炭化水素基を有しない他のエチレン性不飽和化合物との共重合体であってもよい。
また、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、アクリル樹脂であることが好ましい。
【0072】
-ポリエーテルエーテルケトン-
ポリエーテルエーテルケトンは、芳香族ポリエーテルケトンの1種であり、エーテル結合、エーテル結合、カルボニル結合(ケトン)の順に結合が配置されたポリマーである。各結合間は、2価の芳香族基により連結されていることが好ましい。
本開示において、誘電正接が0.005以下であるポリマーとして用いるポリエーテルエーテルケトンは、誘電正接が0.005以下であれば、ポリエーテルエーテルケトンの種類は特に限定されず、公知のポリエーテルエーテルケトンを用いることができる。
【0073】
誘電正接が0.01以下であるポリマーは、特定の有機溶媒に可溶性のポリマー(以下、「可溶性ポリマー」ともいう。)であることが好ましい。
具体的には、本開示における可溶性ポリマーは、25℃において、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒100gに、0.1g以上溶解するポリマーである。
【0074】
層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
【0075】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量は、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、層Bの全質量に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0076】
層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外にフィラーを含んでいてもよい。
【0077】
フィラーとしては、層Aに含まれていてもよいフィラーと同様のものが挙げられる。
層Bは、フィラーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
層Bがフィラーを含む場合、フィラーの含有量は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、層Bの全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが特に好ましい。
【0078】
-その他の添加剤-
層Bは、誘電正接が0.01以下であるポリマー及びフィラー以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができる。具体的には、例えば、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
【0080】
また、層Bは、その他の添加剤として、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0081】
誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0082】
層Bにおけるその他の添加剤の総含有量は、誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量100質量部に対して、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以下である。
【0083】
層Bの平均厚みは、熱膨張係数、及び、金属箔との密着性の観点から、0.1μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましく、1μm~10μmであることが更に好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。
【0084】
本開示に係るポリマーフィルムは、吸湿による電気特性の変動を抑制する観点から、上記層A及び上記層Bに加え、層Cを更に有することが好ましく、上記層Bと、上記層Aと、上記層Cとをこの順で有することがより好ましい。
【0085】
<層C>
層Cは、表面層(最外層)であることが好ましい。
【0086】
層Cは、吸湿による電気特性の変動を抑制する観点から、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下であることが好ましく、10g/(m2・day)以下であることがより好ましく、5g/(m2・day)以下であることがさらに好ましく、2g/(m2・day)以下であることが特に好ましい。
【0087】
層Cは、吸湿による電気特性の変動を抑制する観点から、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含むことが好ましく、液晶ポリマーを含むことがより好ましい。層Cに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーは、層Aに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーと同じであることが好ましい。また、層Cに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーは、層Bに含まれる誘電正接が0.01以下であるポリマーと異なることが好ましい。
【0088】
層Cに用いられる液晶ポリマーの好ましい態様は、上記液晶ポリマーの好ましい態様と同様である。
層B及び層Cがいずれも液晶ポリマーを含む場合、層Cに含まれる液晶ポリマーは、層Bに含まれる液晶ポリマーと同じものであっても、異なるものであってもよいが、層Bに含まれる液晶ポリマーと同じものであることが好ましい。
【0089】
また、誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量は、ポリマーフィルムの誘電正接の観点から、層Aの全質量に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0090】
層Cは、フィラーを含んでいてもよい。
層Cに用いられるフィラーの好ましい態様は、層Bに用いられるフィラーの好ましい態様と同様である。
【0091】
層Cがフィラーを含む場合、フィラーの含有量は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、層Cの全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが特に好ましい。
【0092】
層Cは、液晶ポリマー及びフィラー以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
層Cに用いられるその他の添加剤の好ましい態様は、層Bに用いられるその他の添加剤の好ましい態様と同様である。
【0093】
層Cの平均厚みは、熱膨張係数、及び、金属箔との密着性の観点から、0.1μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましく、1μm~10μmであることが更に好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。
【0094】
層B及び層Cの平均厚みはそれぞれ独立に、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、層Aの平均厚みよりも薄いことが好ましい。
【0095】
層Aの平均厚みTAと層Bの平均厚みTBとの比であるTA/TBの値は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、1より大きいことが好ましく、2~100であることがより好ましく、2.5~20であることが更に好ましく、3~15であることが特に好ましい。
【0096】
層Aの平均厚みTAと層Cの平均厚みTCとの比であるTA/TCの値は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、1より大きいことが好ましく、2~100であることがより好ましく、2.5~20であることが更に好ましく、3~15であることが特に好ましい。
【0097】
また、層Cの平均厚みTCと層Bの平均厚みTBとの比であるTC/TBの値は、熱膨張係数、及び、金属との密着性の観点から、0.2~5であることが好ましく、0.5~2であることがより好ましく、0.8~1.2であることが特に好ましい。
【0098】
本開示に係るポリマーフィルムの平均厚みは、強度、銅箔との積層体にした際の電気特性(特性インピーダンス)の観点から、6μm~500μmであることが好ましく、6μm~100μmであることがより好ましく、12μm~100μmであることが特に好ましい。
【0099】
ポリマーフィルムの平均厚みは、任意の5箇所について、接着式の膜厚計、例えば、電子マイクロメータ(製品名「KG3001A]、アンリツ社製)を用いて測定し、それらの平均値とする。
【0100】
本開示に係るポリマーフィルムは、温度25℃、相対湿度10%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Aとし、温度25℃、相対湿度80%の環境下で2時間保管した後の誘電正接を誘電正接Bとしたとき、誘電正接Aと誘電正接Bとの差の絶対値は0.005以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましい。
【0101】
<ポリマーフィルムの製造方法>
(製膜)
本開示に係るポリマーフィルムの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を参照することができる。
【0102】
製膜方法としては、例えば、共流延法、重層塗布法、共押出法等が好適に挙げられる。中でも、製膜方法は、共流延法であることが好ましい。
【0103】
ポリマーフィルムにおける多層構造を共流延法又は重層塗布法により製造する場合、液晶ポリマー等の各層の成分をそれぞれ溶媒に溶解又は分散した層A形成用組成物、層B形成用組成物、層C形成用組成物等を用いて、共流延法又は重層塗布法を行うことが好ましい。
【0104】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1-クロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p-クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド、テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;ヘキサメチルリン酸アミド、トリn-ブチルリン酸等のリン化合物等が挙げられ、それらを2種以上用いてもよい。
【0105】
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。また、上記非プロトン性化合物としては、液晶ポリマーを溶解し易いことから、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチルピロリドン等のアミド又はγ-ブチロラクトン等のエステルを用いることが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンがより好ましい。
【0106】
また、溶媒としては、液晶ポリマーを溶解し易いことから、双極子モーメントが3~5である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める双極子モーメントが
3~5である化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
上記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3~5である化合物を用いることが好ましい。
【0107】
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
上記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0108】
また、本開示に係るポリマーフィルムの製造方法は、上記共流延法、重層塗布法及び共押出法等により製造する場合、支持体を使用してもよい。
支持体としては、例えば、金属ドラム、金属バンド、ガラス板、樹脂フィルム又は金属箔が挙げられる。中でも、金属ドラム、金属バンド、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド(PI)フィルムが挙げられ、市販品の例としては、宇部興産(株)製U-ピレックスS及びU-ピレックスR、東レデュポン(株)製カプトン、並びに、SKCコーロンPI社製IF30、IF70及びLV300等が挙げられる。
また、支持体は、容易に剥離できるように、表面に表面処理層が形成されていてもよい。表面処理層は、ハードクロムメッキ、フッ素樹脂等を用いることができる。
樹脂フィルム支持体の平均厚みは、特に制限はないが、好ましくは25μm以上75μm以下であり、より好ましくは50μm以上75μmである。
【0109】
また、流延、又は、塗布された膜状の組成物(塗膜)から溶媒の少なくとも一部を除去する方法としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法を用いることができる。
【0110】
(延伸)
本開示に係るポリマーフィルムは、分子配向を制御し、熱膨張係数や力学物性を調整する観点で、適宜、延伸を組み合わせることができる。延伸の方法は、特に制限はなく、公知の方法を参照することができ、溶媒を含んだ状態で実施してもよく、乾膜の状態で実施してもよい。溶媒を含んだ状態での延伸は、フィルムを把持して伸長してもよく、伸長せずに乾燥による自己収縮を利用して実施してもよい。延伸は、無機フィラー等の添加によってフィルム脆性が低下した場合に、破断伸度や破断強度を改善する目的で特に有効である。
【0111】
)
<用途>
本開示に係るポリマーフィルムは、種々の用途に用いることができる、中でも、プリント配線板などの電子部品用フィルムに好適に用いることができ、フレキシブルプリント回路基板により好適に用いることができる。
また、本開示に係るポリマーフィルムは、金属接着用液晶ポリマーフィルムとして好適に用いることができる。
【0112】
(積層体)
本開示に係る積層体は、本開示に係るポリマーフィルムを含む積層体であればよい。本開示に係る積層体は、本開示に係るポリマーフィルムと、上記ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に配置された金属層又は金属配線と、を有することが好ましく、上記金属層又は金属配線が、銅層又銅配線であることがより好ましい。
【0113】
また、本開示に係る積層体は、層A及び層Bを有する本開示に係るポリマーフィルムと、上記ポリマーフィルムにおける上記層A側の面に配置された金属層又は金属配線とを有することが好ましく、上記金属層又は金属配線が、銅層又銅配線であることがより好ましい。
【0114】
また、本開示に係る積層体は、層Bと、層Aと、層Cとをこの順で有する本開示に係るポリマーフィルムと、上記ポリマーフィルムの層C側の面に配置された金属層又は金属配線とを有することが好ましく、上記金属層又は金属配線が、銅層又銅配線であることがより好ましい。
【0115】
ポリマーフィルムの両方の面に金属層が配置される場合、2つの金属層は、同じ材質、厚さ及び形状の金属層であっても、互いに異なる材質、厚さ及び形状の金属層であってもよい。特性インピーダンス調整の観点からは、2つの金属層は、互いに異なる材質及び厚みの金属層であってもよい。
【0116】
上記金属層及び金属配線は、特に制限はなく、公知の金属層及び金属配線であればよいが、例えば、銀層、銀配線、銅層又は銅配線であることが好ましく、銅層又は銅配線であることがより好ましい。
【0117】
更に、特性インピーダンス調整の観点から、層B又は層Cのうち、一方の側に金属層が積層され、他方の側に他のフィルム(好ましくは他のポリマーフィルム)が積層される態様も好ましく挙げられる。
【0118】
上記ポリマーフィルムと上記金属層との剥離強度は、0.5kN/m以上であることが好ましく、0.7kN/m以上であることがより好ましく、0.7kN/m~2.0kN/mであることが更に好ましく、0.9kN/m~1.5kN/mであることが特に好ましい。
【0119】
本開示において、ポリマーフィルムと金属層(例えば、銅層)との剥離強度は、以下の方法により測定するものとする。
ポリマーフィルムと金属層との積層体から1.0cm幅の剥離用試験片を作製し、フィルムを両面接着テープで平板に固定し、JIS C 5016(1994)に準じて180°法により、50mm/分の速度で金属層からポリマーフィルムを剥離したときの強度(kN/m)を測定する。
【0120】
金属層は、銀層又は銅層であることが好ましく、銅層であることがより好ましい。銅層としては、圧延法により形成された圧延銅箔、又は、電解法により形成された電解銅箔が好ましく、耐屈曲性の観点から、圧延銅箔であることがより好ましい。
【0121】
金属層、好ましくは銅層の平均厚みは、特に限定されないが、2μm~20μmであることが好ましく、3μm~18μmであることがより好ましく、5μm~12μmであることが更に好ましい。銅箔は、支持体(キャリア)上に剥離可能に形成されているキャリア付き銅箔であってもよい。キャリアとしては、公知のものを用いることができる。キャリアの平均厚みは、特に限定されないが、10μm~100μmであることが好ましく、18μm~50μmであることがより好ましい。
【0122】
層Bの厚さは、金属配線と接着した際に、金属配線の歪みを抑制する観点から、金属層(例えば、銅層)の厚さより大きいことが好ましい。
【0123】
本開示に係る積層体における金属層は、回路パターンを有する金属層であってもよい。
本開示に係る積層体における金属層を、例えば、エッチングにより所望の回路パターンに加工し、フレキシブルプリント回路基板することも好ましい。エッチング方法としては、特に制限はなく、公知のエッチング方法を用いることができる。
【実施例0124】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0125】
<<測定法>>
[誘電正接]
誘電正接の測定は周波数28GHzで共振摂動法により実施した。ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「E8363B」)に28GHzのスプリットシリンダ共振器((株)関東電子応用開発CR728)を接続し、スプリットシリンダ共振器にフィルムサンプルを挿入し、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、挿入前後の共振周波数の変化からポリマーフィルムの誘電正接を測定した。
【0126】
[誘電正接変化]
ポリマーフィルムを、温度25℃、相対湿度10%の環境下で2時間保管した後に、上記誘電正接の測定方法と同様の方法で誘電正接を測定した。得られた値を誘電正接Aとした。また、ポリマーフィルムを、温度25℃、相対湿度80%の環境下で2時間保管した後に、上記誘電正接の測定方法と同様の方法で誘電正接を測定した。得られた値を誘電正接Bとした。誘電正接Aと誘電正接Bとの差の絶対値を算出した。
【0127】
〔剥離強度〕
ポリマーフィルムと銅層との積層体から1.0cm幅の剥離用試験片を作製し、ポリマーフィルムを両面接着テープで平板に固定し、JIS C 5016(1994)に準じて180°法により、50mm/分の速度でポリマーフィルムから銅層を剥離したときの強度(kN/m)を測定した。
【0128】
〔透湿度〕
まず、塩化カルシウムを入れたカップの開口部をポリマーフィルムで蓋をした。カップを密閉した状態で、温度40℃、相対湿度90%の環境下で24時間放置した。透湿度は、調湿前後の質量変化(g/(m2・day))から算出した。なお、層Bの透湿度は、ポリマーフィルム全体の透湿度(R1)、及び、層Bを削り取ったポリマーフィルムの透湿度(R2)をそれぞれ算出し、{(1/R1)-(1/R2)}-1より算出した。
【0129】
<<製造例>>
<液晶ポリマー溶液>
LC-A:下記製造方法に従って作製した液晶ポリマー
【0130】
-LC-Aの製造-
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4-ヒドロキシアセトアミノフェン377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温(23℃)から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B1)を得た。この液晶ポリエステル(B1)の流動開始温度は、193.3℃であった。
【0131】
上記で得た液晶ポリエステル(B1)を、窒素雰囲気下、室温から160℃まで2時間20分かけて昇温し、次いで160℃から180℃まで3時間20分かけて昇温し、180℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却し、次いで、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B2)を得た。この液晶ポリエステル(B2)の流動開始温度は、220℃であった。
【0132】
上記で得た液晶ポリエステル(B2)を、窒素雰囲気下、室温(23℃)から180℃まで1時間25分かけて昇温し、次いで180℃から255℃まで6時間40分かけて昇温し、255℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(LC-A)を得た。液晶ポリエステル(LC-A)の流動開始温度は、302℃であった。また、この液晶ポリエステル(LC-A)を、示差走査熱量分析装置を用いて融点を測定した結果、311℃であった。
【0133】
-液晶ポリエステル(LC-A)溶液の調製-
液晶ポリエステルLC-AをN-メチルピロリドンに加え、窒素雰囲気下、140℃4時間撹拌し、液晶ポリエステル(LC-A)溶液を得た。表1に記載の添加剤を添加した場合には、添加後に更に25℃30分攪拌して、液晶ポリエステル(LC-A)溶液を得た。
【0134】
<ポリイミド前駆体溶液>
PI-A:下記製造方法に従って作製したポリイミド前駆体
【0135】
-PA-Aの製造-
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)850kgに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を68.74kg添加し、パラフェニレンジアミン(PDA)を23.6kg添加し、次いで窒素雰囲気下で30分間攪拌して溶解させ、重合物を得た。これまでに添加した成分が非熱可塑性ブロック成分となり、これ以降に添加する成分が熱可塑性ブロック成分となる。上記非熱可塑性ブロック成分を含む重合溶液に、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)を14.5kg投入し、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を6.8kg添加し、更に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を19.2kg投入し、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)を17.2kg投入し、1時間攪拌して、23℃での粘度が2500ポイズのポリアミド酸PA-Aを得た。
【0136】
-PI-A前駆体溶液の製造-
ポリアミド酸PA-Aに、無水酢酸(ポリアミド酸PA-Aのアミド酸ユニット1モルに対して1.6モル)、イソキノリン(ポリアミド酸PA-Aのアミド酸ユニット1モルに対して0.5モル)、DMF(無水酢酸、イソキノリン、DMFの合計質量がポリアミド酸PA-Aの45%となる質量)を添加し、ポリイミド前駆体(PI-A)溶液を得た。表1に記載の添加剤を添加した場合には、添加後にさらに25℃30分攪拌して、ポリイミド前駆体(PI-A)溶液を得た。
【0137】
<添加剤>
F-1:ローターステーター式の分散機を使用して分散したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を使用し、固形分量が表1に記載の量になるように用いた。
M-1:市販の低誘電接着剤(ポリマー型の硬化性化合物を主として含むSLK(信越化学工業(株)製)のワニスを用いた。
【0138】
下記の流延に準じて製膜、及び片面銅張積層板の作製を行った。
【0139】
〔共流延(溶液製膜)〕
【0140】
-ポリマーフィルムの作製-
液晶ポリマー溶液及びポリイミド前駆体溶液をそれぞれ、公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、ついで同じく公称孔径10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。そして、共流延用に調整したフィードブロックを装備した流延ダイに、層A用、層B用、及び、層C用のポリマー溶液をそれぞれ送液し、ステンレス製ベルト(支持体)上に流延した。流延後、70℃~130℃の範囲で段階的に加熱し、自己支持性のゲルフィルムの状態で支持体から剥離した。続けてピンテンターで把持しながら窒素雰囲気下で段階的に加熱し、ポリマーフィルムを得た。このときの加熱温度は、LC-Aでは250℃~300℃、PI-Aでは250℃~400℃とした。
【0141】
-片面銅張積層板の作製-
(銅張積層板前駆体工程)
得られたポリマーフィルムの片面に、銅箔の処理面が、ポリマーフィルムと接するように配置し、ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ社製「真空ラミネータV-130」)を使用して、140℃及びラミネート圧0.4MPaの条件で1分間のラミネート処理を行い、片面銅箔積層板の前駆体を得た。銅箔の種類は、実施例1~2、及び、比較例1~2では、CF-T4X-SV-12(低粗化タイプ、平均厚み12μm、福田金属箔粉工業(株)製)を用い、実施例3~4では、CF-T9DA-SV-12(無粗化タイプ、平均厚み12μm、福田金属箔粉工業(株)製)を用いた。
【0142】
(本熱圧着工程)
熱圧着機((株)東洋精機製作所製「MP-SNL」)を用いて、得られた銅張積層板前駆体を300℃4.5MPaの条件で10分間熱圧着することにより、片面銅張積層板を作製した。
【表1】
【0143】
表1に示すように、実施例1~4では、層Aと、層Aの少なくとも一方の面に設けられた層Bとを有し、層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含み、層Bは、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/(m2・day)以下であるため、吸湿による誘電正接の変動が抑制されることが分かった。
【0144】
一方、比較例1~2では、環境湿度が変化した場合の誘電正接の安定性が不十分であることが分かった。