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特開2022-127345制御装置、放射線画像撮影システム、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127345
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】制御装置、放射線画像撮影システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/26 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
H05G1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025437
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
【テーマコード(参考)】
4C092
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092AB04
4C092AB15
4C092AB20
4C092AC01
4C092CC03
4C092CD03
4C092CH03
(57)【要約】
【課題】放射線管のゲート電極に供給するゲート電圧のキャリブレーションの間隔を従来よりも短縮することが可能な制御装置、放射線画像撮影システム、制御方法、及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】制御装置のプロセッサは、1回の撮影期間内に、ゲート電圧を供給させ、カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値及び電源電圧発生器からゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、電源電圧発生器からアノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じたゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影においてゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、前記カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に前記被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する制御装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
1枚の放射線画像を撮影するために前記放射線管が前記放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、
前記ゲート電極にゲート電圧を供給させ、
前記カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び前記電源電圧発生器から前記ゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、前記電源電圧発生器から前記アノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、前記ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、
n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じた前記ゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、前記ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う
制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
n+1回目の撮影における前記アノード電流の目標電流値が、n回目の撮影における前記アノード電流の目標電流値と一致する場合、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の電圧値をn+1回目の撮影において、前記ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記差分が予め設定された閾値を超えた場合、報知する
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
ゲート電圧の電圧値とアノード電流の電流値との対応関係を表す対応関係情報を参照可能であり、
前記対応関係情報に基づいて、n回目の撮影用として設定された前記目標電流値に対応するゲート電圧の電圧値を目標電圧値として取得し、
取得した前記目標電圧値のゲート電圧を最初のゲート電圧として前記n回目の撮影を開始させ、
前記対応関係情報を、n回目の撮影の最後に補正された前記ゲート電圧の補正電圧値と前記目標電流値とが対応する対応関係情報に更新する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記対応関係情報の更新として、前記対応関係情報における前記目標電圧値に対応する電圧値を、n回目の撮影の最後に補正された前記ゲート電圧の補正電圧値に更新する
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
ゲート電圧の電圧値とアノード電流の電流値との対応関係を表す対応関係情報を参照可能であり、
前記対応関係情報に基づいて、n回目の撮影用として設定された前記目標電流値に対応するゲート電圧の電圧値を目標電圧値として取得し、
n-1回目の撮影の最後に前記ゲート電圧を補正した補正量に応じて前記目標電圧値を補正することにより得た補正電圧値を、前記n回目の撮影の最初のゲート電圧として前記ゲート電極に供給する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、1回の前記撮影期間内に、前記ゲート電圧の電圧値を補正する制御を繰り返す
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記推定アノード電流の電流値と前記目標電流値との差分が予め設定された許容範囲外の場合において、
予め定められた調整量を加減することによりゲート電圧の電圧値を調整する第1処理と、前記第1処理で調整された調整済み電圧値のゲート電圧を前記ゲート電極に供給する第2処理と、前記第2処理後において、前記カソード電流の検出値の取得、前記ゲート電流の検出値の取得、及び前記推定アノード電流の電流値の推定を行う第3処理とを、前記差分が前記許容範囲内となるまで繰り返し行うことで前記ゲート電圧の補正電圧値を導出する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
n回目の撮影の前記撮影期間内に、前記推定アノード電流の電流値と前記目標電流値との差分が予め設定された許容範囲内とならなかった場合、前記撮影期間内にゲート電圧の補正が完了しなかったことを表す情報を記録させる、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
放射線管と、
前記放射線管から出射された放射線を被写体に対して照射して、前記被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置と、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の制御装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項11】
ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、前記カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に前記被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する制御方法であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
1枚の放射線画像を撮影するために前記放射線管が前記放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、
前記ゲート電極にゲート電圧を供給させ、
前記カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び前記電源電圧発生器から前記ゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、前記電源電圧発生器から前記アノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、前記ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、
n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じた前記ゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、前記ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項12】
ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、前記カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に前記被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
1枚の放射線画像を撮影するために前記放射線管が前記放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、
前記ゲート電極にゲート電圧を供給させ、
前記カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び前記電源電圧発生器から前記ゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、前記電源電圧発生器から前記アノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、前記ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、
n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じた前記ゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、前記ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う
処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、放射線画像撮影システム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影システムが知られている。放射線画像撮影システムは、放射線を発生する放射線管を有する。放射線管としては、電極としてのフィラメントを加熱して熱電子を放出する放射線管の他に、電極を加熱せずに電子を放出する冷陰極を備えた放射線管が知られている。こうした放射線管は、冷陰極を構成する電子放出部とアノード部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。電子放出部は、カソード部とカソード部に電圧を印加するためのゲート電極とを有する。アノード部は、カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給される。
【0003】
上記放射線管は、ゲート電極に供給するゲート電圧が同じであっても、経時変化等の影響により実際にアノード部へ流れるアノード電流の電流値が変化してしまう場合がある。そこで、特許文献1には、実際にアノード部へ流れるアノード電流の電流値を所望の値とするために、ゲート電極に供給するゲート電圧を補正するキャリブレーションを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019/151251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記キャリブレーションは、放射線管が出射する放射線の線量(いわゆるmAs値)について、設定した目標値と実測値との間の誤差の抑制に関わる処理であり、目標値と実測値との誤差は放射線画像の画質に影響する。そのため、目標値と実測値の誤差が大きくなり過ぎないように、例えば少なくとも年に数回程度はキャリブレーションを行う必要がある。
【0006】
キャリブレーションの間隔が長いほど、目標値と実測値の誤差は広がってしまう。線量の管理の正確性が特に求められる分野においては、キャリブレーションの間隔をできるだけ短くして誤差をできるだけ抑制したいという要望があった。例えば、医療分野においては、線量の管理は重要であり、正確性が求められる。従来のキャリブレーションは、例えば夜間など、放射線画像撮影システムの稼働を停止させた状態で行われていたため、キャリブレーションの間隔を短縮しづらいという問題があった。
【0007】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、放射線管のゲート電極に供給するゲート電圧のキャリブレーションの間隔を従来よりも短縮することが可能な制御装置、放射線画像撮影システム、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の制御装置は、ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する制御装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、1枚の放射線画像を撮影するために放射線管が放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、ゲート電極にゲート電圧を供給させ、カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び電源電圧発生器からゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、電源電圧発生器からアノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じたゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う。
【0009】
本開示の第2の態様の制御装置は、第1の態様の制御装置において、プロセッサは、n+1回目の撮影におけるアノード電流の目標電流値が、n回目の撮影におけるアノード電流の目標電流値と一致する場合、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の電圧値をn+1回目の撮影において、ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う。
【0010】
本開示の第3の態様の制御装置は、第1の態様または第2の態様の制御装置において、プロセッサは、差分が予め設定された閾値を超えた場合、報知する。
【0011】
本開示の第4の態様の制御装置は、第1の態様からは第3の態様のいずれか1態様の制御装置において、プロセッサは、ゲート電圧の電圧値とアノード電流の電流値との対応関係を表す対応関係情報を参照可能であり、対応関係情報に基づいて、n回目の撮影用として設定された目標電流値に対応するゲート電圧の電圧値を目標電圧値として取得し、取得した目標電圧値のゲート電圧を最初のゲート電圧としてn回目の撮影を開始させ、対応関係情報を、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値と目標電流値とが対応する対応関係情報に更新する。
【0012】
本開示の第5の態様の制御装置は、第4の態様の制御装置において、プロセッサは、対応関係情報の更新として、対応関係情報における目標電圧値に対応する電圧値を、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値に更新する。
【0013】
本開示の第6の態様の制御装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1態様の制御装置において、プロセッサは、ゲート電圧の電圧値とアノード電流の電流値との対応関係を表す対応関係情報を参照可能であり、対応関係情報に基づいて、n回目の撮影用として設定された目標電流値に対応するゲート電圧の電圧値を目標電圧値として取得し、n-1回目の撮影の最後にゲート電圧を補正した補正量に応じて目標電圧値を補正することにより得た補正電圧値を、n回目の撮影の最初のゲート電圧としてゲート電極に供給する。
【0014】
本開示の第7の態様の制御装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか1態様の制御装置において、プロセッサは、1回の撮影期間内に、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を繰り返す。
【0015】
本開示の第8の態様の制御装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1態様の制御装置において、プロセッサは、推定アノード電流の電流値と目標電流値との差分が予め設定された許容範囲外の場合において、予め定められた調整量を加減することによりゲート電圧の電圧値を調整する第1処理と、第1処理で調整された調整済み電圧値のゲート電圧をゲート電極に供給する第2処理と、第2処理後において、カソード電流の検出値の取得、ゲート電流の検出値の取得、及び推定アノード電流の電流値の推定を行う第3処理とを、差分が許容範囲内となるまで繰り返し行うことでゲート電圧の補正電圧値を導出する。
【0016】
本開示の第9の態様の制御装置は、第8の態様の制御装置において、プロセッサは、n回目の撮影の撮影期間内に、推定アノード電流の電流値と目標電流値との差分が予め設定された許容範囲内とならなかった場合、撮影期間内にゲート電圧の補正が完了しなかったことを表す情報を記録させる。
【0017】
また、上記目的を達成するために本開示の第10の態様の放射線画像撮影システムは、放射線管と、放射線管から出射された放射線を被写体に対して照射して、被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置と、本開示の制御装置と、を備える。
【0018】
また、上記目的を達成するために本開示の第11の態様の制御方法は、ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する制御方法であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、1枚の放射線画像を撮影するために放射線管が放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、ゲート電極にゲート電圧を供給させ、カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び電源電圧発生器からゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、電源電圧発生器からアノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じたゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う処理をコンピュータが実行するための方法である。
【0019】
また、上記目的を達成するために本開示の第12の態様の制御プログラムは、ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、1枚の放射線画像を撮影するために放射線管が放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、ゲート電極にゲート電圧を供給させ、カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び電源電圧発生器からゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、電源電圧発生器からアノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じたゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、放射線管のゲート電極に供給するゲート電圧のキャリブレーションの間隔を従来よりも短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の放射線画像撮影システムにおける全体の構成の一例を概略的に表した構成図である。
図2】実施形態のマンモグラフィ装置及びコンソールの構成の一例を表したブロック図である。
図3】実施形態の放射線源の構成の一例を構成図である。
図4】実施形態のマンモグラフィ装置の線源制御部の一例を表す機能ブロック図である。
図5】実施形態の対応関係情報の一例を示す図である。
図6A】補正部によるゲート電極に供給するゲート電圧の補正について説明するための図である。
図6B】補正部によるゲート電極に供給するゲート電圧の補正について説明するための図である。
図7】実施形態のマンモグラフィ装置の線源制御部による放射線源制御処理の流れの一例を表したフローチャートである。
図8】実施形態のマンモグラフィ装置の線源制御部による放射線源制御処理の流れの他の例を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0023】
まず、本実施形態の放射線画像撮影システムにおける、全体の構成の一例について説明する。図1には、本実施形態の放射線画像撮影システム1における、全体の構成の一例を表す構成図が示されている。図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、マンモグラフィ装置10及びコンソール12を備える。
【0024】
まず、本実施形態のコンソール12について説明する。本実施形態のコンソール12は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介してRIS(Radiology Information System)等から取得した撮影オーダ及び各種情報と、操作部56等によって医師及び技師等のユーザにより行われた指示等とを用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う機能を有している。
【0025】
本実施形態のコンソール12は、一例として、サーバーコンピュータである。図2には、実施形態のマンモグラフィ装置及びコンソールの構成の一例を表したブロック図が示されている。図2に示すように、コンソール12は、制御部50、記憶部52、I/F(Interface)部54、操作部56、及び表示部58を備えている。制御部50、記憶部52、I/F部54、操作部56、及び表示部58はシステムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0026】
本実施形態の制御部50は、コンソール12の全体の動作を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)50A、ROM(Read Only Memory)50B、及びRAM(Random Access Memory)50Cを備える。ROM50Bには、CPU50Aで実行される、制御プログラム51を含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM50Cは、各種データを一時的に記憶する。CPU50Aが制御プログラム51を実行することにより、マンモグラフィ装置10による放射線画像の撮影を制御する。
【0027】
記憶部52には、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部52の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が挙げられる。
【0028】
操作部56は、放射線Rの照射指示を含む放射線画像の撮影等に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。操作部56は特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等が挙げられる。表示部58は、各種情報を表示する。なお、操作部56と表示部58とを一体化してタッチパネルディスプレイとしてもよい。
【0029】
I/F部54は、無線通信または有線通信により、マンモグラフィ装置10、RIS、及びPACS(Picture Archiving and Communication Systems)との間で各種情報の通信を行う。本実施形態の放射線画像撮影システム1では、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データは、コンソール12が、I/F部54を介して無線通信または有線通信によりマンモグラフィ装置10から受信する。
【0030】
一方、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、コンソール12の制御に応じて動作し、被検者の乳房を被写体として、乳房に放射線R(例えば、X線)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。図1には、本実施形態のマンモグラフィ装置10の外観の一例を表す側面図が示されている。なお、図1は、被検者の左側からマンモグラフィ装置10を見た場合の外観の一例を示している。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子(車椅子を含む)等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房を撮影する装置であってもよい。
【0031】
放射線検出器20は、被写体である乳房を通過した放射線Rを検出する。詳細には、放射線検出器20は、被検者の乳房及び撮影台24内に進入して放射線検出器20の検出面20Aに到達した放射線Rを検出し、検出した放射線Rに基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像を表す画像データを出力する。以下では、放射線源29から放射線Rを照射して、放射線検出器20により放射線画像を生成する一連の動作を「撮影」という場合がある。本実施形態の放射線検出器20の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0032】
図1に示すように、放射線検出器20は、撮影台24の内部に配置されている。本実施形態のマンモグラフィ装置10では、撮影を行う場合、撮影台24の撮影面24A上には、被検者の乳房がユーザによってポジショニングされる。
【0033】
撮影を行う際に乳房を圧迫するために用いられる圧迫板38は、撮影台24に設けられた圧迫ユニット36に取り付けられる。詳細には、圧迫ユニット36には、圧迫板38を撮影台24に近づく方向または離れる方向(以下、「上下方向」という)に移動する圧迫板駆動部(図示省略)が設けられている。圧迫板38の支持部39は、圧迫板駆動部に着脱可能に取り付けられ、圧迫板駆動部により上下方向に移動し、撮影台24との間で被検者の乳房を圧迫する。
【0034】
放射線照射部28は、放射線源29及び線源制御部30を備えている。放射線源29は、線源制御部30の制御により放射線Rを発生させ、発生させた放射線Rを被写体に向けて照射する(詳細は後述する)。線源制御部30は、プロセッサ30Aと、メモリ30Bと、回路部30Cと、を備えている。メモリ30Bには、線源制御プログラム31及び対応関係情報32が記憶されている。本実施形態では、プロセッサ30Aの一例としてCPUを用いている。プロセッサ30Aは、メモリ30Bに記憶された線源制御プログラム31を実行することにより、放射線源29の制御を実行する。本実施形態の線源制御部30が、本開示の制御装置の一例である。また、本実施形態ではプロセッサ30Aが、本開示のプロセッサの一例である。また、本実施形態では線源制御プログラム31が、本開示の制御プログラムの一例である。
【0035】
また、図1に示すように本実施形態のマンモグラフィ装置10は、撮影台24と、アーム部33と、基台34と、軸部35と、を備えている。アーム部33は、基台34によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持される。また、軸部35によりアーム部33が基台34に対して回転をすることが可能である。軸部35は、基台34に対して固定されており、軸部35とアーム部33とが一体となって回転する。
【0036】
軸部35及び撮影台24の圧迫ユニット36にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態と非噛合状態とを切替えることにより、撮影台24の圧迫ユニット36と軸部35とが連結されて一体に回転する状態と、軸部35が撮影台24と分離されて空転する状態とに切り替えることができる。なお、軸部35の動力の伝達・非伝達の切り替えは、上記ギアに限らず、種々の機械要素を用いることができる。
【0037】
アーム部33と撮影台24は、軸部35を回転軸として、別々に、基台34に対して相対的に回転可能となっている。本実施形態では、基台34、アーム部33、及び撮影台24の圧迫ユニット36にそれぞれ係合部(図示省略)が設けられ、この係合部の状態を切替えることにより、アーム部33、及び撮影台24の圧迫ユニット36の各々が基台34に連結される。軸部35に連結されたアーム部33、及び撮影台24の一方または両方が、軸部35を中心に一体に回転する。マンモグラフィ装置10は、放射線源29を放射線検出器20に対して正対させた姿勢で被写体を撮影する単純撮影が可能であることに加えて、放射線検出器20に対して放射線源29を相対的に移動させることにより被写体に対する放射線Rの照射角度を変化させながら複数回の撮影を行ういわゆるトモシンセシス撮影が可能である。マンモグラフィ装置10において、トモシンセシス撮影を行う場合、放射線照射部28の放射線源29は、アーム部33の回転により、照射角度が異なる複数の照射位置の各々に移動される。
【0038】
また、図2に示すように本実施形態のマンモグラフィ装置10は、上述した放射線検出器20、放射線源29、及び線源制御部30の他、制御部40、記憶部42、I/F部44、操作部46、及び表示部48をさらに備えている。放射線検出器20、放射線源29、線源制御部30、制御部40、記憶部42、I/F部44、操作部46、及び表示部48はシステムバスやコントロールバス等のバス49を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0039】
制御部40は、コンソール12の制御に応じて、マンモグラフィ装置10の全体の動作を制御する。制御部40は、CPU40A、ROM40B、及びRAM40Cを備える。ROM40Bには、CPU40Aで実行される、放射線画像の撮影に関する制御を行うための撮影プログラムや、放射線画像の撮影に関する制御を行う撮影制御プログラム41を含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0040】
記憶部42には、放射線検出器20により撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部42の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。I/F部44は、無線通信または有線通信により、コンソール12との間で各種情報の通信を行う。マンモグラフィ装置10で放射線検出器20により撮影された放射線画像の画像データは、I/F部44を介してコンソール12に無線通信または有線通信によって送信される。
【0041】
本実施形態の制御部40、記憶部42、及びI/F部44の各々は撮影台24内部に設けられている。
【0042】
また、操作部46は、例えば、マンモグラフィ装置10の撮影台24等に設けられた複数のスイッチである。なお、操作部46は、タッチパネル式のスイッチとして設けられていてもよいし、医師及び技師等のユーザが足で操作するフットスイッチとして設けられていてもよい。表示部48は、各種情報をユーザに表示するために、マンモグラフィ装置10の撮影台24等に設けられている。
【0043】
次に、本実施形態のマンモグラフィ装置10の放射線源29及び線源制御部30について詳細に説明する。図3には、放射線源29の構成の一例が示されている。なお、図3には、線源制御部30も記載している。
【0044】
図3に示すように放射線源29は、放射線管62と放射線管62を収容する図示を省略した筐体とを備える。放射線管62は、外囲器62A、アノード部60、カソード部64、ゲート電極66、及びフォーカス68を有している。外囲器62Aは、例えば円筒形状をしており、ガラス又はセラミック等で構成される。外囲器62Aの内部は密閉されており、真空状態に保たれている。外囲器62Aの内部には、アノード部60の一部と、カソード部64、ゲート電極66、及びフォーカス68が収容される。
【0045】
本実施形態のゲート電極66及びカソード部64は、本開示の一例である。カソード部64は、一例として、外部から電界が加えられることにより電子を放出する複数の電子放出素子をマトリクス状に配列した電界放出アレイ(Field Emitter Array)で構成される。電子放出素子は、例えば先端が尖った円錐形状をしており、一例として、シリコン基板上にモリブデンを蒸着することにより形成されるスピント型の電子放出素子が用いられる。ゲート電極66は、カソード部64に対して電界を加えるための電極である。ゲート電極66は、各電子放出素子を囲う状態に形成されており、各電子放出素子に対応してマトリクス状に配置された複数の開口部を有する。この開口部から電子が放出される。フォーカス68は、カソード部64の各電子放出素子が放出する電子を集束させるためのフォーカス電極である。
【0046】
ゲート電極66及びカソード部64の形成方法は一例として次のとおりである。まず、シリコン基板上にゲート電極66を構成する材料となる酸化膜を形成し、酸化膜上にゲート電極66のパターンに応じてレジストを形成する。レジストが形成された後、酸化膜をエッチングすることにより、酸化膜に開口部が形成される。酸化膜においてレジストが形成されていない部分が開口部となる。開口部が形成された後、電子放出素子の材料となるモリブデンの膜を蒸着により形成される。これにより、開口部内に円錐形状の電子放出素子が形成される。図3において、カソード部64とゲート電極66は分離されているように描かれているが、実際には、1つの基板上に形成されている。電子放出素子の材料としては、カーボンナノチューブ等を用いてもよい。
【0047】
カソード部64には線源制御部30からグランド電位GNDが供給され、カソード部64から線源制御部30へカソード電流Icが流れる。また、ゲート電極66には線源制御部30からゲート電圧Vgが供給され、カソード部64から線源制御部30へカソード電流Icが流れる。
【0048】
アノード部60は、カソード部64と対向して配置されたアノード面60Aを有している。アノード部60には、図示を省略したターゲットが設けられており、電源電圧発生器69からグランド電位GNDよりも高い電源電圧が供給される。
【0049】
ゲート電極66にゲート電圧が印加されることにより、ゲート電極66がオンとなっている場合、電源電圧発生器69からアノード部60からカソード部64へアノード電流Iaが流れることになる。このときカソード部64に設けられた電子放出素子から複数の電子が放出される。放出された電子は、フォーカス66によって集束された後、アノード部60のアノード面60Aに衝突し、アノード部60内部を通って電源電圧発生器69に吸収される。アノード面60Aに設けられたターゲットは、電子を受けて放射線Rを発生する材料によって構成されている。カソード部64から放出された電子が、アノード面60Aに設けられたターゲットに衝突することにより放射線Rが発生する。図3に示すように、発生した放射線Rは、アノード面60Aの傾きに応じた方向に出射される。なお、アノード電流Iaは、管電流とも呼ばれる。放射線源29により発生する放射線Rの発生量は、管電流Iaと放射線Rの照射時間との積であるmAs値により調整される。
【0050】
フォーカス68は、上述のとおり、カソード部64の電子放出素子から放出された電子の軌道を修正することにより、放出された電子を集束させるものであり、ゲート電極66とアノード面60Aのターゲットとの間に設けられる。フォーカス68には透過部が設けられており、透過部を透過した電子がアノード面60Aのターゲットに到達する。フォーカス68には、線源制御部30のフォーカス電圧供給部86(図4参照)からフォーカス電圧Vfが供給される。印可されるフォーカス電圧Vfに応じて、アノード面60Aにおける電子線の焦点位置が調整される。
【0051】
線源制御部30は、カソード部64にグランド電位GNDを供給する機能、ゲート電極66にゲート電圧Vgを供給する機能、及びフォーカス68にフォーカス電圧Vfを供給する機能を有する。線源制御部30により、ゲート電極66へのゲート電圧Vgの供給が開始されると放射線源29による放射線Rの照射が開始され、ゲート電極66へのゲート電圧Vgの供給が停止されると、放射線Rの照射が停止される。また、線源制御部30は、アノード部60に流れるアノード電流Iaの電流値を制御する機能を有する。
【0052】
図4には、本実施形態の線源制御部30のプロセッサ30A及び回路部30Cの機能ブロックの一例を示す。図4に示すようにプロセッサ30Aは、コントローラ70、ゲート電圧生成部72、及びアノード電流推定部82として機能する。上述のとおり、本実施形態のプロセッサ30Aは、CPUがメモリ30Bに記憶されている線源制御プログラム31を実行することによって実現される。また、図4に示すように回路部30Cは、パルス生成部76、ゲート電流検出部78、カソード電流検出部80、比較部84、及びフォーカス電圧供給部86を備える。パルス生成部76、ゲート電流検出部78、カソード電流検出部80、比較部84、及びフォーカス電圧供給部86は、主にアナログ回路によって実現される。
【0053】
なお、コントローラ70、ゲート電圧生成部72、パルス生成部76、ゲート電流検出部78、カソード電流検出部80、アノード電流推定部82、比較部84、及びフォーカス電圧供給部86等の線源制御部30が備える各部については、ハードウェア及びアナログ回路の組み合わせ若しくは、いずれか一方により実現してもよい。例えば、コントローラ70、ゲート電圧生成部72、及びアノード電流推定部82について、全部ではなく一部をCPUと線源制御プログラム31の組み合わせにより実現してもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はアナログ回路等の各種のハードウェアによって実現してもよいし、これらのハードウェアとCPUとを組み合わせてもよい。
【0054】
コントローラ70は、線源制御部30の各部の制御等を行う機能を有する。コントローラ70は、撮影用に設定されたアノード電流Iaの目標電流値(以下、「目標値Iat」という)をゲート電圧導出部73及び比較部84に出力する。目標値Iatは、例えば、撮影に応じたmAs値に基づいて自動的に設定される。もちろん、mAs値に基づいてユーザが設定してもよい。また、コントローラ70は、パルス生成部76の出力のオンオフを制御するための制御信号をパルス生成部76に出力する。
【0055】
パルス生成部76は、ゲート電圧生成部72から入力されたゲート電圧Vgの電圧値(後述する供給値Vg)に応じた高さ及びデューティ比を有するゲート電圧パルスを生成し、放射線源29のゲート電極66に供給する機能を有する。なお、ゲート電圧パルスが単一のパルスである場合、「デューティ比」は「パルス幅」を意味する。パルス生成部76には、上述したようにコントローラ70から出力のオンオフを制御するための制御信号が入力される。パルス生成部76に対して、出力をオンとするための制御信号が入力された場合、パルス生成部76からゲート電圧パルスが出力され、ゲート電極66にゲート電圧Vgが供給される。これにより、放射線源29から放射線Rが照射される。また、パルス生成部76に対して、出力をオフとするための制御信号が入力された場合、パルス生成部76によるゲート電圧パルスの出力が停止され、ゲート電極66へのゲート電圧Vgの供給が停止される。これにより、放射線源29による放射線Rの照射が停止される。
【0056】
ゲート電流検出部78は、パルス生成部76とゲート電極66との間に設けられ、ゲート電圧導出部73からゲート電極66へ流れるゲート電流Igの電流値を検出する機能を有する。以下、ゲート電流検出部78により検出したゲート電流Igの電流値を「検出値Ig」という。ゲート電流検出部78が検出した検出値Igは、アノード電流推定部82へ出力される。
【0057】
カソード電流検出部80は、カソード部64にグランド電位GNDを供給する供給部とカソード部64との間に設けられ、カソード部64からグランド電位GNDを供給する供給部へ流れるカソード電流Icの電流値を検出する機能を有する。以下、カソード電流検出部80により検出したカソード電流Icの電流値を「検出値Ic」という。カソード電流検出部80が検出した検出値Icは、アノード電流推定部82に出力される。
【0058】
アノード電流推定部82は、ゲート電流検出部78から入力される検出値Ig及びカソード電流検出部80から入力される検出値Icに基づいて、電源電圧発生器69からアノード部60へ流れていると推定されるアノード電流Iaの電流値をゲート電流検出部78から入力される検出値Ig及びカソード電流検出部80から入力される検出値Icに基づいて推定する機能を有する。このようにアノード電流推定部82は、電源電圧発生器69からカソード部64に実際に流れるアノード電流Iaを検出するのではなく、検出値Igと検出値Icとから、電源電圧発生器69からカソード部64に流れると推定されるアノード電流Iaの電流値を推定する。そのため、以下では、このアノード電流Iaを「推定アノード電流Iap」といい、推定されたその電流値を「推定値Iap」という。
【0059】
具体的には、アノード電流推定部82は、下記(1)式を用いて、推定アノード電流Iapの推定値Iapを導出する。
推定値Iap=検出値Ic-検出値Ig ・・・(1)
【0060】
アノード電流推定部82は、上記(1)式を用いて導出した推定値Iapを比較部84へ出力する。
【0061】
比較部84は、コントローラ70から入力された目標値Iatと、アノード電流推定部82から入力された推定値Iapとを比較し、比較結果をゲート電圧生成部72に出力する機能を有する。一例として本実施形態の比較部84は、下記(2)式に用いて得られる、目標値Iatと推定値Iapとの差分値Dvを表す情報をゲート電圧生成部72へ出力する。
差分値Dv=目標値Iat-推定値Iap ・・・(2)
【0062】
ゲート電圧生成部72は、ゲート電極66にゲート電圧Vgを供給する機能を有する。ゲート電圧生成部72は、ゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの電圧値をパルス生成部76に出力することによりゲート電極66にゲート電圧Vgを供給する。
【0063】
図4に示すようにゲート電圧生成部72は、ゲート電圧導出部73及び補正部74を備える。ゲート電圧導出部73は、ゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの電圧値(以下、「供給値Vg」という)を導出する機能を有する。撮影の開始時は、上述したようにコントローラ70から目標値Iatが入力される。ゲート電圧導出部73は、ゲート電圧Vgの電圧値とアノード電流Iaの電流値との対応関係を表す対応関係情報32を参照可能であり、目標値Iatに対応する電圧値を取得することで、撮影の最初においてゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの電圧値である供給値Vgを導出する。
【0064】
ゲート電極66に供給されるゲート電圧Vgの電圧値と、電源電圧発生器69からアノード部60へ流れるアノード電流Iaの電流値とには、対応関係がある。図5には、本実施形態の対応関係情報32の一例を示す。対応関係情報32の一例として本実施形態では、図5に示すLUT(LookUp Table)を用いている。なお、放射線源29の種類や状態に応じて、ゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの電圧値が同じであっても、電源電圧発生器69からアノード部60へ流れるアノード電流Iaの電流値が異なる場合がある。そのため、本実施形態の線源制御部30には、複数種類の対応関係情報32が記憶されている。また、放射線源29を初めて使用する場合や、後述する補正部74による補正結果等に応じて、ゲート電圧導出部73が参照する対応関係情報32が定められている。
【0065】
対応関係情報32を参照して導出した、線源制御部30から入力された目標値Iatに対応する供給値Vgに応じたゲート電圧Vgをゲート電極66に供給しても、実際に電源電圧発生器69からアノード部60へ流れるアノード電流Iaの電流値が、目標値Iatと異なることとなる場合がある。例えば、放射線源29の使用に応じて経時変化等により、ゲート電極66に供給されるゲート電圧Vgの電圧値と、電源電圧発生器69からアノード部60へ流れるアノード電流Iaの電流値との対応関係が変化する。そのため、目標値Iatと、アノード電流推定部82が推定した推定値Iapとが異なる場合がある。
【0066】
そこで、補正部74は、目標値Iatと推定値Iapとを一致させるために、ゲート電圧導出部73が導出した供給値Vgを補正し、補正した供給値Vgをゲート電極66に供給する機能を有する。
【0067】
図6Aには、n回目の撮影において、最初に、ゲート電圧導出部73が対応関係情報32_0を参照し、目標値Iatに対応するn回目の最初の供給値Vgをゲート電極66に供給した場合にアノード電流推定部82により推定されたn回目の推定値Iapがn回目の目標値Iatよりも大きい場合を示している。対応関係情報32_0を参照すると、n回目の推定値Iapに対応するゲート電圧Vgの電圧値は、n回目の最初の供給値Vgよりも大きい。そのため、電源電圧発生器69からアノード部60へ実際に流れるアノード電流Iaの電流値を目標値Iatとするためには、ゲート電極66に供給する供給値Vgをn回目の最初の供給値Vgよりも小さくする必要がある。そこで、補正部74は、n回目の撮影の撮影期間内に、n回目の目標値Iatとn回目の推定値Iapとを一致させるために、ゲート電圧導出部73が導出したゲート電圧Vgの供給値Vgを大きくする補正を行う。そして、補正後の供給値Vgをパルス生成部76に出力することで、補正後の供給値Vgに応じたゲート電圧Vgをゲート電極66に供給する。本実施形態の補正部74による補正後の供給値Vgが、本開示の補正電圧の一例に対応する。なお、本実施形態において「撮影期間」とは、1枚の放射線画像を撮影するために放射線管60が放射線Rの出射を継続する期間のことをいう。
【0068】
このように、n回目の目標値Iatとn回目の推定値Iapとが異なる場合、n+1回目の撮影においても、対応関係情報32_0を参照すると、n+1回目の目標値Iatに対応する供給値Vgをn+1回目の最初の供給値Vgとしてゲート電極66に供給しても、推定値Iapが目標値Iatと異なってしまう場合がある。
【0069】
そこで、本実施形態の補正部74は、n回目の撮影において、n回目の最初の供給値Vgを補正することにより目標値Iatと推定値Iapとが一致した場合の供給値Vgをn回目の最後の供給値Vgとし、対応関係情報32_0を、n回目の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報に更新する。図6Aに示した例では、補正部74は、対応関係情報32_0をn回目の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報32_1に更新する処理を行う。上述したように線源制御部30には、複数種類の対応関係情報32が記憶されているため、一例として本実施形態の補正部74は、記憶されている複数の対応関係情報32の中から、対応関係情報32_1を選択して、n+1回目の撮影に用いる対応関係情報32とさせる制御を行う。これにより、本実施形態の補正部74は、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧Vgの供給値Vgとn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値Iatとに応じたゲート電圧Vgの供給値Vgを、n+1回目の撮影において、ゲート電極66に最初に供給するゲート電圧Vgの供給値Vgとする制御を行う。
【0070】
また、図6Bには、n回目の撮影において、最初に、ゲート電圧導出部73が対応関係情報32_0を参照し、目標値Iatに対応するn回目の最初の供給値Vgをゲート電極66に供給した場合にアノード電流推定部82により推定されたn回目の推定値Iapがn回目の目標値Iatよりも小さい場合を示している。対応関係情報32_0を参照すると、n回目の推定値Iapに対応するゲート電圧Vgの電圧値は、n回目の最初の供給値Vgよりも小さい。そのため、電源電圧発生器69からアノード部60へ実際に流れるアノード電流Iaの電流値を目標値Iatとするためには、ゲート電極66に供給する供給値Vgをn回目の最初の供給値Vgよりも大きくする必要がある。そこで、補正部74は、n回目の撮影の撮影期間内に、n回目の目標値Iatとn回目の推定値Iapとを一致させるために、ゲート電圧導出部73が導出したゲート電圧Vgの供給値Vgを大きくする補正を行い、補正後の供給値Vgをパルス生成部76に出力することで、補正後の供給値Vgに応じたゲート電圧Vgをゲート電極66に供給する。本実施形態の補正部74による補正後の供給値Vgが、本開示の補正電圧の一例に対応する。
【0071】
この場合においても図6Aを参照して説明したのと同様に本実施形態の補正部74は、n回目の撮影において、n回目の最初の供給値Vgを補正することにより目標値Iatと推定値Iapとが一致した場合の供給値Vgをn回目の最後の供給値Vgとし、対応関係情報32_0を、n回目の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報に更新する。図6Bに示した例では、補正部74は、対応関係情報32_0をn回目の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報32_2に更新する処理を行う。上述したように線源制御部30には、複数種類の対応関係情報32が記憶されているため、一例として本実施形態の補正部74は、記憶されている複数の対応関係情報32の中から、対応関係情報32_2を選択して、n+1回目の撮影に用いる対応関係情報32とさせる制御を行う。これにより、本実施形態の補正部74は、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧Vgの供給値Vgとn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値Iatとに応じたゲート電圧Vgの供給値Vgを、n+1回目の撮影において、ゲート電極66に最初に供給するゲート電圧Vgの供給値Vgとする制御を行う。
【0072】
本実施形態の線源制御部30は、上記図6A及び図6Bのいずれに示した場合においても、補正部74は、対応関係情報32を、n回目の撮影の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報32に更新しておくことで、n回目の撮影中に放射線源29のキャリブレーションを行う。
【0073】
次に、本実施形態のマンモグラフィ装置10の線源制御部30による放射線源29を制御する作用について図面を参照して説明する。
被検者の乳房の放射線画像の撮影を行う場合、ユーザは、マンモグラフィ装置10の撮影台24に被検者の乳房をポジショニングし、圧迫板38により乳房を圧迫する。その後ユーザは、コンソール12の操作部56等により放射線Rの照射指示を行う。コンソール12は、照射指示が行われると、マンモグラフィ装置10に放射線画像の撮影開始を指示する撮影開始信号を出力する。
【0074】
一例として本実施形態のマンモグラフィ装置10の線源制御部30は、線源制御プログラム31を実行し、放射線源制御処理を実行する。図7には、本実施形態のマンモグラフィ装置10の線源制御部30による放射線源制御処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0075】
図7に示した放射線制御処理のステップS100でコントローラ70は、アノード電流Iaの目標値Iatをゲート電圧生成部72に出力する。上述したように本実施形態のコントローラ70は、今回の撮影用に設定されたアノード電流Iaの目標値Iatを取得してゲート電圧生成部72に出力する。
【0076】
次のステップS102でゲート電圧生成部72のゲート電圧導出部73は、上述したように対応関係情報32を参照し、コントローラ70から入力された目標値Iatに対応するゲート電圧Vgの供給値Vgを導出する。本ステップにおいて導出したゲート電圧Vgの供給値Vgが、本開示の目標電圧値の一例である。
【0077】
次のステップS104でゲート電圧導出部73は、導出した供給値Vgに応じたゲート電圧Vgをゲート電極66に供給させる。本実施形態では、上述したようにゲート電圧生成部72は供給値Vgをパルス生成部76に出力する。また、コントローラ70は、パルス生成部76に、オンとするための制御信号を出力する。パルス生成部76は、コントローラ70からオンとするための制御信号が入力されると、入力された供給値Vgに応じたゲート電圧パルスを生成してゲート電極66に出力する。
【0078】
このようにしてゲート電極66にゲート電圧Vgが供給されると、上述したように放射線源29では、カソード部64から電子が放出され、アノード部60のアノード面60Aのターゲットに衝突し、放射線Rが発生する。ゲート電流検出部78は、ゲート電圧導出部73からゲート電極66へ流れるゲート電流Igの電流値(検出値Ig)を検出してアノード電流推定部82に出力する。また、カソード電流検出部80は、カソード部64からグランド電位GNDを供給する供給部へ流れるカソード電流Icの電流値(検出値Ic)を検出してアノード電流推定部82に出力する。
【0079】
そこで次のステップS106でアノード電流推定部82は、ゲート電流検出部78からゲート電流Igの検出値Igを取得し、また、カソード電流検出部80からカソード電流Icの検出値Icを取得する。
【0080】
次のステップS108でアノード電流推定部82は、推定アノード電流の電流値(推定値Iap)を推定する。本実施形態のアノード電流推定部82は、上述したように上記(1)式を用いて、推定アノード電流Iapの推定値Iapを導出する。アノード電流推定部82は、導出した推定値Iapを比較部84へ出力する。
【0081】
上述したように比較部84は、コントローラ70から入力された目標値Iatと、アノード電流推定部82から入力された推定値Iapとを比較した比較結果として、上記(2)式により導出された差分値Dvをゲート電圧生成部72に出力する。
【0082】
次のステップS110で補正部74は、コントローラ70から入力された目標値Iatと、アノード電流推定部82から入力された推定値Iapとを比較し、目標値Iatと推定値Iapとが一致する(目標値Iat=推定値Iap)か否かを判定する。なお、本実施形態において「目標値Iatと推定値Iapとが一致」とは、目標値Iatと推定値Iapとが完全に一致する場合、すなわち差分値Dvが「0」である場合に限定されない。本実施形態では、目標値Iatと推定値Iapの差分値Dvが、誤差等、許容範囲内である場合も、「目標値Iatと推定値Iapとが一致」する場合に含む。目標値Iatと推定値Iapとが一致しない場合、ステップS110の判定が否定判定となり、ステップS112へ移行する。具体的には、差分値Dvが「0」ではない場合、ステップS112へ移行する。
【0083】
ステップS112で補正部74は、差分値Dvの絶対値が閾値よりも小さい(|目標値Iat-推定値Iap|<閾値)であるか否かを判定する。差分値Dvの絶対値が閾値以上である場合、ステップS112の判定が否定判定となり、ステップS114へ移行する。
【0084】
次のステップS114で比較部84は、警告の報知を行う。例えば、放射線源29が寿命である場合、目標値Iatと推定値Iapとの差分値Dvが大きくなる。そのため、本実施形態では、差分値Dvの絶対値が閾値以上である場合、放射線源29の寿命であること、または寿命が近づいていることを表す情報を警告として報知する。なお、報知方法は特に限定されず、マンモグラフィ装置10の表示部48、コンソール12の表示部58、及び放射線画像撮影システム1の外部の装置等を用いて、ディスプレイやLED(Light Emitting Diode)等を用いた可視表示、及びスピーカ等からの音声出力による可聴表示等のいずれを用いてもよい。また、警告内容も特に限定されない。例えば、警告内容は、撮影される放射線画像の画質を保つためには放射線源29を交換すべきであることを警告する情報であってもよい。また、本ステップにおいて報知する内容は「警告」に限定されず、放射線源29の寿命が近づいていることをユーザに単に知らせるためのメッセージ等であってもよい。ステップS114の処理が終了するとステップS116へ移行する。
【0085】
一方、ステップS112において差分値Dvの絶対値が閾値未満である場合、判定が肯定判定となり、ステップS116へ移行する。
【0086】
ステップS116で補正部74は、目標値Iatが推定値Iapよりも大きい(目標値Iat>推定値Iap)か否かを判定する。目標値Iatが推定値Iapより大きい場合、ステップS114の判定が肯定判定となり、ステップS120へ移行する。この場合は、上記図6Aに例示した形態に対応しており、供給電圧Vgが大きい場合に対応する。
【0087】
ステップS120で補正部74は、ゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの供給値Vgを所定量ΔVgだけ減少(供給値Vg=今回の供給値Vg-ΔVg)させた後、ステップS122へ移行する。なお、補正部74が供給値Vgを補正するための補正量であるΔVgは、予め定められている。なお、補正量であるΔVgは、差分値Dvによらず、同一の値であってもよい。また、補正量であるΔVgは、差分値Dvに応じた値としてもよい。例えば、差分値Dvが比較的大きい場合、補正量であるΔVgを比較的大きな値とし、差分値Dvが小さくなるほど、補正量であるΔVgを小さな値としてもよい。
【0088】
一方、ステップS116において、目標値Iatが推定値Iap以下の場合、ステップS116の判定が否定判定となり、ステップS118へ移行する。この場合は、上記図6Bに例示した形態に対応しており、供給電圧Vgが小さい場合に対応する。
【0089】
ステップS118で補正部74は、ゲート電極66に供給するゲート電圧Vgの供給値Vgを所定量ΔVgだけ増加(供給値Vg=今回の供給値Vg+ΔVg)させた後、ステップS122へ移行する。
【0090】
ステップS122で補正部74は、放射線Rの照射を終了するか否かを判定する。例えば、補正部74は、コントローラ70がオンにするための制御信号をパルス生成部76に出力してから放射線Rの照射時間として予め定められた時間が経過した場合、放射線Rの照射を終了すると判定する。放射線Rの照射が終了するまで、ステップS122の判定が否定判定となり、ステップS106に戻り、ステップS106~S120の処理を繰り返す。一方、放射線Rの照射を終了する場合、ステップS122の判定が肯定判定となり、ステップS124へ移行する。なお、この場合は、推定値Iapが目標値Iatと一致しないうちに、放射線Rの照射を終了する場合である。
【0091】
そこでステップS124で補正部74は、供給値Vgの補正が未完了であることを表す補正未完了情報を線源制御部30内等に記録させる。本ステップにおいて記録させた補正未完了情報は、例えば、ユーザの所望により参照することができる。また例えば、次回の撮影を開始する場合に、補正未完了情報についてユーザに報知する形態としてもよい。
【0092】
一方、ステップS110において目標値Iatと推定値Iapとが一致する場合、判定が肯定判定となり、ステップS126へ移行する。具体的には、差分値Dvが「0」である場合、ステップS126へ移行する。
【0093】
ステップS126で補正部74は、今回の撮影において最初にゲート電極66に供給した供給値Vgが、今回の撮影の最後に供給する供給値Vgと一致する(最初の供給値Vg=最後の供給値Vg)か否かを判定する。換言すると、上述したn回目の最初の供給値Vgが、n回目の最後の供給値Vgであるか否かを判定する。最初の供給値Vgが最後の供給値Vgと一致する場合、ステップS126の判定が肯定判定となり、ステップS130へ移行する。
【0094】
一方、最初の供給値Vgが最後の供給値Vgと一致しない場合、ステップS126の判定が否定判定となり、ステップS128へ移行する。
【0095】
ステップS128で補正部74は、対応関係情報32を更新する。本実施形態の補正部74は、上述したように、対応関係情報32_0を対応関係情報32_1に更新する処理、または対応関係情報32_0を対応関係情報32_2に更新する処理のいずれかを行う。なお、最初の供給値Vgを供給したことにより推定した推定アノード電流の推定値Iapが目標値Iatと一致する場合、本処理を省略してもよいし、現在の対応関係情報32をそのまま用いることを特定する処理としてもよい。
【0096】
次のステップS130で補正部74は、放射線Rの照射を終了するか否かを判定する。例えば、補正部74は、上記ステップS122と同様に判定を行う。放射線Rの照射が終了するまで、ステップS130の判定が否定判定となる。一方、放射線Rの照射を終了する場合、ステップS130の判定が肯定判定となり、ステップS132へ移行する。
【0097】
ステップS132でゲート電圧生成部72は、ゲート電極66へのゲート電圧Vgの供給を停止させる。本実施形態では、上述したようにゲート電圧生成部72は供給値Vgをパルス生成部76に出力するのを停止する。また、コントローラ70は、パルス生成部76に、オフとするための制御信号を出力する。パルス生成部76は、コントローラ70からオフとするための制御信号が入力されると、ゲート電圧パルスの生成を終了する。これにより、放射線源29における放射線Rの発生が停止する。ステップS132の処理が終了すると、図7に示した放射線源制御処理が終了する。なお、本実施形態のステップS132において放射線Rの照射を停止した際にゲート電極66に供給していたゲート電圧Vgの供給値Vgが、本開示の補正電圧値の一例である。
【0098】
なお、上記では補正部74が、対応関係情報32を、n回目の撮影の最後の供給値Vgとn回目の目標値Iatとが対応する対応関係情報32に更新する場合、対応関係情報32全体を更新する形態について説明したが対応関係情報32の更新方法は本形態に限定されない。例えば、対応関係情報32における、n回目の目標値Iatに対応するゲート電圧Vgの供給値Vgのみを補正する形態としてもよい。なお、上記のように、対応関係情報32全体を更新する形態とした場合、n+1回目の目標値Iatに係わらず、例えば、n回目の目標値Iatとn+1回目の目標値Iatとが異なっている場合であっても、ゲート電圧導出部73が、より適切なゲート電圧Vgの供給値Vgを導出することができる。
【0099】
以上説明したように、上記各形態のマンモグラフィ装置10の線源制御部30は、少なくとも1つのプロセッサを備える。ゲート電極及びグランド電位が供給されるカソード部を有する電子放出部と、カソード部と対向するアノード面を有し、かつ電源電圧発生器から電源電圧が供給されるアノード部と、を含み、かつ被写体の放射線画像を撮影する場合に被写体に向けて放射線を出射する放射線管を制御する制御装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、1枚の放射線画像を撮影するために放射線管が放射線の出射を継続する1回の撮影期間内に、ゲート電極にゲート電圧を供給させ、カソード部からグランドへ流れるカソード電流の検出値、及び電源電圧発生器からゲート電極へ流れるゲート電流の検出値に基づいて推定される、電源電圧発生器からアノード部へ流れる推定アノード電流の電流値と、n回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標電流値との差分に基づいて、ゲート電圧の電圧値を補正する制御を行い、n回目の撮影の最後に補正されたゲート電圧の補正電圧値とn+1回目の撮影用として設定されたアノード電流の目標値とに応じたゲート電圧の電圧値を、n+1回目の撮影において、ゲート電極に最初に供給するゲート電圧の電圧値とする制御を行う。
【0100】
このように本実施形態のマンモグラフィ装置10の線源制御部30によれば、放射線管62のゲート電極66に供給するゲート電圧Vgのキャリブレーションの間隔を従来よりも短縮することが可能となる。
【0101】
なお、上記形態では、対応関係情報32として、LUTを用いる形態について説明したが、対応関係情報32は、本形態に限定されない。例えば、対応関係情報32は、ゲート電圧Vgと、アノード電流Iaとの対応関係を表す関係式等であってもよい。
【0102】
また、上記形態では、補正部74がゲート電圧Vgの供給値Vgの供給値VgをΔVgずつ加減することで補正を行う形態について説明したが本形態に限定されない。例えば、予め定められた補正量で補正を1回、行う形態としてもよい。この場合の放射線源制御処理の一例のフローチャートを図8に示す。図8に示した放射線源制御処理は、図7に示した放射線源制御処理のステップS102とステップS104との間にステップS103が設けられている。
【0103】
ステップS103で補正部74は、ステップS102で導出したゲート電圧Vgの供給値Vgを補正する処理を行う。本形態の放射線源制御処理では、詳細を後述するステップS121において記憶される補正量により、ステップS102で導出した目標電圧値であるゲート電圧Vgの供給値Vgを補正する。なお、補正量の初期値は「0」であり、マンモグラフィ装置10において初めて放射線源制御処理を行った場合、補正部74は、初期値を用いてステップS102で導出したゲート電圧Vgの供給値Vgを補正する。
【0104】
さらに、図8に示すように、ステップS118及びS120に代えて、ステップS117及びS119が設けられている。また、ステップS122の前にステップS121の処理を含む。ステップS117で補正部74は、供給するゲート電圧Vgの供給値Vgを所定の補正量により増加させた後、ステップS121へ移行する。また、ステップS119で補正部74は、供給するゲート電圧Vgの供給値Vgを所定の補正量により減少させた後、ステップS121へ移行する。ステップS117及びステップS119で用いる所定の補正量は、実験的または設計的等により予め定められた補正量である。この補正量としては、例えば、アノード電流Iaの目標値Iapと推定値Iapとの差分値Dv、及び目標値Iatに応じて実験的または設計的等により得られた補正量が挙げられる。この場合、対応関係情報32の代わりにアノード電流Iaの目標値Iapと推定値Iapとの差分値Dv、及び目標値Iatと補正量との対応関係を表す情報をメモリ30Bに記憶させておく。そして、補正部74は、掬されている対応関係を参照し、今回の撮影におけるアノード電流Iaの目標値Iapと推定値Iapとの差分値Dv、及び目標値Iatに対応する補正量を導出して、ステップS117またはS119の補正に用いる。
【0105】
また、ステップS121で補正部74は、次回の撮影における補正において使用可能とするために、今回の撮影における最終的な補正量をメモリ30B等に記憶させる。なお、「最終的な補正量」とは、今回の撮影の最初にゲート電極66に供給したゲート電圧Vgから、補正が終了した際にゲート電極66に供給したゲート電圧Vgの差分である。具体的には、上記ステップS103でゲート電圧Vgの供給値Vgを補正した補正量にステップS117で補正した補正量を加算した補正量、または上記ステップS103でゲート電圧Vgの供給値Vgを補正した補正量にステップS119で補正した補正量を減算した補正量である。このように、最終的な補正量を記憶させておくことにより、次回の撮影において補正を行う場合に使用可能となる。
【0106】
このように、図8に示した放射線源制御処理では、n-1回目の撮影の最後にゲート電圧Vgを補正した補正量に応じて目標電圧値を補正することにより得た補正電圧値を、n回目の撮影の最初のゲート電圧Vgとしてゲート電極66に供給することができる。従って、この場合においても、マンモグラフィ装置10の線源制御部30によれば、放射線管62のゲート電極66に供給するゲート電圧Vgのキャリブレーションの間隔を従来よりも短縮することが可能となる。
【0107】
また、上記形態では、本開示の被写体の一例として乳房を適用し、本開示の放射線画像撮影装置の一例として、マンモグラフィ装置10を適用した形態について説明したが、被写体は乳房に限定されず、また放射線画像撮影装置はマンモグラフィ装置に限定されない。例えば、被写体は胸部や腹部等であってもよいし、放射線画像撮影装置はマンモグラフィ装置以外の放射線画像撮影装置を適用する形態であってもよい。
【0108】
また、上記形態では、マンモグラフィ装置10の線源制御部30が本開示の制御装置の一例である形態について説明したが、線源制御部30以外の装置が本開示の制御装置の機能を備えていてもよい。換言すると、線源制御部30が有する機能の一部または全部を線源制御部30以外の、例えばマンモグラフィ装置10内の他の機能部や、マンモグラフィ装置10の外部のコンソール12等の装置、または放射線画像撮影システム1の外部の装置等が備えていてもよい。
【0109】
また、上記形態において、例えば、ゲート電圧生成部72及びアノード電流推定部80といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、上述したとおり、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0110】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0111】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0112】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0113】
また、上記各実施形態では、線源制御プログラム31が線源制御部30に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。線源制御プログラム31は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、線源制御プログラム31は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 放射線画像撮影システム
10 マンモグラフィ装置
12 コンソール
20 放射線検出器、20A 検出面
24 撮影台、24A 撮影面
28 放射線照射部
29 放射線源
30 線源制御部、30A プロセッサ、30B メモリ、30C 回路部
31 線源制御プログラム
32、32_0、32_1 対応関係情報
33 アーム部
34 基台
35 軸部
36 圧迫ユニット
38 圧迫板
39 支持部
40A、50A CPU、40B、50B ROM、40C、50C RAM
41 撮影制御プログラム
42、52 記憶部
44、54 I/F部
46、56 操作部
48 表示部
49、59 バス
51 制御プログラム
58 表示部
60 アノード部、60Aアノード面
62 放射線管、62A 外囲器
64 カソード部
66 フォーカス電圧供給部
68 フォーカス
69 電源電圧発生器
70 コントローラ
72 ゲート電圧生成部
73 ゲート電圧導出部
74 補正部
76 パルス生成部
78 ゲート電流検出部
80 カソード電流検出部
86 フォーカス電圧供給部
GND グランド電位
Ia アノード電流、Iat 目標値、Iap 推定値
Ic カソード電流
Ig ゲート電流
R 放射線
Vf フォーカス電圧
Vg ゲート電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8