(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127455
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び放射線撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
A61B6/02 300M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025617
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 順也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA11
4C093CA16
4C093DA06
4C093EC13
4C093EC15
4C093EC25
4C093EC30
4C093FF16
4C093FF28
4C093FF35
4C093FG04
4C093FG13
4C093FG16
4C093FH03
4C093FH09
(57)【要約】
【課題】合成2次元画像を用いることなく被写体のポジショニングの良否を評価することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び放射線撮影システムを提供する。
【解決手段】情報処理装置はプロセッサを備える。プロセッサは、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、複数の線源位置から仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、解剖学的構造物の抽出結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理とを実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、
前記複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、
前記複数の線源位置から前記仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、
前記解剖学的構造物の抽出結果を、前記合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、
を実行する情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記解剖学的構造物抽出処理を、前記合成処理を実行する前又は実行中に開始する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記解剖学的構造物の抽出結果に基づいて少なくとも1つの評価項目について評価することにより、前記被写体のポジショニングの良否を評価するポジショニング評価処理を実行する、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記表示処理において、前記ポジショニング評価処理による前記ポジショニングの良否の評価結果を、前記合成2次元画像とともに前記表示部に表示させる、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記投影画像は、前記被写体として乳房が撮影された乳房画像である、
請求項3又は請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記解剖学的構造物には、乳房、乳腺、大胸筋、及び乳頭のうち少なくともいずれか1つが含まれる、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記評価項目には、乳房の左右対称性、乳頭の側面性、大胸筋、乳腺後隙、乳房下部、及び乳腺の伸展性のうち少なくともいずれか1つが含まれる、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記合成処理を実行する前に、前記仮想線源位置を決定する仮想線源位置決定処理を実行する、
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記仮想線源位置決定処理において、前記複数の投影画像を解析することにより選択した1つの投影画像に基づいて前記仮想線源位置を決定する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記仮想線源位置決定処理において、前記複数の投影画像のうち、操作部を介してユーザにより選択された1つの投影画像に基づいて前記仮想線源位置を決定する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成することと、
前記複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成することと、
前記複数の線源位置から前記仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出することと、
前記解剖学的構造物の抽出結果を、前記合成2次元画像とともに表示部に表示させることと、
を含む情報処理方法。
【請求項12】
複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、
前記複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、
前記複数の線源位置から前記仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、
前記解剖学的構造物の抽出結果を、前記合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
放射線撮影装置と情報処理装置とを含む放射線撮影システムであって、
前記放射線撮影装置は、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像を生成し、
前記情報処理装置は、
前記複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、
前記複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、
前記複数の線源位置から前記仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、
前記解剖学的構造物の抽出結果を、前記合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、
を実行する放射線撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影において、被写体を撮影範囲に対して適切に位置決め(以下、ポジショニングという。)して撮影することは、診断に適した放射線画像を生成するうえで極めて重要である。ポジショニングが不適切であることにより、例えば被写体が撮影範囲からはみ出している場合などは、適切な診断を行うことができない。そのため、撮影者は、撮影した放射線画像に基づいて被写体のポジショニング良否を判定し、判定結果に基づいて再撮影の要否を判断する必要がある。
【0003】
特許文献1には、撮影者による被写体のポジショニングの良否判定を支援するために、放射線画像を解析して解剖学的な構造物を抽出することにより、ポジショニングの良否を評価する技術が開示されている。被写体は、例えば、被検者の乳房である。
【0004】
近年、マンモグラフィ装置等の放射線撮影装置において、トモシンセシス撮影機能を有するものが普及しつつある。トモシンセシス撮影機能は、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射することにより得られた複数の投影画像を再構成することにより、複数の断層画像からなる3次元画像を生成することを可能とする。
【0005】
また、特許文献2には、トモシンセシス撮影で取得された複数の断層画像を合成することにより2次元画像(以下、合成2次元画像という。)を生成する技術が開示されている。従来は、トモシンセシス撮影に加えて、通常の放射線撮影を行うことにより2次元画像が取得されていたが、トモシンセシス撮影で得た断層画像から合成2次元画像を生成することにより、診断対象部位の被ばく線量の低減と撮影時間の短縮とを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-051456号公報
【特許文献2】特開2014-128716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トモシンセシス撮影機能を有する放射線撮影装置では、被写体のポジショニングの良否は、例えば、合成2次元画像を用いて評価することが考えられる。合成2次元画像は、断層画像を生成する再構成処理と、複数の断層画像を合成する合成処理とにより生成されるため、合成2次元画像に基づくポジショニングの評価処理は、再構成処理及び合成処理に依存する。
【0008】
再構成処理及び合成処理は、断層画像及び合成2次元画像の画質を向上させるために、日々新しい手法が研究開発されている。このため、再構成処理と合成処理とのうちのいずれか一方が新規の手法に変更されると、ポジショニングの評価処理(例えば、解剖学的な構造物の抽出処理)を適正化し直す必要がある。このように、合成2次元画像を用いてポジショニングを評価する場合には、再構成処理と合成処理とのうちのいずれか一方が変更されるたびに処理を再度適正化する必要があり、煩雑である。このため、合成2次元画像を用いることなく被写体のポジショニングの良否を評価することを可能とする手法が求められている。
【0009】
本開示の技術は、合成2次元画像を用いることなく被写体のポジショニングの良否を評価することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の情報処理装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、複数の線源位置から仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、解剖学的構造物の抽出結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、を実行する。
【0011】
プロセッサは、解剖学的構造物抽出処理を、合成処理を実行する前又は実行中に開始することが好ましい。
【0012】
プロセッサは、解剖学的構造物の抽出結果に基づいて少なくとも1つの評価項目について評価することにより、被写体のポジショニングの良否を評価するポジショニング評価処理を実行することが好ましい。
【0013】
プロセッサは表示処理において、ポジショニング評価処理によるポジショニングの良否の評価結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させることが好ましい。
【0014】
投影画像は、被写体として乳房が撮影された乳房画像であることが好ましい。
【0015】
解剖学的構造物には、乳房、乳腺、大胸筋、及び乳頭のうち少なくともいずれか1つが含まれることが好ましい。
【0016】
評価項目には、乳房の左右対称性、乳頭の側面性、大胸筋、乳腺後隙、乳房下部、及び乳腺の伸展性のうち少なくともいずれか1つが含まれることが好ましい。
【0017】
プロセッサは、合成処理を実行する前に、仮想線源位置を決定する仮想線源位置決定処理を実行することが好ましい。
【0018】
プロセッサは、仮想線源位置決定処理において、複数の投影画像を解析することにより選択した1つの投影画像に基づいて仮想線源位置を決定することが好ましい。
【0019】
プロセッサは、仮想線源位置決定処理において、複数の投影画像のうち、操作部を介してユーザにより選択された1つの投影画像に基づいて仮想線源位置を決定することが好ましい。
【0020】
本開示の情報処理方法は、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成することと、複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成することと、複数の線源位置から仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出することと、解剖学的構造物の抽出結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させることと、を含む。
【0021】
本開示のプログラムは、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、複数の線源位置から仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、解剖学的構造物の抽出結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、をコンピュータに実行させる。
【0022】
本開示の放射線撮影システムは、放射線撮影装置と情報処理装置とを含む放射線撮影システムであって、放射線撮影装置は、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像を生成し、情報処理装置は、複数の投影画像から複数の断層画像を再構成する再構成処理と、複数の断層画像を合成し、仮想的な仮想線源位置に基づく投影画像としての合成2次元画像を生成する合成処理と、複数の線源位置から仮想線源位置に最も近い線源位置に対応する投影画像から、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理と、解剖学的構造物の抽出結果を、合成2次元画像とともに表示部に表示させる表示処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0023】
本開示の技術によれば、合成2次元画像を用いることなく被写体のポジショニングの良否を評価することを可能とする情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び放射線撮影システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】放射線撮影システムの構成を示す模式図である。
【
図2】トモシンセシス撮影時の動作を示すマンモグラフィ装置の正面図である。
【
図3】トモシンセシス撮影時に放射線照射を行う複数の線源位置の一例を示す図である。
【
図4】放射線撮影システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】マンモグラフィ装置及びコンソールに構成される機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】解剖学的構造物抽出処理を模式的に示す図である。
【
図12】評価項目ごとの評価点の一例を示す図である。
【
図13】評価ランクを求めるための分類表の一例を示す図である。
【
図14】ポジショニングの良否の評価結果の表示例を示す図である。
【
図15】右側の乳房に対してトモシンセシス撮影を行う場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】左側の乳房に対してトモシンセシス撮影を行う場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】表示部に表示される測定値の一例を示す図である。
【
図18】解剖学的構造物抽出部の変形例を示すブロック図である。
【
図19】関節裂隙の撮影角度依存性を例示する図である。
【
図20】仮想線源位置決定部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】変形例に係る抽出部が選択画像XSから抽出する解剖学的構造物の一例を示す図である。
【
図22】変形例に係るポジショニング評価処理の一例を示す図である。
【
図23】変形例に係る放射線撮影システムの作用を示すフローチャートである。
【
図24】仮想線源位置決定部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の技術に係る実施形態を説明する。
【0026】
まず、一実施形態に係る放射線撮影システムの構成について説明する。
図1は、本実施形態の放射線撮影システム2の構成を示す。
【0027】
図1に示すように、放射線撮影システム2は、コンソール20を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された情報(例えば、撮影メニュー)に基づいて、医師又は放射線技師等の撮影者の操作により放射線画像の撮影を行う機能を有する。
【0028】
放射線撮影システム2は、マンモグラフィ装置10及びコンソール20により構成される。マンモグラフィ装置10は、本開示の技術に係る「放射線撮影装置」の一例である。コンソール20は、開示の技術に係る「情報処理装置」の一例である。
【0029】
マンモグラフィ装置10は、被検者Wの乳房Nを撮影対象として放射線撮影を行う放射線撮影装置である。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者Wが起立している状態のみならず、被検者Wが椅子等に座った座位状態において、被検者Wの乳房Nを撮影する装置であってもよく、少なくとも被検者Wの左右の乳房Nが別個に撮影可能な放射線撮影装置であればよい。
【0030】
マンモグラフィ装置10は、装置前方側に設けられた側面視が略C字状である測定部11と、測定部11を装置後方側から支える基台部12とを有する。
【0031】
測定部11は、被検者Wの乳房Nと当接する平面状の撮影面13Aが形成された撮影台13と、乳房Nを撮影台13の撮影面13Aとの間で圧迫するための圧迫板14と、撮影台13及び圧迫板14を支持する保持部15とを有する。
【0032】
圧迫板14は、放射線を透過させる部材により形成されている。圧迫板14は、例えば、樹脂材料である熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)により形成されている。圧迫板14は、乳房に接触する底部が壁部により囲まれた、断面形状が凹型の圧迫板であってもよい。また、本開示では、便宜上「圧迫板」と称しているが、圧迫板14は、板状の部材を用いたものに限定されず、例えば、フィルム状の部材を用いたものであってもよい。
【0033】
また、測定部11は、撮影面13Aに向けて放射線Rを照射する放射線源16と、保持部15とは分離され、放射線源16を支持する支持部17とを有する。放射線源16は、放射線Rを出射する放射線管16Aと、放射線Rの照射野を限定するコリメータ16Bとを含んで構成されている。放射線源16は、圧迫板14により圧迫された乳房に対して放射線Rを照射する。放射線Rは、例えばX線である。なお、
図1では、放射線Rを直線で示しているが、放射線源16から出射される放射線Rはコーン状である。
【0034】
さらに、測定部11には、基台部12に回転可能に支持された回転軸18が設けられている。回転軸18は、支持部17に固定されている。従って、回転軸18と支持部17とは一体的に回転する。
【0035】
回転軸18は、保持部15に対しては、一体に回転する状態と、回転軸18が分離されて空転する状態とに切り替え可能に構成されている。具体的には、回転軸18及び保持部15にそれぞれギア(図示せず)が設けられ、ギア同士の噛合状態と非噛合状態とが切り替え可能に構成されている。回転軸18は、モータ(図示せず)により駆動される。回転軸18及びモータは、放射線源16を回転させるための回転機構18A(
図4参照)を構成している。
【0036】
また、保持部15は、撮影台13を、放射線源16から所定の距離だけ撮影面13Aが離れるように支持している。また、保持部15は、圧迫板14を、撮影面13Aとの間隔を可変とするように保持している。具体的には、保持部15の内部には、圧迫板14を移動させる移動機構15Aが設けられている。移動機構15Aは、例えば、ボールネジとモータとにより構成されたリニアアクチュエータである。圧迫板14は、ボールネジに接続されている。圧迫板14は、モータが駆動することにより、上下方向(Z軸方向)にスライド移動する。
【0037】
撮影台13の内部には、放射線検出器19が設けられている。放射線検出器19は、放射線Rを検出する検出面19Aが撮影面13Aと平行となるように配置されている。
図1において、撮影面13Aは、Z軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向を含む平面である。
【0038】
放射線検出器19は、放射線源16から出射され、圧迫板14及び乳房Nを透過した放射線Rを検出する。放射線検出器19は、いわゆるフラットパネルディテクタである。放射線検出器19は、2次元配列された放射線検出画素を有しており、放射線検出画素ごとに入射した放射線Rの線量を検出することにより、放射線画像を生成する。
【0039】
放射線検出器19は、例えば、放射線Rを可視光に変換し、変換した可視光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器である。なお、放射線検出器19は、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0040】
マンモグラフィ装置10は、放射線源16を保持した支持部17を回転させることにより、複数の線源位置で放射線源16から被写体としての乳房Nに放射線Rを照射するトモシンセシス撮影が実行可能である。放射線検出器19は、複数の線源位置の各々で放射線源16により放射線照射が行われるたびに、乳房Nを透過した放射線Rを検出して放射線画像を生成する。
【0041】
本実施形態では、マンモグラフィ装置10の放射線検出器19により生成された放射線画像は、コンソール20に送信される。コンソール20は、マンモグラフィ装置10の動作を制御する制御機能を有する。コンソール20は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介して外部システム等から取得した撮影メニュー又は各種情報等を用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う。
【0042】
コンソール20は、コンピュータにより構成されている。コンソール20は、各種情報を表示する表示部21を有する。表示部21は、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ装置である。
【0043】
図2は、トモシンセシス撮影時におけるマンモグラフィ装置10の動作を示す。
図2に示すように、トモシンセシス撮影では、放射線源16を保持した支持部17が回転軸18を中心として回転しながら放射線撮影が行われる。この場合、撮影台13及び圧迫板14は固定され、支持部17が回転することにより放射線源16が円弧状に移動する。
【0044】
図3は、トモシンセシス撮影時に放射線照射を行う複数の線源位置の一例を示す。
図3に示すP1~P5は、放射線源16が放射線Rを出射する線源位置を示している。放射線源16は、初期位置である線源位置P1から、最終位置である線源位置P5まで順に位置が変更される。線源位置は、所定角度θずつ変更される。線源位置の変更範囲を±20度とすると、角度θは10度である。
【0045】
なお、
図3では、線源位置を5つとしているが、線源位置の数はこれには限定されない。すなわち、トモシンセシス撮影時には、P1~Pnのn個の線源位置で放射線撮影が行われればよい。
【0046】
一般に、トモシンセシス撮影を行う場合、被検者Wの乳房Nに対してn回放射線を照射するため、被ばく線量が多くならないように、1回分の放射線Rの線量を低くする。例えば、n回の放射線照射による総線量が通常の2次元撮影と同じ程度の線量になるように1回分の線量が設定される。2次元撮影とは、放射線源16を1つの線源位置に固定して乳房Nに放射線を照射することにより、1つの投影画像を生成する通常の放射線撮影である。
【0047】
また、本実施形態のマンモグラフィ装置10では、乳房Nに対して、CC(Cranio & Caudal:頭尾方向)撮影とMLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位方向)撮影とを行うことが可能である。
【0048】
CC撮影時においては、撮影面13Aが上方を向いた状態に保持部15の姿勢が調整されるとともに、放射線源16が撮影面13Aに対して上方に位置する状態に支持部17の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被検者Wの頭側から足側に向かって、放射線源16から乳房Nに放射線Rが照射されることにより、CC撮影がなされる。
【0049】
また、MLO撮影時においては、CC撮影時を基準として、撮影台13を45°以上90°未満の角度に回転させた状態となるように保持部15の姿勢が調整される。また、MLO撮影時には、撮影台13の装置前方側の側壁角部13B(
図1参照)に被検者Wの腋窩があたるように、乳房Nのポジショニングが行われる。これにより、被検者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線源16から乳房Nに放射線Rが照射されることにより、MLO撮影がなされる。
【0050】
被写体である乳房Nを撮影範囲に対して適切にポジショニングして撮影することは、診断に適した放射線画像を生成するうえで極めて重要である。ポジショニングが不適切であることにより、例えば乳房Nが撮影範囲からはみ出している場合などは、適切な診断を行うことができない。
【0051】
また、マンモグラフィによる乳がんの画像診断では、病変と正常組織のX線吸収差がきわめて小さく、かつ微小な病変の診断が要求されることから、高品質の画像が要求される。画像の品質に影響を与える要因の中でも、特に撮影者による撮影技術の影響が大きい。ポジショニングが不適切である場合は、病変を見逃す要因となり得る。
【0052】
一方で、乳房の大きさ、形状、及び乳腺密度などが被検者に応じて異なること、マンモグラフィは乳腺を十分に広げるために乳房を圧迫するという特殊な撮影であることなどから、放射線技師等の撮影者にとっても乳房の適切なポジショニングは非常に難しく、高度な撮影技術が要求される。このため、本実施形態のコンソール20は、放射線撮影により得られた乳房の画像に基づき、ポジショニングの良否の評価する機能を有する。
【0053】
図4は、放射線撮影システム2のハードウェア構成の一例を示す。マンモグラフィ装置10は、放射線源16、回転機構18A、圧迫板14、移動機構15A、放射線検出器19、制御部40、記憶部41、I/F部42、及び操作パネル43を備えている。放射線源16、回転機構18A、移動機構15A、放射線検出器19、制御部40、記憶部41、I/F(Inter Face)部42、及び操作パネル43は、バス44を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0054】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)40A、RAM(Random Access Memory)40B、及びROM(Read Only Memory)40Cにより構成されている。ROM40Cには、CPU40Aで実行されるプログラム45を含む各種データが予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する機能を有する。
【0055】
記憶部41は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成されている。記憶部41には、放射線検出器19により生成された放射線画像が記憶される。
【0056】
I/F部42は、無線通信又は有線通信により、コンソール20との間で各種情報の通信を行う機能を有する。
【0057】
操作パネル43は、例えば、タッチパネルディスプレイにより構成されており、ユーザにより入力される情報を受け付け、及び情報の表示を行う。ユーザは、操作パネル43を介して、撮影条件の確認、及び撮影に関する指示などを行うことができる。制御部40は、操作パネル43を介して入力された指示に基づいて、マンモグラフィ装置10の各種制御を行う。
【0058】
移動機構15Aは、制御部40からの指示に基づいて圧迫板14を移動させる。また、回転機構18Aは、制御部40からの指示に基づいて放射線源16を回転させる。
【0059】
コンソール20は、制御部50、記憶部52、I/F部54、表示部21、及び操作部56を備えている。制御部50、記憶部52、I/F部54、表示部21、及び操作部56は、バス58を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0060】
制御部50は、例えば、CPU50A、RAM50B、及びROM50Cにより構成されている。ROM50Cには、CPU50Aで実行されるプログラム59を含む各種データが予め記憶されている。RAM50Bは、各種データを一時的に記憶する機能を有する。
【0061】
I/F部54は、無線通信または有線通信により、マンモグラフィ装置10及び外部装置(図示せず)との間で各種情報の通信を行う機能を有する。外部装置は、例えば、RIS(Radiology Information System)である。
【0062】
操作部56は、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチペン等により構成されている。操作部56は、放射線画像の撮影等に関する指示、又は各種情報等を、ユーザが入力するため際に用いられる。なお、操作部56をタッチパネルとする場合は、操作部56を表示部21と一体化することが可能である。
【0063】
図5は、マンモグラフィ装置10及びコンソール20に構成される機能構成の一例を示す。
図5に示すように、マンモグラフィ装置10では、前述の制御部40(
図4参照)が、回転機構18A、放射線源16、及び放射線検出器19を制御することによりトモシンセシス撮影を実行させる放射線撮影制御部60として機能する。
【0064】
放射線撮影制御部60は、回転機構18Aを制御することにより、放射線源16を移動させながら、線源位置P1~P5の各々で放射線Rを出射させる。また、放射線撮影制御部60は、放射線源16が各線源位置で放射線Rを出射するたびに、放射線検出器19に放射線検出動作を行わせる。以下、放射線検出器19により生成された放射線画像を「投影画像XP」という。
【0065】
コンソール20では、前述の制御部40(
図4参照)が、投影画像取得部61、再構成部62、合成部63、解剖学的構造物抽出部64、ポジショニング評価部66、及び表示処理部67として機能する。本実施形態では、解剖学的構造物抽出部64には、選択部64A及び抽出部64Bが含まれる。
【0066】
投影画像取得部61は、マンモグラフィ装置10がトモシンセシス撮影を行うことにより得られた複数の投影画像XPを、マンモグラフィ装置10から取得する投影画像取得処理を行う。投影画像取得部61は、取得した複数の投影画像XPを記憶部52に記憶させる。なお、投影画像XPには、いずれの線源位置で放射線撮影が行われることにより得られた画像であるかを表す線源位置情報を含む撮影条件が付加されている。
【0067】
再構成部62は、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPから複数の断層画像TPを再構成する再構成処理を行う。再構成部62は、逆投影法又はシフト加算法等、公知の再構成の手法を用いて再構成処理を行う。
【0068】
図6は、再構成処理を模式的に示す。
図6では、撮影台13と圧迫板14との間において、断層面が破線の直線で示されている。本実施形態では、断層面は、放射線検出器19の検出面19Aに平行な仮想面である。再構成部62は、複数の投影画像XPに基づいて再構成処理を行うことにより、乳房Nの断層面における画像を表す断層画像TPを生成する。断層面の間隔は、例えば、1mmである。
【0069】
合成部63は、再構成部62により生成された複数の断層画像TPに基づいて合成処理を行うことにより合成2次元画像SPを生成する。具体的には、合成部63は、複数の断層画像TPに対して予め定められた方向に沿った投影処理を行うことにより合成二次元画像を生成する。なお、合成部63は、最小値投影法により合成2次元画像SPを生成してもよい。また、合成部63は、予め定められた方向に沿って対応する画素値を加算する加算処理を行うことにより合成2次元画像SPを生成してもよい。
【0070】
図7は、合成処理を模式的に示す。
図7は、合成部63が、放射線検出器19の検出面19Aに直交する方向(すなわち、断層面に直交する方向)Aに沿って投影処理を行う例を示している。この場合、合成部63により生成される合成2次元画像SPは、放射線検出器19の検出面19Aの中心における法線V上に位置する仮想的な放射線源(以下、仮想線源という。)16Kから乳房Nに放射線を照射した場合における投影画像に相当する。以下、仮想線源16Kの位置を仮想線源位置PKという。したがって、合成部63は、複数の断層画像TPを合成することにより、仮想的な仮想線源位置PKに基づく投影画像としての合成2次元画像SPを生成する処理部である。
【0071】
本実施形態では、合成部63は、予め仮想線源位置PKを設定情報として保持している。仮想線源位置PKは、操作部56を用いた設定操作により変更可能とされていてもよい。例えば、ユーザが操作部56を用いて撮影角度を入力可能とする。合成部63は、操作部56を介して入力された撮影角度に対応した仮想線源位置PKを設定情報として保持する。ここで、撮影角度とは、仮想線源位置PKから放射線検出器19の検出面19Aに入射する放射線の入射角である。
【0072】
このように仮想線源位置PKが変更可能である場合には、合成部63は、複数の断層画像TPに対して投影処理又は加算処理を行う方向Aを、仮想線源位置PKに応じて変更する。仮想線源位置PKは、回転軸18(
図2参照)の中心から方向Aに沿った方向に存在する。
【0073】
本実施形態では、選択部64Aは、合成部63から仮想線源位置PKの設定情報を取得する。選択部64Aは、複数の線源位置P1~P5(
図3参照)から仮想線源位置PKに最も近い線源位置を特定し、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPから、特定した線源位置に対応する投影画像XPを選択する投影画像選択処理を行う。
【0074】
一例として
図8に示すように、選択部64Aは、複数の線源位置P1~P5から仮想線源位置PKに最も近い線源位置を特定する。
図8に示す例では、選択部64Aにより、仮想線源位置PKに最も近い線源位置として、頂点位置である線源位置P3が特定される。なお、「仮想線源位置PKに最も近い線源位置」には、仮想線源位置PKと同じ位置であることも含まれることは言うまでもない。
【0075】
図9に示すように、選択部64Aは、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPから、特定した線源位置に対応する投影画像XPを選択する。以下、選択部64Aが選択した投影画像XPを選択画像XSという。本実施形態では、線源位置P3に対応する投影画像XPが選択画像XSとして選択される。
【0076】
抽出部64Bは、選択画像XSに基づき、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理を行う。抽出部64Bは、選択画像XSに対して画像解析を行うことにより、解剖学的構造物として、例えば、乳房、乳腺、大胸筋、及び乳頭を抽出する。抽出部64Bが抽出する解剖学的構造物には、乳房、乳腺、大胸筋、及び乳頭のうち少なくともいずれか1つが含まれればよい。
【0077】
図10は、解剖学的構造物抽出処理を模式的に示す。
図10に示すように、本実施形態では、抽出部64Bは、右側の乳房Nをトモシンセシス撮影することにより得られた複数の投影画像XPから選択された選択画像XSと、左側の乳房Nをトモシンセシス撮影することにより得られた複数の投影画像XPから選択された選択画像XSとのそれぞれについて解剖学的構造物を抽出する。
図10に示す選択画像XSは、MLO撮影により得られた乳房画像を例示している。「R」が付された選択画像XSは、右側の乳房Nの乳房画像である。「L」が付された選択画像XSは、左側の乳房Nの乳房画像である。
【0078】
抽出部64Bは、具体的には、下記の手順で各構造物の抽出を行う。下記の手順による解剖学的構造物の抽出方法は、例えば、特開2010-051456号公報により知られている。
【0079】
まず、抽出部64Bは、選択画像XSを乳房領域と素抜け領域に分割する。素抜け領域は画像上で特に高濃度を呈しているため、画像全体の濃度ヒストグラムで高濃度側に現れるピークが素抜け領域に相当する。そのピーク値から一定値引いた値をしきい値として2値化処理を行うことで、乳房領域と素抜け領域に分割することができる。
【0080】
次に、抽出部64Bは、乳房領域の輪郭(以下、スキンラインという。)を抽出する。具体的には、抽出部64Bは、乳房領域と素抜け領域の境界点を順次探索し、探索した画素をつなぐことによりスキンラインを抽出する。
【0081】
次に、抽出部64Bは、大胸筋領域を抽出する。大胸筋領域と脂肪領域との境界は比較的エッジがはっきりしているため、抽出部64Bは、スキンラインから胸壁側に向けて微分オペレータによる走査を行い、大きな微分値をもつ点を大胸筋領域の境界点として抽出する。抽出部64Bは、抽出した境界点を結ぶ曲線を算出し、曲線に対して胸壁側(素抜け領域と反対側)の領域を大胸筋領域として抽出する。
【0082】
次に、抽出部64Bは、大胸筋領域及びその近傍の脂肪領域の濃度値から乳腺領域を抽出するための閾値を算出し、算出した閾値に基づいて乳腺領域を抽出する。
【0083】
次に、抽出部64Bは、乳頭部を検出する。抽出部64Bは、スキンラインを平滑化することにより平滑化スキンラインを取得し、取得した平滑化スキンラインとスキンラインとの離間量に基づいて乳頭部を検出する。
【0084】
抽出部64Bは、解剖学的構造物を抽出した後、解剖学的構造物の抽出結果ASを、表示処理部67及びポジショニング評価部66に出力する。抽出結果ASには、抽出された解剖学的構造物の特徴(位置、形状、大きさ等)が含まれる。
【0085】
なお、抽出部64Bは、上記の画像解析による手法に代えて、ディープラーニングなどの機械学習による手法を用いて選択画像XSを解析することにより解剖学的構造物を抽出してもよい。
【0086】
表示処理部67は、抽出部64Bによる解剖学的構造物の抽出結果ASを、合成部63により生成された合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる表示処理を行う。
【0087】
図11は、表示処理を模式的に示す。本実施形態では、表示処理部67は、左右の乳房Nを表す一対の合成2次元画像SP上に、解剖学的構造物の抽出結果ASを表示させる。
図11に示す例では、抽出結果ASは、解剖学的構造物の輪郭を表す情報であり、各構造物の特徴(位置、形状、及び大きさ)を特定可能とする。
【0088】
解剖学的構造物の抽出結果ASは、合成2次元画像SPの仮想線源位置PKに最も近い線源位置P3に対応する投影画像XP(すなわち選択画像XS)に基づいて抽出された抽出結果である。このため、合成2次元画像SPに写った構造物と、抽出結果ASに基づいて表示された構造物の輪郭との位置ずれは最小限に抑えられる。
【0089】
撮影者は、表示部21に合成2次元画像SPとともに表示された解剖学的構造物の抽出結果ASを観察することにより、左右の乳房Nのポジショニングの良否を精度よく評価することができる。
【0090】
なお、1つの投影画像XPは、線量が低いためノイズを多く含む。これに対して、合成2次元画像SPは、複数の投影画像XPから生成されるため、ノイズが少なく診断に適した画像である。また、合成2次元画像SPは、特定の断層面の構造を強調するなど、診断に適した合成処理を行うことも可能である。したがって、解析に用いる画像は、再構成処理及び合成処理に依存しない投影画像XPであることが好ましいが、表示部21に表示する画像は、診断に適した合成2次元画像SPであることが好ましい。
【0091】
ポジショニング評価部66は、解剖学的構造物の抽出結果ASに基づいて少なくとも1つの評価項目について評価することにより、被写体のポジショニングの良否を評価するポジショニング評価処理を行う。本実施形態では、ポジショニング評価部66は、左右の乳房Nのポジショニングの良否を定量的に評価する。評価項目には、乳房の左右対称性、乳頭の側面性、大胸筋、乳腺後隙、乳房下部、及び乳腺の伸展性のうち少なくともいずれか1つが含まれる。
【0092】
ポジショニング評価部66は、具体的には、下記に示すように、評価項目ごとに点数化を行うことにより、ポジショニングの良否を評価する。下記のポジショニング評価方法は、例えば、特開2010-051456号公報により知られている。
【0093】
[乳房の左右対称性]
乳房全体の対称性、乳腺の対称性、及び大胸筋の対称性を各々評価し、その合計点により乳房の左右対称性を評価する。左右で同じようなポジショニングであれば、左右の乳房画像における各構造物の面積もほぼ同程度になるはずであるので、乳房全体、乳腺、及び大胸筋のそれぞれについて、左右の面積比に基づいて対称性を評価する。
【0094】
[乳頭の側面性]
乳頭の側面性は、乳房画像から乳頭部が検出できたか否かに基づいて評価する。具体的には、乳頭部の検出度合いに基づいて評価点を算出する。左右乳房各々で評価を行い、その合計点により乳頭の側面性を評価する。
【0095】
[大胸筋]
大胸筋の下端部の位置、形状、及び面積を各々評価し、その合計点により大胸筋の評価を行う。大胸筋の下端部の位置は、乳頭の高さまで写っていることが望ましい。このため、大胸筋の下端部と乳頭部の位置に基づいて、大胸筋の下端部の位置に関する位置評価点を算出する。
【0096】
また、大胸筋の形状は、凸形状であることが望ましい。大胸筋の形状は二次関数で表現できるため、その係数に基づいて胸壁側に対して凸形状か凹形状かを判断することができる。大胸筋の凹凸度に基づいて、形状評価点を計算する。
【0097】
また、大胸筋の面積は、乳房全体の面積に対して10%~50%の範囲にあることが望ましい。そこで、大胸筋の面積が上記範囲内であるか否かに基づいて、面積評価点を計算する。
【0098】
そして、位置評価点、形状評価点、及び面積評価点の評価点を合計した合計点を、大胸筋の評価点とする。
【0099】
[乳腺後隙]
乳腺後隙は、乳腺全体が描出されているかを表す評価項目である。乳腺後方に脂肪が描出されているかを解析することにより乳腺後隙を評価する。具体的には、大胸筋の境界と乳腺との重なり具合に基づいて乳腺後隙の評価を行う。左右各々で評価点を算出し、その合計点により、乳腺後隙を評価する。
【0100】
[乳房下部]
乳房下部は、乳房の形状に基づいて評価する。具体的には、スキンラインが画像下端まで到達しているか否かに基づいて評価する。スキンラインが画像下端まで到達している場合は2点、到達していない場合は0点とする。左右各々で評価点を算出し、その合計点により、乳房下部を評価する。
【0101】
[乳腺の伸展性]
乳腺の伸展性は、乳房全体に対する乳腺領域の面積割合(以下、乳腺割合という。)と乳腺内コントラスト値を算出することにより評価する。左右各々で評価点を算出し、その合計点で乳腺の伸展性を評価する。
【0102】
上記各評価項目の具体的な評価点の算出方法は、特開2010-051456号公報により知られているので、詳細な評価点の算出方法については説明を省略する。
【0103】
[総合評価]
ポジショニング評価部66は、上記複数の評価項目の評価点を合計した合計点に基づいて左右の乳房Nのポジショニングの良否を評価する。例えば、乳房の左右対称性、乳頭の側面性、大胸筋、乳腺後隙、乳房下部、及び乳腺の伸展性の各評価項目の評価点を10点満点で表す。ポジショニング評価部66は、各評価項目について評価点を満点から減算することにより得られる減点を合計することにより総合評価値を算出する。そして、ポジショニング評価部66は、算出した総合評価値を、A~Eの5段階に評価ランクのいずれかに分類する。
【0104】
図12は、評価項目ごとの評価点の一例を示す。
図12に示す例では、各評価項目の減点を合計した総合評価値Sは、「-12.5」となる。
【0105】
図13は、総合評価値Sに基づいて評価ランクを求めるための分類表の一例を示す。
図13に示す分類表では、総合評価値Sが取り得る数値範囲を5つに分割し、分割された5つの数値範囲にA~Eの評価ランクが対応付けられている。評価ランクAは、ポジショニングの精度が最も高いことを表す。評価ランクEは、ポジショニングの精度が最も低いことを表す。ポジショニング評価部66は、
図13に示す分類表に基づいて評価ランクを求める。総合評価値Sが「-12.5」の場合には、評価ランクが「C」となる。
【0106】
ポジショニング評価部66は、ポジショニングの良否の評価結果PEを、表示処理部67に出力する。本実施形態では、評価結果PEには、各評価項目の評価点、総合評価値S、及び評価ランクが含まれる。なお、評価結果PEには、評価点、総合評価値S、及び評価ランクのうちいずれか1つが含まれていればよい。
【0107】
表示処理部67は、ポジショニング評価部66からポジショニングの良否の評価結果PEを受信した場合には、評価結果PEを合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる。一例として
図14に示すように、表示処理部67は、各評価項目の評価点を、いわゆるレーダチャートとして表示させる。また、表示処理部67は、総合評価値S及び評価ランクを表示させる。なお、レーダチャート内の破線は、評価点の合格点(8点)のラインを示している。
【0108】
撮影者は、
図14に示すように表示部21に表示された評価結果PEにより、左右の乳房Nのポジショニングの良否を、定量的、かつ直観的に把握することができる。
【0109】
なお、表示部21に表示される評価結果PEの表示形式は、
図14に示す例には限定されない。表示処理部67は、ポジショニングが適切でない場合に、撮影者に再撮影を促す警告を表示部21に表示させてもよい。また、撮影者に再撮影を促す警告は、スピーカ(図示せず)により音声メッセージとして発せられてもよい。
【0110】
このように、本実施形態では、合成2次元画像SPではなく、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像XPから選択された選択画像XSに基づいて解剖学的構造物抽出処理が行われる。このため、解剖学的構造物抽出処理は、合成2次元画像SPを生成する合成処理の完了を待つことなく開始することができる。本実施形態では、コンソール20の制御部50は、解剖学的構造物抽出処理を、合成処理を実行する前又は実行中に開始させる。より具体的には、制御部50は、解剖学的構造物抽出処理を、再構成処理を実行する前に開始させることが好ましい。
【0111】
次に、上記構成による作用について、
図15及び
図16に示すフローチャートを参照して説明する。
図15は、被検者Wの右側の乳房Nに対してトモシンセシス撮影を行う場合の処理手順の一例を示す。
図16は、被検者Wの左側の乳房Nに対してトモシンセシス撮影を行う場合の処理手順の一例を示す。
【0112】
まず、撮影者は、指定された撮影方法(MLO撮影、CC撮影等)に従ってマンモグラフィ装置10の状態を設定する準備作業を行う。撮影者は、準備作業が完了した後、マンモグラフィ装置10に被検者Wを誘導し、乳房Nのポジショニングを開始する。撮影者は、乳房Nを撮影台13に載置させた後、圧迫板移動スイッチ(図示せず)を操作することにより、圧迫板14で乳房Nを圧迫する。
【0113】
例えば、撮影者は、まず、上記の手法により被検者Wの右側の乳房Nをポジショニングする(ステップS10)。撮影者は、ポジショニングが完了すると、曝射スイッチ(図示せず)を操作することにより、マンモグラフィ装置10にトモシンセシス撮影を実行させる(ステップS11)。トモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像XPは、コンソール20へ送信される。
【0114】
コンソール20では、投影画像取得部61は、マンモグラフィ装置10から送信された複数の投影画像XPを取得する投影画像取得処理を行う(ステップS12)。投影画像取得部61により取得された複数の投影画像XPは、記憶部52に記憶される。
【0115】
次に、再構成部62は、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPに基づいて再構成処理(
図6参照)を行う(ステップS13)。合成部63は、再構成処理により生成された複数の断層画像TPに基づいて合成処理(
図7参照)を行う(ステップS14)。合成処理により、仮想線源位置PKに基づく投影画像としての合成2次元画像SPが生成される。
【0116】
ステップS12で投影画像取得部61により投影画像取得処理が行われた後、再構成処理と並行して、解剖学的構造物抽出部64に含まれる選択部64Aにより投影画像選択処理(
図8及び
図9参照)が行われる(ステップS15)。選択部64Aは、複数の線源位置P1~P5から仮想線源位置PKに最も近い線源位置を特定し、特定した線源位置に対応する投影画像XPを、選択画像XSとして選択する。そして、抽出部64Bは、選択された選択画像XSに基づき、解剖学的構造物を抽出する解剖学的構造物抽出処理(
図10参照)を行う(ステップS16)。
【0117】
ステップS14及びステップS16の後、表示処理部67は、解剖学的構造物抽出処理による解剖学的構造物の抽出結果ASを、合成処理により生成された合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる表示処理を行う(ステップS17)。
【0118】
次に、撮影者は、被検者Wの左側の乳房Nをポジショニングする(ステップS18)。撮影者は、ポジショニングが完了すると、曝射スイッチを操作することにより、マンモグラフィ装置10にトモシンセシス撮影を実行させる(ステップS19)。この後、上記と同様の処理が行われる。
図16に示すステップS20~S24は、
図15に示すステップS12~S16と同様の処理であるので、説明は省略する。
【0119】
ステップS24が終了すると、ポジショニング評価部66は、ステップS16及びステップS24の解剖学的構造物抽出処理で抽出された解剖学的構造物の抽出結果ASを用い、複数の評価項目(
図12参照)に基づいてポジショニング評価処理を行う(ステップS25)。ステップS25では、左右の乳房Nに対するポジショニングの良否が評価される。
【0120】
ステップS22及びステップS25の後、表示処理部67は、解剖学的構造物の抽出結果ASに加えて、ポジショニングの良否の評価結果PEを合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる表示処理(
図14参照)を行う(ステップS26)。
【0121】
撮影者は、表示部21に表示された剖学的構造物の抽出結果AS及びポジショニングの良否の評価結果PEに基づいて、左右の乳房Nのポジショニングが適切であったか否かを容易に判断することができる。撮影者は、ポジショニングが適切でないと判断した場合には、ポジショニングを適正化したうえで、再撮影を行う。
【0122】
以上のように、本開示の技術によれば、合成2次元画像を用いることなく被写体のポジショニングの良否を評価することが可能となる。仮に、合成2次元画像を用いてポジショニングを評価する場合には、再構成処理と合成処理とのうちのいずれか一方が変更されるたびに処理を再度適正化する必要があり、煩雑である。しかし、本開示の技術によれば、このような煩雑さが解消される。
【0123】
また、本開示の技術によれば、解剖学的構造物抽出処理を、合成処理を実行する前又は実行中に開始させることが可能であるので、トモシンセシス撮影が開始してから解剖学的構造物の抽出結果が得られるまでの時間を短縮することができる。これにより、撮影者は、ポジショニングの良否を早期に判断することができる。
【0124】
[変形例]
次に、上記実施形態の各種変形例について説明する。
【0125】
上記実施形態では、表示処理部67は、解剖学的構造物の抽出結果ASを表示部21に表示させている(
図11及び
図14参照)。抽出結果ASは、解剖学的構造物の特徴(位置、形状、大きさ等)を表す情報である。さらに、表示処理部67は、解剖学的構造物の抽出結果ASに基づいて測定される測定値を表示部21に表示させてもよい。表示処理部67が表示部21に表示させる測定値は、解剖学的構造物の位置、形状、又は大きさに関する測定値である。これらの測定値は、ポジショニング評価部66が解剖学的構造物の抽出結果ASに基づいて各評価項目について評価点を求める際に測定した解剖学的構造物の測定値であってもよい。
【0126】
図17は、表示部21に表示される測定値の一例を示す。例えば、表示処理部67は、乳房と大胸筋との距離、乳房面積、大胸筋の角度、及び乳房下部の角度を表示部21に表示させる。また、表示処理部67は、左右の乳房の高さに差異が生じている場合に、高さの差異の計測値を表示部21に表示させてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、表示部21をコンソール20が備えるディスプレイ装置としているが、表示部21は、コンソール20とは別に設けられたディスプレイ装置であってもよい。例えば、表示部21は、コンソール20とネットワーク接続されたコンピュータに設けられたディスプレイ装置であってもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、表示処理部67は、合成2次元画像SPとともに、解剖学的構造物の抽出結果AS及びポジショニングの良否の評価結果PEを表示させているが、さらに断層画像TPを表示させてもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、抽出部64Bは、選択画像XSに基づいて解剖学的構造物を抽出しているが、選択画像XSに加えて、1以上の断層画像TPを用いて解剖学的構造物を抽出してもよい。なお、解剖学的構造物抽出処理が、再構成処理を実行する前又は実行中に開始する場合には、抽出部64Bは、再構成処理により少なくとも1つの断層画像TPが得られたタイミングで断層画像TPに基づく解剖学的構造物処理を開始すればよい。この場合、抽出部64Bは、断層画像TPに基づいて抽出された解剖学的構造物の抽出結果を用いて、選択画像XSに基づいて抽出された解剖学的構造物の抽出結果ASを更新すればよい。ここで、更新とは、情報の上書き、又は情報の追加を意味する。
【0130】
また、上記実施形態では、マンモグラフィ装置10は、トモシンセシス撮影時に複数の線源位置で放射線照射を行うために、放射線源16を移動させている。これに代えて、複数の線源位置に対応する位置に配置された複数の放射線管を有する放射線源(例えば、特開2020-048978号公報参照)を用いてもよい。この場合、放射線源を固定したまま、複数の放射線管を1つずつ切り替えながら放射線照射を行えばよい。
【0131】
また、上記実施形態では、放射線撮影装置としてマンモグラフィ装置10を例に挙げて本開示の技術を説明している。本開示の技術に係る放射線撮影装置は、マンモグラフィ装置には限られず、乳房以外を撮影部位とする放射線撮影装置であってもよい。したがって、抽出部64Bが抽出する解剖学的構造物は、乳房に含まれる構造物に限定はされない。例えば、撮影部位が胸部である場合には、抽出部64Bは、解剖学的構造物として、肺野、及び心臓等を抽出する。この場合、ポジショニング評価部66は、肺野面積、左右の肺野領域それぞれの傾き等を評価項目としてポジショニングの良否を評価すればよい。すなわち、ポジショニング評価部66は、1枚の選択画像XSから抽出された解剖学的構造物に基づいてポジショニング評価処理を行うものであってもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、解剖学的構造物抽出部64は、複数の線源位置で取得された複数の投影画像XPから、予め設定された仮想線源位置PKに最も近い線源位置に対応する投影画像XPを選択画像XSとして選択している。これに代えて、複数の線源位置で取得された複数の投影画像XPから、診断に適した1つの投影画像XPを選択し、選択した投影画像XPが取得された線源位置を仮想線源位置PKとしてもよい。
【0133】
図18は、解剖学的構造物抽出部64の変形例を示す。本変形例に係る解剖学的構造物抽出部64は、上記実施形態の選択部64Aに代えて、仮想線源位置決定部70を有する。仮想線源位置決定部70は、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPから、診断に適した1つの投影画像XPを選択し、選択した投影画像XPが取得された線源位置を仮想線源位置PKとして決定する。仮想線源位置決定部70は、決定した仮想線源位置PKを合成部63に入力するとともに、選択した投影画像XPを選択画像XSとして抽出部64Bに入力する。
【0134】
本変形例では、合成部63は、仮想線源位置決定部70から入力された仮想線源位置PKに基づいて合成2次元画像SPを生成する合成処理を行う。抽出部64Bは、仮想線源位置決定部70から入力された選択画像XSから解剖学的構造物を抽出する。したがって、本変形例では、合成処理が実行される前に、仮想線源位置決定部70による仮想線源位置決定処理が実行される。
【0135】
本変形例に係る解剖学的構造物抽出処理は、被検者の膝関節を診断するための放射線撮影システムに適用することが好ましい。膝関節の病気の一つとして変形性膝関節症がある。変形性膝関節症が進行すると、大腿骨と脛骨との間の軟骨がすり減り、大腿骨と脛骨との間の隙間(すなわち関節裂隙)が狭くなる。変形性膝関節症は、放射線画像に基づき、関節裂隙の幅を計測することにより診断される。
【0136】
関節裂隙の幅は非常に小さいため、関節裂隙を診断するには、被検者の膝関節を精度よくポジショニングする必要がある。ポジショニングの際には膝関節を適切に内旋させることが好ましいが、ポジショニングが不適切であると、大腿骨と脛骨とが重なった状態で撮影されてしまう。この場合、関節裂隙を診断することができない。
【0137】
トモシンセシス撮影は、撮影角度を変更(すなわち線源位置を変更)しながら放射線撮影を行うので、撮影角度によっては、関節裂隙が見えにくくなることがある。
図19は、トモシンセシス撮影により得られる投影画像XPに写る関節裂隙の撮影角度依存性を例示する。
図19は、線源位置P3,P4(
図3参照)において得られた投影画像XPの一例を示す。Dは、関節裂隙の最小幅(以下、最小裂隙幅という。)を表している。
図19に示す例では、最小裂隙幅Dは、撮影角度0°に対応する線源位置P3の場合よりも、撮影角度15°に対応する線源位置P4の場合のほうが大きい。このように、撮影角度が0°でない場合のほうが関節裂隙の診断に適していることがある。
【0138】
図20は、仮想線源位置決定部70の構成の一例を示す。仮想線源位置決定部70は、画像処理部71と選択部72とを有する。画像処理部71は、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPを解析し、投影画像XPの各々について最小裂隙幅Dを計測する。例えば、画像処理部71は、大腿骨及び脛骨の各輪郭線を検出し、大腿骨の輪郭線と脛骨の輪郭線との最小幅を、最小裂隙幅Dとして計測する。
【0139】
画像処理部71は、ディープラーニングなどの機械学習による手法を用いて投影画像XPを解析することにより、大腿骨、脛骨、及び膝蓋骨の各領域を抽出し、抽出した各領域に基づいて、大腿骨の輪郭線と脛骨の輪郭線と特定する。そして、画像処理部71は、大腿骨の輪郭線と脛骨の輪郭線との最小幅を計測することにより最小裂隙幅Dを求める。
【0140】
選択部72は、画像処理部71による最小裂隙幅Dの計測結果に基づき、最小裂隙幅Dが最も大きい投影画像XPを選択する。
図20に示す例では、選択部72は、線源位置P4に対応する投影画像XPを選択している。選択部72により選択された投影画像XPが取得された線源位置P4が、仮想線源位置PKとして決定され、合成部63に入力される。また、線源位置P4に対応する投影画像XPが、選択画像XSとして抽出部64Bに入力される。
【0141】
図21は、本変形例に係る抽出部64Bが選択画像XSから抽出する解剖学的構造物の一例を示す。本変形例では、抽出部64Bは、解剖学的構造物として、例えば、大腿骨、脛骨、及び膝蓋骨を抽出する。また、本変形例では、表示処理部67は、大腿骨及び脛骨の各輪郭線を、合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる。また、表示処理部67は、画像処理部71により計測された最小裂隙幅Dの計測値を合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させてもよい。
【0142】
図22は、本変形例に係るポジショニング評価処理の一例を示す。本変形例では、ポジショニング評価部66は、大腿骨の領域に対する膝蓋骨の位置に基づいて、ポジショニングを評価する。具体的には、一方向(
図22ではX軸方向)に関する膝蓋骨の中心座標をXc、一方向に関する大腿骨の最大座標をXmax、一方向に関する大腿骨の最大座標をXminとする。ポジショニング評価部66は、例えば、下式(1)で表される評価値Sに基づいて、膝関節のポジショニングを評価する。
S=|0.5-Xc/(Xmax+Xmin)| ・・・(1)
【0143】
膝関節のポジショニングは、大腿骨の領域に膝蓋骨が位置しているほど精度が高い。すなわち、評価値Sは、0に近いほどポジショニングの精度が最も高いことを表す。ポジショニング評価部66は、上記実施形態と同様に、評価値Sに基づいてポジショニングの評価ランクを生成してもよい。表示処理部67は、ポジショニングの良否の評価結果として、少なくとも評価値S又は評価ランクのいずれか一方を表示部21に表示させる。
【0144】
図23は、本変形例に係る放射線撮影システムの作用を示すフローチャートである。まず、撮影者は、放射線撮影装置に対して被検者の膝関節をポジショニングする(ステップS30)。撮影者は、ポジショニングが完了すると、曝射スイッチを操作することにより、放射線撮影装置にトモシンセシス撮影を実行させる(ステップS31)。
【0145】
投影画像取得処理(ステップS32)及び再構成処理(ステップS33)は、上記実施形態のステップS12及びステップS13(
図15参照)と同様である。ステップS32の後、仮想線源位置決定部70は、投影画像取得処理により取得された複数の投影画像XPから、診断に適した1つの投影画像XPを選択し、選択した投影画像XPが取得された線源位置を仮想線源位置PKとして決定する(ステップS34)。
【0146】
この仮想線源位置決定処理は、再構成処理と並行して行われる。仮想線源位置決定処理により決定された仮想線源位置PKは、合成部63に入力される。また、仮想線源位置決定処理により選択された投影画像XPが選択画像XSとして抽出部64Bに入力される。
【0147】
合成部63は、再構成処理が終了し、かつ仮想線源位置決定部70から仮想線源位置PKが入力されると、入力された仮想線源位置PKに基づいて合成2次元画像SPを生成する(ステップS35)。一方、抽出部64Bは、仮想線源位置決定部70から入力された選択画像XSから解剖学的構造物を抽出する(ステップS36)。
【0148】
ステップS35及びステップS37の後、表示処理部67は、解剖学的構造物の抽出結果に加えて、ポジショニングの良否の評価結果を合成2次元画像SPとともに表示部21に表示させる(ステップS38)。
【0149】
図24は、仮想線源位置決定部70の変形例を示す。本変形例に係る仮想線源位置決定部70Aは、画像提示部73と選択部74とを有する。画像提示部73は、記憶部52に記憶された複数の投影画像XPを表示部21に表示させる。ユーザ(例えば、撮影者)は、表示部21に表示された複数の投影画像XPを観察した後、操作部56を操作することにより、最小裂隙幅Dが最も大きい投影画像XPを選択する。本例では、ユーザは、例えば、線源位置P4に対応する投影画像XPを選択する。
【0150】
選択部74は、操作部56を介してユーザにより選択された投影画像XPを、選択画像XSとして抽出部64Bに入力する。また、選択部74は、選択した投影画像XPが取得された線源位置を、仮想線源位置PKとして合成部63に入力する。
【0151】
このように、本変形例に係る仮想線源位置決定部70Aは、ユーザにより選択された診断に適切な1つの投影画像XPに基づいて仮想線源位置PKを決定する。
【0152】
上記実施形態において、例えば、放射線撮影制御部60、投影画像取得部61、再構成部62、合成部63、解剖学的構造物抽出部64、ポジショニング評価部66、及び表示処理部67といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0153】
各種のプロセッサには、CPU、プログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)、専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【0154】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成
してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(SoC:System On Chip)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0155】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0156】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本発明は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体にもおよぶ。
【符号の説明】
【0157】
2 放射線撮影システム
10 マンモグラフィ装置
11 測定部
12 基台部
13 撮影台
13A 撮影面
13B 側壁角部
14 圧迫板
15 保持部
15A 移動機構
16 放射線源
16A 放射線管
16B コリメータ
16K 仮想線源
17 支持部
18 回転軸
18A 回転機構
19 放射線検出器
19A 検出面
20 コンソール
21 表示部
40 制御部
40A CPU
40B RAM
40C ROM
41 記憶部
42 I/F部
43 操作パネル
44 バス
45 プログラム
50 制御部
50A CPU
50B RAM
50C ROM
52 記憶部
54 I/F部
56 操作部
58 バス
59 プログラム
60 放射線撮影制御部
61 投影画像取得部
62 再構成部
63 合成部
64 解剖学的構造物抽出部
64A 選択部
64B 抽出部
66 ポジショニング評価部
67 表示処理部
70,70A 仮想線源位置決定部
71 画像処理部
72 選択部
73 画像提示部
74 選択部
AS 抽出結果
N 乳房
PE 評価結果
PK 仮想線源位置
R 放射線
SP 合成2次元画像
TP 断層画像
V 法線
W 被検者
XP 投影画像
XS 選択画像