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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127666
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】蓄電監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220825BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20220825BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20220825BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20220825BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20220825BHJP
【FI】
H02J7/00 X ZHV
H02J7/00 P
B60L1/00 L
B60L58/14
B60W10/26 900
B60W20/00 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025781
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
【テーマコード(参考)】
3D202
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB19
3D202BB49
3D202CC00
3D202CC59
3D202DD10
3D202DD47
3D202EE06
5G503AA05
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA11
5G503EA05
5G503EA06
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC14
5H125BC25
5H125DD05
5H125EE23
5H125EE47
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の充電の必要性を高精度に判定することができる、車両に搭載される蓄電装置の蓄電監視システムを提供する。
【解決手段】蓄電監視システム300は、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する電圧検出部301と、車両の稼働時間を取得する稼働時間取得部303と、一定期間内における稼働時間に基づいて、車両10の稼働周期Tを算出する稼働周期算出部304と、稼働時間に基づいて、車両10の初回起動時からの累積稼働時間taを算出する累積稼働時間算出部305と、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する判定部306とを備えている。判定部306は、車両10の初回起動時においては、起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定し、車両10の2回目以降の起動時においては、稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電装置を監視する蓄電監視システムであって、
前記蓄電装置の起動時電圧を検出する電圧検出部と、
前記車両の稼働時間を取得する稼働時間取得部と、
一定期間内における前記稼働時間に基づいて、前記車両の稼働周期を算出する稼働周期算出部と、
前記稼働時間に基づいて、前記車両の初回起動時からの累積稼働時間を算出する累積稼働時間算出部と、
前記蓄電装置の充電の必要性を判定する判定部と
を備え、
前記判定部は、前記車両の前記初回起動時においては、前記起動時電圧に基づいて、前記蓄電装置の充電の必要性を判定し、前記車両の2回目以降の起動時においては、前記稼働周期および前記累積稼働時間に基づいて、前記蓄電装置の充電の必要性を判定する、蓄電監視システム。
【請求項2】
前記電圧検出部は、前記車両のキースイッチがオンになってから前記蓄電装置と該蓄電装置の充電手段とが接続されるまでの期間内に、前記蓄電装置の起動時電圧を検出する、請求項1に記載の蓄電監視システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記車両の前記2回目以降の起動時において、前記稼働周期および前記累積稼働時間に基づいて、前記蓄電装置の充電の必要がないと判定した場合には、前記起動時電圧に基づいて、前記蓄電装置の充電の必要性を判定する、請求項1または2に記載の蓄電監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、蓄電監視システムに係り、特に車両に搭載される蓄電装置を監視する蓄電監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両の制御を補助する各種の機器に電力を供給するための蓄電装置が備えられている。このような蓄電装置の充電は、車両の稼働に連動して発電される電力によって行われる。特許文献1には、蓄電装置の電圧に基づいて、蓄電装置の充電の必要性を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-320361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の稼働の終了と再起動とが短時間に行われるような場合には、車両の稼働が終了して蓄電装置の電圧が定常状態に落ち着く前に、車両の再起動が行われる可能性がある。その場合、蓄電装置の電圧を正確に検出することができず、蓄電装置の充電の必要性を正確に判定することができないという問題がある。
【0005】
この開示はこのような問題を解決するためになされたものであり、蓄電装置の充電の必要性を高精度に判定することができる、車両に搭載される蓄電装置の蓄電監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この開示に係る車両に搭載される蓄電装置の蓄電監視システムは、蓄電装置の起動時電圧を検出する電圧検出部と、車両の稼働時間を取得する稼働時間取得部と、一定期間内における稼働時間に基づいて、車両の稼働周期を算出する稼働周期算出部と、稼働時間に基づいて、車両の初回起動時からの累積稼働時間を算出する累積稼働時間算出部と、蓄電装置の充電の必要性を判定する判定部とを備え、判定部は、車両の初回起動時においては、起動時電圧に基づいて、蓄電装置の充電の必要性を判定し、車両の2回目以降の起動時においては、稼働周期および累積稼働時間に基づいて、蓄電装置の充電の必要性を判定する。
【0007】
好適には、電圧検出部は、車両のキースイッチがオンになってから蓄電装置と当該蓄電装置の充電手段とが接続されるまでの期間内に、蓄電装置の起動時電圧を検出する。
【0008】
判定部は、車両の2回目以降の起動時において、稼働周期および累積稼働時間に基づいて、蓄電装置の充電の必要がないと判定した場合には、起動時電圧に基づいて、蓄電装置の充電の必要性を判定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
この開示に係る車両に搭載される蓄電装置の蓄電監視システムによれば、蓄電装置の充電の必要性を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この開示の実施の形態1に係る蓄電監視システムを搭載した車両の構成を示す模式図である。
図2図1の蓄電監視システムの動作を説明するフローチャートである。
図3図1の車両における累積稼働時間と稼働周期との関係を示す図である。
図4図1の蓄電監視システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この開示の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、この開示の実施の形態1に係る蓄電監視システム300を搭載した車両10の構成を示す模式図である。車両10は、燃料電池システム100と、車両部200と、蓄電監視システム300とを備えている。なお、車両10の具体例としては、燃料電池自動車、或いはフォークリフトのような荷役装置を有する産業車両を考えることができる。
【0012】
(燃料電池システム100)
燃料電池(Fuel Cell)システム100は、燃料電池スタック101と、水素ガスを供給可能な水素タンク102と、酸素を含む空気を供給可能なコンプレッサ103とを備えている。水素タンク102から供給される水素とコンプレッサ103から供給される空気中の酸素とが燃料電池スタック101の内部で化学反応を起こすことによって、発電が行われる。
【0013】
燃料電池スタック101と水素タンク102との間には、燃料電池スタック101に供給される水素ガス量を調整するための水素供給制御弁104が設けられている。水素供給制御弁104およびコンプレッサ103は、マイクロコンピュータによって構成されるFC制御部105によって制御される。
【0014】
FC制御部105は、水素供給制御弁104の開度とコンプレッサ103の吐出量とを制御することによって、燃料電池スタック101に供給される水素と酸素の量を調整し、燃料スタック101の発電電力を制御する。
【0015】
FC制御部105は、操作パネル106に接続されている。操作パネル106は、車両10の運転席に設けられており、運転者が燃料電池システム100に対する指示を入力する操作部として機能する。また、操作パネル106は、燃料電池システム100の各種状態を運転者に通知する表示部としても機能する。
【0016】
燃料電池スタック101の出力には、電圧変換装置107が接続されている。電圧変換装置107は、第1電圧変換部107aと、第2電圧変換部107bとを備えている。第1電圧変換部107aは、燃料電池スタック101から出力される直流電圧を、第1の直流電圧V1に降圧して出力する。第2電圧変換部107bは、第1電圧変換部107aから出力される第1の直流電圧V1を、第2の直流電圧V2に降圧して出力する。
【0017】
この実施の形態1において、燃料電池スタック101からは82Vの直流電圧が出力される。また、第1電圧変換部107aから出力される第1の直流電圧V1は48Vであり、第2電圧変換部107bから出力される第2の直流電圧V2は14Vである。
【0018】
第1電圧変換部107aの出力には、第1蓄電装置108と、後述する車両部200に含まれる車両負荷201とが接続されている。
【0019】
第1蓄電装置108は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等によって構成されている。第1蓄電装置108は、第1電圧変換部107aの出力電力が車両負荷201の要求電力を上回る場合には充電を行い、第1電圧変換部107aの出力電力が車両負荷201の要求電力を下回る場合には放電を行う。
【0020】
第2電圧変換部107bの出力には、第2蓄電装置109と、補機110とが接続されている。補機110は、FC制御装置105による燃料電池スタック101の発電制御を補助する機器の総称である。この実施の形態1において、補機110は、コンプレッサ103、水素供給制御弁104、燃料電池スタック101に設けられる図示しないラジエータファン等である。
【0021】
第2蓄電装置109は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等によって構成されている。第2蓄電装置109は、第2電圧変換部107bの出力電力が補機110の要求電力を上回る場合には充電を行い、第2電圧変換部107bの出力電力が補機110の要求電力を下回る場合には放電を行う。なお、第2蓄電装置109の充電時において、第2電圧変換部107bは、第2蓄電装置109の充電手段として機能する。
【0022】
(車両部200)
車両部200は、車両負荷201と、車両制御部202と、車両操作部203と、キースイッチ(キーSW)204とを備えている。
【0023】
車両負荷201は、燃料電池自動車の場合には、車軸を駆動する走行モータであり、産業車両の場合には、車軸を駆動する走行モータおよび荷役装置を駆動する荷役モータである。
【0024】
車両制御部202は、マイクロコンピュータによって構成されている。車両制御部202は、車両10の運転者によって操作される車両操作部203の操作状態に基づいて、車両10の走行や荷役を制御する。なお、車両制御部202とFC制御部105とは、互いに通信を行うことができる。
【0025】
車両操作部203は、燃料電池自動車の場合には、アクセルペダル、ブレーキペダル等であり、産業車両の場合には、アクセルペダル、ブレーキペダル、リフトレバー、チルトレバー等である。
【0026】
キースイッチ204は、車両10の運転者によってオン、オフの操作が行われる。運転者がキースイッチ204をオンにすると車両10が起動する。車両10が起動すると、燃料電池システム100による発電が開始され、車両10は稼働状態になる。また、運転者がキースイッチ204をオフにすると車両10の稼働が終了する。車両10の稼働が終了すると、燃料電池システム100による発電が停止される。
【0027】
(蓄電監視システム300)
蓄電監視システム300は、第2蓄電装置109の蓄電状態を監視するシステムであり、車両10の起動時において、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。詳細には、蓄電装置システム300は、車両10の起動時における第2蓄電装置109の充電量が補機110を安定して稼働させるのに十分であるか否かを判定する。
【0028】
蓄電監視システム300は、電圧検出部301と、起動終了検知部302と、稼働時間取得部303と、稼働周期算出部304と、累積稼働時間算出部305と、判定部306とから構成されている。電圧検出部301は、直流電圧を検出可能な周知の電圧センサによって構成されている。起動終了検知部302、稼働時間取得部303、稼働周期算出部304、累積稼働時間算出部305および判定部306は、マイクロコンピュータによって構成されている。
【0029】
なお、起動終了検知部302、稼働時間取得部303、稼働周期算出部304、累積稼働時間算出部305および判定部306は、単一のマイクロコンピュータによって構成されていてもよいし、それぞれ別個のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。また、起動終了検知部302、稼働時間取得部303、稼働周期算出部304、累積稼働時間算出部305および判定部306は、燃料電池システム100のFC制御部105の内部に含まれていてもよい。
【0030】
電圧検出部301は、車両10の起動時における第2蓄電装置109の電圧(「起動時電圧V」)を検出する。詳細には、図1において、第2電圧変換部107bの出力と第2蓄電装置109との間には、図示しないリレーが設けられており、車両10の起動時にはリレーの接点が開状態から閉状態に変化する。
【0031】
電圧検出部301は、車両10のキースイッチ204がオンになってからリレーの接点が閉じて第2電圧変換部107bの出力と第2蓄電装置109とが接続されるまでの期間内に、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する。換言すれば、電圧検出部301は、車両10の起動時における第2蓄電装置109の開回路電圧(OCV)を検出する。
【0032】
起動終了検知部302は、車両10の起動および稼動終了を検知する。詳細には、運転者が車両10のキースイッチ204をオンにすると、車両制御部202がこれを検知して、FC制御部105に通知する。FC制御部105は、起動終了検知部302に対して、車両10の起動を通知する。また、運転者が車両10のキースイッチ204をオフにすると、車両制御部202がこれを検知して、FC制御部105に通知する。FC制御部105は、起動終了検知部302に対して、車両10の稼動終了を通知する。
【0033】
稼働時間取得部303は、車両10の起動の日時と稼働終了の日時とを常時監視しており、これらを車両10の稼働時間として取得する。詳細には、稼働時間取得部303は、車両10のキースイッチ204がオンにされると起動の日時を記録し、キースイッチ204がオフにされると稼働終了の日時を記録する。この実施の形態1において、稼働時間は{起動の日時:稼働終了の日時}の形式で記録される。
【0034】
稼働周期算出部304は、車両10の一定期間内における稼働時間に基づいて、車両10の稼働周期Tを算出する。詳細には、稼働周期算出部304は、車両10の稼働終了毎に、稼働時間取得部303によって取得された稼働時間に基づいて、過去の一定期間内における車両10の稼働日数を算出し、一定期間を稼働日数で除算することによって、稼働周期Tを算出する。例えば、一定期間を14日として、この期間内における車両10の稼働日数が3日である場合、稼働周期T=14/3≒5となる。
【0035】
累積稼働時間算出部305は、車両10の初回起動時からの累積稼働時間taを算出する。詳細には、累積稼働時間算出部305は、稼働時間取得部303によって取得された車両10の稼働時間を累積加算することによって、車両10の初回起動時からの累積稼働時間taを算出する。
【0036】
ここで、本実施の形態1における車両10の「初回起動」および「2回目以降の起動」という用語の定義について説明する。
【0037】
第1の定義では、車両10の初回起動とは、午前0時から始まる或る1日における車両10の最初の起動であり、その1日における車両10の再度の起動は、2回目以降の起動となる。
【0038】
第2の定義では、車両10の初回起動とは、第2蓄電装置109の開回路電圧が定常状態にある際の車両10の起動であり、車両10の稼動終了後に第2蓄電装置109の開回路電圧が定常状態に落ち着くまでの過渡状態にある際の車両10の再度の起動は、2回目以降の起動となる。
【0039】
判定部306は、車両10の起動時において、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。詳細には、判定部306は、車両10の初回起動時においては、電圧検出部301によって検出される起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。また、判定部306は、車両10の2回目以降の起動時においては、稼働周期算出部304によって算出された稼働周期Tおよび累積稼働時間算出部305によって算出された累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。
【0040】
(蓄電監視システム1の動作)
次に、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。図2のフローチャートの処理は、車両10の初回起動時から、第2蓄電装置109の充電の必要がなくなるまでの間、継続して行われる。
【0041】
ステップS201において、蓄電監視システム300の起動終了検知部302は、車両10の起動を検知する。先述したように、運転者が車両10のキースイッチ204をオンにすると、車両制御部202がこれを検知して、FC制御部105に通知する。FC制御部105は、起動終了検知部302に対して、車両10の起動を通知する。
【0042】
ステップS202において、起動終了検知部302は、上記のステップS201で検知された車両10の起動が、初回起動であるか否かを判定する。
【0043】
詳細には、上述した第1の定義に従う場合には、起動終了検知部302は、午前0時にリセットスタートするタイマを用いて判定を行う。起動終了検知部302は、タイマが午前0時にリセットスタートしてからの最初の起動を初回起動と判定し、それ以降のタイマが再びリセットスタートするまでの起動は2回目以降の起動と判定する。
【0044】
また、上述した第2の定義に従う場合には、起動終了検知部302は、第2蓄電装置109の電圧が定常状態に落ち着くのに要する時間を予め実験的に測定しておき、その時間が経過すると満了してストップするタイマを用いる。起動終了検知部302は、タイマが作動していない状態における起動を初回起動と判定した後にタイマをスタートさせ、それ以降のタイマが作動している状態における起動は2回目以降の起動と判定する。
【0045】
上記のステップ202=YESの場合、すなわち車両10の初回起動時には、蓄電監視システム300の処理はステップS203に進む。一方、上記のステップS202=NOの場合、すなわち車両10の2回目以降の起動時には、蓄電監視システム300の処理はステップS208に進む。
【0046】
(初回起動時)
車両10の初回起動時においては、第2蓄電装置109の起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性が判定される。詳細には、ステップS203以降の処理が行われる。
【0047】
ステップS203において、電圧検出部301は、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する。先述したように、電圧検出部301は、車両10のキースイッチ204がオンになってから図示しないリレーの接点が閉じて第2電圧変換部107bの出力と第2蓄電装置109とが接続されるまでの期間内に、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する。
【0048】
ステップS204において、判定部306は、上記のステップS203で検出された第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第1の閾値電圧Vt1以上であるか否かを判定する。この実施の形態1において、第1の閾値電圧Vt1は、11Vである。この値は、車両10の起動時において、第2蓄電装置109の充電量が補機110を安定して稼働させるのに十分な場合における電圧として定義される。
【0049】
上記のステップS204=YESの場合、すなわち第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第1の閾値電圧Vt1以上である場合には、判定部306は、第2蓄電装置109の充電の必要はないと判定する(S205)。この後、蓄電監視システム300の処理は終了する(RET)。
【0050】
一方、上記のステップS204=NOの場合、すなわち第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第1の閾値未満Vt1である場合には、判定部306は、第2蓄電装置109の充電の必要があると判定する(S206)。この場合、判定部306から燃料電池システム100のFC制御部105に対して、警告が送信される。この警告を受信したFC制御部105は、操作パネル106上に、第2蓄電装置109の充電が必要である旨の警告を表示する。
【0051】
ステップS207において、累積稼働時間算出部305は、車両10の初回起動時からの累積稼働時間taの算出を開始する。先述したように、累積稼働時間算出部305は、稼働時間取得部303によって取得される車両10の稼働時間を累積加算することによって、車両10の初回起動時からの累積稼働時間taを算出する。この後、蓄電監視システム300の処理は、ステップS201に戻る。
【0052】
(2回目以降の起動時)
車両10の2回目以降の起動時においては、車両10の稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性が判定される。詳細には、ステップS208以降の処理が行われる。
【0053】
ステップS208において、判定部306は、稼働周期算出部304によって算出された車両10の稼働周期Tを取得する。先述したように、稼働周期算出部304は、図2のフローチャートの処理とは独立して、車両10の稼働終了毎に、稼働周期Tを算出する処理を行っている。
【0054】
ステップS209において、判定部306は、車両10の稼働周期Tに基づいて、当該稼働周期Tにおいて第2蓄電装置109の充電量が補機110を安定して稼働させるのに十分な状態に維持されるために必要な閾値時間tminを算出する。
【0055】
詳細には、判定部306の内部メモリには、図3に直線Lで示されるような情報がマップとして記憶されている。ここで、図3の各四角印は、第2蓄電装置209について、累積稼動時間taの間に充電される電力量と、稼動周期Tの間に自然放電によって失われる電力量とが等しくなるような、累積稼動時間taと稼動周期Tと関係をプロットしたものである。このような関係は、予め実験的に取得してもよいし、第2蓄電装置109の自然放電特性と充電特性とに基づいて、予めシミュレーションによって計算してもよい。
【0056】
図3において、直線Lは、上記の各四角印、すなわち充電量と放電量とが等しくなるような累積稼動時間taと稼動周期Tとの関係を線形近似したものである。この直線Lは、稼動周期Tの車両10において、稼動終了時の蓄電量が次回起動時まで維持されるために必要な最小の累積稼動時間taを与えるものであると解釈することができる。なお、累積稼動時間taと稼動周期Tとの関係を近似する際には、直線ではなく任意の曲線を用いて近似してもよい。
【0057】
この実施の形態1では、直線Lで示される稼動周期Tの車両10において稼動終了時の蓄電量が次回起動時まで維持されるために必要な最小の累積稼動時間taを、稼働周期Tの車両10において第2蓄電装置109の充電量が補機110を安定して稼働させるのに十分な状態に維持されるために必要な閾値時間tminと読み替える。したがって、例えば稼動周期T=4日である場合、判定部306は、図3の直線Lに基づいて、閾値時間tmin=25時間と算出する。
【0058】
ステップS210において、判定部206は、累積稼働時間算出部305によって算出された車両10の初回起動時からの累積稼働時間taを取得する。
【0059】
ステップS211において、判定部206は、上記のステップS210で取得された累積稼働時間taが、上記のステップS208で算出された閾値時間tmin以上であるか否かを判定する。
【0060】
上記のステップS211=NOの場合、すなわち累積稼働時間taが閾値時間tmin未満である場合には、判定部306は、第2蓄電装置109の充電が必要であると判定する(S215)。この場合、判定部306から燃料電池システム100のFC制御部105に対して、警告が送信される。この警告を受信したFC制御部105は、操作パネル106上に、第2蓄電装置109の充電が必要である旨の警告を表示する。この後、蓄電監視システム300の処理は、ステップS201に戻る。
【0061】
一方、上記のステップS211=YESの場合、すなわち累積稼働時間taが閾値時間tmin以上である場合には、蓄電監視システム300の処理は、ステップS212に進む。
【0062】
ステップS212において、電圧検出部301は、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する。この際、前述のステップS203と同様に、電圧検出部301は、車両10のキースイッチ204がオンになってからリレーの接点が閉じて第2電圧変換部107bの出力と第2蓄電装置109とが接続されるまでの期間内に、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する。
【0063】
ステップS213において、判定部306は、上記のステップS212で検出された第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第2の閾値電圧Vt2以上であるか否かを判定する。この実施の形態1において、第2の閾値電圧Vt2は、12Vである。この値は、第1の閾値電圧Vt1よりも高く、第2電圧変換部107bの出力する第2の直流電圧V2よりも低い電圧として定義される。すなわち、V2>Vt2>Vt1の関係が成立する。
【0064】
上記のステップS213=YESの場合、すなわち第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第2の閾値電圧Vt2以上である場合には、判定部306は、第2蓄電装置109の充電の必要はないと判定する(S214)。この後、蓄電監視システム300の処理は終了する(RET)。
【0065】
一方、上記のステップS213=NOの場合、すなわち第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第2の閾値電圧Vt2未満である場合には、判定部306は、第2蓄電装置109の充電の必要があると判定する(S215)。この場合、判定部306から燃料電池システム100のFC制御部105に対して、警告が送信される。この警告を受信したFC制御部105は、操作パネル106上に、第2蓄電装置109の充電が必要である旨の警告を表示する。この後、蓄電監視システム300の処理は、ステップS201に戻る。
【0066】
以上の処理が蓄電監視システム300によって行われることにより、車両10の起動時において、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定することができる。
【0067】
図4は、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300の動作を説明するタイミングチャートである。なお、図4の時刻t1以前においては、車両10は稼働を停止しており、燃料電池システム100による発電は行われていない。したがって、第2電圧変換部107bの出力電圧は0Vである。また、第2蓄電装置109の電圧は未検出の状態であり、0Vとなっている。
【0068】
時刻t1において、運転者によって車両10のキースイッチ204がオンにされると、蓄電監視システム300の起動終了検知部302によって、車両10の初回起動が検知される(図2のステップS201、ステップS202=YES)。車両10が起動すると、燃料電池システム100による発電が開始され、第2電圧変換部107bからは第2の直流電圧V2が出力される。
【0069】
時刻t2において、図示しないリレーの接点が閉じて、第2電圧変換部107bの出力と第2蓄電装置109とが接続される。これにより、第2蓄電装置109の電圧は、第2電圧変換部107bの出力する第2の直流電圧V2と等しくなる。蓄電監視システム300の電圧検知部301は、これに先立つ時刻t1から時刻t2までの期間内に、第2蓄電装置109の起動時電圧Vを検出する(図2のステップS203)。
【0070】
蓄電監視システム300の判定部306は、車両10の初回起動時においては、起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する(図2のステップS204)。
【0071】
図4の例では、第2蓄電装置109の起動時電圧Vは、第1の閾値電圧Vt1未満である(図2のステップS204=NO)。したがって、蓄電監視システム300の判定部306は、第2蓄電装置109の充電の必要があると判定する(図2のステップS205)。
【0072】
時刻t3において、運転者によって車両10のキースイッチ204がオフにされると、車両10の初回の稼働が終了して、燃料電池システム100による発電が停止される。ただし、蓄電監視システム300による図2のフローチャートの処理は継続している。この時、キースイッチ204がオフにされているため、操作パネル106上に、第2蓄電装置109の充電が必要である旨の警告は行われなくなる。
【0073】
時刻t4において、運転者によって車両10のキースイッチ204が再びオンにされると、蓄電監視システム300の起動終了検知部301によって、車両10の2回目の起動が検知される(図2のステップS201、ステップS202=NO)。
【0074】
ここで、図4の時刻t4から時刻t5の期間内において、第2蓄電装置109の起動時電圧Vは、第1の閾値電圧Vt1よりも高い。しかしながら、これは時刻t3で車両10の稼働が終了してから短い時間しか経過していないために、第2の蓄電装置109の電圧が過渡状態にあり、定常状態に落ち着いていないからである。
【0075】
このような状態において、仮に第2蓄電装置109の起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定してしまうと、実際には充電が必要であるにも関わらず、充電が必要でないと誤判定してしまう可能性がある。
【0076】
これに対して、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300の判定部306は、車両10の2回目以降の起動時においては、稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する(図2のステップS208からステップS211)。
【0077】
詳細には、車両10の累積稼働時間taが、稼働周期Tにおいて第2蓄電装置109の充電量が補機110を安定して稼働させるのに十分な状態に維持されるために必要な閾値時間tmin以上であるか否かに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性が判定される。
【0078】
すなわち、車両10の2回目以降の起動時においては、車両10の起動時電圧Vに基づくことなく、第2蓄装置109の充電の必要性が判定される。したがって、第2蓄電装置109の起動時電圧Vが定常状態でない場合であっても、蓄電装置109の充電の必要性を高精度に判定することができる。
【0079】
また、蓄電監視システム300の判定部306は、車両10の2回目以降の起動時において、稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要がない判定された場合(ステップS211=YES)には、起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する(図2のステップS212からステップS213)。
【0080】
詳細には、稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電は必要ないと判定される場合であっても、安全を期すために、第2蓄電装置109の起動時電圧Vが第2の閾値電圧Vt2未満である場合には、充電が必要であると判定される。なお、図4の第2蓄電装置109の縦軸に示されるように、第2の直流電圧V2>第2の閾値電圧Vt2>第1の閾値電圧Vt1の関係が成立する。
【0081】
以上説明したように、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300の判定部306は、車両10の2回目以降の起動時においては、車両10の稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。これにより、第2蓄電装置109の起動時電圧Vが定常状態にない場合であっても、蓄電装置109の充電の必要性を高精度に判定することができる。
【0082】
また、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300では、車両10の2回目以降の起動時において、稼働周期Tおよび累積稼働時間taに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要がない判定された場合には、起動時電圧Vに基づいて、第2蓄電装置109の充電の必要性を判定する。これにより、第2蓄電装置109の充電の必要性を更に高精度に判定することができる。
【0083】
特に、フォークリフト等の産業車両では、運転者は各種作業のために頻繁に車両の乗り降りを行う。この際、安全教育の一環として、例え一時的にでも車両から降りる際には、キースイッチをオフにするように指導されていることが多い。そのため、産業車両では、キースイッチのオン、オフが頻繁に行われることが多い。したがって、この実施の形態1に係る蓄電監視システム300は、フォークリフト等の産業車両において、特に有利な効果を発揮する。
【符号の説明】
【0084】
10 車両、107b 第2電圧変換部(充電手段)、109 第2蓄電装置(蓄電装置)、204 キースイッチ、300 蓄電監視システム、301 電圧検出部、303 稼働時間取得部、304 稼働周期算出部、305 累積稼働時間算出部、306 判定部、ta 累積稼働時間、T 稼働周期、V 起動時電圧。
図1
図2
図3
図4