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特開2022-128634電池用極板、電池用極板の製造方法、および、二次電池
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  • 特開-電池用極板、電池用極板の製造方法、および、二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128634
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電池用極板、電池用極板の製造方法、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20220829BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220829BHJP
   H01M 4/32 20060101ALI20220829BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M4/32
H01M4/80 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026965
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】大島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石田 渉
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA02
5H017AS02
5H017CC25
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA14
5H050CA03
5H050DA04
5H050FA08
5H050FA13
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】内部抵抗を良化可能な電池用極板、電池用極板の製造方法、および、二次電池を提供する。
【解決手段】金属多孔体で構成された基材11と、基材11に設けられる正極活物質層21とを備え、基材11は、中央領域12aと、中央領域12aの第1側縁に位置する第1エッジ領域と、第2側縁13bに位置する第2エッジ領域12cとを備え、第1エッジ領域がリード部であって、正極活物質層21は、中央領域12aおよび第2エッジ領域12cにはみ出して設けられており、正極活物質層21の密度は、中央領域12aおける第1部分、ならびに、第2側縁13bに沿う第2部分14bおよび第2エッジ領域12cにはみ出した第3部分14cが、第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cのとの間の中央位置よりも疎である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属多孔体で構成された基材と、
前記基材の少なくとも1つの面に設けられる活物質層とを備え、
前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、前記第1エッジ領域がリード部であって、
前記活物質層は、前記中央領域と、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも何れか一方のエッジ領域にはみ出して設けられており、
前記活物質層の密度は、前記中央領域おける前記第1側縁に沿う第1部分、ならびに、前記第2側縁に沿う第2部分および前記エッジ領域にはみ出した第3部分が、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域のとの間の中央位置よりも疎である
電池用極板。
【請求項2】
前記第3部分は、前記第2エッジ領域に設けられている
請求項1に記載の電池用極板。
【請求項3】
前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域は、前記基材を前記中央領域よりも圧縮の程度が高くなるように圧縮した高圧縮部であり、前記中央領域は、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域に対して低圧縮部である
請求項1または2に記載の電池用極板。
【請求項4】
前記活物質層の前記第2側縁から前記第2エッジ領域にはみ出した先端までの距離が0.1mm以上である
請求項2に記載の電池用極板。
【請求項5】
前記第2エッジ領域における、前記中央領域の前記第2側縁から先端までの距離が0.4mm~1.0mmのとき、前記活物質層の前記第2側縁から前記第2エッジ領域にはみ出した先端までの距離が0.1mm~0.3mmである
請求項2に記載の電池用極板。
【請求項6】
金属多孔体で構成された基材の少なくとも一方の面に活物質ペーストを塗工して電池用極板を製造する電池用極板の製造方法において、
前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、
前記中央領域に対して前記活物質ペーストを塗工する塗工工程を備え、
前記塗工工程では、前記活物質ペーストの塗工幅が前記中央領域の幅より狭く、前記基材に対して前記活物質ペーストを浸透させて前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも一方のエッジ領域に対して前記活物質ペーストをはみ出させる
電池用極板の製造方法。
【請求項7】
負極板と正極板とをセパレータを介して積層した電極群を電解液とともに電槽内に収容して構成された二次電池であって、
負極板および正極板のうち少なくとも一方の極板は、
金属多孔体で構成された基材と、
前記基材の少なくとも1つの面に設けられる活物質層とを備え、
前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、前記第1エッジ領域がリード部であって、
前記活物質層は、前記中央領域と、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも何れか一方のエッジ領域にはみ出して設けられており、
前記活物質層の密度は、前記中央領域おける前記第1側縁に沿う第1部分、ならびに、前記第2側縁に沿う第2部分および前記エッジ領域にはみ出した第3部分が、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域のとの間の中央位置よりも疎である
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用極板、電池用極板の製造方法、および、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の1種であるニッケル水素蓄電池は、一般的に複数の負極板および正極板をセパレータで挟んで積層した積層体を電解液とともに電槽内に密封して構成されている。特許文献1に示すように、正極板は、金属多孔体で構成された基材に対して正極活物質等の電極材料を含む組成物のペーストが塗布されて構成されている。基材は、ペーストが塗工される塗布領域となる中央領域と、ペーストが塗布されない非塗布領域となる2つのエッジ領域とを備えている。2つのエッジ領域は、中央領域の両側に位置し、かつ、基材の相対する2つの長辺に位置する。2つのエッジ領域は、中央領域に対して圧縮の程度が高い高圧縮部であって、中央領域は、エッジ領域に対して圧縮の程度が低い低圧縮部である。そして、一方の高圧縮部はリード部であり、他方の高圧縮部はエッジプレス部である。ペーストは、低圧縮部である中央領域の第1面に塗布されると浸透し、反対側の第2面に滲み出し露出する。
【0003】
電解液の電槽内への注液は、電槽に積層体をエッジ領域が上下方向に延在するように挿入し、蓋を装着した状態で上部の蓋注液口より電解液を注入することにより行われる。注入された電解液は、上下方向に延在するエッジ領域の位置に滞留し易い。特に、注液途中については、積層体に電解液が浸透するまでの間、当該位置に滞留し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-149332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電槽内に電解液を注入したとき、エッジ領域の位置に滞留した電解液が積層体の中心部に浸透しにくく、また、浸透に時間を要する。このため、内部抵抗の更なる低減が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電池用極板は、金属多孔体で構成された基材と、前記基材の少なくとも1つの面に設けられる活物質層とを備える。前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、前記第1エッジ領域がリード部である。前記活物質層は、前記中央領域と、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも何れか一方のエッジ領域にはみ出して設けられている。前記活物質層の密度は、前記中央領域おける前記第1側縁に沿う第1部分、ならびに、前記第2側縁に沿う第2部分および前記エッジ領域にはみ出した第3部分は、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域のとの間の中央位置よりも疎となっている。上記構成によれば、電解液が第1部分、第2部分および第3部分を通じて極板の全体に浸透し易くなり、その結果、内部抵抗を良化することができる。
【0007】
上記電池用極板において、前記第3部分は、前記第2エッジ領域に設けられていることが好ましい。第1エッジ領域はリード部であり、外部端子を接続するため溶接が行われるので、活物質が第1エッジ部分にはみ出すと、外部端子を溶接する際に溶接不良が発生するおそれがあるからである。
【0008】
上記電池用極板において、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域は、前記基材を前記中央領域よりも圧縮の程度が高くなるように圧縮した高圧縮部であり、前記中央領域は、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域に対して低圧縮部であることが好ましい。上記構成によれば、第1エッジ領域および第2エッジ領域は、高圧縮部であることで、中央領域より薄い。したがって、中央領域の第1側縁および/または第2側縁に圧縮部加工時に突起が形成されることがあっても、突起が隣接する極板に接触することに伴う内部短絡を抑制できる。第1エッジ領域および第2エッジ領域が高圧縮部であっても、第1部分、第2部分が低圧縮部に存在し、高圧縮部にも第3部分が存在するので、電解液浸透の悪化を抑制できる。さらに、第3部分は、突起を覆い、内部短絡を抑制できる。
【0009】
上記電池用極板において、前記活物質層の前記第2側縁から前記第2エッジ領域にはみ出した先端までの距離が0.1mm以上であることが好ましい。0.1mm以上あれば、第3部分における電解液の導き効果を十分に発揮することができる。
【0010】
上記電池用極板において、前記第2エッジ領域における、前記中央領域の第2側縁から先端までの距離が0.4mm~1.0mmのとき、前記活物質層の前記第2側縁から前記第2エッジ領域にはみ出した先端までの距離が0.1mm~0.3mmであることが好ましい。上記構成によれば、高圧縮部を形成する際に第2側縁に突起が形成されることがあるが、第3部分で突起を活物質層で覆い内部短絡の発生を抑制できる。
【0011】
上記課題を解決する電池用極板の製造方法は、上記電池用極板において、金属多孔体で構成された基材の少なくとも一方の面に活物質ペーストを塗工して電池用極板を製造する電池用極板の製造方法において、前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、前記中央領域に対して前記活物質ペーストを塗工する塗工工程を備える。前記塗工工程では、前記活物質ペーストの塗工幅が前記中央領域の幅より狭く、前記基材に対して前記活物質ペーストを浸透させて前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも一方のエッジ領域に対して前記活物質ペーストをはみ出させる。
【0012】
上記課題を解決する二次電池は、負極板と正極板とをセパレータを介して積層した電極群を電解液とともに電槽内に収容して構成された二次電池であって、負極板および正極板のうち少なくとも一方の極板は、金属多孔体で構成された基材と、前記基材の少なくとも1つの面に設けられる活物質層とを備える。前記基材は、中央領域と、前記中央領域の一方の第1側縁に位置する第1エッジ領域と、前記第1側縁と反対側の第2側縁に位置する第2エッジ領域とを備え、前記第1エッジ領域がリード部である。前記活物質層は、前記中央領域と、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域の少なくとも一方のエッジ領域にはみ出して設けられている。前記活物質層の密度は、前記中央領域おける前記第1側縁に沿う第1部分、ならびに、前記第2側縁に沿う第2部分および前記エッジ領域にはみ出した第3部分が、前記第1エッジ領域および前記第2エッジ領域のとの間の中央位置よりも疎となっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池における内部抵抗を良化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は正極板の平面図、(b)は、基材の断面図、(c)は、基材に正極活物質ペーストを塗工している状態の断面図、(d)は、正極板の断面図。
図2】正極板における第1エッジ領域周辺の拡大断面図。
図3】正極板における第2エッジ領域周辺の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態における正極板は、ニッケル水素蓄電池の正極に用いられる。このニッケル水素二次電池は、密閉型電池であり、電気自動車やハイブリッド自動車の電源として用いられる電池である。ニッケル水素蓄電池は、例えば、水素吸蔵合金を負極活物質として含む複数の負極板と、水酸化ニッケル(Ni(OH))を正極活物質として含む複数の正極板とを、耐アルカリ性樹脂の不織布から構成されるセパレータを介して交互に積層した電極群である積層体を、集電板に接続し、電解液とともに樹脂製の電槽内に収容して構成されている。電解液は、例えば水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液である。
【0016】
図1(a)に示すように、電池用極板としての正極板10は、基材11と、正極活物質層21とを備えている。基材11は、ニッケル基材などの金属多孔体で構成されている。金属多孔体は、主成分が金属であり且つ多数の孔を有している材料である。例えば、ニッケル基材は、例えば発泡ニッケルによって構成されている。発泡ニッケルは、例えば発泡ウレタンの骨格表面にニッケルメッキを施した後、発泡ウレタンを焼失させることによって製造することができる。
【0017】
図1(b)に示すように、基材11は、全体が矩形板形状を有している。そして、中央領域12aと、中央領域12aの両側に位置する第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cとを備えている。中央領域12aは、正極材料を含む活物質ペーストであるペースト22が塗工される塗布領域である。2つのエッジ領域12b,12cは、中央領域12aの両側に位置し、かつ、基材11の相対する2つの長辺に位置する。2つのエッジ領域12b,12cは、中央領域12aに対して圧縮の程度が高い高圧縮部として構成されている。中央領域12aは、エッジ領域12b,12cに対して圧縮の程度が低い低圧縮部として構成されている。
【0018】
中央領域12aは、金属多孔体の圧縮の程度が低いことから、ダイノズル23と対向する第1面11aに塗工されたペースト22が浸透して第1面11aと反対側の第2面11bに滲み出るように構成されている。第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、中央領域12aのY方向に対する第1側縁13aおよび第2側縁13bに連続して設けられ、かつ、X軸方向に延びる領域である。第1エッジ領域12bは、ペースト22が塗工されない非塗布領域である。第2エッジ領域12cもその大部分はペースト22が塗工されない非塗布領域である。第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、第1面11aおよび第2面11bの側から圧縮された高圧縮部であることから、中央領域12aよりも薄く、ペースト22も浸透しにくい構成となっている。第1エッジ領域12bは、極板に対して電気を供給又は取り出すための外部端子に接続されるリード部であり、第2エッジ領域12cは、エッジプレス部である。リード部となる第1エッジ領域12bには、上下端に切欠部15が設けられ、また、位置決め棒を挿入して極板同士の位置決めを行うための位置決め孔16が設けられている。
【0019】
図1(c)は、基材11に正極活物質を含むペースト22を塗布する塗工工程を示す。この工程では、基材11とダイノズル23とを相対移動させながらペーストを基材11に塗布する。例えば、基材11を一定速度で搬送させながらダイノズル23からペーストを吐出させる。ペースト22は、ダイノズル23のY軸方向に延びる直線形状をなすように吐出される。ダイノズル23の吐出口から吐出されるペースト22が第1面11aに接触する接触位置の塗工幅W1は、中央領域12aのY方向の幅W2より若干狭くなる。そして、中央領域12aの第1面11aに塗工されたペースト22は、中央領域12aを浸透し第2面11bに滲み出て、第1面11aと第2面11bの両方に正極活物質層21を形成する。図1(d)に示すように、第1面11aに塗工されたペースト22は、第1エッジ領域12bとの境界をなす第1側縁13aから第1エッジ領域12bにはみ出さず、第2エッジ領域12cにおいて、第2エッジ領域12cとの境界をなす第2側縁13bから第2エッジ領域12cにはみ出す。
【0020】
ここで図2を参照して、正極板10における第1エッジ領域12bの周辺領域を詳述する。中央領域12aの第1面11aにおいて、実際に吐出されたペースト22の接触位置の端は、中央領域12aの第1側縁13aよりも中央位置Cの方向に偏って(図2中左側)位置する。その後、ペースト22は、第1面11aから第2面11bの方向に浸透するうちに正極活物質の密度が疎となっていく。ペースト22は、第1エッジ領域12bにははみ出さないようにする。以下、中央領域12aにおける第1側縁13aに沿う密度が疎の部分を第1部分14aという。第1部分14aは、中央領域12aと第1エッジ領域12bとの境界に向かうほど順次密度が疎となっていく。一例として、実際に吐出されたペースト22の接触位置の端から第1部分14aは始まり、接触位置の端から離れるほど密度は疎となっていく。
【0021】
次に図3を参照して、正極板10における第2エッジ領域12cの周辺領域を詳述する。中央領域12aの第1面11aにおいて、実際に吐出されたペースト22の接触位置の端は、中央領域12aの第2側縁13bよりも中央位置Cの方向に偏って(図2中右側)位置する。その後、ペースト22は、第1面11aから第2面11bの方向に浸透するうちに正極活物質の密度が疎となっていく。このとき、ペースト22は、第2側縁13bから第2エッジ領域12cにはみ出す。第2エッジ領域12cには、中央領域12aの第2側縁13bに隣接する部分にも密度が疎の正極活物質層21が設けられることになる。以下、中央領域12aにおける第2側縁13bに沿う密度が疎の部分を第2部分14bという。また、第2エッジ領域12cにはみ出した密度が疎の部分を第3部分14cという。第2部分14bおよび第3部分14cは連続した領域である。そして、連続する第2エッジ領域12cおよび第3部分14cは、第2エッジ領域12cの先端に向かうほど順次密度が疎となっていく。一例として、実際に吐出されたペースト22の接触位置の端から第2部分14bは始まり、接触位置の端から離れるほど密度は疎となっていき、第3部分14cの先端が最も疎となる。
【0022】
また、第1部分14aおとび第2部分14bの間は、ペースト22の接触位置であり、密度は、密の状態で一定である。
なお、第1部分14a並びに第2部分14bおよび第3部分14cの密度は、ペースト22の吐出幅や吐出位置、さらにペースト22の粘度などに調整される。ここでは、ペースト22の粘度は、せん断速度100以上、5000以下[S-1]において、50以上、500以下(mPa・s)であることが好ましい。
【0023】
次に、以上のように構成されたニッケル水素蓄電池の製造方法について説明する。
以上のように構成された正極板10は、負極板とセパレータを介して複数枚積層され電極群である積層体を構成する。積層体は、集電板に接続され、電解液とともに積層体を樹脂製の電槽内に収容される。具体的には、電槽に積層体を第1エッジ領域12b(リード部)および第2エッジ領域12c(エッジプレス部)が上下方向に延在するように挿入する。そして、蓋を装着した状態で上部の蓋注液口より電解液を注入する。注入された電解液は、上下方向に延在する第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cの位置に滞留する。特に、第2エッジ領域12cは、第1エッジ領域12bのように切欠部15が存在せず、極板の上部および下部まで延設しているので、電解液の浸透効果は大きくなる。
【0024】
以上のように製造されたニッケル水素蓄電池は次のような作用を有する。
正極活物質層21は、第1側縁13aに沿って位置する第1部分14aの密度が疎であり、当該部分が電解液が滞留する部分に位置する。さらに、第1部分14aは、基材11の低圧縮部分である。したがって、滞留する電解液は、第1部分14aを通じて正極板10の全体に浸透し易くなる。これにより、内部抵抗を良化することができる。
【0025】
また、正極活物質層21は、第2側縁13bに沿って位置する第2部分14bおよび第3部分14cの密度が疎であり、当該部分も電解液が滞留する部分に位置する。第2部分14bは、基材11の低圧縮部分である。したがって、滞留する電解液は、第2部分14bおよび第3部分14cを通じて正極板10の全体に浸透し易くなる。
【0026】
一例として、中央領域12aにおける第1エッジ領域12bと第2エッジ領域12cとの間の中央位置C、すなわち密度が最も密の部分から第1部分14aおよび第2部分14bの最も疎の部分までの密度の差は、3%から7%であることが好ましく、順次密度の差が大きくなっていくことが好ましい。
【0027】
第3部分14cは、第2エッジ領域12cにはみ出した部分であり、その分、正極活物質層21の拡張部分であり、負極板との対向面積が広くなる。第3部分14cは、発泡ニッケルの骨格がないため、電解液が浸透し易い部分となる。このため、内部抵抗を良化することができる。また、第3部分14cは、高圧縮部である第2エッジ領域12cおよび低圧縮部分である中央領域12aの段差部に設けられる。段差部には電解液が滞留し易いが、この段差部に第3部分14cが設けられることにより、第2部分14bに電解液を導き易くなる。
【0028】
一例として、第3部分14cは、0.1mm以上が好ましい。0.1mm以上あれば、第3部分14cの電解液の導き効果を十分に発揮することができる。また、第2エッジ領域12cにおいて、中央領域12aの第2側縁13bから第2エッジ領域12cの先端までの距離L1は、0.4mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、このような場合、第3部分14cにおける第2側縁13bから先端までの距離L2は、0.1mm以上、0.3mm以下であることが好ましい(図3参照)。なお、第3部分14cは、負極板との対向面積を増やす観点からできるだけ第2エッジ領域12cの先端の近くまではみ出していることが好ましい。
【0029】
特に、矩形形状の基材11において、X方向に延びる第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、Y方向の短辺に対して長辺である。したがって、正極活物質層21の疎の部分をY方向の短辺に設けた場合よりも滞留する電解液と接する面積を大きくでき、正極活物質層21に電解液をより浸透し易くできる。
【0030】
また、Y方向に延びる下側の短辺は、ケースに密着していて浸透しにくい。これに対して、X方向に延びる第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、ケースとの間に隙間があり、注液途中では、電解液も溜まった状態のため、電解液の浸透がし易い。
【0031】
さらに、第2エッジ領域12cの部分では、第2エッジ領域12c、すなわち高圧縮部を形成する際に金属多孔体の一部が突出することなどにより突起が発生することがあるが、このような場合であっても第3部分14cの突起を活物質層で覆うことができ内部短絡の発生を抑制できる。
【0032】
上記構成を採用したニッケル水素蓄電池の内部抵抗を、第1部分14a、第2部分14b及び第3部分14cを備えていないニッケル水素蓄電池(比較例)と比較した。具体的に、比較例のニッケル水素蓄電池は、基材11に対して中央領域12aの全体にペースト22を同じ密度となるように塗布したものである。この結果、本発明を適用したニッケル水素蓄電池は、比較例のニッケル水素蓄電池の内部抵抗を、「100%」としたとき1%良化することができた。また、上記構成を採用したニッケル水素蓄電池では、内部短絡不良率の発生を0にすることができた。
【0033】
以上説明したように、実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)正極活物質層21の密度は、中央領域12aおける第1側縁13aに沿う第1部分14a、ならびに、第2側縁13bに沿う第2部分14bおよび第2エッジ領域12cにはみ出した第3部分14cが、第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cのとの間の中央位置Cよりも疎である。第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、電槽内では、電解液が滞留する部分に位置する。したがって、電解液が第1部分14a、第2部分14bおよび第3部分14cを通じて正極板10の全体に浸透し易くなる。この結果、内部抵抗を良化することができる。
【0034】
(2)第3部分14cは、基材11である発泡ニッケルの骨格がないため、電解液が浸透し易い部分である。第2エッジ領域12cにはみ出した第3部分14cを備えるので、負極板との対向面積を増え、その結果、内部抵抗を良化することができる。
【0035】
(3)第2エッジ領域12cの部分では、第2エッジ領域12c、すなわち高圧縮部を形成する際に突起が発生することがあるが、このような場合であっても第3部分14cの突起を活物質層で覆うことができ内部短絡の発生を抑制できる。
【0036】
(4)第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cは、中央領域12aより薄いので、中央領域12aの第1側縁13aおよび/または第2側縁13bに加工時に突起が形成されることがあっても、突起が隣接する極板に接触して内部短絡することを防ぐことができる。
【0037】
(5)第1部分14aおよび第2部分14bは、低圧縮部である中央領域12aに位置するので、この点からも電解液が浸透し易くなり、その結果、内部抵抗を良化することができる。
【0038】
(6)第1エッジ領域12bは、電気を供給又は取り出すための外部端子が溶接されるリード部であるため、ペースト22が第1エッジ領域12bに塗工されると、溶接不良の可能性ある。第3部分14cは、第2エッジ領域12cに設けられるので、このようなおそれが生じなくなる。
【0039】
(7)第1エッジ領域12bは、位置決め孔16が存在し、位置決め棒により正極活物質を含むペースト22が脱落するおそれがある。第3部分14cは、第2エッジ領域12cに設けられるので、このようなおそれが生じなくなる。
【0040】
(8)第2エッジ領域12cは、第1エッジ領域12bのように切欠部15が存在せず、極板の上部および下部まで延設しているので、電解液の浸透効果は大きくなる。
(9)第3部分14cは、0.1mm以上が好ましい。0.1mm以上あれば、第3部分14cの電解液の導き効果を十分に発揮することができる。
【0041】
(10)中央領域12aの第2側縁13bから第2エッジ領域12cの先端までの距離L1が0.4mm以上、1.0mm以下の場合、第3部分14cにおける第2側縁13bから先端までの距離L2は、0.1mm以上、0.3mm以下とする。これにより、圧縮部を形成する際に突起が第2側縁13bに形成されることがあるが、第3部分14cによって、突起を活物質層で覆い内部短絡の発生を抑制できる。
【0042】
(11)ペースト22の粘度は、せん断速度100以上、5000以下[S-1]において、50以上、500以下(mPa・s)とすることで、基材11に第1部分14a、第2部分14bおよび第3部分14cを設けることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下の形態にて実施することもできる。
・ペースト22の粘度は、せん断速度100以上、5000以下[S-1]において、50以上、500以下(mPa・s)の範囲に限定されるものではない。
【0044】
・第2側縁に形成される突起を覆えるのではあれば、中央領域12aの第2側縁13bから第2エッジ領域12cの先端までの距離L1は、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲に限定されるものではない。また、第3部分14cにおける第2側縁13bから先端までの距離L2は、0.1mm以上、0.3mm以下の範囲に限定されるものではない。
【0045】
・中央領域12aの第2側縁13bから第2エッジ領域12cの先端までの距離L1は、第3部分14cによって、突起を活物質層で覆い内部短絡の発生を抑制できるのであれば、0.1mm未満であってもよい。
【0046】
・基材11は、中央領域12aと第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cを備えていれば、第1エッジ領域12bおよび第2エッジ領域12cが高圧縮部で構成されていなくてもよい。
【0047】
・活物質層のペースト22は、基材11の第1面11aおよび第2面11bに塗工するようにしてもよい。また、活物質層は基材11の第1面11aまたは第2面11bに設ける構成としてもよい。
【0048】
図3では、第3部分14cは、第2エッジ領域12cの両面に設けられているが、片面のみに設けられていてもよい。すなわち、第3部分14cは、第2エッジ領域12cの両面のうち少なくとも一方に設けられていればよい。
【0049】
・負極板との対向面積を増やす観点からは、ペースト22がエッジ領域にはみ出した部分は、第2エッジ領域12cだけでなく、第1エッジ領域12bにも設けられていてもよい。また、第1エッジ領域12bだけに設けるようにしてもよい。
【0050】
・本発明は、負極板の基材に塗布される負極材料の塗布構造にも適用可能である。
・上記実施形態は、二次電池の電極を、複数の正極板および複数の負極板をセパレータを介して交互に積層した電極群とした。これに代えて、電極群を、1枚の正極板及び1枚の負極板をセパレータを介して捲回した捲回型の電極群としてもよい。
【0051】
・以上のような電極を使用したニッケル水素蓄電池等の二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車用の電源として搭載することもできるし、小型情報処理装置などの小型電子機器の電源としても使用することができる。
【0052】
・本発明は、リチウムイオン蓄電池などの他の二次電池の正極や負極にも適用可能である。基材である金属多孔体は、主成分が金属であり且つ多数の孔を有していればよく、その材料及び構造は電池の種類に応じて変更できる。例えば、金属多孔体は、発泡ニッケルの他に、金属板を穿孔して多数の孔を形成したものであってもよく、金属からなる線材等を圧縮したものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…正極板
11…基材
11a…第1面
11b…第2面
12a…中央領域
12b…第1エッジ領域
12c…第2エッジ領域
13a…第1側縁
13b…第2側縁
14a…第1部分
14b…第2部分
14c…第3部分
21…正極活物質層
22…ペースト
23…ダイノズル
図1
図2
図3