(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128780
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 9/28 20210101AFI20220829BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220829BHJP
G03B 9/36 20210101ALI20220829BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G03B9/28 D
G03B17/02
G03B9/36 D
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027190
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】北條 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】古林 琢
(72)【発明者】
【氏名】大槻 智貴
【テーマコード(参考)】
2H081
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H081AA01
2H081BB39
2H081EE04
2H100CC07
2H100EE02
5C122EA41
5C122GE11
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャッターがカメラボディに与える振動に加振機を用いて単加振を加える撮像装置、撮像方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】撮像装置は、カメラボディ1と、カメラボディ1に対して支持部材64a~64dを介して光軸と交差する面内で移動可能に支持されるシャッター14と、カメラボディ1とシャッター14との間隔を変化させて、カメラボディ1に対してシャッター14を単加振させる加振機18と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディと、
前記カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持されるシャッターと、
前記カメラボディと前記シャッターとの間隔を変化させて、前記カメラボディに対して前記シャッターを単加振させる加振機と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
更に、プロセッサを備え、
前記シャッターは、先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含み、
前記プロセッサは、前記シャッター幕機構を駆動させて、撮像素子への露光を制御する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記加振機により、前記先幕が開く状態にて、前記先幕の開きの走行方向と同一方向になるように前記単加振させる請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
更に、前記カメラボディの振動を検出する振動検出部を備え、
前記プロセッサは、前記振動検出部の検出値に応じて、前記加振機の動作を制御する請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間以上であり、且つ前記先幕の開動作時における前記カメラボディの振動方向が前記先幕の開き方向と不一致の場合、前記振動検出部の前記検出値に基づいて、前記カメラボディの振動の位相をずらし、前記カメラボディの振動方向を前記先幕の開き方向と一致させるように、前記単加振させる請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間未満の場合、又は前記先幕の既定の開動作時における前記カメラボディの振動方向が前記先幕の開方向と一致の場合、前記加振機を不動作にする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記振動検出部の前記検出値に基づいて、前記先幕の開き開始又は前記後幕の閉じ開始のタイミングをずらす請求項4から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間以上であり、且つ前記先幕の既定の開動作時間における前記カメラボディの振動方向が前記先幕の開き方向と不一致の場合、前記振動検出部の前記検出値に基づいて、前記加振機による前記単加振を、前記先幕の既定の開動作までのいずれのタイミングで与えた状態において、前記カメラボディの振動方向を前記先幕の開方向に一致させることができない場合、前記先幕の既定の開動作の開始タイミングをずらし、ずらした前記先幕の開動作の開始タイミングにおいて、前記カメラボディの振動方向を前記先幕の開方向に一致させる請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記先幕の既定の開動作の開始タイミングをずらした場合には、前記シャッタースピードに応じた露光時間を保持するように前記前記後幕の開動作の開始タイミングをずらす請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、シャッタースピードが前記第1の時間よりも長い第2の時間以上であり、且つ前記後幕の既定の閉動作時における前記カメラボディの振動方向が前記後幕の閉め方向と不一致の場合、前記振動検出部の前記検出値に基づいて、前記後幕の既定の閉動作の開始タイミングをずらし、前記ずらした前記後幕の閉動作の開始タイミングにおいて、前記カメラボディの振動方向を前記後幕の閉方向に一致させる請求項8又は9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記振動検出部は、前記カメラボディの重心軸上に配置する請求項4から10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記加振機は、前記カメラボディと前記シャッターとを引き寄せる又は押し広げることにより、前記単加振させる請求項1から11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記加振機は、前記カメラボディに備え付けられたコイル及び前記シャッターに設けられる磁石で構成され、前記コイルに電流が流されることにより、前記シャッターが前記カメラボディに引き寄せられることにより、前記単加振させる請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記加振機は、前記シャッターの重心軸上に設けられる請求項1から13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
カメラボディと、前記カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持される先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含むシャッターと、前記カメラボディと前記シャッターとの間隔を変化させて、前記カメラボディに対して前記シャッターを単加振させる加振機と、前記カメラボディの振動を検出する振動検出部と、前記振動検出部の検出値に応じて、前記加振機の動作を制御するプロセッサと、を備える撮像装置の撮像方法であって、
前記プロセッサが、前記振動検出部の検出値に応じて、前記加振機の動作を制御し、かつ、前記加振機により、前記先幕が開く状態にて、前記先幕の開きの走行方向と同一方向になるように前記単加振させる工程を含む撮像方法。
【請求項16】
カメラボディと、前記カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持される先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含むシャッターと、前記カメラボディと前記シャッターとの間隔を変化させて、前記カメラボディに対して前記シャッターを単加振させる加振機と、前記カメラボディの振動を検出する振動検出部と、前記振動検出部の検出値に応じて、前記加振機の動作を制御するプロセッサと、を備える撮像装置に撮像方法を行わせるプログラムであって、
前記プロセッサが、前記振動検出部の検出値に応じて、前記加振機の動作を制御し、かつ、前記加振機により、前記先幕が開く時に、前記先幕の開きの走行方向と同一方向になるように前記単加振させる工程を行わせるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーカルプレーン式のシャッターを作動させた場合に発生する振動を抑制する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、フォーカルプレーン式のシャッターを作動させた場合に生じる振動を、カメラボディに配置されたダンパーで吸収する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術にかかる一つの実施形態は、シャッターがカメラボディに与える振動に加振機を用いて単加振を加える撮像装置、撮像方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様である撮像装置は、カメラボディと、カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持されるシャッターと、カメラボディとシャッターとの間隔を変化させて、カメラボディに対してシャッターを単加振させる加振機と、を備える。
【0007】
好ましくは、更に、プロセッサを備え、シャッターは、先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含み、プロセッサは、シャッター幕機構を駆動させて、撮像素子への露光を制御する。
【0008】
好ましくは、プロセッサは、加振機により、先幕が開く状態にて、先幕の開きの走行方向と同一方向になるように単加振させる。
【0009】
好ましくは、更に、カメラボディの振動を検出する振動検出部を備え、プロセッサは、振動検出部の検出値に応じて、加振機の動作を制御する。
【0010】
好ましくは、プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間以上であり、且つ先幕の開動作時におけるカメラボディの振動方向が先幕の開き方向と不一致の場合、振動検出部の検出値に基づいて、カメラボディの振動の位相をずらし、カメラボディの振動方向を先幕の開き方向と一致させるように、単加振させる。
【0011】
好ましくは、プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間未満の場合、又は先幕の既定の開動作時におけるカメラボディの振動方向が先幕の開方向と一致の場合、加振機を不動作にする。
【0012】
好ましくは、プロセッサは、振動検出部の検出値に基づいて、先幕の開き開始又は後幕の閉じ開始のタイミングをずらす。
【0013】
好ましくは、プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間以上であり、且つ先幕の既定の開動作時間におけるカメラボディの振動方向が先幕の開き方向と不一致の場合、振動検出部の検出値に基づいて、加振機による単加振を、先幕の既定の開動作までのいずれのタイミングで与えた状態において、カメラボディの振動方向を先幕の開方向に一致させることができない場合、先幕の既定の開動作の開始タイミングをずらし、ずらした先幕の開動作の開始タイミングにおいて、カメラボディの振動方向を先幕の開方向に一致させる。
【0014】
好ましくは、プロセッサは、先幕の既定の開動作の開始タイミングをずらした場合には、シャッタースピードに応じた露光時間を保持するように後幕の開動作の開始タイミングをずらす。
【0015】
好ましくは、プロセッサは、シャッタースピードが第1の時間よりも長い第2の時間以上であり、且つ後幕の既定の閉動作時におけるカメラボディの振動方向が後幕の閉め方向と不一致の場合、振動検出部の検出値に基づいて、後幕の既定の閉動作の開始タイミングをずらし、ずらした後幕の閉動作の開始タイミングにおいて、カメラボディの振動方向を後幕の閉方向に一致させる。
【0016】
好ましくは、振動検出部は、カメラボディの重心軸上に配置する。
【0017】
好ましくは、加振機は、カメラボディとシャッターとを引き寄せる又は押し広げることにより、単加振させる。
【0018】
好ましくは、加振機は、カメラボディに備え付けられたコイル及びシャッターに設けられる磁石で構成され、コイルに電流が流されることにより、シャッターがカメラボディに引き寄せられることにより、単加振させる。
【0019】
好ましくは、加振機は、シャッターの重心軸上に設けられる。
【0020】
本発明の他の態様である撮像方法は、カメラボディと、カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持される先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含むシャッターと、カメラボディとシャッターとの間隔を変化させて、カメラボディに対してシャッターを単加振させる加振機と、カメラボディの振動を検出する振動検出部と、振動検出部の検出値に応じて、加振機の動作を制御するプロセッサと、を備える撮像装置の撮像方法であって、プロセッサが、振動検出部の検出値に応じて、加振機の動作を制御し、かつ、加振機により、先幕が開く状態にて、先幕の開きの走行方向と同一方向になるように単加振させる工程を含む。
【0021】
本発明の他の態様であるプログラムは、カメラボディと、カメラボディに対して支持部材を介して光軸と交差する面内で移動可能に支持される先幕及び後幕の走行により開閉させるシャッター幕機構を含むシャッターと、カメラボディとシャッターとの間隔を変化させて、カメラボディに対してシャッターを単加振させる加振機と、カメラボディの振動を検出する振動検出部と、振動検出部の検出値に応じて、加振機の動作を制御するプロセッサと、を備える撮像装置に撮像方法を行わせるプログラムであって、プロセッサが、振動検出部の検出値に応じて、加振機の動作を制御し、かつ、加振機により、先幕が開く時に、先幕の開きの走行方向と同一方向になるように単加振させる工程を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、プロセッサの本実施形態に関連する主な機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、撮像装置のカメラボディにおけるシャッターの取り付け配置に関して説明した図である。
【
図4】
図4は、シャッターの先幕及び後幕の開閉における幕の走行方向を示す図である。
【
図5】
図5は、シャッターの先幕閉じ工程、先幕開き工程、後幕閉じ工程におけるカメラボディのy方向の変位を示す図である。
【
図6】
図6は、先幕閉じ工程、先幕開き工程、及び後幕閉じ工程における撮像装置の動作のタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、カメラボディのy方向の変位を示す図である。
【
図8】
図8は、カメラボディのy方向の変位を示す図である。
【
図9】
図9は、撮像装置を用いた撮像方法を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、本実施形態のプロセッサの機能ブロックを示す図である。
【
図11】
図11は、カメラボディのy方向の変位を示す図である。
【
図12】
図12は、カメラボディのy方向の変位を示す図である。
【
図13】
図13は、撮像装置を用いた撮像方法を示すフロー図である。
【
図14】
図14は、撮像装置を用いた撮像方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に係る撮像装置、撮像方法、及びプログラムの好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【0025】
撮像装置10は、撮像した画像をメモリカード54に記録するもので、装置全体の動作は、プロセッサ(中央処理装置:CPU:Central Processing Unit)40によって統括制御される。
【0026】
撮像装置10には、シャッターボタン、電源/モードスイッチ、モードダイヤル、十字操作ボタン、等の操作部38が設けられている。この操作部38からの信号(指令)はプロセッサ40に入力される。プロセッサ40は、入力信号に基づいて撮像装置10の各回路を制御し、シャッター(フォーカルプレーン式シャッターユニット)14が備えるシャッター幕機構の駆動制御、撮像素子16の駆動制御、レンズ駆動制御、絞り駆動制御、撮像動作制御、画像処理制御、画像データの記録/再生制御、及び、画像モニタ30の表示制御などを行う。
【0027】
撮影レンズ装置12を通過した光束は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のカラーイメージセンサである撮像素子16に結像される。なお、撮像素子16は、CMOS型に限らず、CCD(Charge Coupled Device)型、又は有機撮像素子など他の形式のイメージセンサでもよい。
【0028】
撮像素子16は、多数の受光素子(例えばフォトダイオード)が2次元配列されており、各受光素子の受光面に結像された被写体像は、その入射光量に応じた量の信号電圧(又は電荷)に変換(光電変換)され、撮像素子16内のA/D(Analog/Digital)変換器を介してデジタル信号に変換されて出力される。
【0029】
動画又は静止画の撮影時に撮像素子16から読み出された画像信号(画像データ)は、画像入力コントローラ22を介してメモリ(SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory))48に一時的に記憶される。
【0030】
また、フラッシュメモリ(Flash Memory)47は、カメラ制御プログラム、画像処理等に使用する各種のパラメータやテーブルが記憶されている。
【0031】
シャッター14は、フォーカルプレーン式のシャッターユニットである。シャッター14は、先幕及び後幕で構成されるシャッター幕機構を有し、シャッター幕機構の開閉動作により撮像素子16への露光を制御する。シャッター14のシャッター幕機構の駆動制御はプロセッサ40(シャッター幕機構制御部40D)により行われる。例えば、操作部38の一部であるシャッターボタンが押下されることにより、プロセッサ40はシャッター14のシャッター幕機構を制御して予め設定されているシャッタースピードに応じた時間の露光を行う。
【0032】
加振機18は、単加振(又は単衝撃)を加えることにより、カメラボディ1(
図3参照)を振動させる。また、カメラボディ1が振動している場合に、加振機18により単加振を加えることにより、カメラボディ1の振動の位相をずらす。加振機18は、様々な手法により、カメラボディ1に単加振させることができる。例えば加振機18は、カメラボディ1とシャッター14との間隔を変化させることにより、カメラボディ1に対してシャッター14を単加振させる。
【0033】
振動検出部20は、カメラボディ1の振動を検出する。振動検出部20は例えば、加速度センサで構成される。振動検出部20で検出された検出値はプロセッサ40に送られ、プロセッサ40は検出値に基づいて制御を行う。
【0034】
画像処理部24は、動画又は静止画の撮影時に画像入力コントローラ22を介して取得され、メモリ48に一時的に記憶された未処理の画像データを読み出す。画像処理部24は、読み出した画像データに対してオフセット処理、画素補間処理、ホワイトバランス補正、感度補正を含むゲインコントロール処理、ガンマ補正処理、同時化処理(「デモザイク処理」ともいう)、輝度及び色差信号生成処理、輪郭強調処理、及び色補正等を行う。画像処理部24により処理された画像データであって、ライブビュー画像として処理された画像データは、VRAM(Video RAM Random access memory)50に入力される。
【0035】
VRAM50から読み出された画像データは、ビデオエンコーダ28においてエンコーディングされ、カメラ背面に設けられている画像モニタ30に出力される。これにより、被写体像を示すライブビュー画像が画像モニタ30に表示される。
【0036】
画像処理部24により処理された画像データであって、記録用の静止画又は動画として処理された画像データは、再びメモリ48に記憶される。
【0037】
圧縮伸張処理部26は、静止画又は動画の記録時に、画像処理部24により処理され、メモリ48に格納された輝度データ(Y)及び色差データ(Cb)、(Cr)に対して圧縮処理を施す。圧縮された圧縮画像データは、メディアコントローラ52を介してメモリカード54に記録される。
【0038】
また、圧縮伸張処理部26は、再生モード時にメディアコントローラ52を介してメモリカード54から得た圧縮画像データに対して伸張処理を施す。メディアコントローラ52は、メモリカード54に対する圧縮画像データの記録及び読み出しなどを行う。
【0039】
プロセッサ(processing unit)40は、各種の処理を実行する。プロセッサのハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0040】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0041】
図2は、プロセッサ40の本実施形態に関連する主な機能を示すブロック図である。
【0042】
プロセッサ40は、シャッタースピード判定部40A、カメラボディ周期検出部40B、加振機制御部40C、及びシャッター幕機構制御部40Dを備える。シャッタースピード判定部40Aは操作部38等で設定されたシャッタースピードが第1の時間又は第2時間以上であるか否かの判定を行う。ここで第1の時間はシャッタースピードが低速であるか否かを判定する閾値である。また、第2の時間は、第1の時間よりも長く、よりシャッタースピード低速であるか否かを判定する閾値である。カメラボディ周期検出部40Bは、振動検出部20が出力する検出値に基づいて、シャッター14の振動の周期を検出する。加振機制御部40Cは、加振機18を制御し、シャッター14に単加振を加える。シャッター幕機構制御部40Dは、先幕及び後幕の開閉動作の制御を行う。
【0043】
図3は、撮像装置10のカメラボディ1におけるシャッター14の取り付け配置に関して説明した図である。なお、
図3では、シャッター14の取り付け配置に関して示すために、カメラボディ1の一部を省略して図示している。具体的には、
図3ではカメラボディ1の前カバー部材のみ示し、その他のカメラボディ1を構成する部材(例えば後カバー部材など)を省略している。ここで、カメラボディ1とは、全カメラ構成から撮像素子16、IBIS(in-body image stabilization:手振れ補正機構)、シャッター14を取り除いたものである。
【0044】
シャッター14は、カメラボディ1に図示するように配置される。シャッター14は、支持部材64a~64dを介してカメラボディ1に取り付けられている。支持部材64a~64dは弾性体である。弾性体は、例えばバネなどで構成されている。シャッター14は、支持部材64a~64d及び可動域規制用の部材(不図示)を介して、光軸Lと交差する面内で自由に移動可能に(フローティング状態)支持されている。好ましくは、シャッター14は、光軸Lと直交する面内で自由に移動可能に支持されている。なおシャッター14は、ケラレが発生しない範囲で可動域が規制されている。シャッター14は、前述したように光軸Lと交差する面内で自由に移動可能に支持されているために、シャッター幕機構が作動することにより、図示したy方向のプラス方向又はマイナス方向へ振動する。なお、撮像装置10を横位置での撮影状態に設置した場合には、図示したy方向のプラス方向は逆鉛直方向であり、マイナス方向は鉛直方向を示す。また、以下ではy方向のプラス方向を単にプラス方向と記載し、y方向のマイナス方向を単にマイナス方向と記載する。
【0045】
シャッター14は、開口66を備え、後で説明するシャッター幕機構で開口66を開閉させることにより、開口66に合わせて配置されている撮像素子16への露光を制御する。
【0046】
また、シャッター14には、シャッター14の重心62の軸上に加振機18が設けられている。加振機18は、カメラボディ1とシャッター14とに跨いで配置される。加振機18は、カメラ構成の中でも比較的大きな質量を有するシャッター14をカウンターウェイトとして重心軸上から加振することで、カメラボディ1の振動の位相を効率的にずらす(変化させる)ことができる。なお、本例ではシャッター14の重心62の軸上に加振機18を設けたがこれに限定されない。加振機18は、カメラボディ1の振動の位相を変化させることができればよく、配置場所は限定されない。また、低速シャッタースピード(例えば1/125秒)の場合には連写時にシャッター14が不安定(発振)になる可能性は低く、例えば連写時でも加振機18により単加振を与えても不安定になることはないと考えられる。
【0047】
振動検出部20は、カメラボディ1の重心60の軸上に設けられている。振動検出部20は、カメラボディ1の重心の軸上に設けられることにより、正確にカメラボディ1の振動を検出することができる。なお、本例ではカメラボディ1の重心60の軸上に振動検出部20を設けたがこれに限定されない。振動検出部20は、カメラボディ1の振動を検出することができればよく、配置場所は特に限定されない。
【0048】
図4は、シャッター14の先幕及び後幕の開閉における幕の走行方向を示す図である。なお
図3及び
図4で示すy方向は共通している。
【0049】
図4は、シャッター14のシャッター幕機構における幕走行を示した模式図である。
図4では、上段、中段、下段のそれぞれで、先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、及び後幕閉じ工程Cの先幕又は後幕の走行が開始から終了まで時系列的に示されている。
【0050】
先幕閉じ工程Aでは、開始時に開口66は開放状態である。例えば、先幕閉じ工程Aが開始される前では、開口66が開放状態にありライブビュー画像が取得されている。先幕閉じ工程Aが開始されると、先幕70はプラス方向へ走行を開始し、開口66は徐々に閉じられる。そして先幕閉じ工程Aの終了時には、開口66は先幕70により完全に閉じられる。このように先幕閉じ工程Aは、先幕70が開口66を閉じ、露光(本露光)の準備が行われる。
【0051】
先幕開き工程Bでは、開始時に開口66は先幕70により閉じられた状態である。その後、先幕70はマイナス方向へ走行し、開口66が徐々に開かれる。そして、先幕開き工程Bの終了時には、開口66は開放状態となる。このように、先幕開き工程Bでは、開口66が開かれ、本撮影のための露光が開始される。
【0052】
後幕閉じ工程Cでは、開始時に開口66は開放状態であり、本撮影の露光が行われている状態である。その後、後幕72はマイナス方向へ走行し、開口66を閉じていく。そして後幕閉じ工程Cの終了時には、開口66は後幕72により閉じられた状態となる。このように後幕閉じ工程Cでは、後幕72が開口66を閉じ、本撮影の露光が終了する。
【0053】
以上で説明したように、シャッター14は、先幕70及び後幕72により開口66を開閉させて撮像素子16への露光を制御する。そして、このように先幕70及び後幕72を走行させることにより、シャッター14が振動する。以下にシャッター14の振動の具体例を説明する。
【0054】
図5は、シャッター14の先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、後幕閉じ工程Cにおけるカメラボディ1のy方向の変位を示す図である。なお、
図5は、シャッタースピードが1/8秒であり、カメラボディ1に装着されるレンズに三脚座を取り付けて三脚で横位置に固定した場合の、縦軸がカメラボディ1のy方向の変位を示し、横軸は経過時間を示す。また、
図5で示すカメラボディ1のy方向の変位は、後で説明する加振機18での加振、先幕開き工程B及び後幕閉じ工程Cの開始のタイミングずらしなどを行わなかった場合のカメラボディ1のy方向の変位が示されている。このy方向の変位は、振動検出部20が出力する検出値に基づいて取得することができる。
【0055】
先幕閉じ工程Aの開始から終了までの間、先幕70が開口66を閉じる動作に応じて、カメラボディ1はマイナス方向に変位をする。その後、先幕70が開口66を閉じる(先幕閉じ工程Aの終了)のに対応して、カメラボディ1はプラス方向に大きく振動する。その後、カメラボディ1の振動は減衰しつつ先幕開き工程B及び後幕閉じ工程Cの幕走行によってカメラボディ1が加振される。このように、カメラボディ1は、先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、及び先幕閉じ工程Cの間に継続して振動する。カメラボディ1は露光時間の間であっても振動しており、この振動は撮像素子16の露光に影響を与える。具体的には、このようにカメラボディ1が振動する場合に単に撮影を行ってしまうと、撮像素子16にその振動が伝わってしまい解像度が劣化した撮影画像が得られる。本実施形態では、加振機18により単加振を加えることにより、カメラボディ1の振動の位相をずらし、先幕又は後幕の走行方向と一致させることにより撮影画像の解像度の劣化を抑制する。
【0056】
図6は、先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、及び後幕閉じ工程Cにおける撮像装置10の動作のタイミングチャートである。
【0057】
撮像装置10の撮影状態は、先幕閉じ工程Aの開始から先幕開き工程Bの開始まで露光準備を行い、先幕開き工程Bの開始から後幕閉じ工程Cの終了まで露光を行い、後幕閉じ工程Cの終了後に露光準備を行う。
【0058】
カメラボディ1は、先幕閉じ工程Aの開始から振動が開始される。その後、加振機18でカメラボディ1を加振し、先幕閉じ工程Aにより発生した振動の位相をずらす。その後、カメラボディ1は、先幕開き工程B及び後幕閉じ工程Cの幕駆動により加振及び/又は減振させられる。
【0059】
振動検出部(加速度センサ)20は、先幕閉じ工程Aの開始から先幕開き工程Bの開始までの時間をT1とすると、T1/2秒の間にカメラボディ1の振動を測定する。その後、カメラボディ周期検出部40Bは、振動検出部20の検出値に基づいて、カメラボディ1の振動周期を検出する。なお、T1の間にカメラボディ1の振動周期の測定(FFT解析)、加振ができれば良いので、カメラボディ1の振動周期の測定にかける時間は必ずしも、T1/2秒で無くてもよい。
【0060】
加振機18は、加振機制御部40Cの制御により、カメラボディ1の振動の周期に応じて、単加振をカメラボディ1に加える。この加振機18の単加振により、カメラボディ1の振動の位相が幕駆動の影響(シャッターショック)を抑制できるような位相に変更させる。ここで、幕駆動の影響を抑制できる位相とは、先幕が開く状態にて、先幕の開きの走行方向とカメラボディ1の振動方向とが一致する位相である。具体的には、先幕開き工程Bにおいては、先幕はマイナス方向に走行するので、カメラボディ1の振動方向もマイナスに振動するように位相をずらす。以下に、このように加振機18により単加振を加えて、カメラボディ1の位相をずらした場合のカメラボディ1のy方向の変位について説明する。
【0061】
図7及び
図8は、加振機18によりカメラボディ1の振動の位相を変化させた場合の、先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、後幕閉じ工程Cにおけるカメラボディ1のy方向の変位を示す図である。なお、実線L1(
図5で示した変位と同じ)では加振無しのカメラボディ1のy方向の変位を示し、点線L2では加振有りのカメラボディ1のy方向の変位を示す。
【0062】
図7に示すように、先幕閉じ工程Aが終了した後に、カメラボディ1はプラス方向に変位する。そして、カメラボディ1がプラス方向に変位している間に、加振機18によりマイナス方向に単加振させる。なお、加振機18によりマイナス方向に単加振させることにより、カメラボディ1の振動の振幅が、単加振させない場合(実線L1)よりも小さくすることができる。また、幕駆動による反力がカメラボディ1の振動を弱める方向に働く場合には、カメラボディ1の振動量を減少させることができる。これにより、カメラボディ1から撮像素子16に伝播する振動を減少させることができ、撮影画像のブレを抑制することができる。加振機18により加振された後は、カメラボディ1はマイナス方向及びプラス方向へ振動し、カメラボディ1がプラス方向へ変位している間に、シャッター14は先幕開き工程Bを開始する。
【0063】
図8は、
図7の先幕開き工程Bの開始時のカメラボディ1の変位の拡大図である。
【0064】
図8に示すように、加振を加えない場合(実線L1)には、先幕開き工程Bの開始時にはカメラボディ1の振動方向はプラス方向である。一方で、加振を加えた場合(点線L2)には、先幕開き工程Bの開始時にはカメラボディ1はマイナス方向に移動している。そして、先幕開き工程Bの先幕の走行方向もマイナス方向である。このように、カメラボディ1の振動方向と先幕の開きの走行方向とが一致することにより、カメラボディ1の振動の撮像素子16への影響を抑制することができ、撮影画像の解像度の劣化を抑制することができる。
【0065】
次に、本実施形態の撮像装置10を用いた撮像方法に関して説明する。
【0066】
図9は、撮像装置10を用いた撮像方法を示すフロー図である。なお、撮像方法は、撮像装置10のプロセッサ40がプログラムを実行することにより各工程が実行される。
【0067】
先ず、ユーザにより、操作部38のシャッターボタンが押される(ステップS110)。次に、シャッター幕機構制御部40Dは、操作部38からの信号に基づいてシャッター14を用いて先幕閉じ工程Aを開始する(ステップS111)。その後、シャッタースピード判定部40Aは、設定されたシャッタースピード(図中ではs.s.と記載)が低速シャッタースピードであるか否かを判定する。ここでは、シャッタースピード判定部40Aは、1/125秒(第1の時間)以上長いか否かを判定する(ステップS112)。ここで、設定されたシャッタースピードが1/125秒未満の場合には、加振機18により加振を行わずに、シャッター幕機構制御部40Dは既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始する(ステップS118)。これは、シャッタースピードが比較的短い場合には、カメラボディ1の振動の影響を受けにくく、既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始しても解像度が良い撮影画像を得ることができる。
【0068】
一方、設定されたシャッタースピード(s.s.)が1/125秒以上である場合には、カメラボディ周期検出部40Bは、先幕閉じ工程Aの開始からT1/2秒間のy方向変位記録をFFT(Fast Fourier Transform)解析し、最も振幅が大きい周波数をカメラボディ1の周波数として抽出する(ステップS113)。その後、カメラボディ周期検出部40Bは、求めた周波数から既定のタイミングの先幕開き工程Bにおけるカメラボディ1の振動方向がプラス方向であるか否か判定する(ステップS114)。そして、既定のタイミングの先幕開き工程Bの開始時におけるカメラボディ1の振動方向がプラス方向である場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始する。この場合には、加振機18は不動作である。
【0069】
一方、既定のタイミングの先幕開き工程Bの開始時におけるカメラボディ1の振動方向がプラス方向である場合には、加振機制御部40Cは、先幕開き工程Bにおけるカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるように加振機18により単加振を加え、カメラボディ1の振動の位相をずらす(ステップS115)。そして、シャッター幕機構制御部40Dは、先幕開き工程Bを開始する(ステップS115)。
【0070】
その後、シャッター幕機構制御部40Dは、既定のタイミングで後幕閉じ工程Cを開始する(ステップS116)。そして、後幕閉じCが終了すると、露光が終了する(ステップS117)。
【0071】
以上で説明したように、本実施形態によれば、加振機18により単加振を加え、カメラボディ1の振動方向と先幕開き工程Bの先幕の走行方向とが一致させている。これにより、カメラボディ1の振動の撮像素子16への影響が抑制され、得られる撮影画像の解像度の劣化を抑制することができる。
【0072】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に関して説明する。本実施形態では、カメラボディ1の振動方向の向きに応じて、先幕開き工程Bのタイミング及び後幕閉じ工程Cのタイミングをずらし、幕の走行方向とカメラボディ1の振動方向とを一致させる。ここで、タイミングをずらすとは、タイミングを変更することであり、既定のタイミング以前又は以後にタイミングを変更することである。
【0073】
図10は、先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、及び後幕閉じ工程Cにおける撮像装置10の動作のタイミングチャートである。
【0074】
撮像装置10の撮影状態は、先幕閉じ工程Aの開始から先幕開き工程Bの開始まで露光準備を行い、先幕開き工程Bの開始から後幕閉じ工程Cの終了まで露光を行い、後幕閉じ工程Cの終了後に露光準備を行う。
【0075】
カメラボディ1は、先幕閉じ工程Aの開始から振動が開始される。その後、加振機18でカメラボディ1を加振し、先幕閉じ工程Aにより発生した振動の位相をずらす。その後、カメラボディ1は、先幕開き工程B及び後幕閉じ工程Cの幕駆動により加振及び/又は減振させられる。
【0076】
振動検出部(加速度センサ)20は、先幕閉じ工程Aの開始から先幕開き工程Bの開始までの時間をT1とすると、T1/2秒の間にカメラボディ1の振動を測定する。その後、カメラボディ周期検出部40Bは、振動検出部20の検出値に基づいて、カメラボディ1の振動周期を検出する。また、振動検出部20は、先幕開き工程Bの開始から後幕閉じ工程Cの開始までの時間をT2とすると、T2/2秒の間にカメラボディ1の振動を測定する。その後、カメラボディ周期検出部40Bは、振動検出部20の検出値に基づいて、カメラボディ1の振動周期を検出する。
【0077】
加振機18は、加振機制御部40Cの制御により、カメラボディ周期検出部40Bが検出したカメラボディ1の振動の周期に応じて、単加振をカメラボディ1に加える。
【0078】
カメラボディ周期検出部40Bは、既定のタイミングの先幕開き工程Bの開始までの任意のタイミングで単加振を加えた場合に、カメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるか判定される。そして、単加振を加えた場合であってもカメラボディ1の振動方向がマイナス方向とならないと判定された場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、単加振を加えることなく、先幕開き工程Bの開始のタイミングをずらす。これにより、加振機18により単加振を加えても、カメラボディ1の振動方向をマイナス方向とすることができない場合であっても、先幕の走行方向とカメラボディ1の振動方向とを一致(この場合はマイナス方向に一致)させることができる。
【0079】
また、シャッター幕機構制御部40Dは、後幕閉じ工程Cから露光時間許容誤差の範囲内でカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる領域が存在する場合には、後幕閉じ工程Cの開始タイミングをカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる領域までずらす。これにより、後幕の走行方向とカメラボディ1の振動方向とを一致(この場合はマイナス方向に一致)させることができる。このように、先幕開き工程Bの開始、又は後幕閉じ工程Cの開始のタイミングをずらすことで、カメラボディ1の振動方向と幕の走行方向とを一致させることができ、カメラボディ1の振動の撮像素子16への影響を抑制し、撮影画像の解像度の劣化を抑制することができる。なお、上述した先幕開き工程Bの開始、又は後幕閉じ工程Cの開始のタイミングをずらす場合には、予め設定された露光時間に対する影響を抑制する範囲内(露光時間許容誤差の範囲内)でずらすことが好ましい。具体的には、比較的長い露光時間(例えば後で説明する第2の時間以上)において、短時間の範囲でタイミングをずらすことにより、露光時間への影響を抑制することができる。なお、T2の間にカメラボディ1の振動周期の測定(FFT解析)、幕走行タイミングの変更ができれば良いので、カメラボディ1の振動周期の測定にかける時間は必ずしも、T2/2秒で無くてもよい。以下に、このように先幕開き工程Bの開始のタイミングをずらした場合のカメラボディ1のy方向の変位について説明する。
【0080】
図11及び
図12は、先幕開き工程Bの開始のタイミングをずらした場合の、シャッター14の先幕閉じ工程A、先幕開き工程B、後幕閉じ工程Cにおけるカメラボディ1のy方向の変位を示す図である。なお、実線L1ではタイミングずらし無しのカメラボディ1のy方向の変位を示し、点線L2ではタイミングずらし有りのカメラボディ1のy方向の変位を示す。
【0081】
図11に示すように、先幕開き工程Bの開始タイミングを既定値から0.005秒ずらした場合では、ずらさなかった場合よりも先幕開き工程B後のy方向のカメラボディ1の振れ幅が小さくなっている。これは、幕駆動による反力がカメラボディ1の振動を弱める方向に働き、カメラボディ1の振動量が減少するからである。これにより、カメラボディ1から撮像素子16に伝わる振動を抑制することができる。
【0082】
図12は、
図11の先幕開き工程Bの開始時のカメラボディ1の変位の拡大図である。
【0083】
図12に示すように、先幕開き工程Bの開始タイミングずらしがない場合、すなわち既定のタイミングでの先幕開き工程Bの開始にはカメラボディ1の振動方向がプラス方向となっている。この場合、先幕開き工程Bにおける先幕の走行方向とカメラボディ1の振動方向とが異なる。一方、先幕開き工程Bの開始タイミングが既定値よりも0.005秒後にずらされた場合には、先幕開き工程Bの開始時にカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる。この場合、先幕開き工程Bにおける先幕の走行方向とカメラボディ1の振動方向とが一致することになる。
【0084】
次に、本実施形態の撮像装置10を用いた撮像方法に関して説明する。
【0085】
図13及び
図14は、撮像装置10を用いた撮像方法を示すフロー図である。なお、撮像方法は、撮像装置10のプロセッサ40がプログラムを実行することにより各工程が実行される。
【0086】
先ず、ユーザにより、操作部38のシャッターボタンが押される(ステップS210)。次に、シャッター幕機構制御部40Dは、操作部38からの信号に基づいてシャッター14を用いて先幕閉じ工程Aを開始する(ステップS211)。その後、シャッタースピード判定部40Aは、設定されたシャッタースピード(図中ではs.s.と記載)が1/125秒以上長いか否かを判定する(ステップS212)。ここで、設定されたシャッタースピードが1/125より短い場合には、加振機18により加振を行わずに、シャッター幕機構制御部40Dは既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始する(ステップS217)。これは、シャッタースピードが比較的短い場合には、カメラボディ1の振動の影響を受けにくく、既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始しても解像度が良い撮影画像を得ることができる。
【0087】
一方、設定されたシャッタースピード(s.s.)が1/125秒以上である場合には、カメラボディ周期検出部40Bは、先幕閉じ工程Aの開始からT1/2秒間のy方向変位記録をFFT解析し、最も振幅が大きい周波数をカメラボディ1の周波数として抽出する(ステップS213)。その後、カメラボディ周期検出部40Bは、求めた周波数から既定のタイミングの先幕開き工程Bにおけるカメラボディ1の振動方向がプラス方向であるか否か判定する(ステップS214)。そして、既定のタイミングの先幕開き工程Bの開始時におけるカメラボディ1の振動方向がマイナス方向である場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、既定のタイミングで先幕開き工程Bを開始する(ステップS217)。
【0088】
一方、求めた周波数から先幕開き工程Bの開始時におけるカメラボディ1の振動方向がプラス方向である場合には、カメラボディ周期検出部40Bにより、先幕開き工程Bの開始までの任意のタイミングで単加振を加えた場合に、先幕開き工程Bの開始時のカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるか否かが判定される(ステップS215)。単加振を加えても、先幕開き工程Bの開始時のカメラボディ1の振動方向がマイナス方向とならないと判定された場合には、加振機18を不動作とし、シャッター幕機構制御部40Dは、カメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるタイミングまでずらして先幕開き工程Bを開始する(ステップS218)。
【0089】
一方、単加振を加えることにより、先幕開き工程Bの開始時のカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となると判定された場合には、先幕開き工程Bにおけるカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるように、加振機制御部40Cにより単加振を加える(ステップS216)。そして、カメラボディ1の振動周期をずらし、シャッター幕機構制御部40Dは先幕開き工程Bを開始する(ステップS216)。なお、この場合には、先幕開き工程Bの開始は既定のタイミングで行われる。
【0090】
次に
図14に示したフローチャートに続き、シャッタースピード判定部40Aは、設定されたシャッタースピードが非常に低速であるか否かを判定する。例えばシャッタースピード判定部40Aは、設定されたシャッタースピードが1/30秒(第2の時間)以上長いか否かを判定する(ステップS219)。そして、シャッタースピードが1/30秒より短い場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、既定のタイミングで後幕閉じ工程Cを開始する(ステップS224)。
【0091】
一方で、シャッタースピードが1/30秒以上長い場合には、カメラボディ周期検出部40Bは、先幕開き工程Bの開始からT2/2秒間のy方向の変位記録をFFT解析することにより、最も振幅が大きい周波数をカメラボディ1の周波数として抽出する(ステップS220)。その後、カメラボディ周期検出部40Bにより、後幕閉じ工程Cの開始タイミングから露光時間許容誤差の範囲内で、カメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる領域が存在するか否かが判定される(ステップS221)。後幕閉じ工程Cの開始タイミングから露光時間許容誤差の範囲内で、カメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる領域が無い場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、既定のタイミングで後幕閉じ工程Cを開始する(ステップS224)。一方、後幕閉じ工程Cの開始タイミングから露光時間許容誤差の範囲内で、カメラボディ1の振動方向がマイナス方向となる領域が存在する場合には、シャッター幕機構制御部40Dは、後幕閉じ工程Cのタイミングをカメラボディ1の振動方向がマイナス方向となるタイミングにずらす(ステップS222)。そして、後幕閉じ工程Cが終了すると、露光が終了する(ステップS223)。
【0092】
以上で説明したように、本実施形態においては、先幕開き工程Bの開始のタイミングをずらすことにより、カメラボディ1の振動方向と、先幕の走行方向とを一致させている。また、後幕閉じ工程Cの開始のタイミングをずらすことにより、カメラボディ1の振動方向と後幕の走行方向とを一致させている。これにより、カメラボディ1の振動の撮像素子16への影響を抑制し、撮影画像の解像度の劣化を抑制することができる。
【0093】
<その他>
次に加振機18の具体例を説明する。
【0094】
図15は、コイル及び磁石で構成される加振機18の具体例を示す図である。
【0095】
加振機18は、磁石18A及びコイル18Bで構成されている。この場合、磁石18Aはシャッター14に設けられ、重量のあるコイル18Bはカメラボディ1に設けられる。このように、加振機18は磁石18A及びコイル18Bの作用により、カメラボディ1とシャッター14とを引き寄せたり又は押し広げたりして、シャッター14に単加振を加える。具体的には、加振機18は、コイル18Bに電流が流されることにより、カメラボディ1とシャッター14とを引き寄せ、シャッター14に単加振を加えることができる。このように、磁石18A及びコイル18Bで構成された加振機18によれば、省スペースでy方向にカメラボディ1への単加振を与えることができる。なお、他の加振機18の具体例としては、ソレノイド(プランジャー)や圧電アクチュエータでシャッター14とカメラボディ1との間に引っ張り又は突き出し方向の単加振を与える加振機18が挙げられる。
【0096】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
1 :カメラボディ
10 :撮像装置
12 :撮影レンズ装置
14 :シャッター
16 :撮像素子
18 :加振機
20 :振動検出部
22 :画像入力コントローラ
24 :画像処理部
26 :圧縮伸張処理部
28 :ビデオエンコーダ
30 :画像モニタ
38 :操作部
40 :プロセッサ
48 :メモリ
52 :メディアコントローラ
54 :メモリカード
L :光軸