IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128920
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ブロックポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
C08G81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027397
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺西 覚
【テーマコード(参考)】
4J031
【Fターム(参考)】
4J031AA12
4J031AB02
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE04
4J031AE15
4J031AF10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、熱可塑性樹脂、とりわけポリオレフィン樹脂に優れた機械的強度を付与するブロックポリマーを提供する。
【解決手段】 下記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造を構成単位として少なくとも2個有し、前記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造が下記結合剤(γ)を介して結合した構造であるブロックポリマー(X)。ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが65~100%であって、数平均分子量が1,000~200,000; 結合剤(γ):不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、水酸基含有化合物(F)、エポキシ基含有化合物(P)、イソシアネート基含有化合物(L)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種;
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造を構成単位として少なくとも2個有し、前記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造が下記結合剤(γ)を介して結合した構造であるブロックポリマー(X)。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが65~100%であって、数平均分子量が1,000~200,000;
結合剤(γ):不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、水酸基含有化合物(F)、エポキシ基含有化合物(P)、イソシアネート基含有化合物(L)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種;
【請求項2】
数平均分子量が3,000~500,000である請求項1又は2記載のブロックポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(Y)とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物(Z)。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(Y)との重量比[(X)/(Y)]が、0.01/99.99~50/50である請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、フィラー(N1)を含有してなり、熱可塑性樹脂組成物の重量に基づいて、該フィラー(N1)の重量が3~50重量%である請求項3又は4記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物(Z)を成形した成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は成形性、剛性、電気絶縁性等に優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、その他さまざまな形状の成形品として幅広く汎用的に使用されている。また、ポリオレフィン樹脂向けに種々の改質剤の開発が行われており、顔料分散性や機械的強度の向上を目的として、低分子量ポリオレフィンを含有する改質剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-117362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術であっても、機械的強度については十分に満足できるものではなかった。本発明は、熱可塑性樹脂、とりわけポリオレフィン樹脂に優れた機械的強度を付与するブロックポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造を構成単位として少なくとも2個有し、前記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造が下記結合剤(γ)を介して結合した構造であるブロックポリマー(X)である。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが65~100%であって、数平均分子量が1,000~200,000;
結合剤(γ):不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、水酸基含有化合物(F)、エポキシ基含有化合物(P)、イソシアネート基含有化合物(L)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種;
【発明の効果】
【0006】
本発明のブロックポリマー(X)は以下の効果を奏する。
(1)熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度(引張強度、衝撃強度等)を付与する。
(2)リサイクルポリオレフィン樹脂(YR)に優れた機械的強度を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオレフィン(A)>
本発明におけるポリオレフィン(A)は、構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが65~100%であって、数平均分子量が1,000~200,000である。
【0008】
なお、以下では、「炭素数3~8のα-オレフィン」を「α-オレフィン」と記載することがある。
上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
上記α-オレフィンのうち、後述のアイソタクティシティー観点から、好ましいのはプロピレンである。
【0009】
上記ポリオレフィン(A)は、α-オレフィン以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。その場合、ポリオレフィン(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0010】
上記ポリオレフィン(A)を構成するその他の単量体としては、例えば、エチレン、2-ブテン、イソブテン、炭素数[以下、Cと略記することがある]9~30のα-オレフィン(1-デセン、1-ドデセン等)、α-オレフィン以外のC4~30の不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。
上記その他の単量体のうち、好ましいのはエチレンである。また、(A)のうち好ましいのはプロピレン/エチレン共重合体である。
【0011】
ポリオレフィン(A)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、機械的強度の観点から、好ましくは65~100%であり、さらに好ましくは75~100%であり、とくに好ましくは80~100%である。
上記ポリオレフィン(A)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーは、該(A)と後述の結合剤(γ)とが結合した酸変性ポリオレフィン(AE)、水酸基変性ポリオレフィン(AG)、アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)、エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)、イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)のα-オレフィン部分のアイソタクティシティーに、そのまま反映される傾向がある。
【0012】
上記アイソタクティシティーは、13C-NMR(核磁気共鳴分光法)を用いて算出することができる。一般的に、α-オレフィンがプロピレンの場合側鎖メチル基、α-オレフィンが1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンの場合主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基は、両隣(三連子、トリアッド)、その三連子の両隣(五連子、ペンタッド)、更にその五連子の両隣(七連子、ヘプタッド)程度まで立体配置(メソ又はラセモ)の影響を受け、異なる化学シフトにピークが観測されることが知られている。そのため、立体規則性の評価はペンタッドについて行うことが一般的であり、本発明におけるアイソタクティシティーも、ペンタッドの評価に基づいて算出する。
【0013】
即ち、α-オレフィンがプロピレンの場合は13C-NMRで得られるプロピレン中の側鎖メチル基由来の炭素ピークについて、α-オレフィンが1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンの場合は13C-NMRで得られるα-オレフィン中の主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基由来の炭素ピークについて、ポリオレフィン(A)のα-オレフィン部分のペンタッド各ピーク強度を(H)、ペンタッドがメソ構造のみで形成されるアイソタクティックのポリオレフィン中のα-オレフィンがプロピレンの場合メチル基、α-オレフィンが1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンの場合は13C-NMRで得られるα-オレフィン中の主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基由来のピーク強度を(Ha)とした場合、アイソタクティシティーは、以下の式で算出される。

アイソタクティシティー(%)=[(Ha)/Σ(H)]×100 (1)
【0014】
本発明におけるアイソタクティシティーの測定条件は以下の通りである。
・装置 : 日本電子(株)製 ECZ400R
・測定モード : プロトンデカップリング法
・パルス幅 : 8μsec
・パルス繰り返し時間 : 4.6sec
・緩和時間 : 3.0sec
・積算回数 : 10,000回
・溶媒 : オルトジクロロベンゼン
・基準物質 : テトラメチルシラン
・サンプル濃度 : 10mg/mL
・測定温度 : 120℃
【0015】
上記ポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度の観点から、好ましくは1,000~200,000、さらに好ましくは1,500~100,000、とくに好ましくは2,000~50,000である。
【0016】
本発明において数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定することができる。
本発明におけるGPCによるMnの測定条件は以下のとおりである。
・装置 : 高温ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[「AllianceGPCV2000」、Waters(株)製]
・検出装置 : 屈折率検出器
・溶媒 : オルトジクロロベンゼン
・基準物質 : ポリスチレン
・サンプル濃度 : 3mg/ml
・カラム固定相 : PLgel10μm、MIXED-B2本直列
[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
・カラム温度 : 135℃
【0017】
上記ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たりの二重結合数[ポリオレフィン(A)の分子末端及び/又は分子鎖中の炭素-炭素の二重結合数]は、後述のブロックポリマー(X)の生産性及び機械的強度の観点から、好ましくは0.2~20個であり、さらに好ましくは0.5~18個であり、さらに好ましくは1.0~15個である。
ここにおいて、該二重結合数は、ポリオレフィン(A)の1H-NMRのスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、ポリオレフィン(A)の4.5~6ppmにおける二重結合由来のピークの積分値及びポリオレフィン(A)由来のピークの積分値から、ポリオレフィン(A)の二重結合数とポリオレフィン(A)の炭素数の相対値を求め、ポリレフィン(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
【0018】
本発明におけるポリオレフィン(A)の製造方法はとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)高分子量(好ましくはMnが60,000~800,000、より好ましくはMnが80,000~250,000)ポリオレフィン(A0)を熱減成する方法
(2)α-オレフィンを重合触媒の存在下、重合する方法
【0019】
上記(1)~(2)のうち、生産性の観点から、好ましいのは(1)である。
【0020】
熱減成法には、上記高分子量ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば300~450℃で0.5~10時間、加熱する方法、及び(2)有機過酸化物[例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、例えば180~300℃で0.5~10時間、加熱する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点及びブロックポリマー(X)の生産性の観点から、分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法が好ましい。
【0021】
上記ポリオレフィン(A)では、熱減成工程における熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、炭素数1,000個当たりの二重結合数は、多くなる傾向がある。
さらに、高分子量ポリオレフィン(A0)のMnが小さい、熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、ポリオレフィン(A)のMnは小さくなる傾向がある。
また、高分子量ポリオレフィン(A0)のアイソタクティシティーが大きいほど、ポリオレフィン(A)のアイソタクティシティーが大きい傾向がある。
なお、ポリオレフィン(A)は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0022】
<ブロックポリマー(X)>
本発明のブロックポリマー(X)は、下記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造を構成単位として少なくとも2個有し、前記ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造が下記結合剤(γ)を介して結合した構造である。
ポリオレフィン(A):構成単量体として、炭素数3~8のα-オレフィンを含み、α-オレフィン部分のアイソタクティシティーが65~100%であって、数平均分子量が1,000~200,000;
結合剤(γ):不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、水酸基含有化合物(F)、エポキシ基含有化合物(P)、イソシアネート基含有化合物(L)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは少なくとも2種);
【0023】
また、本発明のブロックポリマー(X)は、後述の熱可塑性樹脂(Y)用の改質剤(とりわけポリオレフィン樹脂用改質剤)として有用であり、熱可塑性樹脂(Y)の機械的強度(引張強度、衝撃強度等)を向上させることができる。
すなわち、ブロックポリマー(X)は、前記ポリオレフィン(A)と、ポリオレフィン(A)とが、結合剤(γ)を介して結合したブロックポリマーである。
【0024】
ブロックポリマー(X)のMn(数平均分子量)は、機械的強度のバランスの観点から、好ましくは3,000~500,000、さらに好ましくは4,000~300,000、とくに好ましくは5,000~150,000である。
【0025】
また、ブロックポリマー(X)は、ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造と、ポリオレフィン(A)由来のポリオレフィン構造とが、下記結合剤(γ)を介して結合した構造である。
結合剤(γ):不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)、水酸基含有化合物(F)、エポキシ基含有化合物(P)、イソシアネート基含有化合物(L)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは少なくとも2種);
上記結合剤(γ)のうち、好ましいのは、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)[不飽和カルボン酸(無水物)(C)と記載することがある]と、水酸基含有化合物(F)及びアミノカルボン酸(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種との組み合わせである。
【0026】
ブロックポリマー(X)の構造は、下記(1)~(3)のいずれかであることが好ましい。さらに好ましいのは(1)、(2)、とくに好ましいのは(1)である。
(1):[(A)-(γ)]n-(A)型ブロックポリマー(n=1~6)
(2):[(A)-(γ)]n-(A)-(γ)型ブロックポリマー(n=1~6)
(3):(γ)-[(A)-(γ)]n-(A)-(γ)型ブロックポリマー(n=1~6)
また、上記(1)~(3)において、好ましくはn=1~2、さらに好ましくはn=1である。
【0027】
上記ブロックポリマー(X)のMn、ブロックポリマー(X)の構造は、(A)のMn、重量、後述の結合剤(γ)の種類、重量、反応条件により、適宜調整可能である。
【0028】
ブロックポリマー(X)の製造方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。
後述の酸変性ポリオレフィン(AE)、水酸基変性ポリオレフィン(AG)、アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)、イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)、エポキシ変基性ポリオレフィン(AQ)を、公知の条件で反応させる。
【0029】
例えば、酸変性ポリオレフィン(AE)は、ポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)との反応物であって、水酸基変性ポリオレフィン(AG)は、酸変性ポリオレフィン(AE)と水酸基含有化合物(F)または、ポリオレフィン(A)と水酸基含有化合物(F)との反応物であって、アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)は、酸変性ポリオレフィン(AE)とアミノカルボン酸(H)との反応物であって、イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)は、水酸基変性ポリオレフィン(AG)とイソシアネート基含有化合物(L)との反応物であって、エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)は、ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有化合物(P)との反応物である。
【0030】
すなわち、結合剤(γ)の組み合わせとしては、例えば、
(C)と(F)との組み合わせ、
(C)と(F)と(H)との組み合わせ、
(C)と(F)と(L)との組み合わせ、
(C)と(F)と(P)との組み合わせ、
(C)と(H)との組み合わせ、
(C)と(H)と(P)との組み合わせ、
(C)と(H)と(F)と(L)との組み合わせ、
(C)と(H)と(F)と(P)との組み合わせ、
(C)と(P)との組み合わせ、
(F)と(H)との組み合わせ、
(F)と(L)との組み合わせ、
(F)と(P)との組み合わせ、が挙げられる。
上記のうち、好ましいのは(C)と(F)と(H)との組み合わせである。
【0031】
前記ブロックポリマー(X)の製造方法としては、例えば以下のとおりである。
(1)酸変性ポリオレフィン(AE)と水酸基変性ポリオレフィン(AG)とを反応させる。ここではエステル結合が形成している。
(2)アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AE)と水酸基変性ポリオレフィン(AG)とを反応させる。ここではアミド結合及び/又はイミド結合とエステル結合とが形成している。
【0032】
(3)水酸基変性ポリオレフィン(AG)とイソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)とを反応させる。ここではアミド結合及び/又はイミド結合とウレタン結合とが形成している。
(4)酸変性ポリオレフィン(AE)とエポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)とを反応させる。ここではエステル結合が形成している。
【0033】
(5)アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AE)とエポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)とを反応させる。ここではアミド結合及び/又はイミド結合とエステル結合が形成している。
(6)水酸基変性ポリオレフィン(AE)とエポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)とを反応させる。ここではエーテル結合が形成している。
【0034】
<酸変性ポリオレフィン(AE)>
上記酸変性ポリオレフィン(AE)は、例えば、ポリオレフィン(A)と不飽和カルボン酸(無水物)(C)との反応物である。
上記反応において、ラジカル開始剤(f)(ジクミルパーオキサイド等)を使用してもよい。
【0035】
上記不飽和カルボン酸(無水物)(C)は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸及び/又は不飽和ポリカルボン酸無水物である。
上記不飽和カルボン酸(無水物)(C)は、重合性不飽和基を1個有する炭素数[Cと略記することがある]3~24のモノカルボン酸、重合性不飽和基を1個有するC4~24のポリカルボン酸及び/又は重合性不飽和基を1個有するC4~24のポリカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0036】
該不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(C)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(C3~24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有モノカルボン酸(C6~24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2~3又はそれ以上)カルボン酸又はその酸無水物としては、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物[脂肪族ジカルボン酸又はその酸無水物(C4~24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらの酸無水物)、脂環含有ジカルボン酸又はその酸無水物(C8~24、例えばシクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、及びこれらの酸無水物)等]等が挙げられる。不飽和カルボン酸(無水物)(C)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
【0037】
上記(ポリ)不飽和カルボン酸(無水物)(C)のうち、ポリオレフィン(A)との反応性及び機械的強度の観点から、好ましいのは不飽和ジカルボン酸無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0038】
酸変性ポリオレフィン(AE)の有する酸価(mgKOH/g)は、(X)の生産性の観点から、好ましくは1~100mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは3~75、とくに好ましくは5~50である。ここにおける酸価はJIS K0070に準じて測定される値である。
また、上記酸価は、ポリオレフィン(A)の有する二重結合量、ポリオレフィン(A)の重量、不飽和カルボン酸(無水物)(C)の種類、重量で適宜、調整可能である。
【0039】
<水酸基変性ポリオレフィン(AG)>
上記水酸基変性ポリオレフィン(AG)は、例えば、上記酸変性ポリオレフィン(AE)と水酸基含有化合物(F)との反応物、ポリオレフィン(A)と水酸基含有化合物(F)との反応物である。
【0040】
上記水酸基含有化合物(F)としては、分子内に少なくとも1個以上の水酸基を有しかつ、水酸基以外に酸変性ポリオレフィン(AE)またはポリオレフィン(A)と反応可能な官能基を有するものである。
水酸基含有化合物(F)としては、例えば、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、2-又は3-ヒドロピペラジン、2-、3-又は4-アミノシクロヘキサノール、2-、3-又は4-アミノフェノール、2-又は3-アミノ-p-クレゾール、2-又は4-アミノ-m-クレゾール、3-または4-アミノ-o-クレゾール、2-メルカプトエタノールが挙げられる。
上記(F)のうち、反応性の観点から、好ましいのは2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、2-メルカプトエタノールさらに好ましいのは2-アミノエタノール、2-メルカプトエタノールである。
【0041】
水酸基変性ポリオレフィン(AG)が有するそれぞれの水酸基価は、(X)の生産性の観点から、好ましくは1~100mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは3~75、とくに好ましくは5~50である。ここにおける水酸基価はJIS K0070に準じて測定される値である。
上記水酸基価は、例えば、前記酸変性ポリオレフィン(AE)、(BE)の種類、重量、水酸基含有化合物(F)の種類、重量により、適宜、調整可能である。
【0042】
<エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)>
上記エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)は、例えば、上記ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有化合物(P)との反応物である。
【0043】
前記エポキシ基含有化合物(P)としては、分子内に少なくとも1個以上のエポキシ基を有しかつ、エポキシ基以外にポリオレフィン(A)と反応可能な官能基を有するものである。
【0044】
上記エポキシ基含有化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0045】
エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ)の有するエポキシ当量(g/eq)は、(Q)の生産性の観点から、好ましくは500~100,000g/eq(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは650~50,000、とくに好ましくは800~20,000である。こここにおけるエポキシ当量はJIS K7236に準じて測定される値である。
上記エポキシ当量は、前記ポリオレフィン(A)の種類、重量、エポキシ基含有化合物(P)の種類、重量により、適宜、調製可能である。
【0046】
<イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)>
上記イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)は、例えば、上記水酸基変性ポリオレフィン(AG)とイソシアネート基含有化合物(L)との反応物である。
【0047】
前記イソシアネート基含有化合物(L)としては、分子内に少なくとも1個以上のイソシアネート基を有するものである。
上記イソシアネート基含有化合物(L)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM)の有するイソシアネート基含有率(重量%)は、(M)の生産性の観点から、好ましくは0.04~8.5%(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは0.08~6.0、とくに好ましくは0.2~5.0である。ここにおけるイソシアネート基含有率はJIS K1603に準じて測定される値である。
上記イソシアネート基含有率は、前記水酸基変性ポリオレフィン(AG)の種類、重量、イソシアネート基含有化合物(L)の種類、重量により、適宜、調製可能である。
【0049】
<アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)>
上記アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)は、例えば、上記酸変性ポリオレフィン(AE)とアミノカルボン酸(H)との反応物である。
【0050】
上記アミノカルボン酸(H)としては、例えば、12-アミノドデカン酸、6-アミノヘキサン酸が挙げられる。
【0051】
アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)の有する酸価(mgKOH/g)は、(X)の生産性の観点から、好ましくは1~100mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは3~75、とくに好ましくは5~50である。
上記酸価は、前記酸変性ポリオレフィン(AE)の種類、重量、アミノカルボン酸(H)の種類、重量により、適宜、調製可能である。
【0052】
本発明のブロックポリマーは、後述の熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度(引張強度、衝撃強度)を付与する。さらに、リサイクルポリオレフィン樹脂(YR)に優れた機械的強度を与える。
そのため、熱可塑性樹脂用改質剤、とりわけポリオレフィン樹脂用改質剤として好適に使用できる。
【0053】
<熱可塑性樹脂組成物(Z)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)は、上記ブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(Y)とを含有してなる。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)中のブロックポリマー(X)と熱可塑性樹脂(Y)との重量比[(X)/(Y)]は、ブロックポリマー(X)の改質特性及び後述する成形品の機械的強度の観点から、好ましくは0.01/99.99~50/50、さらに好ましくは1/99~30/70、とくに好ましくは3/97~20/80である。
【0055】
上記熱可塑性樹脂(Y)には、上記(X)以外のもの、例えば、ポリオレフィン樹脂[ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン]、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂が含まれる。
上記熱可塑性樹脂(Y)のうち、好ましいのはポリオレフィン樹脂である。
【0056】
なお、上述したように、熱可塑性樹脂(Y)として、リサイクルポリオレフィン樹脂(YR)も好適である。該(YR)としては、一度成形加工を施された後、破砕、粉砕、ペレット化等処理をされたポリオレフィン樹脂である。
【0057】
熱可塑性樹脂(Y)のMnは、成形品の機械的強度及び上記ブロックポリマー(X)との相溶性の観点から好ましくは10,000~500,000、より好ましくは20,000~400,000、さらに好ましくは80,000~300,000である。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)は、必要により本発明の効果を阻害しない範囲でさらに、フィラー(N1)、着色剤(N2)、艶消剤(N3)、帯電防止剤(N4)、分散剤(N5)、難燃剤(N6)、発泡剤(N7)、酸化防止剤(N8)、紫外線吸収剤(N9)および可塑剤(N10)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(N)を含有させることができる。
【0059】
上記フィラー(N1)としては、有機フィラー(例えば、木粉、セルロース)、無機フィラー(例えば、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭素繊維)が挙げられる。
これらのフィラー(N1)のうち、機械的強度の観点から、好ましいのは無機フィラー、さらに好ましいのは炭酸カルシウムである。 熱可塑性樹脂組成物(Z)の全重量に基づく(N1)の使用量は、例えば50重量%以下、好ましくは3~50重量%、さらに好ましくは5~40重量%である。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)中の(N2)~(N10)の合計使用量は、ブロックポリマー(X)の全重量に基づいて、例えば30重量%以下、(N)の機能発現および工業上の観点から好ましくは1~20重量%である。
【0061】
熱可塑性樹脂組成物(Z)の全重量に基づく、(N1)以外の各添加剤(N)の使用量は、(N2)は、例えば10重量%以下、好ましくは1~5重量%;(N3)は、例えば20重量%以下、好ましくは1~10重量%;(N4)は、例えば10重量%以下、好ましくは1~5重量%;(N5)は、例えば20%重量以下、好ましくは0~15重量%、さらに好ましくは0~10重量%;(N6)は、例えば15重量%以下、好ましくは3~10重量%;(N7)は、例えば1~20%重量以下、好ましくは5~15重量%;(N8)は、例えば3重量%以下、好ましくは0.01~1重量%;(N9)は、例えば3重量%以下、好ましくは0.01~1重量%;(N10)は、例えば20重量%以下、好ましくは5~15重量%である。
【0062】
なお、(N1)~(N10)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Z)の製造方法としては、
(1)熱可塑性樹脂(Y)及びブロックポリマー(X)の全量並びに必要により(N)を一括混合して樹脂組成物とする方法(一括法);
(2)熱可塑性樹脂(Y)の一部、ブロックポリマー(X)の全量、及び必要により添加剤(N)の一部もしくは全量を混合して高濃度のブロックポリマー(X)を含有するマスターバッチ樹脂組成物を一旦作成し、その後残りの熱可塑性樹脂(Y)及び必要により添加剤(N)の残りを加えて混合して樹脂組成物とする方法(マスターバッチ法)が挙げられる。
ブロックポリマー(X)の混合効率の観点から、好ましいのは(2)の方法である。
【0064】
<成形品>
本発明の成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形物である。すなわち本発明の成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物(Z)を成形したものである。
成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。成形品の形態としては、板状、シート状、フィルム、繊維(不織布等も含む)等が挙げられる。
【実施例0065】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を表す。実施例において、数平均分子量(Mn)、ポリオレフィンの二重結合量、アイソタクティシティー、酸価、水酸基価、エポキシ当量、イソシアネート基含有率は、上記の方法で測定した。
【0066】
<製造例1>
反応容器に、高分子量ポリオレフィン(A0-1)[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー製、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら350℃で15分間の条件で、熱減成を行い、ポリオレフィン(A-1)を得た。
なお、ポリオレフィン(A-1)のMnは30,000、炭素1,000個当たりの分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数は0.5個、アイソタクティシティーは95%であった。
【0067】
<製造例2~4>
表1に従って高分子量ポリオレフィン(A0)、温度、時間を変更した以外は、製造例1と同様に熱減成を行い、各ポリオレフィン(A)を得た。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<製造例5>
反応容器に、ポリオレフィン(A-1)100部、無水マレイン酸(C-1)1部を仕込み、窒素通気下、200℃まで加熱昇温して10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応の無水マレイン酸を留去して、酸変性ポリオレフィン(AE-1)を得た。
なお、酸変性ポリオレフィン(AE-1)は、酸価は2.0、Mnは30,100、アイソタクティシティーは95%であった。
【0070】
<製造例6~8>
表2に従って、ポリオレフィン(A)、不飽和カルボン酸(無水物)(C)、ラジカル開始剤(f)を変更した以外は、製造例5と同様に反応を行い、各酸変性ポリオレフィン(AE)を得た。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
<製造例9>
反応容器に、ポリオレフィン(A-1)100部、グリシジルメタクリレート(P-1)5部を仕込み、窒素通気下、200℃まで加熱昇温して10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応のグリシジルメタクリレートを留去して、エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ-1)を得た。
なお、エポキシ基変性ポリオレフィン(AQ-1)は、エポキシ当量は2, 200、Mnは3,200、アイソタクティシティーは90%であった。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
<製造例10>
反応容器に、酸変性ポリオレフィン(AE-1)100部、2-アミノエタノール(F-1)1部を仕込み、窒素通気下、180℃まで加熱昇温して10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)10時間撹拌を続け、水酸変性ポリオレフィン(AG-1)を得た。
なお、水酸基変性ポリオレフィン(AG-1)は、水酸基価は2.0、Mnは30,200、アイソタクティシティーは95%であった。
【0075】
<製造例11>
表4に従って、酸変性ポリオレフィン(AE)を変更した以外は、製造例10と同様に反応を行い、各水酸基変性ポリオレフィン(AG)を得た。結果を表4に示す。
【0076】
<製造例12>
反応容器に、酸変性ポリオレフィン(AE-1)100部、12-アミノドデカン酸(H-1)5部を仕込み、窒素通気下、180℃まで加熱昇温して10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)10時間撹拌を続け、アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ-1)を得た。
なお、アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ-1)は、酸価は1.9、Mnは31,700、アイソタクティシティーは95%であった。
【0077】
<製造例13~14>
表4に従って酸変性ポリオレフィン(AE)、アミノカルボン酸(H)を変更した以外は、製造例12と同様に反応を行い、各アミノカルボン酸変性ポリオレフィン(AJ)を得た。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
<製造例15>
反応容器に、ポリオレフィン(A-1)100部、2-メルカプトエタノール(F-2)1部、キシレン200部を仕込み、窒素通気下、160℃まで加熱昇温して、ジクミルパーオキシド(f-1)1部を仕込み、10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレン、未反応の2-メルカプトエタノールを留去して、水酸基変性ポリオレフィン(AG-3)を得た。
なお、水酸基変性ポリオレフィン(AG-3)は、水酸基価は2.0、Mnは30,100、アイソタクティシティーは94%であった。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
<製造例16>
反応容器に、水酸基変性ポリオレフィン(AG-2)100部、ヘキサメチレンジイソシアネート(L-1)8部、キシレン200部を仕込み、窒素通気下、150℃まで加熱昇温して、10時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレン、未反応のヘキサメチレンジイソシアメネートを留去して、イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM-1)を得た。
なお、イソシアネート基変性ポリオレフィン(AM-1)は、イソシアネート基含有率は0.78、Mnは10,700、アイソタクティシティーは95%であった。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
<実施例1>
反応容器に(AJ-1)100部、(AG-1)100部、エステル化触媒としてジブチル錫0.1部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に200℃まで加熱昇温して溶解させた。200℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で5時間反応したのち反応容器から取り出し、ブロックポリマー(X-1)を得た。
なお、(X-1)は、Mnは65,000、酸価は0.01であった。
【0084】
<実施例2~5>
実施例1において、表7に従って、各使用原料を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行い、各ブロックポリマー(X)を得た。結果を表7に示す。
【0085】
<実施例6>
反応容器に(AM-1)30部、(AG-3)100部、キシレン200部、ウレタン化触媒としてビスマストリス(2-エチルヘキサエート)0.1部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に150℃まで加熱昇温して溶解させた。150℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンを留去したのち反応容器から取り出し、ブロックポリマー(X-6)を得た。
なお、(X-6)は、Mnは50,500、水酸基価は0.02であった。
【0086】
<実施例7>
反応容器に(AJ-2)100部、(AQ-1)100部、エポキシ化触媒ジアザビシクロウンデセン0.1部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に150℃まで加熱昇温して溶解させた。150℃で3時間撹拌を続けたのち反応容器から取り出し(X-7)を得た。
なお、(X-7)は、Mnは6,400、酸価は0.01であった。
【0087】
各ブロックポリマー(X)の結果を表7に示す。なお、比較のためのブロックポリマーとして、ポリオレフィン(A-1)を用いた。
【0088】
【表7】
【0089】
<実施例8~14、比較例1~2>
表8の配合組成(部)に従って、各ブロックポリマー(X)、熱可塑性樹脂(Y)を2軸押出機[商品名「KZW45TW」、テクノベル(株)製]で230℃、100rpmの条件で溶融混練し、各熱可塑性樹脂組成物(Z)を得た。
各熱可塑性樹脂組成物(Z)を、射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂(株)製]でノズル温度230℃、金型温度50℃で射出成形し後述の評価方法に従って評価した。結果を表8に示す。
【0090】
<評価方法>
(1)引張強度
JIS K7171に準拠して測定し、引張強度の評価を行った。
<評価基準>
◎:30MPa以上
○:25MPa以上30MPa未満
△:20MPa以上25MPa未満
×:20MPa未満
【0091】
(2)耐衝撃性
アイゾット衝撃値をJIS K7110に準拠して測定した。
<評価基準>
◎:3.0kJ/m2以上
○:1.5kJ/m2以上3.0kJ/m2未満
△:1.0kJ/m2以上1.5kJ/m2未満
×:1.0kJ/m2未満
【0092】
【表8】
【0093】
<実施例15~21、比較例3~4>
表9の配合組成(部)に従って、各ブロックポリマー(X)、熱可塑性樹脂(YR-1)[リサイクルポリオレフィン樹脂、商品名「PP粉砕」、三木樹脂工業(株)製]を、2軸押出機[商品名「KZW45TW」、テクノベル(株)製]で230℃、100rpmの条件で溶融混練して、各熱可塑性樹脂組成物(Z)を得た。
さらに、ペレット化した後、射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂(株)製]でノズル温度230℃、金型温度50℃で射出成形し試験片を作成し、後述の評価方法に従って評価した。結果を表9に示す。
【0094】
(1)引張強度
JIS K7171に準拠して測定し、引張強度の評価を行った。
<評価基準>
◎:25MPa以上
○:20MPa以上25MPa未満
△:15MPa以上20MPa未満
×:15MPa未満
(2)耐衝撃性
アイゾット衝撃値をJIS K7110に準拠して測定した。
<評価基準>
◎:2.5kJ/m2以上
○:1.2kJ/m2以上2.5kJ/m2未満
△:0.8kJ/m2以上1.2kJ/m2未満
×:0.8kJ/m2未満
【0095】
【表9】
【0096】
<実施例22~28、比較例5~6>
表10の配合組成(部)に従って、各ブロックポリマー(X)、熱可塑性樹脂(Y)、フィラー(N1)を、2軸押出機[商品名「KZW45TW」、テクノベル(株)製]で230℃、100rpmの条件で溶融混練して、各熱可塑性樹脂組成物(Z)を得た。
さらに、ペレット化した後、射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂(株)製]でノズル温度230℃、金型温度50℃で射出成形し試験片を作成し、後述の評価方法に従って評価した。結果を表10に示す。
【0097】
(1)曲げ強度
JIS K7171に準拠して測定し、引張強度の評価を行った。(単位:MPa)
(2)耐衝撃性
シャルピー衝撃値をASTM D6110に準拠して測定した。(単位:J/m)
【0098】
【表10】
【0099】
表1~10の結果から、本発明のブロックポリマー(X)は、比較のものと比べて、熱可塑性樹脂組成物(Z)の成形品に優れた機械的強度を与えることが分かる。また、リサイクルポリオレフィン樹脂(YR)に優れた機械的強度を与える。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のブロックポリマー(X)は、熱可塑性樹脂(Y)用の改質剤として有用であり、熱可塑性樹脂(Y)の機械的強度(引張強度、衝撃強度等)を向上させることができる。このことから、種々の熱可塑性樹脂の成形品用途に、きわめて有用である。