(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129349
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148762
(22)【出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0024911
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイク、スン イン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ウク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、(Ba
1-xCa
x)(Ti
1-y(Zr、Sn、Hf)
y)O
3(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、複数のグレイン、及び上記複数のグレインの間に配置されるグレインバウンダリーを含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は、3個のグレインバウンダリーが接して配置される三重点及び上記三重点の内部に配置されるSiの二次相を含み、上記誘電体層と内部電極の界面におけるSi含有量の散布が1重量%以下であることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1-xCax)(Ti1-y(Zr、Sn、Hf)y)O3(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、複数のグレイン、及び前記複数のグレインの間に配置されるグレインバウンダリーを含む誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記第1内部電極と連結される第1外部電極と、前記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、3個のグレインバウンダリーが接して配置される三重点及び前記三重点の内部に配置されるSiの二次相を含み、
前記誘電体層と内部電極の界面におけるSi含有量の散布が1重量%以下である、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記複数のグレイン内部の平均Siの含有量(a)に対する前記三重点の平均Si含有量(b)の割合(b/a)は、3超過及び/または6未満の範囲内である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu及びYbのうち一つ以上の元素を含む第1副成分を含み、
前記誘電体層の内部の第1副成分が最大含有量を有する領域は、前記グレインバウンダリー内に配置される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の内部の第1副成分が最大含有量を有する領域は、前記三重点内に配置される、請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記複数のグレインの平均粒径は、300nm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層の平均厚さは、0.5μm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量は、0.1モル%以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層と内部電極の界面に配置されるSi二次相の不検出領域を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、Mgを含む第2副成分を含み、
前記誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の平均含有量は、0.1モル%以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層及び/または内部電極はSnを含み、
前記誘電体層及び/または内部電極の内部のSnが最大含有量を有する領域は、前記誘電体層と内部電極の界面に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記第1内部電極及び/または第2内部電極の平均厚さは、0.5μm以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化の傾向により、積層セラミック電子部品も小型化され、大容量化されることが要求されている。積層セラミック電子部品の小型化及び大容量化の要求に合わせて、積層セラミック電子部品の誘電体シートも薄層化されている。
【0003】
一方、電子部品の耐電圧特性などは、部品内部の微細構造に大きく影響を受けるものと知られている。誘電体シートが薄層化されるにつれて、誘電体層の結晶粒の大きさ、成分分布などが影響を受けることにより、チップの耐電圧及び信頼性特性が劣化するという問題点が表れている。一般的に、電子部品の結晶粒間の結晶粒界は高抵抗成分を有するようになるため、誘電体層の内部の結晶粒界の割合を高めて高信頼性を有する電子部品を提供するための研究が進められてきた。
【0004】
しかし、電子部品の超小型化/超高容量化に伴う誘電体層の薄層化により、製品の信頼性、高温高圧特性及び絶縁抵抗特性の低下の問題は依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の様々な目的のうち一つは、高温高圧特性に優れた積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0006】
本発明の様々な目的のうち一つは、誘電体層の微細構造の均一性に優れ、かつ2次相を制御することができる積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0007】
本発明の様々な目的のうち一つは、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗特性を向上させることにある。
【0008】
本発明の様々な目的のうち一つは、信頼性が向上した積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、(Ba1-xCax)(Ti1-y(Zr、Sn、Hf)y)O3(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、複数のグレイン、及び上記複数のグレインの間に配置されるグレインバウンダリーを含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は、3個のグレインバウンダリーが接して配置される三重点及び上記三重点の内部に配置されるSiの二次相を含み、上記誘電体層と内部電極の界面におけるSi含有量の散布が1重量%以下であることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の高温高圧特性を向上できることである。
【0011】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の誘電体層の微細構造の均一性に優れ、かつ2次相を制御できることである。
【0012】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗特性を向上できることである。
【0013】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の信頼性を向上できることである。
【0014】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のセラミック本体を概略的に示す斜視図である。
【
図5】比較例の同図(a)及び実施形態の同図(b)の内部電極及び誘電体界面におけるMgに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
【
図6】比較例の同図(a)及び実施形態の同図(b)の内部電極及び誘電体界面におけるSiに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
【
図7】同図(a)は、比較例の内部電極及び誘電体界面におけるEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するLine profiling結果を示すグラフである。同図(b)は、実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するLine profiling結果を示すグラフである。
【
図8】同図(a)は、比較例の三重点のEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するLine profiling結果を示すグラフである。同図(b)は、実施形態の三重点のEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するLine profiling結果を示すグラフである。
【
図9】同図(a)は、比較例に対する高温高圧テスト結果を示すグラフである。同図(b)は、実施形態に対する高温高圧テスト結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。これは、本明細書に記載された技術を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の実施形態の様々な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/または代替物(alternatives)を含むものと理解されるべきである。図面の説明に関して、類似の構成要素については類似の参照符号が使用される。
【0017】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、複数層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一の思想の範囲内で機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明する。
【0018】
本明細書において、「有する」、「有することができる」、「含む」、または「含むことができる」などの表現は、当該特徴(例えば、数値、機能、動作、または部品などの構成要素)の存在を指し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0019】
本明細書において、「A及び/またはB」、「A及び/またはBの少なくとも一つ」、或いは「A及び/またはBのいずれか一つまたはそれ以上」などの表現は、ともに挙げられた項目の全ての可能な組み合わせを含み得る。例えば、「A及び/またはB」、「A及び/またはBの少なくとも一つ」は、(1)少なくとも一つのAを含む場合、(2)少なくとも一つのBを含む場合、または(3)少なくとも一つのA及び少なくとも一つのBの両方を含む場合を何れも指すことができる。
【0020】
図面において、X方向は第1方向、L方向または長さ方向、Y方向は第2方向、W方向または幅方向、Z方向は第3方向、T方向または厚さ方向と定義することができる。
【0021】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の概略的な斜視図であり、
図2は上記積層セラミック電子部品のセラミック本体に対する斜視図であり、
図3は
図1のI-I'断面図である。また、
図4は
図3のA領域の拡大図である。
【0022】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品について詳しく説明する。
【0023】
図1~
図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、(Ba
1-xCa
x)(Ti
1-y(Zr、Sn、Hf)
y)O
3(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、複数のグレイン11、及び上記複数のグレイン11の間に配置されるグレインバウンダリー11bを含む誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極121、122を含むセラミック本体110と、上記第1内部電極121と連結される第1外部電極131と、上記第2内部電極122と連結される第2外部電極132とを含むことができる。
【0024】
この時、上記誘電体層111は、3個のグレインバウンダリー11bが接して配置される三重点11c、及び上記三重点11cの内部に配置されるSiの二次相(secondary phase)を含むことができる。また、上記誘電体層111と内部電極121、122の界面におけるSi含有量の散布が1重量%以下であることができる。本明細書において「三重点」とは、3個のグレインバウンダリーが会う地点を意味することができ、本明細書においてSi含有量の「散布」とは、積層セラミック電子部品の中心を通りY軸に垂直である切断面において、上記中心から上下にそれぞれ10個所の界面に対して測定したSi含有量の標準偏差を意味することができる。
図6は、誘電体層内のSiのEDS mapping結果を示すイメージである。
図6を参照すると、従来の比較例(a)は三重点内にSiが配置されないことを確認することができるが、本発明の実施形態による積層セラミック電子部品(b)は、誘電体層の三重点にSiの二次相が分布されていることを確認することができる。
図8は、三重点のESDマッピングに対するLine profiling結果を示すグラフである。
図8を参照すると、従来の比較例(a)は、三重点(G.B領域)内にSiが集中配置されないことを確認することができるが、本発明の実施形態による積層セラミック電子部品(b)は、誘電体層の三重点(G.B領域)にSiの二次相が集中分布されていることを確認することができる。
図9は、誘電体層の三重点にSiの二次相の配置有無による高温高圧テスト結果を示すグラフである。従来の比較例(a)は、誘電体層の三重点にSiの二次相が配置されず、高温高圧信頼性の側面で利点がないことが確認できる。本発明の実施形態による積層セラミック電子部品(b)は、誘電体層の三重点にSiの二次相が配置されて高温高圧信頼性が向上することが確認できる。
【0025】
本発明による積層セラミック電子部品は、誘電体層の三重点にSiの二次相が配置される構造を通じてグレインバウンダリーに対する絶縁抵抗を向上させることができる。
【0026】
上記誘電体層と内部電極の界面におけるSi含有量の散布は、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、または0.5重量%以下であることができ、下限は特に制限されるものではないが、例えば、0重量%以上、または0重量%超過であることができる。誘電体層と内部電極の界面におけるSi含有量の散布が上記範囲を満たすことで、誘電体及び内部電極の界面の副成分に対する濡れ性の向上により二次相の発生頻度を低くすることができ、積層セラミック電子部品の信頼性をより向上させることができる。
【0027】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極121、122を含むセラミック本体110を含むことができる。
【0028】
上記セラミック本体110は、第1方向(X方向)に対向する第1及び第2面S1、S2、第2方向(Y方向)に対向する第3及び第4面S3、S4、第3方向(Z方向)に対向する第5及び第6面S5、S6を含むことができる。
【0029】
上記セラミック本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示されたように、セラミック本体110は、六面体形状やこれと類似した形状からなることができる。上記セラミック本体110は、焼成過程でセラミック本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。上記セラミック本体110は、必要に応じて角に丸みをつけるラウンド処理をすることができる。上記ラウンド処理は、例えば、バレル研磨などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0030】
上記セラミック本体110は、誘電体層111、第1内部電極121、及び第2内部電極122が交互に積層されていることができる。上記誘電体層111、第1内部電極121及び第2内部電極122は、第3方向(Z方向)に積層されていることができる。上記複数の誘電体層111は焼成した状態で、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0031】
一つの例示において、上記誘電体層111は、主成分及び副成分を含み、上記副成分は、第1~第6副成分のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。本明細書において「主成分」とは、他の成分に比べて相対的に多くの重量割合を占める成分を意味することができ、全体誘電体の重量を基準として50重量%以上の成分を意味することができる。また、「副成分」とは、他の成分に比べて相対的に少ない重量割合を占める成分を意味することができ、全体誘電体の重量を基準として50重量%未満の成分を意味することができる。
【0032】
以下では、本発明の一実施形態による誘電体層の各成分をより具体的に説明する。
【0033】
a)主成分
本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層は、(Ba1-xCax)(Ti1-y(Zr、Sn、Hf)y)O3(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含むことができる。上記主成分は、例えば、BaTiO3にCa、Zr、Sn及び/またはHfが一部固溶された形態で存在する化学物であることができる。上記組成式において、xは0以上、1以下の範囲であることができ、yは0以上、0.5以下の範囲であることができるが、これに制限されるものではない。例えば、上記組成式において、xが0、yが0、zが0である場合、上記主成分はBaTiO3になることができる。
【0034】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu及びYbのうち一つ以上の元素を含む第1副成分を含むことができる。
【0035】
上記第1副成分は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して0.2モル部以上及び/または5.4モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第1副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第1副成分に含まれたY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu及びYbのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準とすることができる。
【0036】
上記第1副成分は、積層セラミック電子部品の信頼性低下を防ぐ役割をする。上記第1副成分が上述した範囲から外れる場合、高温耐電圧特性が低下するおそれがある。
【0037】
一つの例示において、本発明による積層セラミック電子部品の第1副成分が最大含有量を有する領域は、上記グレインバウンダリー内に配置されることができる。上記第1副成分が最大含有量を有する領域は、上記第1副成分の濃度が最大である点を意味することができ、積層セラミック電子部品の誘電体層のうち第1副成分の濃度が最大である点を意味することができる。
【0038】
上記誘電体層の内部の第1副成分が最大含有量を有する領域は、例えば、前述した三重点内に配置されることができる。即ち、誘電体層内の第1副成分の濃度の最大値は、三重点で観察されることができる。
【0039】
上記第1副成分は、ABO3構造を有するペロブスカイト化合物のAサイト及び/またはBサイトに置換されて酸素空孔の発生を抑制することができ、これにより、高い絶縁抵抗を実現することができる。本明細書において「酸素空孔(oxygen vacancy)」とは、ある化合物において酸素があるべき所から酸素が抜け出て生じた空孔を意味する。例えば、ペロブスカイト構造(ABO3)を有するチタン酸バリウム(BaTiO3)を還元雰囲気下で焼結すると、上記チタン酸バリウム(BaTiO3)が有する酸素のうち一部が還元されて酸素が上記チタン酸バリウム(BaTiO3)から落ちるようになり、酸素の落ちて生じた空孔はイオン伝導度を有する酸素空孔となる。かかる酸素空孔は、絶縁性低下などの電気的特性を悪化させる原因となるため、薄い厚さを有する積層セラミック電子部品では、酸素空孔の発生を抑制することが重要である。本発明による積層セラミック電子部品は、誘電体層内の第1副成分が最大含有量を有する領域を前述したように調節して酸素空孔の発生を効果的に抑制することができ、これにより製品の信頼性を向上させることができる。
【0040】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層は、Mgを含む第2副成分を含むことができる。
【0041】
上記第2副成分は、原子が固定アクセプター(fixed-valence acceptor)元素として機能することができ、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して0.25モル部以上及び/または1.0モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第2副成分の含有量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第2副成分に含まれたMg元素の含有量を基準とすることができる。
【0042】
上記第2副成分の含有量が主成分のBサイト元素の合計100モルに対して1.0モル部を超過する場合、誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が低くなるという問題が発生するおそれがある。
【0043】
本発明の一実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品100の誘電体層111は、前述した主成分を含む複数のグレイン(grain)11及び2以上のグレイン11の間に配置されるグレインバウンダリー(grain boundary)11cを含むことができる。
図4は、本発明の一実施形態による誘電体層の微細構造を説明するための概路図である。本発明による誘電体は、前述した主成分及び副成分を焼結して形成されたものであることができ、主成分及び副成分を焼結して形成した誘電体111は、グレイン(grain)11とグレインバウンダリー(grain boundary)11bを含むことができる。また、上記グレインバウンダリーが3個会う三重点を含むことができる。
【0044】
一つの例示において、上記グレイン11は、コアシェル構造を有することができる。上記コアシェル構造は、コア部11aを取り囲むようにシェル部11bが配置されることができる。
図4を参照すると、上記グレイン11は、シェル部11bの内部にコア部11aが配置されることができる。上記コア部11aは、副成分が固溶されていない領域を意味することができ、上記シェル部11bは、コア部11aを除いた残りの領域を意味することができる。上記コア部11a及びシェル部11bは、上記切断面に対するTEM-EDSイメージを分析して区別することができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、積層セラミック電子部品の誘電体層のグレイン内部の平均Siの含有量(a)に対する三重点の平均Si含有量(b)の割合(b/a)は、3超過及び/または6未満の範囲内であることができる。上記三重点の平均Si含有量(b)は、前述したSi含有量の散布を求めた地点で採取した試料のSi含有量の算術平均を意味することができ、上記グレイン内部の平均Siの含有量(a)は、上記三重点と接しているグレインの内部に対して採取した試料のSi含有量の算術平均を意味することができる。上記誘電体層のグレイン内部の平均Siの含有量(a)に対する三重点の平均Si含有量(b)の割合(b/a)が上記範囲を満たすようにして高抵抗成分であるSiの分布を制御することができ、これにより、優れた高圧信頼性を有する積層セラミック電子部品を実現することができる。
【0046】
一つの例示において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層のグレインの平均粒径は、300nm以下であることができる。上記グレインの平均直径は、Y軸に垂直でかつ積層セラミック電子部品の中心を通る切断面において、中心に最も近い誘電体層に対してX軸方向に等間隔で10個所で測定した値の算術平均であることができる。上記グレインの測定直径は、誘電体層の切断面を走査電子顕微鏡(SEM、Jeol社のJSM-7400F)を用いてイメージを撮影した後、イメージ分析プログラム(Mediacybernetics社のイメージプロプラスver4.5)により計算した平均値を意味することができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、誘電体層111の平均厚さは0.5um以下であることができる。上記誘電体層111の平均厚さは、焼成された誘電体層111のうち第1及び第2内部電極の間に位置した互いに異なる5個所の位置で測定された値の平均であることができる。上記誘電体層111の平均厚さの下限は特に制限されるものではないが、例えば0.01um以上であることができる。
【0048】
上記誘電体層111は、前述した材料を含むスラリーに必要に応じて添加剤を追加し、これをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックシートを設けることにより形成されることができる。上記セラミックシートは、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)型で作製することにより形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の一つの例示において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2内部電極121、122は、各断面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されることができる。具体的に、上記セラミック本体110の第1方向(X方向)の両面に上記第1及び第2内部電極121、122がそれぞれ露出することができ、上記セラミック本体110の第1面S1方向に第1内部電極121が露出し、第2面S2方向に第2内部電極122が露出することができる。
【0050】
一つの例示において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2内部電極121、122の平均厚さは、0.5um以下であることができる。上記内部電極の平均厚さは、焼成された内部電極の互いに異なる5個所の位置で測定された値の平均であることができる。上記第1及び第2内部電極の平均厚さの下限は特に制限されるものではないが、例えば0.01um以上であることができる。
【0051】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0052】
上記セラミック本体110は、誘電体層に第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、誘電体層に第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを第3方向(Z方向)に交互に積層して形成することができる。上記第1及び第2内部電極121、122の印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明の一実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量は、0.1モル%以下であることができる。本明細書において、誘電体層111と第1内部電極121及び/または第2内部電極122の「界面」とは、誘電体層と内部電極が接している面を意味することができ、SEMイメージなどを通じて観察が可能な面を意味することができる。また、上記界面は、互いに構成成分が異なる二つの面が接している面を意味することができ、上記誘電体層と内部電極の主要成分の分布を通じて確認が可能な面を意味することができる。例えば、
図7を参照すると、Ba及びTiの含有量は所定の位置で検出されず、Niの含有量は所定の位置を通過してから検出されることを確認することができる。これにより、上記Ba及びTiが分布する領域とNiが分布する領域が明確に区分されることを確認することができ、上記領域を誘電体層と内部電極の界面であると解釈することができる。
【0054】
上記誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量は、0.10モル%以下、0.09モル%以下、0.08モル%以下、0.07モル%以下、0.06モル%以下、または0.05モル%以下であることができる。上記誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量の下限は、例えば0モル%以上であることができる。上記誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量が0モル%の場合、誘電体層と内部電極の界面でSiの二次相が検出されないことを意味することができ、例えば、誘電体層と内部電極の界面に配置されるSi二次相の不検出領域が存在し得る。Siの二次相は、高抵抗成分として、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗の向上のために使用される場合がある。しかし、誘電体層と内部電極の界面にSiの二次相が配置される場合、局部的な電界集中を起こし、むしろBDV特性が低下するおそれがある。本実施形態のように、誘電体層と内部電極の界面のSi二次相の平均含有量が前述した範囲を満たす場合、電界集中現象を抑制して高電圧信頼性を向上させることができる。
【0055】
図5を参照すると、従来の比較例(a)は、誘電体層と内部電極の界面にMg二次相が配置されることが確認できるが、本発明の一実施例(b)は、誘電体層と内部電極の界面にMgが配置されないことが確認できる。本発明の一実施例による積層セラミック電子部品は、Mg成分の濡れ性の向上により二次相の発生頻度を低くして誘電率を向上させ、耐電圧特性を向上させることができる。
【0056】
本発明の一つの例示において、積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の平均含有量は、0.1モル%以下であることができる。上記誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の平均含有量は、0.10モル%以下、0.09モル%以下、0.08モル%以下、0.07モル%以下、0.06モル%以下、または0.05モル%以下であることができる。上記誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の平均含有量の下限は、例えば0モル%以上であることができる。上記誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の平均含有量が0モル%の場合、誘電体層と内部電極の界面でMgの二次相が検出されないことを意味することができ、例えば、誘電体層と内部電極の界面に配置されるMg二次相の不検出領域が存在し得る。誘電体層と内部電極の界面のMg二次相の含有量が上記範囲内の場合、誘電体層の内部の微細構造を均一に形成することができ、二次相を制御することができる。Mg二次相の含有量が上記範囲から外れる場合、グレインの過成長が誘発されて誘電率が低くなり高温耐電圧特性が低下するおそれがある。
【0057】
一つの例示において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び/または内部電極は、Snを含み、上記誘電体層及び/または内部電極の内部のSnが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置されることができる。誘電体層及び/または内部電極の内部のSnが最大含有量を有する領域は上記誘電体層と内部電極の界面に配置されるということは、上記誘電体層と内部電極の界面から離れるほどSnの平均含有量が低くなることを意味することができ、上記誘電体層111と上記第1内部電極121及び/または第2内部電極122の界面から一定距離離隔した位置(例えば10nm以内の距離)におけるSnの平均含有量が上記界面に比べて低いことを意味することができる。上記Snが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置される場合、積層セラミック電子部品の耐電圧特性を向上させることができる。
【0058】
本発明による積層セラミック電子部品100は、セラミック本体110の外部面に第1外部電極131及び第2外部電極132が配置されることができる。上記第1外部電極131は、本発明による積層セラミック電子部品100のセラミック本体110の第1面S1上に配置されることができ、上記第2外部電極132は、上記セラミック本体110の第2面S2上に配置されることができる。
【0059】
一つの例示において、本発明による積層セラミック電子部品100の第1外部電極131の少なくとも一部がセラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置されることができる。また、第2外部電極132の少なくとも一部が上記セラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置されることができる。この場合、上記第1外部電極131と第2外部電極132は、互いに離隔して配置されることができる。上記第1外部電極131及び/または第2外部電極132の少なくとも一部がそれぞれ上記セラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置される場合、上記延長される部分はいわゆるバンド部として機能することができ、水分浸透などを防止して本発明による積層セラミック電子部品100の信頼性をより向上させることができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、積層セラミック電子部品100の第1外部電極131及び第2外部電極132は、導電性金属を含む焼成電極であることができる。上記導電性金属は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0061】
また、上記第1外部電極131及び第2外部電極132は、ガラスを含むことができる。上記ガラスは、酸化物が混合した組成であることができ、特に制限されるものではないが、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、転移金属酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された一つ以上であることができる。上記転移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)からなる群より選択され、上記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)からなる群より選択され、上記アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選択された一つ以上であることができる。
【0062】
上記第1外部電極131及び第2外部電極132の形成方法の例示として、導電性金属を含む導電性ペーストにセラミック本体110をディッピングした後、焼成して形成するか、上記導電性ペーストをセラミック本体110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷して焼成して形成することができる。また、上記導電性ペーストをセラミック本体110の表面に塗布するか、または上記導電性ペーストを乾燥させた乾燥膜をセラミック本体110上に転写した後、これを焼成して形成する方法などが挙げられるが、これに制限されるものではない。例えば、上記方法以外の多様な方法で導電性ペーストをセラミック本体110上に形成した後、これを焼成して形成することができる。
【0063】
本発明の他の実施形態において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2外部電極131、132は、伝導性付与剤及びベース樹脂を含む樹脂系電極であることができる。上記樹脂系電極は、ベース樹脂の内部に伝導性付与剤が分散した構造を有し、焼成電極に比べて低温の環境で製造されることで伝導性付与剤が粒子形態でベース樹脂の内部に存在することができる。記第1及び第2外部電極131c、132cが樹脂系電極の場合、外部の衝撃などの物理的ストレスを遮断することができる。
【0064】
上記伝導性付与剤は、導電性金属及び/または伝導性高分子を含むことができる。上記導電性金属は、例えばカルシウム(Ca)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、鉛(Pb)及びこれらの合金からなる群より選択される1種以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0065】
また、上記伝導性高分子の非制限的な例示として、PT(poly(thiophene))、PEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene)、PPS(poly(p-phenylene sulfide))、PANI(polyanilines)、P3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))、PolyTPD(poly(4-butylphenyldiphenylamine))、PSS(poly(4-butylphenyldiphenylamine))、PVK(poly(9-vinylcarbazole))、PDBT(poly(4,4'-dimethoxy bithophene))、polyaniline、またはpolypyrroleなどの硫黄(S)及び/または窒素(N)含有化合物が挙げられ、poly(fluorine)、polyphenylene、polypyrene、polyazulene、polynaphthalene、PAC(poly(acetylene))、PPV(poly(p-phenylene vinylene)などのヘテロ原子を含まない化合物を例として挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0066】
上記第1及び第2外部電極131、132は、必要に応じて炭素ナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどのカーボンフィラー及び/または球状、楕円状、フレイク状、繊維状、または樹枝状(デンドライト状)の合金フィラーなどの導電性フィラーを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0067】
上記第1及び第2外部電極131、132に含まれるベース樹脂は、例えば熱硬化性樹脂であることができる。上記熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられるが、これに制限されるものではない。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて架橋剤、重合開始剤などの硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤などをさらに添加して使用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0069】
100:積層セラミック電子部品
110:セラミック本体
111:誘電体層
121、122:第1及び第2内部電極
131、132:第1及び第2外部電極