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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012943
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】水性抗菌ニス組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20220111BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20220111BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220111BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220111BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220111BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/14
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115120
(22)【出願日】2020-07-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 丈夫
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CH011
4J038HA416
4J038JB12
4J038KA10
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA13
4J038NA05
4J038NA11
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】塗布前の水性抗菌ニス組成物が安定性に優れると共に、塗布してなる塗膜が耐摩擦性に優れる水性抗菌ニス組成物を提供すること。
【解決手段】銀含有リン酸ジルコニウム粒子、炭素数が10~24の脂肪酸アマイド及びアクリル樹脂を含有し、脂肪酸アマイドの含有量に対する銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量の比である、銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイドの値が3.0~35.0である水性抗菌ニス組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有リン酸ジルコニウム粒子、炭素数が10~24の脂肪酸アマイド及びアクリル樹脂を含有し、脂肪酸アマイドの含有量に対する銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量の比である、銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイドの値が3.0~35.0である水性抗菌ニス組成物。
【請求項2】
全固形分中の銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有割合が0.02~20.0質量%である請求項1に記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項3】
全固形分中の炭素数が10~24の脂肪酸アマイドの含有割合が0.35~2.00質量%である請求項1又は2に記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項4】
全固形分中のアクリル樹脂の含有割合が70.0~96.0質量%である請求項1~3のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂のガラス転移温度が70.0~150.0℃である請求項1~4のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項6】
炭素数が10~24の脂肪酸アマイドがポリ脂肪酸アマイドである請求項1~5のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物を被塗布物に塗布してなる塗工物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に抗菌塗膜層を形成させるための水性ニス組成物、及びその水性ニス組成物により得た塗膜層を有する塗工物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4に記載のように、銀イオンを担持させたリン酸ジルコニウム、アクリル樹脂エマルジョンや分散液を含有する抗菌性水性塗料は公知である。
また特許文献5に記載のように、銀イオンを担持させたリン酸ジルコニウムをスルホン酸基含有ポリエステル水分散液に含有させてなる抗菌性水性塗料も公知である。
【0003】
これらの公知技術により形成された塗膜は抗菌性を有するものの、塗料の安定性や耐摩擦性に関する性質までを考慮した塗料や塗膜ではなかった。
そのため、塗料調製直後に塗装するようにして、塗装時の塗料が分離しない状態としていた。さらに、塗膜を形成させる対象の基材が耐摩擦性を必要しない場合には、上記の公知技術を採用して塗装していた。
【0004】
しかしながら、塗料調製造直後に塗装しない場合や、塗膜を形成させる対象の基材が耐摩擦性を必要とする場合には、塗装後に継続して抗菌性を有する表面を形成することまではできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-89887号公報
【特許文献2】特開平8-48917号公報
【特許文献3】特開2003-171619号公報
【特許文献4】特開2004-83469号公報
【特許文献5】特開平10-245305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は、塗布前の水性抗菌ニス組成物が安定性に優れると共に、塗布してなる塗膜が耐摩擦性に優れる水性抗菌ニス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.銀含有リン酸ジルコニウム粒子、炭素数が10~24の脂肪酸アマイド及びアクリル樹脂を含有し、脂肪酸アマイドの含有量に対する銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量の比である、銀含有リン酸ジルコニウム/脂肪酸アマイドの値が3.0~35.0である水性抗菌ニス組成物。
2.全固形分中の銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有割合が0.02~20.0質量%である1に記載の水性抗菌ニス組成物。
3.全固形分中の炭素数が10~24の脂肪酸アマイドの含有割合が0.35~2.00質量%である1又は2に記載の水性抗菌ニス組成物。
4.全固形分中のアクリル樹脂の含有割合が70.0~96.0質量%である1~3のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
5.アクリル樹脂のガラス転移温度が70.0~150.0℃である1~4のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
6.炭素数が10~24の脂肪酸アマイドがポリ脂肪酸アマイドである1~5のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
7.1~6のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物を被塗布物に塗布してなる塗工物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性抗菌ニス組成物は、塗布前において安定性に優れ、かつ基材表面に塗布して得た塗膜が耐擦性にも優れるという効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水性抗菌ニス組成物は、上記の各成分を含有するものであり、以下に順に説明する。
【0010】
<銀含有リン酸ジルコニウム粒子>
本発明において使用される銀含有リン酸ジルコニウム粒子は、リン酸ジルコニウムの結晶構造中に銀イオンを存在させたものである。
銀含有リン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径は0.5~2.5μmが好ましく、0.8~1.5μmがより好ましく、0.8~1.2μmがさらに好ましい。
このような銀含有リン酸ジルコニウム粒子として、ノバロンAG300、AG1100、AGC303、AGZ010、AGZ020、AGZ330、AGT330(いずれも東亞合成社)等を使用できる
銀等の金属を担持して抗菌性を発揮する粒子として、例えば銀含有ゼオライトがあるが、本発明における銀含有リン酸ジルコニウム粒子ではなく、銀含有ゼオライトを配合すると、条件によっては、安定性及び/耐摩擦性の点において不都合が生じる可能性がある。
【0011】
本発明の水性抗菌ニス組成物の固形分中の銀含有リン酸ジルコニウム粒子の濃度としては、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、最も好ましくは5.0質量%以上である。また、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、さらに好ましくは15.0質量%以下、最も好ましくは10.0質量%以下である。
0.02質量%未満であると十分な抗菌性を発揮できない可能性があり、20.0質量%を超えると、条件によるものの、安定性と耐摩擦性に劣る場合がある。
また脂肪酸アマイドの含有量等に応じて、上記の範囲内の含有量であっても、安定性及び又は耐摩擦性が若干劣る場合がある。
【0012】
<炭素数が10~24の脂肪酸アマイド>
本発明において使用される炭素数が10~24の脂肪酸アマイドは、直鎖又は分岐の脂肪酸由来の炭素鎖が炭素数10~24のものである。また飽和又は不飽和の脂肪酸のいずれでも良い。中でも炭素数が16~18のものが好ましい。
このような脂肪酸アマイドは、チクソトロピー性向上剤等として使用され、チクゾールW-310P、W-400LP(共栄社化学社)等を使用できる。
中でも、脂肪族モノアミンと1分子の脂肪酸がアミド結合している脂肪酸モノアマイドや、脂肪族ポリアミンと複数の脂肪酸がアミド結合してなるポリ脂肪酸アマイドが好ましい。
【0013】
本発明の水性抗菌ニス組成物の固形分中の、炭素数が10~24の脂肪酸アマイドの濃度としては、好ましくは0.35質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、さらに好ましくは0.80質量%以上、最も好ましくは1.00質量%以上である。また、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.50質量%以下、さらに好ましくは1.30%以下である。
0.35質量%未満であると、水性抗菌ニス組成物の安定性及び得られた塗膜の耐摩擦性が悪化する可能性があり、2.00質量%を超えても、水性抗菌ニス組成物の安定性及び得られた塗膜の耐摩擦性が悪化する可能性がある。
また銀含有リン酸ジルコニウム粒子やアクリル樹脂の含有量等に応じて、上記の範囲内の含有量であっても、安定性及び又は耐摩擦性が劣る場合がある。
【0014】
<アクリル樹脂>
本発明にて使用されるアクリル樹脂としては、好ましくは酸価が50~500mgKOH/gであり、より好ましくは100~400mgKOH/gである。酸価がこの範囲であると、水性抗菌ニス組成物の安定性をより向上させることができる。
また好ましいガラス転移温度は70.0~150.0℃であり、より好ましいガラス転移温度は90.0~140.0℃である。ガラス転移温度がこの範囲であると、安定性と耐摩擦性を共に向上させることができる。
なお、ガラス転移温度は、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・・・・・+Wx/Tgx
(式中、Tg1~Tgxは共重合体を構成する重合性単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1~Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの質量分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である)。
【0015】
このようなアクリル樹脂として、(メタ)アクリレート等からなる水溶性の共重合体などが挙げられる。また水性溶媒に対してエマルジョンを形成できるアクリル樹脂を併用しても良く、しなくても良い。
これらのアクリル樹脂を構成する(メタ)アクリレート等としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2量体、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の酸基含有モノマーを共重合体成分として有することができる。
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーを共重合成分として有することができる。
上記の共重合成分と共にアクリル樹脂を構成する他のモノマーとして、以下のモノマーを採用できる。
エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アルキルアミド、N-メチロール(メタ)アルキルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アルキルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アルキルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アルキルアミド、N,N-ジオクチル(メタ)アルキルアミド、N-モノブチル(メタ)アルキルアミド、N-モノオクチル(メタ)アルキルアミド等のアクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルケトン、t-ブチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等のその他のモノマー。
【0016】
アクリル樹脂を含有させる場合において、水性抗菌ニス組成物の固形分全量に対するアクリル系樹脂の濃度は、好ましくは70.0質量%以上であり、より好ましくは80.0質量%以上であり、さらに好ましくは85.0質量%以上であり、最も好ましくは90.0質量%以上である。また好ましくは96.0質量%以下であり、より好ましくは93.0質量%以下であり、さらに好ましくは92.0質量%以下である。
アクリル樹脂の含有量が70.0質量%未満又は96.0質量%を超えると、抗菌水性ニス組成物の安定性及び又は耐摩擦性が劣る場合がある。
また銀含有リン酸ジルコニウム粒子やポリ脂肪酸アマイドの含有量等の多少によっては、上記の範囲内の含有量であっても、安定性及び又は耐摩擦性が劣る場合がある。
【0017】
<銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイド>
銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイド(固形分中の、脂肪酸アマイドの含有量に対する、銀含有リン酸ジルコニウム粒子の、質量ベースの含有量の比)は、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは4.0以上である。また好ましくは35.0以下であり、より好ましくは25.0以下であり、さらに好ましくは15.0以下である。
この比が3.0未満であると、銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量が少ないことが懸念され、35.0を超えると安定性及び又は耐摩擦性が劣る場合がある。
【0018】
<脂肪酸アマイド/アクリル樹脂>
脂肪酸アマイド/アクリル樹脂(固形分中の、アクリル樹脂の含有量に対する、脂肪酸アマイドの、質量ベースの含有量の比)は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上である。また好ましくは0.2以下であり、より好ましくは0.15以下である。
この比が0.03未満であると、場合により、脂肪酸アマイドの含有量が少ないことが懸念され、0.2を超えると、場合により、安定性及び又は耐摩擦性が劣る場合がある。
【0019】
<溶媒>
本発明の水性抗菌ニス組成物は、全ての液体成分が蒸発して乾燥固化するものである。そして、使用される溶媒は水性溶媒であり、銀含有リン酸ジルコニウム粒子以外の溶解すべき固形分を溶解し、水性抗菌ニス組成物を用いて基材表面に層を形成した後に適切な時間で乾燥できることが好ましい。
溶媒として、水のみ、又は下記の水溶性有機溶媒から選ばれた1種以上と水の混合溶媒を使用できる。
メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、又はこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が1~6のアルコール。
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のポリオール。
プロピレンカーボネート、
ジエチレングリコールエチルメチルエーテルやジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル、
アルキル基が炭素数3~6のジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル、
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールジアルキルエーテル、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、
エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等の(ポリ)エチレングリコールジエステル、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノエーテルモノエステル等のアルキレングリコール誘導体。
【0020】
<その他の樹脂>
本発明の水性抗菌ニス組成物は、得られる効果が低下しない範囲内で、上記アクリル樹脂以外の樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂及びエチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等を併用することも可能である。
【0021】
<その他の成分>
本発明の水性抗菌ニス組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を本発明の効果が毀損されない範囲で使用できる。また、本発明の水性抗菌ニス組成物に無機又は有機の公知の色材を含有させても良い。
【0022】
(水性抗菌ニス組成物の製造)
本発明の水性抗菌ニス組成物を製造する方法について説明する。
本発明の水性抗菌ニス組成物は、上記の各材料を、例えば、撹拌羽根と撹拌機などを用いて撹拌混合することにより得られる。
本発明の水性抗菌ニス組成物中における溶剤の含有量は、水性抗菌ニス組成物全量から、各固形分、必要により使用するその他の添加剤の合計量を差し引いた量である。
【0023】
(用途)
本発明の水性抗菌ニス組成物は、紙基材、各種樹脂シート等の樹脂成形体表面、金属表面、セラミックス表面、木質材表面を含む周知の材料の表面に抗菌層を形成させるために使用できる。その中でも特に耐摩擦性が要求される場合に適している。
【実施例0024】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の顔料、分散剤、樹脂、溶剤及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0025】
<銀含有リン酸ジルコニウム粒子>
ノバロンAG300(商品名「ノバロンAG300」、銀イオンをリン酸ジルコニウムに担持した粒子、固形分100%、東亞合成社製)
<沈降防止剤>
W-310P(商品名「チクゾールW-310P」、炭素数16~18の脂肪酸アマイドを有する水性組成物、固形分25%、共栄社化学社製)
W-400LP(商品名「チクゾールW-400LP」、炭素数16~18の脂肪酸アマイドを有する水性組成物、固形分25%、共栄社化学社製)
PE―128(商品名「ニューポールPE―128」、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合物、固形分100%、三洋化成工業社製)
F-215M(商品名「フタージェント215M」、ポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤、固形分100%、三洋化成工業社製)
【0026】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂(商品名「ジョンクリルJ-690」、酸価240、ガラス転移温度114℃、固形分100%、BASF社製)
<アクリル樹脂ワニス>
アクリル樹脂30部と水60部を混合し、撹拌しながら90℃に昇温した。25%アンモニア水でpHが8.0となるようにアクリル樹脂を中和溶解し、調整分の水を添加して、アクリル樹脂ワニス(固形分30%)を得た。
【0027】
(実施例1~7及び比較例1~7)
<水性抗菌ニス組成物の製造>
表1の配合(各材料の配合比率は質量%である)に従い、各材料を撹拌混合して実施例及び比較例の水性抗菌ニス組成物を得た。
【0028】
<評価方法及び評価基準>
実施例及び比較例の水性抗菌ニス組成物を50mLのガラス瓶に採取し、25℃で1週間保存した後、安定性を以下の基準で評価した。
A:沈降が発生しない。
B:沈降が発生するが、振とうによって回復する。
C:沈降が発生し、剪断を伴わない撹拌によって回復する。
D:沈降が発生し、剪断を伴う撹拌によって回復する。
E:沈降が発生し、剪断を伴う撹拌によっても回復しない。
【0029】
<塗工物の作成>
実施例及び比較例の水性抗菌ニス組成物を、片艶クラフト紙に、ハンドプルーファー(200L/inch)を用いて塗工して、塗工物を得た。
【0030】
<耐摩擦性>
得られた各塗工物を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価した。
評価条件:200g×50回、当紙:上質紙
A:50回こすっても塗工面が取れなかった。
B:30回~49回こすって塗工面が取れた。
C:20回~29回こすって塗工面が取れた。
D:10回~19回こすって塗工面が取れた。
E:1回~9回こすって塗工面が取れた。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明に沿った例である実施例1~7によれば、水性抗菌ニス組成物の安定性と、ニス組成物を塗布してなる表面の耐摩擦性とのバランスが良好であった。
これに対し、脂肪酸アマイドを含有しない比較例1、銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量が多い比較例2、及び脂肪酸アマイドの含有量が少ない比較例2及び3によれば、特に水性抗菌ニス組成物の安定性が不良であり、耐摩擦性と併せてみても全体としてのバランスが悪化した。
またアクリル樹脂を含有しない比較例4によると、特に耐摩擦性が不良であり、水性抗菌ニス組成物と併せたバランスが悪化した。
さらに、脂肪酸アマイドに代えて、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合物、ポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤やオクチルアミドを含有した比較例5~7によれば、水性抗菌ニス組成物の安定性及び耐摩擦性が共に不良であった。
【手続補正書】
【提出日】2020-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有リン酸ジルコニウム粒子、炭素数が16~18の脂肪酸アマイド及びアクリル樹脂を含有し、脂肪酸アマイドの含有量に対する銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有量の比である、銀含有リン酸ジルコニウム粒子/脂肪酸アマイドの値が3.0~25.0である水性抗菌ニス組成物。
【請求項2】
全固形分中の銀含有リン酸ジルコニウム粒子の含有割合が0.02~20.0質量%である請求項1に記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項3】
全固形分中の炭素数が16~18の脂肪酸アマイドの含有割合が0.35~2.00質量%である請求項1又は2に記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項4】
全固形分中のアクリル樹脂の含有割合が70.0~96.0質量%である請求項1~3のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂のガラス転移温度が70.0~150.0℃である請求項1~4のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項6】
炭素数が16~18の脂肪酸アマイドがポリ脂肪酸アマイドである請求項1~5のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の水性抗菌ニス組成物を被塗布物に塗布してなる塗工物。