(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129841
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】仕切り構造及びそれを備えた移動理美容車並びにそれらを用いた理美容サービス提供方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220830BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20220830BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20220830BHJP
A45D 44/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E04B2/74 541Z
B60P3/00 Z
E04B2/74 541P
E04B2/82 511J
E04B2/82 521A
E04B2/82 501K
E04B2/74 561A
A45D44/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028680
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】521082396
【氏名又は名称】株式会社teto
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴史
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で、理美容サービスの提供等の人に接近して行う作業の実現と、ウイルスや細菌等の感染の抑制とを両立可能な仕切り構造及びそれを備えた移動理美容車並びにそれらを用いた理美容サービス提供方法を提供する。
【解決手段】2つの領域を仕切る仕切り構造であって、所定の間隔をおいて対向する少なくとも2枚の仕切り板と、仕切り板それぞれに貫通して設けられ、互いに対向する少なくとも1組の開口部と、対向する仕切り板に挟まれて形成される間隙部と、柔軟な素材で生成され、対向する開口部のうちの1つの開口部を覆うようにして、仕切り板に取り付けられている被覆部材とを有し、間隙部の周縁は閉じた状態となっており、間隙部内の圧力が2つの領域の圧力と異なっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの領域を仕切る仕切り構造であって、
所定の間隔をおいて対向する少なくとも2枚の仕切り板と、
前記仕切り板それぞれに貫通して設けられ、互いに対向する少なくとも1組の開口部と、
対向する前記仕切り板に挟まれて形成される間隙部と、
柔軟な素材で生成され、対向する前記開口部のうちの1つの開口部を覆うようにして、前記仕切り板に取り付けられている被覆部材とを有し、
前記間隙部の周縁は閉じた状態となっており、
前記間隙部内の圧力が前記2つの領域の圧力と異なっていることを特徴とする仕切り構造。
【請求項2】
前記間隙部内の圧力が前記2つの領域の圧力より低い負圧となっている請求項1に記載の仕切り構造。
【請求項3】
前記仕切り板の1つに吸引口が設けられており、
前記吸引口より前記間隙部内の空気を吸引することにより、前記間隙部内を負圧とする請求項2に記載の仕切り構造。
【請求項4】
対向する前記開口部の大きさが互いに異なる請求項1乃至3のいずれかに記載の仕切り構造。
【請求項5】
開放された2つの端面を有し、一方の端面を前記開口部に嵌合し、他方の端面に前記被覆部材を止着する嵌合部材を用いて、前記被覆部材を前記開口部に取り付ける請求項1乃至4のいずれかに記載の仕切り構造。
【請求項6】
前記被覆部材の一部が手袋の形状となっている請求項1乃至5のいずれかに記載の仕切り構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の仕切り構造を備え、前記2つの領域の一方の領域に理美容師を配置し、他方の領域に利用者を配置して、理美容サービスを提供する移動理美容車。
【請求項8】
前記仕切り板が脱着可能な状態で取り付けられている請求項7に記載の移動理美容車。
【請求項9】
前記利用者を配置する領域に接する前記開口部の大きさが、前記理美容師を配置する領域に接する前記開口部の大きさより大きくなっている請求項7又は8に記載の移動理美容車。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の仕切り構造を用いて、前記2つの領域の一方の領域に理美容師を配置し、他方の領域に利用者を配置して、理美容サービスを提供する理美容サービス提供方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれかに記載の移動理美容車を用いて、前記理美容サービスを提供する理美容サービス提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの領域を仕切る仕切り構造及びそれを備えて理美容サービスを提供する移動理美容車並びにその仕切り構造又はその移動理美容車を用いた理美容サービス提供方法に関し、特に2つの領域間での空気の流出入を抑制する仕切り構造及びそれを備えた移動理美容車並びにそれらを用いた理美容サービス提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、理容室や美容室に通うことが困難な高齢者施設の入居者や病院の入院者のために、出張訪問による理美容サービスの提供が行われている。このような理美容サービスの提供方法として、理美容師が高齢者施設や病院を訪問し、訪問先の一室を使用して散髪等を行うようなサービス形態の他に、理美容サービスを提供するために必要な設備を搭載し、車内で理美容サービスを提供する移動理美容車が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、小型化、軽量化を図ると共に、理美容師が効率よく作業を行うことができる出張理美容室である移動理美容車の提供を目的として、いわゆるワンボックス車の車内に、鏡、理美容用椅子、シャンプー台等の理美容用の設備を配置した移動理美容車が提案されている。
散髪等の理美容サービスでは、理美容師は、客である利用者と非常に近い距離で施術を行う。よって、理美容師又は利用者がウイルスや細菌に感染している場合、それらをうつしてしまうおそれがあり、移動理美容車では狭い空間での施術となるので、そのリスクが高くなる。特に、近年、新型のウイルスによる感染症の流行により、徹底した感染防止対策が求められている。理美容サービスもその例外ではなく、特に高齢者が利用者となる可能性が高い移動理美容車では、感染防止対策が強く求められている。特許文献1では、そのような感染防止対策について何も触れられていない。
【0004】
人と接触する際の感染防止対策として、人と人の間にシールドやパーティションを設置し、人の口から発せられる唾液等の飛散物の拡散を抑制する方法がある。更に、この方法を徹底させ、パーティションを壁や天井まで拡張して部屋を仕切り、飛散物の拡散だけではなく、人と人の間での空気の移動を極力抑える方法がある。このように部屋を完全に仕切って空気の移動を抑える技術は、クリーンルーム製造に関連して開発されている。
クリーンルームは、空気中に浮遊する微粒子や微生物が限定されたレベル以下の清浄度に管理された部屋で、電子機器の製造工場や食品の製造工場等の他に、人に有害となる化学物質等を扱う施設で利用されている。一般的に、クリーンルームは、細菌やホコリ等の外部からの進入を抑えているが、有害な化学物質等を扱う施設では、クリーンルームから外部への化学物質の流出も抑える必要があり、そのための技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、壁や天井を中空のパネルで構成し、区画範囲毎に設けた吸引口から中空パネル内の空気を吸引するクリーンルームが提案されている。特許文献2のクリーンルームでは、内部及び中空パネル内が気密に保たれており、吸引口から中空パネル内の空気を吸引することにより、中空パネル内の圧力を陰圧(負圧)に保つことができ、中空パネル内に汚染物質・ハザード物質を閉じ込めるにようにしている。このような簡便な構造により、クリーンルーム内部の汚染物質・ハザード物質の他室への流出及び外部からの流入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-331045号公報
【特許文献2】特開2008-39229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、移動理美容車等において理美容サービスの施術を行うためには、理美容師が利用者の頭髪等まで手を伸ばす必要がある。感染防止対策として特許文献2のような中空パネルを理美容師と利用者の間に設置した場合、理美容師が利用者の頭髪等まで手が届くようにするためには、パネルに開口部を設ける等の処置が必要となるが、そうした場合、中空パネル内の気密性が低くなり、理美容師と利用者の間で空気の移動が生じ、感染防止が十分に行えない可能性がある。
【0008】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、簡便な構造で、理美容サービスの提供等の人に接近して行う作業の実現と、ウイルスや細菌等の感染の抑制とを両立可能な仕切り構造及びそれを備えた移動理美容車並びにそれらを用いた理美容サービス提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2つの領域を仕切る仕切り構造に関し、本発明の上記目的は、所定の間隔をおいて対向する少なくとも2枚の仕切り板と、前記仕切り板それぞれに貫通して設けられ、互いに対向する少なくとも1組の開口部と、対向する前記仕切り板に挟まれて形成される間隙部と、柔軟な素材で生成され、対向する前記開口部のうちの1つの開口部を覆うようにして、前記仕切り板に取り付けられている被覆部材とを有し、前記間隙部の周縁は閉じた状態となっており、前記間隙部内の圧力が前記2つの領域の圧力と異なっていることにより達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記間隙部内の圧力が前記2つの領域の圧力より低い負圧となっていることにより、或いは、前記仕切り板の1つに吸引口が設けられており、前記吸引口より前記間隙部内の空気を吸引することにより、前記間隙部内を負圧とすることにより、或いは、対向する前記開口部の大きさが互いに異なることにより、或いは、開放された2つの端面を有し、一方の端面を前記開口部に嵌合し、他方の端面に前記被覆部材を止着する嵌合部材を用いて、前記被覆部材を前記開口部に取り付けることにより、或いは、前記被覆部材の一部が手袋の形状となっていることにより、より効果的に達成される。
【0011】
本発明の上記目的は、上記仕切り構造を備え、前記2つの領域の一方の領域に理美容師を配置し、他方の領域に利用者を配置して、理美容サービスを提供する移動理美容車により達成され、前記仕切り板が脱着可能な状態で取り付けられていることにより、或いは、前記利用者を配置する領域に接する前記開口部の大きさが、前記理美容師を配置する領域に接する前記開口部の大きさより大きくなっていることにより、より効果的に達成される。
【0012】
本発明の上記目的は、上記仕切り構造を用いて、前記2つの領域の一方の領域に理美容師を配置し、他方の領域に利用者を配置して、理美容サービスを提供する理美容サービス提供方法により、或いは、上記移動理美容車を用いて、前記理美容サービスを提供する理美容サービス提供方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の仕切り構造によれば、2つの領域を仕切る仕切り板に開口部が設けられているので、その開口部を通して2つの領域を跨った作業を行うことができる。また、開口部の一方は被覆部材で覆われており、仕切り板に挟まれた間隙部内の圧力は2つの領域の圧力と異なっているので、2つの領域間での空気の流出入を抑制し、ウイルスや細菌等の感染を抑制することができる。
本発明の仕切り構造を移動理美容車に備えることにより、ウイルスや細菌等の感染を抑制しながら、理美容サービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る仕切り構造を備えた移動理美容車の例の側面図である。
【
図2】理美容室ボックス内の概要例を示す平面図である。
【
図3】理美容室ボックスに設置される仕切りの正面図である。
【
図4】2枚のアクリル板で構成される仕切り板の正面図及び2枚のアクリル板の接合方法を示す平面図の一部である。
【
図5】理美容室ボックスに設置された仕切りの設置箇所の側面図である。
【
図7】嵌合部材及びカバーグローブを取り付けた仕切りの側面図の一部である。
【
図8】理美容サービスの提供の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、少なくとも2枚の仕切り板で2つの領域を仕切り、仕切り板には、理美容師の手等を挿入するために、対向する開口部が設けられ、対向する開口部のうちの1つの開口部は柔軟な素材で生成された被覆部材で覆われている。よって、一方の領域から他方の領域に、被覆部材が被った状態で手等を伸ばすことができるので、散髪等、人に接近しての作業を、その人に直接接触することなく行うことができる。また、仕切り板に挟まれて形成される空間である間隙部内の圧力を、仕切られた2つの領域の圧力と異なった状態とすることにより、2つの領域間の空気の流出入を抑制することができる。これにより、仕切り板や被覆部材の取付けに高度なシール技術を要することなく、コストを抑えて、ウイルスや細菌等の感染を抑制することができる。なお、本発明において、「理美容サービス」とは、理美容師が仕切り板を介して利用者に対して提供する理容及び美容に関するサービスを意味し、例えば、散髪、調髪等の利用者の髪に対する施術の他に、ハサミ等の道具類の移動、カットクロスの着脱、利用者用椅子の昇降等の施術のために必要な作業等を含む概念である。
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における具体的な数値や形状は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
図1に、本発明に係る仕切り構造を備えた移動理美容車の例の側面図を示す。なお、
図1は、移動理美容車の構成及び機能を説明するために使用するものであり、図で示される形状やサイズ等が実際とは異なっているところがある。他の図においても、同様に形状やサイズ等が実際と異なっていることがある。
【0018】
移動理美容車1は、市販のトラック(本実施形態では2tトラックを使用)をベースに、運転席2の後部に位置する荷台に、箱型のトランクルームである理美容室ボックス3を搭載している。理美容室ボックス3に、理美容サービスを提供する理美容師及び理美容サービスを受ける利用者が搭乗する。理美容室ボックス3は、理美容師が直立しての移動等を不自由なく行えるような高さとなっており、本実施形態では1800mmの高さとなっている。理美容室ボックス3の全長(移動理美容車1の走行方向での長さ)は4900mmで、幅は1900mmである。
【0019】
移動理美容車1を正面から見ての理美容室ボックス3の右側面には、運転席2に近い位置に片開き戸タイプの扉31が設けられており、理美容師は扉31から理美容室ボックス3に出入りする。扉31は地面よりやや高い所に位置することになるので、扉31の取っ手は、高さ方向での中心よりやや低い位置に設けられている。扉31は理美容師が入退室し易いサイズになっており、高さは1600mmで、幅は800mmである。なお、理美容師が扉31から理美容室ボックス3に入退室し易いように、足をかけられるステップや梯子等を扉31の下方の荷台部分に設置しても良い。
【0020】
理美容室ボックス3の運転席2とは反対側の背面には、両開き戸タイプの扉41が設けられており、利用者は扉41から理美容室ボックス3に出入りする。扉41から利用者が理美容室ボックス3に容易に出入りできるように、移動理美容車1の後部にはテールゲート昇降装置(図示せず)が搭載されている。
【0021】
テールゲート昇降装置はテールゲートリフターとも呼ばれ、貨物自動車の車両後部に搭載されるエレベーターで、ボタン操作で荷物等を載せるリフトを昇降することができる。テールゲート昇降装置を使用することにより、車椅子に座っている利用者も容易に理美容室ボックス3に出入りすることができる。テールゲート昇降装置には、構造の種類として、地面に対して垂直になっているレールに装着された台を上下に動かす垂直式や荷台後部の床下に取り付けたアームを動作してリフトの部分を動かすアーム式等があり、リフトの格納方法の種類として、荷台の下にリフトを格納する格納式や後部ドアに張り付くように格納する跳ね上げ式等があるので、使用目的やコスト等を考慮して選択する。
【0022】
なお、テールゲート昇降装置の代わりに、利用者が扉41から理美容室ボックス3に入退室する際に、地面と扉41の間に架けられるスロープや階段等を使用しても良いし、これらを併用しても良い。また、雨や雪が降っているときに扉41から入退室する利用者が濡れないようにするため等の目的で、背面上端と扉41の上端の間や背面上端に接する天井部に、格納式テント等を設置しても良い。
【0023】
扉31が設けられている側面の背面近くの上部には換気扇42が設置されている。換気扇42により、理美容室ボックス3内の換気を行う。なお、換気扇42の設置箇所は適宜変更可能である。また、換気扇42が設置されている側面とは反対側の側面の上部に給気口を設けても良い。
【0024】
理美容室ボックス3内の概要例を示す平面図を
図2に示す。
理美容室ボックス3は、全長の略中央の位置に、移動理美容車1の走行方向に対して垂直となるように設置される2枚の仕切り板50a及び50bで構成される仕切り50により、2つのエリア(領域)に仕切られている。仕切り板50a及び50bは所定の間隔をおいて対向して設置され、仕切り板50aと50bに挟まれた空間が間隙部60となっている。
【0025】
仕切り50より運転席2側のエリアは理美容師エリア30で、理美容師をこのエリアに配置する。もう一方のエリアは利用者エリア40で、理美容サービスを受ける利用者をこのエリアに配置する。扉31は理美容師エリア30側に設けられており、扉41は利用者エリア40側に設けられている。換気扇42は利用者エリア40側に設置されている。
【0026】
利用者エリア40には、利用者が理美容サービスを受ける際に着座する椅子43が配置される。理美容師は、仕切り板50a及び50bに設けられた開口部(後述参照)から手を伸ばして理美容サービスを提供するので、理美容師が理美容サービスの施術を行えるように、椅子43は仕切り50に近い適切な位置に配置する。
【0027】
椅子43は移動可能なものでも、固設されたものでも良い。移動可能なものの場合、椅子43の足にキャスター等が付いて容易に移動させることができるものでも良い。固設されたものの場合、上述のように、仕切り50に近い適切な位置に椅子43を固設する。また、椅子43は回転及び昇降が可能となっている。一般の理美容室でも回転及び昇降可能な椅子を使用することがあるが、理美容室ボックス3にて理美容サービスを提供する場合、理美容師は利用者の周りを自由に移動することができないので、適切な理美容サービスを提供するために、利用者を動かせるように、椅子43は回転及び昇降が可能となっている。
【0028】
本実施形態ではコストを抑えるために、椅子43は手動で回転及び昇降するタイプであるが、自動式のものでも良い。椅子43の回転及び昇降は理美容師が行うので、施術中に理美容師が操作できるように、昇降のためのレバー(以下、「昇降レバー」とする)は椅子43の背面又はその近辺に設置する。回転は、例えば椅子43の背面に棒を立てて、理美容師がその棒をつかんで行う。施術中に意図せずに利用者が回転しないように、好ましくは、回転をロックする機能を椅子43に搭載する。
【0029】
椅子43の背面に、施術中の利用者に対して理美容師が使用するハサミ、カットコーム、ドライヤー等の理美容サービスを提供するための道具類を定置する道具置き場44を設置する。施術中、理美容師が理美容用道具を即座に使用できるように、理美容師の手が届く範囲に道具置き場44を設置する。例えば、椅子43の背面に、スチールやアルミ素材のワイヤーをネット状に編み込んで作られたパネルであるワイヤーネットを付設し、ワイヤーネットにフック等を使用して、理美容用道具を収納するカゴや理美容用道具そのものを掛けるようにする。道具置き場44をこのような構成とすることにより、コストを抑えることができる。なお、道具置き場44は、椅子43の背面ではなく、後述の収納棚45に近い側の椅子43の側面等に設置しても良い。
【0030】
理美容用道具のうちハサミやカットコーム等は利用者毎に交換が必要であるから、それらを複数個用意しておく必要がある。しかし、それらを全て道具置き場44に置いておくのは困難である。そこで、1日で必要な理美容用道具を1か所に纏めて収納する収納棚45を用意し、利用者毎に必要な理美容用道具一式を収納棚45から取り出して、道具置き場44に置くようにする。収納棚45は、理美容師エリア30に配置される理美容師が収納棚45から理美容用道具を取り出し、そのまま道具置き場44に定置できるように、仕切り50及び椅子43の近くに配置する。収納棚45は複数の引き出しを備えており、理美容用道具の種類別や利用者別等で引き出しを使い分ける。
【0031】
また、未使用の理美容用道具と使用済みの理美容用道具が混在しないように、使用済みの理美容用道具を収納するケースや引き出し等(以下、「使用済み用ボックス」とする)(図示せず)を収納棚45とは別に用意しておく。なお、収納棚45は、理美容用道具が整理され、取り出し易いようになっていれば、必ずしも引き出しを備えていなくても良い。また、未使用と使用済みの理美容用道具が分別できるのであれば、収納棚45と使用済み用ボックスを兼用しても良い。
【0032】
仕切り50は、アクリル板を加工して生成された仕切り板50a及び50bで構成される。アクリル板はアクリル樹脂で作られた板で、透明性が高く、切断、穴あけ、曲げ等の加工性に優れ、耐久性もあるので、理美容室ボックス3の仕切りとして使用するのに適した素材である。即ち、理美容室ボックス3内で理美容サービスの施術を行う際、理美容師は仕切り50を通して利用者を見ることになるので、高い透明性が必要となる。また、仕切り板50a及び50bには開口部を設けるので、加工性も重要であり、仕切り50を設置した状態で移動理美容車1は走行するので、振動等への耐久性が必要である。よって、それらの特徴を有するアクリル板が、仕切り板50a及び50bとして適している。なお、アクリル板に限らず、透明性、加工性及び耐久性を有する素材であれば、仕切り板50a及び50bの素材として使用しても良い。
【0033】
図3に仕切り50の正面図を示す。
図3(A)は、仕切り板50aを理美容師エリア30から見た場合の正面図であり、
図3(B)は、仕切り板50bを利用者エリア40から見た場合の正面図である。なお、
図3は、理美容室ボックス3に設置される前の状態での仕切り板50a及び50bの正面図であり、図面での上端が理美容室ボックス3の天井に、下端が理美容室ボックス3の床に、左右端が理美容室ボックス3の壁に止着される。このように仕切り板50a及び50bを止着することにより、間隙部60の周縁が閉じた状態となる。仕切り板50a及び50bの縦(左端及び右端)の長さは1725mm、横(上端及び下端)の長さは1775mm、厚さは5mmである。
【0034】
仕切り板50aには、
図3(A)に示されるように、仕切り板50aを貫通する形で、円形の4つの開口部51a~54a及び吸引口55が設けられている。開口部51a~54aは同じ大きさで、直径が200mmである。
【0035】
吸引口55は、後述のブロワーと接続するダクトの大きさに合わせた大きさとなっており、本実施形態では直径が42mmである。開口部51a~53aは仕切り板50aの下端から同じ高さの位置に設けられており、下端から開口部51a~53aの中心までの距離は950mmである。左端から開口部51aの中心までの距離は745mmで、開口部51aの中心から開口部52aの中心までの距離及び開口部52aの中心から開口部53aの中心までの距離は300mmである。開口部54aは、仕切り板50aの下端から250mm、左端から895mmの位置に中心がくるように設けられている。吸引口55は、仕切り板50aの下端から100mm、左端から100mmの位置に中心がくるように設けられている。
【0036】
仕切り板50bには、
図3(B)に示されるように、仕切り板50bを貫通する形で、円形の4つの開口部51b~54bが設けられている。開口部51b~54bは同じ大きさで、仕切り板50aの開口部51a~54aより大きく、直径は250mmである。仕切り板50a及び50bを理美容室ボックス3に設置した際に、正面から見て、開口部51a~54aの中心と開口部51b~54bの中心がそれぞれ重なるような位置に、開口部51b~54bを設ける。即ち、下端から開口部51b~53bの中心までの距離を950mm、右端から開口部51bの中心までの距離を745mm、開口部51bの中心から開口部52bの中心までの距離及び開口部52bの中心から開口部53bの中心までの距離を300mmとし、下端から開口部54bの中心までの距離を250mm、右端から開口部54bの中心までの距離を895mmとする。
【0037】
理美容師が利用者に対して理美容サービスを提供する場合、開口部51a及び51bに左手を挿入し、開口部52a及び52bに右手を挿入して施術を行う。開口部53a及び53bは、手を挿入して理美容用道具一式を収納棚45から道具置き場44に移動させるために使用する。開口部54a及び54bは、昇降レバーを操作するために使用する。感染防止の点からは開口部の数及び大きさは小さい方が良いが、上述の作業を効率的に実行できることも踏まえて、開口部の数、大きさ及び位置を決定している。また、開口部51b~54bの大きさは、腕の動きの自由度を上げるために、開口部51a~54aより大きくなっている。但し、開口部51a~54aは同じ大きさでなくても良く、開口部51b~54bも同じ大きさでなくても良い。また、開口部51b~54bの大きさを開口部51a~54aと同じ大きさにしても良い。
【0038】
コストや作業効率等を考慮し、仕切り板50a及び50bを、2枚のアクリル板を繋ぎ合わせた構造としても良い。例えば、仕切り板50aを、
図4(A)に示されるように、左右端と平行で開口部54aの中心を通る直線で接合されるアクリル板50a_1及び50a_2で構成しても良い。アクリル板50a_1の右端の一部及びアクリル板50a_2の左端の一部(
図4(A)において破線で囲まれた箇所)を、
図4(B)に示されるように、それぞれ凹部及び凸部を有する形状にし、凹部及び凸部を咬合することにより、アクリル板50a_1及び50a_2を接合する。
図4(B)は、アクリル板50a_1及び50a_2を上端から見た平面図の一部で、アクリル板50a_1の凹状になっている箇所にアクリル板50a_2の凸状になっている箇所を矢印の方向に差し込むことにより、アクリル板50a_1及び50a_2を接合する。仕切り板50bも、同様の形状を使用して、2枚のアクリル板を繋ぎ合わせた構造とすることができる。なお、仕切り板50a及び50bを、
図4(A)に示される接合箇所以外の箇所で接合される2枚のアクリル板で構成しても良く、3枚以上のアクリル板で構成しても良い。
【0039】
仕切り板50a及び50bは、理美容室ボックス3の全長の略中央の位置に、50mmの間隔をあけて、垂直に設置される。仕切り板50aは、理美容師エリア30に近い側に、理美容師エリア30から見た場合の外観が
図3(A)のようになるように設置される。仕切り板50bは、利用者エリア40に近い側に、利用者エリア40から見た場合の外観が
図3(B)のようになるように設置される。
【0040】
仕切り板50a及び50bを理美容室ボックス3の天井、床及び壁に止着するために、例えばアルミアングル及びアルミパイプを使用する。
図5は、理美容室ボックス3に仕切り50を設置し、理美容師エリア30から見て右側の仕切り50の側面図の一部を示しており、
図5(A)に理美容室ボックス3の天井への仕切り50の設置箇所を、
図5(B)に理美容室ボックス3の床への仕切り50の設置箇所を示している。
図5(A)に示されるように、仕切り板50aの上端部をアルミアングル71aとアルミパイプ72で挟み、仕切り板50bの上端部をアルミアングル71bとアルミパイプ72で挟み、アルミアングル71a及び71b並びにアルミパイプ72を理美容室ボックス3の天井(天井材)にネジ止めすることにより、仕切り板50a及び50bを天井に止着する。同様に、
図5(B)に示されるように、仕切り板50aの下端部をアルミアングル73aとアルミパイプ74で挟み、仕切り板50bの下端部をアルミアングル73bとアルミパイプ74で挟み、アルミアングル73a及び73b並びにアルミパイプ74を理美容室ボックス3の床(床材)にネジ止めすることにより、仕切り板50a及び50bを床に止着する。理美容室ボックス3の壁への仕切り板50a及び50bの止着も同様な構造により行う。
【0041】
なお、アルミアングル及びアルミパイプ以外の部材を使用して、仕切り板50a及び50bを理美容室ボックス3に止着しても良い。また、脱着可能な状態で仕切り板50a及び50bを理美容室ボックス3に設置しても良い。例えば、仕切り板50a及び50bが挿入可能な溝を理美容室ボックス3の天井、床及び壁に設け、仕切り板50a及び50bの上端、下端及び左右端をその溝に挿入して、仕切り板50a及び50bを設置する。
【0042】
開口部51a及び51b、52a及び52b、53a及び53b並びに54a及び54bを通して、理美容師エリア30と利用者エリア40の間で空気が流出入するのを抑制するために、仕切り板50aの開口部51a~54aそれぞれを被覆部材で覆う。上述のように、理美容師は開口部51a~53aに手を挿入して理美容サービスの施術や理美容用道具の移動を行うので、開口部51a~53aには、先端が手袋の形状となっており、柔軟な素材、例えば低密度ポリエチレンで生成された被覆部材(以下、「カバーグローブ」とする)を使用する。開口部54aにも柔軟な素材で生成された被覆部材を使用するが、昇降レバーを足で操作する場合等もあるので、必ずしも先端が手袋の形状になっていなくても良い。なお、汗等によるベタつき抑制や脱着の容易さを考慮して、カバーグローブの内側にエンボス加工を施しても良い。また、柔軟な素材であれば、低密度ポリエチレン以外の素材を使用しても良い。
【0043】
カバーグローブを仕切り板50aに直接接着しても良いが、カバーグローブは適宜交換が必要となるから、交換が比較的容易にできるように、嵌合部材を介して開口部51a~54aそれぞれにカバーグローブを取り付ける。例えば、
図6に示されるような嵌合部材を使用する。
【0044】
図6では、本実施形態で使用する嵌合部材80の正面図を
図6(A)に、平面図を
図6(B)に示す。嵌合部材80は、嵌合部81、湾曲部82及び止着部83から成り、嵌合部81及び止着部83は円柱の側面の形状をしており、
図6(B)の平面図で示されるように、嵌合部81及び止着部83は同心円となっている。湾曲部82は緩やかに湾曲した形状で、嵌合部81の一方の端面(円形になっている面)と止着部83の一方の端面(円形になっている面)に接着している。嵌合部材80は、嵌合部81が仕切り板50aの開口部51a~54aに嵌合した状態で取り付けられ、止着部83にカバーグローブが止着される。よって、嵌合部81の端面の大きさは開口部51a~54aと略同じ大きさで、止着部83の端面の大きさはカバーグローブを止着するのに適した大きさである。
【0045】
また、嵌合部材80は上述のような使用に対応できる素材で生成され、例えば高密度ポリエチレンで生成される。なお、嵌合部材80の形状は、開口部51a~54aに嵌合でき、カバーグローブを止着できるのであれば、
図6に示されるような形状に限定されない。また、素材も高密度ポリエチレンに限定されない。
【0046】
カバーグローブとして、低密度ポリエチレンを素材とした市販のロングタイプの手袋を使用し、嵌合部材80を開口部51aに嵌合し、カバーグローブ90を止着した場合の仕切り50を上端から見た平面図の一部を
図7に示す。
嵌合部材80は、止着部83が理美容師エリア30側に位置するようにして、嵌合部81を開口部51aに嵌合する。この際、嵌合部材80の密着力を強化するために、嵌合部81にゴムパッキン等を巻着して開口部51aに嵌合しても良い。カバーグローブ90は、手袋の形状となっている端が利用者エリア40に位置するようにし、もう一方の開放されている端を止着部83に止着する。止着する方法としては、例えばカバーグローブ90を止着部83の端面の中に通し、開放されている端を折り返して止着部83の外側に密着させ、ゴム等で固定する。これにより、カバーグローブ90を容易に交換できるようになる。
【0047】
理美容師は、カバーグローブ90に手を通した状態で、利用者に対して理美容サービスの施術を行う。カバーグローブ90は利用者毎に交換するが、カバーグローブ90よりも短い手袋(以下、「個別手袋」とする)をカバーグローブ90の上に重ねた状態で施術を行い、個別手袋を利用者毎に交換するようにしても良い。これにより、利用者毎にカバーグローブ90を交換するよりも、交換にかかる時間を短縮し、コストも抑えることができる。1日で必要な個別手袋を理美容用道具と一緒に収納棚45に収納しておき、理美容師は利用者毎に個別手袋を収納棚45から取り出して、道具置き場44に定置する。個別手袋を使い捨てとして使用する場合、使用済みの個別手袋を収納するダストボックスを理美容師エリア30内の理美容師の手が届く範囲に設置する。
【0048】
開口部52a及び53aにも同様の嵌合部材80が嵌合され、カバーグローブ90が止着される。但し、開口部51aに取り付けられるカバーグローブ90は左手用、開口部52aに取り付けられるカバーグローブ90は右手用となる。開口部53aに取り付けられるカバーグローブ90はどちらでも良い。開口部54aにも同様の嵌合部材80が嵌合されるが、上述のように、止着される被覆部材は、必ずしもカバーグローブ90のように先端が手袋の形状になっていなくても良い。
【0049】
なお、カバーグローブ90を仕切り板50bの開口部51b~54bに取り付けても良い。嵌合部材80を使用して開口部51b~54bにカバーグローブ90を取り付ける場合、嵌合部81の端面の大きさは、開口部51b~54bの大きさに合わせた大きさとなる。また、嵌合部材80を、止着部83が利用者エリア側に位置するように開口部51aに嵌合しても良い。ただ、理美容師の腕の動きの自由度を上げるには、
図7に示されるような向きで嵌合する方が好ましい。
【0050】
仕切り50を使用して、理美容師エリア30内の理美容師が利用者エリア40内の利用者に理美容サービスを提供するとき、仕切り板50aと50bに挟まれた間隙部60を負圧、即ち、間隙部60内の圧力が理美容師エリア30及び利用者エリア40内の圧力よりも低い状態にすると共に、間隙部60内の空気を外部に排出する。間隙部60を負圧にすることにより、理美容師エリア30から利用者エリア40に空気が流出しようとしても、また、利用者エリア40から理美容師エリア30に空気が流出しようとしても、それらの空気は間隙部60に流れ込み、更に間隙部60に流れ込んだ空気は外部に排出されるので、空気内にウイルスや細菌等を存在しても、理美容師及び利用者がそれらに感染することを抑制することができる。
【0051】
間隙部60を負圧にするために、仕切り板50aに設けられた吸引口55から間隙部60内の空気を吸引する。そのために、ブロワーを使用する。ブロワーは気体にエネルギーを与えて圧力を上げ、速度を増加させて送り出す装置であり、空気の送出だけではなく、吸引も可能であるから、この吸引機能を使用して、間隙部60内の空気を吸引する。具体的には、例えば、ブロワーが吸引する空気を外部に排出するための排出口を理美容師エリア30の壁に設け、その排出口とブロワーの吐出口をダクトで接続し、更にブロワーの吸引口と吸引口55をダクトで接続し、ブロワーを起動する。これにより、間隙部60内の空気が吸引され、間隙部60が負圧になると共に、間隙部60内の空気が外部に排出される。理美容サービスの施術中にブロワーを起動させることになるので、好ましくは、低騒音形のブロワーを使用する。なお、ブロワー使用時、換気扇42は使用しない。また、好ましくは、微差圧計を使用して、ブロワー使用により間隙部60が負圧になっていることを確認する。
【0052】
吸引口55を仕切り板50aではなく、仕切り板50bに設け、利用者エリア40側から間隙部60内の空気を外部に排出するようにしても良い。または、吸引口を間隙部60に接する理美容室ボックス3の壁に設け、ブロワーを外部に持ち出して、間隙部60内の空気を外部に排出するようにしても良い。また、間隙部60を負圧にしているが、間隙部60を正圧、即ち、間隙部60内の圧力が理美容師エリア30及び利用者エリア40内の圧力よりも高い状態にし、間隙部60内の空気を理美容師エリア30及び利用者エリア40に排出するようにしても良い。間隙部60を正圧にすることにより、理美容師エリア30から利用者エリア40に空気が流出しようとしても、また、利用者エリア40から理美容師エリア30に空気が流出しようとしても、それらの空気は押し返されるので、流出を抑制することができる。
【0053】
このような構成の移動理美容車1により理美容サービスを提供する際の手順例を、
図8のフローチャートを参照して説明する。なお、理美容サービスの施術中、理美容師は使い捨ての個別手袋を使用するものとする。また、カットされた髪の清掃等の作業の説明は省略する。
【0054】
理美容師は理美容師エリア30に入室し、最初の利用者が利用者エリア40に入室する前に、ブロワーを起動させ、間隙部60を負圧にする(ステップS10)。微差圧計を使用する場合、微差圧計にて間隙部60が負圧になっていることを確認する。
【0055】
理美容師は、利用者が入室する前に、開口部53aに取り付けられたカバーグローブ90に手を挿入して、収納棚45から1人分の理美容用道具一式及び個別手袋を取り出し、道具置き場44に定置する(ステップS20)。なお、ドライヤー等、利用者毎に交換しない理美容用道具は予め道具置き場に定置しておくか、道具置き場に常備させておく。
【0056】
利用者が利用者エリア40に入室し、椅子43に着座したら、理美容師は、開口部51a及び52aに取り付けられたカバーグローブ90に両手を挿入し、道具置き場44から個別手袋を取り出し、カバーグローブ90の上から両手にはめる(ステップ30)。そして、理美容師は理美容サービスの施術を行う(ステップS40)。施術中、必要に応じて、理美容師は椅子43を回転及び/又は昇降させる。椅子43を昇降させる場合は、開口部54aに取り付けられた被覆部材を介して昇降レバーを操作する。
【0057】
理美容サービスの施術が終了し、利用者が退室したら、理美容師は、使用した理美容道具を使用済み用ボックスに収納し、個別手袋をダストボックスに収納する(ステップS50)。その後、その日の最後の利用者への理美容サービスの提供が終了するまで(ステップS60)、利用者毎にステップS20~S50を繰り返す。
その日の最後の利用者への理美容サービスの提供が終了したら(ステップS60)、ブロワーを停止する(ステップS70)。
【0058】
上述の実施形態において、間隙部60を負圧にした状態での理美容室ボックス3内の空気の流れによっては、仕切り板50aの上部に、開口部51a~54aとは別に、開口部を設けても良い。例えば、
図9に示されるように、仕切り板50aの上部に開口部56及び57を設けた仕切り板50Aを仕切り板50aの代わりに使用する。仕切り板50bにはこのような開口部は設けない。これにより、理美容室ボックス3内の空気の流れがスムーズになる可能性がある。
図9での開口部56及び57の直径は共に100mmで、開口部56は仕切り板50Aの下端から1600mm、左端から195mmの位置に中心がくるように設けられ、開口部57は仕切り板50Aの下端から1600mm、右端から180mmの位置に中心がくるように設けられている。また、作業の効率化や感染の抑止力等を考慮して、仕切り板50a及び50bでの対向する開口部の数を増減しても良い。更に、仕切り50を2枚の仕切り板で構成するのではなく、3枚以上の仕切り板で構成しても良い。
【0059】
上述の実施形態では、移動理美容車に搭載される理美容室ボックスに仕切り50を設けているが、車ではなく、固定された理美容室の部屋に仕切り50を設けて、部屋内の感染抑制を図っても良い。また、理美容サービスの提供以外の業務や作業において、本実施形態の仕切り構造を利用しても良い。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えば構成物の寸法、重量等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 移動理美容車
2 運転席
3 理美容室ボックス
30 理美容師エリア
31、41 扉
40 利用者エリア
42 換気扇
43 椅子
44 道具置き場
45 収納棚
50 仕切り
50a、50b、50A 仕切り板
51a、51b、52a、52b、53a、53b、54a、54b、56、57 開口部
55 吸引口
71a、71b、73a、73b アルミアングル
72、74 アルミパイプ
80 嵌合部材
90 カバーグローブ