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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129917
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ショットキーバリアダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20220830BHJP
   H01L 29/24 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/24
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L29/06 301R
H01L29/06 301V
H01L29/06 301M
H01L29/48 F
H01L29/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028798
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実
(72)【発明者】
【氏名】川崎 克己
(72)【発明者】
【氏名】平林 潤
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB07
4M104BB09
4M104BB14
4M104BB16
4M104CC03
4M104EE03
4M104FF06
4M104FF07
4M104FF11
4M104GG03
4M104GG18
4M104HH20
(57)【要約】
【課題】酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードの絶縁破壊を防止する。
【解決手段】ショットキーバリアダイオード11は、半導体基板20上に設けられたドリフト層30と、アノード電極40及びカソード電極50とを備える。ドリフト層30に設けられた外周トレンチ61の幅W1は中心トレンチ62の幅W2よりも広い。外周トレンチ61の外周壁S1は、外側に向かうにつれて垂直に近くなる湾曲形状を有しており、外周トレンチ61の内周壁S2は、外周壁S1よりも垂直に近い。これにより、逆方向電圧が印加された場合に外周トレンチ61の外周底部に生じる電界が緩和される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウムからなる半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、
前記ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、
前記半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、
前記ドリフト層に設けられたトレンチの内壁を覆う第1の絶縁膜と、を備え、
前記トレンチは、リング状に形成された外周トレンチと、前記外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチとを含み、
前記アノード電極の一部は、前記第1の絶縁膜を介して前記外周トレンチ及び前記中心トレンチ内に埋め込まれ、
前記外周トレンチの幅は、前記中心トレンチの幅よりも広く、
前記外周トレンチの外周壁は、外側に向かうにつれて垂直に近くなる湾曲形状を有しており、
前記外周トレンチの内周壁は、前記外周壁よりも垂直に近いことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
前記外周トレンチは、前記中心トレンチよりも深いことを特徴とする請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。
【請求項3】
前記外周トレンチ内の前記アノード電極を覆う第2の絶縁膜をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のショットキーバリアダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショットキーバリアダイオードに関し、特に、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオードは、金属と半導体の接合によって生じるショットキー障壁を利用した整流素子であり、PN接合を有する通常のダイオードに比べて順方向電圧が低く、且つ、スイッチング速度が速いという特徴を有している。このため、ショットキーバリアダイオードはパワーデバイス用のスイッチング素子として利用されることがある。
【0003】
ショットキーバリアダイオードをパワーデバイス用のスイッチング素子として用いる場合、十分な逆方向耐圧を確保する必要があることから、シリコン(Si)の代わりに、よりバンドギャップの大きい炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)などが用いられることがある。中でも、酸化ガリウムは、バンドギャップが4.8~4.9eVと非常に大きく、絶縁破壊電界も約8MV/cmと大きいことから、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードは、パワーデバイス用のスイッチング素子として非常に有望である。酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードの例は、特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウム層に複数のトレンチを設け、絶縁膜を介してアノード電極の一部をトレンチ内に埋め込んだ構造を有している。このように、酸化ガリウム層に複数のトレンチを設ければ、逆方向電圧が印加されるとトレンチ間に位置するメサ領域が空乏層となるため、ドリフト層のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流を大幅に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-199869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレンチを有する従来のショットキーバリアダイオードは、逆方向電圧が印加されると最外周に位置するトレンチの外周底部に電界が集中し、この部分において絶縁破壊が生じやすいという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードにおいて、逆方向電圧が印加された場合に生じる電界を緩和することにより、絶縁破壊を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウムからなる半導体基板と、半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、ドリフト層に設けられたトレンチの内壁を覆う第1の絶縁膜とを備え、トレンチは、リング状に形成された外周トレンチと外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチとを含み、アノード電極の一部は、第1の絶縁膜を介して外周トレンチ及び中心トレンチ内に埋め込まれ、外周トレンチの幅は中心トレンチの幅よりも広く、外周トレンチの外周壁は、外側に向かうにつれて垂直に近くなる湾曲形状を有しており、外周トレンチの内周壁は、外周壁よりも垂直に近いことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、外周トレンチの外周壁が外側に向かうにつれて垂直に近くなる湾曲形状を有していることから、逆方向電圧が印加された場合に外周トレンチの外周底部に生じる電界が緩和される。しかも、外周トレンチの内周壁は外周壁よりも垂直に近いことから、中心トレンチと外周トレンチの間のメサ幅が広がりすぎることもない。
【0010】
本発明において、外周トレンチは中心トレンチよりも深くても構わない。これによれば、外周トレンチの外周底部に生じる電界をより緩和することができる。
【0011】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、外周トレンチ内のアノード電極を覆う第2の絶縁膜をさらに備えていても構わない。これによれば、アノード電極が第2の絶縁膜によって保護される。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、逆方向電圧が印加された場合に生じる電界が緩和されることから、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードの絶縁破壊を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11の構成を示す模式的な平面図である。
図2図2は、図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
図3図3は、比較例によるショットキーバリアダイオード10の構成を示す略断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード12の構成を示す略断面図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード13の構成を示す略断面図である。
図6図6は、本発明の第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード14の構成を示す略断面図である。
図7図7は、本発明の第5の実施形態によるショットキーバリアダイオード15の構成を示す略断面図である。
図8図8は、本発明の第6の実施形態によるショットキーバリアダイオード16の構成を示す略断面図である。
図9図9は、本発明の第7の実施形態によるショットキーバリアダイオード17の構成を示す略断面図である。
図10図10は、本発明の第8の実施形態によるショットキーバリアダイオード18の構成を示す略断面図である。
図11図11は、実施例1のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12図12は、実施例2のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11の構成を示す模式的な平面図である。また、図2は、図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード11は、いずれも酸化ガリウム(β-Ga)からなる半導体基板20及びドリフト層30を備える。半導体基板20及びドリフト層30には、n型ドーパントとしてシリコン(Si)又はスズ(Sn)が導入されている。ドーパントの濃度は、ドリフト層30よりも半導体基板20の方が高く、これにより半導体基板20はn層、ドリフト層30はn層として機能する。
【0017】
半導体基板20は、融液成長法などを用いて形成されたバルク結晶を切断加工したものであり、その厚みは250μm程度である。半導体基板20の平面サイズについては特に限定されないが、一般的に素子に流す電流量に応じて選択することになり、順方向の最大電流量が20A程度であれば、平面視で2.4mm×2.4mm程度とすればよい。
【0018】
半導体基板20は、実装時において上面側に位置する上面21と、上面21の反対側であって、実装時において下面側に位置する裏面22を有する。上面21の全面にはドリフト層30が形成されている。ドリフト層30は、半導体基板20の上面21に反応性スパッタリング、PLD法、MBE法、MOCVD法、HVPE法などを用いて酸化ガリウムをエピタキシャル成長させた薄膜である。ドリフト層30の膜厚については特に限定されないが、一般的に素子の逆方向耐電圧に応じて選択することになり、600V程度の耐圧を確保するためには、例えば7μm程度とすればよい。
【0019】
ドリフト層30の上面31には、ドリフト層30とショットキー接触するアノード電極40が形成されている。アノード電極40は、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)等の金属からなる。アノード電極40は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Pt/Au、Pt/Al、Pd/Au、Pd/Al、Pt/Ti/AuまたはPd/Ti/Auであっても構わない。一方、半導体基板20の裏面22には、半導体基板20とオーミック接触するカソード電極50が設けられる。カソード電極50は、例えばチタン(Ti)等の金属からなる。カソード電極50は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/AuまたはTi/Alであっても構わない。
【0020】
本実施形態においては、ドリフト層30にトレンチ61,62が設けられている。トレンチ61,62は、いずれも平面視でアノード電極40と重なる位置に設けられている。このうち、トレンチ61はリング状に形成された外周トレンチであり、トレンチ62は外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチである。外周トレンチ61と中心トレンチ62が完全に分離されている必要はなく、図1に示すように、外周トレンチ61と中心トレンチ62がつながっていても構わない。本実施形態においては、外周トレンチ61と中心トレンチ62の深さは同じである。
【0021】
トレンチ61,62の内壁はHfOなどからなる絶縁膜63で覆われ、トレンチ61,62の内部は絶縁膜63を介してアノード電極40と同じ材料で埋め込まれている。本実施形態においては、ドリフト層30に複数のトレンチ61,62が設けられているため、アノード電極40の材料としては、モリブデン(Mo)や銅(Cu)などの仕事関数が低い材料であっても構わない。また、ドリフト層30に複数のトレンチ61,62が設けられていることから、ドリフト層30のドーパント濃度を4×1016cm-3程度に高めることができる。
【0022】
ドリフト層30のうちトレンチ61,62によって区画される部分はメサ領域Mを構成する。メサ領域Mは、アノード電極40とカソード電極50との間に逆方向電圧が印加されると空乏層となるため、ドリフト層30のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流が大幅に抑制される。
【0023】
本実施形態においては、A-A線に沿った外周トレンチ61の幅をW1とし、中心トレンチ62の幅をW2とした場合、
W1>W2
に設定されている。ここで、外周トレンチ61の幅W1とは径方向における幅を指し、中心トレンチ62の幅W2とはメサ幅方向における幅を指す。
【0024】
さらに、外周トレンチ61の外周壁S1は、外側に向かうにつれて垂直に近くなる緩やかな湾曲形状を有しているのに対し、外周トレンチ61の内周壁S2は、外周壁S1よりも垂直に近い。つまり、外周トレンチ61の外周壁S1は、内周壁S2との境界近傍においては、ドリフト層30の上面31に対する角度が小さいものの、外側に向かうにつれてドリフト層30の上面31に対する角度が徐々に増大し、ドリフト層30の上面31近傍においてはほぼ垂直となる。つまり、径方向における外周壁S1の断面は、2次関数的な曲線を描く。これに対し、外周トレンチ61の内周壁S2は、外周壁S1との境界近傍においてはやや湾曲しているものの、ほぼ垂直である。
【0025】
このように、本実施形態においては、外周トレンチ61の径方向における断面が非対称である。ここで、外周トレンチ61の幅W1を中心トレンチ62の幅W2よりも大きく設定している理由の一つは、外周壁S1を緩やかに湾曲させるのに十分な径方向のスペースを確保するためである。このような形状を有する外周トレンチ61は、例えば、複数のマスクを用いてドリフト層30を多段階にエッチングすることによって形成することができる。
【0026】
図3は、比較例によるショットキーバリアダイオード10の構成を示す略断面図である。
【0027】
図3に示すショットキーバリアダイオード10は、外周トレンチ61の径方向における断面が対称形であり、外周壁S1及び内周壁S2がいずれもほぼ垂直である。このような構造の場合、外周壁S1と底面部S3の間に位置する外周底部Aの曲率半径が小さくなるため、この部分に電界が集中し、場合によっては絶縁破壊が生じる。
【0028】
これに対し、本実施形態によるショットキーバリアダイオード11は、外周トレンチ61の径方向における断面が非対称であり、外周壁S1自体が大きな曲率半径を有する緩やかな湾曲面を構成していることから、電界が広く分散される。本実施形態においては、外周壁S1と内周壁S2の境界部分に位置する内周底部Bの曲率半径については比較的小さいものの、曲率半径の大きい外周壁S1自体が電界を分散させるため、内周底部Bにおける電界の集中はほとんど生じない。しかも、内周壁S2については、ドリフト層30の上面31に対してほぼ垂直であることから、外周トレンチ61と中心トレンチ62の間に形成されるメサ領域Mのメサ幅が広がりすぎることがない。このため、逆方向電圧が印加された場合に、ドリフト層30のチャネル領域を確実にピンチオフすることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード11は、外周トレンチ61の外周壁S1自体が大きな曲率半径を有する湾曲面を構成していることから、逆方向電圧が印加された場合であっても局所的な電界の集中が生じにくい。これにより、逆方向電圧が印加された場合に生じやすい、外周トレンチ61の外周底部における絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0030】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード12の構成を示す略断面図である。
【0031】
図4に示すように、第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード12は、外周トレンチ61がほぼ平坦な底面部S3を有している点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
本実施形態が例示するように、本発明において、外周壁S1と内周壁S2の間にほぼ平坦な底面部S3が存在していても構わない。
【0033】
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード13の構成を示す略断面図である。
【0034】
図5に示すように、第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード13は、外周トレンチ61の深さD1が中心トレンチ62の深さD2よりも深い点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
本実施形態のように、外周トレンチ61の深さD1を中心トレンチ62の深さD2よりも深くすれば、外周トレンチ61の外周壁S1の曲率半径がより大きくなることから、電界の集中がより緩和される。但し、外周トレンチ61の深さD1が深すぎると、外周トレンチ61の底部に位置するドリフト層30の残膜が薄くなりすぎ、かえって電界が強くなる。このため、外周トレンチ61の深さD1は、外周トレンチ61の底部に位置するドリフト層30の厚みが1μm以上となる範囲に設定することが好ましい。
【0036】
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード14の構成を示す略断面図である。
【0037】
図6に示すように、第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード14は、外周トレンチ61の上部に位置するアノード電極40の一部が除去されている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態が例示するように、本発明において、アノード電極40の上面が平坦である必要はなく、一部が除去されていても構わない。
【0039】
<第5の実施形態>
図7は、本発明の第5の実施形態によるショットキーバリアダイオード15の構成を示す略断面図である。
【0040】
図7に示すように、第5の実施形態によるショットキーバリアダイオード15は、外周トレンチ61内に位置するアノード電極40の一部が除去されている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
本実施形態が例示するように、本発明において、外周トレンチ61の内部がアノード電極40で満たされている必要はなく、部分的に空洞が存在していても構わない。
【0042】
<第6の実施形態>
図8は、本発明の第6の実施形態によるショットキーバリアダイオード16の構成を示す略断面図である。
【0043】
図8に示すように、第6の実施形態によるショットキーバリアダイオード16は、アノード電極40の外周が絶縁膜70で覆われている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード11と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
絶縁層70の材料としては、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂を用いても構わないし、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化物や無機窒化物を用いても構わない。
【0045】
本実施形態が例示するように、本発明において、アノード電極40の外周が絶縁膜70で覆われていても構わない。
【0046】
<第7の実施形態>
図9は、本発明の第7の実施形態によるショットキーバリアダイオード17の構成を示す略断面図である。
【0047】
図9に示すように、第7の実施形態によるショットキーバリアダイオード17は、アノード電極40の外周が絶縁膜70で覆われている点において、第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード14と相違している。その他の基本的な構成は第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード14と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
本実施形態が例示するように、本発明において、アノード電極40の外周が絶縁膜70で覆われていても構わない。
【0049】
<第8の実施形態>
図10は、本発明の第8の実施形態によるショットキーバリアダイオード18の構成を示す略断面図である。
【0050】
図10に示すように、第8の実施形態によるショットキーバリアダイオード18は、外周トレンチ61の一部に絶縁膜70が埋め込まれている点において、第5の実施形態によるショットキーバリアダイオード15と相違している。その他の基本的な構成は第5の実施形態によるショットキーバリアダイオード15と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
本実施形態が例示するように、本発明において、外周トレンチ61の一部に絶縁膜70が埋め込まれていても構わない。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例0053】
<実施例1>
図1及び図2に示したショットキーバリアダイオード11と同じ構造を有する実施例1のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に600Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。半導体基板20のドーパント濃度については1×1018cm-3とし、ドリフト層30のドーパント濃度としては4×1016cm-3とした。ドリフト層30の厚みは7μmとした。また、外周トレンチ61及び中心トレンチ62の深さはいずれも3μmとした。中心トレンチ62の幅W2、並びに、アノード電極40と接する部分におけるドリフト層30の幅、つまりメサ領域Mの幅については、いずれも1.5μmとした。絶縁膜63は厚さ50nmのHfO膜とした。アノード電極40の材料はCuとし、カソード電極50の材料はTiとAuの積層膜とした。そして、外周トレンチ61の幅W1を変数としてシミュレーションを行った。
【0054】
結果を図11に示す。図11に示すように、外周トレンチ61の幅W1が中心トレンチ62の幅W2及びメサ幅である1.5μm未満である場合、外周壁S1に加わる最大電界強度(Emax)は、酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cmを超えた。これに対し、外周トレンチ61の幅W1が1.5μm以上であれば、外周壁S1に加わる最大電界強度は、酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cm以下であった。特に、外周トレンチ61の幅W1が6μmである場合に最も電界強度が弱く、5.6MV/cmであった。外周トレンチ61の幅W1が10μmである場合には、最大電界強度が5.8MV/cmであった。外周トレンチ61の幅W1をそれ以上に拡大すると電界強度がやや大きくなったが、外周トレンチ61の幅W1が40μm以下であれば、最大電界強度は7MV/cm以下であった。
【0055】
<比較例>
図3に示したショットキーバリアダイオード10と同じ構造を有する比較例1のシミュレーションモデルを想定し、実施例1と同じ条件でシミュレーションを行った。外周トレンチ61の形状は対称形であり、その幅W1は10μmとした。その結果、図3に示す外周底部Aにおける最大電界強度は8.6MV/cmであった。
【0056】
<実施例2>
図5に示したショットキーバリアダイオード13と同じ構造を有する実施例2のシミュレーションモデルを想定し、実施例1と同じ条件でシミュレーションを行った。外周トレンチ61の幅W1は3μmに固定し、外周トレンチ61の深さD1を変数としてシミュレーションを行った。
【0057】
結果を図12に示す。図12に示すように、外周トレンチ61の深さD1が中心トレンチ62の深さD2と同じ(3μm)である場合には最大電界強度が6.5MV/cmであったが、外周トレンチ61の深さD1を中心トレンチ62の深さD2より深くすると、電界強度がより低下し、外周トレンチ61の深さD1が4μmである場合の最大電界強度は5.7MV/cmであった。しかしながら、外周トレンチ61の深さD1が6μmであると、ドリフト層30の残膜厚が薄くなりすぎ、最大電界強度は7.2MV/cmとなった。一方、外周トレンチ61の深さD1を中心トレンチ62の深さD2よりも浅い2μmとすると、最大電界強度は酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cmを超えた。
【符号の説明】
【0058】
10~18 ショットキーバリアダイオード
20 半導体基板
21 半導体基板の上面
22 半導体基板の裏面
30 ドリフト層
31 ドリフト層の上面
40 アノード電極
50 カソード電極
61 外周トレンチ
62 中心トレンチ
63,70 絶縁膜
A 外周底部
B 内周底部
M メサ領域
S1 外周壁
S2 内周壁
S3 底面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12