(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130016
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】希釈器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220830BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028942
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】頭川 天洋
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC02
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127EE24
(57)【要約】
【課題】排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる希釈器を提供すること。
【解決手段】希釈器30の第1室41は、第2室42に比べて長手方向Aの寸法が大きい。アノードオフガス流入口50は、容器31の第1端部31aに配置されて第1室41に接続され、カソードオフガス流入口51は、容器31の第2端部31bに配置されて第2室42に接続されている。排出口52は、容器31の第2端部31bに配置されて第2室42に接続されている。容器31の長手方向Aに対し、第1流入方向及び第2流入方向が交差している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から排出されたアノードオフガス及びカソードオフガスが流入して前記アノードオフガスを前記カソードオフガスで希釈して排出する希釈器であって、
内部空間を画定する長尺な容器と、
前記内部空間に配置される仕切板と、
前記内部空間に前記アノードオフガスを流入させるアノードオフガス流入口と、
前記内部空間に前記カソードオフガスを流入させるカソードオフガス流入口と、
前記内部空間から、前記アノードオフガスと前記カソードオフガスの混合ガスである排出ガスを排出する排出口と、を有し、
前記容器は、当該容器の長手方向に延びる軸線が水平方向に延びるように配置され、
前記仕切板は、前記内部空間を、互いに繋がる第1室と第2室に仕切り、
前記アノードオフガス流入口から前記第1室に向かう前記アノードオフガスの流れを第1流入方向とし、
前記カソードオフガス流入口から前記第2室に向かう前記カソードオフガスの流れを第2流入方向とすると、
前記長手方向に対し、前記第1流入方向及び前記第2流入方向が交差しており、
前記第1室は、前記第2室に比べて前記長手方向の寸法が大きく、
前記アノードオフガス流入口は、前記容器の前記長手方向の第1端部に配置されて前記第1室に接続され、
前記カソードオフガス流入口は、前記容器の前記長手方向の第2端部に配置されて前記第2室に接続され、
前記排出口は、前記容器の前記第2端部に配置されて前記第2室に接続されている希釈器。
【請求項2】
前記仕切板は、前記第1室に面する第1面と、前記第2室に面する第2面とを有し、前記軸線に前記第1面及び前記第2面が直交している請求項1に記載の希釈器。
【請求項3】
前記アノードオフガス流入口は、前記第1流入方向が上から下となるように前記容器の上部で前記第1室に接続されている請求項1又は請求項2に記載の希釈器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードオフガスをカソードオフガスで希釈して排出する希釈器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池から排出されたアノードオフガスを、カソードオフガスで希釈する希釈器を備える。例えば、特許文献1の排ガス処理装置に開示の希釈容器は、内部に仕切り板を有する。希釈容器の内部は仕切り板によって第1室と第2室とに区画されている。第1室には、燃料電池からカソードオフガスが導入される。第2室には、燃料電池からアノードオフガスが導入される。希釈容器の内部には、仕切り板の先端側に隙間が設けられている。隙間は、希釈容器の内部で第1室と第2室とを連通させる。
【0003】
第1室には排気部及びカソードオフガス導入部が設けられている。第2室にはアノードオフガス導入部が設けられている。アノードオフガス導入部とカソードオフガス導入部とは、アノードオフガスの導入方向とカソードオフガスの導入方向とが同じ方向になるように配置されている。
【0004】
第1室にカソードオフガスが導入され、第2室にアノードオフガスが導入される。第2室に導入されたアノードオフガスは第1室を経て排気部から排出される。カソードオフガスによりアノードオフガスが希釈されて排気ガスとなり、排気ガスは排気部を経て希釈容器外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の排ガス処理装置では、アノードオフガス導入部から第2室に導入されたアノードオフガスが、そのまま第1室に向けて流動して、第1室に流入してしまうことがある。すると、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率が低くなり、排気ガスの水素濃度を低く抑えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための希釈器は、燃料電池から排出されたアノードオフガス及びカソードオフガスが流入して前記アノードオフガスを前記カソードオフガスで希釈して排出する希釈器であって、内部空間を画定する長尺な容器と、前記内部空間に配置される仕切板と、前記内部空間に前記アノードオフガスを流入させるアノードオフガス流入口と、前記内部空間に前記カソードオフガスを流入させるカソードオフガス流入口と、前記内部空間から、前記アノードオフガスと前記カソードオフガスの混合ガスである排出ガスを排出する排出口と、を有し、前記容器は、当該容器の長手方向に延びる軸線が水平方向に延びるように配置され、前記仕切板は、前記内部空間を、互いに繋がる第1室と第2室に仕切り、前記アノードオフガス流入口から前記第1室に向かう前記アノードオフガスの流れを第1流入方向とし、前記カソードオフガス流入口から前記第2室に向かう前記カソードオフガスの流れを第2流入方向とすると、前記長手方向に対し、前記第1流入方向及び前記第2流入方向が交差しており、前記第1室は、前記第2室に比べて前記長手方向の寸法が大きく、前記アノードオフガス流入口は、前記容器の前記長手方向の第1端部に配置されて前記第1室に接続され、前記カソードオフガス流入口は、前記容器の前記長手方向の第2端部に配置されて前記第2室に接続され、前記排出口は、前記容器の前記第2端部に配置されて前記第2室に接続されていることを要旨とする。
【0008】
これによれば、第1室は、容器内の長尺な空間であり、その第1室に接続されたアノードオフガス流入口は、容器の第1端部に配置されている。つまり、アノードオフガス流入口は、容器の長手方向に沿って仕切板及び第2室から大きく離れている。このため、第1室によってアノードオフガスの圧力損失を大きくでき、第1室に流入したアノードオフガスの流速を減少させることができる。このため、単位時間当たりに、第1室から第2室に流入するアノードオフガスの量を抑えることができる。よって、第2室において、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率を高めることができ、排出口から排出される排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【0009】
希釈器について、前記仕切板は、前記第1室に面する第1面と、前記第2室に面する第2面とを有し、前記軸線に前記第1面及び前記第2面が直交していてもよい。
これによれば、仕切板が第2室を狭めるように傾斜していると、第2室にはアノードオフガスやカソードオフガスの滞留しやすい空間が形成される。しかし、軸線に対し、仕切板の第1面及び第2面が直交することで、上記空間が第2室に形成されることを抑制できる。その結果、第2室にてアノードオフガスとカソードオフガスを合流させやすく、排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【0010】
希釈器について、前記アノードオフガス流入口は、前記第1流入方向が上から下となるように前記容器の上部で前記第1室に接続されていてもよい。
これによれば、アノードオフガス流入口において、アノードオフガスに含まれる水は自重で落下する。よって、アノードオフガスに含まれる水によってアノードオフガス流入口が塞がれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、希釈器を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
<燃料電池システムの全体構成>
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池11、水素タンク12、エアコンプレッサ13、気液分離器14、排水タンク15、及び希釈器30を有する。また、燃料電池システム10は、燃料電池11の図示しないアノードと水素タンク12を接続するアノードガス供給路16と、燃料電池11の図示しないカソードとエアコンプレッサ13を接続するカソードガス供給路17と、を有する。
【0014】
燃料電池システム10は、燃料電池11の図示しないアノードと気液分離器14を接続する第1排出路18と、気液分離器14と希釈器30を接続する第2排出路19と、第2排出路19に設けられたバルブ24と、を有する。第1排出路18と、気液分離器14と、第2排出路19は、燃料電池11と希釈器30を接続するアノードオフガス排出路20を構成する。
【0015】
燃料電池システム10は、希釈器30と排水タンク15を接続する排水路21と、燃料電池11の図示しないカソードと希釈器30を接続するカソードオフガス排出路22と、気液分離器14とアノードガス供給路16を接続するアノードガス循環路23と、を有する。
【0016】
アノードガス供給路16には、水素タンク12から燃料電池11に向けてアノードガスが流動する。アノードガスは水素ガスである。
カソードガス供給路17には、エアコンプレッサ13から燃料電池11に向けて、大気中の酸素を含む空気がカソードガスとして流動する。
【0017】
第1排出路18には、燃料電池11から気液分離器14に向けてアノードオフガスが流動する。アノードオフガスには、燃料電池11で未反応の水素と、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。
【0018】
気液分離器14は、アノードオフガスに含まれる水素と水とを分離する。
第2排出路19には、気液分離器14から希釈器30に向けて、気液分離器14により分離されたアノードガスが流動する。したがって、アノードオフガス排出路20の出口となる第2排出路19の出口からは、水の分離されたアノードオフガスが排出される。
【0019】
カソードオフガス排出路22には、燃料電池11から希釈器30に向けてカソードオフガスが流動する。カソードオフガスには、燃料電池11で未反応の酸素を含む空気と、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。排水路21には、希釈器30から排出された水が流動する。アノードガス循環路23には、気液分離器14からアノードガス供給路16に向けてアノードガスが流れる。
【0020】
バルブ24は、アノードオフガス排出路20の一部である第2排出路19を開閉する。バルブ24は、定常的に閉じられているが、気液分離器14に所定量のアノードオフガスが貯留されると瞬時的に開かれる。バルブ24が開くと、気液分離器14から希釈器30に向けてアノードオフガスが排出される。
【0021】
希釈器30には、燃料電池11から排出されたアノードオフガス及びカソードオフガスが流入する。希釈器30は、流入したアノードオフガスをカソードオフガスで希釈した排出ガスを排出する。排出ガスは、アノードオフガスとカソードオフガスの混合ガスである。
【0022】
<希釈器>
図2~
図4に示すように、希釈器30は、長尺な容器31と、容器31の内部空間Sに配置される仕切板40と、を有する。容器31及び仕切板40は金属板製である。本実施形態では、「長尺」とは、容器31の長手方向Aに直交する方向での当該容器31の長さ寸法に対し、容器31の長手方向Aの寸法が2倍以上とされていることをいう。希釈器30は、内部空間Sにアノードオフガスを流入させるアノードオフガス流入口50と、内部空間Sにカソードオフガスを流入させるカソードオフガス流入口51と、内部空間Sから排出ガスを排出する排出口52と、を有する。
【0023】
なお、希釈器30が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいい、X軸と平行な方向を水平方向Xともいう。また、Y軸と平行な方向を奥行方向Yともいう。したがって、奥行方向Yは、水平方向X及び鉛直方向Zの両方に直交する方向である。容器31の長手方向Aは水平方向Xと一致する。容器31の長手方向Aへ直線状に延びる仮想線を軸線Lとする。容器31は軸線Lが水平に延びる状態に燃料電池システム10に配置されている。
【0024】
容器31は鉛直方向Zに対向する底板32と天板33を有する。底板32及び天板33の長辺は水平方向Xに延び、底板32及び天板33の短辺は奥行方向Yに延びる。なお、底板32と天板33の鉛直方向Zの間隔は、奥行方向Yに一定であってもよいし、奥行方向Yの一端から他端に向けて変化していてもよい。
【0025】
容器31は奥行方向Yに対向する第1側板34と第2側板35を有する。第1側板34及び第2側板35の長辺は水平方向Xに延び、第1側板34及び第2側板35の短辺は鉛直方向Zに延びる。
【0026】
容器31は水平方向Xに対向する第1端板36と第2端板37を有する。第1端板36及び第1端板36は四角板状である。第1端板36及び第2端板37の一対の辺は奥行方向Yに延び、第1端板36及び第2端板37の他の一対の辺は鉛直方向Zに延びる。
【0027】
底板32、天板33、第1側板34、第2側板35、第1端板36、及び第2端板37は、容器31を構成する板である。容器31の長手方向Aは、底板32、天板33、第1側板34及び第2側板35の長辺の延びる方向である。容器31の長手方向Aの第1端部31aは、第1端板36を含む端部である。容器31の長手方向Aの第2端部31bは、第2端板37を含む端部である。第1端部31aと第2端部31bは、容器31の長手方向Aの両側に離れた端部である。
【0028】
内部空間Sは、底板32と、天板33と、第1側板34と、第2側板35と、第1端板36と、第2端板37によって画定された空間である。内部空間Sは、容器31の長手方向Aに長尺な空間である。
【0029】
軸線Lが直交する仮想面Mでの内部空間Sの断面積を流路断面積Saとする。容器31は流路断面積Saが長手方向Aに一定である。流路断面積Saは、容器31の第1端部31aから第2端部31bに向けて一定の大きさである。内部空間Sの容積を一定とすると、容器31の軸線Lが長くなるほど、流路断面積Saが小さくなる。容器31の形状は、燃料電池システム10への搭載性及び周囲の部材との配置を加味したうえで、軸線Lを可能な限り長くし、流路断面積Saを可能な限り小さくするように設計される。その結果として、容器31は、長手方向Aに細長な直方体状である。
【0030】
仕切板40は、四角板状である。仕切板40の四つの縁部のうち、鉛直方向Zの一端の縁部は底板32の内面32aに接合され、鉛直方向Zの他端の縁部は天板33の内面33aに接合されている。仕切板40の四つの縁部のうち、奥行方向Yの一端の縁部は、第1側板34の内面34aに接合され、奥行方向Yの他端の縁部は、第2側板35の内面35aから離れている。
【0031】
仕切板40の四つの縁部のうち、第2側板35の内面35aから離れた縁部を先端縁部40aとする。容器31は、仕切板40の先端縁部40aと、第2側板35の内面35aとの間に連通口38を有する。
【0032】
鉛直方向Zでの連通口38の寸法は、鉛直方向Zでの底板32と天板33の内面32a,33a間の寸法と同じである。第1室41から第2室42へアノードオフガスが大量に流入することを抑制するため、連通口38の寸法は小さい方が好ましい。したがって、先端縁部40aは、第2側板35の内面35aから僅かに離れているだけである。
【0033】
仕切板40は、内部空間Sを、互いに繋がる第1室41と第2室42に仕切る。第1室41と第2室42は、連通口38によって繋がっている。仕切板40は、板厚方向の一面に第1面40bを有し、板厚方向の他面に第2面40cを有する。第1面40bは、第1室41に面し、第2面40cは第2室42に面する。
【0034】
第1室41は、長手方向Aに沿う第1端板36の内面36aから仕切板40の第1面40bまでの空間である。第1室41の長手方向Aの第1寸法M1は、長手方向Aに沿う第1端板36の内面36aから仕切板40の第1面40bまでである。
【0035】
第2室42は、長手方向Aに沿う第2端板37の内面37aから仕切板40の第2面40cまでの空間である。第2室42の長手方向Aの第2寸法M2は、長手方向Aに沿う第2端板37の内面37aから仕切板40の第2面40cまでである。第1寸法M1は第2寸法M2より大きい。
【0036】
軸線Lに対し、仕切板40の第1面40b及び第2面40cは直交している。したがって、底板32の内面32a、天板33の内面33a、及び第1側板34の内面34aは、仕切板40の第1面40b及び第2面40cに直交している。
【0037】
アノードオフガス流入口50は、容器31の第1端部31aに配置されている。アノードオフガス流入口50は、天板33の長手方向Aでの位置のうち、第1端板36に近接した位置に配置されている。
【0038】
アノードオフガス流入口50は、天板33を板厚方向に貫通する。アノードオフガス流入口50は、第1室41に接続されている。アノードオフガス流入口50は、第2排出路19に接続されている。上記したように、第2排出路19のバルブ24が開くと、気液分離器14から希釈器30に向けてアノードオフガスが排出される。第2排出路19を流動するアノードオフガスは、アノードオフガス流入口50を経由して第1室41に流入する。
【0039】
アノードオフガス流入口50から第1室41に向かうアノードオフガスの流れを第1流入方向V1とする。第1流入方向V1は上から下である。したがって、アノードオフガス流入口50は、第1流入方向V1が上から下となるように容器31の上部で第1室41に接続されている。この第1流入方向V1は、容器31の長手方向Aに対し交差している。
【0040】
カソードオフガス流入口51は、容器31の第2端部31bに配置されている。カソードオフガス流入口51は、第2側板35の長手方向Aでの位置のうち、第2端板37に近接した位置に配置されている。
【0041】
カソードオフガス流入口51は、第2側板35を板厚方向に貫通する。カソードオフガス流入口51は、第2室42に接続されている。カソードオフガス流入口51は、カソードオフガス排出路22に接続されている。カソードオフガス排出路22を流動するカソードオフガスは、カソードオフガス流入口51を経由して第2室42に流入する。
【0042】
カソードオフガス流入口51から第2室42に向かうカソードオフガスの流れを第2流入方向V2とする。第2流入方向V2は奥行方向Yである。カソードオフガス流入口51は、第2流入方向V2が第1流入方向V1に直交するように容器31の側部である第2側板35で第2室42に接続されている。第2流入方向V2は、容器31の長手方向Aに対し交差している。
【0043】
排出口52は、容器31の第2端部31bに配置されている。排出口52は、第2端板37を板厚方向に貫通する。排出口52は、第2室42に接続されている。アノードオフガスとカソードオフガスが混合された排出ガスは排出口52を経由して大気に排出される。
【0044】
排出口52から排出される排出ガスの流れを排出方向V3とする。排出方向V3は、第1流入方向V1及び第2流入方向V2に直交する。また、排出方向V3は、長手方向Aと同じである。排出口52は、排出方向V3が第1流入方向V1及び第2流入方向V2に直交するように容器の側部である第2端板37で第2室42に接続されている。
【0045】
アノードオフガス流入口50と、カソードオフガス流入口51と、排出口52は、それぞれ容器31の異なる板に設けられている。つまり、アノードオフガス流入口50と、カソードオフガス流入口51と、排出口52は、容器31の同じ板に設けられていない。
【0046】
アノードオフガス流入口50は、容器31の第1端部31aに配置され、カソードオフガス流入口51は、容器31の第2端部31bに配置されている。アノードオフガス流入口50とカソードオフガス流入口51は、容器31の長手方向Aの両端部に配置されている。アノードオフガス流入口50とカソードオフガス流入口51は、容器31の長手方向Aに可能な限り離れて配置されている。
【0047】
<作用>
希釈器30の作用を説明する。
図1に示すように、燃料電池11から排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス排出路22及びカソードオフガス流入口51を経由して第2室42に常時流入している。バルブ24が閉じているときは、第1室41及び第2室42にはカソードオフガスが流入している。
【0048】
第2排出路19のバルブ24が開くと、
図3に示すように、気液分離器14から希釈器30に向けてアノードオフガスが排出される。第2排出路19を流動するアノードオフガスは、アノードオフガス流入口50を経由して第1室41に流入する。
【0049】
アノードオフガスは、第1流入方向V1に沿ってアノードオフガス流入口50から第1室41に流入する。第1室41に流入したアノードオフガスは、底板32の内面32a、天板33の内面33a、第1側板34の内面34a、第2側板35の内面35a、及び第1端板36の内面36aに接触して、仕切板40に向かうように向きを変え、仕切板40に向けて流動する。
【0050】
容器31の軸線Lを可能な限り長くし、流路断面積Saを可能な限り小さくしている。このため、仕切板40に向けて第1室41を流動するアノードオフガスには大きな圧力損失を発生させることができ、アノードオフガスの流速は減少する。このため、連通口38を経由して第2室42に流入するアノードオフガスの時間当たりの量を抑えることができる。そして、連通口38を経由して第2室42に流入したアノードオフガスは、第2室42においてカソードオフガスと混合され、排出ガスとして排出口52から排出される。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)希釈器30の容器31を長尺とし、仕切板40により、内部空間Sを第1室41と第2室42に仕切った。第1室41は長尺な空間であり、アノードオフガス流入口50を容器31の第1端部31aに配置した。このため、アノードオフガス流入口50を、容器31の長手方向Aに沿って仕切板40及び第2室42から大きく離すことができる。よって、アノードオフガス流入口50から第1室41に流入したアノードオフガスの圧力損失を大きくでき、アノードオフガスの流速を減少させることができる。その結果、単位時間当たりに、第1室41から第2室42に流入するアノードオフガスの量を抑えることができる。よって、第2室42において、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率を高めることができ、排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【0052】
(2)容器31の長手方向Aに対し、第1流入方向V1が交差する。このため、アノードオフガスは、第1室41に流入すると、容器31の内面によって流れる向きが変わる。このとき、圧力損失が生じてアノードオフガスの流速を減少させることができる。また、容器31の長手方向Aに対し、第2流入方向V2が交差する。このため、長手方向Aに流れるアノードオフガスをカソードオフガスに合流させやすく、第2室42において、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率を高めることができ、排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【0053】
(3)第2室42を狭くするように、仕切板40が第2端板37に向けて傾斜していると、第2室42において、仕切板40の基端寄りにはアノードオフガスやカソードオフガスの滞留しやすい空間が形成されやすくなる。しかし、仕切板40は、容器31の長手方向Aが直交するように容器31内に配置されている。このため、ガスの滞留しやすい空間が第2室42に形成されることを抑制して、第2室42にてアノードオフガスとカソードオフガスとを合流させやすく、排出ガスの水素濃度を低く抑えることができる。
【0054】
(4)アノードオフガスの第1流入方向V1は上から下である。このため、アノードオフガスに含まれる水は自重で落下する。よって、アノードオフガスに含まれる水がアノードオフガス流入口50及び第2排出路19を塞ぐことを抑制できる。
【0055】
(5)希釈器30は、容器31の形状と、アノードオフガス流入口50及びカソードオフガス流入口51の配置を調節することで、水素吸蔵合金を用いることなく排出ガスの水素濃度を低減させることができる。容器31内に水素吸蔵合金を配置して排出ガスの水素濃度を低減させる構成と比べると希釈器30を軽量化できる。また、水素吸蔵合金を配置するための容積を容器31に確保する必要がないため、容器31を小型化でき、希釈器30を小型化できる。
【0056】
(6)希釈器30の容器31及び仕切板40は金属板製である。希釈器30は、金属板の板金によって製造できるため、希釈器30の製造コストが安価である。
(7)内部空間Sの容積を一定とした中では、軸線Lが長くなるほど、流路断面積Saが小さくなり、第1室41でのアノードオフガスの圧力損失を大きくできる。軸線Lの長さと、流路断面積Saの大きさを調節することで、希釈器30による希釈性能を調節できる。したがって、希釈器30が搭載される燃料電池システム10に合わせた希釈器30の形状及び性能の調節が容易である。
【0057】
(8)排出ガスの排出方向V3は、カソードオフガスの第2流入方向V2に直交する。このため、カソードオフガス流入口51から第2室42に流入したカソードオフガスは、アノードオフガスと混合せずに排出口52から排出されることが抑制される。その結果、第2室42において、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率を高めることができる。
【0058】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 容器31の第1端部31aであれば、アノードオフガス流入口50は、底板32、第1側板34、又は第2側板35に配置されていてもよい。同様に、容器31の第2端部31bであれば、カソードオフガス流入口51は、底板32、天板33、又は第1側板34に配置されていてもよい。
【0059】
○ 排出口52は、第2端板37ではなく、底板32、天板33、第1側板34、又は第2側板35に配置してもよい。
○ 連通口38は、仕切板40と底板32の内面32aとの間、仕切板40と天板33の内面33aとの間、又は仕切板40と第1側板34の内面34aとの間に形成されていてもよい。
【0060】
○ 第1室41と第2室42が互いに繋がっていれば、連通口38の形状は変更してもよい。例えば、仕切板40の四つの縁部の全てを容器31の内面に接合しつつ、仕切板40を板厚方向に貫通する孔を形成し、その孔を連通口38としてもよい。
【0061】
○ 容器31の軸線Lに対し、仕切板40の第1面40b及び第2面40cが直交していなくてもよい。
○ 容器31は樹脂成形されていてもよい。
【0062】
○ 容器31は円筒のパイプ状でもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記第2室から前記排出口に向かう排出ガスの流れを排出方向とすると、前記排出口は、前記排出方向が前記第2流入方向に直交するように前記容器の側部で前記第2室に接続されている。
【0063】
(ロ)前記容器は金属板製である。
【符号の説明】
【0064】
A…長手方向、L…軸線、S…内部空間、V1…第1流入方向、V2…第2流入方向、X…水平方向、11…燃料電池、30…希釈器、31…容器、31a…第1端部、31b…第2端部、40…仕切板、40b…第1面、40c…第2面、41…第1室、42…第2室、50…アノードオフガス流入口、51…カソードオフガス流入口、52…排出口。