(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130550
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】内視鏡用接着剤及びその硬化物、並びに内視鏡及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20220830BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220830BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20220830BHJP
C09J 163/04 20060101ALI20220830BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220830BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220830BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61B1/005 511
A61B1/00 731
C09J163/02
C09J163/04
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102237
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2021502090の分割
【原出願日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2019032973
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】古川 和史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部材の固定化に用いた状態(硬化物の状態)で機械的ストレスを繰り返しかけても、また化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、十分な接着力を維持することができる内視鏡用接着剤、その硬化物、この硬化物により部材を固定化した内視鏡及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記(a)~(c)を含む内視鏡用接着剤、その硬化物、この硬化物により部材を固定化した内視鏡及びその製造方法:(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含むエポキシ樹脂;(b)分子内に酸素原子を有しアミド結合を有しないポリアミン化合物;(c)アルキル修飾無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物の少なくとも1種。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)を含む内視鏡用接着剤:
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含むエポキシ樹脂;
(b)分子内に酸素原子を有しアミド結合を有しないポリアミン化合物;
(c)アルキル修飾無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物の少なくとも1種。
【請求項2】
前記ポリアミン化合物がオキシアルキレン構造を有する、請求項1に記載の内視鏡用接着剤。
【請求項3】
前記無機フィラーがシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム及び層状ケイ酸塩の少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の内視鏡用接着剤。
【請求項4】
前記アミド化合物が脂肪酸とポリアミンとの反応物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の内視鏡用接着剤。
【請求項5】
前記脂肪酸ワックスが硬化ひまし油である、請求項1~4のいずれか1項に記載の内視鏡用接着剤。
【請求項6】
前記ソルビトール化合物がジベンジリデンソルビトール化合物及びトリベンジリデンソルビトール化合物の少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の内視鏡用接着剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の内視鏡用接着剤を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物により構成部材が固定された内視鏡。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の内視鏡用接着剤を用いて構成部材を固定することを含む、内視鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用接着剤及びその硬化物、並びに内視鏡及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の体腔内、消化管内、食道等を観察するための内視鏡は繰り返し使用される。そのため、内視鏡の挿入部を構成する可撓管は使用のたびに洗浄され、また薬品を用いて消毒される。特に気管支等の感染可能性の高い部位に挿入する場合には、消毒を越える滅菌レベルの清浄性が求められる。したがって、内視鏡には高水準の清浄処理の繰り返しにも耐える高度な耐久性が求められる。
【0003】
内視鏡の挿入部は、口腔ないし鼻腔を通して体内に挿入される。挿入時における患者の異物感および痛みを軽減するため、内視鏡の挿入部をより細径化することが望まれる。そのため、挿入部を構成する部材の結合に、ネジ、ビス等の嵩張る部材に代えて、主として接着剤が用いられている。
【0004】
接着剤のなかでもエポキシ系接着剤は作業性に優れ、その硬化物の接着性、耐熱性、耐湿性等にも優れるため、内視鏡の構成部材の接着にも多用されている。
例えば特許文献1には、エポキシ樹脂を主成分とし、無機両イオン交換体を含有する接着剤組成物が記載されている。特許文献1には、この接着剤組成物の無機両イオン交換体を、金属原子を含む無機化合物で構成すること、また、接着剤組成物中に硬化剤としてキシレンジアミン、ポリアミン、3級アミン等を含有させたり、無機充填剤を含有させたりすることなども記載されている。特許文献1によれば、上記接着剤組成物の硬化物は滅菌ガスに対する耐久性に優れ、内視鏡の構成部材同士の接合用途に好適であるとされる。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、この熱硬化性樹脂に分散された赤外線吸収剤とを含む医療機器用熱硬化型接着剤が記載されている。特許文献2によれば、この接着剤は赤外線照射による加熱によって迅速に硬化することができるため、熱的ストレスによる医療機器への影響を軽減できるとされる。
また、特許文献3には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち少なくとも1種のビスフェノール系エポキシ樹脂を主剤とし、これにポリアミドアミン系硬化剤を組合せたベース接着剤中に、直径350nm以下の多層カーボンナノチューブを1wt%以上30wt%以下混入した医療機器用接着剤が記載されている。特許文献3によれば、この接着剤の硬化物が種々の消毒方法によっても接着強度が低下せず、生体適合性も有するとされる。
また、特許文献4には、外皮層外周に形成され、軟性エポキシ樹脂を含有する密着性向上層と、密着性向上層の外周に形成され、フッ化ビニリデン単位を含むフッ素樹脂を含有するオーバーコート層とを備えた内視鏡用可撓管が記載されている。特許文献4によれば、上記内視鏡用可撓管は、オートクレーブ滅菌処理及び過酸化水素プラズマ滅菌処理を施した場合でも外皮の破損及び劣化が抑制され、必要な柔軟性と保護性が維持できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-214546号公報
【特許文献2】特開2017-185086号公報
【特許文献3】特開2008-284191号公報
【特許文献4】特開2011-212338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内視鏡は長期に亘り繰り返し使用されるため、接着剤による内視鏡部材の固定化状態は、内視鏡を長期間、繰り返し使用しても十分に維持できることが要求される。特に内視鏡挿入部は湾曲の繰り返しによる機械的負荷(振動、荷重等)が大きく、このような機械的なストレスに繰り返し曝されても固定化状態を十分に維持できることが求められる。また、過酸化水素プラズマ処理のような化学的作用を伴う高水準の清浄処理(滅菌処理)に繰り返し曝されても、上記固定化状態を十分に維持できることが求められることは上述した通りである。しかし、本発明者らが上記各特許文献記載の接着剤をはじめ従来のエポキシ系接着剤について検討したところ、内視鏡への適用において要求される上記の互いに異質ともいうべき耐久性の両立を十分に高いレベルで実現するには至っていないことがわかってきた。
【0007】
本発明は、内視鏡の構成部材を固定するのに好適な内視鏡用接着剤であって、部材の固定化に用いた状態(硬化物の状態)で機械的ストレスを繰り返しかけても、また化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、十分な接着力を維持することができる内視鏡用接着剤、及びその硬化物を提供することを課題とする。また、本発明は、上記の機械的ストレス及び化学的な滅菌処理に繰り返し付しても性能の低下を生じにくい内視鏡及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、エポキシ系接着剤において、主剤のエポキシ樹脂と組合せる硬化成分として特定のポリアミン化合物を用い、さらに無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス、及びソルビトール化合物の少なくとも1種を配合することにより、この接着剤を用いて接合した部材の固定化状態を、機械的ストレスを繰り返しかけても、また化学的作用を伴う滅菌処理に繰り返し付しても、十分に維持できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
下記(a)~(c)を含む内視鏡用接着剤:
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含むエポキシ樹脂;
(b)分子内に酸素原子を有しアミド結合を有しないポリアミン化合物;
(c)無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物の少なくとも1種。
〔2〕
上記ポリアミン化合物がオキシアルキレン構造を有する、〔1〕に記載の内視鏡用接着剤。
〔3〕
上記無機フィラーがシリカ、酸化チタン、アルミナ及び層状ケイ酸塩の少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の内視鏡用接着剤。
〔4〕
上記無機フィラーが表面処理されている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤。
〔5〕
上記アミド化合物が脂肪酸とポリアミンとの反応物である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤。
〔6〕
上記脂肪酸ワックスが硬化ひまし油である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤。
〔7〕
上記ソルビトール化合物がジベンジリデンソルビトール化合物及びトリベンジリデンソルビトール化合物の少なくとも1種である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤を硬化してなる硬化物。
〔9〕
〔8〕に記載の硬化物により構成部材が固定された内視鏡。
〔10〕
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の内視鏡用接着剤を用いて構成部材を固定することを含む、内視鏡の製造方法。
【0010】
本発明の説明において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内視鏡用接着剤は、内視鏡部材の固定化に用いた状態(硬化物の状態)で機械的ストレスを繰り返しかけても、また、化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、十分な接着力を維持することができる。また、本発明の硬化物は、機械的ストレスの繰り返しに対する耐久性に優れ、化学的な滅菌処理の繰り返しに対する耐久性にも優れる。また、本発明の内視鏡は、機械的ストレスに繰り返し付しても、また、化学的な滅菌処理に繰り返し付しても性能の低下を生じにくい。さらに、本発明の内視鏡の製造方法によれば、機械的ストレスを繰り返しかけても、また、化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、性能の劣化を生じにくい内視鏡を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の内視鏡の一実施形態の構成を示す外観図である。
【
図2】
図1に示す内視鏡の挿入部の構成を示す部分断面図である。
【
図4】上記先端部の一部切り欠き部分断面図である。レンズ及びプリズムの断面を示すハッチングは省略した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[内視鏡用接着剤]
本発明の内視鏡用接着剤の好ましい実施形態について説明する。
【0014】
本発明の内視鏡用接着剤(以下、「本発明の接着剤」とも称す。)は、下記成分(a)~(c)を含む。
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含むエポキシ樹脂;
(b)分子内に酸素原子を有しアミド結合を有しないポリアミン化合物;
(c)無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物の少なくとも1種。
上記(a)のエポキシ樹脂(以下、単に「成分(a)」とも称す。)は接着剤の主剤であり、上記(b)のポリアミン化合物(以下、単に「成分(b)」とも称す。)はエポキシ樹脂と反応して接着剤を硬化させる硬化成分である。また、上記(c)の化合物(以下、単に「成分(c)」とも称す。)は、接着剤の硬化物中においてエポキシ樹脂のネットワークとは別の独自のネットワークを形成するなどして、機械的ストレス等に対する耐久性の向上に寄与する。
【0015】
本発明の接着剤は、上記各成分を含んでいれば、その形態は制限されない。例えば、本発明の内視鏡用接着剤は上記成分(a)~(c)の混合物を含有する形態でもよく(1液型)、上記成分(a)~(c)の一部の成分が他の成分とより分けられた状態で、成分(a)~(c)を含んでいてもよい(2液型)。また、本発明の内視鏡用接着剤は、成分(a)~(c)の各々が互いにより分けられた状態で、成分(a)~(c)を含んでいてもよい(3液型)。これらのいずれの形態も本発明の接着剤に包含される。
本明細書において接着剤中における各成分の含有量を説明したり、本発明において接着剤中における各成分の含有量を規定したりする場合、2液型及び3液型等の形態においては、使用時の成分(a)~(c)の混合を、混合物中において各成分が上記の所望の含有量を満たすように行うことを意味する。すなわち、成分がより分けられた状態においては、成分(a)~(c)の各含有量は、本明細書で説明された含有量、あるいは本発明で規定する含有量を満たしている必要はない。つまり、2液型及び3液型等の形態においては、使用時に成分(a)~(c)を混合した時点において、本明細書で説明された含有量、あるいは本発明で規定する含有量を満たすことを意味する。
【0016】
本発明の内視鏡用接着剤が1液型の場合、及び2液型等でも互いに反応し得る成分が混合されている場合(例えば、エポキシ樹脂とポリアミン化合物とが混合されている場合)には、成分同士の反応を生じずに又は十分に抑制して各成分が安定に維持された状態を保つため、上記接着剤が反応を事実上生じないレベルまで低温で保存することが好ましい。例えば、-20℃以下で保存することができ、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下で保存する。また、必要により遮光して保存することができる。
【0017】
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、溶媒、可塑剤、密着向上剤(シランカップリング剤等)、界面活性剤、着色剤(顔料、染料等)、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、離型剤、導電剤、粘度調節剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)、チキソ性付与剤、希釈剤、及び難燃剤等を含むことができる。
【0018】
本発明の接着剤を硬化して得られる硬化物は、部材の固定化に用いた状態で機械的ストレスを繰り返しかけても、また化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、十分な接着力を維持することができる。この理由は定かではないが、成分(b)が分子中に酸素原子を有しかつアミド結合を有しないことにより、硬化物にほどよく柔軟性が付与されてより強靭な物性となること、成分(c)が硬化物中において独自のネットワークを形成することなどが複合的に作用しているものと推定される。
【0019】
本発明の接着剤は、内視鏡を構成する各種の部材(内視鏡構成部材)の固定化に好適である。すなわち、本発明の接着剤は、内視鏡構成部材を内視鏡の別の構成部材と接着(接合)して固定するために好適に用いられる。内視鏡構成部材の固定に用いた接着剤は硬化物となって内視鏡の接着部を構成する。
本発明の接着剤を用いて固定される部材に特に制限はなく、好ましくは金属部材、ガラス部材、樹脂部材等を挙げることができる。内視鏡構成部材の「固定」は、内視鏡構成部材を、内視鏡を構成する別の部材(支持部材)と接着することにより行われる。なお、支持部材は内視鏡の管壁等又は管壁等に固定された非可動部材であってもよく、チューブのように内視鏡内における相対的な位置が移動しうる部材であってもよい。また、本発明において「固定」との用語は、内視鏡構成部材と、この部材が組み込まれる支持部材との間の空間を接着剤の硬化物で埋めること、すなわち封止することを含む意味に用いる。
本発明の接着剤を構成する各成分について以下に説明する。
【0020】
<(a)エポキシ樹脂>
本発明の接着剤は成分(a)としてエポキシ樹脂を含み、このエポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含む。本発明の接着剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるエポキシ樹脂を1種含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
本発明の接着剤に含まれるエポキシ樹脂の総量に占める、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の総量の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。さらに好ましくは、本発明の接着剤に含まれる上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも1種である。
本発明の接着剤に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、10~1000が好ましく50~500がより好ましく、80~400がさらに好ましく、100~300が特に好ましい。本発明の接着剤に含まれるエポキシ樹脂は、通常は1分子中にエポキシ基を2つ以上有する。
エポキシ当量は、エポキシ化合物の分子量を、エポキシ化合物が有するエポキシ基のモル数で除した値である。
【0021】
本発明の接着剤に用い得るビスフェノールA型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。好ましい具体例として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(jER825、jER828及びjER834(いずれも商品名)、三菱化学社製)及びビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル(シグマアルドリッチ社製)が挙げられる。
【0022】
本発明の接着剤に用い得るビスフェノールF型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。好ましい具体例として、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(商品名:EPICLON830、DIC社製)及び4,4'-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)が挙げられる。
【0023】
本発明の接着剤に用い得るフェノールノボラック型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。このようなフェノールノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、シグマアルドリッチ社から製品番号406775として販売されている。
【0024】
本発明の接着剤に含まれるエポキシ樹脂の含有量は、5~90質量%とすることができ、10~80質量%がより好ましい。また、20~80質量%とすることも好ましく、30~80質量%とすることも好ましく、40~80質量%とすることも好ましく、50~75質量%とすることも好ましい。
【0025】
<(b)ポリアミン化合物>
本発明の接着剤は、成分(b)として1種又は2種以上のポリアミン化合物を含有する。成分(b)のポリアミン化合物は分子内に酸素原子を有する。また、成分(b)のポリアミン化合物は分子内にアミド結合(-NH-CO-)を有さず、この点においてポリアミドアミンと区別され、また成分(c)のアミド化合物とも区別される。成分(b)のポリアミン化合物は、活性水素を有するアミノ基を1分子中に2つ以上有する化合物である。このポリアミン化合物は無置換アミノ基(-NH2)を有することが好ましく、無置換アミノ基を2つ以上有することがより好ましい。このポリアミン化合物は、さらに好ましくは第一級ポリアミン化合物(アミノ基のすべてが無置換アミノ基であるポリアミン化合物)である。
成分(b)のポリアミン化合物1分子が有する、活性水素を有するアミノ基の数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~6がさらに好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。なかでもジアミン化合物及びトリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
成分(b)のポリアミン化合物の活性水素当量(アミノ基が有する活性水素の当量)は10~2000が好ましく、20~1000がより好ましく、30~900がさらに好ましく、40~800がさらに好ましく、60~700がさらに好ましく、65~600が特に好ましい。
活性水素当量は、ポリアミン化合物の分子量を、ポリアミン化合物が有するアミノ基の活性水素のモル数で除した値である(ポリアミン化合物におけるアミノ基の活性水素1つ当たりの分子量を意味する)。
【0026】
成分(b)のポリアミン化合物の分子量は100~6000が好ましく、100~3000がより好ましい。ポリアミン化合物がポリマーである場合(例えば後述のポリオキシアルキレン基を有する場合)には、上記分子量は数平均分子量である。
【0027】
なかでも成分(b)のポリアミン化合物は、硬化物により柔軟性を与え、より強靭な物性となることから、分子中にオキシアルキレン構造を有することが好ましく、ポリオキシアルキレン構造を有することがより好ましい。
オキシアルキレン構造を有するポリアミン化合物は、ポリオキシアルキレンジアミン化合物、又はポリオキシアルキレントリアミン化合物であることがより好ましい。
上記オキシアルキレン構造のアルキレン基は、直鎖アルキレン基でもよく、分岐を有するアルキレン基でもよい。また、上記オキシアルキレン構造のアルキレン基は、炭素数が1~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
上記オキシアルキレン構造は、より好ましくは、オキシエチレン構造、又はオキシプロピレン構造である。
成分(b)のポリアミン化合物がポリオキシアルキレン構造を有する場合、このポリオキシアルキレン構造を構成する複数のオキシアルキレン基は、互いに同一でもよく、異なってもよい。また、上記のポリオキシアルキレン構造が有するオキシアルキレン基の平均繰り返し数は、2~1000が好ましく、3~500がより好ましい。また、この平均繰り返し数は、2~100であることも好ましく、2~50であることも好ましく、2~35であることも好ましく、2~25であることも好ましい。成分(b)のポリアミン化合物は、ポリオキシアルキレン構造を複数有していてもよい。
【0028】
本発明に用い得るポリアミン化合物の好ましい具体例を以下に示す。括弧に付した数は括弧内の繰り返し単位の平均繰り返し数である。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
成分(b)のポリアミン化合物は常法により合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0035】
本発明の接着剤において、成分(b)のポリアミン化合物の含有量は、活性水素当量、分子量等を考慮して適宜に設定することができる。例えば、エポキシ樹脂100質量部に対し、5~300質量部とすることができ、10~250質量部がより好ましく、15~220質量部がさらに好ましい。また、エポキシ樹脂100質量部に対し、成分(b)のポリアミン化合物の含有量を5~200質量部とすることも好ましく、10~150質量部とすることも好ましく、10~100質量部とすることも好ましく、15~70質量部とすることも好ましく、15~50質量部とすることも好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するポリアミン化合物の活性水素当量(活性水素当量/エポキシ当量)を0.05~1.5として用いることが好ましく、0.05~1.2とすることがより好ましく、0.06~1.0とすることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の接着剤は、成分(b)のポリアミン化合物以外の硬化成分を含有してもよく、硬化成分に占める成分(b)のポリアミン化合物の割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。また、硬化成分のすべてが成分(b)のポリアミン化合物であることも好ましい。本発明の接着剤がポリアミン化合物以外の硬化成分を含む場合、この硬化成分として、エポキシ系接着剤の硬化成分として知られている種々の硬化剤ないし硬化助剤を用いることができる。例えば、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、リン系化合物、チオール系化合物、ジシアンジアミド系化合物及びフェノール系化合物の少なくとも1種を、ポリアミン化合物と併用することができる。
【0037】
<(c)無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物>
本発明の接着剤は、成分(c)として、無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス及びソルビトール化合物の少なくとも1種を含有する。
【0038】
(無機フィラー)
上記無機フィラーとしては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、酸化チタン(チタンホワイト)、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ(結晶性シリカ(酸化ケイ素)及び溶融シリカ(酸化ケイ素)を含む)、金属ナノ粒子、ガラス繊維等のいわゆる無機質充填材;タルク、クレイ、マイカ、スメクタイト、カオリン鉱物、雲母粘土、バーミキュライト等の層状ケイ酸塩;銀粉、銅粉などの金属粉末;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム等の窒化物が挙げられる。また、炭化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることもできる。
上記無機フィラーは表面処理が施されていることも好ましい。このような表面処理に特に制限はない。例えば、シラン化合物による表面処理が挙げられる。本発明においてシラン化合物とは、Siに少なくとも1つの有機基が結合してなる構造を有する化合物を意味する。より好ましくはSiR4(R4は有機基)である。シラン化合物としては、シランカップリング剤、シラザン、及びシリコーン化合物(ポリシロキサン)が好ましい。このような表面処理方法は常法により行うことができる。例えば、特開2018-195964号公報の段落[0090]~[0101]等を参照することができる。
【0039】
上記無機フィラーは商業的に入手することができる。一例と挙げると、上記アルミナの市販品として、例えば、DAM-70、DAM-45、DAM-07、DAM-05、DAW-45、DAW-05、DAW-03、及びASFP-20(いずれも商品名、電気化学工業社製)、AL-43-KT、AL-47-H、AL-47-1、AL-160SG-3、AL-43-BE、AS-30、AS-40、AS-50、AS-400、CB-P02、及びCB-P05(いずれも商品名、昭和電工社製)、A31、A31B、A32、A33F、A41A、A43A、MM-22、MM-26、MM-P、MM-23B、LS-110F、LS-130、LS-210、LS-242C、LS-250、及びAHP300(いずれも商品名、日本軽金属社製)、AA-03、AA-04、AA-05、AA-07、AA-2、AA-5、AA-10、及びAA-18(いずれも商品名、住友化学社製)、AEROXIDE Alu C、AEROXIDE Alu C805、及びAEROXIDE Alu 65(いずれも商品名、日本エアロジル社製)が挙げられる。
上記酸化チタンの市販品として、例えば、G-1、G-10、F-2、F-4、及びF-6(いずれも商品名、昭和電工社製)、TAF-520、TAF-500、TAF-1500、TM-1、TA-100C、及びTA-100CT(いずれも商品名、富士チタン工業社製)、MT-01、MT-10EX、MT-05、MT-100S、MT-100TV、MT-100Z、MT-150EX、MT-100AQ、MT-100WP、MT-100SA、MT-100HD、MT-300HD、MT-500SA、MT-600SA、及びMT-700HD(いずれも商品名、テイカ社製)、TTO-51(A)、TTO-51(C)、TTO-55(A)、TTO-55(B)、TTO-55(C)、TTO-55(D)、TTO-S-1、TTO-S-2、TTO-S-3、TTO-S-4、MPT-136、及びTTO-V-3(いずれも商品名、石原産業社製)、及びAEROXIDE TiO2 NKT90(商品名、日本エアロジル社製)が挙げられる。
上記水酸化アルミニウムの市販品として、例えば、B-309(商品名、巴工業社製)、BA173、BA103、B703、B1403、BF013、BE033、BX103、及びBX043(いずれも商品名、日本軽金属社製)が挙げられる。
上記層状ケイ酸塩の市販品として、例えば、ナノエースD-1000、ナノエースD-800、ミクロエースSG-95、ミクロエースP-8、及びミクロエースP-6(いずれもタルクの商品名、日本タルク社製)、FH104、FH105、FL108、FG106、MG115、FH104S、及びML112S(いずれもタルクの商品名、富士タルク社製)、Y-1800、TM-10、A-11、及びSJ-005(いずれもマイカの商品名、ヤマグチマイカ社製)、クニビス-110(商品名、クニミネ工業社製)が挙げられる。
上記チタン酸バリウムの市販品として、例えば、BT-H9DX、HF-9、HF-37N、HF-90D、HF-120D、及びHT-F(いずれも商品名、共立マテリアル社製)、BT-100、及びHPBTシリーズ(いずれも商品名、富士チタン社製)、BTシリーズ(堺化学工業社製)、パルセラムBT(日本化学工業社製)が挙げられる。
上記酸化亜鉛の市販品として、例えば、FINEX-30、FINEX-30W-LP2、FINEX-50、FINEX-50S-LP2、及びXZ-100F(いずれも商品名、堺化学工業社製)、FZO-50(石原産業社製)、MZ-300、MZ-306X、MZY-505S、MZ-506X、及びMZ-510HPSX(いずれも商品名、テイカ社製)が挙げられる。
上記ガラス繊維の市販品として、例えば、CS6SK-406、CS13C-897、CS3PC-455、及びCS3LCP-256(いずれも商品名、日東紡績社製)、ECS03-615、ECS03-650、EFDE50-01、及びEFDE50-31(いずれも商品名、セントラル硝子社製)、ACS6H-103、及びACS6S-750(いずれも商品名、日本電気硝子社製)が挙げられる。
上記金属粉末の市販品として、例えば、球状銀粉であるAG3及びAG4、フレーク銀粉であるFA5及びFA2(いずれも商品名、DOWAハイテック社製)、SPQ03R、SPN05N、SPN08S、及びQ03R(いずれも銀粉の商品名、三井金属鉱業社製)、AY-6010、及びAY-6080(いずれも銀粉の商品名、田中貴金属社製)、ASP-100(銀粉の商品名、相田化学工業社製)、Agコート粉末AG/SP(銀粉の商品名、三菱マテリアル電子化成社製)、MA-O015K、MA-O02K、MA-O025K(いずれも銅粉の商品名、三井金属鉱業社製)、電解銅粉#52-C、#6(JX日鉱日石金属社製)、10%AgコートCu-HWQ(銅粉の商品名、福田金属箔粉工業社製)、Type-A、及びType-B(いずれも銅粉の商品名、DOWAエレクトロニクス社製)、UCP-030(銅粉の商品名、住友金属鉱山社製)が挙げられる。
上記窒化物の市販品として、例えば、Hグレード、Eグレード、及びH-Tグレード(いずれも窒化アルミニウムの商品名、トクヤマ社製)、TOYAL TecFiller TFS-A05P、及びTOYAL TecFiller TFZ-A02P(いずれも窒化アルミニウムの商品名、東洋アルミニウム社製)、ALN020BF、ALN050BF、ALN020AF、ALN050AF、及びALN020SF(いずれも窒化アルミニウムの商品名、巴工業社製)、FAN-f05、及びFAN-f30(いずれも窒化アルミニウムの商品名、古河電子社製)、デンカボロンナイトライドSGP、デンカボロンナイトライドMGP、デンカボロンナイトライドGP、デンカボロンナイトライドHGP、デンカボロンナイトライドSP-2、及びデンカボロンナイトライドSGPS(いずれも窒化ホウ素の商品名、電気化学工業社製)、UHP-S1、UHP-1K、UHP-2、及びUHP-EX(いずれも窒化ホウ素の商品名、昭和電工社製)、SN-9、SN-9S、SN-9FWS、SN-F1、及びSN-F2(いずれも窒化ケイ素の商品名、電気化学工業社製)が挙げられる。
上記ガラス繊維の市販品として、例えば、CF0027、CF0093、CF0018、及びCF0033(いずれも商品名、日本フリット社製)が挙げられる。
上記炭化ケイ素の市販品として、例えば、GMF-Hタイプ、GMF-H2タイプ、及びGMF-LCタイプ(いずれも商品名、太平洋ランダム社製)、HSC1200、HSC1000、HSC059、HSC059I、及びHSC007(いずれも商品名、巴工業社製)が挙げられる。
上記シリカの市販品として、例えば、サイリシア(富士シリシア化学社製)、AEROSIL R972、AEROSIL R104、AEROSIL R202、AEROSIL 805、AEROSIL R812、AEROSIL RX200、AEROSIL R9200、AEROSIL 200、及びAEROSIL R7200(いずれも商品名、日本エアロジル社製)、レオシールシリーズ(トクヤマ社製)、CMC-12、VX-S、及びVX-SR(いずれも結晶性シリカの商品名、龍森社製)、FB-3SDC、FB-3SDX、SFP-30M、SFP-20M、SFP-30MHE、SFP-130MC、及びUFP-30(いずれも溶融シリカの商品名、電気化学工業社製)、エクセリカシリーズ(溶融シリカの商品名、トクヤマ社製)が挙げられる。
上記の炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、及びカーボンナノチューブの市販品として、例えば、トレカミルドファイバーMLD-30、及びトレカミルドファイバーMLD-300(いずれも炭素繊維の商品名、東レ社製)、CFMP-30X、及びCFMP-150X(いずれも炭素繊維の商品名、日本ポリマー産業社製)、#1000(カーボンブラックの商品名、三菱ケミカル社製)、XN-100、及びHC-600(いずれもグラファイトの商品名、日本グラファイトファイバー社製)、SWeNT SG65、SWeNT SGi、IsoNanoTubes-M、IsoNanoTubes-S、PureTubes、Pyrograf PR-25-XT-PS、及びPR-25XT-LHT(いずれもカーボンナノチューブの商品名、シグマアルドリッチ社製)、MWNT MTC(カーボンナノチューブの商品名、名城ナノカーボン社製)が挙げられる。
【0040】
本発明の接着剤に用いる無機フィラーは、シリカ、酸化チタン、アルミナ、及び層状ケイ酸塩の少なくとも1種が好ましい。また、これらは表面処理されていることが好ましい。表面処理により無機フィラー表面に少なくともアルキル基を導入したもの、すなわち、アルキル修飾無機フィラーがより好ましい。なかでも表面処理シリカ(好ましくはアルキル修飾シリカ粒子)が好適である。
【0041】
本発明に用いる無機フィラーは、体積平均粒子径が1~10000nmであることが好ましく、3~5000nmがより好ましく、5~2000nmがさらに好ましく、5~1000nmがさらに好ましく、6~500nmがさらに好ましく、7~200nmがさらに好ましく、8~100nmが特に好ましい。また、シリカ、酸化チタン及びアルミナの場合は、体積平均粒子径は1~500nmが好ましく、5~200nmがより好ましく、6~100nmがさらに好ましく、7~50nmが特に好ましい。
【0042】
成分(c)の無機フィラーは、成分(a)~(c)が混合された状態(硬化前)において、接着剤中に均一に分散した状態とすることが好ましい。
【0043】
(アミド化合物)
上記アミド化合物(アマイド化合物)は、アミド結合を有する化合物であれば特に制限はない。好ましくはカルボン酸アミドであり、脂肪酸とアミンを反応(縮合反応)させて得られる脂肪酸アミド(いわゆるアマイドワックス)がより好ましい。
上記脂肪酸としては、炭素数10~30、より好ましくは炭素数12~25の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、オキシステアリン酸、エルカ酸、ラウリン酸などが挙げられる。
また、上記アミンとしては、例えば、アルキレンジアミン(例えば、炭素数1~10のアルキレンジアミン、具体例としてエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンなど)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンポリアミン、アンモニア、及びアルキルアミン(例えば、炭素数1~25のアルキルアミン、具体例としてオレイルアミン及びステアリルアミンなど)が挙げられる。
なかでも、脂肪酸とポリアミン(好ましくはジアミン、より好ましくはアルキレンジアミン)との反応物が好適である。
なお、本発明において「XとYを反応させて得られる」又は「XとYとの反応物」などという場合、XとYの反応により得られる生成物Zの構造を特定する意味である。すなわち、反応原料としてXを用いていない場合や、Yを用いていない場合でも、得られる生成物がZであれば、このZはXとYとの反応物に包含される。
【0044】
上記脂肪酸アミドの好ましい具体例として、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、べヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイルパルミトアミド、及びN-ステアリルエルカアミドが挙げられる。
上記アミド化合物の市販品として、例えば、ニュートロン、ニュートロン-2、ニュートロン-S、BNT-22H、SNT-F、PNT-34(いずれも商品名、日本精化社製)、ディスパロン6500、及びディスパロン6900-20X(いずれも商品名、楠本化成社製)、スリパックスE、及びスリパックスZHH(商品名、三菱ケミカル社製)が挙げられる。
【0045】
成分(c)のアミド化合物は、成分(a)~(c)が混合された状態(硬化前)において、エポキシ樹脂ないし溶媒中に溶解した状態とすることが好ましい。
【0046】
(脂肪酸ワックス)
脂肪酸ワックスに特に制限はなく、例えば、高級脂肪酸、高級アルコール、又は、脂肪酸とアルコールとのエステル(脂肪酸エステル化合物)が挙げられる。
脂肪酸ワックスとして、セラックロウ、ヌカロウ、虫ロウ、羊毛ロウ、モンタンロウなどのロウを用いることもできる。また、これらのロウ(脂肪酸エステル)のアルコール部の一部又は全部を別のアルコールで置換したものも脂肪酸ワックスとして好適である。また、上記のロウを、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属もしくはカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの金属塩に改質した変成品も脂肪酸ワックスとして好適である。
上記の高級脂肪酸としては、炭素数が8~24、好ましくは10~22、特に好ましくは12~18、更に好ましくは16~18の脂肪酸が挙げられる。具体的として、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、1-トリアコンタン酸、脂肪酸の混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸等が挙げられる。
上記の高級アルコールとしては、炭素数8~60の脂肪族アルコールが挙げられる。好ましい具体例として、例えば、2-ドデカノール、1-テトラデカノール、7-テトラデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1,10-デカンジオール、及び1-トリアコンタノールが挙げられる。
上記の高級脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル(脂肪酸エステル化合物)も脂肪酸ワックスとして好ましい。
また、脂肪酸ワックスとして油脂を用いてもよい。この油脂はグリセリンと脂肪酸とのエステルであり、脂肪酸としては、上述した高級脂肪酸が好ましい。油脂はグリセリンの3つのヒドロキシ基のすべてが脂肪酸とのエステルを構成しているもの(トリグリセリド)が好ましい。また、油脂として食用油脂等も好適に用いることができる。例えば、大豆油、亜麻仁油、菜種油、トール油、綿実油、パーム油、ヤシ油、ひまし油、ひまわり油、化トウモロコシ油、サフラワー油、きり油、キャノーラ油、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、べにばな油、牛脂、魚油等を用いることができる。中でも、大豆油、亜麻仁油などが好適に使用することができる。また、これらの油脂の分別油、エステル交換油、硬化油、又はこれらの混合油脂を用いることも好ましい。なかでも硬化ひまし油が好ましく、とりわけ水素添加(水添)ひまし油が好適である。
【0047】
成分(c)の脂肪酸ワックスは、成分(a)~(c)が混合された状態(硬化前)において、エポキシ樹脂ないし溶媒中に溶解した状態とすることが好ましい。
【0048】
(ソルビトール化合物)
ソルビトール化合物(ソルビトール骨格を有する化合物)としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール化合物(ジベンジリデンソルビトール骨格を有する化合物)、トリベンジリデンソルビトール化合物(トリベンジリデンソルビトール骨格を有する化合物)、及び、これらから導かれる化合物等があげられる。ソルビトール化合物のなかでも、高温下、自己組織化による三次元網目構造を形成し得る点で、下記式(1)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物が好ましい。
【0049】
【0050】
式(1)において、R1及びR2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。R1及びR2は同一でもよく、互いに異なっていてもよい。m及びnは0~3の整数である。
R1及びR2のベンゼン環への結合位置は特に制限されない。
R1及びR2として採り得る炭素数1~5のアルキル基は、直鎖でも分岐を有してもよい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、及びn-ペンチル基等があげられる。R1及びR2として採り得る炭素数1~5のアルキル基は、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
R1及びR2として採り得る炭素数1~5のアルコキシ基は、直鎖でも分岐を有してもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等があげられる。R1及びR2として採り得る炭素数1~5のアルコキシ基は、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましい。
R1及びR2として採り得るハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子又は臭素原子である。
【0051】
上記式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(2,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、及び1,3:2,4-ビス(2,4,5-トリメチルベンジリデン)ソルビトールが挙げられる。また、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-(3,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-(2,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、及び1,3-(2,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-ベンジリデンソルビトールも、本発明で用いるソルビトール化合物として好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、分散性が良好で、三次元網目構造をとりやすいという理由から、同種の置換又は非置換ベンジリデン基を有するジベンジリデンソルビトール化合物が好ましく、1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、及び1,3:2,4-ビス(2,4,5-トリメチルベンジリデン)ソルビトールの少なくとも1種を用いることがより好ましい。上述した化合物のなかでも、1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール及び1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールの少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0052】
成分(c)のソルビトール化合物は、成分(a)~(c)が混合された状態(硬化前)において、エポキシ樹脂ないし溶媒中に溶解した状態とすることが好ましい。
【0053】
なかでも本発明の接着剤は、成分(c)として無機フィラーを含むことが好ましく、表面処理されたシリカ粒子を含有することがより好ましい。
【0054】
本発明において、成分(c)は、接着剤ないしその硬化物中において、主剤のエポキシ樹脂のネットワークとは独立した比較的弱い結合(凝集力)によるネットワークを形成するものと考えられ、この独自のネットワーク形成により、機械的ストレスに対する耐久性を効果的に向上させることができると推定される。
本発明において、成分(c)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の接着剤中、成分(c)の含有量は目的に応じて適宜に調整することができる。例えば、エポキシ樹脂100質量部に対し、1~50質量部とすることができ、2~40質量部がより好ましく、5~30質量部がさらに好ましく、8~25質量部がさらに好ましく、12~20質量部が特に好ましい。
【0056】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の接着剤を硬化することにより生じる硬化物である。すなわち、本発明の硬化物は、内視鏡の接着部を構成する部材として用いられる。本発明の接着剤の硬化温度は特に制限されず、被接着部材の耐熱性、硬化時間等を考慮し、目的に応じて適宜に調整される。各成分の混合は気泡を除去しながら行うことが好ましく、そのため通常は減圧下で行われる。上記硬化温度は100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下とすることもできる。また、硬化反応を十分に行わせるために、硬化温度は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。硬化反応時間は目的に応じて適宜に設定することができる。通常は1.5~200時間、硬化反応させて硬化物を得る。
【0057】
[内視鏡]
本発明の内視鏡は、本発明の硬化物により構成部材が固定されている。「本発明の硬化物により構成部材が固定される」とは、内視鏡を構成する少なくとも一部の部材が本発明の硬化物を介して支持部材に固定されていることを意味する。
【0058】
本発明の内視鏡(電子内視鏡)の一例を説明する。電子内視鏡には内視鏡用可撓管が組み込まれており(以下、内視鏡用可撓管を単に「可撓管」と称することもある)、医療用機器として広く用いられる。
図1に示した例において、電子内視鏡2は、体腔内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部分に連設された本体操作部5と、プロセッサ装置や光源装置に接続されるユニバーサルコード6とを備えている。挿入部3は、本体操作部5に連設される可撓管3aと、そこに連設されるアングル部3bと、その先端に連設され、主に金属(例えば、ステンレス)部材で構成された先端部3cとから構成される。この先端部3cには、体腔内撮影用の撮像装置(図示せず)が内蔵されている。挿入部3の大半の長さを占める可撓管3aは、そのほぼ全長にわたって可撓性を有し、特に体腔等の内部に挿入される部位はより可撓性に富む構造となっている。
図1において、本体操作部5から、先端部3cの先端面には、挿入部3の軸線方向に貫通するチャンネル(チューブ、図示せず)が複数形成されている。
【0059】
図1における可撓管3aは、
図2に示すように、可撓管基材14の外周面に樹脂層15が被覆された構成となっている。
14aが先端側(先端部3c側)であり、14bが基端側(本体操作部5側)である。
可撓管基材14は、最内側に金属帯片11aを螺旋状に巻回することにより形成される螺旋管11に、金属線を編組してなる筒状網体12を被覆してなる。その両端には口金13がそれぞれ嵌合されている。この樹脂層15は接着剤硬化物層17を介して可撓管基材14と接着されている。この接着剤硬化物層17は、本発明の接着剤を適用してこれを硬化させることにより形成することができる。接着剤硬化物層(接着部)17は図示の便宜のために均一な厚みのある層として図示したが、必ずしもその形態でなくてもよく、不定形に樹脂層15と可撓管基材14との間に介在されていてもよい。むしろ厚みがほとんどなく、樹脂層15と可撓管基材14とが実質的に接した形で接着されていてもよい。
樹脂層15の外面には、耐薬品性のある例えばフッ素等を含有したコート層16をコーティングしている。なお、接着剤硬化物層17、樹脂層15及びコート層16は、層構造を明確に図示するため、可撓管基材14の径に比して厚く描いている。
【0060】
図3に示すように、先端部3cの先端面には、照明窓31、観察窓32および鉗子口33が形成されている。また、必要に応じて先端面を洗浄するため、水および空気を送り出すノズル34が形成されている。照明窓31、観察窓32、鉗子口33およびノズル34は、チャンネルにより、本体操作部5と連接している。
【0061】
図4に示すように、先端部3cは、金属からなる先端部本体35と、電気絶縁性部材からなる先端キャップ36とから構成される。
【0062】
観察窓32に、光学系装置である観察ユニット43が設置されている。観察ユニット43は、レンズホルダ37内に、レンズL1~L5から構成される対物光学系が、接着剤硬化物41および42により固定されている。この接着剤硬化物41および42は、本発明の接着剤を適用してこれを硬化させることにより形成することができる。この対物光学系において、Aは空気層である。レンズホルダ37の端面にはプリズム38が接着され固定されている。このプリズム38により対物光学系の光軸が直角に曲げられる。このプリズム38は、固体撮像素子40に固定されている。固体撮像素子40は基板39に固定されている。これらの固定にも本発明の接着剤を適用することができる。
【0063】
<内視鏡の製造方法>
本発明の内視鏡の製造方法は、本発明の接着剤を用いて、内視鏡構成部材を固定することを含む限り特に制限はなく、内視鏡構成部材の固定以外の工程は、通常の製造工程を採用して本発明の内視鏡を製造することができる。
固定される内視鏡構成部材の材質に特に制限はなく、例えば、樹脂部材、金属部材及びガラス部材が挙げられる。内視鏡構成部材は、例えば、本発明の接着剤に含まれる各成分を好ましくは減圧下混合した後、この混合物を適用箇所に注入ないし塗布し、例えば、-10~60℃(好ましくは0~60℃、より好ましくは10~50℃)で1.5~200時間加熱することにより、内視鏡を構成する支持部材等に固定することができる。
以下、本発明の内視鏡の製造方法における接着剤の使用形態について具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
本発明の接着剤により固定される内視鏡構成部材のうち、樹脂部材としては、例えば、内視鏡の挿入部内に挿通されるチューブが挙げられる。上記チューブを構成する樹脂材料としては、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーンなどが挙げられる。本発明の接着剤は、例えば、内視鏡の挿入部を構成する金属部材またはガラス部材と上記チューブとの接着(金属部材またはガラス部材の上記チューブへの固定)に用いることができる。
また、上述のように、
図2における接着剤硬化物層17を形成するために用いることもできる。また、
図2における樹脂層15とコート層16の接着に用いることもできる。
【0065】
本発明の接着剤は、可撓性外皮チューブ(樹脂層15)の端部(可撓管3aの先端側(アングル部3b側)の端部)の外面仕上げ及び固定に用いることができる。具体的には、可撓管3aの樹脂層15の端部を外側から糸で緊縛してその内側の部材に固定した後、その糸を被覆するように接着剤を塗布し、硬化させる。可撓管3aの先端側端部の最外層を本発明の接着剤で構成することにより、この先端側端部の糸をほつれにくくし、挿入部を体腔内に挿入しやすくするためである。
また、本発明の接着剤は、先端部3cとアングル部3bとの接着および/または挿入部3と本体操作部5との接着に用いることができる。例えば、先端部3cとアングル部3bとを本発明の接着剤を用いて接着し、次いで先端部3cとアングル部3bとの接着部及びその近傍を糸で巻き締め接着を補強し、その糸を被覆するように接着剤を塗布し、硬化させる。挿入部3と本体操作部5との接着についても同様である。
また、本発明の接着剤は、内視鏡の挿入部内に挿通される各種チューブの、先端部3cおよび/または本体操作部5への固定に使用することもできる。
【0066】
また、本発明の接着剤は、先端部3cにおいて、照明窓31および観察窓32の封止(ガラス部材の固定)に用いることも好ましい。接着剤を厚塗りすることにより、レンズ外周の角部を滑らかにすることができ、また、レンズ横方向からの光の入射を遮ることができる。
また、本発明の接着剤は、先端部3cに内蔵される撮像装置の組立て、部品の接着、固体撮像素子40の封止等の、部材の固定に用いることができる。撮像装置は、レンズL1~L5およびプリズム38等の複数個の光学部品からなる光学系と、この光学系によって結像された光学画像を撮像信号に光電変換するCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子40とを有する。本発明の接着剤は、ガラス等の材料からなるレンズL1~L5およびプリズム38等の光学部品どうしの接着、並びに、レンズL1~L5、プリズム38等と、樹脂または金属からなる基板39との接着等に用いることができ、この接着により、ガラス部材を固定することができ、また金属部材を固定することができる。
また、本発明の接着剤は、固体撮像素子40と基板39の接着固定、封止に用いることができる。この接着により、固体撮像素子、基板等を構成する金属部材を固定することができる。
このように本発明の内視鏡の製造方法は、本発明の接着剤を用いて、内視鏡構成部材を固定する工程を含むものである。
【実施例0067】
実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例により限定して解釈されるものではない。下記実施例において、「室温」は25℃を意味する。また、成分の配合量は、成分そのものの配合量を意味する。すなわち、原料が溶媒を含む場合には、溶媒を除いた量である。
【0068】
[調製例] 接着剤の調製
下表に示す成分(a)~(c)を下表に示す配合比(質量部)で混合し、この混合物を「泡とり練太郎 ARV-310(商品名、シンキー社製)」により、室温下、1.0Paに減圧した状態で、2000rpmで撹拌しながら5分間脱泡し、接着剤を得た。なお、下記の各試験例では、調製直後の接着剤を用いた。
【0069】
[試験例]
<疲労試験(機械的ストレス耐久性)>
2枚のSUS(ステンレス鋼)304基板(長さ60mm×幅25mm×厚み2mm)を用意し、各基板を長さ方向において10mmが重なり合うようにして(重なり部分が10mm×25mmとなるようにして)、この重なりの互いに対向する面全体に接着剤を塗布し、両基板を接着した。接着剤層の厚みは0.1~0.2mmとした。30℃で170時間静置することにより接着剤を硬化させ、試験片を得た。
次いで、島津製作所(株)製万能疲れ試験機UF-15を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、上記試験片に、繰り返し荷重±15kg、サイクル速度1800回/minの振動を与えた。接着された2枚のSUS基板が互いに剥がれるまでの振動数を測定し、下記評価基準に当てはめ評価した。
【0070】
-評価基準-
A:2枚のSUS基板が剥がれるまでの振動数が10000回以上
B:2枚のSUS基板が剥がれるまでの振動数が5000回以上、10000回未満
C:2枚のSUS基板が剥がれるまでの振動数が1000回以上、5000回未満
D:2枚のSUS基板が剥がれるまでの振動数が1000回未満
結果を下表に示す。
【0071】
<過酸化水素プラズマ滅菌耐久性試験(化学的ストレス耐久性)>
上記の調製例で得られた接着剤を、縦100mm×横20mm×厚さ0.4mmのテフロン(登録商標)製の型に流し込み、30℃で170時間静置し、シート状サンプル(硬化物)を得た。
ステラッド(登録商標)NX(ジョンソンアンドジョンソン社製)、アドバンスコースを用いて、このシート状サンプルを室温で過酸化水素プラズマ滅菌処理に付した。滅菌処理前のシート状サンプル(I)と、過酸化水素プラズマ滅菌処理に100回繰り返し付したシート状サンプル(II)を試験片として、オートグラフAGS-X(商品名、島津製作所社製)を用いて、引張速度を20mm/min、つかみ具間距離を20mmとして、縦軸方向に引っ張る引張試験を行った。
シート状サンプル(I)の破断強度に対するシート状サンプル(II)の破断強度の割合(100×[シート状サンプル(II)の破断強度]/[シート状サンプル(I)の破断強度])を破断強度の維持率として、下記評価基準に当てはめ滅菌処理耐久性を評価した。
【0072】
-評価基準-
AA:破断強度の維持率が90%以上
A: 破断強度の維持率が80%以上90%未満
B: 破断強度の維持率が60%以上80%未満
C: 破断強度の維持率が40%以上60%未満
D: 破断強度が滅菌処理前の40%未満、又は過酸化水素プラズマ滅菌処理を行っている間にサンプルが劣化破損して引張試験ができなかった。
結果を下表に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
[成分(a):エポキシ樹脂]
(a-1):
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「jER825」、三菱化学社製、エポキシ当量170)
(a-2):
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「jER828」、三菱化学社製、エポキシ当量190)
(a-3):
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「jER834」、三菱化学社製、エポキシ当量230)
(a-4):
ビスフェノールFジグリシジルエーテル(商品名「EPICLON830」、DIC社製、エポキシ当量170)
(a-5):
エポキシノボラック樹脂(製品番号406775、シグマアルドリッチ社製、エポキシ当量170)
【0079】
[成分(b):ポリアミン]
(b-1):
ポリオキシアルキレントリアミン(商品名:T403、三井化学ファイン社製、活性水素当量73)
(b-2):
ポリオキシアルキレンジアミン(商品名:D2000、三井化学ファイン社製、活性水素当量500)
(b-3):
ポリオキシアルキレンジアミン(商品名:D400、三井化学ファイン社製、活性水素当量100)
(b-4):
ポリアミドアミン(商品名:ST13、三菱ケミカル社製)
(b-5):
m-キシレンジアミン(商品名:MXDA、三菱ガス化学社製)
(b-6):
テトラエチレンペンタミン(東京化成工業社製)
(b-7):
1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(商品名:1,3-BAC、三菱ガス化学社製)
(b-8):
イソホロンジアミン(東京化成工業社製)
(b-9):
m-フェニレンジアミン(東京化成工業社製)
【0080】
[成分(c):無機フィラー、アミド化合物、脂肪酸ワックス、ソルビトール化合物]
<無機フィラー>
(c-1):
ヘキサメチルジシラザン表面処理シリカ(商品名:アエロジル(AEROSIL) RX200、一次粒子径12nm、日本アエロジル社製)
(c-2):
ジメチルジクロロシラン表面処理シリカ(商品名:AEROSIL R9200、一次粒子径12nm、日本アエロジル社製)
(c-3):
未処理シリカ(商品名:AEROSIL 200、一次粒子径12nm、日本アエロジル社製)
(c-4):
オクチルシリル表面処理酸化チタン(商品名:アエロキサイド(AEROXIDE) TiO2 NKT90、一次粒子径14nm、日本アエロジル社製)
(c-5):
オクチルシリル表面処理アルミナ(商品名:AEROXIDE Alu C805、一次粒子径13nm、日本アエロジル社製)
(c-6):
トリメチルステアリルアンモニウム処理ベントナイト(商品名:クニビス-110、クニミネ工業社製)
(c-7):
シラン処理タルク(商品名:FH104S、平均粒子径4μm、富士タルク社製)
(c-8):
カーボンブラック(商品名:#1000、三菱ケミカル社製)
(c-9):
多層カーボンナノチューブ(商品名:MWNT MTC、名城ナノカーボン社製)
【0081】
<アミド化合物>
(c-10):
エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:スリパックスE、三菱ケミカル社製)
(c-11):
ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(商品名:スリパックスZHH、三菱ケミカル社製)
(c-12):
ステアリン酸アミド(商品名:ニュートロン-2、日本精化社製)
(c-13):
N-オレイルパルミトアミド(商品名:PNT-34、日本精化社製)
【0082】
<脂肪酸ワックス>
(c-14):
水素添加ひまし油(商品名:ディスパロン308、楠本化成社製)
(c-15):
ポリオキシエチレン硬化ひまし油(商品名:エマノーンCH-25、花王社製)
(c-16):
ステアリン酸ステアリル(商品名:エキセパール SS、花王社製)
(c-17):
1-トリアコンタノール(富士フイルム和光純薬社製)
(c-18):
1-トリアコンタン酸(東京化成社製)
【0083】
<ソルビトール化合物>
(c-19):
1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(別名:1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール)(商品名:ゲルオールD、新日本理化社製)
(c-20):
1,3:2,4-ビス-O-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール(別名:1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール)(商品名:ゲルオールMD、新日本理化社製)
【0084】
上記表に示されるように、接着剤成分として、成分(a)のエポキシ樹脂と成分(b)のポリアミン化合物を組合せて用いても、成分(c)を含有しない場合、得られる接着剤の硬化物は機械的ストレスに対する耐久性に劣る結果となった(比較例1~5)。また、ポリアミン化合物の構造が成分(b)の規定を満たさない場合には、化学的な滅菌処理に対する耐久性に劣る結果となった(比較例6~15)。
これに対し、成分(a)~(c)のすべてを含有してなる接着剤は、機械的ストレスを繰り返しかけても、また化学的な滅菌処理に繰り返し付しても、劣化しにくいものであった(実施例1~29)。
【0085】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0086】
本願は、2019年2月26日に日本国で特許出願された特願2019-032973に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。