(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131580
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】乾燥装置及び液体付与システム
(51)【国際特許分類】
B65H 27/00 20060101AFI20220831BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220831BHJP
F26B 13/08 20060101ALI20220831BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B65H27/00 Z
B41J2/01 125
B41J2/01 305
F26B13/08
B65H5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030587
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】荒木 実
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
3F104
3L113
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA47
3F049AA05
3F049DA11
3F049LA07
3F049LB01
3F104AA01
3F104AA03
3F104FA01
3F104JA08
3F104JB01
3L113AA08
3L113AB02
3L113AC34
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC47
3L113AC54
3L113AC55
3L113AC63
3L113AC65
3L113AC67
3L113BA30
3L113CB21
3L113CB25
3L113CB26
3L113DA02
3L113DA17
(57)【要約】
【課題】一定の乾燥効率を維持し得る、乾燥装置及び液体付与システムを提供する。
【解決手段】壁部材を用いて囲われ、処理対象の基材が搬入される搬入口及び基材が搬出される搬出口が壁部材へ具備される乾燥処理ユニット、乾燥処理ユニットの内部へ熱エネルギーを放射させるエネルギー発生ユニット、乾燥処理ユニットの内部を搬送させる基材を支持する基材支持部を有する第一ローラ(400)を備え、第一ローラは、中空構造(410)を有し、端(402)に開口が形成され、基材支持部(414)を含む中空構造体を具備し、端は、第一ローラの回転に応じて、乾燥処理ユニットの内部の気体を中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第一気体流入部材(420)が取り付けられる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部材を用いて囲われる乾燥処理ユニットであり、処理対象の基材が搬入される搬入口及び前記基材が搬出される搬出口が前記壁部材へ具備される乾燥処理ユニットと、
前記乾燥処理ユニットの内部へ熱エネルギーを放射させるエネルギー発生ユニットと、
前記乾燥処理ユニットの内部を搬送させる基材を支持する基材支持部を有する第一ローラと、
を備え、
前記第一ローラは、中空構造を有し、端に開口が形成される中空構造体であり、前記基材支持部を含む中空構造体を具備し、
前記端は、前記第一ローラの回転に応じて、前記乾燥処理ユニットの内部の気体を前記中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第一気体流入部材が取り付けられる乾燥装置。
【請求項2】
前記第一ローラの前記中空構造体の材料は、金属合金が適用される請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記第一ローラの前記中空構造体は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下の厚みが適用される請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第一ローラの前記中空構造体は、前記第一ローラの回転軸の方向について、前記基材支持部の両端に接合される回転支持部であり、前記基材支持部の中空構造と連通する中空構造を有する回転支持部を有し、
前記第一気体流入部材は、前記回転支持部の端に取り付けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第一気体流入部材は、前記中空構造体の端への取り付け構造を有する板部材であり、前記第一ローラの回転軸に対して平行となる方向と交差する方向に貫通する気体流入穴を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第一気体流入部材は、前記第一ローラの回転軸に対して平行となる方向の軸の回りを回転自在に支持される羽根部材を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記基材支持部の端は、前記第一ローラの回転軸について前記基材支持部を回転自在に支持する回転支持部を備え、
前記第一気体流入部材は、前記回転支持部が通る位置に形成される回転軸内挿穴であり、前記第一ローラの回転軸に対して平行となる方向に貫通する回転軸内挿穴を備え、
前記第一気体流入部材は、前記基材支持部の端に取り付けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第一気体流入部材は、前記中空構造体の端への取り付け構造を有する板部材であり、前記第一ローラの回転軸に対して平行となる方向と交差する方向に貫通する気体流入穴を備える請求項7に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記第一気体流入部材は、前記第一ローラの回転軸に対して平行となる方向の軸の回りを回転自在に支持される羽根部材を備える請求項7に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記基材支持部を回転自在に支持する回転支持部であり、前記基材支持部の前記中空構造を貫通する回転支持部を備え、
前記第一気体流入部材は、前記基材支持部の端に取り付けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記第一ローラは、前記中空構造の内部に配置される剥離板であり、前記第一ローラの回転軸に固定支持される剥離板を備える請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記第一気体流入部材の前記中空構造体の反対側へ取り付けられるキャップ部材であり、前記中空構造へ流入させる気体の体積に対応する直径を有する気体量調整穴が形成されるキャップ部材を備える請求項1から11のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項13】
基材を搬送させる搬送装置と、
前記搬送装置を用いて搬送させる基材へ液体を付与する液体付与装置と、
前記搬送装置を用いて搬送させる基材であり、前記液体付与装置を用いて液体が付与される基材に対して乾燥処理を施す乾燥装置と、
を備え、
前記乾燥装置は、
壁部材を用いて囲われる乾燥処理ユニットであり、処理対象の基材が搬入される搬入口及び前記基材が搬出される搬出口が前記壁部材へ具備される乾燥処理ユニットと、
前記乾燥処理ユニットの内部へ熱エネルギーを放射させるエネルギー発生ユニットと、
前記乾燥処理ユニットの内部を搬送させる基材を支持する基材支持部を有する第一ローラと、
を備え、
前記第一ローラは、中空構造を有し、端に開口が形成される中空構造体であり、前記基材支持部を含む中空構造体を具備し、
前記端は、前記第一ローラの回転に応じて、前記乾燥処理ユニットの内部の気体を前記中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第一気体流入部材が取り付けられる液体付与システム。
【請求項14】
前記乾燥装置の外部において、前記搬送装置を用いて搬送される基材を支持する第二ローラを備え、
前記第二ローラは、中空構造を有する中空構造体であり、前記基材支持部を含む中空構造体の端が開口し、
前記端は、前記第二ローラの回転に応じて、前記乾燥装置の外部の気体を前記中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第二気体流入部材が取り付けられる請求項13に記載の液体付与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥装置及び液体付与システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置及び塗布装置などの液体付与システムは、基材へ液体を付与した後に、基材へ付与される液体を乾燥させる処理が実施される。一般に、乾燥処理は基材への温風の吹き付け及び熱の照射等が適用される。
【0003】
特許文献1は、液体が付与されて搬送される基材を乾燥させる乾燥装置が記載される。同文献に記載の乾燥装置は、乾燥対象の基材における液体が付与される面へ案内ローラを接触させ、基材を案内しながら基材の液体が付与される面を乾燥させる。
【0004】
特許文献2は、白色水性インクが付着した基材を乾燥させる乾燥装置を備えるインクジェット印刷装置が記載される。同文献に記載の乾燥装置は断熱フード構造を有している。乾燥装置において搬送される基材は複数のローラを用いて案内される。
【0005】
特許文献3は、潜像担持体から転写ベルトを用いて搬送される基材へ画像を転写する方式の画像形成装置が記載される。同文献に記載の装置は、転写ベルトを支持するローラに、両端が開口した中空状の金属パイプローラが適用され、一方の端の開口へ向けて大気を導入し、他方の端の開口から大気を排出させる気流経路を備える。
【0006】
同装置は、転写ベルトの温度を検出する温度検出部を備え、温度検出部の出力に応じて金属パイプローラを流通する大気の温度を調節し、転写ベルトの温度を調節する。
【0007】
特許文献4は、円筒状のドラムの外周面へ支持される基材へインクを吐出する印刷装置が記載される。同文献に記載に具備されるドラムの外周部の内部空間は、らせん状に曲げられる板状の羽根部材であるインペラが具備される。ドラムが回転する外周部の内部空間は空気の流れが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-016353号公報
【特許文献2】国際公開第2018/211987号明細書
【特許文献3】特許第4360946号公報
【特許文献4】特開2010-052143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、印刷物の質感がよいコート紙が基材として使用される場合、普通紙等の他の基材が使用される場合と比較して、基材への浸透するインク量が少なくなる。そうすると乾燥の完了まで投入される熱エネルギーの調整が必要となる。投入される熱エネルギーを相対的に大きくする際に乾燥期間を相対的に長くすると、一定の印刷速度を維持するには乾燥処理のパス長を相対的に長くしなければならならず、装置の大型化が避けられない。
【0010】
乾燥処理を実施する乾燥処理領域が囲われる乾燥装置は、乾燥処理領域内の温度を予め上昇させる暖気運転が実施される場合に、乾燥処理領域において基材を支持するパスローラが加熱される。暖気運転の後に、連続的に搬入される基材に対して連続的に乾燥処理が実施されると、乾燥気化熱の発生及びパスローラから基材への熱の移動等が生じ、パスローラの温度の低下に起因する乾燥効率の低下が懸念される。一定の乾燥効率の維持には、パスローラの温度の低下を考慮した乾燥制御が必要となる。パスローラの温度の低下を考慮した場合、乾燥制御が複雑になり得る。
【0011】
特許文献1に記載の装置は、案内ローラの温度の低下に起因する乾燥効率の低下が懸念される。同様に、特許文献2に記載の装置は、基材を案内するローラの温度の低下に起因する乾燥効率の低下が懸念される。
【0012】
特許文献3に記載の装置は、支持ローラの大気流入口へ大気を流入させる大気流入路は、支持ローラへ流入させる大気の温度を調整するペルチェ素子が具備される。同装置は、転写ベルトに具備されるサーミスタから出力される転写ベルトの表面温度に応じて、ペルチェ素子へ印加される電圧が調整され、支持ローラを流通する大気の温度が調整される。同装置は、画像形成に好適な転写ベルトの温度範囲に対応して、支持ローラへ流入させる大気の温度を調整する必要があり、温度制御が複雑になり得る。
【0013】
特許文献4は、ドラムの外周部の内部空間の空気を利用して、ドラムの外周部を冷却させる構造を開示しているのであって、ドラム外周部の温度を一定に維持する構造を開示していない。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、一定の乾燥効率を維持し得る、乾燥装置及び液体付与システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る乾燥装置は、壁部材を用いて囲われる乾燥処理ユニットであり、処理対象の基材が搬入される搬入口及び基材が搬出される搬出口が壁部材へ具備される乾燥処理ユニットと、乾燥処理ユニットの内部へ熱エネルギーを放射させるエネルギー発生ユニットと、乾燥処理ユニットの内部を搬送させる基材を支持する基材支持部を有する第一ローラと、を備え、第一ローラは、中空構造を有し、端に開口が形成される中空構造体であり、基材支持部を含む中空構造体を具備し、端は、第一ローラの回転に応じて、乾燥処理ユニットの内部の気体を中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第一気体流入部材が取り付けられる乾燥装置である。
【0016】
本開示に係る乾燥装置によれば、基材を支持する第一ローラの中空構造体へ、乾燥ユニットの内部の気体を流入させる。これにより、第一ローラの中空構造体の内部へ温度管理がされた気体が流入し、中空構造体の表面温度の低下が抑制され、基材への乾燥処理における一定の乾燥効率を維持し得る。
【0017】
基材は、連続体を適用してもよいし、枚葉の基材を適用してもよい。
【0018】
乾燥装置は、基材を支持する一つ以上の搬送ローラを備え得る。一つ以上の搬送ローラのうち、少なくとも一つについて第一ローラを適用し得る。
【0019】
乾燥ユニットを囲む壁は、断熱部材を適用し得る。
【0020】
他の態様に係る乾燥装置は、第一ローラの中空構造体の材料は、金属合金が適用される。
【0021】
かかる態様によれば、乾燥ユニット内部の気体を流入させる中空構造体の温度低下を抑制し得る。
【0022】
金属合金の例として、アルミ合金及び銅合金が挙げられる。
【0023】
他の態様に係る乾燥装置は、第一ローラの中空構造体は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下の厚みが適用される。
【0024】
かかる態様によれば、中空構造体の一定の加工精度が維持され、かつ、中空構造体の内部と表面との温度差が一定範囲に維持される。
【0025】
他の態様に係る乾燥装置は、第一ローラの中空構造体は、第一ローラの回転軸の方向について、基材支持部の両端に接合される回転支持部であり、基材支持部の中空構造と連通する中空構造を有する回転支持部を有し、第一気体流入部材は、回転支持部の端に取り付けられる。
【0026】
かかる態様によれば、第一ローラの端を構成する回転支持部の端から基材支持部の内部へ気体を流入させ得る。
【0027】
他の態様に係る乾燥装置は、第一気体流入部材は、中空構造体の端への取り付け構造を有する板部材であり、第一ローラの回転軸に対して平行となる方向と交差する方向に貫通する気体流入穴を備える。
【0028】
かかる態様によれば、簡単な構造が適用される第一気体流入部を適用して、第一ローラの中空構造体の内部へ、気体を流入させ得る。
【0029】
他の態様に係る乾燥装置は、第一気体流入部材は、第一ローラの回転軸に対して平行となる方向の軸の回りを回転自在に支持される羽根部材を備える。
【0030】
かかる態様によれば、羽根部材が具備される第一気体流入部材を用いて、第一ローラの内部への気体の流入が実現される。
【0031】
他の態様に係る乾燥装置は、基材支持部の端は、第一ローラの回転軸について基材支持部を回転自在に支持する回転支持部を備え、第一気体流入部材は、回転支持部が通る位置に形成される回転軸内挿穴であり、第一ローラの回転軸に対して平行となる方向に貫通する回転軸内挿穴を備え、第一気体流入部材は、基材支持部の端に取り付けられる。
【0032】
かかる態様によれば、回転支持部を支持する軸受の大型化をせずに、基材支持部に適用される中空構造の大口径化を実現し得る。
【0033】
他の態様に係る乾燥装置は、第一気体流入部材は、中空構造体の端への取り付け構造を有する板部材であり、第一ローラの回転軸に対して平行となる方向と交差する方向に貫通する気体流入穴を備える。
【0034】
かかる態様によれば、簡単な構造が適用される第一気体流入部材を用いて、第一ローラの内部への気体の流入が実現される。
【0035】
他の態様に係る乾燥装置は、第一気体流入部材は、第一ローラの回転軸に対して平行となる方向の軸の回りを回転自在に支持される羽根部材を備える。
【0036】
かかる態様によれば、羽根部材が具備される第一気体流入部材を用いて、第一ローラの内部への気体の流入が実現される。
【0037】
他の態様に係る乾燥装置は、基材支持部を回転自在に支持する回転支持部であり、基材支持部の中空構造を貫通する回転支持部を備え、第一気体流入部材は、基材支持部の端に取り付けられる。
【0038】
かかる態様によれば、第一気体流入部材を介して基材支持部の内部へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を、相対的に増加させ得る。
【0039】
他の態様に係る乾燥装置は、第一ローラは、中空構造の内部に配置される剥離板であり、第一ローラの回転軸に固定支持される剥離板を備える。
【0040】
かかる態様によれば、中空構造の内部における気体の流動が促進され、中空構造の内部へ新しい気体を導入し得る。
【0041】
他の態様に係る乾燥装置は、第一気体流入部材の中空構造体の反対側へ取り付けられるキャップ部材であり、中空構造へ流入させる気体の体積に対応する直径を有する気体量調整穴が形成されるキャップ部材を備える。
【0042】
かかる態様によれば、中空構造へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を調整し得る。
【0043】
本開示に係る液体付与システムは、基材を搬送させる搬送装置と、搬送装置を用いて搬送させる基材へ液体を付与する液体付与装置と、搬送装置を用いて搬送させる基材であり、液体付与装置を用いて液体が付与される基材に対して乾燥処理を施す乾燥装置と、を備え、乾燥装置は、壁部材を用いて囲われる乾燥処理ユニットであり、処理対象の基材が搬入される搬入口及び基材が搬出される搬出口が壁部材へ具備される乾燥処理ユニットと、乾燥処理ユニットの内部へ熱エネルギーを放射させるエネルギー発生ユニットと、乾燥処理ユニットの内部を搬送させる基材を支持する基材支持部を有する第一ローラと、を備え、第一ローラは、中空構造を有し、端に開口が形成される中空構造体であり、基材支持部を含む中空構造体を具備し、端は、第一ローラの回転に応じて、乾燥処理ユニットの内部の気体を中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第一気体流入部材が取り付けられる液体付与システム。
【0044】
本開示に係る液体付与システムによれば、本開示に係る乾燥装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る乾燥装置の構成要件は、他の態様に係る液体付与システムの構成要件へ適用し得る。
【0045】
液体付与装置は、インクジェットヘッドを備え、インクを用いて基材へ画像を印刷するインクジェット印刷装置を適用し得る。
【0046】
他の態様に係る液体付与システムは、乾燥装置の外部において、搬送装置を用いて搬送される基材を支持する第二ローラを備え、第二ローラは、中空構造を有する中空構造体であり、基材支持部を含む中空構造体の端が開口し、端は、第二ローラの回転に応じて、乾燥装置の外部の気体を中空構造体の内部へ流入させる構造を有する第二気体流入部材が取り付けられる。
【0047】
かかる態様によれば、基材を支持する第二ローラの中空構造体へ乾燥装置の外部の気体を流入させる。これにより、乾燥装置の外部の環境温度に倣う、基材の温度調整を実施し得る。
【0048】
かかる態様において、第二ローラは基材搬送方向における乾燥装置の下流側の位置に配置し得る。
【0049】
乾燥装置の外部において、基材を支持する一つ以上の搬送ローラを備え得る。一つ以上の搬送ローラのうち、少なくとも一つについて第二ローラを適用し得る。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、基材を支持する第一ローラの中空構造体へ、乾燥ユニットの内部の気体を流入させる。これにより、第一ローラの中空構造体の内部へ温度管理がされた気体が流入し、中空構造体の表面温度の低下が抑制され、基材への乾燥処理における一定の乾燥効率を維持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は実施形態に係るインクジェット印刷装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は
図1に示す乾燥装置の構成例を示す乾燥装置の構成図である。
【
図5】
図5は
図1に示す乾燥装置の他の態様を示す乾燥装置の構成図である。
【
図6】
図6は気体導入構造が適用されるパスローラの第一構成例を示すパスローラの概略断面図である。
【
図7】
図7は気体導入構造が適用されるパスローラの評価結果を示す表である。
【
図8】
図8は気体導入構造が適用されるパスローラの第二構造例を示すパスローラの概略断面図である。
【
図9】
図9は
図8に示すパスローラに具備される気体流入部材の正面図である。
【
図10】
図10は気体導入構造が適用されるパスローラの第三構造例を示すパスローラの概略断面図である。
【
図11】
図11は気体導入構造が適用されるパスローラの第四構造例を示すパスローラの概略断面図である。
【
図12】
図12は気体導入構造が適用されるパスローラの第五構造例を示すパスローラの概略断面図である。
【
図13】
図13は気体導入構造が適用されるパスローラの第六構造例パスローラの概略断面図である。
【
図15】
図15はキャップ部材の取り付け状態を示すパスローラの概略断面図である。
【
図18】
図18は気体導入構造が適用されるパスローラの他の配置例を示す図である。
【
図19】
図19は他の態様に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0053】
[インクジェット印刷システムの構成例]
〔全体構成〕
図1は実施形態に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。なお、同図に示す符号Yは水平方向を表す。また、符号Zは鉛直上方向を表す。
図2及び
図3に示す符号Y及び符号Zも同様である。
【0054】
インクジェット印刷システム10は、シングルパス方式が適用される印刷システムであり、フィルム基材1へカラー画像を印刷する。フィルム基材1は、軟包装に用いられる透明の媒体であり、非浸透媒体である。フィルム基材1の例として、ONY(Oriented Nylon)、OPP(Oriented PolyPropylene)及びPET(polyEthylene Terephthalate)などが挙げられる。インクジェット印刷システム10は、フィルム基材1に対して印刷対象が印刷面とは反対側の面から視認される裏刷りの印刷物を作成する。
【0055】
なお、非浸透とは、後述する水性プライマー及び水性インクに対して非浸透性を有することをいう。軟包装とは、包装される物品の形状により変形する材料による包装をいう。透明とは、可視光の透過率が30%以上100%以下であることをいい、好ましくは70%以上100%以下であることをいう。
【0056】
インクジェット印刷システム10は、搬送装置20、供給装置30、プレコート装置50、ジェッティング装置80、乾燥装置100及び回収装置120を備える。また、インクジェット印刷システム10は、複数のテンションピックアップを備える。以下、各部について詳細に説明する。
【0057】
〔搬送装置〕
搬送装置20は、ロールトゥロール方式が適用される。搬送装置20は、供給装置30、プレコート装置50、ジェッティング装置80、乾燥装置100及び回収装置120の順に、フィルム基材1の搬送方向について、供給装置30から回収装置120までフィルム基材1を搬送経路に沿って搬送する。
【0058】
フィルム基材1の搬送方向とは、供給装置30から回収装置120までの搬送経路に沿うフィルム基材1の進行方向をいう。以下、フィルム基材1の搬送方向は、基材搬送方向と記載する場合がある。
【0059】
搬送装置20は、複数のパスローラ22を備える。パスローラ22は、供給装置30、プレコート装置50、ジェッティング装置80、乾燥装置100及び回収装置120のそれぞれに、一つ以上配置される。
【0060】
搬送装置20は、第一供給駆動ローラ34及び第二供給駆動ローラ36を備える。第一供給駆動ローラ34及び第二供給駆動ローラ36は供給装置30におけるフィルム基材1の搬送経路へ配置される。第一供給駆動ローラ34及び第二供給駆動ローラ36はそれぞれ、回転軸と連結されるモータの回転に応じて回転する。
【0061】
第一供給駆動ローラ34及び第二供給駆動ローラ36は、外周面に支持されるフィルム基材1に対して規定の搬送テンションを付与して、フィルム基材1を回転方向に沿って搬送する。なお、第一供給駆動ローラ34の回転軸、及び第二供給駆動ローラ36の回転軸及びそれぞれの回転軸と連結されるモータの図示を省略する。
【0062】
搬送装置20は、プレコート駆動ローラを備える。プレコート駆動ローラは、プレコート装置50におけるフィルム基材1の搬送経路へ配置される。なお、プレコート駆動ローラの図示を省略する。
【0063】
プレコート駆動ローラは、回転軸と連結されるモータの回転に応じて回転する。プレコート駆動ローラは、外周面に支持されるフィルム基材1に対して規定の搬送テンションを付与して、フィルム基材1を回転方向に沿って搬送する。なお、プレコート駆動ローラの回転軸及び回転軸と連結されるモータの図示を省略する。
【0064】
搬送装置20は、第一サクションドラム84及び第二サクションドラム86を備える。第一サクションドラム84及び第二サクションドラム86は、ジェッティング装置80におけるフィルム基材1の搬送経路へ配置される。
【0065】
第一サクションドラム84は、回転軸と連結されるモータの回転に応じて回転する。第一サクションドラム84の外周面は、複数の吸着穴が形成される。複数の吸着穴の配置は、規定の配置パターンが適用される。
【0066】
複数の吸着穴のそれぞれは、第一サクションドラム84の内部に形成されるエア流路を介してポンプと接続される。ポンプは、複数の吸着穴のそれぞれに負圧を発生させる。第一サクションドラム84は、フィルム基材1へ負圧を作用させ、外周面へフィルム基材1を吸着支持する。第二サクションドラム86は第一サクションドラム84と同様の構成を適用し得る。
【0067】
第一サクションドラム84の回転軸、回転軸と連結されるモータ、エア流路及びポンプの図示を省略する。
【0068】
第一サクションドラム84及び第二サクションドラム86は、ジェッティング装置80において搬送されるフィルム基材1に対して、第一サクションドラム84の回転速度と第二サクションドラム86の回転速度との差に応じた搬送テンションを付与する。ここで、本明細書における速度という用語は、速度の大きさを表す速さの概念を含み得る。
【0069】
搬送装置20は、第一無接触ターン装置60及び第二無接触ターン装置92を備える。第一無接触ターン装置60及び第二無接触ターン装置92は、ジェッティング装置80におけるフィルム基材1の搬送経路に配置される。
【0070】
第一無接触ターン装置60は、フィルム基材1の印刷面に接触することなく、フィルム基材1の搬送経路の向きを下向きから上向きに変更する。すなわち、パスローラ22を用いて下向きに案内されたフィルム基材1は、第一無接触ターン装置60を用いて上向きに案内される。
【0071】
なお、本明細書における下向きという用語は、鉛直下方向に限らず、重力下方向の成分を有する、水平方向に対して下側へ進行する方向を表す。同様に、上向きという用語は、鉛直上方向に限らず、水平方向に対して上側に進行する方向を表す。
【0072】
第一無接触ターン装置60は、フィルム基材1へエアを作用させ、フィルム基材1の搬送ガイドから浮上させる浮上搬送方式を適用し得る。なお、浮上搬送は浮揚搬送、無接触搬送及びエアフロート搬送と同義である。
【0073】
第二無接触ターン装置92は、フィルム基材1の印刷面に接触することなく、フィルム基材1の搬送経路の向きを下向きから上向きに変更する。すなわち、第二サクションドラム86を用いて下向きに案内されたフィルム基材1は、第二無接触ターン装置92を用いて上向きに案内される。
【0074】
第二無接触ターン装置92は、第一無接触ターン装置60と同様に、浮上搬送方式を適用し得る。第二無接触ターン装置92は、エアの吹き出しが適用される乾燥機能が付加されていてもよい。第二無接触ターン装置92はフィルム基材1の印刷面へ非接触であり、第二無接触ターン装置92を用いた乾燥処理は、画像品質への影響が抑制される。
【0075】
搬送装置20は、メイン乾燥駆動ローラ106を備える。メイン乾燥駆動ローラ106は、乾燥装置100におけるフィルム基材1の搬送経路へ配置される。メイン乾燥駆動ローラ106は、回転軸と連結されるモータの回転に応じて回転する。メイン乾燥駆動ローラ106は、外周面に支持されるフィルム基材1に対して規定の搬送テンションを付与して、フィルム基材1を回転方向に沿って搬送する。なお、メイン乾燥駆動ローラ106の回転軸及び回転軸と連結されるモータの図示を省略する。
【0076】
搬送装置20は、第一回収駆動ローラ130、第二回収駆動ローラ132及び巻き取りロール122を備える。第一回収駆動ローラ130、第二回収駆動ローラ132及び巻き取りロール122は、回収装置120におけるフィルム基材1の搬送経路へ配置される。
【0077】
搬送装置20は、第一供給駆動ローラ34を回転させ、送り出しロール32からフィルム基材1を送り出す。搬送装置20は、巻き取りロール122のリールを回転させ、印刷済みのフィルム基材1を巻き取りロール122へ巻き取る。
【0078】
フィルム基材1は、搬送装置20を用いて、送り出しロール32から巻き取りロール122までの搬送経路を搬送される。また、フィルム基材1は、プレコート装置50等の各セクションのそれぞれにおいて、規定の搬送テンションが付与される。
【0079】
ここで、フィルム基材1の印刷面と平行な方向であり、フィルム基材1の基材搬送方向に直交する方向の長さを、フィルム基材1の幅と呼ぶ。フィルム基材1の印刷面と直交する方向の長さを、フィルム基材1の厚みと呼ぶ。
【0080】
〔テンションピックアップ〕
インクジェット印刷システム10は、第一テンションピックアップ23、第二テンションピックアップ24、第三テンションピックアップ25、第四テンションピックアップ26、第五テンションピックアップ27、第六テンションピックアップ28を備える。
【0081】
第一テンションピックアップ23は、供給装置30に配置され、供給装置30においてフィルム基材1へ付与される搬送テンションを測定する。第二テンションピックアップ24は、プレコート装置50へ配置され、プレコート装置50においてフィルム基材1へ付与される搬送テンションを測定する。
【0082】
第三テンションピックアップ25は、ジェッティング装置80に配置され、ジェッティング装置80においてフィルム基材1へ付与される搬送テンションを測定する。第四テンションピックアップ26は、乾燥装置100に配置され、乾燥装置100においてフィルム基材1へ付与される搬送テンションを測定する。第五テンションピックアップ27は、回収装置120へ配置され、回収装置120においてフィルム基材1へ付与される搬送テンションを測定する。
【0083】
〔供給装置〕
供給装置30は、送り出しロール32を備える。送り出しロール32は、回転自在に支持されたリールを備える。リールには、画像が印刷される前のフィルム基材1がロール状に巻かれている。なお、リールの図示を省略する。
【0084】
供給装置30は、コロナ処理装置38を備える。コロナ処理装置38は、基材搬送方向における第二供給駆動ローラ36の下流側の位置であり、第一テンションピックアップ23の上流側の位置に配置される。
【0085】
コロナ処理装置38は、フィルム基材1の印刷面にコロナ放電処理を施し、撥水性を有する印刷面と水性プライマー及び水性インクとの密着性を改善させる。すなわち、コロナ処理装置38は、フィルム基材1の印刷面を表面改質する。表面改質がされたフィルム基材1の印刷面は、水性プライマーと水性インクとの水性混合物に適した表面自由エネルギーを有する。
【0086】
表面改質がされたフィルム基材1の印刷面の表面自由エネルギーの例として、40ミリニュートン毎平方メートル以上60ミリニュートン毎平方メートル以下の範囲が挙げられる。このように、コロナ処理装置38を適用して、フィルム基材1の印刷面の濡れ性を水性混合物に適した濡れ性を確保することができる。コロナ処理装置38を用いてコロナ放電処理が施されたフィルム基材1は、プレコート装置50へ搬送される。
【0087】
〔プレコート装置〕
プレコート装置50は、基材搬送方向における供給装置30の下流側の位置であり、ジェッティング装置80の上流側の位置に配置される。プレコート装置50は、フィルム基材1の印刷面へプレコート液を塗布する。プレコート液の例として、水性プライマーが挙げられる。
【0088】
水性プライマーは、水性インク中の色材成分を凝集、不溶化又は増粘させる成分を含む液体であり、水性カラーインク及び水性ホワイトインクと反応する。水性プライマーの塗布量は、ジェッティング装置80おいて打滴される水性インクの塗布量の十分の一程度である。水性プライマーの粘度として、0.5センチポアズ以上5.0センチポアズ以下を適用し得る。なお、1センチポアズは0.001パスカル秒である。
【0089】
プレコート装置50は、コーター52及びプレコート乾燥装置58を備える。プレコート装置50におけるフィルム基材1の搬送経路には、複数のパスローラ22が配置される。供給装置30から搬送されたフィルム基材1は、複数のパスローラ22を用いて案内され、コーター52と対向する位置へ搬送される。
【0090】
コーター52は、チャンバドクター式を適用し得る。チャンバドクター式のコーター52は、塗布ローラ54、液溜め55、対向ローラ56を備える。塗布ローラ54は回転軸に連結されるモータの回転に応じて回転する。
【0091】
塗布ローラ54の外周面は、液溜め55へ貯留される水性プライマーが供給される。塗布ローラ54の外周面へ供給された水性プライマーの余剰分は、ブレードを用いて除去される。
【0092】
塗布ローラ54は、対向ローラ56との間にフィルム基材1を挟み込み、規定量に計量された水性プライマーをフィルム基材1の印刷面へ塗布する。水性プライマーが塗布されたフィルム基材1は、複数のパスローラ22を用いて案内されて、プレコート乾燥装置58と対向する位置へ搬送される。なお、塗布ローラ54の回転軸と連結されるモータ及びブレードの図示を省略する。
【0093】
プレコート乾燥装置58は、温風ヒータを備える。温風ヒータは、フィルム基材1の全幅にわたる全長に対応する長さを有するスリットノズルを備える。プレコート乾燥装置58は、複数のスリットノズルを備え得る。
【0094】
プレコート乾燥装置58は、温風ヒータのスリットノズルからフィルム基材1の印刷面に向けて温風を吹き付け、水性プライマーを乾燥させる。なお、温風ヒータ及びスリットの図示は省略する。
【0095】
プレコート装置50を用いて水性プライマーが塗布され、かつ、水性プライマーを乾燥させたフィルム基材1は、プレコート装置50からジェッティング装置80へ搬送される。なお、実施形態に記載のプレコート装置50は液体付与装置の一例である。
【0096】
〔ジェッティング装置〕
ジェッティング装置80は、カラー印刷装置88、ホワイト印刷装置90及び検査装置97を備える。プレコート装置50から搬送されたフィルム基材1は、複数のパスローラ22、第一無接触ターン装置60、第一サクションドラム84、第三テンションピックアップ25、第二サクションドラム86及び第二無接触ターン装置92を介して搬送される。
【0097】
第一サクションドラム84と第二サクションドラム86との間のフィルム基材1の搬送経路には、基材搬送方向の上流側から順に、カラー印刷装置88、ホワイト印刷装置90及び検査装置97が配置される。
【0098】
カラー印刷装置88は、フィルム基材1の印刷面へ水性カラーインクを打滴し、カラー画像を印刷する。カラー印刷装置88は、インクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yを備える。
【0099】
インクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの水性インクを吐出する。
【0100】
水性インクとは、水に対して可溶な溶媒に顔料等の色材とを溶解又は分散させたインクをいう。水性インクの顔料は、有機系の顔料が用いられる。水性インクの粘度は、0.5センチポアズ以上5.0センチポアズ以下である。
【0101】
インクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yのそれぞれには、対応する色のインクタンクから配管経路を経由して、水性インクが供給される。なお、インクタンク及び配管経路の図示を省略する。
【0102】
以下、インクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yを総称してインクジェットヘッド96と記載することがある。また、インクジェットヘッド96は、後述するインクジェットヘッド96W1及びインクジェットヘッド96W2を含み得る。
【0103】
インクジェットヘッド96は、搬送装置20を用いて搬送されるフィルム基材1に対して一回の走査をして、フィルム基材1の印刷領域の全域に印刷可能なライン型ヘッドが適用される。インクジェットヘッド96の位置及び姿勢は、ノズル面がパスローラ22と対向する位置及び向きが適用される。インクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yは、フィルム基材1の搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。
【0104】
インクジェットヘッド96は複数のノズルを備える。ノズルは、ノズル開口、インク流路が含まれる。インクジェットヘッド96はノズルごとにエネルギー発生素子を備える。インクジェットヘッド96のノズル面は、ノズル開口が二次元配列される。インクジェットヘッド96のノズル面は、撥水膜が形成される。
【0105】
エネルギー発生素子は圧電素子を適用し得る。圧電素子を備えるインクジェットヘッド96は、圧電素子のたわみ変形を利用して、ノズル開口からインク液滴を吐出させる。エネルギー発生素子はヒータを適用し得る。ヒータを備えるインクジェットヘッド96は、インクの膜沸騰現象を利用して、ノズル開口からインク液滴を吐出させる。なお、ノズル、ノズル開口、インク流路及びエネルギー発生素子の図示を省略する。
【0106】
インクジェットヘッド96は、フィルム基材1の幅方向について、複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせた構造を適用し得る。なお、以下の説明において、フィルム基材1の幅方向を基材幅方向と記載することがある。
【0107】
図1には四色のカラーの水性インクが適用される態様を示したが、インク色はブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの四色に限定されない。例えば、ライトマゼンタ及びライトシアン等の淡色インクが適用される態様、グリーン、オレンジ、バイオレット、クリア及びメタリック等の特色インクが適用される態様を適用可能である。また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も、
図1に示す例に限定されない。
【0108】
ホワイト印刷装置90は、基材搬送方向におけるカラー印刷装置88の下流側の位置へ配置される。ホワイト印刷装置90は、フィルム基材1の印刷面へ水性ホワイトインクを打滴して白色背景画像を印刷する。
【0109】
水性ホワイトインクの顔料は酸化チタンが適用される。水性ホワイトインクは、カラーインクの有機系の顔料よりも比重が相対的に大きく、インク液全体が相対的に重い。ホワイト印刷装置90は、水性ホワイトインクを吐出させるインクジェットヘッド96W1及びインクジェットヘッド96W2を備える。
【0110】
ホワイト印刷装置90の構成は、カラー印刷装置88と同様の構成を適用し得る。また、インクジェットヘッド96W1及びインクジェットヘッド96W2は、インクジェットヘッド96K等と同様の構成を適用し得る。
【0111】
検査装置97は、フィルム基材1に印刷されたノズルチェックパターン等のテストパターン画像を検査する。検査装置97は、第一スキャナ98及び第二スキャナ99を備える。第一スキャナ98及び第二スキャナ99は、それぞれフィルム基材1の印刷面に印刷されたテストパターン画像を撮像し、撮像画像を電気信号に変換する撮像デバイスを備える。
【0112】
撮像デバイスの例として、CCDイメージセンサ及びカラーCMOSイメージセンサが挙げられる。なお、CCDはCharge Coupled Deviceの省略語である。また、CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。
【0113】
第一スキャナ98及び第二スキャナ99から出力される撮像データは、テストパターン判定部へ送信される。テストパターン判定部はテストパターンの撮像データに基づき、不良ノズルの特定等を実施する。なお、テストパターン判定部の図示を省略する。
【0114】
検査装置97を用いてテストパターン画像が撮像されたフィルム基材1は、乾燥装置100へ搬送される。なお、実施形態に記載のジェッティング装置80は液体付与装置の一例である。
【0115】
〔乾燥装置〕
乾燥装置100は、基材搬送方向におけるジェッティング装置80の下流側の位置に配置される。乾燥装置100は、フィルム基材1の印刷面へ付着した水性インクを乾燥させる。
【0116】
乾燥装置100は、複数の温風ヒータ104を備える。乾燥装置100におけるフィルム基材1の搬送経路には、第四テンションピックアップ26、複数のパスローラ22及びメイン乾燥駆動ローラ106が配置される。ジェッティング装置80から搬送されたフィルム基材1は、パスローラ22及びメイン乾燥駆動ローラ106を用いて案内され、搬送される。
【0117】
温風ヒータ104は、それぞれフィルム基材1の印刷面に送風面を向けて配置される。温風ヒータ104は、フィルム基材1の印刷面に向けてエアノズルから温風を吹き付け、水性インクを乾燥させる。なお、温風ヒータ104の送風面及びエアノズルの図示を省略する。
【0118】
温風ヒータ104を用いて水性インクを乾燥させたフィルム基材1は、複数のパスローラ22及びメイン乾燥駆動ローラ106を経由して回収装置120へ搬送される。
【0119】
〔回収装置〕
回収装置120は、巻き取りロール122及び検品装置124を備える。検品装置124は、フィルム基材1の印刷面に印刷された印刷画像を検査する。検品装置124は、第三スキャナ126及び第四スキャナ128を備える。第三スキャナ126及び第四スキャナ128は、第一スキャナ98と同様の構成を適用し得る。
【0120】
第三スキャナ126及び第四スキャナ128は、それぞれフィルム基材1の印刷面の反対側の位置に配置され、フィルム基材1の印刷面に印刷された印刷画像を印刷面の反対の側から読み取る。
【0121】
第三スキャナ126及び第四スキャナ128から出力される印刷画像の撮像データは、印刷画像判定部へ送信される。印刷画像判定部は、印刷画像の撮像データに基づき印刷画像の良否を判定する。なお、印刷画像判定部の図示を省略する。
【0122】
回収装置120におけるフィルム基材1の搬送経路には、複数のパスローラ22、第五テンションピックアップ27、第一回収駆動ローラ130、第二回収駆動ローラ132、第六テンションピックアップ28及び押さえローラ136が配置される。
【0123】
乾燥装置100から搬送されたフィルム基材1は、複数のパスローラ22、第一回収駆動ローラ130、第二回収駆動ローラ132及び押さえローラ136を用いて案内され、搬送される。
【0124】
検品装置124を用いて印刷画像が検査されたフィルム基材1は、巻き取りロール122へ巻き取られる。巻き取りロール122に対向する位置には、押さえローラ136が配置される。押さえローラ136は、スウィングアーム138の先端に設けられる。スウィングアーム138は、押圧部材を用いて押さえローラ136を巻き取りロール122へ巻き取られたフィルム基材1を押圧する。
【0125】
[インクジェット印刷システムの電気的構成]
図2は
図1に示すインクジェット印刷システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。インクジェット印刷システム10は、システム制御部160、搬送制御部162、コロナ処理制御部164、プレコート制御部166、ジェッティング制御部168、メイン乾燥制御部170及び情報取得部172を備える。
【0126】
システム制御部160は、インクジェット印刷システム10の全体動作を統括的に制御する。システム制御部160は、各種の制御部へ指令信号を送信する。システム制御部160は、メモリ174へのデータの記憶及びメモリ174からのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとして機能する。
【0127】
システム制御部160は、センサ176から送信されるセンサ信号を取得し、センサ信号に基づく指令信号を各種の制御部へ送信する。
図2に示すセンサ176は、インクジェット印刷システム10の各部に具備される位置検出センサ及び温度センサ等が含まれる。
【0128】
搬送制御部162は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、搬送条件を設定し、設定された搬送条件に基づき搬送装置20の動作を制御する。例えば、搬送制御部162は、搬送装置20へ適用される搬送条件を適用して、搬送装置20に具備される第一サクションドラム84等と連結されるモータの動作を制御する。
【0129】
また、搬送制御部162は、インクジェット印刷システム10に具備されるプレコート装置50及びジェッティング装置80等の各セクションのそれぞれにおいて、フィルム基材1へ付与される搬送テンションを個別に制御する。すなわち、搬送制御部162は、供給装置30から回収装置120までの各セクションにおけるフィルム基材1の搬送テンションを制御する。
【0130】
コロナ処理制御部164は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、コロナ放電処理の処理条件を設定し、設定された処理条件に基づきコロナ処理装置38の動作を制御する。
【0131】
プレコート制御部166は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、プレコート処理の処理条件を設定し、設定された処理条件に基づきプレコート装置50の動作を制御する。
【0132】
ジェッティング制御部168は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、印刷条件を設定し、設定された印刷条件に基づきジェッティング装置80の動作を制御する。ジェッティング制御部168は、カラー印刷装置88を制御するカラー印刷制御部及びホワイト印刷装置90を制御するホワイト印刷制御部を備え得る。
【0133】
ジェッティング制御部168は、印刷データに対して、色分解処理、色変換処理、各処理の補正処理及びハーフトーン処理を実施して、印刷データに基づくハーフトーンデータを生成する画像処理部を備える。
【0134】
ジェッティング制御部168は、インクジェットヘッド96へ供給される駆動電圧を生成する駆動電圧生成部を備える。ジェッティング制御部168は、インクジェットヘッド96へ駆動電圧を供給する駆動電圧出力部を備える。
【0135】
メイン乾燥制御部170は、システム制御部160から送信される指令信号に基づき、メイン乾燥処理の処理条件を設定し、設定された処理条件に基づき乾燥装置100の動作を制御する。
【0136】
情報取得部172は、インクジェット印刷システム10の制御に適用される各種の情報を取得する。システム制御部160は、情報取得部172を用いて取得した各種の情報に基づき、各種の制御部へ指令信号を送信する。
【0137】
図3は実施形態に係るインクジェット印刷装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。インクジェット印刷システム10に具備される制御装置200は、プロセッサ202、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208を備える。
【0138】
制御装置200は、コンピュータが適用される。コンピュータの形態は、サーバであってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよく、ワークステーションであってもよく、また、タブレット端末などであってもよい。
【0139】
プロセッサ202はCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ202はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ202は、バス210を介してコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208と接続される。入力装置214及びディスプレイ装置216は入出力インターフェース208を介してバス210に接続される。
【0140】
コンピュータ可読媒体204は、主記憶装置であるメモリ及び補助記憶装置であるストレージを含む。コンピュータ可読媒体204は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体204は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0141】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0142】
制御装置200は、通信インターフェース206を介してネットワークへ接続され、外部装置と通信可能に接続される。ネットワークは、LAN(Local Area Network)等を適用し得る。なお、ネットワークの図示を省略する。
【0143】
コンピュータ可読媒体204は、搬送制御プログラム220、コロナ処理制御プログラム222、プレコート制御プログラム224、ジェッティング制御プログラム226及び乾燥制御プログラム228が記憶される。
【0144】
搬送制御プログラム220は、
図2に示す搬送装置20に適用される搬送制御に対応する。コロナ処理制御プログラム222は、コロナ処理装置38に適用されるコロナ処理制御に対応する。
【0145】
プレコート制御プログラム224は、プレコート装置50に適用されるプレコート制御に対応する。ジェッティング制御プログラム226は、ジェッティング装置80に適用される印刷制御に対応する。乾燥制御プログラム228は、乾燥装置100に適用される乾燥制御に対応する。
【0146】
コンピュータ可読媒体204へ記憶される各種のプログラムは、一つ以上の命令が含まれる。コンピュータ可読媒体204は、各種のデータ及び各種のパラメータ等が記憶される。なお、
図2に示すメモリ174は、
図3に示すコンピュータ可読媒体204に含まれる。
【0147】
インクジェット印刷システム10は、プロセッサ202がコンピュータ可読媒体204へ記憶される各種のプログラムを実行し、インクジェット印刷システム10における各種の機能を実現する。なお、プログラムという用語はソフトウェアという用語と同義である。
【0148】
制御装置200は、通信インターフェース206を介して外部装置とのデータ通信を実施する。通信インターフェース206は、USB(Universal Serial Bus)などの各種の規格を適用し得る。通信インターフェース206の通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。
【0149】
制御装置200は、入出力インターフェース208を介して、入力装置214及びディスプレイ装置216が接続される。入力装置214はキーボード及びマウス等の入力デバイスが適用される。ディスプレイ装置216は、制御装置200に適用される各種の情報が表示される。
【0150】
ディスプレイ装置216は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等を適用し得る。ディスプレイ装置216は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。なお、有機ELディスプレイのELは、Electro-Luminescenceの省略語である。
【0151】
ここで、プロセッサ202のハードウェア的な構造例として、CPU、GPU、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。CPUは、プログラムを実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサである。GPUは、画像処理に特化したプロセッサである。
【0152】
PLDは、デバイスを製造した後に電気回路の構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路を備えるプロセッサである。
【0153】
一つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの一つで構成されていてもよいし、同種又は異種の二つ以上のプロセッサで構成されてもよい。各種のプロセッサの組み合わせの例として、一以上のFPGAと一以上のCPUとの組み合わせ、一以上のFPGAと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。各種のプロセッサの組み合わせの他の例として、一以上のCPUと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。
【0154】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成してもよい。一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する例として、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表される、SoC(System On a Chip)などの一つ以上のCPUとソフトウェアの組合せを適用して一つのプロセッサを構成し、このプロセッサを複数の機能部として作用させる態様が挙げられる。
【0155】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する他の例として、一つのICチップを用いて、複数の機能部を含むシステム全体の機能を実現するプロセッサを使用する態様が挙げられる。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0156】
このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを一つ以上用いて構成される。更に、上記した各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0157】
コンピュータ可読媒体204は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体素子を含み得る。コンピュータ可読媒体204は、ハードディスク等の磁気記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体204は、複数の種類の記憶媒体を具備し得る。
【0158】
[乾燥装置の詳細な説明]
図4は
図1に示す乾燥装置の構成例を示す乾燥装置の構成図である。
図4は乾燥装置100の内部構造を可視化した透視図であり、乾燥装置100におけるフィルム基材1の搬送経路を簡素化して図示する。
【0159】
水性インクが適用されるインクジェット印刷システム10は、ジェッティング装置80の基材搬送方向の下流側の位置に乾燥装置100を配置して、処理対象のフィルム基材1へ付与されたインクを乾燥させる必要がある。
【0160】
乾燥装置100は、複数の温風ヒータ104を用いてインクが付与されたフィルム基材1に対して熱を投入し、インクの乾燥を促進させる。乾燥装置100の内部温度は熱の投入に起因して上昇する。乾燥装置100は、壁部材300を用いて囲まれる閉空間302を有する。これにより、乾燥装置100における乾燥処理の効率が一定に維持される。
【0161】
温風ヒータ104は、基材幅方向について、フィルム基材1の最大サイズに対応する長さに渡って、複数のエアノズルが配置される。複数のエアノズルは一列に配置されてもよいし、二次元状に配置されてもよい。
【0162】
壁部材300は、閉空間302の天井を構成する天井壁300A、閉空間302の側面を構成する側壁300B及び閉空間302の底を形成する底壁300Cが含まれる。なお、
図4には、四枚の側壁300Bのうち三枚の側壁300Bを図示する。
【0163】
壁部材300は、グラスウール等の断熱材が内蔵される板状部材が適用される。これにより、乾燥装置100の周辺に配置される装置への乾燥装置100からの熱の伝搬が抑制され、閉空間302における熱エネルギーの一定の伝達効率が維持される。
【0164】
壁部材300は、乾燥装置100に適用される温度条件に応じた耐熱特性を有する。壁部材300の厚みは、乾燥装置100の強度及び耐熱特性等に応じて規定し得る。例えば、壁部材300は、乾燥処理温度の上限値に対して、25パーセント以上の温度上限値が規定される材料を適用し得る。
【0165】
乾燥装置100に適用される乾燥処理温度の例として、50℃以上200℃以下の任意の温度を適用し得る。乾燥処理温度の下限値は、乾燥不足の抑制の観点から規定し得る。乾燥処理温度の上限値は、フィルム基材1の耐熱性の観点から規定し得る。
【0166】
乾燥装置100は排気口304を備える。乾燥装置100は、温風ヒータ104へ外気を導入する外気導入路を備える。なお、外気導入路の図示は省略する。乾燥装置100は、排気口304を介してインクの揮発成分が排出される。これにより、乾燥装置100は、閉空間302へのインクの揮発成分の充満を抑制し得る。
【0167】
図4には、フィルム基材1の搬送経路の下側の位置に排気口304が配置される態様を例示したが、排気口304の配置はこれに限定されない。また、排気口304が配置される面も
図4に示す例に限定されない。排気口304は複数の面に一つ以上配置されてもよい。更に、排気口304の開口形状及び開口面積は、
図4に示す例に限定されず、適宜、規定し得る。
【0168】
乾燥装置100はフィルム基材1が搬入される搬入口306及びフィルム基材1が搬出される搬出口308を備える。搬入口306及び搬出口308は、フィルム基材1が通過可能な面積を有する。搬入口306及び搬出口308は、
図4に示す例に限定されず、フィルム基材1の搬送経路の任意の位置へ配置し得る。
【0169】
乾燥装置100は、フィルム基材1を支持する複数のパスローラ22が配置される。
図4に示す態様では、複数のパスローラ22は、基材搬送方向に沿って等間隔に配置される。
【0170】
パスローラ22は、閉空間302の温度上昇に伴い、外周面の表面温度が上昇する。インクが付与されたフィルム基材1は、閉空間302の温度に倣うパスローラ22との接触に起因して、熱の投入が促進される。パスローラ22の表面温度を閉空間302の温度と同等の温度に維持することは、フィルム基材1の乾燥期間の短期間化に有効である。これにより、乾燥装置100におけるフィルム基材1の通過距離を相対的に短くでき、乾燥装置100を小型化し得る。なお、閉空間302の温度と同等の温度とは、閉空間302の温度と同一の温度及び同一の温度とみなし得る温度を意味する。
【0171】
インクジェット印刷システム10は、
図1に示すジェッティング装置80を稼働させる前に、乾燥装置100の暖機運転を実施して、パスローラ22の表面温度を、予め閉空間302の温度に倣わせ得る。
【0172】
乾燥装置100は、断熱構造を有する壁部材300を用いて覆われる閉空間302において、温風ヒータ104のエアノズルから放射させる温風をフィルム基材1へ吹き付ける。
【0173】
乾燥装置100は、エアノズルから放射される温風の単位期間あたりの体積に対して、排気口304から排出させる気体の単位期間あたりの体積を大きくし、閉空間302が負圧に保たれる。これにより、搬入口306及び搬出口308から外部への温風の流出が抑制され、閉空間302の温度は、温風の温度と同等の温度に維持される。
【0174】
図5は
図1に示す乾燥装置の他の態様を示す乾燥装置の構成図である。
図5に示す乾燥装置100Aは、
図4に示す温風ヒータ104に代わり、赤外線ヒータ104Aが具備される。
【0175】
赤外線ヒータ104Aは、基材幅方向について、フィルム基材1の最大サイズに対応する長さを有する。
図5に示す乾燥装置100Aは、搬入口306及び搬出口308から外気が導入される。
【0176】
なお、実施形態に記載の壁部材300に囲まれる閉空間302は、壁部材を用いて囲われる乾燥処理ユニットの一例である。実施形態に記載の温風ヒータ104及び赤外線ヒータ104Aはエネルギー発生ユニットの一例である。
【0177】
[パスローラの構造例]
図4及び
図5に示す複数のパスローラ22のうち、少なくとも一つは、乾燥処理温度に倣う閉空間302の内部の気体を、パスローラ22の内部に導入する気体導入構造を有する。例えば、
図4及び
図5に示す複数のパスローラ22のすべてに気体導入構造を適用してもよいし、複数のパスローラ22のうち、一つに気体導入構造を適用してもよい。すなわち、一以上のパスローラ22のうち、少なくとも一つは、気体導入構造が適用される。
【0178】
これにより、気体導入構造が適用されるパスローラ22の表面温度の低下が抑制され、気体導入構造が適用されるパスローラ22の表面温度は、閉空間302の温度と同等の温度に維持される。以下に、気体導入構造が適用されるパスローラ22の構造例について詳細に説明する。以下の説明において、便宜上、気体導入構造が適用されるパスローラの符号を22から変更する。
【0179】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第一構造例〕
図6は気体導入構造が適用されるパスローラの第一構成例を示すパスローラの概略断面図である。
図6は、パスローラ400の回転軸401を通り、回転軸401と直交するパスローラ400の断面を示す。
図8等のパスローラの断面図についても同様である。
【0180】
図6に示すパスローラ400は、中空構造を有する中空構造体であり、一方の端面402に開口404が形成され、他方の端面406に開口408が形成される。すなわち、パスローラ400は、回転軸401に対して平行となる方向について、一方の端面402から他方の端面406を貫通する第一中空部410及び第二中空部411が形成される。
【0181】
パスローラ400は、フィルム基材1を支持する支持面412を有する基材支持部414を備える。基材支持部414は第一中空部410が形成される。パスローラ400は、ベアリング416を用いて支持される回転支持部418を備える。回転支持部418は、基材支持部414の第一中空部410と連通する第二中空部411が形成される。
【0182】
パスローラ400は、基材支持部414と回転支持部418とを別々の部材とし、基材支持部414と回転支持部418とを接合させて作成し得る。これにより、基材支持部414と回転支持部418の熱膨張係数の違いに対応するパスローラ400の設計が可能となる。
【0183】
パスローラ400は、一方の端面402及び他方の端面406に気体流入部材420が取り付けられる。気体流入部材420は、羽根支持部材424に対して放射状に複数の羽根426が取り付けられる風車構造体を備える。羽根支持部材424はフレーム428に支持される。フレーム428は、一方の端面402への取り付け構造を有する。
【0184】
気体流入部材420の一方の端面402及び他方の端面406への取り付け構造は、気体流入部材420のフレーム428を円筒形状とし、一方の端面402及び他方の端面406と嵌め合わせる構造を適用し得る。これにより、気体流入部材420をパスローラ400と同心円状に配置し得る。気体流入部材420は、一方の端面402及び他方の端面406に外挿される構造を適用してもよいし、一方の端面402及び他方の端面406に内挿される構造を適用してもよい。
【0185】
フィルム基材1の移動に応じたパスローラ400の従動回転に起因して、パスローラ400の第一中空部410及び第二中空部411の内部への回転軸401に沿う方向への気体の流れが発生し、パスローラ400の第一中空部410へ温められた閉空間302の内部の気体を導入し得る。これにより、パスローラ400の支持面412における温度低下を抑制し得る。
【0186】
また、パスローラ400の一方の端面402に気体流入部材420が取り付けられ、かつ、パスローラ400の他方の端面406にも気体流入部材420が取り付けられる。これにより、回転軸401に沿う方向への気体の流れの発生が促進される。
【0187】
気体流入部材420は、樹脂材料及びアルミニウム等の金属材料を適用し得る。例えば、気体流入部材420はアルミダイカストを適用し得る。これにより、複雑な形状の気体流入部材420等を低コストで製作し得る。
【0188】
図6には、パスローラ400の一方の端面402及び他方の端面406に気体流入部材420が取り付けられる態様を例示したが、パスローラ400は、一方の端面402及び他方の端面406の少なくともいずれかに、気体流入部材420が取り付けられればよい。以下に説明する各構造例に係る気体流入部材についても同様である。
【0189】
なお、実施形態に記載のパスローラ400は第一ローラの一例である。また、実施形態に記載の気体流入部材420は第一気体流入部材の一例である。
【0190】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの機械的仕様〕
パスローラ400の基材支持部414は、熱伝導率が200ワット毎メートルケルビン以上の材料が適用される。基材支持部414に適用される材料の例として、アルミ合金及び銅合金等の金属合金が挙げられる。これにより、フィルム基材1のパスローラ400への接触に起因するパスローラ400の表面温度の低下が抑制され、乾燥装置100の乾燥効率の低下が抑制される。
【0191】
パスローラ400の肉厚は、1.0ミリメートル以上10.0ミリメートル以下とされる。パスローラ400の肉厚とは、パスローラ400における第一中空部410及び第二中空部411の材料の厚みである。第一中空部410の肉厚は、第一中空部410の外径から第一中空部410の内径を減算し、この減算値を2で除算した値である。第二中空部411についても同様である。
【0192】
パスローラ400の肉厚が1.0ミリメートル未満の場合、第一中空部410及び第二中空部411を形成する際のパスローラ400の加工が難しく、加工精度の低下が懸念される。一方、パスローラ400の肉厚が10.0ミリメートルを超える場合、パスローラ400のヒートアップの期間が相対的に長くなる。
【0193】
ヒートアップとは、パスローラ400の支持面412の温度を、フィルム基材1の乾燥処理に適した温度へ調整する処理である。ヒートアップの一例として、上記した暖気運転が挙げられる。
【0194】
パスローラ400からフィルム基材1への熱の流出に起因して、パスローラ400の支持面412の温度は低下する。フィルム基材1の乾燥処理を促進するには、支持面412の温度を一定以上に維持する必要がある。パスローラ400の肉厚が相対的に厚い場合、パスローラ400の支持面412の温度が相対的に低下した際に、温度が低下した状態のまま熱的に平衡状態となりやすい。一方、パスローラ400の肉厚が相対的に薄い場合は、パスローラ400の支持面412の温度低下が相対的に小さくなる。
【0195】
図7は気体導入構造が適用されるパスローラの評価結果を示す表である。
図7には、パスローラ400の肉厚を0.5ミリメートル、1.0ミリメートル、5.0ミリメートル、10.0ミリメートル及び20.0ミリメートルの場合のそれぞれにおける、製作可否、暖機運転期間及び連続印刷の際における内外周温度差を示す。パスローラ400の肉厚として、
図6に示す第一中空部410の肉厚を適用する。
【0196】
製作可否の評価結果におけるマイナスは、パスローラ400の製作が困難であることを表す。製作可否の評価結果におけるプラスは、パスローラ400の製作が可能であることを表す。製作可否の評価結果は、肉厚が0.5ミリの場合はパスローラ400の製作が困難であり、肉厚が1.0ミリ以上の場合にパスローラ400の製作が可能であることを表す。
【0197】
暖気運転期間の評価結果は、パスローラ400の支持面412の温度が室温から乾燥処理温度まで上昇する期間が適用される。単位は分である。室温は25℃とし、乾燥処理温度は160℃とした。
【0198】
暖機運転期間は、インクジェット印刷システム10のシステム起動期間以下であればよい。インクジェット印刷システム10のシステム起動期間は20分であり、暖機運転期間が20分以下であれば、暖気運転の実施に起因する印刷開始の実質的な待ち期間が不要となる。暖気運転期間の評価結果は、肉厚が10.0ミリメートル以下であれば、暖気運転の実施に起因する実質的な印刷の待ち期間が不要となることを表す。
【0199】
連続印刷内外周温度差の評価結果は、連続印刷が実施される際の、パスローラ400の支持面412における任意の位置の温度と、パスローラ400の第一中空部410を構成する内壁面における任意の位置の温度との差である内外周温度差が適用される。内外周温度差の単位は℃である。
【0200】
内外周温度差が10℃以下の場合は、乾燥処理の不足に起因するインクの剥離等が発生せず、印刷画像の品質低下が許容範囲内である。連続印刷の際における内外周温度差の評価結果は、肉厚が10.0ミリメートル以下であれば、乾燥処理の不足が発生しないことを表す。
【0201】
ここで、パスローラ400の支持面412における任意の位置の温度をT1とし、パスローラ400の第一中空部410を構成する内壁面における任意の位置の温度をT2とする。パスローラ400に適用される材料の熱伝導率をλとし、パスローラ400の肉厚をLとする。単位期間に供給される熱エネルギーΦは、式1を用いて表される。
【0202】
Φ=-λ×(T2-T1)/L …式1
式1の右辺を変形し、式2を導出する。
【0203】
Φ=(T1-T2)/(L/λ) …式2
式2の右辺の分母L/λは、パスローラ400に適用される材料における熱抵抗Rである。熱抵抗Rの単位はケルビン毎ワットである。熱抵抗Rは、パスローラ400の肉厚Lに比例し、単位期間に供給される熱エネルギーΦが一定の場合、内外周温度差は熱抵抗Rに反比例する。すなわち、内外周温度差を相対的に小さくするには、パスローラ400の肉厚Lを相対的に大きくし、熱抵抗Rを大きくすればよい。
【0204】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第二構造例〕
図8は気体導入構造が適用されるパスローラの第二構造例を示すパスローラの概略断面図である。
図9は
図8に示すパスローラに具備される気体流入部材の正面図である。
図8に示すパスローラ440は、
図6に示すパスローラ400と比較して端面に取り付けられる気体流入部材の構造が相違する。なお、ここでいう端面は、一方の端面及び他方の端面の総称である。
【0205】
図8に示すパスローラ440は、一方の端面442及び他方の端面446に気体流入部材444が取り付けらる。気体流入部材444は、厚み方向について気体流入部材444を斜めに貫通する気体流入穴450が形成される。
【0206】
すなわち、パスローラ440へ気体流入部材444が取り付けられる状態において、気体流入穴450が貫通する方向は、パスローラ440の回転軸441の方向に対して交差する。気体流入穴450は、パスローラ440の厚み方向の全長について同一の直径を有する。
【0207】
図9に示すように、気体流入部材444は、複数の気体流入穴450が形成される。複数の気体流入穴450は気体流入部材444の外周に沿って等間隔に配置される。複数の気体流入穴450のそれぞれは同一の直径を有する。
【0208】
気体流入穴450の数、配置及び直径等は、
図8及び
図9に示す例に限定されない。気体流入穴450の数等は、パスローラ440の第一中空部410への気体の流入効率の観点に基づき、適宜規定し得る。
【0209】
第二構造例に係るパスローラ440は、回転軸441に対して角度を有する気体流入穴450が形成される気体流入部材444が両端に取り付けられる。これにより、第一構造例に係るパスローラ400に具備される気体流入部材420と比較して、単純な形状の気体流入部材444を適用して、第一中空部410への気体の流入の促進を実現し得る。
【0210】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第三構造例〕
図10は気体導入構造が適用されるパスローラの第三構造例を示すパスローラの概略断面図である。なお、符号461はパスローラ460の回転軸を表す。
図6に示す第一構造例に係るパスローラ400及び
図8に示す第二構造例に係るパスローラ440は、第一中空部410及び第二中空部411を相対的に大きくしようとすると、相対的に大型のベアリング416が必要となる。そうすると、コストアップ及び回転抵抗の増加が懸念される。
【0211】
図10に示すパスローラ460の両端に取り付けられる気体流入部材470は、羽根支持部材471に回転軸内挿穴472が形成される。パスローラ460の回転支持部462は気体流入部材470の回転軸内挿穴472へ内挿される。気体流入部材470の回転軸内挿穴472に内挿される回転支持部462は、気体流入部材470の外側において、ベアリング416を用いて回転自在に支持される。
【0212】
気体流入部材470は、羽根支持部材471の周囲に気体流入穴474が形成される。気体流入穴474は、羽根部材476が配置される。羽根部材476は羽根支持部材471を用いて支持される。
【0213】
パスローラ460の一方の端を構成する端部材464は、気体流入口466が形成される。気体流入口466は、パスローラ460の気体流入穴474に対応する位置に配置される。気体流入口466は、端部材464を貫通し、基材支持部468の中空部469と連通する。
【0214】
パスローラ460の両端に取り付けられる気体流入部材470は、
図9に示す気体流入部材444と同様の構造を適用してもよい。
【0215】
第三構造例に係るパスローラ460は、
図6に示すパスローラ400の第一中空部410に対して中空部469を大口径化する場合であっても、パスローラ400の支持に適用されるベアリング416と同様の小型のベアリング416を適用し得る。
【0216】
また、気体流入部材470の羽根部材476と回転支持部462との干渉に配慮をする必要がなく、回転支持部462の設計自由度が向上し得る。
【0217】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第四構造例〕
図11は気体導入構造が適用されるパスローラの第四構造例を示すパスローラの概略断面図である。同図に示すパスローラ480は、気体流入部材482が端部材と兼用される。気体流入部材482は、
図9に示す気体流入部材444と同等の構造が適用され、回転軸481の方向に対して直交する方向に気体流入穴484が形成される。
【0218】
気体流入穴484は、基材支持部488に形成される中空部490と連通する。回転支持部486は、回転支持部486の中心軸と端部材と兼用される気体流入部材482の中心との位置を合わせて、気体流入部材482と接合される。回転支持部486はベアリング416を用いて回転自在に支持される。
【0219】
第四構造例に係るパスローラ480は、
図10に示すパスローラ460等と比較して、部品点数が削減される。これにより、
図10に示すパスローラ460等と同等の機械的精度が確保され、かつ、
図10に示すパスローラ460等よりも安価に製作し得る。
【0220】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第五構造例〕
図12は気体導入構造が適用されるパスローラの第五構造例を示すパスローラの概略断面図である。同図に示すパスローラ500は、回転軸501と回転支持部502の中心軸とを一致させ、回転支持部502が固定支持され、回転支持部502に対して基材支持部504が回転する。
【0221】
すなわち、回転支持部502は、基材支持部504の端部材506を貫通する。回転支持部502はベアリング508が接合され、ベアリング508は端部材506の中心部に固定支持される。また、回転支持部502の両端は、フィルム基材1の搬送経路を構成するフレーム等の支持部材510を用いて固定支持される。端部材506の中心部は、端部材506の中心を含む領域であり、端部材506の中心から規定の距離を有する領域である。
【0222】
基材支持部504の両端には、
図10に示す気体流入部材470と同様の構造を有する気体流入部材512が取り付けられる。また、
図12に示す端部材506は、
図10に示す端部材464の気体流入口466よりも開口面積が大きい気体流入口514が形成される。
【0223】
なお、
図12に示す羽根516を有する気体流入部材512に代わり、
図9に示す気体流入部材444と同様の構造を有する、回転軸501の方向に対して斜め方向の貫通穴が形成される気体流入部材を適用してもよい。
【0224】
更に、
図11に示すパスローラ480と同様に、パスローラ500は、回転軸501の方向に対して斜め方向の貫通穴を端部材506に形成し、気体流入部材512が端部材506を兼ねる構造を適用してもよい。
【0225】
第五構造例に係るパスローラ500は、
図10に示すパスローラ460と比較して、端部材506に形成される気体流入口514を相対的に大きくでき、基材支持部504に形成される中空部518へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を、相対的に増加させ得る。
【0226】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第六構造例〕
図13は気体導入構造が適用されるパスローラの第六構造例パスローラの概略断面図である。なお、符号541はパスローラ540の回転軸を表す。同図に示すパスローラ540は、基材支持部544に形成される中空部548に剥離板部材550が配置される。
【0227】
剥離板部材550は、複数の剥離板552を備える。剥離板552は、剥離板支持部材554を用いて基端が支持される。剥離板支持部材554は、回転支持部542が内挿され、回転支持部542を用いて固定支持される。
【0228】
パスローラ540の基材支持部544の回転に応じて、固定支持される剥離板部材550に対して基材支持部544が回転する。基材支持部544が回転に応じて、中空部548の内部の気体が流動し、基材支持部544の内壁545の近傍に存在する気体が、内壁545のから剥離され、中空部548へ導入される新しい気体が、基材支持部544の内壁545の近傍へ導入される。
【0229】
図14は
図13に示す遮蔽板部材の正面図である。剥離板支持部材554は、取付穴556が形成される。取付穴556は、パスローラ540の回転支持部542が内挿される。
【0230】
複数の剥離板552は、剥離板支持部材554の外周に沿って等間隔に配置される。
図15には、四枚の剥離板552を備える剥離板部材550を図示したが、剥離板552の数は一枚以上であればよい。
【0231】
第六構造例に係るパスローラ540は、剥離板部材550が中空部548に配置される。固定された剥離板部材550に対して、基材支持部544が回転する。これにより、中空部548における気体の移動に応じた熱の移動が促進され、中空部548の内壁545の近傍へ定常的に新しい気体が導入され得る。
【0232】
〔気体導入構造が適用されるパスローラの第七構造例〕
パスローラにおける内外周温度差が過度に大きくなる場合、フィルム基材1へのしわの発生が懸念される。フィルム基材1は、しわの発生に起因するダメージが発生し得る。パスローラは、中空部へ流入させる気体の単位期間あたりの体積が調整され、内外周温度差が一定範囲に維持される。
【0233】
図15はキャップ部材の取り付け状態を示すパスローラの概略断面図である。同図には、
図6に示すパスローラ400の一部を抽出して図示する。
図15に示す回転支持部418は、端面に気体流入部材420が取り付けられ、更に、気体流入部材420の回転支持部418と反対の側に、キャップ部材580が取り付けられる。
【0234】
キャップ部材580は、厚み方向にキャップ部材580を貫通する気体量調整穴582を備える。また、キャップ部材580は、気体流入部材420に外挿される取付構造を有する。ユーザは、気体量調整穴582の直径が異なる複数のキャップ部材580を準備しておき、パスローラ400における内外周温度差に応じたキャップ部材580を取り付けて、第一中空部410及び第二中空部411へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を調整し得る。
【0235】
図16は
図15に示すキャップ部材の構造例を示すキャップ部材の正面図である。
図17は
図15に示すキャップ部材の他の構造例を示すキャップ部材の正面図である。
図16に示すキャップ部材580Aに形成される気体量調整穴582Aの直径は、
図17に示すキャップ部材580Bに形成される気体量調整穴582Bよりも大きい。
【0236】
すなわち、
図16に示すキャップ部材580Aが取り付けられる場合は、第一中空部410及び第二中空部411へ流入させる気体の単位期間あたりの体積が相対的に大きくなる。換言すると、
図17に示すキャップ部材580Bが取り付けられる場合は、第一中空部410及び第二中空部411へ流入させる気体の単位期間あたりの体積が相対的に小さくなる。
【0237】
[実施形態に係るインクジェット印刷システムの作用効果]
実施形態に係るインクジェット印刷システム10は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0238】
〔1〕
断熱構造を有する壁部材300を用いて囲まれる閉空間302を有する乾燥装置100を備える。乾燥装置100においてフィルム基材1を支持するパスローラ400は、フィルム基材1を支持する基材支持部414に第一中空部410が形成され、回転支持部418は第一中空部410と連通する第二中空部411が形成される。パスローラ400の両端は、第二中空部411を介して第一中空部410と連通する開口404が形成される。パスローラ400は、閉空間302において温められた気体を第一中空部410へ流入させる。これにより、一定の温度管理がされた閉空間302における気体が第一中空部410へ導入され、パスローラ400における内外周温度差が規定の範囲に維持され、フィルム基材1に対する乾燥効率の低下が抑制される。
【0239】
〔2〕
パスローラ400の両端は、気体流入部材420が取り付けられる。気体流入部材420は、複数の羽根426を備える構造が適用される。これにより、閉空間302における気体の第一中空部410への流入が促進される。
【0240】
〔3〕
基材支持部414の材料は、アルミ合金及び銅合金等の金属合金が適用される。基材支持部414の肉厚は、1.0ミリメートル以上10.0ミリメートル以下とされる。これにより、一定の熱伝導性能及び一定の機械的性能を満たす基材支持部414を製作し得る。
【0241】
〔4〕
第二構造例に係るパスローラ440に具備される気体流入部材444は、パスローラ440の回転軸441の方向に対して、気体流入部材444を斜めに貫通する気体流入穴450が形成される。これにより、単純な形状の気体流入部材444を適用して、第一中空部410への気体の流入の促進を実現し得る。
【0242】
〔5〕
第三構造例に係るパスローラ460は、回転支持部462が気体流入部材470を貫通し、回転支持部462が気体流入部材470の外側において、ベアリング416を用いて回転自在に支持される。基材支持部468の端部材464は、気体流入部材470の気体流入穴474に対応する位置に気体流入口466が形成される。これにより、中空部469の大口径化が可能である。
【0243】
〔6〕
第四構造例に係るパスローラ480は、気体流入部材482が端部材と兼用される。これにより、一定の機械的精度が確保されるパスローラ480を安価に製作し得る。
【0244】
〔7〕
第五構造例に係るパスローラ500は、基材支持部504が回転支持部502を用いて回転自在に支持される。回転支持部502の両端は固定支持される。これにより、端部材506に形成される気体流入口514を相対的に大きくでき、基材支持部504に形成される中空部518へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を、相対的に増加させ得る。
【0245】
〔8〕
第六構造例に係るパスローラ540は、中空部548に剥離板部材550が具備される。剥離板部材550は回転支持部542を用いて固定支持される。基材支持部544の回転に応じて中空部548における気体の流動が促進される。これにより、基材支持部544の内壁545の近傍へ新しい気体を導入し得る。
【0246】
〔9〕
基材支持部414の内外周温度差に応じたキャップ部材580が、気体流入部材420へ取り付けられる。これにより、第一中空部410へ流入させる気体の単位期間あたりの体積を、基材支持部414の内外周温度差に応じて調整し得る。
【0247】
[気体導入構造が適用されるパスローラの他の装置への適用例]
図6から
図17を用いて説明した気体導入構造が適用されるパスローラは、インクジェット印刷システム10における他の装置へ適用してもよい。例えば、
図1に示す乾燥装置100を通過したフィルム基材1は、乾燥装置100の外部においても、複数のパスローラ22を用いて支持される。
【0248】
乾燥装置100から排出させたフィルム基材1は、乾燥処理の影響を受けて高温になる。高温のフィルム基材1が接触したパスローラ22は、フィルム基材1から熱が流入し、乾燥処理温度よりも低い乾燥装置100の外部の温度に倣うパスローラ22は、温度が上昇し得る。
【0249】
パスローラ22の支持面が一定の温度以上となると、フィルム基材1に付与されているインクが、パスローラ22の支持面へ転写されるという問題が生じ得るので、乾燥装置100から排出させたフィルム基材1は冷却が必要となる。
【0250】
フィルム基材1を冷却する冷却装置を備える場合は、冷却装置の設置及び冷却装置の運転のコストの上昇が懸念される。印刷速度が相対的に速くすると、相対的に大型の冷却装置が必要になり、更にコストの上昇が生じ得る。
【0251】
図18は気体導入構造が適用されるパスローラの他の配置例を示す図である。
図18には、基材搬送方向における乾燥装置100の下流側の位置に配置されるパスローラ600を示す。
【0252】
パスローラ600は、
図4に示すパスローラ400、
図6に示すパスローラ440、
図10に示すパスローラ460、
図11に示すパスローラ480、
図12に示すパスローラ500及び
図3に示すパスローラ540を適用し得る。また、パスローラ600は、
図15に示すキャップ部材580を適用し得る。
【0253】
図18に示すパスローラ600は、パスローラ600が配置される領域に存在する気体が中空部602へ流入される。これにより、パスローラ600の中空部602は、パスローラ600が配置される領域の環境温度に倣い、パスローラ600の支持部604が高温のフィルム基材1へ接触する際のパスローラ600の支持部604の温度上昇を抑制し得る。なお、実施形態に記載のパスローラ600は第二ローラの一例である。また、実施形態に記載のパスローラ600に適用される気体流入部材は、第二気体流入部材の一例である。
【0254】
[インクジェット印刷システムの他の態様]
図19は他の態様に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。同図に示すインクジェット印刷システム10Aは、供給装置30、プレコート装置50、ジェッティング装置80A、乾燥装置100B、冷却装置110及び回収装置120を備える。
【0255】
なお、
図19に示す供給装置30は
図1に示す供給装置30と同一の構成を適用し得る。
図19では
図1に示す供給装置30における一部の構成要素の図示を省略する。プレコート装置50及び回収装置120についても同様である。
【0256】
図19に示すジェッティング装置80Aは、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのそれぞれに対応するインクジェットヘッド96K、インクジェットヘッド96C、インクジェットヘッド96M及びインクジェットヘッド96Yを備える。
【0257】
ジェッティング装置80Aは、第一スキャナ98及び第二スキャナ99を備える。第一スキャナ98及び第二スキャナ99の構成及び機能は、
図1に示すインクジェット印刷システム10と同様である。
【0258】
乾燥装置100Bは、
図1に示す乾燥装置100と比較して、フィルム基材1の搬送経路が相違する。なお、
図19では、
図1に示す温風ヒータ104の図示を省略する。乾燥装置100Bは、
図4に示す乾燥装置100及び
図5に示す乾燥装置100Aと同様の構成を適用し得る。また、乾燥装置100Bに配置されるパスローラ22は、
図6に示すパスローラ400等を適用し得る。
【0259】
冷却装置110は、乾燥装置100Bから排出させたフィルム基材1を冷却する。冷却装置110は、乾燥装置100Bの乾燥処理温度よりも低い温度を適用して、フィルム基材1を冷却し得る。冷却装置110は、冷風を用いる冷却及び送風を用いる冷却などの形態を適用し得る。冷却装置110に具備されるパスローラ22Aは、
図18に示すパスローラ600を適用し得る。
【0260】
[画像について]
画像は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像及び均一濃度画像等も含まれる。画像は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様及びその他の各種パターン等、並びにこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。また、画像という用語は、画像を表す画像信号及び画像データの意味を含み得る。
【0261】
[基材について]
乾燥処理の対象とされる基材は、実施形態において例示した連続体のフィルム基材に限定されない。基材の材料は、紙、布、金属及び樹脂などの材料を適用し得る。また、枚葉の基材を適用してもよい。
【0262】
[液体付与システムへの適用例]
本明細書では、インクジェット印刷装置に具備される乾燥装置について説明をしたが、実施形態に係る乾燥装置は、基材に対して液体を付与する液体付与システムに具備されてもよい。液体付与システムにおける液体の付与方式はインクジェット方式に限定されず、インクジェット方式以外の各種の方式を適用し得る。
【0263】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0264】
1 フィルム基材
10 インクジェット印刷システム
10A インクジェット印刷システム
20 搬送装置
22 パスローラ
23 第一テンションピックアップ
24 第二テンションピックアップ
25 第三テンションピックアップ
26 第四テンションピックアップ
27 第五テンションピックアップ
28 第六テンションピックアップ
30 供給装置
32 送り出しロール
34 第一供給駆動ローラ
36 第二供給駆動ローラ
38 コロナ処理装置
50 プレコート装置
52 コーター
54 塗布ローラ
55 液溜め
56 対向ローラ
58 プレコート乾燥装置
60 第一無接触ターン装置
80 ジェッティング装置
80A ジェッティング装置
84 第一サクションドラム
86 第二サクションドラム
88 カラー印刷装置
90 ホワイト印刷装置
92 第二無接触ターン装置
96 インクジェットヘッド
96C インクジェットヘッド
96K インクジェットヘッド
96M インクジェットヘッド
96W1 インクジェットヘッド
96W2 インクジェットヘッド
96Y インクジェットヘッド
97 検査装置
98 第一スキャナ
99 第二スキャナ
100 乾燥装置
100A 乾燥装置
100B 乾燥装置
104 温風ヒータ
106 メイン乾燥駆動ローラ
110 冷却装置
120 回収装置
122 ロール
124 検品装置
126 第三スキャナ
128 第四スキャナ
130 第一回収駆動ローラ
132 第二回収駆動ローラ
136 押さえローラ
138 スウィングアーム
160 システム制御部
162 搬送制御部
164 コロナ処理制御部
166 プレコート制御部
168 ジェッティング制御部
170 メイン乾燥制御部
172 情報取得部
174 メモリ
176 センサ
200 制御装置
202 プロセッサ
204 コンピュータ可読媒体
206 通信インターフェース
208 入出力インターフェース
210 バス
214 入力装置
216 ディスプレイ装置
220 搬送制御制御プログラム
222 コロナ処理制御プログラム
224 プレコート制御プログラム
226 ジェッティング制御プログラム
228 乾燥制御プログラム
300 壁部材
300A 天井壁
300B 側壁
300C 底壁
302 閉空間
304 排気口
306 搬入口
308 搬出口
400 パスローラ
401 回転軸
402 端面
404 開口
406 端面
408 開口
410 第一中空部
411 第二中空部
412 支持面
414 基材支持部
416 ベアリング
418 回転支持部
420 気体流入部材
424 羽根支持部材
426 羽根
428 フレーム
440 パスローラ
441 回転軸
442 端面
444 気体流入部材
446 端面
450 気体流入穴
460 パスローラ
462 回転支持部
464 端部材
468 基材支持部
469 中空部
470 気体流入部材
471 羽根支持部材
472 回転軸内挿穴
474 気体流入穴
476 羽根部材
480 パスローラ
481 回転軸
482 気体流入部材
484 気体流入穴
486 回転支持部
488 基材支持部
490 中空部
500 パスローラ
501 回転軸
504 基材支持部
506 端部材
508 ベアリング
510 支持部材
512 気体流入部材
514 気体流入口
516 羽根
518 中空部
540 パスローラ
542 回転支持部
544 基材支持部
545 内壁
548 中空部
550 剥離板部材
552 剥離板
554 剥離板支持部材
556 取付穴
580 キャップ部材
580A キャップ部材
580B キャップ部材
582 気体量調整穴
600 パスローラ
602 中空部
604 支持部