(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131762
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220831BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220831BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220831BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20220831BHJP
C08F 220/38 20060101ALI20220831BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20220831BHJP
C08F 228/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 521
C08F212/14
C08F220/38
C08F224/00
C08F228/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030874
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英治
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 知昭
(72)【発明者】
【氏名】三好 太朗
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF22P
2H225AF24P
2H225AF27P
2H225AF29P
2H225AF32P
2H225AF33P
2H225AF36P
2H225AF64P
2H225AF71P
2H225AF73P
2H225AF76P
2H225AF91P
2H225AF99P
2H225AH02
2H225AH03
2H225AH04
2H225AH11
2H225AH16
2H225AH17
2H225AH19
2H225AH31
2H225AH32
2H225AH33
2H225AH34
2H225AH36
2H225AH38
2H225AH39
2H225AJ02
2H225AJ04
2H225AJ12
2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ47
2H225AJ48
2H225AJ51
2H225AJ53
2H225AJ58
2H225AJ59
2H225AJ60
2H225AJ82
2H225AL02
2H225AL03
2H225AL27
2H225AN34P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN41P
2H225AN45P
2H225AN54P
2H225AN56P
2H225AN57P
2H225AN58P
2H225AN65P
2H225AN67P
2H225AN88P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AL08P
4J100AQ15P
4J100AQ28P
4J100BA03Q
4J100BA27P
4J100BA58P
4J100BB11P
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100HE20
4J100JA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】解像性及びエッチング耐性に優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)及び少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位を有する樹脂(A)を含有し、全固形分中の繰り返し単位(P1)の含有量が0.25mmol/g以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する下記一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)、及び前記繰り返し単位(P1)とは異なる少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂(A)を含有し、
全固形分中の前記繰り返し単位(P1)の含有量が0.25mmol/g以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】
一般式(1)中、R
11~R
13はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R
12はLと結合して環を形成していてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表す。R
14は置換基を表す。Q
+は有機オニウムイオンを表す。
【請求項2】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】
一般式(2)中、R
21~R
24はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。R
22はR
24と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
22は単結合又はアルキレン基を表す。ただし、R
21~R
24の少なくとも1つは芳香環を有する基を表す。
【請求項3】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(3)で表される、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】
一般式(3)中、R
31~R
33はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R
32はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR
32は単結合又はアルキレン基を表す。L
3は単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。
【請求項4】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(4)で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】
一般式(4)中、R
41~R
43はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R
42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42は単結合又はアルキレン基を表す。L
4は単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。kは1~5の整数を表す。
【請求項5】
前記樹脂(A)が、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位(P2)を有し、
前記繰り返し単位(P2)が、酸の作用により分解してカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
前記繰り返し単位(P2)が、酸の作用により分解して芳香環に結合したカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して芳香環に結合した水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位である、請求項5に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記繰り返し単位(P2)が、下記一般式(5)~(9)のいずれかで表される繰り返し単位である、請求項5に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化5】
一般式(5)中、R
51~R
53はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L
5は単結合又は2価の連結基を表す。R
54~R
56はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R
54~R
56のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(6)中、R
61~R
64はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。ただし、R
61及びR
62のうち少なくとも一方は有機基を表す。X
6は-CO-、-SO-、又は-SO
2-を表す。Y
6は-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、又は-NR
48-を表す。R
48は水素原子又は有機基を表す。L
6は単結合又は2価の連結基を表す。R
65~R
67はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R
65~R
67のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(7)中、R
71及びR
72はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R
73及びR
74はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R
71~R
74のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(8)中、R
81~R
83はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L
8は単結合又は2価の連結基を表す。Ar
8は芳香環基を表す。R
84~R
86はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R
84~R
86のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。Ar
8はR
82又はR
84と結合して環を形成しても良い。
一般式(9)中、R
91~R
93はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L
9は単結合又は2価の連結基を表す。R
94~R
96はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R
95及びR
96が互いに結合して環を形成しても良い。
【請求項8】
前記繰り返し単位(P2)が、前記一般式(5)、(8)、又は(9)で表される繰り返し単位である、請求項7に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(5)のL5が2価の芳香族連結基である、請求項7又は8に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
前記一般式(9)のL9が2価の芳香族連結基である、請求項7又は8に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
全固形分中の前記繰り返し単位(P1)の含有量が0.50mmol/g以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項12】
前記一般式(1)のLがフェニレン基である、請求項1~11のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項13】
前記一般式(1)のLが単結合である、請求項1~11のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項14】
前記一般式(1)のLが炭素数1~3のアルキレン基である、請求項1~11のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項15】
前記一般式(1)のR14が、アリール基又はフッ化アルキル基を表す、請求項1~14のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂(A)が酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂である、請求項1~15のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜を露光する露光工程と、露光された前記レジスト膜をアルカリ現像液を用いて現像する現像工程とを含むパターン形成方法。
【請求項19】
請求項18に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域又はクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られ、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。また、更に解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法の開発が進んでいる。
【0003】
また、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線(EB)、X線及び極紫外線(EUV)等を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。これに伴い、各種の活性光線又は放射線に有効に感応するレジスト組成物が開発されている。
【0004】
レジスト組成物に用いられる樹脂として様々な樹脂が知られているが、例えば特許文献1には、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位を有する樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討により、特許文献1に記載された樹脂を含むレジスト組成物は、パターン形成に用いた際に解像性及びエッチング耐性に劣ることが分かった。
【0007】
本発明の課題は、解像性及びエッチング耐性に優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討し、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1]
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する下記一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)、及び上記繰り返し単位(P1)とは異なる少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂(A)を含有し、
全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量が0.25mmol/g以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0010】
【0011】
一般式(1)中、R11~R13はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R12はLと結合して環を形成していてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表す。R14は置換基を表す。Q+は有機オニウムイオンを表す。
[2]
上記繰り返し単位(a)が、下記一般式(2)で表される、[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0012】
【0013】
一般式(2)中、R21~R24はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。R22はR24と結合して環を形成していてもよく、その場合のR22は単結合又はアルキレン基を表す。ただし、R21~R24の少なくとも1つは芳香環を有する基を表す。
[3]
上記繰り返し単位(a)が、下記一般式(3)で表される、[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【0015】
一般式(3)中、R31~R33はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R32はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR32は単結合又はアルキレン基を表す。L3は単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。
[4]
上記繰り返し単位(a)が、下記一般式(4)で表される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0016】
【0017】
一般式(4)中、R41~R43はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。L4は単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。kは1~5の整数を表す。
[5]
上記樹脂(A)が、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位(P2)を有し、
上記繰り返し単位(P2)が、酸の作用により分解してカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[6]
上記繰り返し単位(P2)が、酸の作用により分解して芳香環に結合したカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して芳香環に結合した水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位である、[5]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[7]
上記繰り返し単位(P2)が、下記一般式(5)~(9)のいずれかで表される繰り返し単位である、[5]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0018】
【0019】
一般式(5)中、R51~R53はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L5は単結合又は2価の連結基を表す。R54~R56はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R54~R56のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(6)中、R61~R64はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。ただし、R61及びR62のうち少なくとも一方は有機基を表す。X6は-CO-、-SO-、又は-SO2-を表す。Y6は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、又は-NR48-を表す。R48は水素原子又は有機基を表す。L6は単結合又は2価の連結基を表す。R65~R67はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R65~R67のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(7)中、R71及びR72はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R73及びR74はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R71~R74のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(8)中、R81~R83はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L8は単結合又は2価の連結基を表す。Ar8は芳香環基を表す。R84~R86はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R84~R86のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。Ar8はR82又はR84と結合して環を形成しても良い。
一般式(9)中、R91~R93はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L9は単結合又は2価の連結基を表す。R94~R96はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R95及びR96が互いに結合して環を形成しても良い。
[8]
上記繰り返し単位(P2)が、上記一般式(5)、(8)、又は(9)で表される繰り返し単位である、[7]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[9]
上記一般式(5)のL5が2価の芳香族連結基である、[7]又は[8]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[10]
上記一般式(9)のL9が2価の芳香族連結基である、[7]又は[8]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[11]
全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量が0.50mmol/g以上である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[12]
上記一般式(1)のLがフェニレン基である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[13]
上記一般式(1)のLが単結合である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[14]
上記一般式(1)のLが炭素数1~3のアルキレン基である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[15]
上記一般式(1)のR14が、アリール基又はフッ化アルキル基を表す、[1]~[14]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[16]
上記樹脂(A)が酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂である、[1]~[15]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[17]
[1]~[16]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
[18]
[1]~[16]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、上記レジスト膜を露光する露光工程と、露光された上記レジスト膜をアルカリ現像液を用いて現像する現像工程とを含むパターン形成方法。
[19]
[18]に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、解像性及びエッチング耐性に優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、軟X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0022】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を表す。また(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー株式会社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー株式会社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0023】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書において、表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0024】
本明細書において、酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0025】
また、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、水溶液中におけるH+解離自由エネルギーを計算することで算出する手法が挙げられる。H+解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算することができるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0026】
本明細書中において、pKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
また、本明細書中において、pKaは、上述した通り「水溶液中でのpKa」を指すが、水溶液中でのpKaが算出できない場合には、「ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのpKa」を採用するものとする。
【0027】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する下記一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)、及び上記繰り返し単位(P1)とは異なる少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂(A)を含有し、全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量が0.25mmol/g以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
【0028】
【0029】
一般式(1)中、R11~R13はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R12はLと結合して環を形成していてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表す。R14は置換基を表す。Q+は有機オニウムイオンを表す。
【0030】
本発明の組成物は、典型的にはレジスト組成物である。
本発明の組成物は、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。本発明の組成物は、ポジ型のレジスト組成物であり、アルカリ現像用のレジスト組成物であることが好ましい。
また、本発明の組成物は、化学増幅型のレジスト組成物であることが好ましく、化学増幅型のポジ型レジスト組成物であることがより好ましい。
【0031】
以下、本発明の組成物に含まれる成分について説明する。
【0032】
[樹脂(A)]
樹脂(A)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する上記一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)、及び繰り返し単位(P1)とは異なる少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂である。
【0033】
(繰り返し単位(P1))
繰り返し単位(P1)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する繰り返し単位(酸発生繰り返し単位)であり、上記一般式(1)で表される。
【0034】
上記一般式(1)中、R11~R13はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。
R11~R13が有機基を表す場合の有機基は特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシカルボニル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
R11~R13としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数8以下のアルキル基であることがより好ましい。
R11~R13としてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0035】
R11~R13としてのシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよく、置換基を有していてもよい。
R11~R13としてのシクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8の単環型のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0036】
R11~R13としてのアリール基は、置換基を有していてもよく、炭素数6~14の単環又は多環のアリール基であることが好ましく、具体的にはフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またアリール基同士が結合して、複環を形成していてもよい。
【0037】
R11~R13としてのアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基は、上記R11~R13としてのアルキル基と同様のものが好ましい。
【0038】
R11~R13としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0039】
R11及びR12は水素原子であることが特に好ましい。
R13は水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0040】
R12はLと結合して環を形成してもよい。
【0041】
一般式(1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
Lが2価の連結基を表す場合の2価の連結基としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、-O-、-SO2-、-CO-、-N(R33)-又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が好ましい。
R33は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。
R33としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数8以下のアルキル基であることがより好ましい。
R33としてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0042】
Lとしてのアリーレン基は、置換基を有していてもよく、炭素数6~14のものが好ましく、具体的にはフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0043】
Lとしてのヘテロアリーレン基は、環員としてヘテロ原子を含む2価の芳香族基(2価の芳香族ヘテロ環基)であり、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられる。ヘテロアリーレン基の炭素数は4~20が好ましく、5~12がより好ましい。ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等から2つの水素原子を除してなる基が挙げられる。
Lとしてのヘテロアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
【0044】
Lとしてのアルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1~8のものが挙げられ、炭素数1~3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0045】
Lとしてのシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基等の炭素数5~12のものが好ましい。
【0046】
Lとしてのアルケニレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2~8のものが挙げられ、炭素数2~4のアルケニレン基であることが特に好ましい。
【0047】
Lは単結合、又は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-N(R33)-、若しくはこれらの複数を組み合わせた2価の連結基を表すことが好ましく、単結合、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、-CO-とアルキレン基を組み合わせてなる2価の連結基、-COO-とアルキレン基を組み合わせてなる2価の連結基、-CONH-とアルキレン基を組み合わせてなる2価の連結基、又は、-COO-とシクロアルキレン基とアルキレン基を組み合わせてなる2価の連結基であることがより好ましく、単結合、フェニレン基、又は炭素数1~3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0048】
前述のR11~R13、及びLが、更に1個以上の置換基を有することができる場合、更なる置換基は特に限定されないが、例えば、後述のR14の例として挙げた置換基などが挙げられる。
【0049】
一般式(1)中、R14は置換基を表す。
R14が表す置換基は特に限定されないが、例えば、水酸基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、臭素原子、塩素原子、又はヨウ素原子)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、アルキル基(好ましくは炭素数1~8のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数5~12のシクロアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~8のアルコキシカルボニル基)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2~8のアルキルカルボニル基)、アシル基(好ましくは炭素数2~8のアシル基)、アシロキシ基(好ましくは炭素数2~8のアシロキシ基)、カルボキシ基、アリール基(好ましくは炭素数6~12のアリール基)、ヘテロアリール基(好ましくはヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の少なくとも1つを含む炭素数3~8のヘテロアリール基)等が挙げられる。
また、R14が表す置換基は、後述する酸分解性基であってもよい。
R14が表す置換基は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0050】
また、R14が表す置換基が更に1個以上の置換基を有することができる場合は、その更なる置換基として上記したR14が表す置換基から選択した置換基を有する基もR14の例に含まれる。上記更なる置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
R14としては、アリール基又はフッ化アルキル基が好ましく、炭素数6~12のアリール基又は炭素数1~6のフッ化アルキル基がより好ましく、炭素数1~6のフッ化アルキル基が更に好ましい。
【0051】
一般式(1)中、Q+は有機オニウムイオンを表す。
Q+は有機スルホニウムイオン又は有機ヨードニウムイオンであることがより好ましい。
Q+は下記一般式(ZIa)又は(ZIIa)で表されることが特に好ましい。
【0052】
【0053】
上記一般式(ZIa)において、
R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0054】
R201、R202及びR203としての有機基としては、例えば、後述する(ZI-1a)、(ZI-2a)、(ZI-3a)又は(ZI-4a)における対応する基を挙げることができる。
更に好ましい一般式(ZIa)で表される有機スルホニウムイオンとして、以下に説明する(ZI-1a)、(ZI-2a)、(ZI-3a)、及び(ZI-4a)を挙げることができる。
【0055】
(ZI-1a)は、上記一般式(ZIa)におけるR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムイオンである。
【0056】
R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
(ZI-1a)としては、例えば、トリアリールスルホニウム、ジアリールアルキルスルホニウム、アリールジアルキルスルホニウム、ジアリールシクロアルキルスルホニウム、アリールジシクロアルキルスルホニウムを挙げることができる。
【0057】
アリールスルホニウムにおけるアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等の構造を挙げることができる。アリールスルホニウムが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
アリールスルホニウムが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0059】
R201~R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数1~12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201~R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201~R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp-位に置換していることが好ましい。
【0060】
次に、(ZI-2a)について説明する。
(ZI-2a)は、一般式(ZIa)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す有機スルホニウムイオンである。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R201~R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20である。
【0061】
R201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2-オキソアルキル基である。
【0062】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2-オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2-オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0063】
2-オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2-オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0064】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0065】
(ZI-3a)及び(ZI-4a)は、それぞれ、下記一般式(ZI-3a)又は(ZI-4a)により表される有機スルホニウムイオンである。(ZI-3a)及び(ZI-4a)は、ArFの露光波長(193nm)に対する透明性が高い。
【0066】
【0067】
一般式(ZI-3a)中、Mは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、または炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
R1c及びR2cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
Rx及びRyが結合して環を形成してもよい。
M、R1c及びR2cの少なくとも2つが結合して環を形成してもよく、上記環構造に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0068】
一般式(ZIa-4)中、
R13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、または単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
R14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、または単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。
R15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
kは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
【0069】
まず、一般式(ZI-3a)により表される有機スルホニウムイオンについて説明する。
Mは、上述したように、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、環構造を有するとき、環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル原子、アミド結合または炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0070】
Mとしてのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が1~12であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基を挙げることができる。
【0071】
Mとしてのシクロアルキル基は、炭素数が3~12個のであることが好ましい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などを挙げることができる。
【0072】
Mとしてのアリール基は、炭素数が5~15であることが好ましい。このようなアリール基としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0073】
Mとしての各基は、置換基として、シクロアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子、フェニルチオ基等を有していてもよい。Mとしてのシクロアルキル基及びアリール基は、置換基として、アルキル基を有していてもよい。これら置換基の炭素数は、15以下であることが好ましい。
【0074】
Mがフェニル基である場合、置換基として、少なくとも1つのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、又はフェニルチオ基を有することが好ましい。また、この場合、置換基の炭素数の和が2~15であることが更に好ましい。このような構成を採用すると、酸発生剤の溶剤への溶解性が向上し、保存時におけるパーティクルの発生を更に抑制することが可能となる。
【0075】
R1c及びR2cの各々は、上述したように、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1~12であることが好ましく、炭素数が1~5であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、及び直鎖又は分岐鎖プロピル基が挙げられる。
【0076】
シクロアルキル基は、例えば、炭素数3~12のシクロアルキル基であり、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基などを挙げることができる。
【0077】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0078】
R1c及びR2cとしてのアリール基としては、好ましくは炭素数5~15であり、例えば、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
【0079】
上述したように、M、R1c及びR2cのうち少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環としては、好ましくは3~12員環、より好ましくは3~10員環、更に好ましくは3~6員環が挙げられる。この環は、炭素-炭素二重結合を備えていてもよい。
【0080】
R1cとR2cとが結合して環を形成する場合に、R1cとR2cとが結合して形成する基としては、炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などを挙げることができる。また、R1cとR2cとが結合して形成する環は、環内に酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0081】
Rx及びRyの各々は、上述したように、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、シクロアルコキシカルボニルメチル基、アリル基、又はビニル基を表す。
【0082】
アルキル基としては、例えば、先にR1c及びR2cのアルキル基として説明したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3~12のものが好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロデシル基が挙げられる。
【0083】
2-オキソアルキル基としては、例えば、上記アルキル基の2位に>C=Oを備えた基が挙げられる。
【0084】
アルコキシカルボニルメチル基のアルコキシ基部分は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基部分は、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数が1~5であることがより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、及び直鎖又は分岐ペントキシ基が挙げられる。
【0085】
シクロアルコキシカルボニルアルキル基のシクロアルコキシ基部分は、炭素数が3~8であることが好ましい。このようなシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。また、アルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~5の直鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基を挙げることができる。
【0086】
上述したように、RxとRyとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。Rx及びRyが互いに結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
アリル基としては、特に制限は無いが、無置換の単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換されたアリル基であることが好ましい。
ビニル基としては、特に制限は無いが、無置換の単環若しくは多環のシクロアルキル基で置換されたビニル基であることが好ましい。
【0087】
Rx及びRyの各々は、炭素数4以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数6以上のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8以上のアルキル基であることが更に好ましい。
【0088】
以下に、一般式(ZI-3a)で表される有機スルホニウムイオンの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
次に、上記一般式(ZI-4a)により表される有機スルホニウムイオンについて説明する。
R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基は、炭素数が1~10であることが好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基及びn-デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n-ブチル基及びt-ブチル基が特に好ましい。
【0093】
R13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
【0094】
R13及びR14のアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基は、炭素数が1~10であることが好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基及びn-デシルオキシ基が挙げられる。これらのうち、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基及びn-ブトキシ基が特に好ましい。
【0095】
R13及びR14のアルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。このアルコキシカルボニル基の炭素数は、2~11であることが好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、2-メチルプロポキシカルボニル基、1-メチルプロポキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基及びn-デシルオキシカルボニル基が挙げられる。これらのうち、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn-ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0096】
R13及びR14により表される単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基は、総炭素数が7以上であることが好ましく、総炭素数が7以上15以下であることがより好ましい。
【0097】
単環もしくは多環のシクロアルキル骨格を有する基としては、例えば、単環もしくは多環のシクロアルキルオキシ基、及び、単環もしくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、単環のシクロアルキル骨格を有する基であることが好ましい。これら基は、置換基を更に有していてもよい。
【0098】
単環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基及びシクロドデカニルオキシ基が挙げられる。これら基は、置換基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びiso-アミル基等のアルキル基;水酸基:フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;アミド基;スルホンアミド基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基等のアシル基;アセトキシ基及びブチリルオキシ基等のアシロキシ基;又はカルボキシ基を更に有していてもよい。
【0099】
多環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、ノルボニルオキシ基及びアダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0100】
単環もしくは多環のシクロアルキルオキシ基は、上述したように、総炭素数が7以上であることが好ましい。即ち、先に挙げたシクロアルキルオキシ基の炭素数と上記の置換基の炭素数との合計が7以上である構成を採用することが好ましい。
【0101】
単環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、iso-アミルオキシ基等のアルコキシ基に、単環のシクロアルキル基が置換したものが挙げられる。この単環のシクロアルキル基は、先に挙げた置換基を更に有していてもよい。たとえば、シクロヘキシルメトキシ基、シクロペンチルエトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基等が挙げられ、シクロヘキシルメトキシ基が好ましい。
【0102】
多環のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、ノルボニルオキシ基及びアダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0103】
単環もしくは多環のシクロアルキル基を有するアルコキシ基は、上述したように、総炭素数が7以上であることが好ましい。即ち、先に挙げたアルコキシ基の炭素数と単環のシクロアルキル基の炭素数と上記の置換基の炭素数との合計が7以上である構成を採用することが好ましい。
【0104】
R14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13~R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
【0105】
R14のアルキルスルホニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
R14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、炭素数が1~10であることが好ましい。このようなアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n-プロパンスルホニル基、n-ブタンスルホニル基、tert-ブタンスルホニル基、n-ペンタンスルホニル基、ネオペンタンスルホニル基、n-ヘキサンスルホニル基、n-ヘプタンスルホニル基、n-オクタンスルホニル基、2-エチルヘキサンスルホニル基、n-ノナンスルホニル基、n-デカンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が挙げられる。これらのうち、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n-プロパンスルホニル基、n-ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
【0106】
上記の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基及びシクロアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基及びハロゲン原子がより好ましい。このハロゲン原子としては、フッ素原子が特に好ましい。
【0107】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基及びt-ブトキシ基等の炭素数が1~20のものが挙げられる。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数が4~20のものが挙げられる。
【0108】
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1-メトキシエチル基、2-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基及び2-エトキシエチル基等の炭素数が2~21のものが挙げられる。
【0109】
シクロアルコキシアルキル基としては、例えば、シクロペンチルオキシメチル基及びシクロペンチルオキシメチルエトキシ基が挙げられる。
【0110】
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、2-メチルプロポキシカルボニル基、1-メチルプロポキシカルボニル基及びt-ブトキシカルボニル基等の炭素数が2~21のものが挙げられる。
シクロアルコキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数が4~21のものが挙げられる。
【0111】
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、i-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基及びt-ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数が2~21のものが挙げられる。
シクロアルコキシカルボニルオキシ基としては、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数が4~21のものが挙げられる。
【0112】
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、一般式(Z1-4a)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が挙げられる。
【0113】
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0114】
R15としては、メチル基、エチル基、1-ナフチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
【0115】
上記kは、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
上記rは、0~2であることが好ましい。
【0116】
以下に、一般式(Z1-4a)により表される有機スルホニウムイオンの好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0117】
【0118】
【0119】
上記一般式(ZIIa)中、R204~R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204~R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基の具体例や好適な態様などは、前述の(ZI-1a)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
【0120】
R204~R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の(ZI-1a)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0121】
樹脂(A)を含む組成物をArF露光用レジスト組成物に用いる場合、繰り返し単位(P1)の少なくとも一部は、ナフタレン環以外の芳香環を含んでいないことが好ましい。樹脂(A)を含む組成物をEB又はEUV露光用レジスト組成物に用いる場合、2次電子発生効率の観点から、繰り返し単位(P1)の少なくとも一部が芳香環を含んでいることが好ましい。
【0122】
樹脂(A)が有する繰り返し単位(P1)の種類は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0123】
本発明の組成物の全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量は、0.25mmol/g以上である。本発明の組成物は、全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量を0.25mmol/g以上とすることで、優れた解像性を発揮することができる。
本発明の組成物の全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量は、0.30mmol/g以上であることが好ましく、0.40mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることが更に好ましく、0.60mmol/g以上であることが特に好ましい。
また、本発明の組成物の全固形分中の上記繰り返し単位(P1)の含有量は、1.00mmol/g以下であることが好ましく、0.90mmol/g以下であることがより好ましく、0.80mmol/g以下であることが更に好ましい。
本発明の組成物の全固形分とは、本発明の組成物に含まれる全成分から溶剤を除いた成分である。
本発明の組成物の全固形分中の繰り返し単位(P1)の含有量は、1H-NMR(nuclear magnetic resonance)及び13C-NMRで決定される樹脂(A)中の繰り返し単位(P1)の含有比率、窒素、硫黄元素量測定から測定される。
【0124】
樹脂(A)における繰り返し単位(P1)の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、5~80モル%の範囲が好ましく、より好ましくは6~60モル%の範囲であり、さらに好ましくは7~40モル%の範囲である。
【0125】
(少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a))
樹脂(A)は、更に、少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有する。
繰り返し単位(a)は、前述の繰り返し単位(P1)とは異なる繰り返し単位である。すなわち、繰り返し単位(a)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位ではない。
本発明の組成物は、前述の繰り返し単位(P1)とは異なる繰り返し単位として、少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有することで、優れたエッチング耐性を発揮することができる。
【0126】
繰り返し単位(a)の構造は特に限定されない。
繰り返し単位(a)が、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0127】
【0128】
一般式(2)中、R21~R24はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。R22はR24と結合して環を形成していてもよく、その場合のR22は単結合又はアルキレン基を表す。ただし、R21~R24の少なくとも1つは芳香環を有する基を表す。
【0129】
R21~R23が有機基を表す場合の有機基は特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルコキシカルボニル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
R21~R23としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数8以下のアルキル基であることがより好ましい。
R21~R23としてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0130】
R21~R23としてのシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよく、置換基を有していてもよい。
R21~R23としてのシクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~8の単環型のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0131】
R21~R23としてのアリール基は、置換基を有していてもよく、炭素数6~14の単環又は多環のアリール基であることが好ましく、具体的にはフェニル基、ヒドロキシフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基等が挙げられる。またアリール基同士が結合して、複環を形成していてもよい。
【0132】
R21~R23としてのヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくはヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の少なくとも1つを含む炭素数3~8のヘテロアリール基等が挙げられる。
【0133】
R21~R23としてのアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基は、上記R21~R23としてのアルキル基と同様のものが好ましい。
【0134】
R21~R23としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0135】
R21及びR22は水素原子であることが特に好ましい。
R23は水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0136】
一般式(2)中、R24は水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。
R24が有機基を表す場合の有機基は特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシカルボニル基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
R24としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアルコキシカルボニル基の具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述のR21~R23としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアルコキシカルボニル基と同じである。
【0137】
R24としてのハロゲン原子の具体例及び好ましい範囲は、前述のR21~R23としてのハロゲン原子と同じである。
【0138】
R21~R24が、更に1個以上の置換基を有することができる場合、更なる置換基は特に限定されないが、例えば、水酸基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、臭素原子、塩素原子、又はヨウ素原子)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、アルキル基(好ましくは炭素数1~8のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数5~12のシクロアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~8のアルコキシカルボニル基)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2~8のアルキルカルボニル基)、アシル基(好ましくは炭素数2~8のアシル基)、アシロキシ基(好ましくは炭素数2~8のアシロキシ基)、カルボキシ基、アリール基(好ましくは炭素数6~12のアリール基)、ヘテロアリール基(好ましくはヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の少なくとも1つを含む炭素数3~8のヘテロアリール基)等が挙げられる。
【0139】
ただし、R21~R24の少なくとも1つは芳香環を有する基を表す。
【0140】
R21~R24の少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。
【0141】
繰り返し単位(a)は、下記一般式(3)で表されることがより好ましい。
【0142】
【0143】
一般式(3)中、R31~R33はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R32はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR32は単結合又はアルキレン基を表す。L3は単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。
【0144】
R31~R33の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(2)のR21~R23と同じである。
【0145】
L3は単結合又は2価の連結基を表す。
L3が2価の連結基を表す場合の2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、-O-、-SO2-、-CO-、-N(R34)-又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が好ましい。
R34は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。
R34としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数8以下のアルキル基であることがより好ましい。
R34としてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0146】
L3としてのアルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1~8のものが挙げられ、炭素数1~3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0147】
L3としてのシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基等の炭素数5~12のものが好ましい。
【0148】
L3としてのアルケニレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2~8のものが挙げられ、炭素数2~4のアルケニレン基であることが特に好ましい。
【0149】
L3は単結合又は-COO-であることが特に好ましい。
【0150】
Arは芳香環基を表す。Arが表す芳香環基は、置換基を有していてもよい。
Arが表す芳香環基は、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、アリール基であることが好ましい。
Arとしてのアリール基は、置換基を有していてもよく、炭素数6~14の単環又は多環のアリール基であることが好ましく、具体的にはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。またアリール基同士が結合して、複環を形成していてもよい。アリール基は置換基として水酸基を有することが好ましい。
Arとしてのヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基等が挙げられる。
【0151】
前述のR31~R33、L3及びArが、更に1個以上の置換基を有することができる場合、更なる置換基は特に限定されないが、例えば、前述のR21~R24が有していてもよい更なる置換基の例として挙げた置換基などが挙げられる。
【0152】
繰り返し単位(a)は、下記一般式(4)で表されることが更に好ましい。
【0153】
【0154】
一般式(4)中、R41~R43はそれぞれ独立に水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。ただし、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。Lは単結合又は2価の連結基を表す。Arは芳香環基を表す。kは1~5の整数を表す。
【0155】
R41~R43の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(2)のR21~R23と同じである。
L4の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(3)のL3と同じである。
Arの具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(3)のArと同じである。
【0156】
kは1~5の整数を表し、1~3の整数を表すことが好ましく、1又は2を表すことがより好ましい。
【0157】
前述のR41~R43、L4及びArが、更に1個以上の置換基を有することができる場合、更なる置換基は特に限定されないが、例えば、前述のR21~R24が有していてもよい更なる置換基の例として挙げた置換基などが挙げられる。
【0158】
繰り返し単位(a)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記具体例中aは1~3の整数を表す。
【0159】
【0160】
樹脂(A)が有する繰り返し単位(a)の種類は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0161】
樹脂(A)における繰り返し単位(a)の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~95モル%の範囲が好ましく、より好ましくは20~90モル%の範囲であり、さらに好ましくは30~90モル%の範囲である。
【0162】
(繰り返し単位(P2))
樹脂(A)は、酸の作用により分解して極性が増大する基(「酸分解性基」ともいう)を有する繰り返し単位(P2)を有することが好ましい。
樹脂(A)は、前述の繰り返し単位(P1)が酸分解性基を有していてもよいが、前述の繰り返し単位(P1)とは異なる繰り返し単位として、繰り返し単位(P2)を有することが好ましい。
また、繰り返し単位(P2)は、繰り返し単位(a)に当てはまる繰り返し単位であってもよいし、繰り返し単位(a)とは異なる繰り返し単位であってもよい。
【0163】
樹脂(A)は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂であることが好ましい。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂は、酸の作用により現像液に対する溶解性が増大する樹脂する樹脂でも良いし、酸の作用により現像液に対する溶解性が減少する樹脂でも良い。
樹脂(A)は酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂であることが好ましい。
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂が樹脂(A)である場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
樹脂(A)を含むレジスト組成物は、本発明におけるパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合でも、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0164】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(典型的には、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0165】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0166】
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましく、カルボキシ基又はフェノール性水酸基がより好ましい。つまり、酸分解性基としては、酸の作用により分解してカルボキシ基を生じる基、又は酸の作用により分解してフェノール性水酸基を生じる基が好ましい。
繰り返し単位(P2)は、酸の作用により分解してカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0167】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0168】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アリール基(単環若しくは多環)、アラルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが互いに結合して環(単環及び多環のいずれであってもよい)を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx1~Rx3のアラルキル基としては、上述したRx1~Rx3のアルキル基中の1個の水素原子を炭素数6~10のアリール基(好ましくはフェニル基)で置換した基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
Rx1~Rx3のアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0169】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0170】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0171】
【0172】
ここで、L1及びL2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又はこれらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及びL1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、L2が2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0173】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0174】
繰り返し単位の酸分解性が優れる点から、極性基を保護する脱離基において、極性基(又はその残基)に非芳香族環が直接結合している場合、上記非芳香族環中の、上記極性基(又はその残基)と直接結合している環員原子に隣接する環員原子は、置換基としてフッ素原子等のハロゲン原子を有さないことも好ましい。
【0175】
酸の作用により脱離する脱離基は、他にも、3-メチル-2-シクロペンテニル基のような置換基(アルキル基等)を有する2-シクロペンテニル基、及び、1,1,4,4-テトラメチルシクロヘキシル基のような置換基(アルキル基等)を有するシクロヘキシル基でもよい。
【0176】
繰り返し単位(P2)は、酸の作用により分解して芳香環(特に好ましくはベンゼン環)に結合したカルボキシ基を生じる基、及び酸の作用により分解して芳香環(特に好ましくはベンゼン環)に結合した水酸基を生じる基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する繰り返し単位であることがより好ましい。
【0177】
繰り返し単位(P2)が、下記一般式(5)~(9)のいずれかで表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0178】
【0179】
一般式(5)中、R51~R53はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L5は単結合又は2価の連結基を表す。R54~R56はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R54~R56のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(6)中、R61~R64はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。ただし、R61及びR62のうち少なくとも一方は有機基を表す。X6は-CO-、-SO-、又は-SO2-を表す。Y6は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、又は-NR48-を表す。R48は水素原子又は有機基を表す。L6は単結合又は2価の連結基を表す。R65~R67はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R65~R67のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(7)中、R71及びR72はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R73及びR74はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R71~R74のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(8)中、R81~R83はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L8は単結合又は2価の連結基を表す。Ar8は芳香環基を表す。R84~R86はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R84~R86のうち2つが互いに結合して環を形成しても良い。Ar8はR82又はR84と結合して環を形成しても良い。
一般式(9)中、R91~R93はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。L9は単結合又は2価の連結基を表す。R94~R96はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。R95及びR96が互いに結合して環を形成しても良い。
【0180】
以下、一般式(5)で表される繰り返し単位について説明する。
【0181】
R51~R53で表されるアルキル基としては、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
R51~R53で表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
R51~R53で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
R51~R53で表されるアルコキシカルボニル基中に含まれるアルキル基としては直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルコキシカルボニル基中に含まれるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0182】
L5で表される2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、2価の脂肪族連結基、2価の芳香族連結基、及びこれらの複数が連結した連結基等が挙げられる。2価の脂肪族連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。2価の脂肪族連結基はヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を有していてもよく、置換基を有していてもよい。2価の芳香族連結基としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。2価の芳香族連結基は置換基を有していてもよい。
【0183】
L5がアリーレン基を含む場合のアリーレン基は、置換基を有していてもよく、炭素数6~14のものが好ましく、具体的にはフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0184】
L5がヘテロアリーレン基を含む場合のヘテロアリーレン基は、環員としてヘテロ原子を含む2価の芳香族基(2価の芳香族ヘテロ環基)であり、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられる。ヘテロアリーレン基の炭素数は4~20が好ましく、5~12がより好ましい。ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等から2つの水素原子を除してなる基が挙げられる。上記ヘテロアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
【0185】
L5がアルキレン基を含む場合のアルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1~8のものが挙げられ、炭素数1~3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0186】
L5がシクロアルキレン基を含む場合のシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基等の炭素数5~12のものが好ましい。
【0187】
L5がアルケニレン基を含む場合のアルケニレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2~8のものが挙げられ、炭素数2~4のアルケニレン基であることが特に好ましい。
【0188】
L5は2価の芳香族連結基であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましい。
【0189】
R54~R56で表されるアルキル基としては、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。R54~R56で表されるアルキル基は、メチレン基が、-CO-及び/又は-O-で置換されていてもよい。
R54~R56で表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
R54~R56で表されるアリール基としては、フェニル基が好ましい。
R54~R56で表されるアラルキル基としては、上述したR54~R56で表されるアルキル基中の1個の水素原子を炭素数6~10のアリール基(好ましくはフェニル基)で置換した基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
R54~R56で表されるアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
R54~R56の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。R54~R56の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
R54~R56の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
【0190】
一般式(5)中の上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、下記置換基Tが挙げられる。
【0191】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基(例えば、炭素数1~10);シクロアルキル基(例えば、炭素数3~20);アリール基(例えば、炭素数6~20);ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基、ニトロ基;ホルミル基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0192】
以下、一般式(6)で表される繰り返し単位について説明する。
【0193】
R61~R64で表される有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基が好ましい。
R61~R64で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基としては、上述した一般式(5)中のR54~R56で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
【0194】
X6としては-CO-が好ましい。
R48で表される有機基としては、上述したR61~R64で表される有機基と同義であり、好適態様も同じである。
Y6としては-O-が好ましい。
L6で表される2価の連結基は、上述した一般式(5)中のL5で表される2価の連結基と同義であり、好適態様も同じである。
R65~R67で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基としては、上述した一般式(5)中のR54~R56で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
【0195】
R65~R67の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。R65~R67の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
R65~R67の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
【0196】
一般式(6)中の上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0197】
以下、一般式(7)で表される繰り返し単位について説明する。
【0198】
R71及びR72で表される有機基は、上述した一般式(6)中のR61~R64で表される有機基と同義であり、好適態様も同じである。
R73及びR74で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基としては、上述した一般式(5)中のR54~R56で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
R73及びR74で表される、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0199】
R73及びR74が結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。R73及びR74が結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
R73及びR74が結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
【0200】
以下、一般式(8)で表される繰り返し単位について説明する。
【0201】
R81~R83、及びL8は、一般式(5)中のR51~R53、及びL5と同義であり、好適態様も同じである。
Ar8で表される芳香環基としては特に制限されないが、例えばフェニレン基又はナフチレン基が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
R84~R86で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基としては、上述した一般式(5)中のR54~R56で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
R84~R86で表される、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0202】
R84~R86のうち2つが互いに結合して環を形成しても良いし、Ar8がR82又はR84と結合して環を形成しても良い。これらの場合に形成される環としては、単環又は多環の脂環であることが好ましく、炭素数4~8の単環の脂環であることがより好ましい。
R84~R86のうち2つが結合して形成される脂環は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらの脂環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
【0203】
以下、一般式(9)で表される繰り返し単位について説明する。
【0204】
R91~R93、及びL9は、一般式(5)中のR51~R53、及びL5と同義であり、好適態様も同じである。
L9は2価の芳香族連結基であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましい。
R94~R96で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基としては、上述した一般式(5)中のR54~R56で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基と同様の基が挙げられる。
R94~R96で表される、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
R95及びR96が結合して形成される環としては、単環又は多環の脂環であることが好ましく、炭素数4~8の単環の脂環であることがより好ましい。
R95及びR96が結合して形成される脂環は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらの脂環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
【0205】
繰り返し単位(P2)は、ハロゲン原子を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、ハロゲン原子を含まないことが好ましい。
【0206】
繰り返し単位(P2)は、上記一般式(5)、(8)、又は(9)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0207】
樹脂(A)が繰り返し単位(P2)を有する場合、繰り返し単位(P2)の種類は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
樹脂(A)における繰り返し単位(P2)の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることが更に好ましい。また、樹脂(A)における繰り返し単位(P2)の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることが特に好ましい。
【0208】
繰り返し単位(P2)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。下記構造式中、Xa1はH、CH3、CF3、及びCH2OHのいずれかを表し、Rxa及びRxbはそれぞれ独立に炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
(ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、更にラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造を有する基であり、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-6)、一般式(LC1-13)、及び、一般式(LC1-14)で表される基が好ましい。
【0218】
【0219】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0220】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0221】
【0222】
一般式(AII)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、及び、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab1-CO2-で表される連結基が好ましい。Ab1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
Vは、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を表す。
Vのラクトン構造又はスルトン構造を有する基としては、一般式(LC1-1)~(LC1-21)、一般式(SL1-1)~(SL1―3)のうちのいずれかで示される基が好ましい。
【0223】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)は90以上が好ましく、95以上がより好ましい。
【0224】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。なお、式中RxはH、CH3、CH2OH、またはCF3を表す。
【0225】
【0226】
【0227】
樹脂(A)は、ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有していてもよいし、有していなくてもよいが、有する場合は、ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1~60モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~40モル%が更に好ましい。
【0228】
(その他の繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記の繰り返し単位以外に、例えば、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し単位を有していてもよい。
上記以外のその他の繰り返し単位としては、国際公開第2018/193954号の段落[0097]~[0100]、[0102]~[0133]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0229】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、1000~200000であることが好ましく、2000~30000であることがより好ましく、3000~20000であることが更に好ましい。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1.0~5.0であり、1.0~3.0であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましく、1.0~2.0であることが更に好ましい。
【0230】
樹脂(A)の大西パラメータは、特に限定されないが、4.1以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。大西パラメータは、「総原子数/(炭素原子数-酸素子数)」の式で表される値である。樹脂(A)の大西パラメータは、樹脂(A)に含まれる各繰り返し単位の構造式から各原子の個数をカウントして各繰り返し単位の大西パラメータを求め、その値に各繰り返し単位の含有比率(モル比率)を乗じた値を足し合わせることで求めることができる。
n種の繰り返し単位を有する樹脂(A)の大西パラメータPAは、各繰り返し単位の大西パラメータPUiと各繰り返し単位の含有比率(モル%)XUiとを用い、下記式(1)により求められる。iは1~nの整数を表す。
【0231】
【0232】
また、本発明の組成物中の全固形分の大西パラメータは、特に限定されないが、4.1以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。本発明の組成物中の全固形分の大西パラメータは、本発明の組成物に含まれる全固形分(溶剤以外の全成分)の構造式から各原子の個数をカウントして各成分の大西パラメータを求め、その値に各成分の含有比率(モル比率)を乗じた値を足し合わせることで求めることができる。
m種の成分(固形成分)を有するレジスト組成物中の全固形分の大西パラメータTは、各成分の大西パラメータTSiと各成分の含有比率(モル%)YSiとを用い、下記式(2)により求められる。iは1~mの整数を表す。
【0233】
【0234】
本発明の組成物中の樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、本発明の組成物の全固形分に対して50.00~99.99質量%であることが好ましく、60.00~99.90質量%であることがより好ましい。
なお、全固形分とは、本発明の組成物中の溶剤を除いた全成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
本発明の組成物に含まれる樹脂(A)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0235】
[酸拡散制御剤]
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(以下、「酸拡散制御剤(Q)」ともいう)を含有することが好ましい。
【0236】
酸拡散制御剤(Q)は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用することができる。
酸拡散制御剤(Q)としては、例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤から発生する酸に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を使用することができる。
本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0403]~[0423]、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0237】
塩基性化合物(DA)としては、下記一般式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0238】
【0239】
一般式(A)及び(E)中、
R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0240】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0241】
塩基性化合物(DA)としては、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン、又はこれらの構造を有する化合物が好ましく、チアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、オキサゾール構造、ベンゾオキサゾール構造、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0242】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0243】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0244】
【0245】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0246】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0247】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0248】
本発明の組成物では、酸発生剤から発生する酸に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)(以下、「化合物(DC)」ともいう。)を酸拡散制御剤(Q)として使用することもできる。上記酸発生剤から発生する酸としては、前述の樹脂(A)の繰り返し単位(P1)から発生する酸又は後述する光酸発生剤が挙げられる。酸発生剤としても機能する樹脂(A)又は後述する光酸発生剤と、化合物(DC)とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により樹脂(A)の繰り返し単位(P1)又は光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0249】
化合物(DC)としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0250】
【0251】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(但し、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Y3は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、M+は各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0252】
M+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、前述の一般式(ZIa)で表されるスルホニウムカチオン及び前述の一般式(ZIIa)で表されるヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0253】
化合物(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0254】
【0255】
一般式(C-1)~(C-3)中、
R1、R2、及びR3は、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
L1は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-X-は、-COO-、-SO3
-、-SO2
-、及び-N--R4から選択されるアニオン部位を表す。R4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)2-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、及びL1は、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R1~R3のうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0256】
R1~R3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0257】
2価の連結基としてのL1は、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L1は、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0258】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0259】
【0260】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に結合して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0261】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0262】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0263】
【0264】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0265】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0266】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0267】
本発明では、酸拡散制御剤としては、塩基性化合物(DA)であることが好ましく、その中でも一般式(C)で示される構造を有する化合物であることが好ましく、下記一般式(DAC1)、(DAC2)、又は(DAC3)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0268】
【0269】
【0270】
一般式(DAC1)、(DAC2)及び(DAC3)中、ArD1~ArD3は、各々独立に芳香族基を表す。
ArD1~ArD3はアリール基を表すことが好ましく、フェニル基を表すことがより好ましい。
ArD1~ArD3が表す芳香族基は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、エステル基などが挙げられ、特にメトキシ基が好ましい。
【0271】
酸拡散制御剤(Q)の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
酸拡散制御剤(Q)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(Q)を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、含む場合は、酸拡散制御剤(Q)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.001~20質量%であることが好ましく、0.01~10質量%であることがより好ましい。
【0277】
[溶剤]
本発明の組成物は溶剤を含有することが好ましい。
溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
溶剤に関しては、国際公開第2019/058890号の段落[0187]~[0197]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0278】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述した化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、又は、2-ヒドロキシイソ酪酸メチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であることが好ましく、10/90~90/10であることがより好ましく、20/80~60/40であることが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0279】
本発明の組成物中の溶剤の含有量は特に限定されないが、本発明の組成物の固形分濃度が1.0~10質量%となるように溶剤を使用することが好ましい。本発明の組成物の固形分濃度は、好ましくは2.0~5.7質量%であり、更に好ましくは2.0~5.3質量%である。
固形分濃度とは、本発明の組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の総和の質量百分率である。
【0280】
[活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物]
本発明の組成物は、前述の樹脂(A)とは異なる成分として、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤」ともいう)を含有してもよい。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
【0281】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0125]~[0319]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0086]~[0094]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0323]~[0402]、及び特許第5548473号公報の段落[0328]~[0350]に開示された公知の化合物を好適に使用できる。
【0282】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0283】
本発明の組成物は、上記光酸発生剤を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、含有する場合、光酸発生剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分を基準として、0.1~25質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることが更に好ましく、1~10質量%であることが特に好ましい。
【0284】
[界面活性剤]
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300若しくはGF-150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0285】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0286】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0287】
本発明の組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、本発明の組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.00001~2質量%、より好ましくは0.0001~2質量%、更に好ましくは0.0005~1質量%である。
【0288】
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE,2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
【0289】
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられることもできる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0290】
本発明の組成物がカルボン酸を含む場合、カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分に対して0.01~10質量%が好ましく、より好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.01~3質量%である。
【0291】
本発明の組成物は、解像力向上の観点から、膜厚10~250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚20~200nmで使用されることが好ましく、更に好ましくは30~100nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0292】
[用途]
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
また、本発明は、フォトマスク製造用である感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。
【0293】
[感活性光線性又は感放射線性膜]
本発明は、前述の本発明の組成物により形成される感活性光線性又は感放射線性膜(好ましくはレジスト膜)にも関する。このような膜は、例えば、本発明の組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。この膜の厚みは、0.02~0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000~3000rpm(rotations per minute)が好ましい。塗布膜は60~150℃で1~20分間、好ましくは80~120℃で1~10分間プリベークして薄膜を形成する。
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば、半導体用ウェハの場合、シリコンウェハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)、SOG(Spin on Glass)、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0294】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV-40シリーズ、シプレー社製のAR-2、AR-3、AR-5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0295】
[パターン形成方法]
本発明は、本発明の組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジスト膜を露光する露光工程と、露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法にも関する。
本発明において、上記露光は、電子線、ArFエキシマレーザー又は極紫外線を用いて行われることが好ましく、電子線又は極紫外線を用いて行われることがより好ましい。
【0296】
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず、レジスト膜にパターン状に、ArFエキシマレーザー、電子線又は極紫外線(EUV)照射を行うことが好ましい。露光量は、ArFエキシマレーザーの場合、1~100mJ/cm2程度、好ましくは20~60mJ/cm2程度、電子線の場合、0.1~20μC/cm2程度、好ましくは3~10μC/cm2程度、極紫外線の場合、0.1~20mJ/cm2程度、好ましくは3~15mJ/cm2程度となるように露光する。
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃で5秒~20分間、より好ましくは80~120℃で15秒~10分間、さらに好ましくは80~120℃で1~10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク)を行い、次いで、現像、リンス、乾燥することによりパターンを形成する。ここで、露光後加熱は、樹脂(A)における酸分解性基を有する繰り返し単位の酸分解性によって、適宜調整される。酸分解性が低い場合、露光後加熱の温度は110℃以上、加熱時間は45秒以上であることも好ましい。
現像液は適宜選択されるが、アルカリ現像液(代表的にはアルカリ水溶液)又は有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液ともいう)を用いることが好ましい。現像液がアルカリ水溶液である場合には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%アルカリ水溶液で、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。こうして、ネガ型パターンの形成おいては、未露光部分の膜は溶解し、露光された部分は現像液に溶解し難いことにより、またポジ型パターンの形成おいては、露光された部分の膜は溶解し、未露光部の膜は現像液に溶解し難いことにより、基板上に目的のパターンが形成される。
【0297】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシテチル)アンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0~15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
【0298】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0299】
本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を有する場合、上記工程における上記現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0300】
本発明において、エステル系溶剤とは分子内にエステル基を有する溶剤のことであり、ケトン系溶剤とは分子内にケトン基を有する溶剤のことであり、アルコール系溶剤とは分子内にアルコール性水酸基を有する溶剤のことであり、アミド系溶剤とは分子内にアミド基を有する溶剤のことであり、エーテル系溶剤とは分子内にエーテル結合を有する溶剤のことである。これらの中には、1分子内に上記官能基を複数種有する溶剤も存在するが、その場合は、その溶剤の有する官能基を含むいずれの溶剤種にも当てはまるものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも当てはまるものとする。また、炭化水素系溶剤とは置換基を有さない炭化水素溶剤のことである。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0301】
現像液は、レジスト膜の膨潤を抑制できるという点から、炭素原子数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
上記エステル系溶剤のヘテロ原子は、炭素原子および水素原子以外の原子であって、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。ヘテロ原子数は、2以下が好ましい。
炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチル、イソブタン酸イソブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミル、又はイソブタン酸イソブチルを用いることが特に好ましい。
【0302】
現像液は、上述した炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤に代えて、上記エステル系溶剤および上記炭化水素系溶剤の混合溶剤、又は、上記ケトン系溶剤および上記炭化水素溶剤の混合溶剤を用いてもよい。この場合においても、レジスト膜の膨潤の抑制に効果的である。
エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを組み合わせて用いる場合には、エステル系溶剤として酢酸イソアミルを用いることが好ましい。また、炭化水素系溶剤としては、レジスト膜の溶解性を調製するという観点から、飽和炭化水素溶剤(例えば、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサデカンなど)を用いることが好ましい。
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができ、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノンを用いることが特に好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、酪酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なお、炭化水素系溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤においては、同じ炭素数で異なる構造の化合物の混合物であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素系溶媒としてデカンを使用した場合、同じ炭素数で異なる構造の化合物である2-メチルノナン、2,2-ジメチルオクタン、4-エチルオクタン、イソオクタンなどが脂肪族炭化水素系溶媒に含まれていてもよい。
また、上記同じ炭素数で異なる構造の化合物は、1種のみが含まれていてもよいし、上記のように複数種含まれていてもよい。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
有機系現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは85~100質量%、さらにより好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。最も好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0303】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0304】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、前述した感活性光線又は感放射線性組成物が含みうる塩基性化合物におけるものと同様である。
【0305】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、好ましくは0.0001~2質量%、さらに好ましくは0.0001~1質量%、特に好ましくは0.0001~0.1質量%である。
【0306】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm2以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm2以下、更に好ましくは1mL/sec/mm2以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm2以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・パターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm2)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0307】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0308】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0309】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよいが、スループット(生産性)、リンス液使用量等の観点から、リンス液を用いて洗浄する工程を含まなくてもよい。
【0310】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができ、特に、酢酸ブチル及びメチルイソブチルカルビノールを好適に挙げることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行うことが好ましい。
【0311】
リンス液に含まれる有機溶剤としては、有機溶剤の中でも炭化水素系溶剤を用いることも好ましく、脂肪族炭化水素系溶剤を用いることがより好ましい。リンス液に用いられる脂肪族炭化水素系溶剤としては、その効果がより向上するという観点から、炭素数5以上の脂肪族炭化水素系溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘキサデカン等)が好ましく、炭素原子数が8以上の脂肪族炭化水素系溶剤が好ましく、炭素原子数が10以上の脂肪族炭化水素系溶剤がより好ましい。
なお、上記脂肪族炭化水素系溶剤の炭素原子数の上限値は特に限定されないが、例えば、16以下が挙げられ、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。
上記脂肪側炭化水素系溶剤の中でも、特に好ましくは、デカン、ウンデカン、ドデカンであり、最も好ましくはウンデカンである。
このようにリンス液に含まれる有機溶剤として炭化水素系溶剤(特に脂肪族炭化水素系溶剤)を用いることで、現像後にわずかにレジスト膜に染み込んでいた現像液が洗い流されて、膨潤がより抑制され、パターン倒れが抑制されるという効果が一層発揮される。
【0312】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0313】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0314】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0315】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0316】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(PostBake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~160℃、好ましくは70~95℃で、通常10秒~3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0317】
リンス液を用いて洗浄する工程を有さない場合、例えば、特開2015-216403の段落〔0014〕~〔0086〕に記載の現像処理方法を採用できる。
【0318】
また、本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いた現像工程と、アルカリ現像液を用いた現像工程とを有していてもよい。有機系現像液を用いた現像によって露光強度の弱い部分が除去され、アルカリ現像液を用いた現像を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008-292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。
【0319】
本発明の組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。
これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、1ppb(parts per billion)以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、これらの材質とイオン交換メディアを組み合わせた複合材料であってもよい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
また、本発明の有機系処理液に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0320】
本発明の有機系処理液は、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う薬液配管や各種パーツ(フィルター、O-リング、チューブなど)の故障を防止する為、導電性の化合物を添加しても良い。導電性の化合物としては特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加良は特に制限されないが、好ましい現像特性を維持する観点で、10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、5質量%以下である。薬液配管の部材に関しては、SUS(ステンレス鋼)、或いは帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)で被膜された各種配管を用いることができる。フィルターやO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)を用いることができる。
【0321】
なお、一般的に、現像液およびリンス液は、使用後に配管を通して廃液タンクに収容される。その際、リンス液として炭化水素系溶媒を使用すると、現像液中に溶解したレジストが析出し、ウェハ背面や、配管側面などに付着することを防ぐために、再度、レジストが溶解する溶媒を配管に通す方法がある。配管に通す方法としては、リンス液での洗浄後に基板の背面や側面などをレジストが溶解する溶媒で洗浄して流す方法や、レジストに接触させずにレジストが溶解する溶剤を配管を通るように流す方法が挙げられる。
配管に通す溶剤としては、レジストを溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば上述した有機溶媒が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-ヘプタノン、乳酸エチル、1-プロパノール、アセトン、等を用いることができる。中でも好ましくは、PGMEA、PGME、シクロヘキサノンを用いることができる。
【0322】
[電子デバイスの製造方法]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例0323】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0324】
樹脂(A)の合成例
以下に、樹脂(A)の合成例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0325】
化合物(1-c)の合成
【0326】
【0327】
化合物(1-a)(10.0g、29.67mmol)、トリフェニルスルホニウムブロミド(化合物(1-b))(10.6g、31.1mmol)、塩化メチレン150g、純水100gを仕込み、室温下3時間攪拌した。有機相を純水で洗浄後、溶媒を減圧留去し、イソプロピルーテルで共沸した。得られた粗生成物を酢酸エチル/イソプロピルエーテルで再結晶し、真空乾燥後、化合物(1-c)(8.56g、14.8mmol)を得た。化合物の同定は、ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)により行った。
MS-ESI(positive) m/z=263.1[M]+
MS-ESI(negative) m/z=314.0[M]+
【0328】
化合物(2-c)の合成
【0329】
【0330】
Org.Lett.2010,12,2に記載の方法に従って化合物(2-a)を合成した。
化合物(2-a)(12.7g,100mmol)、トリフルオロメタンスルホンアミド(14.9g,100mmol)、炭酸カリウム(27.6g,200mmol)、アセトニトリル200mlを仕込み、窒素雰囲気下で3時間沸点還流にて反応させた。反応混合物からアセトニトリルを留去し、濃縮し、アセトン400mlを加えて攪拌した。不溶物を濾別し、アセトン溶液を濃縮して化合物(2-b)の粗結晶25gを得た。トリス(3-メトキシフェニル)スルホニウムブロミド(43.3g、100mmol)、塩化メチレン300g、純水150gを仕込み、室温下3時間攪拌した。有機相を純水で洗浄後、溶媒を減圧留去し、イソプロピルーテルで共沸した。得られた粗生成物を酢酸エチル/イソプロピルエーテルで再結晶し、真空乾燥後、化合物(2-c)(24.8g、41.9mmol)を得た。化合物の同定は、ESI-MSにより行った。
MS-ESI(positive) m/z=353.1[M]+
MS-ESI(negative) m/z=238.0[M]+
【0331】
樹脂(A-11)の合成
【0332】
【0333】
モノマーとして(M-1)、(M-2)、(1-c)を用い、各モノマーを(M-1):(M-2):(1-c)=50:40:10のモル比になるように混合し、ジアセトンアルコール:メタノール=4:3(質量比)の混合溶媒をモノマー濃度が30質量%の溶液になるように加え、開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を12mol%添加し、モノマー溶液を調製した。窒素雰囲気下0.1質量倍のジアセトンアルコールを75℃に加熱し、モノマー溶液を2時間かけて滴下した後、さらに2時間75℃で反応させた。得られた樹脂の溶液を酢酸エチル:n-ヘプタン=1:9(質量比)の混合溶媒中に滴下し、樹脂を沈殿させ、ろ過、回収した。回収した樹脂をジアセトンアルコールに溶解させ、水中に滴下し、樹脂を再沈殿させ、ろ過、回収後、真空乾燥し、収率46%で樹脂(A-11)を得た。
【0334】
樹脂(A-12)の合成
【0335】
【0336】
モノマーとして(M-3)、(M-4)、(M-5)、(2-c)を用い、各モノマーを(M-3):(M-4):(M-5):(2-c)=40:40:7:13のモル比になるように混合し、ジアセトンアルコール:メタノール=4:3(質量比)の混合溶媒をモノマー濃度が30質量%の溶液になるように加え、開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を12mol%添加し、モノマー溶液を調製した。窒素雰囲気下0.1質量倍のジアセトンアルコールを75℃に加熱し、モノマー溶液を2時間かけて滴下した後、さらに2時間75℃で反応させた。得られた樹脂の溶液を酢酸エチル:n-ヘプタン=1:9(質量比)の混合溶媒中に滴下し、樹脂を沈殿させ、ろ過、回収した。回収した樹脂をジアセトンアルコールに溶解させ、水中に滴下し、樹脂を再沈殿させ、ろ過、回収後、真空乾燥し、収率50%で樹脂(A-12)を得た。
【0337】
実施例で使用したその他の樹脂も上記と同様に合成した。
【0338】
実施例及び比較例のレジスト組成物に用いた各種成分について以下に示す。
【0339】
〔樹脂〕
使用した樹脂(A-1)~(A-36)、(AX-1)~(AX-5)の繰り返し単位の構造及び各繰り返し単位の含有量(含有比率(モル%))、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を示す。
樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、各繰り返し単位の比率は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはn-ブチル基をそれぞれ表す。
【0340】
【0341】
【0342】
【0343】
【0344】
【0345】
【0346】
【0347】
【0348】
【0349】
【0350】
【0351】
〔光酸発生剤〕
使用した光酸発生剤(B-1)の構造を以下に示す。
【0352】
【0353】
〔酸拡散制御剤〕
使用した酸拡散制御剤(C-1~C-14)の構造を以下に示す。
【0354】
【0355】
【0356】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、下記W-1~W-4を用いた。
W-1:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W-2:ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W-3:トロイルS-366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
W-4:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)
【0357】
〔溶剤〕
使用した溶剤を以下に示す。
S-1:ジアセトキシアセトン(DAA)
S-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S-4:乳酸エチル(EL)
S-5:3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)
S-6:2-ヘプタノン(MAK)
S-7:3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)
S-8:酢酸3-メトキシブチル
S-9:γ‐ブチロラクトン
【0358】
〔レジスト組成物の調製〕
下記表1及び2に示す成分を、それぞれ下記表3及び4に示す溶剤に溶解させて溶液を調製し、これを0.02μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物を調製した。下記表1及び2には、使用した樹脂の酸発生繰り返し単位の含有量、レジスト組成物の全固形分の大西パラメータを記載した。各レジスト組成物の固形分濃度は下記表3及び4に示したとおりである。溶剤を除く各成分の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対する割合(質量%)である。界面活性剤を使用した場合は、使用した界面活性剤の種類を下記表1及び2に記載した。なお、界面活性剤の使用量(含有量)は、レジスト組成物の全固形分に対して0.01質量%とした。
【0359】
【0360】
【0361】
【0362】
【0363】
[レジスト組成物の塗設]
レジスト組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン社製スピンコーターMark8を用いて塗布し、130℃、300秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。
なお、上記Siウェハをクロム基板に変更しても、同様の結果が得られるものである。
【0364】
[EB露光及び現像]
上記で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50keV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、100℃で60秒間加熱した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液をパドルして30秒間現像し、純水でリンスをした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、95℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0365】
[評価]
得られたパターンについて、下記の方法で、解像性及びエッチング耐性について評価した。
【0366】
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。
【0367】
<解像性>
上記感度(Eop)を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)を解像性(nm)とした。
解像性の評価結果は30nm未満であることが好ましい。
【0368】
<エッチング耐性>
上記感度を示す照射量(電子線照射量)で線幅100nm(ライン:スペース=1:1)のレジストパターンを形成したレジスト膜を、HITACHI U-621でAr/C4F6/O2ガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用いて60秒間ドライエッチングを行った。その後、残膜率を測定し、エッチング耐性の指標とし、下記基準で評価した。
残膜率(%)=100×(エッチング後のレジスト膜の膜厚)/(エッチング前のレジスト膜の膜厚)
AA:残膜率97.5%以上
A:残膜率95.0%以上97.5%未満
B:残膜率92.5%以上95.0%未満
C:残膜率90.0%以上92.5%未満
D:残膜率90.0%未満
【0369】
評価結果を表5に記載した。
【0370】
【0371】
表5の評価結果から、実施例1a~37aのレジスト組成物は、パターン形成に用いた際に解像性及びエッチング耐性に優れていることが分かった。
比較例1a~3aのレジスト組成物は、実施例に対して解像性及びエッチング耐性が劣っていた。これは、使用した樹脂の酸発生繰り返し単位の含有量が0.25mmol/g以上ではないことと、酸発生繰り返し単位とは異なる、少なくとも1つの芳香環を有する繰り返し単位(a)を有していないことに起因すると考えられる。
比較例4aのレジスト組成物は、実施例に対して解像性が劣っていた。これは、使用した樹脂が酸発生繰り返し単位を有しておらず、低分子の光酸発生剤を使用しているが、光酸発生剤の含有量が少ないため、解像性が向上しなかったためと考えられる。
比較例5aのレジスト組成物では、比較例4aに対して低分子の光酸発生剤の含有量を増加させているが、これによりレジスト膜の膜質が劣化し、解像性及びエッチング耐性が低下したものと考えられる。
比較例6aでは、酸発生繰り返し単位の含有量が0.25mmol/g以上の樹脂を使用しているが、酸発生繰り返し単位の構造が一般式(1)で表される繰り返し単位(P1)ではないため、実施例に対して解像性が劣っていたと考えられる。