(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131890
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20220831BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H02K1/16 C
H02K1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031118
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧志 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA25
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD25
5H601EE34
5H601FF02
5H601FF17
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB33
5H601GC02
5H601GC12
(57)【要約】
【課題】漏れ磁束を低減しつつ、回転電機の駆動電圧の上昇を抑制する。
【解決手段】ロータ19は、軸部材40と、軸部材40の軸線方向Xにおいて軸部材40と隣り合う磁性体30と、を有する。ステータコア61は、軸線方向Xに貫通する内部空間を区画形成する内面76を有する。磁性体30は、軸部材40の軸線Lに直交する径方向Yにおいて内面76から離間する外面30aを有する。内面76と外面30aとは互いに平行である。内面76は、中間内面76a及び一対の端部内面76bで構成されている。中間内面76aは、軸線方向Xにおける内面76の中間位置を含んで位置する。一対の端部内面76bは、軸線方向Xにおいて中間内面76aを挟んで位置する。ステータコア61及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、径方向Yにおける外面30aとの離間寸法が一対の端部内面76bよりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、前記軸部材の軸線方向において前記軸部材と隣り合う磁性体と、を有するロータと、
ステータと、を備える回転電機であって、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、を有し、
前記ステータコアは、前記軸線方向に貫通する内部空間を区画形成する内面を有し、
前記磁性体は、前記軸部材の軸線に直交する直交方向において前記内面から離間する外面を有するとともに、前記内部空間に位置し、
前記内面と前記外面とは互いに平行であり、
前記内面は、前記軸線方向における前記内面の中間位置を含んで位置する中間内面と、前記軸線方向において前記中間内面を挟んで位置する一対の端部内面と、で構成され、
前記ステータコア及び前記磁性体の前記軸線に沿った断面形状をみたとき、
前記中間内面は、前記直交方向における前記外面との離間寸法が一対の前記端部内面よりも小さいことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ステータコアの前記軸線に沿った断面形状をみたとき、
前記中間位置を通り、且つ前記直交方向に延びる仮想的な直線を仮想線とし、
前記中間内面は、前記仮想線を対称軸として線対称であり、
一対の前記端部内面は、前記仮想線を対称軸として線対称である請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記軸線方向における前記内面の寸法に対する前記軸線方向における前記中間内面の寸法の比は0.3~0.7である請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された回転電機は、ステータと、ロータと、を備えている。ステータは、ステータコアと、ステータコアに巻回されたコイルと、を有する。例えば、ロータは、軸部材と、磁性体と、を有する。磁性体は、軸部材の軸線方向において軸部材と隣り合っている。磁性体の外面とステータコアの内面とは、軸部材の軸線に直交する直交方向において互いに離間している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ステータコアの内部において、磁性体に鎖交しない漏れ磁束が生じる場合がある。漏れ磁束は、軸部材の軸線方向において、磁性体の端部よりも外側を通過する。漏れ磁束が増大するほど、磁性体に鎖交する磁束が減少するため、回転電機の出力が低下するおそれがある。
【0005】
磁性体の外面とステータコアの内面との間の離間寸法を小さくすれば、漏れ磁束の低減を図ることができる。しかしながら、磁性体の外面とステータコアの内面との間の離間寸法を小さくするほど、所望のトルクを発生させるのに要する回転電機の駆動電圧が高くなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する回転電機は、軸部材と、前記軸部材の軸線方向において前記軸部材と隣り合う磁性体と、を有するロータと、ステータと、を備える回転電機であって、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、を有し、前記ステータコアは、前記軸線方向に貫通する内部空間を区画形成する内面を有し、前記磁性体は、前記軸部材の軸線に直交する直交方向において前記内面から離間する外面を有するとともに、前記内部空間に位置し、前記内面と前記外面とは互いに平行であり、前記内面は、前記軸線方向における前記内面の中間位置を含んで位置する中間内面と、前記軸線方向において前記中間内面を挟んで位置する一対の端部内面と、で構成され、前記ステータコア及び前記磁性体の前記軸線に沿った断面形状をみたとき、前記中間内面は、前記直交方向における前記外面との離間寸法が一対の前記端部内面よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、ステータコア内の軸線方向における中間部分に磁束を集中させることができるため、漏れ磁束を低減させることができる。さらに、上記構成によれば、磁性体の外面との離間寸法がステータコアの内面の全体で一律である場合と比較して、所定のトルクを発生させるのに要する回転電機の駆動電圧が小さくなる。したがって、漏れ磁束を低減しつつ、回転電機の駆動電圧の上昇を抑制できる。
【0008】
回転電機において、前記ステータコアの前記軸線に沿った断面形状をみたとき、前記中間位置を通り、且つ前記直交方向に延びる仮想的な直線を仮想線とし、前記中間内面は、前記仮想線を対称軸として線対称であり、一対の前記端部内面は、前記仮想線を対称軸として線対称であるとよい。
【0009】
上記構成によれば、ステータコア内の軸線方向における中間部分に磁束をさらに集中させることができる。したがって、漏れ磁束をさらに低減させることができる。
回転電機において、前記軸線方向における前記内面の寸法に対する前記軸線方向における前記中間内面の寸法の比は0.3~0.7であるとよい。
【0010】
上記構成によれば、回転電機における駆動電圧の上昇抑制の効果がより顕著に得られる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、漏れ磁束を低減しつつ、回転電機の駆動電圧の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】ステータコア、筒部材、及び磁性体を示す断面図。
【
図5】内面比、トルク比、及びインダクタンス比の関係を示すグラフ。
【
図6】内面比とインダクタンス比の差分との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、回転電機を具体化した実施形態について、
図1~
図6を用いて説明する。
[回転電機の基本構成]
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0014】
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周端から筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける底壁12aとは反対側の開口を閉塞した状態で、第1ハウジング構成体12に連結されている。
【0015】
第1ハウジング構成体12は円筒状の第1ボス部12cを備えている。第1ボス部12cは、底壁12aの内面から突出している。第2ハウジング構成体13は円筒状の第2ボス部13cを備えている。第2ボス部13cは、第2ハウジング構成体13の内面から突出している。第1ボス部12cの軸線、第2ボス部13cの軸線、及び第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線は、互いに一致している。第1ボス部12cの内周面及び第2ボス部13cの内周面の各々には、軸受14が配置されている。
【0016】
[ロータの構成]
回転電機10はロータ19を備えている。ロータ19はハウジング11の内部に位置している。ロータ19は、軸部材40と、磁性体30と、を有する。例えば、ロータ19は筒部材20を有する。
【0017】
[筒部材の構成]
筒部材20は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材20は、例えば金属製材料から構成されている。筒部材20の軸線は、第1ボス部12cの軸線及び第2ボス部13cの軸線と一致している。以下では、筒部材20の軸線が延びる方向を軸線方向Xという。筒部材20の内周面を筒部材内面20aという。筒部材20の外周面を筒部材外面20bという。
【0018】
軸線方向Xにおける筒部材20の一端の開口を第1開口部21といい、軸線方向Xにおける筒部材20の他端の開口を第2開口部22という。第1開口部21及び第2開口部22はいずれも円状の孔である。筒部材20の内径は、第1開口部21及び第2開口部22を含む軸線方向Xの全体で同じ寸法である。以下では、筒部材20の内径が延びる方向を径方向Yという。
【0019】
[磁性体の構成]
磁性体30は例えば中実円柱状である。本実施形態の磁性体30は永久磁石である。磁性体30は、筒部材20の内部に配置されている。磁性体30の軸線は、筒部材20の軸線と一致している。磁性体30の径は筒部材20の内径と同じ寸法である。磁性体30の径が延びる方向は径方向Yと同じ方向である。磁性体30は、例えば筒部材20の内部に圧入されている。磁性体30の外面30aが筒部材内面20aに密着することにより、磁性体30は筒部材内面20aに固定されている。磁性体30は、磁性体30の径方向に着磁されている。
【0020】
磁性体30の軸線方向Xにおける一端を第1磁性体端31という。磁性体30の軸線方向Xにおける他端を第2磁性体端32という。磁性体30は、第1磁性体端31及び第2磁性体端32の各々に軸線方向Xに直交する端面を有する。第1磁性体端31の端面及び第2磁性体端32の端面は、例えば平坦面である。
【0021】
軸線方向Xにおける磁性体30の寸法を磁性体寸法L1という。磁性体寸法L1は、軸線方向Xにおける第1磁性体端31と第2磁性体端32との間の寸法に相当する。
[軸部材の構成]
ロータ19は、例えば軸部材40を2つ有する。一方の軸部材40を第1軸部材41ともいい、他方の軸部材40を第2軸部材51ともいう。第1軸部材41及び第2軸部材51は例えば中実円柱状である。第1軸部材41及び第2軸部材51は、例えば金属製材料から構成されている。
【0022】
第1軸部材41及び第2軸部材51の径は、筒部材20の内径と同じ寸法である。第1軸部材41及び第2軸部材51の径が延びる方向は、径方向Yと同じ方向である。第1軸部材41の軸線と第2軸部材51の軸線とは互いに一致している。第1軸部材41及び第2軸部材51の軸線を軸線Lという。軸線Lは、筒部材20の軸線、第1ボス部12cの軸線、及び第2ボス部13cの軸線と一致している。軸線Lが延びる方向は軸線方向Xと同じ方向である。軸線方向Xは軸部材40の軸線方向に相当する。径方向Yは、軸線Lに直交する直交方向に相当する。
【0023】
第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20の内部に圧入されている。第1軸部材41は、筒部材20に圧入される第1圧入部43と、筒部材20に圧入されない第1露出部42と、を有する。第2軸部材51は、筒部材20に圧入される第2圧入部53と、筒部材20に圧入されない第2露出部52と、を有する。第1圧入部43は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21よりも筒部材20の内部に位置する。第1露出部42は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21から筒部材20の外部に露出する。第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22よりも筒部材20の内部に位置する。第2露出部52は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22から筒部材20の外部に露出する。
【0024】
第1露出部42の外周面は、第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第1軸部材41はハウジング11に対して回転可能に支持されている。第2露出部52の外周面は、第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第2軸部材51はハウジング11に対して回転可能に支持されている。
【0025】
図2に示すように、第1圧入部43の外周面である第1外周面43aと、第2圧入部53の外周面である第2外周面53aとは、筒部材内面20aに密着している。これにより、第1軸部材41及び第2軸部材51は筒部材内面20aに固定されている。第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20及び磁性体30と一体回転可能となっている。
【0026】
第1圧入部43及び第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて磁性体30と隣り合っている。言い換えると、軸部材40と磁性体30とは軸線方向Xにおいて隣り合っている。第1圧入部43の軸線方向Xにおける端部を第1軸部材端44という。第2圧入部53の軸線方向Xにおける端部を第2軸部材端54という。第1軸部材端44は、第1磁性体端31と軸線方向Xにおいて隣り合っている。第2軸部材端54は、第2磁性体端32と軸線方向Xにおいて隣り合っている。軸部材40は、第1軸部材端44及び第2軸部材端54の各々に軸線方向Xに直交する端面を有する。第1軸部材端44の端面及び第2軸部材端54の端面は、例えば平坦面である。
【0027】
第1軸部材端44の端面は、第1磁性体端31の端面と面接触してもよいし、第1磁性体端31の端面から軸線方向Xに離間していてもよい。第2軸部材端54の端面は、第2磁性体端32の端面と面接触してもよいし、第2磁性体端32の端面から軸線方向Xに離間していてもよい。
【0028】
図1に示すように、第2露出部52は、第2ハウジング構成体13を貫通するとともに、ハウジング11内とハウジング11外との間で軸線方向Xに延びている。ハウジング11外に位置する第2露出部52の端部には、第2軸部材51と一体回転する不図示のインペラが配置されている。第2軸部材51の回転が駆動力としてインペラに伝達されることによってインペラが回転駆動する。
【0029】
[ステータの構成]
回転電機10はステータ60を備えている。ステータ60はハウジング11の内部に位置している。ステータ60は、径方向Yにおけるロータ19の外側に位置している。ステータ60は、ステータコア61と、ステータコア61に巻回されたコイル62と、を有する。コイル62に電流が流れることで、ロータ19は回転可能となっている。
【0030】
[ステータコアの構成]
図3に示すように、ステータコア61は、例えば、円筒状のヨーク71と、ヨーク71内に位置する複数のティース72と、を有する。例えばステータコア61は、6つのティース72を有する。ティース72は、ヨーク71から径方向Yに延びている。すなわち、ティース72の軸方向は径方向Yと同じ方向である。
【0031】
図1に示すように、ヨーク71の外周面71aは、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定されている。こうした第1ハウジング構成体12へのヨーク71の固定によって、ステータコア61はハウジング11に固定されている。
【0032】
図3に示すように、ティース72は、ティース本体部73と、ティース先端部74と、を有する。ティース72の軸方向において、ティース本体部73の端部がヨーク71に繋がっている。ヨーク71と繋がるティース本体部73の端部を基端とするとき、ティース本体部73の先端にティース先端部74が繋がっている。
【0033】
ヨーク71の内面の一部と、ティース本体部73の外面の一部とは、樹脂部材75によって被覆されている。樹脂部材75は、ティース72毎に設けられている。コイル62は、樹脂部材75の外側からティース本体部73に巻回されている。ステータコア61とコイル62とは樹脂部材75によって絶縁されている。
【0034】
[ステータコアの内面の構成]
ステータコア61は内面76を有する。内面76は、ティース72の軸方向におけるティース先端部74の先端に位置する。内面76は、軸線方向Xに貫通する内部空間Sをステータコア61の内部に区画形成する。言い換えると、ステータコア61は、内部空間Sを区画形成する内面76を有する。
【0035】
内部空間Sには、磁性体30及び筒部材20が位置している。軸線方向Xに直交するステータコア61及び筒部材20の断面形状において、ステータコア61の内面76は、筒部材外面20bと向き合っている。内面76は、筒部材20を介して磁性体30の外面30aと向き合っている。内面76は、筒部材外面20bに沿って延びる湾曲面である。
【0036】
図2に示すように、ステータコア61の内面76は、中間内面76aと、一対の端部内面76bと、で構成されている。中間内面76aは、軸線方向Xにおける内面76の中間位置Pを含んで位置する。中間位置Pは、軸線方向Xにおける内面76の両端から等距離となる内面76上の位置である。一対の端部内面76bは、軸線方向Xにおいて中間内面76aを挟んで位置する。
【0037】
内面76の軸線方向Xにおける寸法を内面寸法L2という。中間内面76aの軸線方向Xにおける寸法を中間内面寸法L3という。軸線方向Xにおいて中間内面76aよりも一方側に位置する端部内面76bの軸線方向Xにおける寸法を、第1端部内面寸法L4という。軸線方向Xにおいて中間内面76aよりも他方側に位置する端部内面76bの軸線方向Xにおける寸法を、第2端部内面寸法L5という。内面寸法L2は、中間内面寸法L3、第1端部内面寸法L4、及び第2端部内面寸法L5の和に等しい。例えば、内面寸法L2は磁性体寸法L1と等しい。例えば、内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比は0.5である。
【0038】
軸線Lに沿ったステータコア61の断面形状において、中間位置Pを通り、且つ径方向Yに延びる仮想的な直線を仮想線VLとする。ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、仮想線VLを対称軸として線対称であってもよい。軸線方向Xにおける中間内面76aの寸法は、軸線方向Xにおける中間位置Pより一方と他方とで等しくてもよい。
【0039】
ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、一対の端部内面76bは、仮想線VLを対称軸として線対称であってもよい。第1端部内面寸法L4と第2端部内面寸法L5とは等しくてもよい。言い換えると、軸線方向Xにおける一対の端部内面76bの寸法は互いに等しくてもよい。
【0040】
[ステータコアと筒部材及び磁性体との位置関係]
ステータコア61、筒部材20、及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、ステータコア61の内面76全体と、磁性体30の外面30a全体とは、筒部材20を介して径方向Yに互いに向かい合っている。筒部材外面20bは、径方向Yにおいてステータコア61の内面76から離間している。そのため、磁性体30の外面30aも、径方向Yにおいてステータコア61の内面76から離間している。ステータコア61の内面76と磁性体30の外面30aとは平行である。
【0041】
例えば、ティース先端部74のうち、中間内面76aを有する部分は、端部内面76bを有する部分よりもステータコア61の内側に突出している。径方向Yにおける中間内面76aと磁性体30の外面30aとの離間寸法を中間離間寸法G1という。径方向Yにおける端部内面76bと磁性体30の外面30aとの離間寸法を端部離間寸法G2という。中間離間寸法G1は、筒部材外面20bに対する中間内面76aの離間寸法と、筒部材20の厚み寸法との和である。端部離間寸法G2は、筒部材外面20bに対する端部内面76bの離間寸法と、筒部材20の厚み寸法との和である。
【0042】
中間離間寸法G1は端部離間寸法G2よりも小さい。言い換えると、ステータコア61及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、径方向Yにおける磁性体30の外面30aとの離間寸法が一対の端部内面76bよりも小さい。
【0043】
[電磁鋼板の構成]
図3に示すように、ステータコア61は、複数の電磁鋼板63が軸線方向Xに積層されることによって構成されている。複数の電磁鋼板63は、環状のヨーク構成部81と、ヨーク構成部81よりも内側に位置する複数のティース構成部82と、を有する。例えば、複数の電磁鋼板63の各々は、6つのティース構成部82を有する。
【0044】
複数の電磁鋼板63が軸線方向Xに積層されることにより、複数のヨーク構成部81が軸線方向Xに積層され、且つ複数のティース構成部82が軸線方向Xに積層される。積層された複数のヨーク構成部81によって、ステータコア61のヨーク71が構成されている。積層された複数のティース構成部82によって、ステータコア61のティース72が構成されている。
【0045】
ティース構成部82は、本体構成部83と、先端構成部84と、を有する。本体構成部83は、軸線方向Xに複数積層されることによって、ステータコア61のティース本体部73を構成している。先端構成部84は、軸線方向Xに複数積層されることによって、ステータコア61のティース先端部74を構成している。
【0046】
図4に示すように、電磁鋼板63は、例えば複数の第1電磁鋼板64及び複数の第2電磁鋼板65から構成されている。第1電磁鋼板64は第1内面64aを有する。第1内面64aは、第1電磁鋼板64の先端構成部84の先端に位置する。第2電磁鋼板65は第2内面65aを有する。第2内面65aは、第2電磁鋼板65の先端構成部84の先端に位置する。
【0047】
例えば、ヨーク構成部81及び本体構成部83は、第1電磁鋼板64と第2電磁鋼板65とで同じ形状である。先端構成部84は、第1電磁鋼板64と第2電磁鋼板65とで形状が異なっている。具体的には、第1電磁鋼板64の先端構成部84は、第2電磁鋼板65の先端構成部84よりもステータコア61の内側に突出している。
【0048】
図2に示すように、複数の第1電磁鋼板64は、軸線方向Xにおけるステータコア61の中間部分に位置する。複数の第2電磁鋼板65は、軸線方向Xにおけるステータコア61の両端部に位置する。ステータコア61の中間内面76aは、複数の第1電磁鋼板64の第1内面64aによって構成されている。ステータコア61の端部内面76bは、複数の第2電磁鋼板65の第2内面65aによって構成されている。
【0049】
[作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
ステータコア61の内部において、磁性体30に鎖交しない漏れ磁束が生じる場合がある。漏れ磁束は、
図2に二点鎖線B1で示すように、軸線方向Xにおいて磁性体30の両端部より外側を通過する。
【0050】
本実施形態によれば、中間内面76aは、軸線方向Xにおけるステータコア61の内面76の中間位置Pを含んで位置する。一対の端部内面76bは、軸線方向Xにおいて中間内面76aを挟んで位置する。ステータコア61及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、径方向Yにおける磁性体30の外面30aとの離間寸法が一対の端部内面76bよりも小さい。そのため、
図2に二点鎖線B2で示すように、ステータコア61内の軸線方向Xにおける中間部分に磁束を集中させることができる。漏れ磁束が減少するため、磁性体30に鎖交する磁束が増大する。
【0051】
図5に、回転電機10における内面比R1、トルク比R2、及びインダクタンス比R3の関係を示す。内面比R1は、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比を示している。
【0052】
内面比R1が「0(ゼロ)」である場合は、ステータコア61の内面76全体が端部内面76bに相当する場合である。すなわち、この場合では、ステータコア61の内面76全体で、磁性体30の外面30aに対する離間寸法が端部離間寸法G2となっている。
【0053】
内面比R1が「1」である場合は、ステータコア61の内面76全体が中間内面76aに相当する場合である。すなわち、この場合では、ステータコア61の内面76全体で、磁性体30の外面30aに対する離間寸法が中間離間寸法G1となっている。
【0054】
内面比R1が「0(ゼロ)」より大きく且つ「1」より小さい範囲では、ステータコア61の内面76が中間内面76a及び一対の端部内面76bから構成される。中間離間寸法G1は端部離間寸法G2よりも小さい。内面比R1が大きくなるほど、ステータコア61の内面76において、より小さい中間離間寸法G1をなす中間内面76aの比率が大きくなる。
【0055】
なお、
図5にてトルク比R2及びインダクタンス比R3の算出に用いた回転電機10は、本実施形態の回転電機10と同様のロータ19の構成を有する。また、内面比R1が「0(ゼロ)」より大きく且つ「1」より小さい範囲において、ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状での中間内面76aは、仮想線VLを対称軸として線対称である。ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状での一対の端部内面76bは、仮想線VLを対称軸として線対称である。
図5に示すトルク比R2及びインダクタンス比R3を、以下では実施例のトルク比R2及び実施例のインダクタンス比R3ともいう。内面比R1が「0(ゼロ)」より大きく且つ「1」より小さい範囲にあるときの回転電機10を実施例の回転電機10ともいう。
【0056】
トルク比R2は、内面比R1が「0(ゼロ)」であるときに得られるトルクを基準トルクとしたときに、この基準トルクに対するトルクの比を示している。内面比R1が「0(ゼロ)」であるとき、得られるトルクが上記基準トルクと等しいため、トルク比R2は「1」となっている。トルク比R2は、内面比R1が大きくなるほど大きくなっている。すなわち、ステータコア61の内面76において、より小さい中間離間寸法G1をなす中間内面76aの比率が大きくなるほど、トルク比R2は大きくなっている。
【0057】
インダクタンス比R3は、内面比R1が「0(ゼロ)」であるときに得られるインダクタンスを基準インダクタンスとしたときに、この基準インダクタンスに対するインダクタンスの比を示している。内面比R1が「0(ゼロ)」であるとき、得られるインダクタンスが上記基準インダクタンスと等しいため、インダクタンス比R3は「1」となっている。インダクタンス比R3は、内面比R1が大きくなるほど大きくなっている。すなわち、ステータコア61の内面76において、より小さい中間離間寸法G1をなす中間内面76aの比率が大きくなるほど、インダクタンス比R3は大きくなっている。
【0058】
インダクタンス比R3は、回転電機10における駆動電圧と比例関係にある。そのため、内面比R1に対する回転電機10の駆動電圧の変化傾向は、
図5に示す内面比R1に対するインダクタンス比R3の変化傾向と同様の傾向を示す。
【0059】
図6に、内面比R1及び差分R4の関係を示す。
図6において、内面比R1は
図5に示す内面比R1と同様の値である。差分R4は、比較例の回転電機10のインダクタンス比に対する、実施例のインダクタンス比R3の差分である。比較例の回転電機10は、ステータコア61の内面76全体で、磁性体30の外面30aに対する離間寸法が一律の大きさのものである。比較例の回転電機10において、磁性体30の外面30aに対する内面76の離間寸法を変更した複数のパターンにおいて、トルク比及びインダクタンス比を算出する。比較例の回転電機10において、トルク比及びインダクタンス比は、磁性体30の外面30aに対する内面76の離間寸法が小さいほど大きい関係にある。そして、内面比R1ごとで、実施例のインダクタンス比R3と、実施例のトルク比R2を実現させる比較例でのインダクタンス比との差分を算出する。これにより、
図6に示す差分R4が算出されている。
【0060】
差分R4は、内面比R1が「0(ゼロ)」より大きく、且つ「1」より小さい範囲にあるときに、「0(ゼロ)」より大きくなっている。このことから、実施例での回転電機10においては、所定のトルクを発生させるのに要する回転電機10の駆動電圧が、比較例の回転電機10よりも小さくなることが言える。
【0061】
差分R4は、内面比R1が「0.3~0.7」であるときに比較的大きくなる。このことから、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比が0.3~0.7である場合、回転電機10における駆動電圧の上昇抑制の効果がより顕著に得られることが言える。とくに、差分R4は、内面比R1が「0.5」であるときに最も大きい最大差分R4maxとなる。このことから、本実施形態のように、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比が0.5である場合、所定のトルクを発生させるのに要する回転電機10の駆動電圧が、比較例の回転電機10に対して最も小さくなることが言える。
【0062】
上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)ステータコア61の内面76は、中間内面76a及び一対の端部内面76bで構成されている。中間内面76aは、軸線方向Xにおけるステータコア61の内面76の中間位置Pを含んで位置する。一対の端部内面76bは、軸線方向Xにおいて中間内面76aを挟んで位置する。ステータコア61及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、径方向Yにおける磁性体30の外面30aとの離間寸法が一対の端部内面76bよりも小さい。こうした上記実施形態によれば、ステータコア61内の軸線方向Xにおける中間部分に磁束を集中させることができるため、漏れ磁束を低減させることができる。さらに、上記実施形態によれば、磁性体30の外面30aとの離間寸法がステータコア61の内面76の全体で一律である場合と比較して、所定のトルクを発生させるのに要する回転電機10の駆動電圧が小さくなる。したがって、漏れ磁束を低減しつつ、回転電機10の駆動電圧の上昇を抑制できる。
【0063】
(2)ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、仮想線VLを対称軸として線対称である。ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、一対の端部内面76bは、仮想線VLを対称軸として線対称である。こうした上記実施形態によれば、ステータコア61内の軸線方向Xにおける中間部分に磁束をさらに集中させることができる。したがって、漏れ磁束をさらに低減させることができる。
【0064】
(3)軸線方向Xにおけるステータコア61の内面寸法L2に対する軸線方向Xにおける中間内面76aの寸法の比は0.3~0.7である。こうした寸法比の場合、回転電機における駆動電圧の上昇抑制の効果がより顕著に得られる。
【0065】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
○ ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比は、0.5以外の値であってもよい。例えば、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比は、0.3~0.7であって、且つ0.5以外の値であってもよい。例えば、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比は、0.3未満であってもよいし、0.7より大きくてもよい。要するに、ステータコア61の内面寸法L2に対する中間内面寸法L3の比は、「0(ゼロ)」より大きく、且つ「1」より小さい範囲内であればよい。
【0067】
○ 端部離間寸法G2は、一対の端部内面76bで互いに異なってもよい。この場合も、一対の端部内面76bにおいて、端部離間寸法G2が中間離間寸法G1よりも大きい。
○ ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、中間内面76aは、仮想線VLを対称軸として線対称をなす形状でなくてもよい。ステータコア61の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、一対の端部内面76bは、仮想線VLを対称軸として線対称をなす形状でなくてもよい。要するに、中間内面76aが内面76の中間位置Pを含んで位置し、且つ一対の端部内面76bが軸線方向Xにおいて中間内面76aを挟んで位置する範囲内であれば、内面76における中間内面76a及び端部内面76bの位置は変更可能である。
【0068】
○ 軸部材40と磁性体30とが軸線方向Xにおいて隣り合う位置関係にあれば、軸部材40は、軸線方向Xにおける磁性体30のいずれか一方にのみ位置してもよい。
○ 磁性体30の軸線方向Xにおける寸法を変更することにより、磁性体寸法L1をステータコア61の内面寸法L2より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0069】
○ 磁性体30の位置を上記実施形態より軸線方向Xにずらしてもよい。この場合、ステータコア61及び磁性体30の軸線Lに沿った断面形状をみたとき、ステータコア61の内面76の一部と、磁性体30の外面30aの一部とが、筒部材20を介して径方向Yに向かい合う。
【0070】
○ 磁性体30は永久磁石に限らない。例えば、磁性体30は、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コア等であってもよい。
○ 回転電機10は、第2軸部材51の端部に加えて、第1軸部材41の端部にインペラが取り付けられた構成であってもよい。この場合、第1軸部材41に取り付けられたインペラは、第1軸部材41と一体回転可能である。インペラは、第1軸部材41の回転が駆動力として伝達されることにより駆動する。
【符号の説明】
【0071】
L…軸線、L2…内面寸法、L3…中間内面寸法、L4…第1端部内面寸法、L5…第2端部内面寸法、P…中間位置、S…内部空間、VL…仮想線、X…軸線方向、Y…径方向、10…回転電機、19…ロータ、30…磁性体、30a…外面、40…軸部材、60…ステータ、61…ステータコア、62…コイル、76…内面、76a…中間内面、76b…端部内面。