(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022132189
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】多層配線基板の製造方法、積層膜形成用キット及び組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/768 20060101AFI20220831BHJP
C23C 18/20 20060101ALI20220831BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L21/90 A
C23C18/20 Z
H01L21/288 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028230
(22)【出願日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2021030513
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 優貴
【テーマコード(参考)】
4K022
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA05
4K022AA31
4K022AA42
4K022BA06
4K022BA08
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(57)【要約】
【課題】めっき層との密着性に優れた有機膜をビアの内面に形成でき、かつめっき処理によるビアへの金属埋め込み性に優れた多層配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】配線13の上に設けられた絶縁層14に形成されたビア11の内側における配線13上及び内壁面12に有機膜17を形成する膜形成工程と、有機膜17を形成した後のビア11の内部にめっき層18を形成するめっき工程と、を含む。有機膜17は、絶縁層14が表層に有する基と相互作用し得る第1の官能基を有する重合体(I)を用いて形成され、かつ、めっき層18に含まれる金属と結合を形成し得る第2の官能基を有する方法により多層配線基板を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線基板の製造方法であって、
配線の上に設けられた絶縁層に前記絶縁層を厚み方向に貫通するように形成されたビアの内側における前記配線上及び内壁面に、有機膜を形成する膜形成工程と、
前記有機膜を形成した後の前記ビアの内部に、めっき処理により金属層を形成するめっき工程と、
を含み、
前記有機膜は、前記絶縁層が表層に有する基と相互作用し得る第1の官能基を有する重合体(I)を用いて形成され、かつ、前記金属層に含まれる金属と結合を形成し得る第2の官能基を有する、多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記重合体(I)は、前記第1の官能基と、架橋性基(ただし、前記第1の官能基とは異なる基である。)とを有し、
前記有機膜は、前記重合体(I)を用いて前記配線上及び前記内壁面に形成される第1層と、前記架橋性基と結合を形成し得る第3の官能基を有する重合体(II)を用いて前記第1層上に形成される第2層と、の積層膜である、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記架橋性基は、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記第3の官能基は、オキサゾリン基及びエポキシ基のうち少なくとも一方である、請求項2又は3に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記重合体(II)は、芳香環を有する単量体に由来する構造単位を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記第2の有機膜は単層膜である、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2の官能基は、カルボキシ基、スルフィド基、ジチオカルボニル基、チオウレタン基及びチオアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層は、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基を表層に有し、
前記第1の官能基は、シラノール基、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基、-N(Si(R5)3)2、アミノ基、水酸基、共役系窒素含有複素環基、酸無水物基、カルボキシ基及び保護されたカルボキシ基(ただし、R5はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記重合体(I)は、芳香環を有する単量体に由来する構造単位を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記配線は、Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記めっき工程は、前記ビアの内部に無電解めっきを施す工程である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記金属層は、Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記膜形成工程により前記有機膜を形成する前の基板表面に対し、N2/H2ガス又はO2ガスによるアッシング処理を行う工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記膜形成工程により前記有機膜を形成する前の基板表面に、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、フッ化水素(HF)、アンモニア(NH3)、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、又はクエン酸を含む処理液を接触させる工程を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項15】
Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板におけるビアの内部にめっき処理により金属層を形成するための前処理に用いられる、積層膜形成用キットであって、
架橋性基と、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基と相互作用し得る官能基(ただし、前記架橋性基を除く。)と、を有する重合体(I)と、
前記架橋性基と結合を形成し得る官能基を有する重合体(II)と、
を含む、積層膜形成用キット。
【請求項16】
Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板におけるビアの内部にめっき処理により金属層を形成するための前処理に用いられる組成物であって、
酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基と、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基と相互作用し得る官能基(ただし、前記架橋性基を除く。)と、を有する重合体と、
溶剤と、
を含有する、組成物。
【請求項17】
前記重合体は、前記官能基を有する構造単位として、下記式(1)で表される構造単位を有する、請求項16に記載の組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~5の1価の炭化水素基、ハロゲン原子、又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。R
2は炭素数1~5の1価の炭化水素基である。R
3は炭素数1~5のアルコキシ基である。R
10は、炭素数1~5の1価の炭化水素基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子である。aは0~2の整数であり、bは1~3の整数である。但し、a+b=3である。cは0~4の整数である。aが2の場合、複数のR
2は同一又は異なり、bが2又は3の場合、複数のR
3は同一又は異なる。cが2以上の場合、複数のR
10は同一又は異なる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、積層膜形成用キット及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、半導体ウェハに多層配線を形成する方法として、層間絶縁膜にビアを形成し、めっき処理によりビアの内部に金属を埋め込む技術が知られている。この技術では、ビアの内部に充填した金属が絶縁膜に拡散することを抑制するために、金属を埋め込む前にビアの内面にバリア膜を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、配線上の絶縁膜にビアが形成されたウェハにおけるビアの底面に、Co-W-B合金等で構成されるバリア膜を形成し、その後、ビアの底面に露出するバリア膜を触媒としてビアの底面から無電解めっき膜を形成することによりビアの内部に金属を埋め込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体製造工程においては、大容量化や高速化等の要求に応えるべく、更なる微細化が検討されている。また、微細加工を実現するべく、新たな材料を開発する試みが行われている。多層配線形成工程においてビアの内部に形成されるバリア膜についても、従来のメタル層に代えて、更に高性能な新たな材料が求められている。バリア膜としての性能としては、絶縁膜との密着性に加え、ビアに埋め込まれる金属との密着性に優れていること、ビアに埋め込まれた金属にボイドやシームの発生が少なく、金属埋め込み性に優れていること等がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、めっき層との密着性に優れた有機膜をビアの内面に形成でき、かつめっき処理によるビアへの金属埋め込み性に優れた多層配線基板の製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0008】
[1] 多層配線基板の製造方法であって、配線の上に設けられた絶縁層に前記絶縁層を厚み方向に貫通するように形成されたビアの内側における前記配線上及び内壁面に、有機膜を形成する膜形成工程と、前記有機膜を形成した後の前記ビアの内部に、めっき処理により金属層を形成するめっき工程と、を含み、前記有機膜は、前記絶縁層が表層に有する基と相互作用し得る第1の官能基を有する重合体(I)を用いて形成され、かつ、前記金属層に含まれる金属と結合を形成し得る第2の官能基を有する、多層配線基板の製造方法。
【0009】
[2] Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板におけるビアの内部にめっき処理により金属層を形成するための前処理に用いられる、積層膜形成用キットであって、架橋性基と、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基と相互作用し得る官能基(ただし、前記架橋性基を除く。)と、を有する重合体(I)と、前記架橋性基と結合を形成し得る官能基を有する重合体(II)と、を含む、積層膜形成用キット。
【0010】
[3] Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板におけるビアの内部にめっき処理により金属層を形成するための前処理に用いられる組成物であって、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基と、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基と相互作用し得る官能基(ただし、前記架橋性基を除く。)と、を有する重合体と、溶剤と、を含有する、組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、ビアの内面(配線上及びビアの内壁面)に、めっき層との密着性に優れた有機膜を形成することができる。また、本発明の製造方法により内面に有機膜が形成されたビアは、めっき処理による金属の埋め込み性に優れている。本発明の製造方法によれば、こうした優れた特性を発現する有機膜を塗布等の簡便な操作によって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ビア内部に有機膜を形成する工程を示す模式図。(a)は有機膜の形成前、(b)は有機膜における第1層の形成後、(c)は有機膜における第2層の形成後、(d)はめっき層の形成後をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0014】
《多層配線基板の製造方法》
本開示の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、基板上に多層配線を形成して多層配線基板を得るための配線形成工程において、ビアの内部に金属を埋め込む工程の前処理として、配線上の絶縁層に設けられたビアの内面に有機膜を形成する処理を行う工程を含むものである。ビア内面の有機膜は、有機材料である表面修飾用組成物を用いて形成される。ビア内面に形成された有機膜は、その後、めっき処理によりビア内部に埋め込まれる金属が絶縁層に拡散することを抑制するバリア機能を有する。本製造方法は、具体的には以下の膜形成工程及びめっき工程を含む。
(膜形成工程)配線上の絶縁層に形成されたビアの内側における配線上及び内壁面に有機膜を形成する工程。
(めっき工程)有機膜を形成した後のビアの内部にめっき層を形成する工程。
以下、本製造方法の詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1(a)~
図1(d)は、配線基板10に設けられたビア内部に有機膜を形成する際の一連の工程を示す模式図である。なお、
図1(a)~
図1(d)には、ビア11及びその周辺部の部分拡大図を示している。
図1(a)は、ビア内部の配線11上及び内壁面12に対して、表面修飾用組成物により有機膜が形成される前の状態を表している。
【0016】
図1(a)に示すように、配線基板10は配線13を備えている。配線13は金属材料により形成されている。本実施形態では、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)及びルテニウム(Ru)よりなる群から選択される1種以上を含む導電性材料により配線13が形成されている。なお、配線13に含まれる金属は、金属単体であってもよく、合金、導電性窒化物、金属酸化物等であってもよい。配線13の上には絶縁層14が、配線13に隣接して設けられている。
【0017】
絶縁層14は、ケイ素含有材料により形成されている。絶縁層14は、その表面に、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2(ただし、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。以下同じ)よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基(以下、「ケイ素含有基」ともいう)を有することが好ましい。ケイ素含有基の具体例としては、例えばSi-H、Si-OH(シラノール基)、Si=O、Si-N(R1)2等が挙げられる。絶縁層14を構成する材料としては、例えば、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物等の半導体材料(SiO2、SiOC、Si3N4、SiNx、SiON等)が挙げられる。
【0018】
絶縁層14にはビア11が設けられている。ビア11は、絶縁層14を厚み方向に貫通するように絶縁層14に形成されている。これにより、ビア内部の底部15では、配線13が露出した状態になっている。なお、絶縁層14にビア11を形成する方法は特に限定されず、例えばドライエッチング等、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0019】
本製造方法によりめっき埋め込みを行う配線基板10には、配線基板10の表面改質(より具体的には、絶縁層14の表面改質)のための処理が施されることが好ましい(基板改質工程)。基板改質の処理は、ドライ式でもウエット式でもよい。ドライ式の場合、本製造方法において行う基板改質処理は、N2/H2ガス又はO2ガスによるアッシング処理が好ましい。ウエット式の場合、適用する基板改質処理は、表面修飾用組成物の塗布性及び密着性を向上させる観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、フッ化水素(HF)、アンモニア(NH3)、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、又はクエン酸を含む処理液を接触させる処理であることが好ましい。
【0020】
<膜形成工程>
本製造方法において、膜形成工程では、ビア11の底部15にむき出しの配線13上及び内壁面12に有機膜17を形成する(
図1(b)及び(c)参照)。有機膜17は、ビア11の底部15及び内壁面12を被覆する膜であり、重合体と溶剤とを含む重合体組成物を用いて、底部15における配線13上及び内壁面12に直接形成される。具体的には、以下の工程1及び工程2を含む方法により、ビア11の底部15及び内壁面12に有機膜17を形成することが好ましい。
(工程1)重合体組成物を配線基板10の表面に塗布する工程。
(工程2)基板表面に塗布した重合体組成物から溶剤を除去する工程。
【0021】
・工程1:塗布工程
本工程では、配線基板10における少なくともビア11の内部表面に重合体組成物を塗布する。重合体組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等を挙げることができる。これらの中でも、スピンコート法、スリットダイ塗布法又はバー塗布法により組成物の塗布を行うことが好ましい。
【0022】
重合体組成物を塗布する基板の表面には、例えば、H2、N2とH2との混合ガス、O2ガス等を用いたプラズマ処理や、基板表面を親水化するためのウエット改質処理等の前処理が施されてもよい。重合体組成物を塗布する基板の表面にプラズマ処理を施すことによって、重合体組成物の塗布面にSi-OH、Si-H及びSi-Nの少なくともいずれかを十分に生成させることが、塗布性を向上させるとともに、重合体組成物による表面修飾を十分に促進させることができる点で好ましい。
【0023】
・工程2:溶剤除去工程
本工程では、好ましくは加熱処理を行うことにより、基板表面に塗布した重合体組成物から溶剤を除去する。これにより、有機膜17がビア内部の配線13及び内壁面12の上に形成される。加熱処理は、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。加熱処理を行う場合、加熱温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。また、加熱温度は、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは280℃以下である。加熱時間は、好ましくは0.5~30分であり、より好ましくは1~20分である。形成される有機膜17の厚みは、例えば1~10nmであり、好ましくは1~5nm、より好ましくは1~3nmである。
【0024】
なお、未吸着の重合体等を除去するために、有機膜が形成された基板表面に対し、有機溶媒による洗浄や流水洗浄等のリンス処理を行ってもよい。リンス液として使用する有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、及びこれらのうちの2種以上の混合溶剤等を挙げることができる。
【0025】
有機膜17は、後述するめっき工程によりビア内部に形成されるめっき層18(
図1(d)参照)に含まれる金属と結合を形成し得る官能基(以下、「官能基FM」ともいう)を有している。官能基FMは、金属元素と配位結合を形成可能な官能基が好ましく、カルボキシ基、スルフィド基、ジチオカルボニル基(-C(=S)-S-)、チオウレタン基(-NR
20-C(=O)-S-)及びチオアミド基(-C(=S)-NR
20-)よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、官能基FMが「第2の官能基」に相当する。R
20は水素原子又は1価の基を表す。R
20が1価の基である場合の具体例としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0026】
有機膜17の一つの態様は多層構造である。具体的には、
図1(b)及び(c)に示すように、有機膜17は、内壁面12の上に形成される第1層17aと、第1層17a上に形成される第2層17bとの積層膜である。第1層17aは、絶縁層14が表層に有する基と相互作用し得る官能基(以下、「官能基F1」ともいう)を有する重合体(I)と、溶剤とを含む組成物(以下、「第1の組成物」ともいう)を用いて、ビア内部の配線13上及び内壁面12に形成される(
図1(b)参照)。また、第2層17bは、重合体(II)と溶剤とを含む組成物(以下、「第2の組成物」ともいう)を用いて、第1層17aの上に形成される(
図1(c)参照)。
【0027】
なお、第1層17a及び第2層17bからなる積層膜を形成するには、まず、第1の組成物を用いて、工程1及び工程2により第1層17aを形成し、次いで、第2の組成物を用いて工程1及び工程2を再度実施し第2層17bを形成することにより行うことができる。
【0028】
有機膜17が多層構造である場合、官能基FMを有する有機膜17を得る方法としては、重合体(I)として、官能基FM又は熱により官能基FMを生じる官能基(以下「官能基FP」ともいう)を有する重合体を用いる方法;重合体(II)として、官能基FM又は官能基FPを有する重合体を用いる方法;膜形成時に、重合体(I)が有する官能基と重合体(II)が有する官能基との反応によって官能基FMを生じさせる方法;等が挙げられる。
【0029】
有機膜17の他の一つの態様は単層構造である。有機膜17が単層膜である場合、有機膜17は、絶縁層14が表層に有する基(ケイ素含有基)と相互作用し得る官能基F1である重合体(I)を用いて形成される。この場合、有機膜17は、官能基F1と、めっき層18に含まれる金属と結合を形成可能な官能基FM又は熱により官能基FMを生じる官能基FPとを有する重合体(以下、重合体(III)ともいう)と、溶剤とを含む組成物(以下「第3の組成物」ともいう)を用い、上記工程1及び工程2を行うことにより、底部15及び内壁面12に形成することが好ましい。
【0030】
<めっき工程>
本製造方法では、ビア11の底部15及び内壁面12に有機膜17を形成した後、続いて、有機膜17を残したままめっき処理を施すことにより、ビア内部に金属層としてのめっき層18を形成する(
図1(d)参照)。めっき方法は特に限定されず、公知の電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空めっき、気相めっき等を採用することができる。半導体製造工程に適用する場合、これらのうち、電解めっき又は無電解めっきによることが好ましく、無電解めっきによることが特に好ましい。具体的には、底部15にむき出しの配線13を触媒とし、底部15からボトムアップすることにより無電解めっき層を形成する方法が挙げられる。なお、めっき処理後は必要に応じて、基板表面の平坦化処理等を行ってもよい。
【0031】
めっき層18に含まれる金属は特に限定されず、例えば配線13の構成材料として例示した金属と同様のものが挙げられる。これらのうち、めっき層18は、Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0032】
このようにして形成されためっき層18にはボイドやシームの発生が少なく、よって信頼性の高い多層配線基板とすることができる。
【0033】
次に、本製造方法に用いられる修飾用組成物(第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物)について説明する。なお、組成物を構成する各成分としては、特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<第1の組成物>
第1の組成物は、ビア11の底部15及び内壁面12上に第1層17aを形成するために用いられる重合体組成物である。この第1の組成物は、絶縁層14が表層に有する基と相互作用し得る官能基(官能基F1)を有する重合体(I)と、溶剤とを含有する。なお、官能基F1が「第1の官能基」に相当する。本明細書において「相互作用」とは、分子間で化学結合を形成するか、又は分子間に物理的な力が働くことをいい、「吸着」ともいう。この相互作用には、共有結合、イオン結合及び金属結合のほか、配位結合、水素結合及びファンデルワールス力が含まれる。
【0035】
〔重合体(I)〕
・官能基F1
重合体(I)が有する官能基F1は、好ましくは、ケイ素原子に対し水素原子、水酸基、オキソ基及び-N(R1)2よりなる群から選択される少なくとも1種が結合した基(ケイ素含有基)と相互作用し得る官能基である。より具体的には、官能基F1は、シラノール基、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基、-N(Si(R5)3)2、アミノ基、水酸基、共役系窒素含有複素環基、酸無水物基、カルボキシ基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ここで、R5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。
【0036】
官能基F1が基「-N(Si(R5)3)2」である場合、R5の炭素数1~10の1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基が挙げられる。共役系窒素含有複素環基は、共役系窒素含有複素環を有する基であり、具体的には、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環、インドール環、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、トリアゾール環、トリアジン環等の環構造を有する基が挙げられる。なお、共役系窒素含有複素環基は、複素環部分に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0037】
官能基F1は、絶縁層14の表層のケイ素含有基との親和性が高い点、及び第1の組成物の保存安定性を良好にできる点で、シラノール基、アルコキシシリル基、及び共役系窒素含有複素環基よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ケイ素酸化物に対し高い吸着性を示し、第1層17aと絶縁層14との密着性の改善効果をより高くできる点で、アルコキシシリル基を含むことが更に好ましい。また、絶縁層14の表層のケイ素含有基と相互作用しつつ架橋性を示す点で、官能基F1は、酸無水物基、カルボキシ基又は保護されたカルボキシ基が好ましく、酸無水物基がより好ましい。
【0038】
・架橋性基
重合体(I)は、架橋性基を有することが好ましい。ここで、本明細書において「架橋性基」とは、熱付与等によって同種又は異種の官能基同士で反応して共有結合を形成する基をいう。ただし、重合体(I)が有する架橋性基は、その重合体(I)が有する官能基F1とは異なる基である。重合体(I)が架橋性基を有する場合、重合体(I)は、官能基F1として、絶縁層14が表層に有する基と相互作用し、かつ架橋性を示さない基を有することが好ましい。重合体(I)が架橋性基を有することにより、耐熱性及び絶縁破壊耐性の高い有機膜を形成できる点で好適である。また、重合体(I)が有する架橋性基を利用して第1層17aと第2層17bとの間に架橋構造を形成でき、有機膜17の密着性の改善効果を高くできる。架橋性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合を有する基、芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基、環状エーテル基、環状カーボネート基、酸無水物基、カルボキシ基、保護されたカルボキシ基等が挙げられる。
【0039】
なお、架橋性基は、官能基F1とは異なる基である。したがって、重合体(I)が官能基F1として酸無水物基、カルボキシ基又は保護されたカルボキシ基を有する場合、重合体(I)が有する架橋性基は、酸無水物基、カルボキシ基及び保護されたカルボキシ基とは異なる基(例えば、炭素-炭素不飽和結合を有する基や、芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基、環状エーテル基、環状カーボネート基)である。また、重合体(I)が官能基F1として酸無水物基、カルボキシ基及び保護されたカルボキシ基とは異なる基を有する場合、重合体(I)が有する架橋性基は、酸無水物基、カルボキシ基又は保護されたカルボキシ基であってもよい。
【0040】
架橋性基の具体例としては、炭素-炭素不飽和結合を有する基として、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基等を;芳香環とシクロブタン環との縮合環構造を有する基として、例えばシクロブタン環とベンゼン環との縮合環構造を有する基、シクロブタン環とナフタレン環との縮合環構造を有する基等を;環状エーテル基として、例えばオキシラニル基、オキセタニル基等を;保護されたカルボキシ基として、基「-COOR9」(ただし、R9は熱解離性基である。)等を、それぞれ挙げることができる。
【0041】
基「-COOR
9」の具体例としては、例えば下記式(X-1)で表される構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタール構造等を、それぞれ挙げることができる。
【化1】
(式(X-1)中、R
6、R
7及びR
8は、次の(1)又は(2)である。(1)R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。(2)R
6及びR
7は、互いに合わせられR
6及びR
7が結合する炭素原子とともに構成される炭素数4~20の脂環式炭化水素構造又は環状エーテル構造を表す。R
8は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数6~20のアリール基である。「*」は結合手であることを表す。)
【0042】
上記式(X-1)で表される構造の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、1-シクロペンチルエトキシカルボニル基、1-シクロヘキシルエトキシカルボニル基、1-ノルボルニルエトキシカルボニル基、1-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-ナフチル)エトキシカルボニル基、1-ベンジルエトキシカルボニル基、1-フェネチルエトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0043】
カルボン酸のアセタールエステル構造の具体例としては、例えば、1-メトキシエトキシカルボニル基、1-エトキシエトキシカルボニル基、1-プロポキシエトキシカルボニル基、1-ブトキシエトキシカルボニル基、1-シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2-テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、1-フェノキシエトキシカルボニル基、2-テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0044】
カルボン酸のケタールエステル構造の具体例としては、1-メチル-1-メトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-エトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-プロポキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-ブトキシエトキシカルボニル基、1-メチル-1-シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2-(2-メチルテトラヒドロフラニル)オキシカルボニル基、2-(2-メチルテトラヒドロピラニル)オキシカルボニル基、1-メトキシシクロペンチルオキシカルボニル基、1-メトキシシクロヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0045】
これらのうち、熱(好ましくは、膜形成時の加熱)により官能基FMを生じることによって、めっき層18に含まれる金属との密着性の改善効果を高くできる点で、重合体(I)が有する架橋性基は、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。重合体(I)は特に、シラノール基、アルコキシシリル基、-N(Si(R5)3)2、アミノ基、水酸基、及び共役系窒素含有複素環基よりなる群から選択される少なくとも1種と、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種とを有することが好ましい。中でも、絶縁層14の表層のケイ素含有基との親和性が高い点、及び第1の組成物の保存安定性を良好にできる点で、重合体(I)は、シラノール基、アルコキシシリル基、及び共役系窒素含有複素環基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、アルコキシシリル基を有することがより好ましい。
【0046】
重合体(I)の主骨格は特に限定されない。耐熱性に優れる点及び単量体の選択の自由度が高く、官能基F1の導入が比較的容易な点で、重合体(I)は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体を用いて得られる重合体であることが好ましい。重合体(I)は、官能基F1を有する構造単位を含むことが好ましく、官能基F1(ただし、架橋性基を除く。)を有する構造単位(以下、「構造単位U1」ともいう)と、架橋性基を有する構造単位(以下、「構造単位U2」ともいう)とを含むことがより好ましい。
【0047】
重合体(I)が構造単位U1と構造単位U2とを有する場合、構造単位U1を与える単量体としては、シラノール基、アルコキシシリル基、-N(Si(R5)3)2、アミノ基、水酸基、及び共役系窒素含有複素環基(ただし、R5はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)よりなる群から選択される少なくとも1種を有する単量体を好ましく使用することができる。
【0048】
これらの具体例としては、シラノール基を有する単量体として、ジメトキシヒドロキシシリルスチレン、ジエトキシヒドロキシシリルスチレン、ジメチルヒドロキシシリルスチレン、ジエチルヒドロキシスチレン等を;
アルコキシシリル基を有する単量体として、4-ジメチルメトキシシリルスチレン、4-ジエチルメトキシスチレン、4-メチルエチルメトキシシリルスチレン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシスチレン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエチルメトキシスチレン等を;
基「-N(Si(R
5)
3)
2」を有する単量体として、下記式(UA-1)~式(UA-3)のそれぞれで表される化合物等を;
アミノ基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸3-アミノプロピル等を;
水酸基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等を;
共役系窒素含有複素環基を有する単量体として、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルベンゾカルバゾール、N-ビニルジベンゾカルバゾール、2-フルオロ-9-ビニルカルバゾール、2-ニトロ-9-ビニルカルバゾール、2-メトキシ-9-ビニルカルバゾール等を、それぞれ挙げることができる。
【化2】
【0049】
重合体(I)において、構造単位U1の含有量は、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、1モル%以上であること好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。構造単位U1の含有量を1モル%以上とすることにより、有機膜17と絶縁層14との密着性を十分に高くできる点で好適である。また、構造単位U1の含有量は、良好な基質選択性を確保する観点から、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることが更に好ましい。構造単位U1の含有量が上記範囲であると、重合体(I)中に官能基F1が均等に導入されることによって、被覆膜における官能基F1のムラを抑制でき、永久膜としての使用も可能になる点で好ましい。
【0050】
構造単位U2としては、下記式(U2-1)~式(U2-4)のそれぞれで表される構造単位等が挙げられる。
【化3】
(式(U2-2)~式(U2-4)中、R
Aは水素原子、炭素数1~5の1価の炭化水素基、ハロゲン原子、又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。R
9は熱解離性基である。R
11は、炭素数1~5の1価の炭化水素基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子である。dは0~4の整数である。dが2以上の場合、複数のR
11は同一又は異なる。)
【0051】
重合体(I)が構造単位U2を含む場合、構造単位U2の含有量は、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、5モル%以上であること好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることが更に好ましい。構造単位U2の含有量を5モル%以上とすることにより、有機膜17に架橋構造を十分に導入でき、絶縁破壊耐性を高めることができる点で好適である。また、構造単位U2の含有量は、有機膜17の靭性を確保する観点から、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。
【0052】
重合体(I)は、上記の中でも、官能基F1(ただし、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基を除く。)と、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基とを有する重合体であることが好ましく、官能基F1を有する構造単位として、下記式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位U3」ともいう)を含むことが特に好ましい。
【化4】
(式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~5の1価の炭化水素基、ハロゲン原子、又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。R
2は炭素数1~5の1価の炭化水素基である。R
3は炭素数1~5のアルコキシ基である。R
10は、炭素数1~5の1価の炭化水素基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子である。aは0~2の整数であり、bは1~3の整数である。但し、a+b=3である。cは0~4の整数である。aが2の場合、複数のR
2は同一又は異なり、bが2又は3の場合、複数のR
3は同一又は異なる。cが2以上の場合、複数のR
10は同一又は異なる。)
【0053】
上記式(1)において、R2の1価の炭化水素基としては、アルキル基及びシクロアルキル基等が挙げられる。これらのうち、R2は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0054】
重合体(I)が構造単位U3を含む場合、構造単位U3の含有量は、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、1モル%以上であること好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。構造単位U3の含有量を1モル%以上とすることにより、絶縁層14と有機膜17との密着性の改善効果を高くできる点で好適である。また、構造単位U3の含有量は、良好な基質選択性を確保する観点から、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0055】
重合体(I)は、構造単位U1と共に、構造単位U1~U3とは異なる構造単位(以下、「その他の構造単位U4」ともいう)を更に含んでいてもよい。その他の構造単位U4は、構造単位U1と共重合可能であればよく、特に限定されない。その他の構造単位U4を与える単量体は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体が好ましい。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、複素環構造を有するビニル化合物、共役ジエン化合物、窒素含有ビニル化合物、アルケン、ビニルシクロアルカン、シクロアルケン、及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体を挙げることができる。また、その他の構造単位U4を与える単量体として、官能基FMを有する単量体であって、構造単位U2を与える単量体とは異なる単量体を用いてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを包含する意味である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを包含する意味である。
【0056】
上記単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等を;
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等を;
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
芳香族ビニル化合物として、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン、メチル(4-ビニルフェニル)スルファン、エチル(4-ビニルフェニル)スルファン、ビニルナフタレン等を;
N-置換マレイミド化合物として、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-(2-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-エチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-トリシクロデシルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-エチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等を;
複素環構造を有するビニル化合物として、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、2-(メタ)アクリロキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4,6]ウンデカン、(メタ)アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)、(メタ)アクリル酸グリセリンカーボネート、(メタ)アクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)、N-(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン等を;
共役ジエン化合物として、1,3-ブタジエン、イソプレン等を;窒素含有ビニル化合物として、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル等を;
アルケンとして、プロペン、ブテン、ペンテン等を;
ビニルシクロアルカンとして、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等を;
シクロアルケンとして、シクロペンテン、シクロヘキセン等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物として、イタコン酸ジエチル等を、それぞれ挙げることができる。
【0057】
重合体(I)を構成する単量体としては、上記の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、アルケン、ビニルシクロアルカン、及びシクロアルケンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0058】
重合体(I)において、その他の構造単位U4の含有量は、重合体(I)を構成する全構造単位に対して、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることが更に好ましい。
【0059】
耐熱性が高い有機膜を得る観点から、重合体(I)は、芳香環を有する単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位U5」ともいう)を更に含むことが好ましい。構造単位U5を与える単量体は、構造単位U1~U4のうち1種でもよく、2種以上でもよい。構造単位U5を与える単量体の具体例としては、構造単位U1~U4を与える単量体として例示した単量体の中から、芳香環を有する単量体を任意に選択して使用することができる。なお、構造単位U5が有する芳香環は、環部分に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1~5の1価の炭化水素基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基(-SR12、ただしR12は炭素数1~5のアルキル基)又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0060】
重合体(I)において、構造単位U5の含有量は、重合体(I)に含まれる全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位U5の含有量は、重合体(I)に含まれる全構造単位に対して、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましい。
【0061】
重合体(I)を合成する方法は特に限定されない。例えば、重合体不飽和炭素-炭素結合を有する単量体を重合することによって重合体(I)を得る場合、上述した単量体を用いて、適当な溶媒中、重合開始剤等の存在下、ラジカル重合、アニオン重合等の公知の方法に従い重合体(I)を製造することができる。これらのうち、ラジカル重合による場合、重合体(I)の合成を簡便に行うことができ、組成物の低コスト化を図ることができる点で好ましい。重合体(I)を得るための重合の態様は特に限定されず、ランダム重合、ブロック(共)重合等が挙げられる。
【0062】
ラジカル重合による場合、重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、反応に使用する単量体の全量100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。重合溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等を挙げることができる。重合溶媒の使用量は、反応に使用する単量体の合計量が、反応溶液の全体量に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0063】
重合において、反応温度は、通常、30℃~180℃である。反応時間は、重合開始剤及び単量体の種類や反応温度に応じて異なるが、通常、0.5~10時間である。上記反応により得られた重合体は、反応溶液に溶解された状態のまま、組成物の調製に用いられてもよいし、反応溶液から単離された後、組成物の調製に用いられてもよい。重合体の単離は、例えば、反応溶液を大量の貧溶媒中に注ぎ、これにより得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等の公知の単離方法により行うことができる。
【0064】
重合体(I)につき、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましい。Mwが1,000以上であると、耐熱性や耐薬品性等が十分に高い有機膜を得ることができる点で好ましい。Mwは、より好ましくは2,000以上であり、更に好ましくは3,000以上である。また、重合体(I)のMwは、成膜性を良好にする観点から、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは9,000以下であり、更に好ましくは8,000以下である。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
【0065】
〔溶剤〕
第1の組成物は、好ましくは、重合体(I)が溶剤に溶解又は分散されてなる液状の組成物である。第1の組成物の調製に使用する溶剤は、重合体(I)を溶解可能であって、かつ各成分と反応しない有機溶媒であることが好ましい。当該有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等を挙げることができる。
【0066】
これらの具体例としては、アルコール系溶剤として、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶剤;シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶剤;1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0067】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン(メチル-n-ペンチルケトン)、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤;2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶剤;プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶剤;γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤;シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0068】
第1の組成物の調製に使用する溶剤は、これらのうち、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ケトン系溶剤及びエステル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。中でも、溶剤がケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤であることが、溶解性の観点から好ましい。溶剤がケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤である場合、具体的には、溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン及びメチル-n-プロピルケトンよりなる群から選択される少なくとも1種と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを含む混合溶剤であることが特に好ましい。
【0069】
溶剤としてケトン系溶剤とエステル系溶剤とを含む混合溶剤を使用する場合、ケトン系溶剤(X)及びエステル系溶剤(Y)の比率(質量比)は特に限定されないが、ケトン系溶剤とエステル系溶剤との合計量100質量部(X+Y)に対して、エステル系溶剤(Y)が20~95質量部となるようにすることが好ましく、30~90質量部となるようにすることがより好ましい。
【0070】
第1の組成物に含まれる重合体(I)の量は、重合体(I)と溶剤との合計量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。重合体(I)の含有量が0.1質量%以上であると、膜厚が十分に確保された被覆膜をビア11の底部15及び内壁面12に形成することができる。また、重合体(I)の含有量は、重合体(I)と溶剤との合計量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。重合体(I)の含有量が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、また、第1の組成物の粘度が高くなりすぎず、良好な塗布性を確保することができる。
【0071】
〔他の成分〕
第1の組成物は、上述した重合体(I)及び溶剤に加え、これら以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、官能基F1を有しない重合体、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、酸化防止剤等を挙げることができる。他の成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択することができる。
【0072】
第1の組成物は、その固形分濃度(組成物中の溶剤以外の成分の合計質量が、組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に設定することができる。第1の組成物の固形分濃度は、好ましくは0.1~30質量%の範囲である。固形分濃度が0.1質量%以上であると、有機膜の膜厚を十分に確保できる点で好適である。また、固形分濃度が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、更に第1の組成物の粘性を適度に高くできることによって良好な塗布性を確保できる点で好適である。第1の組成物の固形分濃度は、より好ましくは0.5~20質量%であり、更に好ましくは0.7~10質量%である。
【0073】
<第2の組成物>
次に、第2の組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。第2の組成物は、有機膜17のうち第2層17bを形成するために用いられる重合体組成物である。第2の組成物は、重合体(I)が架橋性基を有する場合に、重合体(I)が有する架橋性基と結合を形成し得る官能基(以下、「官能基F2」ともいう)を有する重合体(II)と、溶剤とを含有することが好ましい。有機膜17を第1層17aと第2層17bとの積層膜とし、第1層17aと第2層17bとの間に架橋構造を形成させることにより、耐熱性及び絶縁破壊耐性に優れた有機膜を形成することができる。なお、官能基F2が「第3の官能基」に相当する。
【0074】
〔重合体(II)〕
・官能基F2
重合体(II)が有する官能基F2は、重合体(I)が有する架橋性基と反応して結合を形成し得る官能基であればよく、特に限定されない。第1の組成物及び第2の組成物の保存安定性を良好に保ちながら、めっき層18との密着性に優れた有機膜を形成できる点で、官能基F2は、オキサゾリン基及びエポキシ基のうち少なくとも一方であることが好ましい。なお、本明細書において、「エポキシ基」はオキシラニル基及びオキセタニル基を含む意味である。
【0075】
中でも特に、重合体(I)が、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種の架橋性基を有し、かつ、官能基F2が、オキサゾリン基及びエポキシ基のうち少なくとも一方であることが好ましい。この場合、重合体(I)が有する架橋性基と官能基F2との反応により架橋構造が形成されることにより、有機膜17の絶縁破壊耐性を向上できる。また、酸無水物基又は保護されたカルボキシ基と、オキサゾリン基との反応ではアミド基が生成され、アミド結合による相互作用によって絶縁破壊耐性を更に向上できると考えられる。さらに、重合体(I)が酸無水物基を有する場合、架橋反応により生成されたカルボキシ基によってめっき層18との密着性を更に向上できる点で好適である。重合体(I)が有する架橋性基と官能基F2との反応により生成されたカルボキシ基は官能基FM(第2の官能基)に相当する。
【0076】
なお、保護されたカルボキシ基を架橋性基として重合体(I)に導入し、官能基FMとしてカルボキシ基を有する有機膜17を得る場合、重合体(I)が有する架橋性基の数が、重合体(II)が有する官能基F2の数よりも多くなるよう設計することにより、架橋反応後において有機膜17が官能基FMを有するようにしてもよい。
【0077】
重合体(II)の主骨格は特に限定されない。耐熱性に優れる点、及び単量体の選択の自由度が高く、官能基F2の導入を比較的容易に行うことができる点で、重合体(II)は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体を用いて得られる重合体であることが好ましい。重合体(II)は、官能基F2を有する構造単位(以下、「構造単位U6」ともいう)を含むことが好ましい。
【0078】
構造単位U6を与える単量体としては、エポキシ基を有する単量体として、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、4-グリシジルスチレン、3-グリシジルスチレン、(3-エチルオキセタン-3-イル)(メタ)アクリレート、(オキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等を;
オキサゾリン基を有する単量体として、2-ビニル-2-オキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等を、それぞれ挙げることができる。
【0079】
重合体(II)において、構造単位U6の含有量は、重合体(II)を構成する全構造単位に対して、3モル%以上であること好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましい。構造単位U6の含有量を3モル%以上とすることにより、絶縁破壊耐性及びめっき層18との密着性の改善効果を十分に得ることができる点で好適である。また、構造単位U6の含有量は、良好な基質選択性を確保する観点から、重合体(II)を構成する全構造単位に対して、40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることが更に好ましい。構造単位U6の含有量が上記範囲であると、重合体(II)中に官能基F2が均等に導入されることによって、被覆膜における官能基F2のムラを抑制でき、永久膜としての使用も可能になる点で好ましい。
【0080】
・その他の構造単位
重合体(II)は、構造単位U6と共に、構造単位U6とは異なる構造単位(以下、「その他の構造単位U7」ともいう)を更に含んでいてもよい。その他の構造単位U7は、構造単位U6と共重合可能であればよく、特に限定されない。その他の構造単位U7を与える単量体は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体が好ましい。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、複素環構造を有するビニル化合物、共役ジエン化合物、窒素含有ビニル化合物、アルケン、ビニルシクロアルカン、シクロアルケン、及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体を挙げることができる。これらの具体例及び好ましい例示としては、重合体(I)の説明で例示した単量体と同様の化合物が挙げられる。
【0081】
重合体(II)において、その他の構造単位U7の含有量は、重合体(II)を構成する全構造単位に対して、97モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、90モル%以下であることが更に好ましい。
【0082】
耐熱性が高い有機膜を得る観点から、重合体(II)は、芳香環を有する単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位U8」ともいう)を更に含むことが好ましい。構造単位U8を与える単量体は、構造単位U6及び構造単位U7のうち1種でもよく、2種以上でもよい。構造単位U8を与える単量体の具体例としては、構造単位U6及び構造単位U7を与える単量体として例示した単量体の中から、芳香環を有する単量体を任意に選択して使用することができる。重合体(II)において、構造単位U8の含有量は、重合体(II)に含まれる全構造単位に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。
【0083】
なお、重合体(II)の合成方法もまた、重合体(I)と同様、特に限定されない。重合体(II)の合成方法の詳細については重合体(I)と同様である。
【0084】
重合体(II)につき、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、800以上であることが好ましい。Mwが800以上であると、耐熱性や耐薬品性等が十分に高い有機膜を得ることができる点で好ましい。Mwは、より好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは1,500以上である。また、重合体(II)のMwは、成膜性を良好にする観点から、好ましくは8,000以下であり、より好ましくは7,000以下であり、更に好ましくは6,000以下である。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
【0085】
〔溶剤〕
第2の組成物は、好ましくは、重合体(II)が溶剤に溶解又は分散されてなる液状の組成物である。第2の組成物の調製に使用する溶剤は、重合体(II)を溶解可能であって、かつ各成分と反応しない有機溶媒であることが好ましい。当該有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤の具体例及び好ましい例としては、第1の組成物の調製に使用することができる溶剤の具体例及び好ましい例として説明した化合物と同様のものが挙げられる。
【0086】
第2の組成物に含まれる重合体(II)の量は、重合体(II)と溶剤との合計量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。重合体(II)の含有量が0.1質量%以上であると、膜厚が十分に確保された被覆膜を形成できる点で好ましい。また、重合体(II)の含有量は、重合体(II)と溶剤との合計量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。重合体(II)の含有量が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、また、第2の組成物の粘度が高くなりすぎず、良好な塗布性を確保することができる。
【0087】
〔他の成分〕
第2の組成物は、上述した重合体(II)及び溶剤に加え、これら以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、官能基F2を有しない重合体、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、酸化防止剤等を挙げることができる。他の成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択することができる。
【0088】
第2の組成物の固形分濃度は、好ましくは0.1~30質量%の範囲である。固形分濃度が0.1質量%以上であると、有機膜の膜厚を十分に確保できる点で好適である。また、固形分濃度が30質量%以下であると、有機膜の膜厚が過大となりすぎず、また、第2の組成物の粘性を適度に高くできることによって良好な塗布性を確保できる。第2の組成物の固形分濃度は、より好ましくは0.5~20質量%であり、更に好ましくは0.7~10質量%である。
【0089】
<第3の組成物>
次に、第3の組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。第3の組成物は、絶縁層14が表層に有する基と相互作用し得る官能基F1と、めっき層18に含まれる金属元素と結合を形成可能な官能基FM又は加熱により官能基FMを生じる官能基FPとを有する重合体(III)、及び溶剤を含有する。重合体(III)が有する官能基FM及び官能基FPは、官能基F1とは異なる官能基であることが好ましい。例えば、重合体(III)は、官能基FMとして、絶縁層14が表層に有する基との相互作用を示さない基を有していてもよい。
【0090】
重合体(III)の主骨格は特に限定されないが、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体を用いて得られる重合体が好ましい。重合体(III)の具体例としては、〔1〕官能基F1を有する構造単位と、官能基FM又は官能基FPを有する構造単位とを含む重合体、〔2〕官能基F1を有する構造単位を含み、かつ重合体末端に官能基FM又は官能基FPを有する重合体等が挙げられる。なお、重合体(III)の合成方法もまた、重合体(I)及び(II)と同様、特に限定されない。重合体(III)の合成方法の詳細については、重合体(I)の合成方法の説明を援用することができる。
【0091】
重合体(III)は、架橋性基を有することが好ましい。この場合、重合体(III)が有する架橋性基は、その重合体(III)が有する官能基FM及び官能基FPとは異なる基である。重合体(III)が架橋性基を有する場合、重合体(III)は、官能基FM又は官能基FPとして、めっき層18に含まれる金属と結合を形成し、かつ架橋性を示さない基を有していてもよい。なお、架橋性基は官能基F1とは異なる基である。
【0092】
重合体(III)の好ましい1つの態様は、上述した構造単位U1と、構造単位U2と、官能基FM又は官能基FP(ただし、官能基F1及び架橋性基とは異なる基である)を有する構造単位と、を含む重合体である。重合体(III)が有する官能基F1及び構造単位U1の詳細は、第1の組成物に含まれる重合体(I)が有する官能基F1及び構造単位U1の具体例及び好ましい例の説明と同様である。重合体(III)が有する架橋性基の詳細は、重合体(I)が有していてもよい架橋性基の説明と同様である。これらのうち、架橋性基としては、同種の基同士で結合を形成可能な基を好ましく使用できる。なお、重合体(III)における各構造単位の好ましい含有量については、重合体(I)における各構造単位において説明した範囲と同様である。
【0093】
重合体(III)において、官能基FM又は官能基FPを有する構造単位としては、カルボキシ基、保護されたカルボキシ基、スルフィド基、ジチオカルボニル基、チオウレタン基又はチオアミド基を有する単量体に由来する構造単位等を挙げることができる。重合体(III)が有する官能基FM又は官能基FPは、めっき層18との密着性の観点から、中でも、カルボキシ基、保護されたカルボキシ基及びスルフィド基よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、スルフィド基がより好ましい。重合体(III)において、官能基FM又は官能基FPを有する構造単位の含有量は、重合体(III)を構成する全構造単位に対して、5モル%以上であること好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。また、当該構造単位の含有量は、重合体(III)を構成する全構造単位に対して、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。
【0094】
第3の組成物もまた、上述した重合体(III)及び溶剤に加え、重合体(III)及び溶剤以外の他の成分が配合されていてもよい。他の成分としては、例えば、官能基F1を有しない重合体、熱酸発生剤(TAG)、界面活性剤、酸化防止剤等を挙げることができる。熱酸発生剤の具体例としては、例えばノナフルオロブタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム等が挙げられる。第3の組成物に熱酸発生剤を配合する場合、その配合量は、熱酸発生剤の配合による効果を得つつ、第3の組成物を基材に塗布する際にハジキを抑制する観点から、第3の組成物の全量に対し、10モル%以下が好ましく、1~5モル%がより好ましい。
【0095】
有機膜17が単層膜である構成によれば、ビア11の内面に有機膜を形成する工程をできるだけ少なくでき、製造プロセスの簡略化を図ることができる。また、ビア11の内面に形成される有機膜の更なる薄膜化を図りながら、めっき層18との密着性に優れた有機膜をビアの内面に形成することができる。
【0096】
《積層膜形成用キット》
本発明の積層膜形成用キット(以下、単に「膜形成用キット」ともいう)は、多層配線基板の製造工程において、ビア11の内部にめっき層18を形成する際の前処理に用いられるものであり、特に、Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板の製造工程において好適である。当該キットは、上述した重合体(I)と重合体(II)とを含むものであれば、その態様は特に限定されない。本発明の膜形成用キットの一態様は、重合体(I)を含む第1剤と、重合体(II)を含む第2剤とを備えるキットである。この場合、第1剤は第1の組成物であって、第2剤は第2の組成物であることが好ましい。
【0097】
こうした本発明の膜形成用キットによれば、基板上に多層配線を形成する配線形成工程において、ビア11の底部15及び内壁面12に有機膜17(第1層17a及び第2層17b)を形成することができる。この有機膜17はバリア層として機能し、ビア内部に埋め込まれた金属元素の絶縁層14への拡散を抑制することができる。また、有機膜17で被覆されたビア11の内部に、めっき処理により金属を埋め込む方法によれば、ボイドやシームの発生が少ないめっき層18を形成することができる。したがって、本発明の膜形成用キットによれば、信頼性の高いデバイスを得ることができる。
【0098】
《組成物》
本発明の組成物は、多層配線基板の製造工程において、ビア11の内部にめっき処理により金属を埋め込む前処理に用いられる組成物である。本組成物は特に、Co、Ni、W及びRuよりなる群から選択される1種以上を含む配線を備える多層配線基板の製造工程において好適に用いることができる。当該組成物は、酸無水物基及び保護されたカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種である架橋性基と官能基F1(ただし、架橋性基を除く。)とを有する重合体、及び溶剤を含有する。重合体及び溶剤の詳細については上述したとおりである。こうした組成物によれば、絶縁層14との密着性及びめっき層18との密着性に優れた有機膜をビア11の底部15及び内壁面12に形成することができる。
【実施例0099】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0100】
以下の実施例及び比較例において、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法は以下のとおりである。
[重量平均分子量及び数平均分子量]
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0101】
1a.モノマーの合成
[メチル(4-ビニルフェニル)スルファンの合成]
ジムロート、滴下ロートを備えた500ml三口フラスコに、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド32.2g(90.2mmol)、水素化ナトリウム4.32g(90.2mmol)、dry THF 150mlを窒素雰囲気下で室温にて1時間撹拌し、イリド合成した。つぎに、4-メトリチオベンズアルデヒド11.4g(75.1mmol)とdry THF 150mlを滴下し、窒素雰囲気下で室温にて5時間撹拌し、薄い黄色の懸濁液を得た。次に、ジイソプロピルエーテル50gを加え、塩、フォスフィンオキサイドを析出させ、ひだ折ろ紙よりろ過し、ろ液を濃縮した。ろ液をCH2Cl2/brineで3回洗浄し、有機層を回収、さらにn-ヘキサン/酢酸エチル=10/1 30gを加えて塩を析出させ、ろ過したものをカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製した。収率は71%、構造確認は1H NMRにより行った。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ; 7.33 (Ph, m, 2H), 7.24(Ph, m, 2H), 6.72 (CH, q, 1H), 5.76 (CH2, d, 1H), 5.25 (CH2, d, 1H), 2.38 (CH3, s, 3H).
【0102】
1.重合体の合成
[合成例1]重合体(A-1)の合成
500mLのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを窒素雰囲気下で注入し、-78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec-ブチルリチウム(sec-BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL注入し、その後、重合禁止剤除去のため、シリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mLを30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が-60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、3-ブロモプロピオニトリルを0.19ml注入し、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮してメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体11.9gを得た。得られた重合体は、Mwが5,600、Mnが5,200、Mw/Mnが1.08であった。
【化5】
【0103】
[合成例2]重合体(A-2)の合成
500mLのフラスコ反応容器を減圧乾燥した後、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを窒素雰囲気下で注入し、-78℃まで冷却した。このTHFにsec-ブチルリチウム(sec-BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.40mL注入し、さらに、重合禁止剤除去のため予めシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン99.9mL、4-ビニルベンゾシクロブテン3.24gを30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。滴下終了後、30分間熟成した。さらにヘキサメチルシクロトリシロキサン1.0gを加え、30分間熟成し、メタノール1mlを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮してMIBKで置換した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を5回繰り返した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A-5)11.2gを得た。得られた重合体(A-2)は、Mwが6,200、Mnが6,000、Mw/Mnが1.04であった。
【化6】
【0104】
[合成例3]重合体(A-3)の合成
窒素置換した300ml三口フラスコに1,4-ジオキサン10gとマグネチックスターラーバーを入れ、80℃に加温した。続いて、スチレン5.10g、4-(1-プロポキシエチル)ビニル安息香酸エステル3.28g、N-ビニルカルバゾール1.35g、2,2-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)0.48g(全モノマーの合計のモル数に対して3mol%)、メチルイソブチルケトン20gを3時間かけて等速滴下した。その後、3時間熟成させた。得られた重合液につき、500gのメタノールへ沈殿精製することで白色固体を析出させ、ブフナーロートにてろ取した後、減圧乾燥することで重合体(A-3)5.63gを回収した。得られた重合体(A-3)は、Mwが4,000、Mnが3,000、Mw/Mnが1.33であった。
【化7】
【0105】
[合成例4]重合体(A-4)の合成
窒素置換した300ml三口フラスコに1,4-ジオキサン10gとマグネチックスターラーバーを入れ、80℃に加温した。続いて、スチレン5.10g、無水マレイン酸1.96g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、4-ジメチルメトキシシリルスチレン1.93g、2,2-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(全モノマーの合計のモル数に対して2mol%)、メチルイソブチルケトン20gを3時間かけて等速滴下した。その後、3時間熟成させた。得られた重合液につき、500gのジイソプロピルエーテルへ沈殿精製することで白色固体を析出させ、ブフナーロートにてろ取したのち、減圧乾燥することで重合体(A-4)7.31gを回収した。得られた重合体(A-4)は、Mwが4,660、Mnが3,140、Mw/Mnが1.48であった。
【化8】
【0106】
[合成例5]重合体(A-5)の合成
窒素置換した300ml三口フラスコに1,4-ジオキサン10gとマグネチックスターラーバーを入れ、80℃に加温した。続いて、スチレン8.32g、イソプロペニルオキサゾリン2.22g、2,2-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(全モノマーの合計のモル数に対して2mol%)、メチルイソブチルケトン20gを3時間かけて等速滴下した。その後、3時間熟成させた。得られた重合液につき、500gのヘキサンへ沈殿精製することで白色固体を析出させ、ブフナーロートにてろ取したのち、減圧乾燥することで重合体(A-5)4.31gを回収した。得られた重合体(A-5)は、Mwが3,140、Mnが2,410、Mw/Mnが1.30であった。
【化9】
【0107】
[合成例6]重合体(A-6)の合成
窒素置換した300ml三口フラスコにメチルエチルケトン10gとマグネチックスターラーバーを入れ、80℃に加温した。続いて、スチレン9.37g、4-グリシジルスチレン1.76g、2,2-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(全モノマーの合計のモル数に対して2mol%)、メチルイソブチルケトン20gを3時間かけて等速滴下した。その後、3時間熟成させた。得られた重合液につき、500gのヘキサンへ沈殿精製することで白色固体を析出させ、ブフナーロートにてろ取したのち、減圧乾燥することで重合体(A-6)4.36gを回収した。得られた重合体(A-6)は、Mwが3,090、Mnが2,240、Mw/Mnが1.38であった。
【化10】
【0108】
[合成例7]重合体(A-7)の合成
窒素置換した300ml三口フラスコに1,4-ジオキサン10gとマグネチックスターラーバーを入れ、80℃に加温した。続いて、スチレン5.10g、メチル(4-ビニルフェニル)スルファン3.00g、4-ビニルベンゾシクロブテン2.60g、4-ジメチルメトキシシリルスチレン1.93g、2,2-ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(全モノマーの合計のモル数に対して2mol%)、メチルイソブチルケトン20gを3時間かけて等速滴下した。その後、3時間熟成させた。得られた重合液につき、500gのジイソプロピルエーテルへ沈殿精製することで白色固体を析出させ、ブフナーロートにてろ取したのち、減圧乾燥することで重合体(A-7)6.38gを回収した。得られた重合体(A-7)は、Mwが4220、Mnが3140、Mw/Mnが1.34であった。
【化11】
【0109】
2.表面修飾用組成物の調製
[調製例1~7]
重合体(A-1)1.20gに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート98.8g(PGMEA)を加え、撹拌したのち、0.45μmの細孔を有する高密度ポリエチレンフィルターにて濾過することにより組成物(S-1)を調製した。また同様に、組成物(S-2)~(S-7)をそれぞれ調製した(表1参照)。
【0110】
【0111】
表1中、溶剤の略称は以下の化合物を表す。
B-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B-2:メチルエチルケトン
【0112】
3.評価
[実施例1]
<成膜>
12インチlow-k基板(アドバンテック社製)を3cm×3cmに裁断し、N2/3%H2アッシングプロセスを(アルバック社製、LuminousNA-1300、チャンバー圧;30Pa、フローレート;300sccm、処理時間;5分)にて行った。続いて、アッシング処理を行った基板面上に、スピンコーター(ミカサ社製、MS-B300)を用いて、組成物(S-3)を1,500rpm、20秒間にてスピンコートし、窒素フロー下、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未吸着の重合体を除去した。
次に、組成物(S-3)による膜形成面に組成物(S-5)を1,500rpm、20秒間の条件にてスピンコートし、窒素フロー下、250℃で300秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未架橋の重合体を除去した。
さらに、12インチlow-k基板に代えて、12インチTEOS基板(アドバンテック社製)を3cm×3cmに裁断したクーポン基板、及び12インチ熱酸化ケイ素基板(アドバンテック社製)を3cm×3cmに裁断したクーポン基板をそれぞれ用いて上記と同様の処理を行った後、成膜を行った。
【0113】
<無電解めっきNi密着試験>
300mlポリプロピレン製ビーカーに、超純水100g、硫酸ニッケル(II)6水和物2.5g、次亜リン酸ナトリウム水和物2.0g、酢酸ナトリウム3水和物1g、クエン酸三ナトリウム二水和物1.0gを加え、pH=10~10.5とした水溶液を準備し、90℃に温調した。次に、組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜をもつlow-k基板を1分間浸漬させ、無電解めっきを行った。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。次に、めっきNi膜にカッターにて格子状に傷を入れたのち、セロハンテープにて密着剥離試験を行い、テープ側に金属膜が剥がれてこないものを「○」、剥がれるものを「×」とした。TEOS基板及び熱酸化ケイ素基板上に組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜を形成した基板についても同様に評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0114】
[実施例2~4及び比較例1~4]
使用する表面修飾用組成物を表2に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、成膜及び無電解めっきNi密着試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0115】
[実施例17]
使用する表面修飾用組成物を表2に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、成膜及び無電解めっきNi密着試験を行った。なお、表2中、「None」は、該当する欄の成膜を行わなかったことを表す(表3~5についても同じ)。評価結果を表2に示す。
【0116】
【0117】
[実施例5]
<成膜>
12インチlow-k基板、12インチTEOS基板、及び12インチ熱酸化ケイ素基板のそれぞれに対し、組成物(S-3)及び組成物(S-5)を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより成膜を行った。
【0118】
<無電解めっきCo/W合金密着試験>
300mlポリプロピレン製ビーカーに、超純水100g、水酸化カリウム2.0g、塩化コバルト(II)6水和物2.4g、次亜リン酸ナトリウム水和物2.0g、クエン酸三ナトリウム二水和物8.8g、タングステン酸ナトリウム1.0g、ジメチルアミノボラン0.12gを加え、pH=8.5~10.5とした水溶液を準備し、70℃に温調した。次に、組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜をもつlow-k基板を3分間浸漬させ、無電解めっきを行った。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。次に、めっきCo/W合金膜にカッターにて格子状に傷を入れたのち、セロハンテープにて密着剥離試験を行い、テープ側に金属膜が剥がれてこないものを「○」、剥がれるものを「×」とした。TEOS基板及び熱酸化ケイ素基板上に組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜を形成した基板についても同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0119】
[実施例6~8及び比較例5~8]
使用する表面修飾用組成物を表3に記載のとおり変更した以外は実施例5と同様にして、成膜及び無電解めっきCo/W合金密着試験を行った。評価結果を表3に示す。
【0120】
[実施例18]
使用する表面修飾用組成物を表3に記載のとおり変更した以外は実施例5と同様にして、成膜及び無電解めっきCo/W合金密着試験を行った。評価結果を表3に示す。
【0121】
【0122】
[実施例9]
<成膜>
12インチlow-k基板、12インチTEOS基板、及び12インチ熱酸化ケイ素基板のそれぞれに対し、組成物(S-3)及び組成物(S-5)を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより成膜を行った。
【0123】
<無電解めっきRu密着試験>
300mlポリプロピレン製ビーカーに、NP-1900(三明化成株式会社製、ルテニウムめっき液)を注ぎ、70℃に温調した。次に、組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜をもつlow-k基板を3分間浸漬させ、無電解めっきを行った。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。次に、めっきRu膜にカッターにて格子状に傷を入れたのち、セロハンテープにて密着剥離試験を行い、テープ側に金属膜が剥がれてこないものを「○」、剥がれるものを「×」とした。TEOS基板及び熱酸化ケイ素基板上に組成物(S-3)と組成物(S-5)にて架橋反応させた膜を形成した基板についても同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0124】
[実施例10~12及び比較例9~12]
使用する表面修飾用組成物を表4に記載のとおり変更した以外は実施例9と同様にして、成膜及び無電解めっきRu密着試験を行った。評価結果を表4に示す。
【0125】
[実施例19]
使用する表面修飾用組成物を表4に記載のとおり変更した以外は実施例9と同様にして、成膜及び無電解めっきRu密着試験を行った。評価結果を表4に示す。
【0126】
【0127】
表2~4の結果から明らかなように、官能基F1(第1の官能基)を有する重合体(I)を用いて形成し、かつ官能基FM(第2の官能基)を有する有機膜とした実施例1~12は、密着試験においてセロハンテープ側に金属膜が剥がれず、有機膜と金属膜との密着性に優れていた。これに対し、官能基F1及び官能基FMのうち少なくともいずれかを有しない有機膜とした比較例1~12は、密着試験においてセロハンテープ側に金属膜が剥がれてしまい、金属膜と有機膜との密着性に劣っていた。
【0128】
また、重合体(III)を用いて有機膜を形成した実施例17~19についても、密着試験においてセロハンテープ側に金属膜が剥がれず、有機膜と金属膜との密着性に優れていた。
【0129】
[実施例13]
<底面Ni付きトレンチビアパターン埋め込み検討>
側壁が熱酸化ケイ素、底面にニッケル薄膜を備えた幅50nm/深さ100nmからなるトレンチビアパターンをもつ12インチ基板(アドバンストマテリアルテクノロジー社製)を3cm×3cmに裁断し、2.38%トリメチルアンモニウム水酸化物水溶液に10分浸漬させた。続いて、超純水に浸漬させてアルカリを除去し、表面改質を完了した。この基板に組成物(S-3)を塗布し、1,500rpm、20秒間の条件にてスピンコート(ミカサ社製、MS-B300)し、窒素フロー下、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、オキサイドへ未吸着の重合体を除去した。
次に、組成物(S-5)を同じく1,500rpm、20秒間スピンコートし、窒素フロー下、250℃で300秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未架橋の重合体を除去した。以上の操作により、ビアの底面及び内壁面に組成物(S-3)及び組成物(S-5)により不溶化した膜を付与した。
この基板を無電解めっきNi液に浸漬させ、トレンチへNiを成長させた。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。得られた基板について断面SEM観察を行い、トレンチにボイドなくNiが埋め込まれていることを確認した。広角視野より10個のトレンチすべてが埋め込まれているものを「○」、埋め込み不良のあるものを「×」とした。評価結果を表5に示す。
【0130】
<底面W付きトレンチビアパターン埋め込み検討>
側壁が熱酸化ケイ素、底面にタングステン薄膜を備えた幅50nm/深さ100nmからなるトレンチビアパターンをもつ12インチ基板(アドバンストマテリアルテクノロジー社製)を3cm×3cmに裁断し、2.38%トリメチルアンモニウム水酸化物水溶液に10分浸漬させた。続いて、超純水に浸漬させてアルカリを除去し、表面改質を完了した。この基板に組成物(S-3)を塗布し、1,500rpm、20秒間の条件にてスピンコート(ミカサ社製、MS-B300)し、窒素フロー下、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、オキサイドへ未吸着の重合体を除去した。
次に、組成物(S-5)を同じく1,500rpm、20秒間スピンコートし、窒素フロー下、250℃で300秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未架橋の重合体を除去した。以上の操作により、ビアの底面及び内壁面に組成物(S-3)及び組成物(S-5)により不溶化した膜を付与した。
この基板を無電解めっきCo/W液に浸漬させ、トレンチへCo/W合金を成長させた。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。得られた基板について断面SEM観察を行い、トレンチにボイドなくCo/Wが埋め込まれていることを確認した。広角視野より10個のトレンチすべてが埋め込まれているものを「○」、埋め込み不良のあるものを「×」とした。評価結果を表5に示す。
【0131】
<底面Ru付きトレンチビアパターン埋め込み検討>
側壁が熱酸化ケイ素、底面にルテニウム薄膜を備えた幅50nm/深さ100nmからなるトレンチビアパターンをもつ12インチ基板(アドバンストマテリアルテクノロジー社製)を3cm×3cmに裁断し、2.38%トリメチルアンモニウム水酸化物水溶液に10分浸漬させた。続いて、超純水に浸漬させてアルカリを除去し、表面改質を完了した。この基板に組成物(S-3)を塗布し、1,500rpm、20秒間の条件にてスピンコート(ミカサ社製、MS-B300)し、窒素フロー下、150℃で180秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、オキサイドへ未吸着の重合体を除去した。
次に、組成物(S-5)を同じく1,500rpm、20秒間スピンコートし、窒素フロー下、250℃で300秒間焼成した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより基板を洗浄し、未架橋の重合体を除去した。以上の操作により、ビアの底面及び内壁面に組成物(S-3)及び組成物(S-5)により不溶化した膜を付与した。
この基板を無電解めっきRu液に浸漬させ、トレンチへRuを成長させた。めっき着装後、超純水で基板を洗浄したのち、150Cdeg.の減圧オーブンにて30分ベークを行った。得られた基板について断面SEM観察を行い、トレンチにボイドなくRuが埋め込まれていることを確認した。広角視野より10個のトレンチすべてが埋め込まれているものを「○」、埋め込み不良のあるものを「×」とした。評価結果を表5に示す。
【0132】
[実施例14~16及び比較例13~16]
使用する表面修飾用組成物を表5に記載のとおり変更した以外は実施例13と同様にして、底面Ni付きトレンチビアパターン埋め込み検討、底面W付きトレンチビアパターン埋め込み検討、及び底面Ru付きトレンチビアパターン埋め込み検討を行った。評価結果を表5にまとめた。
【0133】
[実施例20~23]
使用する表面修飾用組成物を表5に記載のとおり変更した以外は実施例13と同様にして、底面Ni付きトレンチビアパターン埋め込み検討、底面W付きトレンチビアパターン埋め込み検討、及び底面Ru付きトレンチビアパターン埋め込み検討を行った。評価結果を表5にまとめた。
【0134】
【0135】
表5の結果から分かるように、本製造方法によりビアに金属埋め込みを行った実施例13~16、20~23は、トレンチにボイドがなく、金属埋め込み性が良好であった。これに対し、ビア内面に有機膜を形成する際に、組成物(S-1)のみを用いた比較例13、組成物(S-2)のみを用いた比較例14、組成物(S-2)及び組成物(S-5)を用いた比較例15、並びに組成物(S-2)及び組成物(S-6)を用いた比較例16は、トレンチにボイドが発生し、金属埋め込み性に劣っていた。