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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133015
(43)【公開日】2022-09-13
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220906BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 D
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021031806
(22)【出願日】2021-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英和
(72)【発明者】
【氏名】海老名 和広
(72)【発明者】
【氏名】川崎 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 聖樹
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB02
5E070CB13
5E070CB17
(57)【要約】
【課題】スルーホールの断線の発生を抑制できる積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1では、第1,第2の導体パターン12,16のそれぞれは、積層方向に互いに重なり合う並列部分P1と、互いに重なり合わない非並列部分P2とを有している。一の組の第1,第2の導体パターン12,16の並列部分P1,P1同士は、第1のスルーホールT1によって接続され、積層方向に隣り合う組の第1,第2の導体パターン12,16の非並列部分P2,P2同士は、第2のスルーホールT2によって接続されている。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造をなす絶縁性の素体の内部にコイル部を含む積層コイル部品であって、
前記コイル部は、第1の導体パターンを有する第1の導体パターン層及び第2の導体パターンを有する第2の導体パターン層を含む複数の組を有し、
前記第1の導体パターン及び前記第2の導体パターンのそれぞれは、積層方向に互いに重なり合う並列部分と、前記積層方向に互いに重なり合わない非並列部分と、導体パターン間の接続に用いられるパッド部とを有し、
一の組において、前記第1の導体パターンの前記並列部分と前記第2の導体パターンの前記並列部分とに設けられた第1のパッド部同士が第1のスルーホールを介して接続され、
前記一の組の前記第1の導体パターンの前記非並列部分に設けられた第2のパッド部と、前記一の組に対して前記積層方向の一方側に位置する組の前記第2の導体パターンの前記非並列部分に設けられた第3のパッド部とが第2のスルーホールを介して接続され、
前記一の組の前記第2の導体パターンの前記非並列部分に設けられた前記第3のパッド部と、前記一の組に対して前記積層方向の他方側に位置する組の前記第1の導体パターンの前記非並列部分に設けられた前記第2のパッド部とが前記第2のスルーホールを介して接続されている積層コイル部品。
【請求項2】
前記一の組において、前記第2のパッド部と前記第3のパッド部とは、前記積層方向に互いに重なり合っている請求項1記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記一の組において、前記第2のパッド部と前記第3のパッド部との層間には、空隙が存在している請求項1又は2記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記一の組において、前記第2のパッド部における前記第3のパッド部側の面、及び前記第3のパッド部における前記第2のパッド部側の面の少なくとも一方に凹部が設けられている請求項1~3のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記一の組における前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間の前記積層方向の間隔は、前記一の組の前記第1の導体パターンと前記一の組に対して前記積層方向の一方側に位置する組の前記第2の導体パターンとの間の前記積層方向の間隔、及び前記一の組の前記第2の導体パターンと前記一の組に対して前記積層方向の他方側に位置する組の前記第1の導体パターンとの間の前記積層方向の間隔よりも小さくなっている請求項1~4のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記素体は、複数の金属磁性粒子を含む磁性体層を積層することによって構成され、
前記一の組における前記第2のパッド部と前記第3のパッド部との間の前記金属磁性粒子の個数は、前記一の組における前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間に位置する前記金属磁性粒子の個数よりも多くなっている請求項1~5のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、例えば特許文献1に記載の積層インダクタがある。この従来の積層インダクタは、複数の絶縁体層からなる積層体と、積層体の外側に形成された外部電極と、積層体の内部にスパイラル上に形成されたコイル導体と、を備えている。コイル本体を構成する導体パターンは、C字状パターンとI字状パターンの2種類のみとなっており、C字状パターンの個数がI字状パターンの個数よりも多くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-162101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の積層インダクタでは、同じ導体パターンを有する層が積層方向に重なり合っている。このため、積層方向に隣り合う層の導体パターンを接続するスルーホールも同じ位置で積層方向に連続し、同じ位置での導体ボリュームが増大するという問題がある。導体ボリュームが増大した位置では、応力が付加され易いため、熱膨張或いは熱収縮などが生じた際にスルーホールに断線が発生し易くなることが考えられる。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、スルーホールの断線の発生を抑制できる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る積層コイル部品は、積層構造をなす絶縁性の素体の内部にコイル部を含む積層コイル部品であって、コイル部は、第1の導体パターンを有する第1の導体パターン層及び第2の導体パターンを有する第2の導体パターン層を含む複数の組を有し、第1の導体パターン及び第2の導体パターンのそれぞれは、積層方向に互いに重なり合う並列部分と、積層方向に互いに重なり合わない非並列部分と、導体パターン間の接続に用いられるパッド部とを有し、一の組において、第1の導体パターンの並列部分と第2の導体パターンの並列部分とに設けられた第1のパッド部同士が第1のスルーホールを介して接続され、一の組の第1の導体パターンの非並列部分に設けられた第2のパッド部と、一の組に対して積層方向の一方側に位置する組の第2の導体パターンの非並列部分に設けられた第3のパッド部とが第2のスルーホールを介して接続され、一の組の第2の導体パターンの非並列部分に設けられた第3のパッド部と、一の組に対して積層方向の他方側に位置する組の第1の導体パターンの非並列部分に設けられた第2のパッド部とが第2のスルーホールを介して接続されている。
【0007】
この積層コイル部品では、一の組の第1の導体パターン及び第2の導体パターンを接続する第1のスルーホールが並列部分に設けられた第1のパッド部同士を接続し、一の組と当該一の組に隣接する組の第1の導体パターン及び第2の導体パターンを接続する第2のスルーホールが非並列部分に設けられた第2,第3のパッド部を接続している。これにより、この積層コイル部品では、積層方向から見た場合に、第1のスルーホールの位置と第2のスルーホールの位置とを分散させることができる。スルーホールの位置を分散させることで、同じ位置での導体ボリュームが増大することを回避できる。したがって、熱膨張或いは熱収縮などが生じた場合でも、スルーホールの断線の発生を抑制できる。
【0008】
一の組において、第2のパッド部と第3のパッド部とは、積層方向に互いに重なり合っていてもよい。この場合でも、第1のスルーホールの位置と第2のスルーホールの位置との分散関係が維持される一方、第1の導体パターン及び第2の導体パターンの対称性が高められ、パターンの簡単化が図られる。
【0009】
一の組において、第2のパッド部と第3のパッド部との層間には、空隙が存在していてもよい。この場合、空隙によって第2のパッド部と第3のパッド部との層間の電気抵抗率を素体材料よりも高くすることができ、積層コイル部品の耐電圧を向上できる。
【0010】
一の組において、第2のパッド部における第3のパッド部側の面、及び第3のパッド部における第2のパッド部側の面の少なくとも一方に凹部が設けられていてもよい。この場合、凹部によって第2のパッド部と第3のパッド部との層間を十分に確保でき、積層コイル部品の耐電圧を向上できる。
【0011】
一の組における第1の導体パターンと第2の導体パターンとの間の積層方向の間隔は、一の組の第1の導体パターンと一の組に対して積層方向の一方側に位置する組の第2の導体パターンとの間の積層方向の間隔、及び一の組の第2の導体パターンと一の組に対して積層方向の他方側に位置する組の第1の導体パターンとの間の積層方向の間隔よりも小さくなっていてもよい。この場合、積層方向に隣り合う組の層間を十分に確保でき、積層コイル部品の耐電圧を向上できる。
【0012】
素体は、複数の金属磁性粒子を含む磁性体層を積層することによって構成され、一の組における第2のパッド部と第3のパッド部との間の金属磁性粒子の個数は、一の組における第1の導体パターンと第2の導体パターンとの間に位置する金属磁性粒子の個数よりも多くなっていてもよい。第2のパッド部と第3のパッド部との間の金属磁性粒子の個数を相対的に多くすることで、積層コイル部品の耐電圧を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スルーホールの断線の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】積層コイル部品の一実施形態を示す斜視図である。
図2】積層コイル部品の層構成を示す図である。
図3】第1の導体パターン層及び第2の導体パターン層の接続関係を示す図である。
図4】積層コイル部品の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る積層コイル部品の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、積層コイル部品の一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、積層コイル部品1は、直方体形状をなす素体2と、一対の端子電極3,3とを備えている。一対の端子電極3,3は、素体2の両端部にそれぞれ配置され、互いに離間している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされた直方体形状、及び角部及び稜線部が丸められた直方体形状が含まれる。積層コイル部品1は、例えばビーズインダクタ又はパワーインダクタに適用できる。
【0017】
直方体形状をなす素体2は、互いに対向する一対の端面2a,2b、互いに対向する一対の主面2c,2dと、互いに対向する一対の側面2e,2fを有している。以下の説明では、一対の端面2a,2bの対向方向を第1方向D1と称し、一対の主面2c,2dの対向方を第2方向D2と称する。また、一対の側面2e,2fの対向方を第3方向D3と称する。第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3は、互いに直交している。本実施形態では、一対の端面2a,2bは、正方形状をなし、一対の主面2c,2d及び一対の側面2e,2fは、長方形状をなしている。主面2c(図1における底面)は、実装面となり得る。実装面は、積層コイル部品1を他の電子機器(回路基板、電子部品等)に実装する際に、当該他の電子機器と対向する面である。
【0018】
素体2は、複数の磁性体層11(図2参照)が積層されることによって構成されている。各磁性体層11は、主面2c,2dの対向方向に積層されている。すなわち、各磁性体層11の積層方向は、第2方向D2と一致している(以下、主面2c,2dの対向方向を「積層方向」と称す場合もある)。各磁性体層11は、略矩形状をなしている。実際の素体2では、各磁性体層11は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0019】
素体2は、複数の金属磁性粒子(不図示)を含んでいる。金属磁性粒子は、例えば軟磁性合金から構成されている。軟磁性合金は、例えばFe-Si系合金である。軟磁性合金がFe-Si系合金である場合、軟磁性合金は、Pを含んでいてもよい。軟磁性合金は、例えばFe-Ni-Si-M系合金であってもよい。「M」は、Co、Cr、Mn、P、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、及び希土類元素から選択される一種以上の元素を含む。
【0020】
素体2では、金属磁性粒子同士が結合している。金属磁性粒子同士の結合は、例えば金属磁性粒子の表面に形成される酸化膜同士の結合によって実現されている。また、素体2は、樹脂による充填部分を含んでいる。樹脂は、複数の金属磁性粒子間の少なくとも一部に存在している。樹脂は、電気絶縁性を有する樹脂である。樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。複数の金属磁性粒子間には、樹脂による充填のない空隙部分が存在していてもよい。
【0021】
一対の端子電極3,3は、いずれも扁平な直方体形状をなし、素体2の端面2a,2bのそれぞれを覆うように配置されている。端子電極3は、導電性材料を含んで構成されている。導電性材料は、例えばAg又はPdである。端子電極3は、例えば焼付電極であり、導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性ペーストは、導電性金属粉末及びガラスフリットを含んでいる。導電性金属粉末は、例えばAg粉末又はPd粉末である。端子電極3の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、例えば電気めっきにより形成される。電気めっきは、例えば電気Niめっき又は電気Snめっきである。
【0022】
図2は、積層コイル部品の層構成を示す図である。同図に示すように、素体2の内部には、コイル部Cが設けられている。コイル部Cを形成する複数の層は、カバー層Lcと、第1の導体パターン層L1と、第2の導体パターン層L2と、接続導体層L3と、引出導体層L4とを含んで構成されている。カバー層Lcは、金属磁性粒子を含む磁性体層のみによって構成された層である。カバー層Lcは、素体2の主面2c側及び主面2d側のそれぞれに複数配置されている。
【0023】
カバー層Lcを除く各層には、所定のパターンで導体部分が形成されている。導体部分は、例えば金属材料によって構成されている。金属材料の材料は、特に限定はされないが、例えばAg、Cu、Au、Al、Pd、Pd/Ag合金などを用いることができる。金属材料には、Ti化合物、Zr化合物、Si化合物などが添加されていてもよい。導体部分の形成には、例えば印刷法や薄膜成長法を用いることができる。
【0024】
第1の導体パターン層L1及び第2の導体パターン層L2は、コイル部Cの主要部分(巻回部分)を形成する層である。本実施形態では、1つの第1の導体パターン層L1と、1つの第2の導体パターン層L2と、1つの接続導体層L3とがこの順に積層されて一つの組を構成している。素体2の内部には、コイル部Cでの必要な巻回数に応じて積層構造内に複数の組が設けられている。
【0025】
第1の導体パターン層L1は、第1の導体パターン12を有している。第1の導体パターン12は、全体として略矩形の環状をなしている。第1の導体パターン12は、端面2a側で第3方向D3に延在する第1の部分12aと、側面2e側で第1方向D1に延在する第2の部分12bと、端面2b側で第3方向D3に延在する第3の部分12cとを有している。また、第1の導体パターン12は、側面2f側で第1方向D1に延在する第4の部分12dを有している。
【0026】
第1の導体パターン12では、第4の部分12dの一端は、第3の部分12cの側面2f側の端部と接続され、第4の部分12dの他端は、第1の導体パターン層L1における第1方向D1の中央に位置している。第1の部分12aの側面2f側の端部、及び第3の部分12cと第4の部分12dとの接続部分には、それぞれ第1のパッド部13が設けられている。また、第4の部分12dの他端には、第2のパッド部14が設けられている。
【0027】
第2の導体パターン層L2は、第2の導体パターン16を有している。第2の導体パターン16は、全体として略矩形の環状をなしている。第2の導体パターン16は、端面2a側で第3方向D3に延在する第1の部分16aと、側面2e側で第1方向D1に延在する第2の部分16bと、端面2b側で第3方向D3に延在する第3の部分16cとを有している。また、第2の導体パターン16は、側面2f側で第1方向D1に延在する第4の部分16dを有している。
【0028】
第2の導体パターン16では、第4の部分16dの一端は、第1の部分16aの側面2f側の端部と接続され、第4の部分16dの他端は、第1の導体パターン層L1における第1方向D1の中央に位置している。第1の部分16aと第4の部分16dとの接続部分、及び第3の部分16cの側面2f側の端部には、それぞれ第1のパッド部13が設けられている。また、第4の部分16dの他端には、第3のパッド部17が設けられている。
【0029】
本実施形態では、上述したように、第1の導体パターン12において第2のパッド部14が設けられている第4の部分12dの他端と、第2の導体パターン16において第3のパッド部17が設けられている第4の部分16dの他端とが、いずれも第1方向D1の中央に位置している。したがって、第2のパッド部14と第3のパッド部17とは、積層方向に互いに重なり合った状態となっている。
【0030】
接続導体層L3は、積層方向に隣り合う組の第1の導体パターン層L1と第2の導体パターン層L2との層間を確保する層として機能する層である。接続導体層L3は、パッド部18のみを導体部分として有している。パッド部18は、第1の導体パターン12の第2のパッド部14及び第2の導体パターン16の第3のパッド部17に対応して配置されている。すなわち、パッド部18と第2のパッド部14及び第3のパッド部17とは、積層方向に互いに重なり合った状態となっている。
【0031】
引出導体層L4は、コイル部Cを端子電極3,3と接続する層である。本実施形態では、引出導体層L4は、主面2c側に配置された引出導体層L4Aと、主面2d側に配置された引出導体層L4Bとを有している。引出導体層L4Aは、最も主面2c側に位置する組の接続導体層L3の下層側(主面2c側)に配置されている。引出導体層L4Aは、当該接続導体層L3のパッド部18に対して積層方向に重なるように配置されたパッド部19と、このパッド部19から端面2b側の縁に向かって延在する引出導体20Aとを有している。パッド部19は、スルーホール(不図示)を介して接続導体層L3のパッド部18に電気的に接続されている。引出導体20Aは、端面2bにおいて、当該端面2bを覆う端子電極3と接続されている。
【0032】
主面2d側では、最も主面2d側に位置する組の第1の導体パターン層L1の上層側(主面2d側)に接続導体層L3が1層配置されている。引出導体層L4Bは、当該接続導体層L3のパッド部18に対して積層方向に重なるように配置されたパッド部19と、このパッド部19から端面2a側の縁に向かって延在する引出導体20Bとを有している。パッド部19は、スルーホール(不図示)を介して接続導体層L3のパッド部18に電気的に接続されている。引出導体20Bは、端面2aにおいて、当該端面aを覆う端子電極3と接続されている。
【0033】
続いて、上述した第1の導体パターン層L1及び第2の導体パターン層L2の接続関係について更に詳細に説明する。図3は、第1の導体パターン層及び第2の導体パターン層の接続関係を示す図である。同図に示すように、第1の導体パターン層L1及び第2の導体パターン層L2の接続にあたって、第1の導体パターン12及び第2の導体パターン16のそれぞれは、積層方向に互いに重なり合う並列部分P1と、積層方向に互いに重なり合わない非並列部分P2とを有している。
【0034】
本実施形態では、第1の導体パターン12及び第2の導体パターン16の第1の部分12a,16a、第2の部分12b,16b、及び第3の部分12c,16cが並列部分P1となっており、第4の部分12d,16dが非並列部分P2となっている。一の組においては、第1の導体パターン12の並列部分P1と第2の導体パターン16の並列部分P1とに設けられた第1のパッド部13,13同士が第1のスルーホールT1を介して互いに接続されている。一方、一の組においては、第1の導体パターン12の非並列部分P2に設けられた第2のパッド部14と、第2の導体パターン16の非並列部分P2に設けられた第3のパッド部17とは、非接続となっている。
【0035】
第2のパッド部14と第3のパッド部17とは、一の組と当該一の組に対して積層方向に隣接する組との間の接続に用いられている。図3の例では、一の組の第1の導体パターン12の非並列部分P2に設けられた第2のパッド部14と、一の組に対して積層方向の一方側に位置する組の第2の導体パターン16の非並列部分P2に設けられた第3のパッド部17とが、接続導体層L3のパッド部18及び第2のスルーホールT2を介して互いに接続されている。また、一の組の第2の導体パターン16の非並列部分P2に設けられた第3のパッド部17と、一の組に対して積層方向の他方側に位置する組の第1の導体パターン12の非並列部分P2に設けられた第2のパッド部14とが、接続導体層L3のパッド部18及び第2のスルーホールT2を介して互いに接続されている。
【0036】
図4は、積層コイル部品の要部断面図である。同図は、図3に示す破線Kの位置で素体2を積層方向に切断した断面を示している。上述したように、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17とは非接続となっているが、図4に示すように、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間には、空隙Gが存在している。空隙Gは、例えば素体2とコイル部Cを構成する導体部分との熱収縮率の差によって形成することができる。空隙Gは、素体2の形成時に第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間に空隙形成部材を挟み込むことによって形成されていてもよい。また、本実施形態のように、素体2が複数の金属磁性粒子及び樹脂による充填部分を含む場合、空隙G内に樹脂の一部が入り込んでいてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、一の組において、第2のパッド部14における第3のパッド部17側の面、及び第3のパッド部17における第2のパッド部14側の面の少なくとも一方に凹部21が設けられている。本実施形態では、これらの面の双方に凹部21が設けられている。これらの凹部21,21により、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17との積層方向の間隔L1は、一の組における第1の導体パターン12と第2の導体パターン16との間の積層方向の間隔L2よりも大きくなっている。
【0038】
凹部21は、例えば磁性体層11に印刷等によって第1の導体パターン12を形成する前に、第2のパッド部14の位置に当該第2のパッド部14と同じ形状で磁性材料を印刷することによって形成することができる。第2のパッド部14と第3のパッド部17との間に磁性材料を配置し、磁性体層11を積層して圧着する工程において第3のパッド部17側に磁性材料を入り込ませることで、第3のパッド部17に凹部21を形成することもできる。
【0039】
また、本実施形態では、一の組における第1の導体パターン12と第2の導体パターン16との間の積層方向の間隔L2は、一の組の第1の導体パターン12と一の組に対して積層方向の一方側に位置する組の第2の導体パターン16との間の積層方向の間隔L3、及び一の組の第2の導体パターン16と一の組に対して積層方向の他方側に位置する組の第1の導体パターン12との間の積層方向の間隔L4よりも小さくなっている。図4の例では、間隔L3と間隔L4とは等しくなっており、L2<L3=L4となっている。
【0040】
また、本実施形態では、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17との間の金属磁性粒子の個数は、一の組における第1の導体パターン12と第2の導体パターン16との間(並列部分P1,P1間)に位置する金属磁性粒子の個数よりも多くなっている。すなわち、本実施形態では、上述した間隔L1において積層方向に並ぶ金属磁性粒子の個数が、上述した間隔L2において積層方向に並ぶ金属磁性粒子の個数よりも多くなっている。金属磁性粒子の個数は、複数の位置での平均値同士を比較してもよい。
【0041】
以上説明したように、積層コイル部品1では、一の組の第1の導体パターン12及び第2の導体パターン16を接続する第1のスルーホールT1が並列部分P1に設けられた第1のパッド部13,13同士を接続し、一の組と当該一の組に隣接する組の第1の導体パターン12及び第2の導体パターン16を接続する第2のスルーホールT2が非並列部分P2に設けられた第2,第3のパッド部14,17を接続している。これにより、積層コイル部品1では、積層方向から見た場合に、第1のスルーホールT1の位置と第2のスルーホールT2の位置とを分散させることができる。第1のスルーホールT1と第2のスルーホールT2の位置を分散させることで、同じ位置での導体ボリュームが増大することを回避できる。したがって、熱膨張或いは熱収縮などが生じた場合でも、スルーホールT1,T2の断線の発生を抑制できる。
【0042】
積層コイル部品1では、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17とが積層方向に互いに重なり合っている。この場合、第1のスルーホールT1の位置と第2のスルーホールT2の位置との分散関係が維持される一方、第1の導体パターン12及び第2の導体パターン16の対称性が高められ、パターンの簡単化が図られる。
【0043】
積層コイル部品1では、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間に空隙Gが存在している。この空隙Gによって第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間の電気抵抗率を素体材料よりも高くすることができ、積層コイル部品1の耐電圧を向上できる。また、積層コイル部品1では、一の組において、第2のパッド部14における第3のパッド部17側の面、及び第3のパッド部17における第2のパッド部14側の面の双方に凹部21が設けられている。これらの凹部21によって第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間を十分に確保でき、積層コイル部品1の耐電圧を向上できる。
【0044】
積層コイル部品1では、一の組における第1の導体パターン12と第2の導体パターン16との間の積層方向の間隔L2は、一の組の第1の導体パターン12と一の組に対して積層方向の一方側に位置する組の第2の導体パターン16との間の積層方向の間隔L3、及び一の組の第2の導体パターン16と一の組に対して積層方向の他方側に位置する組の第1の導体パターン12との間の積層方向の間隔L4よりも小さくなっている。これにより、積層方向に隣り合う組の層間を十分に確保でき、積層コイル部品1の耐電圧を向上できる。
【0045】
積層コイル部品1では、素体2が複数の金属磁性粒子を含む磁性体層11を積層することによって構成されている。そして、一の組における第2のパッド部14と第3のパッド部17との間の金属磁性粒子の個数が、一の組における第1の導体パターン12と第2の導体パターン16との間に位置する金属磁性粒子の個数よりも多くなっている。第2のパッド部14と第3のパッド部17との間の金属磁性粒子の個数を相対的に多くすることで、積層コイル部品1の耐電圧を向上できる。
【0046】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、第2のパッド部14における第3のパッド部17側の面、及び第3のパッド部17における第2のパッド部14側の面の双方に凹部21が設けられているが、凹部21は、これらの面の一方のみに設けられていてもよく、いずれの面にも設けられていなくてもよい。第2のパッド部14と第3のパッド部17との層間の空隙Gも必ずしも設けられていなくてもよい。
【0047】
素体2は、必ずしも金属磁性粒子を含んで構成されていなくてもよく、フェライト(例えば、Ni-Cu-Zn系フェライト、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト)や誘電体材料などによって構成されていてもよい。また、上記実施形態では、1つの第1の導体パターン層L1と、1つの第2の導体パターン層L2と、1つの接続導体層L3とによって一つの組を構成しているが、接続導体層L3を省略し、1つの第1の導体パターン層L1と1つの第2の導体パターン層L2とによって一つの組を構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…積層コイル部品、2…素体、12…第1の導体パターン、13…第1のパッド部、14…第2のパッド部、17…第3のパッド部、16…第2の導体パターン、21…凹部、C…コイル部、L1…第1の導体パターン層、L2…第2の導体パターン層、P1…並列部分、P2…非並列部分、T1…第1のスルーホール、T2…第2のスルーホール、G…空隙。
図1
図2
図3
図4