IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-検出装置 図1
  • 特開-検出装置 図2
  • 特開-検出装置 図3
  • 特開-検出装置 図4
  • 特開-検出装置 図5
  • 特開-検出装置 図6
  • 特開-検出装置 図7
  • 特開-検出装置 図8
  • 特開-検出装置 図9
  • 特開-検出装置 図10
  • 特開-検出装置 図11
  • 特開-検出装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134986
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20220908BHJP
【FI】
G01N27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021034533
(22)【出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】福井 崇人
(72)【発明者】
【氏名】悪七 泰樹
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA02
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】検査対象物の比較的狭い範囲における物性を検出可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置1は、内径領域に生じる磁束が一方の開口端部から他方の開口端部に向かうよう巻回された励磁コイル10,20と、励磁コイル20の開口端部22から励磁コイル10の開口端部11へ磁束を誘導する磁性体31,32と、磁性体31,32に流れる磁束を検出する磁気検出部40とを備える。励磁コイル10の開口端部12から励磁コイル20の開口端部21へ流れる磁束を検査対象物Aに印加することによって、検査対象物Aの物性を検出する。このように、互いに逆方向の磁束を発生させる励磁コイル10,20を用いていることから、検査対象物Aの比較的狭い範囲に磁束を集中させることができる。これにより、検査対象物Aの比較的狭い範囲における物性を検出することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径領域に生じる磁束が一方の開口端部から他方の開口端部に向かうよう巻回された第1及び第2の励磁コイルと、
前記第2の励磁コイルの前記他方の開口端部から前記第1の励磁コイルの前記一方の開口端部へ磁束を誘導する磁性体と、
前記磁性体に流れる磁束を検出する磁気検出部と、を備え、
前記第1の励磁コイルの前記他方の開口端部から前記第2の励磁コイルの前記一方の開口端部へ流れる磁束を検査対象物に印加することによって、前記検査対象物の物性を検出することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の励磁コイルは直列に接続されており、これにより前記第1及び第2の励磁コイルには同じ励磁電流が流れることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記磁性体は、前記第1の励磁コイルと磁気結合する第1の磁性体と、前記第2の励磁コイルと磁気結合する第2の磁性体を含み、
前記磁気検出部は、前記第1及び第2の磁性体間に流れる磁束を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1の磁性体の一部は、前記第1の励磁コイルの前記内形領域に位置し、
前記第2の磁性体の一部は、前記第2の励磁コイルの前記内形領域に位置することを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の励磁コイルのコイル軸は、いずれも第1の仮想平面上に位置し、
前記第1の励磁コイルのコイル軸は、前記第1の仮想平面に対して垂直な第2の仮想平面上にさらに位置し、
前記第2の励磁コイルのコイル軸は、前記第2の仮想平面に対して垂直な第3の仮想平面上にさらに位置し、
前記磁気検出部は、前記第2の仮想平面と前記第3の仮想平面の間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
所定の周波数を有する探査信号に基づいて前記第1及び第2の励磁コイルに励磁電流を流す励磁回路と、
前記磁気検出部の出力信号から低周波成分を除去するハイパスフィルタと、
前記探査信号に基づいて前記ハイパスフィルタの出力信号を検波する検波回路と、をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出装置に関し、特に、磁束を検査対象物に印加することによって検査対象物の物性を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の物性を検出する方法としては、磁束を検査対象物に印加した場合の磁束の変化を検出する方法が考えられる。磁束の変化は、例えば特許文献1に記載された磁気センサを用いて検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6610178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサは、比較的広範囲の磁束に対して感度を有することから、検査対象物の狭い範囲における物性を検出する用途には必ずしも適していなかった。
【0005】
したがって、本発明は、検査対象物の比較的狭い範囲における物性を検出可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による検出装置は、内径領域に生じる磁束が一方の開口端部から他方の開口端部に向かうよう巻回された第1及び第2の励磁コイルと、第2の励磁コイルの他方の開口端部から第1の励磁コイルの一方の開口端部へ磁束を誘導する磁性体と、磁性体に流れる磁束を検出する磁気検出部とを備え、第1の励磁コイルの他方の開口端部から第2の励磁コイルの一方の開口端部へ流れる磁束を検査対象物に印加することによって、検査対象物の物性を検出することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、互いに逆方向の磁束を発生させる第1及び第2の励磁コイルを用いていることから、検査対象物の比較的狭い範囲に磁束を集中させることができる。これにより、検査対象物の比較的狭い範囲における物性を検出することが可能となる。
【0008】
本発明において、第1及び第2の励磁コイルは直列に接続されており、これにより第1及び第2の励磁コイルには同じ励磁電流が流れるものであっても構わない。これによれば、回路構成を簡素化することができる。
【0009】
本発明において、磁性体は、第1の励磁コイルと磁気結合する第1の磁性体と第2の励磁コイルと磁気結合する第2の磁性体を含み、磁気検出部は第1及び第2の磁性体間に流れる磁束を検出するものであっても構わない。これによれば、磁束の変化を磁気検出部によって高感度に検出することが可能となる。この場合、第1の磁性体の一部は第1の励磁コイルの内形領域に位置し、第2の磁性体の一部は第2の励磁コイルの内形領域に位置していても構わない。これによれば、検出感度をより高めることが可能となる。
【0010】
本発明において、第1及び第2の励磁コイルのコイル軸はいずれも第1の仮想平面上に位置し、第1の励磁コイルのコイル軸は第1の仮想平面に対して垂直な第2の仮想平面上にさらに位置し、第2の励磁コイルのコイル軸は第2の仮想平面に対して垂直な第3の仮想平面上にさらに位置し、磁気検出部は第2の仮想平面と第3の仮想平面の間に配置されていても構わない。これによれば、磁束の変化を磁気検出部によって高感度に検出することが可能となる。
【0011】
本発明による検出装置は、所定の周波数を有する探査信号に基づいて第1及び第2の励磁コイルに励磁電流を流す励磁回路と、磁気検出部の出力信号から低周波成分を除去するハイパスフィルタと、探査信号に基づいてハイパスフィルタの出力信号を検波する検波回路とをさらに備えるものであっても構わない。これによれば、検査対象物が発する磁場や環境磁場の影響を排除することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、検査対象物の比較的狭い範囲における物性を検出可能な検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による検出装置1の構造を説明するための模式図であり、(a)はxz側面図、(b)はxy平面図である。
図2図2は、検出装置1の回路ブロック図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態による検出装置2の構造を説明するための模式的なxz側面図である。
図4図4は、本発明の第3の実施形態による検出装置3の構造を説明するための模式的なxz側面図である。
図5図5は、本発明の第4の実施形態による検出装置4の構造を説明するための略斜視図である。
図6図6は、センサチップ60と磁性体31,32を分離した状態を示す略分解斜視図である。
図7図7は、センサチップ60の略平面図である。
図8図8は、図7のB-B線に沿った略断面図である。
図9図9は、本発明の第5の実施形態による検出装置5の構造を説明するための略斜視図である。
図10図10は、本発明の第6の実施形態による検出装置6の構造を説明するための略斜視図である。
図11図11は、本発明の第7の実施形態による検出装置7の構造を説明するための略斜視図である。
図12図12は、本発明の第8の実施形態による検出装置8の構造を説明するための略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による検出装置1の構造を説明するための模式図であり、(a)はxz側面図、(b)はxy平面図である。
【0016】
図1に示すように、第1の実施形態による検出装置1は、検査対象物Aの物性を検出するものであり、z方向を軸方向とする励磁コイル10,20と、それぞれ励磁コイル10,20のコイル軸と重なる位置に配置された磁性体31,32と、磁性体31と磁性体32の間に配置された磁気検出部40とを備えている。励磁コイル10,20は直列に接続されているとともに、巻線が互いに逆方向に巻回されている。これにより、励磁コイル10,20に励磁電流Iを流すと、励磁コイル10の内径領域には+z方向の磁束φ1が発生し、励磁コイル20の内径領域には-z方向の磁束φ2が発生する。その結果、励磁コイル10の内径領域においては、磁束φ1が一方の開口端部11から他方の開口端部12に向かって流れ、励磁コイル20の内径領域においては、磁束φ2が一方の開口端部21から他方の開口端部22に向かって流れる。
【0017】
ここで、励磁コイル10,20はx方向に近接して配置されていることから、励磁コイル10の開口端部12から励磁コイル20の開口端部21へは比較的狭い空間を経由して磁束が流れ、励磁コイル20の開口端部22から励磁コイル10の開口端部11へは比較的狭い空間を経由して磁束が流れる。
【0018】
磁性体31,32は、フェライトなどの高透磁率材料によって構成される。図1に示すように、磁性体31,32はそれぞれ励磁コイル10,20のコイル軸と重なる位置に配置されていることから、励磁コイル10と磁性体31は磁気結合し、励磁コイル20と磁性体32は磁気結合する。このため、励磁コイル20の開口端部22から出る磁束は、磁性体31,32に誘導されて励磁コイル10の開口端部11へ流れる。そして、磁性体31と磁性体32の間には磁気検出部40が配置されていることから、磁性体31,32間に流れる磁束は、磁気検出部40によって検出される。
【0019】
磁気検出部40の位置については、磁性体31,32間に流れる磁束を検出可能である限り特に限定されないが、図1(b)に示すように、励磁コイル10,20のコイル軸をそれぞれC1,C2とした場合、コイル軸C1,C2の両方が位置する仮想平面をP1とし、コイル軸C1が位置し仮想平面P1に対して垂直な仮想平面をP2とし、コイル軸C2が位置し仮想平面P1に対して垂直な仮想平面をP3とした場合、磁気検出部40は、仮想平面P2と仮想平面P3の間に配置することが好ましい。この範囲内に磁気検出部40を配置すれば、励磁コイル10,20によって生じる磁束を磁気検出部40によって高感度に検出することができる。
【0020】
本実施形態による検出装置1は、励磁コイル10,20のz方向における先端、つまり励磁コイル10の開口端部12及び励磁コイル20の開口端部21の近傍に検査対象物Aを配置することによって、検査対象物Aの物性を検出することができる。つまり、励磁コイル10の開口端部12から放出され、励磁コイル20の開口端部21に吸収される磁束を検査対象物Aの所定領域に印加し、これによって生じる磁束の変化を磁気検出部40によって検出することによって、検査対象物Aの所定領域に存在する磁性体や傷などを検出することができる。
【0021】
図2は、本実施形態による検出装置1の回路ブロック図である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態による検出装置1は検出回路50をさらに備えている。検出回路50は、所定の周波数を有する探査信号S1を生成する探査信号生成回路51と、探査信号S1に基づいて励磁コイル10,20に励磁電流Iを流す励磁回路52と、磁気検出部40の出力信号S2から低周波成分を除去することによって出力信号S3を生成するハイパスフィルタ53と、探査信号S1に基づいてハイパスフィルタ53の出力信号S3を検波する検波回路54を有している。
【0023】
励磁回路52は、所定の周波数を有する探査信号S1と同じ周波数の励磁電流Iを励磁コイル10,20に流す。これにより生じる磁束φ1,φ2は磁気検出部40によって検出され、磁束の向き及び強さに応じた出力信号S2が生成される。この時、励磁コイル10,20のz方向における先端を検査対象物Aに近づけることによって、磁気検出部40に印加される磁束に変化が生じると、これに応じて出力信号S2が変化する。磁気検出部40に印加される磁束に変化が生じる原因としては、検査対象物Aに磁性体からなる微粉が付着又は混入している場合や、金属部材からなる検査対象物Aに傷が存在し、これによって渦電流が変化する場合などが挙げられる。
【0024】
磁気検出部40の出力信号S2は、ハイパスフィルタ53によって低周波成分が除去され、出力信号S3が生成される。本発明においてハイパスフィルタを用いることは必須でないが、ハイパスフィルタを用いて低周波成分を除去することにより、検査対象物Aが発する磁場や環境磁場の影響を排除することが可能となる。
【0025】
そして、出力信号S3は検波回路54によって検波され、直流レベルの出力信号S4が生成される。これにより、励磁コイル10,20の先端を検査対象物Aの表面上でスキャンすれば、出力信号S4のレベル変化に基づいて、検査対象物Aに存在する磁性微粉や傷を検出することが可能となる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態による検出装置1は、互いに逆方向に巻回された励磁コイル10,20を用いていることから、検査対象物Aの比較的狭い範囲に検出用の磁束を集中させることができる。これにより、検査対象物Aの比較的狭い範囲における物性を高感度に検出することが可能となる。
【0027】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態による検出装置2の構造を説明するための模式的なxz側面図である。
【0028】
図3に示すように、第2の実施形態による検出装置2は、励磁コイル10,20の内径領域に磁性体33,34が挿入されている点において、第1の実施形態による検出装置1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による検出装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
磁性体33は磁性体31と近接又は接触しており、これにより磁性体31と励磁コイル10との磁気結合が高められる。同様に、磁性体34は磁性体32と近接又は接触しており、これにより磁性体32と励磁コイル20との磁気結合が高められる。このような磁性体33,34を追加すれば、検出感度をより高めることが可能となる。
【0030】
<第3の実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態による検出装置3の構造を説明するための模式的なxz側面図である。
【0031】
図4に示すように、第3の実施形態による検出装置3は、励磁コイル10,20のコイル軸がz方向に対して所定の傾きを有している点において、第1の実施形態による検出装置1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による検出装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
本実施形態においては、励磁コイル10のコイル軸C1が-x方向に角度θだけ傾いており、励磁コイル20のコイル軸C2が+x方向に角度θだけ傾いている。これにより、励磁コイル10の開口端部12と励磁コイル20の開口端部21の間における磁束の広がりがより抑えられることから、検査対象物Aのより狭い範囲に検出用の磁束を集中させることが可能となる。
【0033】
<第4の実施形態>
図5は、本発明の第4の実施形態による検出装置4の構造を説明するための略斜視図である。
【0034】
図5に示すように、第4の実施形態による検出装置4は、磁気検出部としてセンサチップ60が用いられるとともに、磁性体31,32がセンサチップ60の素子形成面61を覆うように配置されている点において、第1の実施形態による検出装置1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による検出装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
図6は、センサチップ60と磁性体31,32を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【0036】
図6に示すように、センサチップ60は、yz面を構成する素子形成面61及び裏面62と、xy面を構成する側面63,64と、xz面を構成する側面65,66とを有している。センサチップ60の素子形成面61上には、後述する感磁素子及び磁性体層M1~M3が形成されている。磁性体31はx方向を長手方向とする棒状体であり、そのx方向における一端は、磁性体層M1の一部を覆うよう素子形成面61のz方向における略中央部に位置決めされている。磁性体32は、x方向を長手方向とする棒状形状を有しており、磁性体層M2,M3の一部を覆うとともに、センサチップ60の裏面62及び側面63,64を覆っている。
【0037】
図7はセンサチップ60の略平面図であり、図8図7のB-B線に沿った略断面図である。
【0038】
図7及び図8に示すように、センサチップ60の素子形成面61には、4つの感磁素子R1~R4が形成されている。感磁素子R1~R4は、磁束の向きによって電気抵抗が変化する素子であれば特に限定されず、例えばMR素子などを用いることができる。感磁素子R1~R4の固定磁化方向は、互いに同じ向き(例えばz方向におけるプラス側)に揃えられている。感磁素子R1~R4は絶縁層67で覆われており、絶縁層67の表面には、パーマロイなどからなる磁性体層M1~M3が形成されている。磁性体層M1~M3は絶縁層68で覆われている。そして、磁性体層M1~M3のうち、y方向における一方側(図7における上側)に位置する部分を磁性体層M11,M21,M31と定義し、y方向における他方側(図7における下側)に位置する部分を磁性体層M12,M22,M32と定義した場合、平面視で(x方向から見て)、感磁素子R1は磁性体層M11と磁性体層M21の間に位置し、感磁素子R2は磁性体層M12と磁性体層M22の間に位置し、感磁素子R3は磁性体層M11と磁性体層M31の間に位置し、感磁素子R4は磁性体層M12と磁性体層M32の間に位置している。これにより、磁気ギャップG1~G4を通過する磁界が感磁素子R1~R4に印加される。ここで、感磁素子R1,R2に印加される磁界の向きと、感磁素子R3,R4に印加される磁界の向きは、互いに180°異なることから、感磁素子R1~R4をブリッジ接続することにより、磁性体31を介して印加される磁束の向き及び強度を検出することができる。
【0039】
但し、本発明において、各感磁素子R1~R4を2つの磁性体層間に配置することは必須でなく、2つの磁性体層からなる磁気ギャップG1~G4の近傍、つまり、磁気ギャップG1~G4によって形成される磁路上に各感磁素子R1~R4が配置されていれば足りる。また、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4の幅よりも広い必要はなく、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4よりも狭くても構わない。
【0040】
図7及び図8において、符号31aで示す領域は磁性体31によって覆われる領域を示し、符号32a,32bで示す領域は磁性体32によって覆われる領域を示している。図7及び図8に示すように、磁性体31は磁性体層M1を覆い、磁性体32は磁性体層M2,M3を覆う。
【0041】
このような構成により、励磁コイル10は磁性体31と磁気結合し、励磁コイル20は磁性体32と磁気結合することから、検査対象物Aに存在する磁性微粉や傷を高感度に検出することが可能となる。
【0042】
<第5の実施形態>
図9は、本発明の第5の実施形態による検出装置5の構造を説明するための略斜視図である。
【0043】
図9に示すように、第5の実施形態による検出装置5は、磁性体31,32の一部がz方向に折り曲げられ、それぞれ励磁コイル10,20の内径領域に挿入されている点において、第4の実施形態による検出装置4と相違している。その他の基本的な構成は第4の実施形態による検出装置4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
本実施形態による検出装置5のように、磁性体31,32の一部をそれぞれ励磁コイル10,20の内径領域に挿入すれば、より高い検出感度を得ることが可能となる。
【0045】
<第6の実施形態>
図10は、本発明の第6の実施形態による検出装置6の構造を説明するための略斜視図である。
【0046】
図10に示すように、第6の実施形態による検出装置6は、励磁コイル10,20のコイル軸がz方向に対して所定の傾きを有している点において、第4の実施形態による検出装置4と相違している。その他の基本的な構成は第4の実施形態による検出装置4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態による検出装置6のように、励磁コイル10,20のコイル軸に傾きを設けることにより、検査対象物Aに印加される磁束の範囲を調整することが可能となる。
【0048】
<第7の実施形態>
図11は、本発明の第7の実施形態による検出装置7の構造を説明するための略斜視図である。
【0049】
図11に示すように、第7の実施形態による検出装置7は、4つの励磁コイル10A,10B,20A,20Bが用いられている点において、第4の実施形態による検出装置4と相違している。その他の基本的な構成は第4の実施形態による検出装置4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
4つの励磁コイル10A,10B,20A,20Bのうち、励磁コイル10A,10Bと励磁コイル20A,20Bは、巻線が互いに逆方向に巻回されている。励磁コイル10A,10Bはいずれも磁性体31と磁気結合し、励磁コイル20A,20Bはいずれも磁性体32と磁気結合する。本実施形態による検出装置7のように、励磁コイル10,20をそれぞれ複数用いることにより、検査対象物Aに印加される磁束の範囲を調整することが可能となる。
【0051】
<第8の実施形態>
図12は、本発明の第8の実施形態による検出装置8の構造を説明するための略斜視図である。
【0052】
図12に示すように、第8の実施形態による検出装置8は、磁束が励磁コイル10A,10B,20B,20Aの順(又はその逆方向)に周回するよう、これらが配置されている点において、第7の実施形態による検出装置7と相違している。その他の基本的な構成は第7の実施形態による検出装置7と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
本実施形態においては、励磁コイル10Aのコイル軸と励磁コイル20Bのコイル軸が交差するエリアに検査対象物Aを配置することにより、検査対象物Aの物性を高感度に検出することが可能となる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1~8 検出装置
10,20,10A,10B,20A,20B 励磁コイル
11,12,21,22 開口端部
31~34 磁性体
40 磁気検出部
50 検出回路
51 探査信号生成回路
52 励磁回路
53 ハイパスフィルタ
54 検波回路
60 センサチップ
61 素子形成面
62 センサチップの裏面
63~66 センサチップの側面
67,68 絶縁層
A 検査対象物
C1,C2 コイル軸
G1~G4 磁気ギャップ
I 励磁電流
M1~M3,M11,M21,M31,M12,M22,M32 磁性体層
P1~P3 仮想平面
R1~R4 感磁素子
S1 探査信号
S2~S4 出力信号
φ1,φ2 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12