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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136766
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 514
H01G4/30 201G
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036541
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】末田 有一郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 亮太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】
【課題】素子本体と外部電極との接合強度が高いセラミック電子部品を提供すること。
【解決手段】セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、素子本体が、セラミック層の端部に境界層を有し、セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、境界層にはBaおよびTiが主成分として含まれ、境界層に含まれるBaおよびTiの合計を1モル部としたとき、境界層にはBaが0.27~0.40モル部含まれるセラミック電子部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
前記素子本体が、前記セラミック層の端部に境界層を有し、
前記セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、
前記境界層にはBaおよびTiが主成分として含まれ、
前記境界層に含まれるBaおよびTiの合計を1モル部としたとき、
前記境界層にはBaが0.27~0.40モル部含まれるセラミック電子部品。
【請求項2】
前記ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たす請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物は、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1および0≦d<1の式を満たす請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記外部電極にはCu、Cu合金、AgおよびAg合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれる請求項1~3のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記外部電極は前記境界層側の面の少なくとも一部に界面突起部を有する請求項1~4のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記界面突起部にはBa、TiおよびSiが主成分として含まれ、
前記界面突起部に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、
前記界面突起部にはBaが0.35~0.46モル部含まれ、
前記界面突起部にはTiが0.11~0.30モル部含まれ、
前記界面突起部にはSiが0.34~0.46モル部含まれる請求項5に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記境界層の平均厚みは2~20μmである請求項1~6のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記内部電極層と接するように前記境界層が備えられており、
前記内部電極層はNiまたはNi合金を主成分として含む請求項1~7のいずれかに記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
前記素子本体が、前記セラミック層の端部に境界層を有し、
前記セラミック層の線膨張係数をαとし、
前記外部電極の線膨張係数をβとし、
前記境界層の線膨張係数をγとしたとき、
α、βおよびγの大小関係は、β>γ>αとなるセラミック電子部品。
【請求項10】
前記外部電極は前記境界層側の面の少なくとも一部に界面突起部を有し、
前記界面突起部の線膨張係数をδとしたとき、
α、β、γおよびδの大小関係は、β>γ>α>δとなる請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記内部電極層と接するように前記境界層が備えられており、
前記内部電極層の線膨張係数をσとしたとき、
α、γおよびσの大小関係は、γ>σ>αとなる請求項9または10に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック層と内部電極層とを有するセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、積層セラミックコンデンサは、内部電極として電極材料を印刷したセラミック誘電体を積層した後、これを焼成してセラミック素体を形成し、このセラミック素体の外面に内部電極に導通する外部電極を形成して作製される。
【0003】
しかし、外部電極の焼き付け後の冷却時や、製造時または使用時の熱衝撃などでセラミック素体(素子本体)と外部電極との接合強度が低下してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-171912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされ、素子本体と外部電極との接合強度が高いセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るセラミック電子部品は、セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
前記素子本体が、前記セラミック層の端部に境界層を有し、
前記セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、
前記境界層にはBaおよびTiが主成分として含まれ、
前記境界層に含まれるBaおよびTiの合計を1モル部としたとき、
前記境界層にはBaが0.27~0.40モル部含まれる。
【0007】
本発明に係るセラミック電子部品によれば、焼き付け時の冷却時や、製造時または使用時の熱衝撃などで、外部電極とセラミック層との界面に熱応力が生じることを有効に防止することができる。その理由は下記の通りであると考えられる。
【0008】
本発明では、セラミック層にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、素子本体がセラミック層の端部にBaおよびTiを所定のモル比で含む境界層を有することとしている。ここで、ABOの「A」はBaの置換可能成分であり、「B」はTiの置換可能成分である。このため、セラミック層および境界層は、相互拡散し易く、セラミック層と境界層とが強固に接合されると考えられる。
【0009】
さらに、境界層のTiの含有量がBaの含有量より多いため外部電極と境界層とが強固に接合されると考えられる。本発明では、このようにセラミック層および境界層が強固に接合されると共に、外部電極および境界層も強固に接合されることから、素子本体と外部電極とが強固に接合されている。なお、接合強度が高いことは、たとえば引張強度試験などで確認することができる。
【0010】
前記ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たしてもよい。
【0011】
好ましくは、(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物は、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1および0≦d<1の式を満たす。
【0012】
セラミック層および境界層に、共にBaおよびTiを含ませることで、より相互拡散し易く、セラミック層と境界層とがより強固に接合される。
【0013】
前記外部電極に含まれる導体にはCu、Cu合金、AgおよびAg合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれる。
【0014】
これにより、境界層の線膨張係数γが導体の線膨張係数βより小さく、セラミック層の線膨張係数αより大きくなる。本発明では、このような境界層が備えられていることにより外部電極とセラミック層との界面に生じる熱応力を緩和することができ、セラミック層と外部電極との接合強度をより高めることができると考えられる。
【0015】
前記外部電極は前記境界層側の面の少なくとも一部に界面突起部を有してもよい。
【0016】
好ましくは、前記界面突起部にはBa、TiおよびSiが主成分として含まれ、
前記界面突起部に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、
前記界面突起部にはBaが0.35~0.45モル部含まれ、
前記界面突起部にはTiが0.10~0.30モル部含まれ、
前記界面突起部にはSiが0.35~0.45モル部含まれる。
【0017】
境界層および界面突起部に、共にBaおよびTiを含ませることで、相互拡散し易く、境界層と界面突起部とが強固に接合される。また、Ba、TiおよびSiを所定のモル比で含む界面突起部は比較的線膨張係数が低い。このような界面突起部が外部電極の境界層側の面に備えられていることにより、焼き付け時の冷却時に外部電極を構成する成分が界面突起部を熱応力で締め付ける。これにより、セラミック層と外部電極とをより強固に接合することができ、接合強度をより高めることができると考えられる。
【0018】
好ましくは、前記境界層の平均厚みは2~20μmである。
【0019】
境界層の平均厚みが上記の範囲内であることにより、静電容量を確保しつつ、接合強度をより高めることができる。
【0020】
好ましくは、前記内部電極層と接するように前記境界層が備えられており、
前記内部電極層はNiまたはNi合金を主成分として含む。
【0021】
本発明では、内部電極層と接するように境界層が備えられており、セラミック層の線膨張係数α、境界層の線膨張係数γおよび内部電極層の線膨張係数σの大小関係がγ>σ>αとなっている。このような関係である場合、内部電極層に線膨張係数の近い境界層が接することになり、素子本体の表面付近のセラミック層と内部電極層との剥がれを抑制できる効果が高められる。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るセラミック電子部品は、セラミック層と内部電極層とが積層された素子本体と、
前記内部電極層の少なくとも一端と電気的に接続している外部電極と、を有するセラミック電子部品であって、
前記素子本体が、前記セラミック層の端部に境界層を有し、
前記セラミック層の線膨張係数をαとし、
前記外部電極の線膨張係数をβとし、
前記境界層の線膨張係数をγとしたとき、
α、βおよびγの大小関係は、β>γ>αとなる。
【0023】
好ましくは、前記外部電極は前記境界層側の面の少なくとも一部に界面突起部を有し、
前記界面突起部の線膨張係数をδとしたとき、
α、β、γおよびδの大小関係は、β>γ>α>δとなる。
【0024】
好ましくは、前記内部電極層と接するように前記境界層が備えられており、
前記内部電極層の線膨張係数をσとしたとき、
α、γおよびσの大小関係は、γ>σ>αとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
図2図2は、図1のII部の拡大図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの拡大図である。
図4図4は、図3のIV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1実施形態
本発明に係るセラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。図1に、一般的な積層セラミックコンデンサ2の断面図を示す。
【0027】
積層セラミックコンデンサ2は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な誘電体層(セラミック層)10と内部電極層12とを有し、誘電体層10と内部電極層12がZ軸方向に沿って交互に積層された素子本体4を有する。
【0028】
ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していても良いことを意味し、誘電体層10と内部電極層12は、多少、凹凸があったり傾いていたりしてもよいという趣旨である。なお、本実施形態において、X軸、Y軸およびZ軸は相互に垂直である。
【0029】
また、図1によれば、素子本体4のX軸方向の端面は、平面であり、言い換えると、誘電体層10と内部電極層12とが面一となるように積層されている。しかし、素子本体4のX軸方向の端面は、平面でない部分を有していてもよい。また、誘電体層10と内部電極層12とが面一とならずに、たとえば誘電体層10の一部が削れていたり、内部電極層12の一部が突き出た状態で積層されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、交互に積層される一方の内部電極層12は、素子本体4のX軸方向の一方の端部の外側に形成してある外部電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、素子本体4のX軸方向の他方の端部の外側に形成してある外部電極6の内側に対して電気的に接続してある。
【0031】
本実施形態では、素子本体4の形状および寸法は特に限定されない。形状は、楕円柱状、円柱状、その他角柱状などであってもよい。素子本体4のX軸方向の長さL0は、たとえば0.4~5.7mmとしてもよい。素子本体4のY軸方向の長さW0は、たとえば0.2~5.0mmとしてもよい。素子本体4のZ軸方向の長さT0は、たとえば0.2~2.5mmとしてもよい。
【0032】
誘電体層10の厚みは特に限定されない。たとえば内部電極層12に挟まれている誘電体層10の厚みTdは30μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
【0033】
誘電体層10の積層数は特に限定されないが、好ましくは20以上であり、より好ましくは50以上である。
【0034】
誘電体層10の材料は特に限定されないが、本実施形態では、誘電体層10にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれる。
【0035】
誘電体層10の主成分とは、誘電体層10に90質量%以上含まれる成分である。
【0036】
ABOで表されるペロブスカイト型化合物は、たとえば(Ba1-a-bSrCa(Ti1-c-dZrHf)Oで表されるペロブスカイト型化合物であり、0.94<m<1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1および0≦d≦1の式を満たしてもよい。
【0037】
mはAサイトとBサイトの元素比率を示し、たとえば0.94<m<1.1である。
【0038】
aはSrの元素比率を示し、たとえば0≦a≦1であり、好ましくは0≦a<1であり、より好ましくは0≦a≦0.1である。
【0039】
bはCaの元素比率を示し、0≦b≦1であり、好ましくは0≦b<1であり、より好ましくは0≦b≦0.1である。
【0040】
cはZrの元素比率を示し、0≦c≦1であり、好ましくは0≦c<1であり、より好ましくは0≦c≦0.15である。
【0041】
dはHfの元素比率を示し、0≦d≦1であり、好ましくは0≦d<1であり、より好ましくは0≦d≦0.05である。
【0042】
なお、上記組成式における酸素(O)の元素比率は、化学量論組成から多少偏奇していてもよい。
【0043】
本実施形態に係る誘電体層10は、これらの主成分の他にMn化合物、Mg化合物、Cr化合物、Ni化合物、希土類元素化合物、Si化合物、Li化合物、B化合物、V化合物などの副成分を含んでいてもよい。副成分の種類や組み合わせ、およびその添加量は特に限定されない。
【0044】
図2図1のII部の拡大図である。図2に示すように、本実施形態に係る素子本体4は、誘電体層10のX軸方向の端部に境界層14を有する。また、境界層14は内部電極層12と接するように備えられている。
【0045】
境界層14は、外部電極6の導体61と内部電極層12との接続が確保されるように素子本体4のX軸方向の端面を断続的に覆っている。すなわち、境界層14は、内部電極層12のX軸方向の端部が導体61と接続する部分では、部分的に途切れている。
【0046】
外部電極6と、内部電極層12との接続界面は明確でなくてもよく、外部電極6の一部が境界層14の内部に入り込んでもよく、あるいは、内部電極層12の端部が境界層14の内部に入り込んでもよい。
【0047】
なお、外部電極6がX軸方向の素子本体4の端面からZ軸方向の素子本体4の端面に跨って形成されている場合には、境界層14は、X軸方向の端面だけでなくZ軸方向の端面にも形成されていることが好ましい。
【0048】
X-Z断面を観察した場合、素子本体4のX軸方向の端面付近では、境界層14が一部の内部電極層12のX軸方向の端部を覆っている箇所が存在していてもよい。各内部電極層12は、X軸方向だけでなくY軸方向に沿っても存在しており、各内部電極層12の端部がY軸方向において一部でも境界層14を貫通して外部電極6と電気的に接続していれば、内部電極層12の端部が部分的に境界層14に覆われていたとしても、各内部電極層12と外部電極6との電気的接続は確保できる。
【0049】
本実施形態に係る境界層14にはBaおよびTiが主成分として含まれる。
【0050】
「境界層14にはBaおよびTiが主成分として含まれる」とは、境界層14において、酸素以外の元素の合計を100モル部としたとき90モル部以上をBaおよびTiの合計が占めるという趣旨である。
【0051】
本実施形態では、境界層14に含まれるBaおよびTiの合計を1モル部としたとき、境界層14にはBaが0.27~0.40モル部含まれることが好ましい。この場合に、境界層14の線膨張係数γは13.0ppm/℃~14.5ppm/℃の範囲に含まれる傾向となる。本実施形態では、境界層14がBaTiであることがさらに好ましい。
【0052】
誘電体層10の線膨張係数をαとし、外部電極6の線膨張係数をβとしたとき、α、βおよびγの大小関係は、β>γ>αとなることが好ましい。
【0053】
たとえば、誘電体層10の主成分であるBaTiOの線膨張係数αは9.4ppm/℃である。また、外部電極6に用いられるCuの線膨張係数βは17.5ppm/℃である。さらに、境界層14を構成するBaTiの線膨張係数γは13.3ppm/℃である。
【0054】
また、内部電極層12の線膨張係数をσとしたとき、α、β、γおよびσの大小関係は、β>γ>σ>αとなることが好ましい。
【0055】
境界層14には、BaおよびTiの他に、セラミック層10を構成する成分が含まれていてもよい。具体的な元素としては、Si、Mg、Al、Bなどが挙げられる。境界層14にセラミック層10を構成する成分が含まれることで、セラミック層10に対する境界層14の接合強度がより向上すると考えられる。
【0056】
なお、境界層14に含まれるセラミック層10を構成する成分は、境界層用ペーストに意図的に含ませてもよいし、セラミック層10から拡散されることにより境界層14に含まれることになってもよい。
【0057】
境界層14には、BaおよびTiの他に、外部電極6を構成する成分が含まれていてもよい。境界層14に外部電極6を構成する成分が含まれることで、外部電極6に対する境界層14の接合強度がより向上すると考えられる。
【0058】
なお、境界層14に含まれる外部電極6を構成する成分は、境界層用ペーストに意図的に含ませてもよいし、外部電極6から拡散されることにより境界層14に含まれることになってもよい。
【0059】
境界層14には、BaおよびTiの他に、内部電極層12を構成する成分が含まれていてもよい。境界層14に内部電極層12を構成する成分が含まれることで、内部電極層12に対する境界層14の接合強度がより向上すると考えられる。
【0060】
なお、境界層14に含まれる内部電極層12を構成する成分は、境界層用ペーストに意図的に含ませてもよいし、内部電極層12から拡散されることにより境界層14に含まれることになってもよい。
【0061】
境界層14のX軸方向の平均長さLr(境界層14の平均厚み)は1.8~20.2μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく3.1~16.2μmであることがさらに好ましい。
【0062】
なお、境界層14のX軸方向の長さLrは、素子本体4への境界層用ペーストの塗布厚み、境界層用ペーストの無機物含有量、境界層用ペーストの焼き付け温度、または境界層用ペーストの焼き付け温度の保持時間などに影響される。境界層用ペーストの焼き付け温度が高ければ高いほど、境界層14のX軸方向の長さLrは長くなる傾向となる。
【0063】
境界層14のX軸方向の長さLrの平均値が上記の範囲内であることにより、静電容量を確保しつつ、接合強度をより高めることができる。
【0064】
内部電極層12に含有される導電材は特に限定されないが、好ましくは、Ni、Ni系合金、CuまたはCu系合金、AgまたはAg系合金、PdまたはPd系合金などが例示される。なお、Ni、Ni系合金、CuまたはCu系合金中には、P等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。本実施形態では、内部電極12はNiまたはNi合金を主成分として含んでもよい。また、NiまたはNi合金を主成分とする場合には、Mn、Cu、Crなどから選ばれる1種以上の副成分を含んでいてもよい。
【0065】
内部電極層12の主成分とは、内部電極層12の90質量%以上を占める成分である。
【0066】
また、内部電極層12は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層12の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。たとえば内部電極層12の1層あたり厚みTeはたとえば3.0μm以下とすることができる。
【0067】
本実施形態の外部電極6は、内部電極層12の少なくとも一部と電気的に接続するように素子本体4に形成されている。
【0068】
外部電極6の表面はめっきを有していても良く、導電性樹脂およびめっきを有していても良い。
【0069】
外部電極6を構成する導体61の成分は特に限定されない。たとえばCu、Agあるいはこれらの合金等公知の導電材を用いればよい。なお、本実施形態では、導体61はCu、Cu合金、AgおよびAg合金からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含んでもよい。
【0070】
導体61の主成分とは、めっき等による被覆層以外に含まれる導体61に90質量%以上含まれる成分である。
【0071】
なお、導体61がCuを含む場合には、Al、Ni、Ag、Pd、Sn、Zn、P、Mnなどの元素が含まれていてもよい。
【0072】
外部電極6の厚みLeは特に限定されないが、たとえば10~200μmである。
【0073】
本実施形態では、外部電極6に非金属成分62が含まれていてもよく、たとえばSiOを含むガラスが存在してもよく、B-SiOを含むガラスが存在してもよい。
【0074】
境界層14の構造は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)などによる断面観察で解析できる。また、境界層14の組成は、断面観察の際に、EPMA(電子線マイクロアナライザ)による成分分析を行うことで測定できる。成分分析は少なくとも3箇所以上で実施し、測定結果の平均値により境界層14の組成を算出することが好ましい。本実施形態において、EPMAで成分分析を行う場合、X線分光器として、EDS(エネルギー分散型分光器)またはWDS(波長分散型分光器)を使用できる。
【0075】
次に、図1示す積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
【0076】
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるグリーンシートを製造するために、誘電体層用ペーストを準備する。
【0077】
誘電体層用ペーストは、通常、誘電体粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
【0078】
誘電体粉末の原料としては、上述した誘電体層10を構成することになる複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。
【0079】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、アクリル、エチルセルロース、ブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0080】
また、用いる有機溶剤も特に限定されず、シート法や印刷法など、利用する方法に応じて、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ターピネオール、ブチルカルビトール等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0081】
誘電体層用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリットなどから選択される添加物が含有されていてもよい。
【0082】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
【0083】
次いで、図1に示す内部電極層12を形成するための内部電極層用ペーストを準備する。内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属または合金からなる導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。導電材の代わりに、酸化物または有機金属化合物等も用いることができる。上記した酸化物および有機金属化合物は、焼成後に上記した導電材となる。なお、内部電極層用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末(たとえばチタン酸バリウム粉末)が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0084】
上記にて調整した誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを使用して、図1に示すように、焼成後に誘電体層10となるグリーンシートと、焼成後に内部電極層12となる内部電極パターン層と、を交互に積層し、焼成後に素子本体4となるグリーン積層体を製造する。
【0085】
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、グリーンシートを形成する。グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
【0086】
次いで、上記にて形成したグリーンシートの表面に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を形成し、内部電極パターン層を有するグリーンシートを得る。そして、得られた内部電極パターン層を有するグリーンシートを交互に積層し、グリーン積層体を得る。
【0087】
なお、内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されないが、印刷法、転写法などが例示される。なお、接着層を介して内部電極パターン層を有するグリーンシートを積層してもよい。
【0088】
得られたグリーン積層体は、所定の寸法に切断され、グリーンチップとする。グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化されてもよい。固化乾燥後のグリーンチップは、メディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入され、水平遠心バレル機などにより、バレル研磨されてもよい。バレル研磨後のグリーンチップは、水で洗浄され、乾燥される。固化乾燥とバレル研磨は必ずしも行わなくてもよい。
【0089】
乾燥後のグリーンチップに対して、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、図1に示す素子本体4が得られる。
【0090】
脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5~300℃/時間、保持温度を好ましくは180~400℃、温度保持時間を好ましくは0.5~24時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気または還元性雰囲気とする。
【0091】
焼成時の保持温度は、好ましくは1200~1350℃、より好ましくは1220~1300℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは1~3時間である。
【0092】
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
【0093】
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10-14~10-10MPaとすることが好ましい。
【0094】
還元性雰囲気中で焼成した後、素子本体4にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層10を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命(高温負荷寿命)を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0095】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10-9~10-5MPaとすることが好ましい。酸素分圧を10-9MPa以上とすることで、誘電体層10の再酸化を効率的に行い易くなる。
【0096】
アニールの際の保持温度は、950~1150℃とすることが好ましい。保持温度を950℃以上とすることで誘電体層10を十分に酸化させ易くなり、IR(絶縁抵抗)およびIR寿命を向上させ易くなる。
【0097】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0~20時間、降温速度を好ましくは50~500℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0098】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5~75℃程度が好ましい。
【0099】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0100】
次に、素子本体4のX軸方向の両端面に、境界層用ペーストを塗布し、焼き付けることにより、境界層14を形成する。この境界層用ペーストは、たとえば境界層用粉末と、エチルセルロースを主成分とするバインダと分散媒であるターピネオールとをミキサーで混練して得られる。
【0101】
ここで、境界層用粉末とは、たとえばTiOおよびBaCOの組み合わせ、またはBaTiなどである。
【0102】
素子本体4への境界層用ペーストの塗布方法は特に限定されず、たとえば、ディップ、印刷、塗布、蒸着、噴霧等の方法が挙げられる。
【0103】
境界層用ペーストが塗布された素子本体4を乾燥した後、境界層用ペーストが塗布された素子本体4のX軸方向の両端面に、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けて、外部電極6を形成する。外部電極用ペーストは、外部電極6を構成する導電材およびガラスを含むこと以外は、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。なお、外部電極用ペーストに含まれるガラスは、外部電極6の境界層14との界面付近以外の領域に存在するガラスとなる。ガラスはSiOを含むことが好ましく、B-SiOを含むことがより好ましい。
【0104】
外部電極6の焼き付け条件は特に限定されず、たとえば、加湿Nまたは乾燥Nの雰囲気において、800℃~1000℃、0.1時間~3時間保持し、焼き付けられる。
【0105】
なお、この場合でも外部電極6の導体61と内部電極層12とは導通をとることができる。なぜならば、内部電極層12の導電材と導体61となる金属粉末とが反応した後に、境界層14を構成するBaTiまたはTiOなどと、誘電体層10を構成するABOと、が反応するため、内部電極層12のX軸方向の端部に境界層用ペーストによる酸化物が形成されにくいからである。
【0106】
そして、必要に応じ、外部電極6の表面に、導電性樹脂および/またはめっき等により被覆層を形成する。たとえばCuを含む上記の焼付電極の表面に導電性樹脂を形成し、その上にNiめっきを形成し、さらにその上にSnめっきを形成してもよい。
【0107】
このようにして製造された積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0108】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2によれば、焼き付け時の冷却時や、製造時または使用時の熱衝撃などで、外部電極6と誘電体層10との界面に熱応力が生じることを有効に防止することができる。その理由は下記の通りであると考えられる。
【0109】
本実施形態では、誘電体層10にはABOで表されるペロブスカイト型化合物が主成分として含まれ、素子本体4が誘電体層10の端部にBaおよびTiを所定のモル比で含む境界層14を有することとしている。ここで、ABOの「A」はBaの置換可能成分であり、「B」はTiの置換可能成分である。このため、誘電体層10および境界層14は、相互拡散し易く、誘電体層10と境界層14とが強固に接合されると考えられる。
【0110】
さらに、境界層14のTiの含有量がBaの含有量より多いため外部電極6と境界層14とが強固に接合されると考えられる。なお、この効果は、境界層用ペーストと外部電極用ペーストとを同時に焼き付けることにより、より顕著になると考えられる。
【0111】
本実施形態では、このように誘電体層10および境界層14が強固に接合されると共に、外部電極6および境界層14も強固に接合されることから、素子本体4と外部電極6とが強固に接合されている。
【0112】
また、誘電体層10および境界層14に、共にBaおよびTiを含ませることで、より相互拡散し易く、誘電体層10と境界層14とがより強固に接合される。
【0113】
さらに、外部電極6にはCu、Cu合金、AgおよびAg合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が主成分として含まれることにより、境界層14の線膨張係数γが外部電極6の線膨張係数βより小さく、誘電体層10の線膨張係数αより大きくなる。本実施形態では、このような境界層14が備えられていることにより外部電極6と誘電体層10との界面に生じる熱応力を緩和することができ誘電体層10と外部電極6との接合強度をより高めることができると考えられる。
【0114】
さらに、内部電極層12がNiまたはNi合金を主成分として含む場合には、誘電体層10の線膨張係数α、境界層14の線膨張係数γおよび内部電極層12の線膨張係数σの大小関係がγ>σ>αとなっている。また、本実施形態では、内部電極層12と接するように境界層14が備えられている。このため、内部電極層12に線膨張係数の近い境界層14が接することになり、素子本体4の表面付近の誘電体層10と内部電極層12の剥がれを抑制できる効果が高められる。
【0115】
なお、上記では、グリーンチップを焼成して素子本体4として、その後に、素子本体4に境界層14を焼き付けたが、焼成前のグリーンチップに上記の境界層用ペーストを塗布して、グリーンチップと共に焼成することにより境界層14を形成してもよい。
【0116】
また、上記では、境界層用ペーストと外部電極用ペーストとを同時に焼き付けたが、境界層用ペーストを焼き付けた後に、外部電極6を形成してもよい。
【0117】
なお、この場合は、境界層14が形成された素子本体4のX軸方向の両端面に、たとえばバレル研磨、サンドブラストまたはレーザーなどにより端面研磨を施す。これにより、内部電極層12のX軸方向の両端面に形成された境界層用ペーストによる酸化物を除去する。そして、その後に外部電極6を形成する。外部電極6の形成方法については特に限定されず、外部電極用ペーストの塗布・焼き付け、めっき、蒸着、スパッタリングなどの適宜の方法を用いることができる。
【0118】
さらに、上記では境界層用ペーストを用いたが、境界層用ペーストは用いずに、外部電極用ペースト中にTi過剰物を入れて外部電極用ペーストを焼き付けることにより境界層14を形成してもよい。なお、Ti過剰物とは、BaおよびTiの合計を1モル部としたとき、Baが0.27~0.40モル部含まれる物質のことである。たとえば、BaTiであってもよいし、TiO、BaCO、BaTiOおよびBaTiからなる群から選ばれる2以上の混合物などが挙げられる。
【0119】
第2実施形態
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサと同様である。
【0120】
図3図1のIIの拡大図であるが、図3に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体層10のX軸方向の端部に形成された境界層14に接続され、外部電極6の内部に食い込んで形成される不定形の界面突起部16を有する。
【0121】
本実施形態における界面突起部16は、アンカー効果が得られる形状であることが好ましい。「アンカー効果が得られる形状」とは、界面突起部16が境界層14の外面(Y-Z平面)に沿って薄く広がるのではなく、図3に示すように、境界層14の外面から外部電極6の内部に向かって(すなわちX軸方向の外側に向かって)、3次元的に広がることを意味する。
【0122】
図4図3のIV部の拡大図である。図4に示すように、好ましくは、界面突起部16はX軸方向においてくびれを有する。具体的には、界面突起部16はZ軸方向に幅が狭い幅狭部16aを有し、幅狭部16aと連続する界面突起部16のX軸方向の外側方向にZ軸方向に幅が広い幅広部16bを有する。すなわち、幅狭部16aがくびれ部分である。このような形状は、たとえば界面突起部用ペーストに添加する界面突起部用粒子の形状を制御することにより実現できる。界面突起部16の形状が上記の特徴を有することにより、素子本体4に対する外部電極6の接合強度がより向上する。
【0123】
界面突起部16は、素子本体4と外部電極6との界面付近のZ軸方向の所定長さLz中に、所定の数以上存在することが好ましい。具体的には、素子本体4と外部電極6の界面付近を含む断面(X-Z断面)において、所定長さLzを100μmとすると、界面突起部16が0.6個以上存在することが好ましく、2個以上存在することがより好ましい。界面突起部16の個数の上限は特に制限されないが、内部電極層12と外部電極6との電気的接続を確保する観点から、20個以下であることが好ましい。
【0124】
なお、所定長さLzは素子本体4と外部電極6との界面付近の2点間の距離である。このため、素子本体4と外部電極6の界面に凹凸がある場合には、所定長さLzは凹凸の長さではなく、凹凸上の2点を決定して、その2点間の距離を所定長さLzとする。
【0125】
本実施形態に係る界面突起部16にはBa、TiおよびSiが主成分として含まれる。
【0126】
「界面突起部16にはBa、TiおよびSiが主成分として含まれる」とは、界面突起部16において、酸素以外の元素の合計を100モル部としたとき90モル部以上をBa、TiおよびSiの合計が占めるという趣旨である。
【0127】
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはBaが0.35~0.45モル部含まれることが好ましい。
【0128】
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはTiが0.10~0.30モル部含まれることが好ましい。
【0129】
本実施形態では、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モル部としたとき、界面突起部16にはSiが0.35~0.45モル部含まれることが好ましい。
【0130】
本実施形態では、界面突起部16の組成は、BaTi(SiOであることであることがさらに好ましい。
【0131】
本実施形態に係る界面突起部16の線膨張係数をδとしたとき、α、β、γおよびδの大小関係は、β>γ>α>δとなることが好ましい。
【0132】
たとえば、界面突起部16の主成分であるBaTi(SiOの線膨張係数δは5.9ppm/℃である。
【0133】
本実施形態では、外部電極6の境界層14との界面付近以外の領域にSiO、好ましくはB-SiOを含むガラスが存在してもよい。
【0134】
界面突起部16の構造は、SEMまたはSTEMなどによる断面観察で解析することができる。また、界面突起部16の成分分析は、上記の境界層14と同様にEPMAなどにより行うことができる。
【0135】
本実施形態に係る界面突起部16を有する積層セラミックコンデンサを製造する方法は特に限定されず、界面突起部16を構成する化合物(界面突起部用粒子)と、導電材と、を含む界面突起部用ペーストを用いる以外は第1実施形態と同様にして製造することができる。「界面突起部用粒子」とは、上記した界面突起部16の組成を満たす化合物であることが好ましく、たとえばBaTi(SiOである。
【0136】
界面突起部用ペーストは、少なくとも外部電極6の導体61を構成する金属粉末および界面突起部用粒子を含むこと以外は、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調整すればよい。
【0137】
本実施形態では、たとえば、焼成された素子本体4に、境界層用ペーストを塗布し、その上に界面突起部用ペーストを塗布し、その上に外部電極用ペーストを塗布し、境界層用ペースト、界面突起部用ペーストおよび外部電極用ペーストを同時焼き付けする。焼き付け温度は特に限定されないが、800~1000℃である。
【0138】
なお、この場合でも外部電極6の導体61と内部電極層12とは導通をとることができる。なぜならば、内部電極層12は金属で構成されており、境界層14は、酸化物であるから、酸化物である界面突起部用粒子は、内部電極層12に対して濡れにくく、境界層14に対して濡れ易い。このため、界面突起部用粒子は境界層14に多く集まる。したがって、界面突起部用粒子が導体61と内部電極層12との導通を阻害する可能性が低いからである。さらに、内部電極層12の導電材と外部電極6の導体61となる金属粉末とが反応した後に、界面突起部16を構成するBaTi(SiOなどと、境界層14を構成するBaTiなどと、誘電体層10を構成するABOとが反応するため、内部電極層12のX軸方向の端部に境界層用ペーストによる酸化物が形成されにくい。
【0139】
なお、外部電極用ペーストに含まれるガラスは、外部電極6の境界層14との界面付近以外の領域に存在するガラスとなる。
【0140】
境界層14および界面突起部16に、共にBaおよびTiを含ませることで、相互拡散し易く、境界層14と界面突起部16とが強固に接合される。なお、この効果は、境界層用ペーストと界面突起部用ペーストとを同時に焼き付けることにより顕著に表れると考えられる。
【0141】
また、Ba、TiおよびSiを所定のモル比で含む界面突起部16は比較的線膨張係数が低い。このような界面突起部16が外部電極6の境界層14側の面に備えられていることにより、焼き付け時の冷却時に外部電極6を構成する成分が界面突起部16を熱応力で締め付ける。これにより、誘電体層10と外部電極6とをより強固に接合することができ、接合強度をより高めることができると考えられる。
【0142】
さらに、外部電極6の境界層14との界面付近以外の領域にSiOなどを含むガラスが存在することにより、BaTi(SiOなどにより構成される界面突起部16の組成ずれを抑制することができる。
【0143】
本実施形態では、境界層用ペースト、界面突起部用ペーストおよび外部電極用ペーストを同時に焼き付けたが、境界層用ペーストおよび界面突起部用ペーストを焼き付けた後に、外部電極用ペーストなどにより外部電極6を形成してもよい。
【0144】
また、境界層用ペーストを焼き付けた後にバレル研磨をして内部電極層12と外部電極6とが導通をとれるようにし、その後、界面突起部用ペーストを焼き付けて、界面突起部用ペーストを焼き付けた後に外部電極用ペーストなどにより外部電極6を形成してもよい。
【0145】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0146】
たとえば、本発明のセラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他のセラミック電子部品に適用することが可能である。その他のセラミック電子部品としては、セラミック層と外部電極とを有する全ての電子部品であり、たとえば円板形コンデンサ、バンドパスフィルタ、三端子フィルタ、圧電素子サーミスタなどが例示される。
【0147】
また、本実施形態では、セラミック層10と内部電極層12とをZ軸方向に積層したが、積層方向は、X軸方向またはY軸方向であってもよい。その場合、内部電極層12の露出面に合わせて外部電極6を形成すればよい。さらに、素子本体4は積層体でなくてもよく、単層であってもよい。さらに、内部電極層12は、スルーホール電極を介して、素子本体4の外面に引き出されていてもよく、この場合、スルーホール電極と外部電極6とが電気的に接続する。
【実施例0148】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0149】
試料番号1
誘電体粉末の主原料としてBaTiO粉末を準備した。次に主原料100モル部に対して、副成分としてのMgCO粉末を1.6モル部秤量し、Dy粉末を1.0モル部秤量し、MnCO粉末を0.4モル部秤量し、V粉末を0.06モル部秤量し、SiO粉末を2.0モル部秤量した。これら副成分の各粉末をボールミルで湿式混合、乾燥、仮焼きして、副成分仮焼き粉末を得た。
【0150】
次いで、誘電体粉末の主原料:100質量部と、上記にて得られた副成分仮焼き粉末と、アクリル樹脂:7質量部と、可塑剤としてのフタル酸ブチルベンジル(BBP):4質量部と、溶媒としてのメチルエチルケトン:80質量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0151】
また、上記とは別に、Ni粒子:56質量部と、ターピネオール:40質量部と、エチルセルロース(分子量14万):4質量部と、ベンゾトリアゾール:1質量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0152】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。内部電極層用ペーストをスクリーン印刷し、グリーンシートを形成した。
【0153】
グリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0154】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、焼結体(素子本体4)を得た。
【0155】
脱バインダ処理条件は、保持温度:260℃、雰囲気:空気中とした。
【0156】
焼成条件は、保持温度:1250℃とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10-9MPa以下となるようにした。
【0157】
アニール条件は、保持温度:1050℃、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10-8MPa以下)とした。
【0158】
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
【0159】
次に、表1の「境界層」に示されるBaおよびTiの含有量になるように、TiO、BaTi、BaTi、BaTiおよびBaTiOから選択し、境界層用粉末を準備した。
【0160】
境界層用粉末と、エチルセルロースを主成分とするバインダと、分散媒であるターピネオールおよびアセトンと、をミキサーで混練し、境界層用ペーストを調製した。
【0161】
素子本体4のX軸方向の両端面に境界層用ペーストをディップ法で塗布し、乾燥した。
【0162】
次に、表1の「界面突起部」に示されるBa、TiおよびSiの含有量になる化合物を準備して、界面突起部用粒子とした。
【0163】
界面突起部用粒子と、Cu粒子とを含む界面突起部用ペーストを準備した。
【0164】
素子本体4のX軸方向の両端面の乾燥された境界層用ペーストを覆うように、界面突起部用ペーストを塗布し、800℃で焼き付けた。
【0165】
次に、B-SiOを含むガラス粒子と、Cu粒子とを含む外部電極用ペーストを準備した。
【0166】
素子本体4の界面突起部用ペーストが焼き付けられたX軸方向の両端面に外部電極用ペーストをディップ法により塗布し、800℃で焼き付けた。このようにして、外部電極6が形成されたコンデンサ試料2(積層セラミックコンデンサ2)を得た。
【0167】
得られたコンデンサ試料2の素子本体4のサイズは、L0×W0×T0=2.0mm×1.25mm×1.25mmであった。また、内部電極層12に挟まれた誘電体層10の数は80であった。
【0168】
得られたコンデンサ試料をX-Z面に平行に切断して、得られた断面を鏡面研磨した後にSEMにより撮影した。また、得られた積層セラミックコンデンサの断面の境界層14の部分と界面突起部16の部分についてEPMAにより元素分析を行ったところ、境界層用粉末の元素組成と境界層14の元素組成は概ね一致しており、界面突起部用粒子の元素組成と界面突起部16の元素組成は概ね一致していることが確認できた。また、SEM観察とEPMAによる元素分析により、試料番号1では、誘電体層10のX軸方向の端部に境界層14が形成されており、外部電極6の境界層14側の面に界面突起部16が100μmの長さ(所定長さLz)あたりに平均で7個形成されていることが確認できた。
【0169】
なお、界面突起部16の個数平均は下記の方法により算出した。すなわち、素子本体4と外部電極6の界面付近を含む断面(X-Z断面)において、所定長さLz(100μm)を含むように10か所撮影し、各写真における所定長さLzあたりの界面突起部16の個数を数えて、平均値を求めた。
【0170】
また、内部電極層12に挟まれた誘電体層10の厚み、内部電極層12の厚み、境界層14の長さ、外部電極6の厚みを測定した。それぞれ10か所測定して平均値を求めた。結果は下記の通りであった。
【0171】
内部電極層12に挟まれた誘電体層10の平均厚みTd:10μm
内部電極層12の平均厚みTe:1.5μm
境界層14の平均長さLr:8.2μm
外部電極6の平均厚みLe:89μm
【0172】
得られたコンデンサ試料2の誘電体層10の線膨張係数α、外部電極6の線膨張係数β、境界層14の線膨張係数γ、界面突起部16の線膨張係数δ、内部電極層12の線膨張係数σ、引張強度試験および85℃熱衝撃引張強度試験を下記の方法により行った。
【0173】
線膨張係数
BaTiOと(Ba0.97Ca0.03)TiOのαの線膨張係数は9.4ppm/℃とし、βの線膨張係数は17.5ppm/℃とし、σの線膨張係数は12.5ppm/℃とした。γとδの線膨張係数は、組成に合わせて焼結体を作製し、熱機械分析(TMA)により空気中で20~400℃の範囲の値から測定した。大小関係を表1に示す。
【0174】
引張強度試験
引張強度試験として、アキシャルリードの引張り試験を行った。具体的には、コンデンサ試料2の外部電極6のそれぞれにSn-Ag-Cuはんだを使用してリード線と接合し、シンナーで超音波洗浄した。一方のリード線は試験台に固定し、他方のリード線を200Nのロードセルを使用してスピード10mm/minで徐々に引っ張り、素子本体4から外部電極6が引き剥がされた際の力を測定し、引張強度とした。10個のコンデンサ試料で試験を行った。平均値を表1に示す。
【0175】
85℃熱衝撃引張強度試験
熱衝撃として、気槽-55℃での30分保持および気槽85℃での30分保持の繰り返しを100サイクル実施したコンデンサ試料2を準備した。このコンデンサ試料2について上記の引張強度試験と同様の試験を行い、素子本体4から外部電極6が引き剥がされた際の力を測定し、85℃熱衝撃引張強度とした。10個のコンデンサ試料で試験を行った。平均値を表1に示す。
【0176】
試料番号2
試料番号2では、素子本体4に境界層用ペーストを塗布した後、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けることにより外部電極6を形成した以外は試料番号1と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張強度試験及び85℃熱衝撃引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
【0177】
試料番号3
試料番号3では、素子本体4に境界層用ペーストを塗布せずに、外部電極用ペーストを塗布し焼き付けることにより外部電極6を形成した以外は試料番号1と同様にしてコンデンサ試料を得て、引張強度試験及び85℃熱衝撃引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
【0178】
試料番号4
試料番号4では、誘電体粉末の主原料としてBaTiO粉末ではなく(Ba0.97Ca0.03)TiO粉末を用いた以外は試料番号1と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張強度試験及び85℃熱衝撃引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
試料番号1~4より、境界層14が具備される場合(試料番号1、2および4)は、境界層14が具備されない場合(試料番号3)に比べて引張強度および85℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。
【0181】
試料番号1、2および4より、界面突起部16が具備される場合(試料番号1および4)は界面突起部16が具備されない場合(試料番号2)に比べて引張強度および85℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。
【0182】
試料番号11
試料番号11では、焼成する前のグリーンチップの状態において、グリーンチップのX軸方向の端部に境界層用ペーストを塗布して、素子本体4の焼成と同時に境界層14を形成し、バレル研磨をした後に外部電極用ペーストを塗布して外部電極6を形成した以外は試料番号2と同様にしてコンデンサ試料2を得て引張強度試験を行った。結果を表2に示す。
【0183】
試料番号12
試料番号12では、素子本体4に境界層用ペーストを塗布した後、境界層用ペーストを焼き付けて、バレル研磨をし、その後に外部電極用ペーストを塗布して焼き付けた以外は試料番号2と同様にしてコンデンサ試料2を得て引張強度試験を行った。結果を表2に示す。
【0184】
試料番号13
試料番号13では、素子本体4に境界層用ペーストを塗布せずに、Ti過剰物およびCu粒子を含む外部電極用ペーストを塗布して焼き付けた以外は試料番号2と同様にしてコンデンサ試料を得て引張強度試験を行った。結果を表2に示す。なお、Ti過剰物としては、BaTiを用いた。
【0185】
【表2】
【0186】
表2より、試料番号11、12、2および13は、境界層14の形成方法が異なるが、いずれの場合も引張強度が高いことが確認できた。
【0187】
試料番号1
上記の方法で得た試料番号1のコンデンサ試料2について、下記の方法により125℃熱衝撃引張強度試験を行った。
【0188】
125℃熱衝撃引張強度試験
熱衝撃として、気槽-55℃での30分保持および気槽125℃での30分保持の繰り返しを100サイクル実施したコンデンサ試料を準備した。このコンデンサ試料を上記の引張強度試験と同様の試験を行い、素子本体4から外部電極6が引き剥がされた際の力を測定し、125℃熱衝撃引張強度とした。10個のコンデンサ試料で試験を行った。平均値を表4に示す。
【0189】
試料番号21
試料番号21では、界面突起部用ペーストを塗布した後にすぐに焼き付けるのではなく、界面突起部用ペーストを塗布して、乾燥した後、外部電極用ペーストを塗布して、焼き付けた以外は試料番号1と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張強度試験、85℃引張強度試験および125℃引張強度試験を行った。結果を表4に示す。
【0190】
試料番号22
境界層用ペーストを800℃で焼き付けた後に、バレル研磨をして、界面突起部用ペーストを塗布して乾燥した。また、界面突起部用ペーストを焼き付ける前に、界面突起部用ペーストの上に外部電極用ペーストを塗布し、界面突起部用ペーストと外部電極用ペーストとを同時に焼き付けた。上記以外は、試料番号1と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張試験、85℃引張強度試験および125℃引張強度試験を行った。結果を表4に示す。
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
表3および表4より、試料番号21、3および22は、境界層14および界面突起部16の形成方法が異なるが、いずれの場合も引張強度および85℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。
【0194】
表3および表4より、境界層用ペーストおよび界面突起部用ペーストを同時に焼き付ける試料番号21および試料番号1は、試料番号22に比べて125℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。これは、試料番号21および試料番号1では、境界層用ペーストおよび界面突起部用ペーストを同時に焼き付けることにより、境界層用ペーストと界面突起部用ペーストの間でBaおよびTiが相互拡散し、接合が強固になったためであると考えられる。また、表3および表4より、境界層用ペースト、界面突起部用ペーストおよび外部電極用ペーストを同時に焼き付ける試料番号21は、試料番号1および試料番号22に比べて125℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。これは、試料番号21では、界面突起部用ペーストと外部電極用ペーストとが同時に焼き付けられたことにより、外部電極用ペーストに含まれるガラスに由来するSiの存在により、界面突起部用ペーストに含まれる界面突起部16を形成する化合物の組成ずれを防ぐことができ、所望の組成を満たす界面突起部16を得ることができたとことから、接合強度が高まったためであると考えられる。
【0195】
試料番号31~34
試料番号31~34では、境界層14を構成するBaおよびTiの含有量を表5に記載の通り変化させた以外は試料番号2と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張強度試験を行った。結果を表5に示す。
【0196】
【表5】
【0197】
表5より、境界層14に含まれるBaおよびTiの合計を1モルとしたときのBaの含有量が0.27~0.4である場合(試料番号32、2および33)は、境界層14に含まれるBaおよびTiの合計を1モルとしたときのBaの含有量が0.43である場合(試料番号31)および0.26である場合(試料番号34)に比べて、引張強度が高いことが確認できた。
【0198】
試料番号41~52
試料番号41~52では、界面突起部16を構成するBa、TiおよびSiの含有量を表6に記載の通り変化させた以外は試料番号1と同様にしてコンデンサ試料を得て、引張強度試験および85℃熱衝撃引張強度試験を行った。結果を表6に示す。
【0199】
【表6】
【0200】
表6より、界面突起部16に含まれるBa、TiおよびSiの合計を1モルとしたときの界面突起部16のBaの含有量が0.35~0.45モルであり、Tiの含有量が0.10~0.30モルであり、Siの含有量が0.35~0.45モルである場合(試料番号41、43、3および43~46)は、それ以外の場合(試料番号47~52)に比べて85℃熱衝撃引張強度が高いことが確認できた。
【0201】
試料番号61~64
試料番号61~64では、境界層用ペーストの塗布厚みを変化させた以外は、試料番号1と同様にしてコンデンサ試料2を得て、引張強度試験を行った。結果を表7に示す。
【0202】
【表7】
【0203】
表7より、境界層14の平均長さLrが1.8μmより長く、20.2μm未満の場合(試料番号62、1、63)は、境界層14の平均長さLrが1.8μmの場合(試料番号61)または20.2μmの場合(試料番号64)は、に比べて引張強度が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0204】
2… 積層セラミックコンデンサ(コンデンサ試料)
4… 素子本体
6… 外部電極
61… 導体
62… 非金属成分
10… 誘電体層(セラミック層)
12… 内部電極層
14… 境界層
16… 界面突起部
16a… 幅狭部
16b… 幅広部
図1
図2
図3
図4