(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137390
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】レーザ照射装置、レーザ照射方法、及び有機ELディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220914BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20220914BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H05B33/10
B23K26/57
H05B33/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036889
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 保
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】下地 輝昭
【テーマコード(参考)】
3K107
4E168
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG14
4E168CB07
4E168DA04
4E168DA25
4E168DA33
4E168EA13
4E168EA20
4E168FB03
4E168GA01
4E168GA02
4E168HA01
4E168JB03
(57)【要約】
【課題】効率的に安定したプロセスを行うことができるレーザ照射装置、レーザ照射方法、及び有機ELディスプレイの製造方法を提供する
【解決手段】
本実施形態にかかるレーザ照射装置は、レーザ光L1を発生する光源21と、レーザ光が照射されるワーク100を保持する保持ユニット35と、レーザ光が照射されるワーク200を保持する保持ユニット45と、保持ユニット35を水平方向に搬送するX軸機構31と、保持ユニット45を水平方向に搬送するX軸機構41と、ワーク100を昇降させるY軸機構32と、ワーク200を昇降させるY軸機構42と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ発振器と、
前記レーザ光が照射される第1のワーク及び第2のワークをそれぞれ保持する第1の保持ユニット及び第2の保持ユニットと、
前記第1の保持ユニット及び前記第2の保持ユニットをそれぞれ水平方向に搬送する第1の搬送機構及び第2の搬送機構と、
前記第1の保持ユニット及び前記第2の保持ユニットをそれぞれ前記水平方向と直交する垂直方向に昇降させる第1の昇降機構及び第2の昇降機構と、
を備えるレーザ照射装置。
【請求項2】
前記第1のワークに前記レーザ光が照射されている時、前記第2のワークは前記第1のワークの下方に位置している請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記レーザ光をライン状にして、搬送中の前記第1のワーク及び第2のワークに上方から照射する照射光学系をさらに備え、
上面視において、前記第1の搬送機構及び第2の搬送機構がライン状の前記レーザ光と交差する方向に前記第1のワーク及び第2のワークをそれぞれ搬送している請求項1,又は2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
上面視において、
前記第1の搬送機構が搬送方向と直交する方向における一端側で前記第1の保持ユニットを支持し、
前記第2の搬送機構が搬送方向と直交する方向における他端側で前記第2の保持ユニットを支持している請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
第1の高さにある前記第1のワークが第1の方向に搬送されることで、前記第1のワークに前記レーザ光が照射され、
前記第1のワークに前記レーザ光が照射されている間において、第1の高さよりも低い第2の高さにある第2のワークが前記第1の方向と逆向きの第2の方向に搬送される請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記第2のワークが前記第2の方向に搬送された後、前記第2の保持ユニットの前記第2のワークが入れ替えられる請求項5に記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
前記第1の保持ユニットが前記第1のワークを真空吸着し、
前記第2の保持ユニットが前記第2のワークを真空吸着する請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
前記第1の及び第2のワークのそれぞれが
前記レーザ光が照射される処理基板と、
前記処理基板の周辺に配置された周辺基板と、
前記処理基板及び前記周辺基板が載置されるトレイと、を備え、
前記第1の保持ユニットの上に前記第1のワークが載置された状態で前記トレイに設けられた開口部内に前記第1の保持ユニットが配置され、
前記第1の保持ユニットが前記トレイから前記処理基板を離した状態で、前記第1のワークを真空吸着し、
前記第2の保持ユニットの上に前記第2のワークが載置された状態で前記トレイに設けられた開口部内に前記第2の保持ユニットが配置され、
前記第1の保持ユニットが、前記トレイから前記処理基板が離間した状態で、前記第1のワークを真空吸着する請求項7に記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
(a)第1の保持ユニットが第1のワークを保持した状態で、前記第1のワークを水平方向に搬送することで、前記第1のワークにレーザ光を照射するステップと、
(b)前記レーザ光が照射された第1のワークを下降した後、前記第1のワークを水平方向に搬送するステップと、
(c)第2の保持ユニットが第2のワークを保持した状態で、前記第2のワークを水平方向に搬送することで、前記第2のワークにレーザ光を照射するステップと、
(d)前記レーザ光が照射された第2のワークを下降した後、前記第2のワークを水平方向に搬送するステップと、を備えたレーザ照射方法。
【請求項10】
(a)のステップで前記第1のワークにレーザ光が照射されている時、前記第2のワークが前記第1のワークの下方に位置している請求項9に記載のレーザ照射方法。
【請求項11】
ライン状の前記レーザ光が、搬送中の前記第1のワーク及び第2のワークに上方から照射され
(a)及び(c)のステップでは、上面視において、ライン状の前記レーザ光と交差する方向に前記第1のワーク及び第2のワークをそれぞれ搬送している請求項9,又は10に記載のレーザ照射方法。
【請求項12】
上面視において、
搬送方向と直交する方向における一端側で前記第1の保持ユニットが支持されており、
搬送方向と直交する方向における他端側で前記第2の保持ユニットが支持されている請求項9~11のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項13】
(a)のステップでは、第1の高さにある前記第1のワークが第1の方向に搬送されることで、前記第1のワークに前記レーザ光が照射され、
(a)のステップで前記第1のワークに前記レーザ光が照射されている間において、(d)のステップでは前記第1の高さよりも低い第2の高さにある第2のワークが前記第1の方向と逆向きの第2の方向に搬送される請求項9~12のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項14】
(d)のステップで前記第2のワークが前記第2の方向に搬送された後、前記第2の保持ユニットの前記第2のワークが入れ替えられる請求項13に記載のレーザ照射方法。
【請求項15】
前記第1の保持ユニットが前記第1のワークを真空吸着し、
前記第2の保持ユニットが前記第2のワークを真空吸着する請求項9~14のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項16】
(A)基板上に剥離層を形成する工程と、
(B)前記剥離層上に素子を形成する工程と、
(C)前記基板と前記剥離層とを分離する工程と、
(D)前記剥離層にフィルムを積層する工程と、を備えた有機ELディスプレイの製造方法であって、
(C)前記基板と前記剥離層とを分離する工程は、前記基板と前記剥離層とを含むワークを搬送中に、前記ワークに上方からレーザ光を照射する工程であり、
(Ca)第1の保持ユニットが第1のワークを保持した状態で、前記第1のワークを水平方向に搬送することで、前記第1のワークにレーザ光を照射するステップと、
(Cb)前記レーザ光が照射された第1のワークを下降した後、前記第1のワークを水平方向に搬送するステップと、
(Cc)第2の保持ユニットが第2のワークを保持した状態で、前記第2のワークを水平方向に搬送することで、前記第2のワークにレーザ光を照射するステップと、
(Cd)前記レーザ光が照射された第2のワークを下降した後、前記第2のワークを水平方向に搬送するステップと、を備えた有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項17】
(Ca)のステップで前記第1のワークにレーザ光が照射されている時、前記第2のワークが前記第1のワークの下方に位置している請求項16に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項18】
ライン状の前記レーザ光が、搬送中の前記第1のワーク及び第2のワークに上方から照射され
(Ca)及び(Cc)のステップでは、上面視において、ライン状の前記レーザ光と交差する方向に前記第1のワーク及び第2のワークをそれぞれ搬送している請求項16、又は17に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項19】
上面視において、
搬送方向と直交する方向における一端側で前記第1の保持ユニットが支持されており、
搬送方向と直交する方向における他端側で前記第2の保持ユニットが支持されている請求項16~18のいずれか1項に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項20】
(Ca)のステップでは、第1の高さにある前記第1のワークが第1の方向に搬送されることで、前記第1のワークに前記レーザ光が照射され、
(Ca)のステップで前記第1のワークに前記レーザ光が照射されている間において、(Cd)のステップでは前記第1の高さよりも低い第2の高さにある第2のワークが前記第1の方向と逆向きの第2の方向に搬送される請求項16~19のいずれか1項に有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項21】
(Cd)のステップで前記第2のワークが前記第2の方向に搬送された後、前記第2の保持ユニットの前記第2のワークが入れ替えられる請求項20に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項22】
前記第1の保持ユニットが前記第1のワークを真空吸着し、
前記第2の保持ユニットが前記第2のワークを真空吸着する請求項16~21のいずれか1項に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項23】
額縁部と額縁部の内側に設けられた中桟部とを備え、処理基板が載置されるトレイと、
前記中桟部に対応する溝を有し、前記額縁部と前記中桟部との間の開口部に挿入されて、前記トレイと前記処理基板とが離間した状態で前記処理基板を吸着する保持ユニットと、
前記保持ユニットを搬送する搬送機構と、
前記搬送機構で搬送中の前記処理基板にレーザ光を照射する照射光学系と、を備えたレーザ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ照射装置、レーザ照射方法、及び有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ剥離装置が開示されている。このレーザ剥離装置では、ライン状のレーザ光を基板に照射している。そして、基板の搬送中に、基板にレーザ光を照射している。これにより、基板と剥離層とを分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザ照射装置では、効率的に安定したプロセスを行うことが望まれる。例えば、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる場合、パルスレーザ光源を一定の繰り返し周波数で安定して駆動することが好ましい。しかしながら、パルスレーザ光源を一旦オフすると、繰り返し周波数や出力パワーが不安定になってしまうおそれがある。よって、パルスレーザ光源の動作を停止しないで、連続的に照射することが好ましい。しかしながら、連続してパルスレーザ光を出力し続けると、パルスレーザ光の無駄なショットが生じてしまう。例えば、一つワークの照射が終了してから次のワークの照射が始まるまでの間、パルスレーザ光が無駄になってしまう。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、レーザ照射装置は、レーザ光を発生させるレーザ発振器と、前記レーザ光が照射される第1のワーク及び第2のワークをそれぞれ保持する第1の保持ユニット及び第2の保持ユニットと、前記第1の保持ユニット及び前記第2の保持ユニットをそれぞれ水平方向に搬送する第1の搬送機構及び第2の搬送機構と、前記第1の保持ユニット及び前記第2の保持ユニットをそれぞれ前記水平方向と直交する垂直方向に昇降させる第1の昇降機構及び第2の昇降機構と、を備えている。
【0007】
一実施の形態によれば、レーザ照射方法は、(a)第1の保持ユニットが第1のワークを保持した状態で、前記第1のワークを水平方向に搬送することで、前記第1のワークにレーザ光を照射するステップと、(b)前記レーザ光が照射された第1のワークを下降した後、前記第1のワークを水平方向に搬送するステップと、(c)第2の保持ユニットが第2のワークを保持した状態で、前記第2のワークを水平方向に搬送することで、前記第2のワークにレーザ光を照射するステップと、(d)前記レーザ光が照射された第2のワークを下降した後、前記第2のワークを水平方向に搬送するステップと、を備えている。
【0008】
一実施の形態によれば、有機ELディスプレイの製造方法は、(A)基板上に剥離層を形成する工程と、(B)前記剥離層上に素子を形成する工程と、(C)前記基板と前記剥離層とを分離する工程と、(D)前記剥離層にフィルムを積層する工程と、を備えた有機ELディスプレイの製造方法であって、(C)前記基板と前記剥離層とを分離する工程は、前記基板と前記剥離層とを含むワークを搬送中に、前記ワークに上方からレーザ光を照射する工程であり、(Ca)第1の保持ユニットが第1のワークを保持した状態で、前記第1のワークを水平方向に搬送することで、前記第1のワークにレーザ光を照射するステップと、(Cb)前記レーザ光が照射された第1のワークを下降した後、前記第1のワークを水平方向に搬送するステップと、(Cc)第2の保持ユニットが第2のワークを保持した状態で、前記第2のワークを水平方向に搬送することで、前記第2のワークにレーザ光を照射するステップと、(Cd)前記レーザ光が照射された第2のワークを下降した後、前記第2のワークを水平方向に搬送するステップと、を備えている。
【0009】
一実施の形態によれば、レーザ照射装置は、額縁部と額縁部の内側に設けられた中桟部とを備え、処理基板が載置されるトレイと、前記中桟部に対応する溝を有し、前記額縁部と前記中桟部との間の開口部に挿入されて、前記トレイと前記処理基板とが離間した状態で前記処理基板を吸着する保持ユニットと、前記保持ユニット搬送する搬送機構と、前記搬送機構で搬送中の前記処理基板にレーザ光を照射する照射光学系と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
前記一実施の形態によれば、効率的に安定したプロセスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態にかかるレーザ照射装置を模式的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態にかかるレーザ照射装置を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態にかかるレーザ照射装置を模式的に示す上面図である。
【
図4】レーザ照射装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図6】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図7】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図8】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図9】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図10】レーザ照射装置の動作を説明するための斜視図である。
【
図11】レーザ照射装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図14】保持ユニットにおいてワークが吸着された状態を示す断面図である。
【
図15】レーザ照射装置1の製造プロセスで製造された有機ELディスプレイ装置を模式的に示す断面図である。
【
図16】レーザ照射装置1の製造プロセスを説明する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、例えば、レーザリフトオフ(LLO: Laser Lift Off)装置等のレーザ剥離装置である。レーザ照射装置は、剥離層を有するワークにレーザ光を照射することで、ワークに対してレーザリフトオフプロセスを行う。つまり、レーザ照射により処理基板と剥離層とを分離することができる。以下、図面を参照して本実施の形態にかかる、レーザ照射装置、方法、及び製造方法について説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1~
図3を用いて、本実施の形態にかかるレーザ照射装置の構成について説明する。
図1は、レーザ照射装置1の構成を模式的に示す側面図ある。
図2は、レーザ照射装置1の構成を模式的に示す上面図である。
図3は、レーザ照射装置1の構成を模式的に示すYZ断面図である。
【0014】
なお、以下に示す図では、説明の簡略化のため、適宜、XYZ3次元直交座標系を示している。Y方向は鉛直上下方向であり、X方向は、ワーク100、200の搬送方向である。Z方向はライン状の照射領域15に沿った方向である。つまり、Z方向はライン状の照射領域15の長手方向であり、X方向は長手方向と直交する短手方向とする。レーザ照射装置1は、X方向にワーク100を搬送しながら、レーザ光L2をワーク100に照射している。これにより、ワーク100のほぼ全体にレーザ光L2を照射することができる。
【0015】
図1に示すように、レーザ照射装置1は、チャンバ10と、光源21と、照射光学系20とを備えている。
図2,
図3に示すように、レーザ照射装置1は、チャンバ10内に、2つの駆動機構30、40を備えている。駆動機構30は、ワーク100を駆動し、駆動機構40はワーク200を駆動する。駆動機構30は、ワーク100をX方向、及びY方向に移動する。駆動機構40は、ワーク200をX方向、及びY方向に移動する。なお、駆動機構30、及び駆動機構40は、例えば架台(
図1~
図3では不図示)の上に固定されている。
【0016】
保持ユニット35は、ワーク100を保持する。駆動機構30は、保持ユニット35を移動可能に支持している。駆動機構30が保持ユニット35を移動させることで、ワーク100が移動する。保持ユニット45は、ワーク200を保持する。駆動機構40は、保持ユニット45を移動可能に支持している。駆動機構40が保持ユニット45を移動させることで、ワーク200が移動する。上面視において、ワーク100,200は、保持ユニット35,45よりも大きくなっている。つまり、X方向、及びZ方向において、ワーク100は、保持ユニット35からはみ出している。つX方向、及びZ方向において、ワーク100は、保持ユニット35からはみ出している。
【0017】
光源21は、レーザ光L1を発生するレーザ発振器である。光源21は、パルスレーザ光源である。光源21としては、波長308nmのエキシマレーザや、波長343nmの固体レーザを用いることができる。ここでは、一定の繰り返し周波数で光源21がレーザ光L1を発生している。
【0018】
光源21からのレーザ光L1は、照射光学系20に入射する。照射光学系20は、はレーザ光L1をワーク100に導く光学系を有している。照射光学系20から出射してレーザ光L2がワーク100に照射される。例えば、照射光学系20は、ライン状の照射領域15を形成するためのシリンドリカルレンズ(不図示)を有している。ワークにはライン状、具体的には焦点がZ方向に伸びるレーザ光L2(ラインビーム)が照射される。
【0019】
さらに、照射光学系20には、シャッタ22が設けられている。シャッタ22は、レーザ光L1の光路中に挿脱可能に配置されている。つまり、レーザ光L2をワーク100、又はワーク200に照射する間、シャッタ22が光路から取り除かれる。また、レーザ光L2をワーク100、又はワーク200に照射しない間、シャッタ22が光路中に挿入される。
【0020】
照射光学系20は、チャンバ10の+Y側に配置されている。チャンバ10の上壁には透明なウィンド6が設けられている。レーザ光L2はウィンド6を介してチャンバ10内に導入される。そして、照射高さH1にあるワーク100にレーザ光L2が照射される。チャンバ10の内部空間は窒素ガスなどの不活性ガスで満たされていてもよい。
【0021】
図1に示すように、チャンバ10の-X側の側壁にはドアバルブ5が取り付けされている。ドアバルブ5が開くことで、チャンバ10の内部空間と外部空間とが繋がり、ワーク100,200が移載可能となる。チャンバ10内の-X側の端部がワーク100、200の搬入位置、及び搬出位置となっている。
【0022】
例えば、チャンバ10の外部には、移載ロボット4が配置されている。ドアバルブ5が開いた状態で、移載ロボット4がワーク100,200をチャンバ10内に移載する。ドアバルブ5が開いた状態で、移載ロボット4がチャンバ10内のワーク100,200をレーザ照射装置1から取り出す。移載ロボット4は処理前のワーク100,200をチャンバ10内に搬入する。さらに、移載ロボット4はレーザ照射後のワーク100,200をチャンバ10内から搬出する。搬入、及び搬出が完了とドアバルブ5が閉じる。
【0023】
具体的には、移載ロボット4がワーク100、200を保持ユニット35、45の上に載置する。そして、レーザ照射装置1がワーク100、200に対してレーザ光L2を照射する。照射プロセスが終了すると、移載ロボット4は、保持ユニット35、45の上からワーク100、200を取り出して、チャンバ10の外部空間に移載する。なお、保持ユニット35,45は、ワーク100,200を吸着保持するステージとなる。
【0024】
Z方向において、移載ロボット4のハンドの間隔は、保持ユニット35,45の幅よりも広くなっている。したがって、移載ロボット4は、Z方向におけるワーク100,200の両端部と接触する。これにより、移載ロボット4が保持ユニット35,45と干渉せずに、ワーク100,200を搬入及び搬出するこができる。
【0025】
また、チャンバ10内において、搬出位置の周辺には、除電器8が設けられている。例えば、除電器8の下を通過して、ワーク100,200がチャンバ10の外部空間に搬出される。除電器8は、ワーク100、200に上からX線などを照射する静電気除去装置である。除電器8は、保持ユニット35,45から吸着解除されたワーク100,200を除電する。これにより、剥離耐電等を防ぐことができる。なお、除電器8は、X線による静電気除去装置に限らずコロナ放電による静電気除去装置(イオナイザ)等であってもよい。
【0026】
Y方向において、ワーク100とワーク200とは異なる位置になっている。つまり、ワーク100はワーク200よりも高い位置で搬送される。
図1、
図3では、ワーク100が照射高さH1にあり、ワーク200が搬送高さH2にある。チャンバ10内に搬入されたワーク100は照射高さH1で搬送される。照射高さH1において、ワーク100が+X方向に搬送されることで、レーザ光L2が照射される。レーザ光L2が照射されたワーク200は搬送高さH2まで下降している。搬送高さH2において、ワーク200が-X方向に搬送される。これにより、処理済みのワーク200がドアバルブ5の手前の搬出位置まで移動する。
【0027】
Z方向において、ワーク100とワーク200の位置は一致している。そして、ワーク100がワーク200の上側に配置されている。つまり、処理済みのワーク200が処理前のワーク100の下側を通過するように、ワーク100,200が駆動されている。具体的には、ワーク100に対してレーザ光L2を照射している間に、ワーク200がワーク100の下側を通過する。これにより、処理済みのワーク200が-X方向に搬送中にレーザ光L2が照射されるのを防ぐことができる。
【0028】
レーザ照射装置1は、2つのワーク100、200を同時に収容することができる。そして、レーザ照射装置1が2つのワーク100、200に対して、連続してレーザ照射プロセスを施す。一方のワークの処理中に、処理済みのワークを搬出するとともに、新たなワークを搬入するように搬送が行われる。これにより、搬入、搬出による待ち時間を短縮することできるため、タクトタイムを短縮することができる。さらに、ワーク100,200に対してレーザ光を連続して照射することができるため、無駄なパルスレーザ光を少なくすることができる。よって、パルスレーザ光の効率的に照射することができる。照射プロセス中は、ワーク100が照射高さH1で搬送されている。安定したプロセスを効率よく行うことができる。
【0029】
以下、ワーク100、200を駆動するための駆動機構30、40について説明する。駆動機構30は保持ユニット35を移動可能に支持している。駆動機構30は、保持ユニット35の-Z側で保持ユニット35を支持している。駆動機構40は保持ユニット45を移動可能に支持されている。駆動機構40は、保持ユニット45の+Z側で、保持ユニット45を支持している。
【0030】
駆動機構30は、X軸機構31とY軸機構32とガイド33とを備えている。ガイド33は、ワーク100,200よりも-Z側に配置されている。ガイド33はX方向に沿って配置されている。X軸機構31はガイド33に対して移動可能に取付けられている。X軸機構31は、ガイド33に沿ってX方向に直線移動する。X軸機構31は、ワーク100、保持ユニット35をX方向に搬送する搬送機構となる。Y軸機構32は、X軸機構31に対して昇降可能に取り付けられている。Y軸機構32には、保持ユニット35が固定されている。Y軸機構32は、ワーク100,保持ユニット35を昇降させる昇降機構となる。X軸機構31、Y軸機構32はそれぞれモータやスライド機構などを備えている。
【0031】
駆動機構40は、X軸機構41とY軸機構42とガイド43とを備えている。ガイド43は、ワーク100,200よりも+Z側に配置されている。ガイド43はX方向に沿って配置されている。X軸機構41はガイド43に対して移動可能に取付けられている。X軸機構41は、ガイド43に沿ってX方向に直線移動する。X軸機構41はワーク200、保持ユニット45をX方向に搬送する搬送機構となる。Y軸機構42は、X軸機構41に対して昇降可能に取り付けられている。Y軸機構42には、保持ユニット45が固定されている。Y軸機構42は、ワーク200,保持ユニット45を昇降させる昇降機構となる。X軸機構41、Y軸機構42はそれぞれモータやスライド機構などを備えている。
【0032】
Z方向において、ワーク100とワーク200とは同じ位置にある。保持ユニット35と保持ユニット45とが同じZ位置でワーク100、200を保持している。上面視で、搬送中において、ワーク100、200が重複する状態となる。レーザ光L2はワーク100,200に対して同じ照射位置で照射される。
【0033】
そして、駆動機構30がワーク100、200の-Z側に配置され、駆動機構40がワーク200の+Z側に配置されている。つまり、駆動機構30は、ワーク100よりも-Z側において、保持ユニット35を支持している。駆動機構40は、ワーク200よりも+Z側において、保持ユニット45を支持している。Z方向において、駆動機構30と駆動機構40との間に、ワーク100,200が配置されている。より具体的には、ガイド33は、ワーク100、200の搬送位置よりも-Z側に配置され、ガイド43は、ワーク100、200の搬送位置よりも+Z側に配置されている。
【0034】
本実施の形態では、レーザ照射装置1が、異なる高さでワーク100,200を搬送可能な立体構造を有している。レーザ照射装置1のフットプリントを低減することができる。つまり、Z方向において、ワーク100、200の一端側に駆動機構30が配置され、他端側に駆動機構40が配置されている。よって、Z方向におけるサイズを小さくすることができる。よって、フットプリントを低減することができる。
【0035】
以下、
図4~
図10用いてレーザ照射装置1の動作について説明する。
図4は、レーザ照射装置1の主要部の構成を示す斜視図である。具体的には、
図4は、チャンバ10内における主要構成を示している。
図5~
図9は、各工程における主要部の構成を示している。
【0036】
図4では、駆動機構30と駆動機構40とが架台25の上に設置されている。具体的には、架台25の上に、ガイド33,43が固定されている。上記の通り、X軸機構31、41がガイド33、43に沿ってX方向に移動する。なお、X軸機構31とX軸機構41の移動端は同じとなっている。
【0037】
また、X軸機構31,41にはそれぞれY方向に沿った昇降レール等が設けられている。そして、Y軸機構32、42がそれぞれ昇降レールに沿って昇降する。鉛直上下方向において、Y軸機構32とY軸機構42の移動端は同じとなっている。さらに、Y軸機構32、42は、それぞれ保持ユニット35,45を支持している。保持ユニット35,45は、それぞれのワーク100、200を真空吸着するチャックテーブルを有していてもよい。ワーク100,200の搬出時に保持ユニット35,45は、吸着を解除する。
【0038】
図5は、ワーク100を保持ユニット45上に移載した状態を示している。ワーク100が搬入位置(ロード位置)にある。搬入位置は-X側におけるX軸機構31の移動端に対応している。また、ワーク100は照射高さH1(
図1等参照)となっている。また、X軸機構41が+X側の移動端になっている。ワーク200は搬送高さH2となっている。
【0039】
図6は、ワーク100にレーザ光L2が照射されている状態を示している。
図5に示す状態から、X軸機構31が+X方向に移動すると
図6に示す状態になる。また、
図6では、X軸機構41が-X方向への移動を終了している。つまり、X軸機構41が-X方向の移動端まで移動している。ワーク200が搬送高さH2で搬送されている。
図6では、ワーク200が搬出位置(アンロード位置)にいる。なお、搬入位置と搬出位置は同じX位置となっている。なお、ここでは、X軸機構41は、X軸機構31よりも速い搬送速度で移動している。
【0040】
図7は、ワーク100に対するレーザ照射が完了した状態を示している。したがって、レーザ光L2の照射位置よりもワーク100が+X側に搬送されている。
図6に示す状態からX軸機構31がさらに+X方向に移動すると、
図7に示す状態になる。
図7では、X軸機構31が+X側の移動端まで移動している。
図5~
図7において、ワーク100が照射高さH1で移動している。
図7では、Y軸機構42が上昇して、ワーク200が照射高さH1になっている。
【0041】
図8は、ワーク100が搬送高さH2まで下降した状態を示している。つまり、
図7に示す状態からY軸機構32が下降すると、
図8に示す状態となる。また、
図6~
図8の間で、保持ユニット45に対するワーク200の搬入及び搬出が行われている。つまり、移載ロボット4が処理済みのワーク200を保持ユニット45から移載するとともに、処理前の新しいワーク200を保持ユニット45の上に移載する。
図5に示す状態と
図8に示す状態とでは、保持ユニット45の位置と保持ユニット35の位置が入れ替わっている。
【0042】
図9は、ワーク200にレーザ光L2が照射されている状態を示している。
図8に示す状態から、X軸機構41が+X方向に移動すると
図9に示す状態になる。また、
図9では、X軸機構31が-X方向への移動を終了している。つまり、X軸機構31が-X方向における移動端まで移動している。また、ワーク100が搬送高さH2で搬送されている。
図9では、ワーク100が搬出位置(アンロード位置)にいる。ここでは、X軸機構31は、X軸機構41よりも速い搬送速度で移動している。
図9に示す状態では、
図6に示す状態と保持ユニット35の位置と保持ユニット45の位置が入れ替わっている。
【0043】
図10は、ワーク200に対するレーザ照射が完了した状態を示している。したがって、レーザ光L2の照射位置よりもワーク200が+X側に搬送されている。
図9に示す状態からX軸機構41がさらに+X方向に移動すると、
図10に示す状態になる。
図10では、X軸機構41が+X側の移動端まで移動している。よって、レーザ光L2が照射されない位置までワーク200が移動している。
図8~
図10において、ワーク200が照射高さH1で移動している。
図10では、Y軸機構32が上昇して、ワーク100が照射高さH1になっている。
図10に示す状態では、
図7に示す状態と保持ユニット35の位置と保持ユニット45の位置が入れ替わっている。
【0044】
そして、Y軸機構42が下降すると、
図5に示す状態に戻る。
図9の状態から
図5の状態に戻るまでの間で、保持ユニット35に対するワーク100の搬入及び搬出が行われている。つまり、処理済みのワーク100が保持ユニット35から移載されるとともに、処理前の新しいワーク100が保持ユニット35の上に移載されている。そして、上記の処理を繰り返すことで、複数のワークに対してレーザ照射を連続的に行うことができる。
【0045】
このように、+X方向への搬送時において、ワーク100、200は照射高さH1となっている。-X方向への搬送時において、ワーク100,200は搬送高さH2となっている。-X方向への搬送するときの搬送高さを照射高さよりも低くすることができる。よって、-X方向への搬送時にレーザ光が照射されるのを防ぐことができる。ワーク100,200の搬送高さは、照射高さにあるワークの下を通過できる高さであればよい。したがって、ワークを-X方向に搬送するときの搬送高さは一定でなくてもよい。あるいは、ワーク100とワーク200とで搬送高さが異なっていてもよい。
【0046】
また、レーザ光を照射するための+X方向への搬送速度はレーザ照射プロセスにより制限されている。これに対して、処理済みのワークを搬出位置に戻すための-X方向への搬送速度には制限がない。-X方向への搬送速度は、+X方向への搬送速度よりも速くなっている。これにより、タクトタイムを短縮することができる。つまり、処理済みのワークを速やかロード/アンロード位置まで移動することができるため、搬入及び搬出の時間を確保することができる。さらに、照射高さH1にある一方のワークに対してレーザ光L2を照射している間に、搬送高さH2にある他方のワークが照射領域15の直下を通過する。搬送高さH2にあるワークにレーザ光L2が照射されるのを防ぐことができる。
【0047】
図11は、レーザ照射装置1のタイミングチャートの一例を示す図である。
図11では、上から順に、ドアバルブ5の開閉動作、移載ロボット4の移載動作、除電器8のオンオフ動作、シャッタ22の開閉動作、駆動機構30の動作,駆動機構40の動作が示されている。ここでは、タクトタイムが100秒である例が示されている。つまり、100秒ごとに新しいワークがチャンバ内に収容される。
【0048】
移載ロボット4の動作は、ワークをチャンバ内に移載するロード、ワークをチャンバ外に移載するアンロード、スタンバイの3つで示されている。駆動機構30の動作は、ワーク100をX方向に搬送するXムーブ、ワーク100を昇降するYムーブ、スタンバイの3つで示されている。駆動機構40の動作も同様に、ワーク200をX方向に搬送するXムーブ、ワーク200を昇降するYムーブ、スタンバイの3つで示されている。
【0049】
まず、t1のタイミングでドアバルブ5が開くと、t2のタイミングまでに移載ロボット4がワーク100のアンロード/ロードを行う。ワーク100のアンロード/ロードが終わるとドアバルブ5が閉じる。ワーク100の移載動作の間、駆動機構30は、搬入位置でスタンバイ状態となっている。駆動機構40は、X方向に移動している。つまり、ワーク200にレーザ光を照射するため、+X方向にワーク200を搬送している。
【0050】
そして、t3のタイミングで駆動機構30がワーク100を+X方向への搬送を開始する。また、t3のタイミングでワーク200へのレーザ照射が終了する。その後、t4のタイミングで駆動機構40が+X側の移動端に到着するため、駆動機構40がワーク200を下降させる。また、t4のタイミングでワーク100へのレーザ照射が開始する。t5のタイミングでワーク200の下降が完了するため、駆動機構40が-X方向にワーク200を搬送する。t6のタイミングで駆動機構40が-X側の移動端に到着するため、駆動機構40がワーク200を上昇させる。t7のタイミングでワーク200の上昇が完了して、駆動機構40がスタンバイ状態となる。
【0051】
そして、t8のタイミングでドアバルブ5が開くと、t9のタイミングまでの間にワーク200のアンロード/ロードが行われる。なお、タイミングt7~t8までの間、除電器8が搬出されるワーク200を除電する。t10のタイミングで駆動機構40の+X方向の搬送が開始する。また、t10のタイミングでワーク100へのレーザ照射が終了する。
【0052】
t3からt11のタイミングまで駆動機構30がX方向にワーク100を搬送する。これにより、ワーク100の全面にレーザ光L2が照射される。そして、t11のタイミングで駆動機構30が+X方向の移動端に到着するため、駆動機構30がワーク100を下降させる。また、t11のタイミングでワーク200へのレーザ照射が開始する。t12のタイミングでワーク100の下降が完了するため、駆動機構30が-X方向にワーク100を搬送する。t13のタイミングで駆動機構30が-X方向に移動端に到着するため、駆動機構30がワーク100を上昇させる。t14のタイミングでワーク100の上昇が完了する。
【0053】
そして、t15のタイミングでドアバルブ5が開く。t15のタイミングはt1のタイミングに対応している。よって、t15以降の動作は、t1以降の動作の繰り返しとなるため説明を省略する。なお、タイミングt14~t15までの間、除電器8が、搬入位置にあるワーク100をX線で除電する。
【0054】
また、t3のタイミングからt4のタイミングまでの間、シャッタ22が閉じている。t10のタイミングからt11のタイミングまでの間、シャッタ22が閉じている一方のワークへのレーザ照射が終了して他方のワークへのレーザ照射が始まるまでの間、シャッタ22が閉じている。これにより、連続搬送が可能となり、効率的にパルスレーザ光を利用することができる。ここで、タクトタイム100秒に対して、シャッタ22が閉じる時間が4秒となっている。つまり、1つのワークに対するレーザ光の照射時間が96秒となっている。したがって、パルスレーザ光の無駄を抑制することができる。
【0055】
(ワーク100)
以下、
図12、
図13を用いてワーク100の一例について説明する。
図12は、ワーク100の構成を示す分解斜視図である。
図13は、ワーク100の一部の構成を模式的に示す側面断面図である。なお、ワーク200の構成は、ワーク100の構成と同様となっているため説明を省略する。ワーク100は、レーザリフトオフプロセスの対象となる。
【0056】
ワーク100は、パネル基板110と、トレイ120と、マスク130とを備えている。パネル基板110は、レーザリフトプロセスなどを経ることで表示パネルとなる。パネル基板110は、処理基板111と周辺基板112とを備えている。パネル基板110は例えば65インチサイズとなる。
図13に示すように、処理基板111は、上から順に、ガラス基板111a、ポリイミド膜111b、及びPETフィルム111cを有している。
【0057】
ガラス基板111aは、ポリイミド膜111b、及びPETフィルム111cを保持するキャリアガラスである。ポリイミド膜111bは、レーザ照射により剥離する剥離層となる。PETフィルム111cとポリイミド膜111bとの間には、表示画素を形成するための素子などが形成されている。レーザ光がガラス基板111aを介してポリイミド膜111bに照射されることで、ポリイミド膜111b及びPETフィルム111cをガラス基板111aから分離することが可能となる。
【0058】
処理基板111の周辺領域には、周辺基板112が取り付けられている。周辺基板112は、PCB(Printed Circuit Board)112a及びFPC(Flexible Printed Circuit)112bなどを有している。PCB112aは、PFPC112bを介して、処理基板111に取り付けられている。PCB112aには、駆動回路などが実装されていてもよい。
【0059】
パネル基板110は、トレイ120の上に載置されている。トレイ120は、アルミニウムなどの金属により形成されている。トレイ120は額縁部121と、中桟部123とを備えている。額縁部121は矩形枠状に形成されており、パネル基板110の周縁部に対応している。額縁部121は処理基板111の周縁部、及び周辺基板112を保持している。額縁部121は、パネル基板110を配置するための窪みなどを有していてもよい。
【0060】
XZ平面において、額縁部121の内側に中桟部123が設けられている。中桟部123は格子状に設けられている。つまり、中桟部123はX方向及びZ方向に延びた梁である。中桟部123は、額縁部121の一端から他端まで渡って形成されている。中桟部123と額縁部121とで囲まれた領域が開口部124となっている。ここでは、複数の開口部124が形成されている。
【0061】
マスク130は、周辺基板112を覆うように設けられている。マスク130は、周辺基板112の上に配置される。マスク130は、ボルトなどでトレイ120に固定されていてもよい。マスク130は、額縁状に形成されており、矩形状の開口部130aを有している。開口部130aを介して、レーザ光L2が処理基板111に照射される。マスク130は、周辺基板112にレーザ光L2が照射されるのを防ぐために設けられている。さらに、散乱紫外線などが周辺基板112に照射されるのを防ぐことができる。
【0062】
トレイ120の上にパネル基板110が保持されている。そして、トレイ120の上に、マスク130が取り付けられている。パネル基板110、トレイ120,及びマスク130が一体となってワーク100を構成する。パネル基板110、トレイ120,及びマスク130を有するワーク100がレーザ照射装置1に搬入される。パネル基板110がトレイ120及びマスク130ともに、レーザ照射装置1内に搬入される。
【0063】
図14を用いて、ワーク100と保持ユニット35の構成について説明する。
図14は、保持ユニット35とワーク100の構成を示す断面図である。具体的には、
図14は、ワーク100が保持ユニット35に保持されている状態を示している。
【0064】
保持ユニット35は、バキュームチャックを行うためのチャックテーブルとなっている。例えば、保持ユニット35は多孔質体となっている。あるいは、保持ユニット35は上面35aに吸引口が設けられていてもよい。保持ユニット35は、真空ポンプなどの排気手段に接続されている。そして、保持ユニット35から気体を吸引することで、保持ユニット35の上面35aにワーク100が吸着される。
【0065】
保持ユニット35の上面35aには、中桟部123と干渉しないように溝35bが形成されている。つまり、溝35bは中桟部123と対応するように格子状に形成されている。溝35bの幅は、中桟部123の幅よりも広くなっている。したがって、溝35b内に中桟部123が嵌め込まれる。保持ユニット35は、額縁部121と中桟部123との間の開口部124に挿入される。
【0066】
保持ユニット35の上面35aが処理基板111のPETフィルム111cと当接する。つまり、保持ユニット35はパネル基板110をトレイ120から持ち上げる。処理基板111とトレイ120との間には隙間が形成される。処理基板111の下面がトレイ120と接触しない状態で、保持ユニット35がワーク100を保持する。トレイ120と処理基板111とが離間した状態で、保持ユニット35が処理基板111を吸着する。処理基板111の平面度は、保持ユニット35の上面35aの平坦度に依存する。処理基板111の平面度を高くすることができる。
【0067】
ここで、安定してレーザ照射を行うためには、搬送中の処理基板111の平面度を高くすることが好ましい。一方、処理基板111は多層構造となっているため、膜応力等による反りが発生することがある。本実施の形態では、保持ユニット35が真空吸着しているため、処理基板111の反りを抑制することができる。つまり、中桟部123を除いた部分で処理基板111が真空吸着されている。これにより、反りを抑制することができるため、処理基板111の平面度を高くすることができる。
【0068】
照射光学系20によるレーザ光L2の焦点面に処理基板111の高さを一致させることができる。これにより、照射光学系20の焦点深度を大きくすることが困難な場合でも、安定したレーザ照射プロセスが実現可能である。よって、安定したプロセスを効率良く行うことができる。
【0069】
(有機ELディスプレイ)
上記のレーザ照射装置1は、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイのレーザリフトオフ装置に好適である。つまり、レーザ照射装置1によるレーザ照射方法が有機ELディスプレイの製造工程におけるレーザリフトオフプロセスとして利用される。
【0070】
以下、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1を用いて製造された有機ELディスプレイディスプレイに適用した構成について説明する。
図15を用いて有機EL(Electroluminescence)ディスプレイの構造について説明する。
図15は、有機ELディスプレイの一例を示す断面図である。
図15に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PXにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
【0071】
有機ELディスプレイ300は、フィルム301、剥離層302、TFT(Thin Film Transistor)層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び保護層314を備えている。
図15では、保護層314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態では、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられてもよい。
【0072】
フィルム301は、フレキシブルなプラスチックフィルムであり、応力を加えることにより曲げることができるフィルムである。フィルム301の上には、剥離層302、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素PXに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線(不図示)等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。
【0073】
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素PXごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素PX間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
【0074】
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素PXには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
【0075】
カラーフィルタ層313の上には、保護層314が設けられている。保護層314は、樹脂材料で構成されており、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
【0076】
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素PXに供給することで、各画素PXでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
【0077】
<有機ELディスプレイの製造工程>
次に、
図16を用いて上記で説明した有機ELディスプレイの製造工程について説明する。有機ELディスプレイを製造する際は、まず処理基板331を準備する(工程A)。例えば、処理基板331にはレーザ光を透過するガラス基板を用いる。処理基板331は、
図12等の処理基板111に対応する。
【0078】
次に、処理基板331の上に剥離層302を形成する(工程B)。剥離層302には、例えばポリイミドを用いることができる。剥離層302は、ポリイミド膜111bに対応する。その後、剥離層302の上に回路素子332を形成する(工程C)。ここで、回路素子332は、
図15に示すTFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313を含む。回路素子332は、フォトリソグラフィ技術や成膜技術を用いて形成することができる。その後、回路素子332の上に、回路素子332を保護するための保護層314を形成する(工程D)。保護層314は、PETフィルム111cに対応する。
【0079】
次に、処理基板331が上になるように処理基板331を反転させ(工程E)、レーザ照射装置1に搬入する。処理基板331側から剥離層302にレーザ光L2を照射する(工程F)。レーザ光L2にはラインビームを用いることができる。
図16に示す場合は、処理基板331がX方向に搬送されているので、処理基板331の右側から左側に向かってレーザ光L2が照射される。その後、処理基板331と剥離層302とを分離する(工程G)。最後にフィルム318を剥離層302に積層する(工程H)。例えば、フィルム318はフレキシブルなプラスチックフィルムであり、応力を加えることにより曲げることができるフィルムである。このような製造工程を用いることで、折り曲げ可能な有機ELディスプレイ300を作製することができる。
【0080】
なお、上記のレーザ照射装置1は、レーザリフトオフプロセスを行う剥離装置に限らず、エキシマレーザアニール装置などにも適用可能である。
【0081】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 レーザ照射装置
4 移載ロボット
5 ドアバルブ
6 ウィンド
8 除電器
10 チャンバ
20 照射光学系
21 光源
25 架台
30 駆動機構
31 X軸機構
32 Y軸機構
33 ガイド
35 保持ユニット
40 駆動機構
41 X軸機構
42 Y軸機構
43 ガイド
45 保持ユニット
100 ワーク
110 パネル基板
111 処理基板
112 周辺基板
120 トレイ
130 マスク
200 ワーク
300 有機ELディスプレイ
310 基板
311 TFT層
311a TFT
312 有機層
312a 有機EL発光素子
312b 隔壁
313 カラーフィルタ層
313a カラーフィルタ(CF)
314 保護層
PX 画素
H1 照射高さ
H2 搬送高さ