(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138746
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】金属含有部材形成用組成物、金属含有部材、金属含有部材の製造方法、積層体、及び、デバイス
(51)【国際特許分類】
C23C 18/08 20060101AFI20220915BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220915BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220915BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220915BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20220915BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20220915BHJP
C23C 20/04 20060101ALI20220915BHJP
C23C 18/34 20060101ALI20220915BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20220915BHJP
C23C 18/40 20060101ALI20220915BHJP
C23C 18/44 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C23C18/08
H01B1/22 A
H01B13/00 503Z
H01B5/14 Z
B32B15/01 K
B05D5/12 B
C23C20/04
C23C18/34
C23C18/31 Z
C23C18/40
C23C18/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038807
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】榎本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高桑 英希
(72)【発明者】
【氏名】齋江 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山下 広祐
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4K022
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4D075BB21Z
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4F100AA01B
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5G301DA03
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5G301DD02
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5G307GA06
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5G323AA01
(57)【要約】
【課題】強度に優れた金属含有部材を得ることができる金属含有部材形成用組成物、上記金属含有部材形成用組成物を金属に変換してなる金属含有部材、上記金属含有部材形成用組成物を用いた金属含有部材の製造方法、並びに、上記金属含有部材を備える積層体及びデバイスを提供すること。
【解決手段】金属前駆体、粒状充填剤及び溶剤を含む、金属含有部材形成用組成物、上記金属含有部材形成用組成物を金属に変換してなる金属含有部材、上記金属含有部材形成用組成物を用いた金属含有部材の製造方法、並びに、上記金属含有部材を備える積層体及びデバイス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属前駆体、粒状充填剤及び溶剤を含む、金属含有部材形成用組成物。
【請求項2】
前記粒状充填剤が無機化合物を含む、請求項1に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項3】
前記溶剤が水を含む、請求項1または2に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項4】
前記金属前駆体が銀前駆体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項5】
膜形成に用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項6】
還元剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項7】
JIS Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、前記粒状充填剤の直径の算術平均値が0.2~1μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項8】
JIS Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、前記粒状充填剤の直径の算術平均値の比が0.1:1~0.8:1である複数種の粒子を、前記粒状充填剤として含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項9】
導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材の形成に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物における金属前駆体を金属に変換してなる、金属含有部材。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の金属含有部材形成用組成物を基材に適用して金属前駆体含有層を形成する適用工程、及び、
前記金属前駆体含有層に含まれる金属前駆体を金属に変換する変換工程、を含む、
金属含有部材の製造方法。
【請求項12】
前記変換工程が、80℃~150℃で前記金属前駆体含有層を加熱することを含む工程である、請求項11に記載の金属含有部材の製造方法。
【請求項13】
得られる金属含有部材の厚さが1~500μmである、請求項11又は12に記載の金属含有部材の製造方法。
【請求項14】
基材と、基材上に配置された請求項10に記載の金属含有部材とを備える積層体。
【請求項15】
請求項10に記載の金属含有部材、又は、請求項14に記載の積層体を備える、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有部材形成用組成物、金属含有部材、金属含有部材の製造方法、積層体、及び、デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器類において、例えば導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材、導電部材等として金属含有部材が用いられている。
今後さらに携帯情報端末など電子機器の高性能化への要求が高まることが予想されており、これに応えるため、金属含有部材の様々な物性についての更なる向上が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルキルアミンを芳香族炭化水素、その他の炭化水素のような有機溶媒で希釈した溶液とあらかじめpH調整したIII~V族、VIII族、VIa族、VIIa族、Ib族、IIb族等の金属塩水溶液とを接触させることによって金属塩を有機溶媒層に抽出し、水層を分離除去して金属アルキルアミン錯体を含む有機溶媒溶液を得ること、あるいは、さらに抽出時に使用した有機溶媒を蒸発留去し、その溶液に炭化水素類、アルコール類、エステル類、β-ジケトエステル類、エーテル類、β-ジケトン類、グリコール類等の置換用有機溶媒またはそれらの混合物を添加することを特徴とする薄膜形成用組成物の製造法が記載されている。
特許文献2には、フィルム基材に反射層が設けられたフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、上記反射層が形成される下地層と、銀錯体化合物を含んだ塗布液との少なくとも一方に還元剤を含有させ、上記下地層に上記塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、上記塗膜を加熱焼成して上記反射層を形成する工程と、を有することを特徴とするフィルムミラーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-269656号公報
【特許文献2】特表2012-181301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、強度に優れた金属含有部材を得ることができる金属含有部材形成用組成物、上記金属含有部材形成用組成物を金属に変換してなる金属含有部材、上記金属含有部材形成用組成物を用いた金属含有部材の製造方法、並びに、上記金属含有部材を備える積層体及びデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> 金属前駆体、粒状充填剤及び溶剤を含む、金属含有部材形成用組成物。
<2> 上記粒状充填剤が無機化合物を含む、<1>に記載の金属含有部材形成用組成物。
<3> 上記溶剤が水を含む、<1>または<2>に記載の金属含有部材形成用組成物。
<4> 上記金属前駆体が銀前駆体を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<5> 膜形成に用いられる、<1>~<4>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<6> 還元剤を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<7> JIS Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、上記粒状充填剤の直径の算術平均値が0.2~1μmである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<8> JIS Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、上記粒状充填剤の直径の算術平均値の比が0.1:1~0.8:1である複数種の粒子を、上記粒状充填剤として含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<9> 導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材の形成に用いられる、<1>~<8>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物における金属前駆体を金属に変換してなる、金属含有部材。
<11> <1>~<9>のいずれか1つに記載の金属含有部材形成用組成物を基材に適用して金属前駆体含有層を形成する適用工程、及び、
上記金属前駆体含有層に含まれる金属前駆体を金属に変換する変換工程、を含む、
金属含有部材の製造方法。
<12> 上記変換工程が、80℃~150℃で上記金属前駆体含有層を加熱することを含む工程である、<11>に記載の金属含有部材の製造方法。
<13> 得られる金属含有部材の厚さが1~500μmである、<11>又は<12>に記載の金属含有部材の製造方法。
<14> 基材と、基材上に配置された<10>に記載の金属含有部材とを備える積層体。
<15> <10>に記載の金属含有部材、又は、<14>に記載の積層体を備える、デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強度に優れた金属含有部材を得ることができる金属含有部材形成用組成物、上記金属含有部材形成用組成物を金属に変換してなる金属含有部材、上記金属含有部材形成用組成物を用いた金属含有部材の製造方法、並びに、上記金属含有部材を備える積層体及びデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の導熱部材および積層体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】実施例において作製した放熱部材を有するデバイスの構成の一部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明する。各構成要素は、便宜上、この代表的な実施形態に基づいて説明されるが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記について、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に、置換基を有するものをも包含する意味である。例えば、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)、および、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)の両方を包含する意味である。また、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、鎖状でも環状でもよく、鎖状の場合には、直鎖でも分岐でもよい意味である。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の両方、または、いずれかを意味する。
本明細書において、組成物中の固形分は、溶剤を除く他の成分を意味し、組成物中の固形分の含有量(濃度)は、特に述べない限り、その組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率によって表される。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101325Pa(1気圧)である。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
<金属含有部材形成用組成物>
本発明の金属含有部材形成用組成物は、金属前駆体、粒状充填剤及び溶剤を含む。
本発明の金属含有部材形成用組成物によれば、金属前駆体を変換してなる金属及び粒状充填剤を含む金属含有部材が形成される。
また、本発明の金属含有部材形成用組成物は、膜形成に用いられることが好ましい。上記膜は、金属前駆体を変換してなる金属及び粒状充填剤を含むことが好ましい。
本発明の金属含有部材形成用組成物により金属含有部材(例えば、上記膜)を形成する方法の詳細については後述する。
また、金属含有部材形成用組成物は、特に限定されないが、導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材の形成に用いられることが好ましい。
すなわち、金属含有部材形成用組成物から形成される金属含有部材は、特に限定されないが、導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材であることが好ましい。
【0011】
ここで、例えば特許文献1、特許文献2等に記載のように、金属前駆体及び溶剤を含む組成物を用いて、金属含有部材を形成することが知られている。
本発明者らは、金属前駆体及び溶剤を含む従来の組成物を用いて金属含有部材を形成した場合には、得られる部材が応力に弱く、例えば厚さが小さい態様において曲がりやすくなる、厚さが大きい態様においてシュリンクによる反りが発生するという問題点が有ることを見出した。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、組成物として、金属前駆体、粒状充填剤及び溶剤を含む組成物を用いることにより、強度の高い金属含有部材が得られることを見出した。
上記効果が得られるメカニズムの詳細は不明であるが、部材が粒状充填剤を含むことにより金属含有部材自体の応力耐性が増加して厚さが小さい態様において曲がりにくくなり、また、金属前駆体を金属に変換する際の体積変化の影響が小さくなるためシュリンクによる反りが抑制されると考えられる。
また、従来から、金属を含む部材の強度を向上させる目的で、金属含有部材を他の部材と組み合わせて用いるなど、ハイブリッド材料を形成することも知られているが、本発明の組成物を用いることにより、被着部材に対する熱などによる損傷を抑制できるという利点もある。
ここで、特許文献1及び2のいずれにも、粒状充填剤を用いることについては記載も示唆もない。
以下、本発明の金属含有部材形成用組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0012】
〔金属前駆体〕
金属前駆体としては、化学的又は物理的な処理により金属に変換される化合物であれば特に限定されないが、加熱により金属に変換される化合物であることが好ましく、例えば、配位子を有する金属塩が挙げられる。
上記配位子としては、配位子の共役酸の1気圧における沸点が、150℃以下であるものが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
上記配位子としては、例えば、酢酸、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、アセチル酢酸等の有機酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、酸素原子等が挙げられる。
【0013】
金属前駆体に含まれる金属としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金、コバルト、パラジウム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、錫、鉄等が挙げられる。
これらの金属種は、金属含有部材の用途に応じて選択すればよいが、例えば、銀であることが好ましい。
すなわち、金属前駆体は銀前駆体であることが好ましい。
【0014】
金属前駆体としては、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アセチル酢酸塩等の金属の有機酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、過塩素酸塩等の金属の無機酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属のハロゲン化物、金属酸化物、金属シアン化物等が挙げられる。
好ましい銀前駆体としては、酢酸銀、ギ酸銀、炭酸銀、フッ化銀、シュウ酸銀、乳酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、過塩素酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、リン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、アセチル酢酸銀、硫酸銀、酸化銀等が挙げられる。
これらの中でも、炭酸銀、酢酸銀又は酸化銀が好ましい。
【0015】
金属含有部材形成用組成物の全固形分量に対する金属前駆体の含有量は、1~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物は金属前駆体を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0016】
〔粒状充填剤〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、粒状充填剤を含む。
粒状充填剤の形状は特に限定されず、繊維状、板状、鱗片状、棒状、球状、チューブ状、曲板状、針状など、いずれの形状であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。
また、粒状充填剤は中空であってもよいし、中実であってもよく、コアシェル構造のような多層構造、又は、多孔質構造であってもよい。
【0017】
粒状充填剤としては、無機化合物であっても有機化合物であってもよいし、無機化合物と有機化合物のハイブリッド粒子であってもよいが、無機化合物であることが好ましい。
無機化合物である粒状充填剤としては、シリカ、ケイ酸塩、シリケート等のケイ素化合物、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、亜酸化銅等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化チタン等の金属窒化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素化合物、その他セラミック等が挙げられる。
また、半導体や導電性の熱伝導性粒子をシリカなどの電気絶縁性材料で被覆または表面処理をした構成でもよい。このような態様によれば、熱伝導性および電気絶縁性を個々に制御しやすくなるため、熱伝導性および電気絶縁性の調整が容易となる場合がある。例えば表面にシリカの膜を成膜する方法としては、水ガラス法とゾルゲル法が挙げられる。
これらの中でも、粒状充填剤としては金属を含まない化合物が好ましく、ケイ素化合物がより好ましく、シリカ粒子がより好ましい。
有機化合物である粒状充填剤としては、ポリスチレン、ポリスチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリメチル(メタ)アクリレート、架橋ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレン/アクリル共重合体、メラミン/ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン/ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルムアルデヒド縮合物等を成分とする粒子が挙げられる。
無機化合物と有機化合物のハイブリッド粒子としては、例えば、シリカ粒子又は金属粒子(上述の金属酸化物等)等の無機化合物からなる粒子の表面に有機ポリマー層(例えば、上述の有機化合物として例示した樹脂を含む層)を形成した粒子等が挙げられる。
【0018】
また、粒状充填剤は、シランカップリング処理、チタネートカップリング処理、エポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理などの表面処理が施されていてもよい。表面処理に用いられる表面処理剤は、例えば、ポリオール、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ(酸化ケイ素)、含水シリカ、アルカノールアミン、ステアリン酸、オルガノシロキサン、酸化ジルコニウム、ハイドロゲンジメチコン、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などである。
【0019】
粒状充填剤としては市販品を用いてもよく、市販品としては、シーホスター(登録商標)KE-E10、KE-E30、KE-E150、KE-W10、KE-W30、KE-W50、KE-P10、KE-P30、KE-P50、KE-P100、KE-P150、KE-P250、KE-S10、KE-S30、KE-S50、KE-S100、KE-S150、KE-S250、ジルコスター(登録商標)ZP-153、HR-101、エポスター(登録商標)MX020W、MX030W、MX050W、MX100W、MX200W、MX300W、MS、M05、L15、M30、SS、S、FS、S6、S12(以上、いずれも日本触媒(株)製)等が挙げられる。
【0020】
得られる金属含有部材の強度を向上する観点からは、JIS(Japanese Industrial Standards) Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、上記粒状充填剤の直径の算術平均値は、0.05~20μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましく、0.2~1μmであることが更に好ましい。
本発明の金属含有部材形成用組成物が粒状充填剤を2種以上含む場合、その内1種が上記範囲内であればよく、その全てが上記範囲内であることも、本発明の好ましい態様の1つである。
【0021】
また、得られる金属含有部材の強度を向上する観点からは、本発明の金属含有部材形成用組成物が粒状充填剤を2種以上含む場合、上記粒状充填剤の直径の算術平均値の比が0.1:1~0.8:1である複数種の粒子を、上記粒状充填剤として含むことが好ましい。
上記比は、0.3:1~0.8:1であることが好ましく、0.5:1~0.8:1であることがより好ましい。
このような構成を採用することにより、大きな粒子同士の間に小さな粒子が埋まって、より強度が向上すると推測される。また、単一径の粒状充填剤のみを含む場合に比べて、粒状充填剤同士の間隔が減少し、さらには接触点が増加するため、例えば金属含有部材の熱伝導性も向上すると考えられる。
また、本発明の金属含有部材形成用組成物が粒状充填剤を3種以上含む場合、粒状充填剤の直径の算術平均値の比が上記範囲内である組み合わせが1つでもあればよい。
【0022】
粒状充填剤の材質のビッカース硬さは、0.1~100GPaであることが好ましく、1~50GPaであることがより好ましく、5~30GPaであることが更に好ましい。
【0023】
例えば、金属含有部材を導熱部材、放熱部材等として用いる場合、粒状充填剤は、熱導伝性であることが好ましい。
粒状充填剤の熱拡散率は、例えば、1.0×10-6m2s-1以上であり、2.0×10-6m2s-1以上であることが好ましく、3.0×10-6m2s-1以上であることが特に好ましい。また、粒状充填剤の熱拡散率の上限は特に限定しないが実用的には1.0×10-4m2s-1以下である。
【0024】
粒状充填剤の密度(真比重)は、例えば、10.0g/cm3以下であり、5.0g/cm3以下であることがより好ましい。また、粒状充填剤の密度の下限は、特に限定されないが、例えば1.0g/cm3以上であることが好ましい。なお、粒状充填剤が多孔質や中空粒子であるなど空隙部や空洞部を有するものである場合には、本明細書では、粒状充填剤の密度とは、粒状充填剤を構成する成分のうち固形分の密度を意味する。
【0025】
本発明の金属含有部材形成用組成物の全固形分に対する、粒状充填剤の含有量は、0.5~50質量%であることが好ましく、1.0~40質量%であることがより好ましく、3.0~30質量%であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物は粒状充填剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、金属含有部材形成用組成物における金属前駆体を金属に変換してなる、金属含有部材における粒状充填剤の含有量は、10~90体積%であることが好ましく、20~80体積%であることがより好ましく、30~70体積%であることが更に好ましい。
【0026】
〔溶剤〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、溶剤を含む。
溶剤としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-メトキシプロパノール、ブタノール、エチルヘキシルアルコール、テルピネオール等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等)、アセテート類(エチルアセテート、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート)エーテル類(メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、メチルイソブチルケトン)、アルコキシアルカノール類(メトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシエタノール等)、ケトンアルコール類(アセトール、ジアセトンアルコール等)炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、ドデカン、パラフィンオイル、ミネラルスピリット、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン置換溶媒(クロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライド等)、アルキルオキシム類(アセトンオキシム、ジメチルグリオキシム、2-ブタノンオキシム、2,3-ブタジオンモノオキシム等)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはこれらの混合溶媒などを挙げることができる。
これらの中でも、本発明の金属含有部材形成用組成物は溶剤として水を含むことが好ましい。
【0027】
金属含有部材形成用組成物における溶剤の含有量は、金属含有部材形成用組成物の全質量に対する全固形分量の割合を、5~70質量%とする量であることが好ましく、10~60質量%とする量であることがより好ましく、20~50質量%とする量であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物は溶剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、溶剤の全質量に対する水の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、溶剤の全質量に対する水の含有量が90質量%以上(さらには、95質量%以上)である態様も、本発明の好ましい態様の1つである。溶剤の全質量に対する水の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0028】
〔還元剤〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、還元剤を更に含むことが好ましい。
還元剤を含むことにより、金属前駆体の金属への変換を促進することができる場合がある。
還元剤としては、ナトリウム、水酸化ホウ素カリウム、塩化第一鉄、硫酸鉄等の金属塩、ヨウ化水素、一酸化炭素などの無機化合物であってもよいし、有機化合物であってもよいが、有機化合物であることが好ましい。
有機化合物である還元剤としては、ヒドラジン、アセティックヒドラジド、クエン酸三ナトリウム、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミンボラン等のアミン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物、グルコース、アスコルビン酸、サリチル酸、タンニン酸(tannic acid)、ピロガロール(pyrogallol)、ヒドロキノンなどの有機化合物、ナトリウム、水酸化ホウ素カリウム、塩化第一鉄、硫酸鉄等の金属塩、ヨウ化水素、一酸化炭素などの無機化合物が挙げられる。
【0029】
また、還元剤として、下記式(R-1)で表される化合物を用いることも好ましい。
【化1】
式(R-1)中、R
1は水素原子、又は、1つ以上のアルデヒド基を有する1価の有機基を表す。
R
1としては、水素原子、アルデヒド基、1つ以上のアルデヒド基を有する炭素数1~20のアルキル基、1つ以上のアルデヒド基を有する炭素数5~20のアリール基、1つ以上のアルデヒド基を有するアミノ基、1つ以上のアルデヒド基を有する炭素数5~20のヘテロ環基等が挙げられる。好ましくは、水素原子、アルデヒド基、1つ以上のアルデヒド基を有するメチル基、1つ以上のアルデヒド基を有するエチル基、1つ以上のアルデヒド基を有するベンゼン環であり、より好ましくは水素原子である。
式(R-1)で表される化合物としては、ギ酸、2-メチル-3-オキソプロパン酸、3-オキソプロパン酸、フタルアルデヒド酸、イソフタルアルデヒド酸、テレフタルアルデヒド酸等が挙げられる。
【0030】
金属含有部材形成用組成物の全固形分量に対する還元剤の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~3質量%であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物は還元剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0031】
〔アミン化合物〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、アミン化合物を含むことが好ましい。
アミン化合物は、その少なくとも一部が金属含有部材形成用組成物中で上述の金属前駆体と錯体を形成していてもよい。
アミン化合物を含むことにより、金属前駆体の溶解性が向上し、金属含有部材形成用組成物における金属前駆体の含有量を増加させることができる、又は、金属含有部材形成用組成物の保存安定性を向上させることができる場合がある。
【0032】
アミン化合物としては、有機アミンが好ましく、アルキルアミンがより好ましい。
【0033】
アルキルアミンとは、少なくとも1つのアルキル基を有するアミノ基をいう。
ここで、上記アルキル基は、直鎖状、環状、分枝状またはそれらの組み合わせのいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、例えば、1~20であることが好ましく、1~10であることが好ましく、2~10であることが更に好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
アルキルアミンは、第1級、第2級または第3級アミンのいずれであってもよいが、第1級又は第2級アミンであることが好ましく、第1級アミンであることがより好ましい。
アルキルアミンにおける炭素数は、1~20であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、3~8であることが更に好ましい。
【0034】
また、有機アミンの1気圧における沸点は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。
また。有機アミンの1気圧における沸点は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。
【0035】
アミン化合物としては、限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、n-ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、イソオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドコデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリールアミン、ヒドロキシアミン、アンモニウムヒドロキシド、メトキシアミン、2-エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メトキシエチルアミン、エトキシエチルアミン、2-ヒドロキシプロピルアミン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、シアノエチルアミン、エトキシアミン、n-ブトキシアミン、2-ヘキシルオキシアミン、メトキシエトキシエチルアミン、メトキシエトキシエトキシエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、1-アミノ-4メチルピペラジン、ピロリジン、N-メチルピロリジンエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、2,2-(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタル、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アニリン、アニシジン、アミノベンゾニトリル、ベンジルアミン及びその誘導体、ポリアリールアミンやポリエチレンイミンのような高分子化合物及びその誘導体などが挙げられる。
【0036】
中でも、アミン化合物としては、β位で分岐した下記式(A-1)で表される一級アミン化合物が好ましい。
R11-CHR12-CH2-NH2 ・・・(A-1)
式(A-1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基を表す。
【0037】
R11及びR12で表される炭素数1~12の炭化水素基としては、無置換アルキル基、置換アルキル基のいずれでもよい。
無置換アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
置換アルキル基の置換基としては、アリール基(例:フェニル基、ナフチル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等、好ましくは炭素数1~4)、ハロゲン原子(例:塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、アミノ基、ヘテロ環基(例:ピロリジン環、ピロール環、イミダゾール環等の含窒素ヘテロ環基や、フラン環、テトラヒドロフラン環等の含酸素ヘテロ環基などの環状基)などが挙げられる。
置換アルキル基の例としては、アリールアルキル基(アルキル部位の炭素数1~4)、シアノアルキル基(アルキル部位の炭素数1~4)、ハロゲン化アルキル基(アルキル部位の炭素数1~4)、シクロオレフィン結合アルキルが好適である。
上記のうち、R11及びR12の少なくとも一方は、エチル基であることが好ましい。この点の理由については必ずしも明確でなく推測であるが、エチル基の2つの炭素原子とアミノ基の窒素原子及び水素原子とが6員環を形成することで、HOMOが窒素原子からエチル基まで広がるために、錯体形成が安定化されると考えられる。
更には、R11が、ブチル基であり、R12がエチル基である場合がより好ましい。
【0038】
一般式(A-1)で表される化合物の例としては、下記の化合物が挙げられる。
中でも、イソブチルアミン、2-エチルブチルアミン、2-エチルヘキシルアミンが好ましく、2-エチルブチルアミン、2-エチルヘキシルアミンがより好ましい。
【0039】
【0040】
一般式(A-1)で表される一級アミン化合物の分子量としては、70~400の範囲が好ましく、80~300の範囲がより好ましく、90~200の範囲が特に好ましい。分子量が70以上であると、塗布時の濡れ性の点で有利であり、分子量が400以下であると、極性溶媒への溶解性の点で有利である。
【0041】
金属含有部材形成用組成物の全固形分量に対するアミン化合物の含有量は、金属前駆体の溶解度等を考慮して適宜決定すればよいが、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~80質量%であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物はアミン化合物を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0042】
〔他の錯化剤〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、上述のアミン化合物に加えて、又は、アミン化合物に代えて、他の錯化剤を更に含んでもよい。
他の錯化剤は、その少なくとも一部が金属含有部材形成用組成物中で上述の金属前駆体と錯体を形成していてもよい。
他の錯化剤としては、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物等が挙げられる。
アンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物としては、下記式(C-1)~式(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化3】
式(C-1)~式(C-3)において、R
1~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、脂環族アルキル基、アリール基又はアラルキル基、官能基が置換されたアルキル、官能基が置換されたアリール基、ヘテロ環化合物基と高分子化合物及びその誘導体から選択される置換基を表す。
【0043】
式(C-1)~式(C-3)で表される化合物の具体例としては、アンモニウムカルバメート(ammonium carbamate)、アンモニウムカーボネート(ammonium carbonate)、アンモニウムバイカーボネート(ammonium bicarbonate)、エチルアンモニウムエチルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、n-ブチルアンモニウムn-ブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、t-ブチルアンモニウムt-ブチルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルヘキシルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルカルバメート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカルバメート、2-メトキシエチルアンモニウム2-メトキシエチルカルバメート、2-シアノエチルアンモニウム2-シアノエチルカルバメート、ジブチルアンモニウムジブチルカルバメート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカルバメート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカルバメート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカルバメート、モルホリニウムモルホリンカルバメート、ピリジウムエチルヘキシルカルバメート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルバイカルバメート、ベンジルアンモニウムベンジルカルバメート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカルバメート、エチルアンモニウムエチルカーボネート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、n-ブチルアンモニウムn-ブチルカーボネート、イソブチルアンモニウムイソブチルカーボネート、t-ブチルアンモニウムt-ブチルカーボネート、t-ブチルアンモニウムバイカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルヘキシルカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、2-メトキシエチルアンモニウム2-メトキシエチルカーボネート、2-メトキシエチルアンモニウムバイカーボネート、2-シアノエチルアンモニウム2-シアノエチルカーボネート、2-シアノエチルアンモニウムバイカーボネート、オクタデシルアンモニウムオクタデシルカーボネート、ジブチルアンモニウムジブチルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムジオクタデシルカーボネート、ジオクタデシルアンモニウムバイカーボネート、メチルデシルアンモニウムメチルデシルカーボネート、ヘキサメチレンイミンアンモニウムヘキサメチレンイミンカーボネート、モルホリンアンモニウムモルホリンカーボネート、ベンジルアンモニウムベンジルカーボネート、トリエトキシシリルプロピルアンモニウムトリエトキシシリルプロピルカーボネート、ピリジウムバイカーボネート、トリエチレンジアミニウムイソプロピルカーボネート、トリエチレンジアミニウムバイカーボネート及びその誘導体などが挙げられる。
これらは、1種単独で用いるほか、2種以上の混合物として用いてもよい。また、本発明においては、上記の具体例に制限されるものではない。
【0044】
また、アンモニウムカルバメート系化合物又はアンモニウムカーボネート系化合物の種類及び製造方法は、特に制限されるものではない。例えば、米国特許第4,542,214号明細書では、第1アミン、第2アミン、第3アミン、又は少なくとも1つ以上のこれらの混合物と二酸化炭素からアンモニウムカルバメート系化合物が製造できることが記載されている。アミン1モル当り水0.5モルをさらに添加すると、アンモニウムカーボネート系化合物が得られ、水1モル以上を添加する場合は、アンモニウムバイカーボネート系化合物を得ることができる。この際、常圧又は加圧状態で特別な溶媒を使用せずに直接製造するか、溶媒を用いて製造することができる。溶媒を使用する場合、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、カルビトールアセテート等のアセテート類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族、クロロホルムやメチレンクロライド、カーボンテトラクロライド等のハロゲン置換溶媒又はこれらの混合溶媒などを用いることができる。
二酸化炭素は、気相状態でバブリング(bubbling)するか、固体相ドライアイスを使用することができ、超臨界(supercritical)状態でも反応に寄与することができる。
アンモニウムカルバメート誘導体又はアンモニウムカーボネート誘導体の製造には、上
記の方法のほか、最終物質の構造が同一であれば、公知のいかなる方法を使用してもよい。すなわち、製造のための溶媒、反応温度、濃度又は触媒などを特に限定する必要はなく、製造収率にも影響しない。
【0045】
〔他の添加剤〕
本発明の金属含有部材形成用組成物は、他の添加剤を更に含んでもよい。
他の添加剤としては、安定剤、レベリング剤(Leveling agent)、薄膜補助剤、熱分解反応促進剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0046】
安定剤としては、例えば、ホスフィン、ホスファイト、ホスフェートのようなリン化合物、チオールやスルフィドのような硫黄化合物、またこれらの混合物が挙げられる。
リン化合物としては、例えば、一般式R3P、(RO)3Pまたは(RO)3POで表されるリン化合物が挙げられる。ここでRは、炭素数1~20のアルキル基またはアリール基を示し、具体的に例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジベンジルホスフェート、トリエチルホスフェートなどが挙げられる。
硫黄化合物としては、具体的に例えば、ブタンチオール、n-ヘキサンチオール、ジエチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、アリールジスルフィド、2-メルカプトベンゾアゾール、テトラヒドロチオフェン、オクチルチオグリコレートなどが挙げられる。
安定剤の含有量は特に限定されないが、金属前駆体の含有モル量に対し、0.1~90%となるモル量が好ましい。
金属含有部材形成用組成物は安定剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0047】
薄膜補助剤としては、有機酸、有機酸誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。
有機酸としては、具体的に例えば、酢酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2-エチル-ヘキサン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ナフタル酸などが挙げられる。
有機酸誘導体としては、具体的に例えば、酢酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、ラウリン酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、モリブデン酸アンモニウム塩などの有機酸アンモニウム塩と、Au、Cu、Zn、Ni、Co、Pd、Pt、Ti、V、Mn、Fe、Cr、Zr、Nb、Mo、W、Ru、Cd、Ta、Re、Os、Ir、Al、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Pb、Bi、Sm、Eu、Ac、Thなどのような金属を含むシュウ酸マンガン、酢酸金、シュウ酸パラジウム、2-エチルヘキサン酸銀、オクタン酸銀、ネオデカン酸銀、ステアリン酸コバルト、ナフタル酸ニッケル、ナフタル酸コバルトなどの有機酸金属塩が挙げられる。
薄膜補助剤の含有量は特に限定されないが、金属前駆体の含有モル量に対し、0.1~25%となるモル量が好ましい。
金属含有部材形成用組成物は薄膜補助剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0048】
熱分解反応促進剤としては、具体的に例えば、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ピロール、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)のような酸化重合性樹脂などが挙げられる。
金属含有部材形成用組成物の全固形分量に対する熱分解反応促進剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.2~5質量%であることが更に好ましい。
金属含有部材形成用組成物は熱分解反応促進剤を2種以上含んでもよく、2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0049】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0050】
本発明の金属含有層形成用組成物に界面活性剤を含有させることで、形成される金属前駆体含有層の均一性や省液性をより改善することができる。すなわち、界面活性剤を含有する金属含有層形成用組成物を基材に適用して金属前駆体含有層を形成する場合においては、被塗布面と組成物との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0051】
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
【0052】
〔組成物の調製方法〕
上述の組成物は、前述の成分を混合して調製できる。
組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。
例えば、金属前駆体とアミン化合物又は他の錯化剤とを溶剤中で反応させて金属錯体を形成した後に、粒状充填剤、還元剤等の他の成分を更に添加してもよい。
【0053】
また、粒状充填剤を分散させる工程を行ってもよい。粒状充填剤を分散させる工程としては、粒状充填剤の分散に用いる機械力として、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどを使用する工程が挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。また、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」に記載のプロセスおよび分散機を好適に使用できる。
【0054】
組成物の撹拌は、例えば、スターラー(撹拌子)や撹拌羽根を用いて行うことができる。回転速度は、例えば、10~2000rpmが好ましい。下限は、100rpm以上が好ましく、300rpm以上がより好ましい。上限は、1500rpm以下が好ましく、1000rpm以下がより好ましい。また、撹拌は、バブリング、超音波などの方法で行うこともできる。
【0055】
本発明の組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0056】
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタで濾過してもよい。フィルタとしては、従来から濾過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のものを含む)等を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0057】
フィルタの孔径は、0.01~100μm程度が適しており、好ましくは0.1~50μm程度、さらに好ましくは1~30μm程度である。この範囲とすることにより、後工程において、均一な組成物の調製を阻害する微細な異物を、確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状の濾材を用いることも好ましく、濾材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。ファイバ状の濾材としては、例えば、ロキテクノ(株)製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
【0058】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、粒状充填剤を含む分散液のみで行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでのフィルタリングを行ってもよい。
【0059】
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0060】
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
【0061】
(金属含有部材及びその製造方法)
本発明の金属含有部材は、本発明の金属含有部材形成用組成物における金属前駆体を金属に変換してなる金属含有部材である。
金属前駆体を金属に変換する方法としては、特に限定されないが、加熱等が挙げられる。
本発明の金属含有部材は、特に限定されないが、導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材であることが好ましい。
【0062】
<導熱部材、放熱部材>
以下、本発明の金属含有部材が導熱部材である場合について説明する。
図1は、本発明の導熱部材および積層体の一例を示す概略断面図である。
例えば
図1に示すように、本発明の導熱部材4は、基材1上に形成された金属含有部材2の内部に粒状充填剤3が分散した構造を有する。導熱部材4は、粒状充填剤3を含有することで、強度に優れるものである。
ここで、例えば基材1側に熱源が有る場合、導熱部材4に伝わった熱エネルギーEは、金属含有部材2を伝達して金属含有部材2の基材1が存在する側とは反対の側に放出される。
【0063】
導熱部材の熱拡散率は、3.0×10
-7m
2s
-1以上であることが好ましく、1.0×10
-6m
2s
-1以上であることが特に好ましい。導熱部材の熱拡散率の上限は、特に限定されないが、例えば1.0×10
-4m
2s
-1以下である。
このような導熱部材は、優れた熱伝導性を有するため、例えば、LSIデバイスなどのデバイス用の導熱部材として好適に使用できる。
また、
図1に示した導熱部材と同様の導熱部材を、放熱部材として使用することもできる。その場合の放熱部材の好ましい構成及び好ましい熱拡散率は、導熱部材の場合と同様である。
本発明の金属含有部材が放熱部材である場合、特に限定されないが、例えば、特開2012-231169号公報の導電性放熱部材等として用いることができる。
【0064】
以下、金属含有部材の製造方法について説明する。
本発明の金属含有部材の製造方法は、本発明の金属含有部材形成用組成物を基材に適用して金属前駆体含有層を形成する適用工程、及び、上記金属前駆体含有層に含まれる金属前駆体を金属に変換する変換工程を含む。
以下、各工程の詳細について説明する。
【0065】
<適用工程>
適用工程においては、本発明の金属含有部材形成用組成物が基材に適用されて金属前駆体含有層が形成される。
適用工程における金属含有部材形成用組成物の適用方法としては、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、スリットコート法、スパイラルコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、流延塗布法、ロール塗布法および滴下法(ドロップキャスト)が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法又はスリットコート法が好ましく、スピンコート法がより好ましい。
【0066】
金属前駆体含有層の膜厚(例えば、塗布膜厚)は、0.2~50μmであることが好ましい。この数値範囲の下限は、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらに好ましい。また、この数値範囲の上限は、35μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
金属前駆体含有層の膜厚は、例えば、適用方法の選択、又は、適用を複数回行うこと等により調整することが可能である。
【0067】
〔基材〕
基材は、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択される。基材としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる透明基板、発光素子、固体撮像素子、半導体メモリ、熱伝導シート、メタル基板、金属配線を有する基板、金属基板、セラミクス基板等に用いられる半導体基板等が使用できる。透明基板は、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノシリケートガラス、樹脂などである。これらの透明基板には、透明導電膜、反射膜および保護膜など他の構造が形成されていてもよい。また、半導体基板は、例えば、シリコン、サファイア、炭化ケイ素、窒化ガリウム、アルミニウム、アモルファス酸化アルミニウム、多結晶酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGa、InPおよびZnOなどである。これらの半導体基板には、PN接合層、発光層、光電変換層、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)層および電極層など他の構造が形成されていてもよい。また、これらの基材上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。また、下塗り層は、金属前駆体の金属への変換を促進するため、上述の還元剤、アミン化合物等を含むものであってもよい。
【0068】
基材の形状としては、平面状、拡散面状、凹面状、凸面状等いずれの形状であってもよい。
また、基材には、あらかじめ表面処理を施してもよい。
表面処理としては、UV照射、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理などの表面を分解活性化させる処理、ヒドラジン、N-メチルピロリドン、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液のようなアルカリ性溶液での処理、硫酸、塩酸、硝酸のような酸性溶液での処理などが挙げられる。また、基材表面の汚れを落として清浄にする処理としては、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等の有機溶剤による処理、付着したゴミを落とすための水洗等が挙げられる。これらの表面処理は複数種を組み合わせて行ってもよい。
【0069】
また、適用工程において、金属前駆体含有層を乾燥してもよい。
乾燥方法としては、特に限定されないが、加熱、減圧等による乾燥が挙げられる。
乾燥手段は特に限定されず、公知の加熱装置、減圧装置等を用いることができる。
また、後述の変換工程を加熱により行う場合、適用工程において乾燥は行わず、変換工程において金属前駆体含有層の乾燥と金属前駆体の金属への変換とが同時に行われてもよい。
【0070】
<変換工程>
変換工程においては、上記金属前駆体含有層に含まれる金属前駆体が金属に変換される。
変換方法としては、特に限定されないが、加熱(焼成)により変換されることが好ましい。すなわち、変換工程は、上記金属前駆体含有層を加熱することを含む工程であることが好ましい。
加熱により、例えば金属前駆体(例えば、金属塩)が還元され、金属に変換される。
加熱温度としては、金属前駆体及び還元剤等の成分の種類等を考慮して決定すればよく、特に限定されないが、70~800℃が好ましく、80~300℃がより好ましく、80℃~150℃が更に好ましい。
加熱時間としては、金属前駆体及び還元剤等の成分の種類等を考慮して決定すればよく、特に限定されないが、10秒~30分間が好ましく、30秒~5分間がより好ましい。
加熱手段としては特に限定されないが、例えばホットプレート、電気炉、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブン、赤外線オーブン等が挙げられる。
【0071】
加熱は段階的に行ってもよい。更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0072】
<他の工程>
本発明の金属含有部材の製造方法は、他の工程を更に含んでもよい。
他の工程としては、例えば、金属前駆体含有層上に上塗り層を形成する上塗り層形成工程が挙げられる。
上塗り層形成工程は、変換工程後に行ってもよいが、変換工程前、適用工程後に行うこともできる。
上塗り層としては、例えば、金属前駆体の金属への変換を促進するための、上述の還元剤、アミン化合物、他の錯剤等を含む層が挙げられる。
また、上塗り層として、絶縁、導電、屈折率調整、導熱等の機能を有する層を形成してもよい。
【0073】
その他、本発明の金属含有部材の製造方法は、金属含有部材の表面処理工程等の本分野において公知の工程を更に含んでもよい。
【0074】
形成される金属含有部材の厚さは、1~500μmであることが好ましい。この数値範囲の下限は、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、この数値範囲の上限は、300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0075】
(積層体およびデバイス)
本発明の積層体は、基材と、基材上に形成された本発明の金属含有部材とを備える。
基材と金属含有部材との間には、下塗り層等の他の層を有してもよい。
また、金属含有部材の基材とは反対の側には、上塗り層等の他の層を有してもよい。
また、積層体は、複数層の金属含有部材を含んでもよい。
また、金属含有部材が導熱部材である場合、本発明の積層体は、導熱部材に接する吸熱部をさらに有してもよい。吸熱部は、冷却モジュールであり、例えば、放熱フィン、ヒートパイプ、ペルチェモジュール、クーリングプレートなどである。
【0076】
本発明のデバイスは、本発明の金属含有部材、又は、本発明の積層体を有するデバイスである。
【0077】
本発明は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等のロジック集積回路にも適用可能である。また、本発明は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のマイクロプロセッサにも適用可能である。また、本発明は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PCM(Phase-Change Memory)、ReRAM(Resistance Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリにも適用可能である。また、本発明は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、パワーデバイス、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)等のアナログ集積回路にも適用可能である。また、本発明は、例えば、加速度センサ、圧力センサ、振動子、ジャイロセンサ等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)にも適用可能である。また、本発明は、例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Near field communication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(Wireless Local Area Network)等のワイヤレス素子、ディスクリート素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CMOSイメージセンサー、カメラモジュール、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、IPD(Integrated Passive Devices)等にも適用可能である。
本発明の金属含有部材は、例えば、これらのデバイスに導熱部材、放熱部材、反射部材、加飾部材又は導電部材として適用することができる。
【0078】
そして、上記のような本発明の半導体デバイスが搭載される最終製品は、特に限定されず、例えば、スマートTV、移動体通信端末、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、デスクトップPC、ノートPC、ネットワーク機器(ルーター、スイッチング)、有線インフラ機器、デジタルカメラ、ゲーム機、コントローラ、データセンター、サーバー、マイニング用PC、HPC、グラフィックカード、ネットワークサーバ、ストレージ、チップセット、車載機器(電子制御機器、運転支援システム)、カーナビ、PND、照明(一般照明、車載照明、LED照明、OLED照明)、テレビ、ディスプレイ、ディスプレイ用パネル(液晶パネル、有機ELパネル、電子ペーパー)、音楽再生端末、産業用機器、産業用ロボット、検査装置、医療機器、白物家電、宇宙又は航空機用機器、ウェアラブルデバイス等である。
【0079】
本発明の金属含有部材が導熱部材である場合、例えば、バッテリー、基板等の熱源と、冷却モジュール(ヒートパイプ等)、電子機器の筺体などの部品との接合部にも適用可能である。さらに、本発明の金属含有部材が導熱部材である場合、車載用の電子機器、バッテリー、電源変換機器などの部品と、空冷機構や水冷機構を用いた冷却装置との接合などにも適用可能である。
また、本発明の金属含有部材が導熱部材又は放熱部材である場合、例えば、放熱フィンとして用いることもできる。
【実施例0080】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例に限定されるものではない。実施例において、特に述べない限り、「部」および「%」は質量基準であり、各工程の環境温度(室温)は23℃である。
また、以下、「金属含有部材形成用組成物1」等を、単に「組成物1」等とも記載する。
【0081】
<比較用組成物1の調製>
撹拌器付きのシュレンクフラスコを用い、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルカルバメート65.0g(215ミリモル)をイソプロパノール150.0gに溶解させた後、酸化銀20.0g(86.2ミリモル)を加えて、常温で反応させた。この反応溶液は、最初は黒色懸濁液であったが、反応が進行して錯化合物が生成されるにつれて徐々に色が薄くなり、透明に変わることが観察された。そして、2時間反応させた結果、無色透明な溶液が得られた。
この溶液に、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアミン2.5g、n-ブタノール85.0g及びアミルアルコール50.0gを加えて撹拌した後、ヒドラジンを溶液全体の0.5質量%に相当する量を加え、0.45ミクロンのメンブレンフィルタを使用してろ過し、熱分析して、銀含量5.0質量%の比較用組成物1を製造した。
【0082】
<金属含有部材形成用組成物1の調製>
100質量部の上記比較用組成物1に対して、シーホスターKE-E30(日本触媒(株)製、固形分20%)及びKE-E150(日本触媒(株)製、固形分20%)を各12.5質量部添加し、金属含有部材形成用組成物1(組成物1)とした。
【0083】
<金属含有部材形成用組成物2の調製>
塩化コバルト3.8gを50gの水に溶解させ、その中に35質量%塩酸24.6gを加え、溶液を調製した。トリオクチルアミン15.8gをキシレン40gに混合した溶液を先の溶液に加え、撹拌しながら60℃に加熱した。
水層と溶媒層を分離し、溶媒層だけを取り出しで溶媒のキシレンを留去して前駆組成物を得た。
100質量部の上記前駆組成物に対して、ジルコスターZP-153(日本触媒(株)製、固形分70%)を7質量部添加し、金属含有部材形成用組成物2(組成物2)とした。
【0084】
<金属含有部材形成用組成物3~17の調製>
下記表の「組成」の欄に記載の配合比(質量部)となるように各材料を配合した。具体的には、表に記載の金属前駆体、溶剤及び添加剤を混合し、撹拌した後に、表に記載の粒状充填剤及び還元剤を添加して更に混合し、金属含有部材形成用組成物3~17(組成物3~17)を得た。
【0085】
【0086】
【0087】
表中で使用した成分の詳細は以下のとおりである。
【0088】
〔粒状充填剤〕
・シーホスターKE-W30(固形分20%):シリカ粒子、日本触媒(株)製、粒径0.3μm
・シーホスターKE-W50(固形分20%):シリカ粒子、日本触媒(株)製、粒径0.5μm
・シーホスターKE-W10(固形分15%):シリカ粒子、日本触媒(株)製、粒径0.1μm
・エポスターMX050W(固形分10%):アクリル系架橋樹脂、日本触媒(株)製、粒径70nm
・バイラールAl-L7(固形分7%):アルミナ粒子、多木化学(株)製、粒径5~10nm
・DIF-AB-33W(固形分60%):酸化亜鉛粒子、堺化学工業(株)製、粒径35nm
以上、粒径はJIS Z 8901:2006に記載の方法により算出した場合の、前記粒状充填剤の直径の算術平均値である。
また、シーホスター、エポスター、DISPALは登録商標である。
【0089】
(評価)
<応力耐性評価>
〔実施例1、3~13及び比較例1〕
基材としてアルミ板を用いた。各実施例における金属含有部材形成用組成物及び比較例における比較用組成物を、それぞれ、スピンコート法により、上記アルミ板に塗布して金属前駆体含有層を形成した。上記塗布を繰り返すことで、得られる金属層の厚さが2μmとなる厚さの金属前駆体含有層を作製した。
得られた金属前駆体含有層を備えるアルミ板を、表の「焼成温度(℃)」の欄に記載の温度のオーブンで2分間熱処理(加熱焼成)して、厚さ2.0μmの金属層を備えるアルミ板を形成した。
上記金属層を備えるアルミ板を、1cm×10cmのサイズの矩形状にカットした。その後に塩酸浸漬でアルミ板を除去することにより、金属層の矩形薄膜を得た。
得られた矩形薄膜を平坦で摩擦が小さく地面にほぼ水平な台上で長軸方向に一定速度で滑らせ、矩形薄膜のうち台の端から出た部分の先端が台より1cm沈んだ際の端から出た部分の長さを比較例1における同様の試験を行った際の長さと比較し、その相対比を算出した。評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表の「応力耐性評価」の欄に記載した。
-評価基準-
A:上記相対比が1.5以上であった。
B:上記相対比が1.3以上1.5未満であった。
C:上記相対比が1.1以上1.3未満であった。
D:上記相対比が1.1未満であった。
〔実施例2〕
基材としてアルミ板を用いた。実施例2における金属含有部材形成用組成物2を、アルミ板上にスピンコート法により塗布した。上記塗布を繰り返すことで、得られる金属層の厚さが2μmとなる厚さの金属前駆体含有層を作製した。
上記金属前駆体含有層を備えるアルミ板を、「焼成温度(℃)」の欄に記載の温度の電気炉で20分間焼成し、アルミ板上に高純度の酸化コバルトの透明な薄膜を得た。さらに水素ガス雰囲気中550℃で2時間焼成し、アルミ板上に高純度金属コバルトの薄膜(金属層)を得た。
上記実施例1、3~13及び比較例1における金属層を備えるアルミ板の代わりに、上記アルミ板上に高純度金属コバルトの薄膜が形成された部材を用いた以外は、実施例1、3~13及び比較例1と同様の方法及び同様の評価基準により、応力耐性を評価した。
<反り耐性評価>
各実施例又は比較例において、それぞれ、アルミ板の代わりに、シリコンウエハを用い、かつ、塗布の繰返し数を変更して金属前駆体含有層の厚さを得られる金属層の厚さが10μmとなる厚さとした以外は、応力耐性評価と同様の方法により、金属層を備えるシリコンウエハを作製した。上記シリコンウエハとしては、研磨により厚さ100μmまで薄層化してあるものを用いた。
上記シリコンウエハの反りを、比較例1における同様の試験を行った際の反りと比較し、その相対比を算出した。評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表の「反り耐性評価」の欄に記載した。
〔評価基準〕
A:上記相対比が0.7未満であった。
B:上記相対比が0.7以上0.8未満であった。
C:上記相対比が0.8以上0.9未満であった。
D:上記相対比が0.9以上であった。
【0090】
以上の結果から、本発明の金属含有部材形成用組成物から得られる金属含有部材は応力耐性及び反り耐性に優れ、強度に優れた部材であることがわかる。
【0091】
また、放熱部材を有するデバイスの一例として、
図2に記載の構成を含むデバイスを作製した。
図2は、実施例において作製した放熱部材を有するデバイスの構成の一部を示す概略断面図である。
図2に示すデバイス10は、半導体チップ12から発生した熱をデバイス10の外部に放熱するために、カバープレート20に接する放熱部材22を備える。
本実施例において、実施例1~17のいずれかにおいて用いた金属部材形成用組成物をカバープレート20上に塗布、加熱して金属部材を放熱部材22として作製した。加熱温度及び加熱時間は上述の応力耐性評価における加熱温度及び加熱時間と同様とした。
半導体チップ12と放熱部材22とは接着部材24により接着されている。また、半導体チップ12と他の半導体チップ等のデバイスに存在する他の機能部とは、回路基板14上に形成された回路パターン18、又は、回路基板11における回路パターン18とは反対の側に形成された別の回路パターン(図では省略)により電気的に接続される。回路パターン18と半導体チップ12とはバンプ16により電気的に接続されている。
このようなデバイスを作製したところ、いずれの半導体デバイスも性能に問題が無かった。