(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138864
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20220915BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20220915BHJP
H01L 43/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01R33/09
H01L43/08 B
H01L43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038977
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】黒木 康二
(72)【発明者】
【氏名】原谷 進
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AA10
2G017AC07
2G017AC09
2G017AD54
2G017BA09
2G017CC04
5F092AB01
5F092AB10
5F092AC04
5F092BB53
5F092BB64
5F092FA08
(57)【要約】
【課題】磁気抵抗ストリップと強磁性膜を備えた磁気センサにおいて、磁気抵抗素子に印加される磁気バイアスの低下を抑制する。
【解決手段】磁気センサ1は、y方向に延在する磁気抵抗ストリップSと、y方向に延在する磁気ギャップGを介してx方向に配列された強磁性膜M1,M2とを備える。磁気抵抗ストリップSは、z方向から見て磁気ギャップGと重なる位置に配置される。磁気ギャップGのx方向における幅は、磁気抵抗素子Rと重なる部分よりも硬磁性体Hと重なる部分の方が広い。このように、硬磁性体Hと重なる部分において磁気ギャップGの幅が拡大されていることから、硬磁性体Hから生じる磁界が強磁性膜M1,M2に吸収されにくくなる。これにより、磁気抵抗素子Rに印加される磁気バイアスの低下が抑制されることから、検出信号に重畳する不規則ノイズを効果的に低減することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気バイアスを与える複数の硬磁性体を介して第1の方向に配列された複数の磁気抵抗素子からなる磁気抵抗ストリップと、
前記第1の方向に延在する磁気ギャップを介して、前記第1の方向と交差する第2の方向に配列された第1及び第2の強磁性膜と、を備え、
前記磁気抵抗ストリップは、前記第1及び第2の方向で定義される平面と交差する第3の方向から見て、前記磁気ギャップと重なる位置に配置され、
前記磁気ギャップの前記第2の方向における幅は、前記磁気抵抗素子と重なる部分よりも前記硬磁性体と重なる部分の方が広いことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記複数の磁気抵抗素子は、前記第1の強磁性膜と重なりを有することを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1の強磁性膜のうち前記複数の磁気抵抗素子と重なる部分は、前記第3の方向から見て角部を有することを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1の強磁性膜と重なりを有し、前記第3の方向を長手方向とする外部磁性体をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記複数の磁気抵抗素子は、前記第2の強磁性膜と重なりを有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記複数の硬磁性体は、前記第1及び第2の強磁性膜と重ならないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサに関し、特に、磁気抵抗素子に磁気バイアスを印加する硬磁性体を備えた磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサとしては、特許文献1に記載されているように、磁気抵抗素子の抵抗値変化に基づいて磁界の向き及び強さを検出するタイプの磁気センサが知られている。特許文献1に記載された磁気センサは、磁気抵抗素子を分断する複数の硬磁性体(磁石)を配置することによって、磁気抵抗素子に磁気バイアスを印加している。磁気抵抗素子に磁気バイアスを印加すれば、理想的には磁気抵抗素子が単磁区化されるため、検出信号に重畳する不規則ノイズを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気抵抗素子に磁界を集中させるための強磁性膜を用いた場合、硬磁性体から生じる磁界が硬磁性体に吸収されてしまい、磁気抵抗素子に印加される磁気バイアスが低下するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、磁気抵抗ストリップと強磁性膜を備えた磁気センサにおいて、磁気抵抗素子に印加される磁気バイアスの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気センサは、磁気バイアスを与える複数の硬磁性体を介して第1の方向に配列された複数の磁気抵抗素子からなる磁気抵抗ストリップと、第1の方向に延在する磁気ギャップを介して第1の方向と交差する第2の方向に配列された第1及び第2の強磁性膜とを備え、磁気抵抗ストリップは、第1及び第2の方向で定義される平面と交差する第3の方向から見て磁気ギャップと重なる位置に配置され、磁気ギャップの第2の方向における幅は、磁気抵抗素子と重なる部分よりも硬磁性体と重なる部分の方が広いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、硬磁性体と重なる部分において磁気ギャップの幅が拡大されていることから、硬磁性体から生じる磁界が強磁性膜に吸収されにくくなる。これにより、磁気抵抗素子に印加される磁気バイアスの低下が抑制されることから、検出信号に重畳する不規則ノイズを効果的に低減することが可能となる。
【0008】
本発明において、複数の磁気抵抗素子は第1の強磁性膜と重なりを有していても構わない。これによれば、第1の強磁性膜によって集磁された磁界を効率よく磁気抵抗素子に印加することが可能となる。この場合、第1の強磁性膜のうち複数の磁気抵抗素子と重なる部分は、第3の方向から見て角部を有していても構わない。これによれば、角部に集中する磁界を効率よく磁気抵抗素子に印加することが可能となる。
【0009】
本発明による磁気センサは、第1の強磁性膜と重なりを有し、第3の方向を長手方向とする外部磁性体をさらに備えていても構わない。これによれば、第3の方向の磁界を外部磁性体によって集磁し、これを磁気抵抗素子に印加することが可能となる。
【0010】
本発明において、複数の磁気抵抗素子は第2の強磁性膜と重なりを有していても構わない。これによれば、磁気ギャップを通過する磁界をより効率よく磁気抵抗素子に印加することが可能となる。
【0011】
本発明において、複数の硬磁性体は第1及び第2の強磁性膜と重ならなくても構わない。これによれば、硬磁性体から生じる磁界が強磁性膜により吸収されにくくなる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、磁気抵抗ストリップと強磁性膜を備えた磁気センサにおいて、磁気抵抗素子に印加される磁気バイアスの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の構造を説明するための略平面図である。
【
図2】
図2(a)は
図1に示すA-A線に沿った略断面図であり、
図2(b)は
図1に示すB-B線に沿った略断面図である。
【
図3】
図3は、磁気センサ1の構造をより詳細に説明するための部分平面図である。
【
図4】
図4は、磁気センサ1の変形例の構造をより詳細に説明するための部分平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための略平面図である。
【
図7】
図7は、磁気センサ2の主要部の第1の例を示す部分平面図である。
【
図8】
図8は、磁気センサ2の主要部の第2の例を示す部分平面図である。
【
図9】
図9は、磁気センサ2の主要部の第3の例を示す部分平面図である。
【
図10】
図10は、磁気センサ2の主要部の第4の例を示す部分平面図である。
【
図11】
図11は、磁気センサ2の主要部の第5の例を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の構造を説明するための略平面図である。また、
図2(a)は
図1に示すA-A線に沿った略断面図であり、
図2(b)は
図1に示すB-B線に沿った略断面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、y方向に延在する磁気抵抗ストリップSと、x方向に配列された2つの強磁性膜M1,M2を備えている。磁気抵抗ストリップSは、絶縁膜12を介してセンサ基板11上に形成されており、複数の硬磁性体(磁石)Hを介してy方向に配列された複数の磁気抵抗素子Rからなる。磁気抵抗素子Rの材料としては、磁界の向き及び強度によって抵抗値が変化するものであれば特に限定されない。磁気抵抗素子Rは、複数の硬磁性体Hによってy方向に分断されており、硬磁性体Hによって印加される磁気バイアスによって実質的に単磁区化される。これにより、磁区の乱れに起因する不規則ノイズが低減される。磁気抵抗素子Rを確実に単磁区化するためには、個々の磁気抵抗素子Rのy方向における長さを数μm程度とすることが好ましい。
【0017】
磁気抵抗ストリップSは、Al
2O
3などからなる絶縁膜13で覆われる。パーマロイなどからなる強磁性膜M1,M2は絶縁膜13の表面に形成され、y方向に延在する磁気ギャップGを介してx方向に配列されている。そして、磁気抵抗ストリップSは、z方向から見た平面視で磁気ギャップGと重なる位置に配置されている。ここで、部分拡大図である
図3に示すように、磁気抵抗ストリップSのx方向における幅Wsがほぼ一定であるのに対し、磁気ギャップGのx方向における幅は、磁気抵抗素子Rと重なる部分においてはW1であり、硬磁性体Hと重なる部分においてはW2(>W1)である。つまり、磁気ギャップGのx方向における幅は、磁気抵抗素子Rと重なる部分よりも硬磁性体Hと重なる部分の方が広い。また、本実施形態においては、z方向から見て、強磁性膜M1,M2が絶縁膜13を介して磁気抵抗素子Rと部分的な重なりを有しているのに対し、強磁性膜M1,M2と硬磁性体Hは重なりを有していない。
【0018】
図3に示すように、強磁性膜M1,M2は、磁気抵抗素子Rと重なる部分においてx方向に突出する形状を有しており、突出部のy方向における幅はLmである。幅Lmは、磁気抵抗素子Rのy方向における長さLrよりも短く、これにより、z方向から見た強磁性膜M1,M2の角部Cは、磁気抵抗素子Rと重なる。これにより、強磁性膜M1から強磁性膜M2に向かう検出磁界、或いは、強磁性膜M2から強磁性膜M1に向かう検出磁界は、ほぼ直角な角部Cに集中し、角部Cから漏洩するx方向の検出磁界が磁気抵抗素子Rに印加される。
【0019】
これに対し、硬磁性体Hは、z方向から見て強磁性膜M1,M2と重なりを有していないことから、硬磁性体Hから生じる磁界は、一部が強磁性膜M1,M2に吸収されるものの、大部分が磁気抵抗素子Rに印加される。これにより、磁気抵抗素子Rに十分な磁気バイアスを印加することが可能となり、検出信号に重畳する不規則ノイズを効果的に低減することが可能となる。
【0020】
但し、本発明において、磁気抵抗ストリップSのx方向における幅Wsが一定である点は必須でなく、変形例である
図4に示すように、磁気抵抗素子Rのx方向における幅Wrよりも、硬磁性体Hのx方向における幅Whの方が広くても構わない。この場合、磁気ギャップGの幅W1を磁気抵抗素子Rの幅Wrよりも狭くするとともに、磁気ギャップGの幅W2を硬磁性体Hの幅Whよりも広くすればよい。
【0021】
図1に示すように、磁気抵抗ストリップSのy方向における一端は端子電極E1に接続され、他端は端子電極E2に接続される。端子電極E1,E2は図示しない検出回路に接続され、端子電極E1,E2間の抵抗値に基づいて、検出磁界を測定することが可能となる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態による磁気センサ1は、強磁性膜M1,M2によって構成される磁気ギャップGのx方向における幅が硬磁性体Hと重なる位置において局所的に拡大されていることから、検出磁界を磁気抵抗素子Rに効果的に印加することができるとともに、硬磁性体Hから生じる磁界が強磁性膜M1,M2に吸収されることによる磁気バイアスの低下を抑えることが可能となる。
【0023】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための略平面図である。また、
図6は、
図5に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0024】
図5及び
図6に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、センサ基板21上にこの順に積層された絶縁膜22~24と、絶縁膜22の表面に設けられた4つの磁気抵抗ストリップS1~S4と、絶縁膜24の表面に設けられた3つの強磁性膜M11~M13とを備える。
【0025】
磁気抵抗ストリップS1~S4は、上述した磁気抵抗ストリップSと同様、複数の硬磁性体Hを介してy方向に配列された複数の磁気抵抗素子Rによって構成される。また、強磁性膜M11,M12は、y方向に延在する磁気ギャップG1,G3を介してx方向に配列され、強磁性膜M11,M13は、y方向に延在する磁気ギャップG2,G4を介してx方向に配列されている。そして、z方向から見て磁気ギャップG1~G4と重なる位置にそれぞれ磁気抵抗ストリップS1~S4が配置される。磁気ギャップG1~G4と磁気抵抗ストリップS1~S4の重なりについては第1の実施形態と同じであり、磁気抵抗素子Rについては対応する強磁性膜M11~M13と部分的に重なり、硬磁性体Hについては強磁性膜M11~M13と重なりを有しない。
【0026】
さらに、本実施形態による磁気センサ2は、センサ基板21の上面側に設けられた外部磁性体25と、センサ基板21の裏面及び側面を覆う外部磁性体26を備える。外部磁性体25,26は、フェライトなどの軟磁性材料からなり、z方向の検出磁界を効率よく集磁する役割を果たす。外部磁性体25は、絶縁膜24を介して強磁性膜M11を覆う位置に設けられ、これにより、外部磁性体25によって集磁されたz方向の検出磁界は、強磁性膜M11に取り込まれ、磁気ギャップG1~G4を介して強磁性膜M12,M13に分配される。そして、強磁性膜M11から強磁性膜M12に向かう検出磁界は、磁気抵抗ストリップS1,S3に対して-x方向に印加され、強磁性膜M11から強磁性膜M13に向かう検出磁界は、磁気抵抗ストリップS2,S4に対して+x方向に印加される。つまり、磁気抵抗ストリップS1,S3と磁気抵抗ストリップS2,S4には、検出磁界が互いに逆方向に印加されることになる。したがって、磁気抵抗ストリップS1~S4をブリッジ接続すれば、検出磁界をより高感度に検出することが可能となる。
【0027】
ここで、z方向を長手方向とする外部磁性体25のz方向における先端25Aを検出ヘッドとして用いる場合、検出磁界は、強磁性膜M11から強磁性膜M12,M13側へ流れることになる。この場合、強磁性膜M11から強磁性膜M12,M13側へ流れる検出磁界が磁気抵抗素子Rに効果的に印加されるよう、強磁性膜M11~M13の形状を工夫しても構わない。
【0028】
例えば、
図7に示す第1の例のように、強磁性膜M11の突出幅Lm1を強磁性膜M12(M13)の突出幅Lm2よりも小さくしても構わない。これによれば、磁界が集中する強磁性膜M11の角部Cが磁気抵抗素子Rのy方向におけるより中央に位置するため、検出感度が高められる。
【0029】
また、
図8に示す第2の例のように、z方向から見て強磁性膜M12(M13)が磁気抵抗素子Rと重ならない構造であっても構わない。この場合であっても、磁界が集中する強磁性膜M11の角部Cが磁気抵抗素子Rと重なるため、検出磁界を正しく検出することが可能である。
【0030】
また、
図9に示す第3の例のように強磁性膜M11のエッジを台形に切り欠く、或いは、
図10に示す第4の例のように強磁性膜M11のエッジを半円形に切り欠くことによって、磁気抵抗素子Rと重なる突出部を形成しても構わない。このように、強磁性膜M11の突出部の形状については特に限定されない。
【0031】
さらに、
図11に示す第5の例のように、z方向から見て強磁性膜M11が磁気抵抗素子Rと重ならない構造であっても構わない。この場合であっても、磁気ギャップG1~G4のx方向における幅を、磁気抵抗素子Rと重なる部分においてはW1とし、硬磁性体Hと重なる部分においてはW2(>W1)とすることにより、硬磁性体Hから生じる磁界が強磁性膜M11~M13に吸収されることによる磁気バイアスの低下を抑えることが可能である。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1,2 磁気センサ
11,21 センサ基板
12,13,22~24 絶縁膜
25,26 外部磁性体
25A 外部磁性体の先端
C 角部
E1,E2 端子電極
G,G1~G4 磁気ギャップ
H 硬磁性体
M1,M2,M11~M13 強磁性膜
R 磁気抵抗素子
S,S1~S4 磁気抵抗ストリップ