(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014006
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20220112BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116113
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇太郎
(72)【発明者】
【氏名】難波 将仁
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045AA21
5J045AB00
5J045CA04
5J045DA10
5J045HA03
5J045LA01
5J045NA02
5J046AA04
5J046UA07
(57)【要約】
【課題】低仰角の指向性をもつアンテナを含むアンテナ装置において、その指向性を向上させる。
【解決手段】アンテナ装置は、回路基板40と、回路基板40の表面側に設けられ、2点給電にて円偏波を受信するパッチアンテナ42と、回路基板40に設けられ、パッチアンテナ42の2つの給電部56,58に入力された信号の位相を合わせる位相シフト回路79と、回路基板40に設けられ、位相が合わせられた信号を合成する合成回路80と、回路基板40の表面側に設けられ、合成された信号を増幅する増幅回路74と、増幅回路74を覆うように回路基板40の表面側に設けられたシールドケース62と、を備える。合成回路80は、回路基板40の平面視においてパッチアンテナ42の給電点56,58と増幅回路74との間に位置する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板の表面側に設けられ、2点給電にて円偏波を受信するパッチアンテナと、
前記回路基板に設けられ、前記パッチアンテナの2つの給電部に入力された信号の位相を合わせる位相シフト回路と、
前記回路基板に設けられ、前記位相が合わせられた信号を合成する合成回路と、
前記回路基板の表面側に設けられ、前記合成された信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路を覆うように前記回路基板の表面側に設けられたシールドケースと、
を備え、
前記合成回路が、前記回路基板の平面視において前記パッチアンテナの給電点と前記増幅回路との間に位置することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記合成回路が、前記回路基板の表面側以外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記パッチアンテナと前記シールドケースとが並設され、
前記シールドケースが、前記パッチアンテナのビーム幅に干渉しない高さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記合成回路がマイクロチップ部品を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記パッチアンテナがエアギャップ式のアンテナであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記パッチアンテナと電気的に接続される同軸ケーブルを備え、
前記同軸ケーブルの外部導体が接続されるランドが、前記回路基板の周縁部に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記回路基板における前記ランドの近傍には、前記同軸ケーブルが配置される溝が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記同軸ケーブルの内部導体が前記増幅回路に接続され、
前記回路基板の表面側に、前記パッチアンテナとは別に第2のアンテナが設けられ、
前記第2のアンテナは、前記シールドケースに対して前記ランドと反対側に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記回路基板を収容する樹脂製のアンテナケースを備え、
前記回路基板は、樹脂にてアンテナケースに固定されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2点給電方式のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の高機能化および高性能化に伴い、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)に対応したアンテナが標準装備されつつある。GNSSは、衛星測位システムの総称であり、GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)などを含む。海外の衛星放送を利用するため、SiriusXMなどの衛星ラジオを受信可能なアンテナを搭載する車両もある。
【0003】
衛星から送信される信号は円偏波が多いため、このようなアンテナとして2点給電方式のパッチアンテナが採用されることが多い(例えば特許文献1参照)。そのアンテナエレメントには2つの給電点が設けられ、これらに給電する2つの電気信号のうち一方に対して他方の位相を90度ずらすことで円偏波の受信が可能となる。なお、一点給電方式のパッチアンテナも存在するが、2点給電方式のほうが良好な軸比が得られる点で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアンテナ装置では、回路基板の表面側にアンテナエレメント、裏面側に増幅回路を配置することで、アンテナ装置としての小型化を図っている。しかし、増幅回路からの不要な輻射を遮断するために回路基板の裏面にシールドケースを設ける必要があることから、アンテナ装置が厚み方向(高さ方向)には大きくなってしまう。このため、車両への設置もダッシュボードなど、比較的高さスペースにゆとりがある箇所に限られてしまう。一方、近年では車両のデザイン性向上に関連し、このようなアンテナ装置の薄型化が要求されている。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、2点給電方式のパッチアンテナを含むアンテナ装置の薄型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、アンテナ装置である。このアンテナ装置は、回路基板と、回路基板の表面側に設けられ、2点給電にて円偏波を受信するパッチアンテナと、回路基板に設けられ、パッチアンテナの2つの給電部に入力された信号の位相を合わせる位相シフト回路と、回路基板に設けられ、位相が合わせられた信号を合成する合成回路と、回路基板の表面側に設けられ、合成された信号を増幅する増幅回路と、増幅回路を覆うように回路基板の表面側に設けられたシールドケースと、を備える。合成回路は、回路基板の平面視においてパッチアンテナの給電点と増幅回路との間に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2点給電方式のパッチアンテナを含むアンテナ装置について、その薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るアンテナ装置の外観を表す斜視図である。
【
図5】GPSアンテナおよびその周辺の構成を表す部分拡大平面図である。
【
図6】ケーブルの構成およびその回路基板への取付構造を表す図である。
【
図7】回路基板とケースとの固定方法を表す図である。
【
図8】GPSアンテナとシールドケースとの配置関係によるアンテナ特性への影響を表す図である。
【
図9】GPSアンテナとシールドケースとの配置関係によるアンテナ特性への影響を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0011】
本実施形態では、2点給電方式のパッチアンテナを備える車両用アンテナ装置(以下、単に「アンテナ装置」という)を例示する。このアンテナ装置では、その厚み(高さ)を小さくするよう工夫がなされている。以下、その詳細について説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係るアンテナ装置の外観を表す斜視図である。
アンテナ装置1は、高さが小さいプレート状のケース2に複数のアンテナ(後述)を収容して構成される。ケース2の側面からは、複数のアンテナにつながる複数のケーブル4a~4e(これらを特に区別しないときは「ケーブル4」と称す)が延出している。
【0013】
図2は、アンテナ装置1の分解斜視図である。
ケース2は、ケース本体10、カバー12およびシール部材14を含む。ケース本体10およびカバー12は、電波透過性の樹脂(例えばABS、PET、PC等)からなる。ケース本体10とカバー12とに囲まれる空間にアンテナユニット16が収容される。アンテナユニット16は、回路基板40に複数種のアンテナを搭載して構成される。
【0014】
ケース本体10は、長方形状の底面20と、底面20の周縁に沿って立設された側面22を有し、上方に向けて開口している。側面22のうち前面22aには、一対の切欠き24a、24bが形成されている。また、側面22の周囲に沿って複数の突起26が設けられている。
【0015】
カバー12は、長方形状をなし、その周縁に沿って複数の係止片28が設けられ、それぞれ下方に突出している。各係止片28には、突起26と嵌合可能な係止孔30が設けられている。このようにしてケース本体10とカバー12とを嵌合固定する構造を採用している。なお、両者を金属ねじ等の導電部品を用いて固定することもできるが、その場合、導電部品が各アンテナの特性に影響を与える可能性がある。実施形態ではそれを防止または抑制できる。
【0016】
シール部材14は、長方形枠状をなす弾性体(例えばゴム)である。シール部材14は、ケース本体10の内側にちょうど収まる程度の大きさを有する。シール部材14の前面には管状のケーブル保持部32a~32e(これらを特に区別しないときは「ケーブル保持部32」と称す)が一体に設けられ、それぞれ前方に延出している。ケーブル保持部32a~32eには、ケーブル4a~4eの先端部が挿通される。このような構成により、ケーブル4との接続部を介したケース2内への水分や塵埃等の侵入を防止している。
【0017】
アンテナユニット16は、長方形状の回路基板40にGPSアンテナ42(パッチアンテナ)、TELアンテナ44(第3アンテナ)、DSRCアンテナ46(第4アンテナ)およびWifiアンテナ48(第2アンテナ)を搭載して構成される。TELアンテナ44として、メインアンテナ44aとサブアンテナ44bが設けられている。これらの詳細については後述する。回路基板40の周縁部がケース本体10の底面20に載置される。
【0018】
アンテナ装置1の組立てに際しては、まず、ケーブル4a~4eをケーブル保持部32a~32eに挿通する。続いて、ケーブル4a~4e、GPSアンテナ42およびシールドケース62(後述)を回路基板40に半田付けする。このとき、シール部材14が回路基板40の周縁に沿って載置される。続いて、回路基板40をケース本体10の底面20に載置する態様で組み付ける。このとき、ケーブル保持部32a,32bの基端部が切欠き24aに嵌合し、ケーブル保持部32c~32eの基端部が切欠き24bに嵌合する。回路基板40とケース本体10とは熱溶着によって固定されるが、その詳細については後述する。そして、カバー12をケース本体10に組み付ける。上述のように、複数の係止片28をそれぞれ対応する突起26に引っ掛けることで、カバー12とケース本体10とが固定される。
【0019】
図3は、アンテナユニット16の構成を表す図である。
図3(A)は斜視図であり、
図3(B)は分解斜視図である。
図4は、回路基板40の構成を表す図である。
図4(A)は平面図であり、
図4(B)は底面図である。
【0020】
図3(A)に示すように、回路基板40は、左右に延在する長方形状のプリント配線基板であり、表面および裏面にそれぞれグラウンドパターン41,43が設けられている(
図4参照)。グラウンドパターン41,43は、緑色にコーティングされている。回路基板40の中央にGPSアンテナ42、左右両端にTELアンテナ44が設けられている。TELアンテナ44は、回路基板40の表面に電話用のパターンアンテナとして実装されている。メインアンテナ44aとサブアンテナ44bが回路基板40の中心に対して左右に設けられている。このように複数のTELアンテナ44を設けることで、4Gおよび5Gに必要な帯域を確保している。
【0021】
回路基板40の表面側にはまた、GPSアンテナ42とメインアンテナ44aとの間にDSRCアンテナ46が配置され、GPSアンテナ42とサブアンテナ44bとの間にWifiアンテナ48が配置されている。DSRCアンテナ46は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)の利用に供するアンテナである。DSRCは、ITS(Intelligent Transport Systems)の一つであり、高速道路において渋滞その他の情報をリアルタイムに提供するサービスである。Wifiアンテナ48は、回路基板40の表面にWifi通信用のパターンアンテナとして実装されている。
【0022】
図3(B)にも示すように、GPSアンテナ42は、平面視略正方形状のアンテナエレメント50を有する。アンテナエレメント50は、回路基板40の表面に支持部材52を介して取り付けられる。アンテナエレメント50は、金属板(導電体)をプレスにより所定形状に打ち抜き、数か所を曲げ加工することにより得られる。支持部材52は樹脂等の絶縁体からなる。
【0023】
アンテナエレメント50は、回路基板40に対して平行に延在するエレメント本体54と、エレメント本体54から回路基板40に向けて延出する給電部56,58を有する。給電部56,58は、エレメント本体54の一部を切り出すことで得られる。エレメント本体54は放射電極として機能し、電波を送受信する。給電部56,58の基端(エレメント本体54との接続部)は、円偏波を受信するための2点給電の給電点を構成する。給電部56,58は、支持部材52および回路基板40を貫通し、その先端が、回路基板40の裏面側に設けられた合成回路(後述する)に接続される。
【0024】
また、エレメント本体54の四隅から回路基板40に向けてそれぞれ脚部60が延出している。脚部60の先端は、回路基板40を貫通して裏面側に露出し、半田によって回路基板40に導通される。
【0025】
GPSアンテナ42は、アンテナエレメント50の振動抑制と耐振性確保のため、エレメント本体54と回路基板40との間に支持部材52(絶縁体)が介装される。なお、変形例においては、アンテナエレメント50の強度を十分に確保することを前提に支持部材52を省略してもよい。誘電体を介在させないエアギャップ式のパッチアンテナとすることで、誘電体ロスを小さくし、利得の改善を図ることができる。
【0026】
回路基板40の表面には、アンテナエレメント50にて受信した信号を増幅するための増幅回路(後述する)が実装され、これを覆うようにシールドケース62が設けられている。このシールドケース62とアンテナエレメント50とが、左右に並設されている。
【0027】
図4(A)に示すように、グラウンドパターン41は、TELアンテナ44およびWifiアンテナ48と干渉しないように設けられている。グラウンドパターン41において、エレメント本体54の四隅に対向する位置が部分的に切り欠かれ、その開口部に導電接続部63が設けられている。
【0028】
導電接続部63は、導電パターン64とコンデンサ66を含む。導電パターン64の位置に貫通孔68が設けられ、その貫通孔68に脚部60が挿通される。脚部60は、導電パターン64と導通する。コンデンサ66は、導電パターン64とグラウンドパターン41とを架橋し、両者を電気的に接続する。コンデンサ66は、アンテナエレメント50と回路基板40とにより形成される静電容量の不足分を補う付加容量として機能する。
【0029】
また、回路基板40おいて給電部56,58に対応する位置にも貫通孔70,72が設けられている。貫通孔70,72には、給電部56,58の先端部が挿通される。
【0030】
グラウンドパターン41には、4つの導電接続部63により囲まれる領域の外側に増幅回路74が設けられている。増幅回路74は、LNA(Low Noise Amplifier)であり、給電ラインを形成するマイクロストリップラインと、そのマイクロストリップライン上に設けられた複数のマイクロチップ部品(チップコンデンサ等)を含む。
【0031】
図4(B)に示すように、回路基板40の裏面側に設けられたグラウンドパターン43は、表面側に設けられたグラウンドパターン41と概ね同形状を有する。導電接続部63に対応する位置に開口部76が設けられている。回路基板40を貫通した脚部60は、その開口部76において半田により固定される。
【0032】
グラウンドパターン43の中央には比較的大きな開口部78が設けられ、その内側に位相シフト回路79および合成回路80が設けられている。これらの回路は、回路基板40の裏面に実装されたマイクロストリップライン(単に「ストリップライン」という)を含む。位相シフト回路79は、給電部56,58にそれぞれ入力された信号の位相を合わせる。合成回路80は、位相シフト回路79によって位相が合わせられた信号を合成する。位相シフト回路79と合成回路80との間には抵抗83が設けられている。抵抗83は位相シフト回路79と合成回路80との間の分離性を高めるマイクロチップ部品である。
【0033】
位相シフト回路79は、ストリップライン81および82を含む。ストリップライン81の一端は、貫通孔70から露出する給電部56に半田付けされる。一方、ストリップライン82の一端は、貫通孔72から露出する給電部58に半田付けされる。合成回路80は、ストリップライン84,86および88を含む。ストリップライン84の一端がストリップライン81の他端に接続され、ストリップライン86の一端がストリップライン82の他端に接続されている。ストリップライン84の他端とストリップライン86の他端とが接続されてストリップライン88として延出している。
【0034】
回路基板40には、増幅回路74の一端に対応する位置に図示略の貫通孔が設けられている。ストリップライン88の先端は、その貫通孔に向けて延出している。その貫通孔を貫通する図示略の給電ラインにより、ストリップライン88(つまり合成回路80)と増幅回路74とが接続される。
【0035】
位相シフト回路79において、ストリップライン81とストリップライン82との経路長の差が、給電部56,58に入力される電気信号の波長の1/4の長さに設定されている。一方、ストリップライン84とストリップライン86の経路長は等しく、それぞれ電気信号の波長の1/4の長さに設定されている。それにより、給電部56,58にそれぞれ入力された信号(互いに90度位相がずれた信号)を、位相を合わせて合成できる。この合成信号がストリップライン88を介して増幅回路74に供給されて増幅され、図示しない車載器に送信される。
【0036】
図5は、GPSアンテナ42およびその周辺の構成を表す部分拡大平面図である。
合成回路80は、GPSアンテナ42の給電点(給電部56,58)と増幅回路74との間に位置する。合成回路80の一端(マイクロストリップライン88の先端)が、増幅回路74の一端に接続されている。増幅回路74の他端には、車載器につながるケーブル4cの一端が接続される。シールドケース62は、増幅回路74を覆うように回路基板40に組み付けられている。
【0037】
なお、Wifiアンテナ48は、マイクロストリップライン90を介してケーブル4dの一端と接続される。TELアンテナ44もマイクロストリップライン92を介してケーブル4eの一端と接続される。図示しないDSRCアンテナ46もマイクロストリップラインを介してケーブル4bの一端と接続される。各ケーブルの他端は図示しない車載器に接続される。
【0038】
図6は、ケーブル4の構成およびその回路基板40への取付構造を表す図である。
図6(A)は、両者の取付前の状態を示す平面図である。
図6(B)は取付状態を表す平面図であり、
図6(C)は底面図である。
図6(D)は、
図6(B)のA-A矢視断面図である。
図6(E)は、
図6(B)のB-B矢視断面図である。
【0039】
図6(A)および(D)に示すように、ケーブル4は、内部導体100を芯線とする同軸ケーブルである。内部導体100は電気信号を伝送する信号線である。内部導体100はポリエチレン製の絶縁体102によって被覆される。絶縁体102は外部導体104により被覆される。外部導体104は、導線を編んだ導体である。外部導体104は接地電位またはそれに近い電位である基準電位に維持される。外部導体104は、更に、ビニル製(絶縁性)の保護膜106により被覆される。
【0040】
ケーブル4の先端部は保護膜106が剥がされて外部導体104が露出し、その外部導体104を覆うように金属製のスリーブ108が組み付けられている。スリーブ108は、外部導体104に対して外挿される本体110と、本体110の側面から下方に延出する一対の脚部112を有する。
【0041】
一方、回路基板40におけるケーブル4の接続部には、外向きに開放されるスリット114(「溝」として機能する)が設けられている。スリット114は、回路基板40の周縁部が凹状に切り欠かれて形成され、ケーブル4の直径よりやや小さな開口幅を有する。スリット114の左右には一対のグラウンド接続部116が設けられている。グラウンド接続部116は、ランド118と、ランド118の内方で回路基板40を貫通する貫通孔120を有する。ランド118は、回路基板40の周縁部に位置し、グラウンドパターン41の一部を構成する。
【0042】
図6(B),(C)および(E)に示すように、ケーブル4を回路基板40に接続する際には、一対の脚部112を一対の貫通孔120に挿通しつつ、スリーブ108をスリット114に嵌合させる。このとき、外部導体104がスリーブ108を介してランド118に接続される。そして、グラウンドパターン43側に露出した脚部112は、その脚部112に設けられた爪部により回路基板40に固定される。スリーブ108とランド118は、半田付けにより接続される。このとき、内部導体100の側面が回路基板40の上面に当接する態様となり、その先端が増幅回路74の端部に半田付けされる(
図5参照)。
【0043】
このようにケーブル4をスリット114に嵌合させる構成とすることで、回路基板40へのケーブル4の接続に伴うアンテナユニット16の高さの増大を抑制できる。また、
図2に関連して述べたように、ケーブル4を保持するケーブル保持部32がシール部材14と一体となることで、部材同士の重なりを防ぎ、アンテナユニット16の高さをより低くできる。言い換えれば、これらの構成もアンテナ装置1の薄型化に寄与している。
【0044】
なお、
図5に示したように、Wifiアンテナ48は、シールドケース62に対してランド118と反対側に設けられている。それにより、回路基板40のスペースが有効に利用され、アンテナユニット16の小型化が図られている。
【0045】
図7は、回路基板40とケース2との固定方法を表す図である。
図7(A)はアンテナ装置1の横断面図である。
図7(B)は、
図7(A)のC部拡大に対応し、左段が固定前の状態、右段が固定後の状態を示す。
【0046】
上述のように、回路基板40のケース本体10への固定は、数か所の溶着部122により実現されている(
図7(A))。すなわち、ケース本体10は樹脂材の射出成形にて得られるところ、その成形段階で底面20に円ボス124を形成しておく(
図7(B)左段)。回路基板40における円ボス124との対応箇所には挿通孔126が設けられる。挿通孔126に円ボス124を挿通しつつ回路基板40をケース本体10に載置し、円ボス124を加熱および加圧することで両者が熱溶着される(
図7(B)左段)。このとき円ボス124が押し潰されることで、固定箇所の高さを抑えることができる。
【0047】
このように回路基板40とケース2とを熱溶着により固定することで、金属ねじ等の導電体による固定を避けることができ、各アンテナ(高周波エレメント)への影響を防止または抑制できる。固定用の部品点数も抑えることができる。なお、変形例においては、このような熱溶着に代えて超音波溶着を採用してもよい。また、樹脂製ねじを採用してもよいが、その場合、ねじ深さ(ねじの長さ)を確保するためにケース本体10の厚みを要する。このため、アンテナ装置1の薄型化の観点からは、溶着等のように接合部の高さを抑制できる接合態様が好ましい。
【0048】
図8および
図9は、GPSアンテナ42とシールドケース62との配置関係によるアンテナ特性への影響を表す図である。
図8は、両者の高さをそれぞれ固定し、両者の距離(間隔)を変化させた場合を示す。
図9は、両者の距離を固定し、シールドケース62の高さを変化させた場合を示す。各図(A)は両者の配置関係を表す平面図、(B)は正面図を示す。各図(C)はアンテナ特性の解析結果を示す。図中「0度」が天頂方向を示す。
【0049】
図8に示す解析例では、GPSアンテナ42の高さをh1(本解析では6mm)、シールドケース62の高さをh2に固定し(h1>h2)、両者の距離dを変化させた。その結果、GPSアンテナ42(より正確にはアンテナエレメント50)の高さがシールドケース62の高さよりも大きい場合、両者を所定距離(本解析では1mm)以上離すことで良好なアンテナ特性が得られることが分かった。
【0050】
図9に示す解析例では、GPSアンテナ42とシールドケース62との距離をd1(本解析では15.3mm)、GPSアンテナ42の高さをh1(本解析では6mm)に固定し、シールドケース62の高さhを変化させた。その結果、高さhが所定値(本解析では20mm)を超えるとアンテナ特性が低下することが分かった。
【0051】
図10は、解析結果に基づく一考察を表す図である。
本解析によれば、アンテナエレメント50の表面からシールドケース62に向けた仰角θが30度以下(より好ましくは27度以下)となるよう、GPSアンテナ42の高さh1、シールドケース62の高さh2、および両者の距離d1を調整することで、アンテナ特性を良好に維持できる。このことは、シールドケース62がGPSアンテナ42のビーム幅(電力半値角)に干渉しない高さを有することを意味する。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態では、アンテナユニット16の各アンテナにおいて高さを有する構造体を、回路基板40の表面側に集約する構成とした。特にGPSアンテナ42については、アンテナエレメント50と増幅回路74を並設することで、増幅回路74を覆うシールドケース62もこれらと同じ側に配置した。そして、シールドが特に必要ではない合成回路80を回路基板40の裏面側に配置した。このようにして比較的高さのあるアンテナエレメント50とシールドケース62を回路基板40の表面側に集約することで、アンテナ装置1の薄型化を実現できる。
【0053】
また、合成回路80をマイクロストリップラインで構成したこと、他のアンテナをパターンアンテナとして実装したこと、ケーブル4を回路基板40の周縁部に嵌合させる態様でケース2の側面に組み付けたことなどもその薄型化に寄与している。また、回路基板40の平面視において合成回路80をアンテナエレメント50の給電点と増幅回路74との間に設けることで、信号のロスを効果的に抑制できる。
【0054】
本実施形態によれば、
図1に示したように、極めて薄型のアンテナ装置1を提供できる。アンテナ装置1は、車両のルーフやスポイラーなど設置スペースについて高さ制限がある箇所にも搭載しやすい。このため、車両のデザイン性を損なうことなく、各アンテナの機能を確保できる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0056】
上記実施形態では、合成回路80をマイクロストリップラインのみで構成する例を示した。変形例においては、合成回路がマイクロチップ部品を含む構成としてもよい。それにより、合成回路の面積を小さくできる。
【0057】
上記実施形態では、回路基板40の表面側にアンテナエレメント50および増幅回路74を設け、裏面側に合成回路80を設ける例を示した。アンテナエレメント50と合成回路80とを接続する給電部56,58と、合成回路80と増幅回路74とを接続する給電ラインが、それぞれ回路基板40を貫通する。変形例においては、合成回路を回路基板の表面側に設けてもよい。その場合も、合成回路は回路基板の平面視において給電点と増幅回路との間に位置する。上記実施形態のようにエアギャップ式のアンテナとすることにより、アンテナエレメントの下方に合成回路の一部を配置することも可能である。また、回路基板として多層基板を採用してもよい。その場合、多層基板の表面にパッチアンテナを搭載し、表面側以外の面(裏面や層内対向面など)に合成回路や位相シフト回路を形成することができる。
【0058】
GPSアンテナ42として、エアギャップ式のアンテナを例示したが、アンテナエレメントとグラウンドパターンとの間に誘電体を介装したパッチアンテナとしてもよい。グラウンドパターンを金属製のアースプレートに置き換えてもよい。
【0059】
上記実施形態では、GPSアンテナ42を例示したが、GLONASSその他のGNSSアンテナや衛星ラジオアンテナなどに上記パッチアンテナの構造を適用してもよい。そのようなパッチアンテナを回路基板に複数配設してもよい。また、パッチアンテナやパターンアンテナとして、上述したもののほか、ITS(Intelligent Transport Systems)その他のシステムや、DAB(Digital Audio Broadcast)、Bluetooth(登録商標)その他の規格に対応したものを回路基板に配設してもよい。
【0060】
上記実施形態では、給電部56,58をアンテナエレメント50に一体成形する例を示したが、配線にて構成してもよい。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 アンテナ装置、2 ケース、4 ケーブル、10 ケース本体、12 カバー、14 シール部材、16 アンテナユニット、40 回路基板、41 グラウンドパターン、42 GPSアンテナ、43 グラウンドパターン、44 TELアンテナ、46 DSRCアンテナ、48 Wifiアンテナ、50 アンテナエレメント、52 支持部材、54 エレメント本体、56 給電部、58 給電部、60 脚部、62 シールドケース、64 導電パターン、66 コンデンサ、74 増幅回路、79 位相シフト回路、80 合成回路、100 内部導体、102 絶縁体、104 外部導体、106 保護膜、108 スリーブ、118 ランド、122 溶着部。