IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタスタット, インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-140789MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物
<>
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図1
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図2
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図3
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図4
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図5
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図6
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図7
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図8
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図9
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図10
  • 特開-MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140789
(43)【公開日】2022-09-27
(54)【発明の名称】MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220915BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220915BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220915BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220915BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220915BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220915BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K31/44
A61K31/437
A61K31/519
A61K31/7105
A61K38/16 200
A61K39/395 D
A61K39/395 P
A61K31/713
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K48/00
A61P1/16
A61P3/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 103
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/02
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
C07K7/08
C07K14/00
C07K7/06 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022125448
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019520936の分割
【原出願日】2017-07-07
(31)【優先権主張番号】62/488,464
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/469,373
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/360,190
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/508,892
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519005255
【氏名又は名称】メタスタット, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エー. ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】アナ エル. ブロイ
(57)【要約】
【課題】 MENAプロテインアイソフォームキナーゼを標的とする抗がん療法のための方法及び組成物の提供。
【解決手段】MENA及びMENAアイソフォームのリン酸化及び脱リン酸化は、がん細胞の転移活性を制御する。MENAキナーゼ阻害剤の投与は、樹立された腫瘍及び発生中の腫瘍におけるがん転移の発生の有意な減少をもたらす。チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせたMENAキナーゼ阻害剤の投与は、チロシンキナーゼ阻害剤療法の有効性を高める。抗微小管剤と組み合わせたMENAキナーゼ阻害剤の投与は、化学療法誘発性腫瘍細胞播種の有意な減少をもたらし、抗微小管療法の有効性を高める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月8日出願の米国仮特許出願第62/360,190号、2017年3月9日出願の米国仮特許出願第62/469,373号、2017年4月21日出願の米国仮特許出願第62/488,464号、及び2017年5月19日出願の米国仮特許出願第62/508,892号の利益を主張し、これらの各出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
配列表は、2017年7月7日に作成され、24KBのサイズを有する「010739-5005-WO-Sequence-Listing.txt」という名称のテキストファイルとして本明細書と共に提供する。テキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、MENAキナーゼの活性を調節することによってがん転移及び線維性疾患を阻害するための組成物を含む。
【背景技術】
【0004】
がんは、最もわかりやすくは、異常細胞の無制御の増殖及び拡散を特徴とする複雑な疾患である。がんは依然として世界で最も深刻な健康問題の一つであり、米国では心臓病に次いで2番目によくある死因である。がんが早期に検出された場合、ほとんどの患者の予後は良好である。転移性病期へ進行した進行がん患者は、一般に予後不良であり、そのようながんはすべてのがん関連死亡の約90%を占める。現在の腫瘍学的療法及び新しい治療法の開発は、原発腫瘍を標的とした抗増殖性細胞傷害性療法または標的療法によるがん細胞増殖の阻害に焦点を当てている。
【0005】
転移進行を一般的に阻害することができる有効な抗転移療法の開発は、患者の転帰及び生存率を実質的に改善する可能性がある。悪性細胞の播種を促進するプロセスはがん間で共有されているので、転移カスケードを阻害する薬物は、複数のがん適応症にわたって広く有益であろう。現在利用可能な抗転移薬は、2つの一般的なカテゴリー、抗血管(血管新生)阻害剤及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤に分類される。これらの薬物の主な制限は、有効性の欠如及び無差別の分子阻害であった。
【0006】
欠けているのは、腫瘍細胞の遊走、血管内侵入及び転移を標的とし、それによってその後の既存のアプローチで標的とされ得る原発腫瘍を不活性状態で停止させる効果的な治療法である。
【0007】
MENAタンパク質及びそのアイソフォームは、転移の逐次的多段階プロセスに関与しており、腫瘍細胞の血管内侵入及び運動性に関与することが示されている。MENAは、Ena/VASPタンパク質ファミリーのメンバーであり、アクチン重合において重要な調節的役割を果たしている。PyMTマウス乳癌モデルにおけるMENA欠損は、血管内侵入を抑制し、死亡率及び罹患率を排除し、肺への転移性播種の頻度を大いに減少させる。異種移植マウス乳腺腫瘍におけるMENAINVの発現は、同所性腫瘍からの自発的肺転移の形成増加を促進し、特に上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)及びインスリン様増殖因子(IGF)に対する腫瘍細胞の感受性を変化させる。
【0008】
患者において、高レベルのMENA発現は、転移リスクの増加と相関しており、高レベルのMENA発現は、その後がん転移を発症する早期疾患患者からの腫瘍試料において観察されている。高レベルのMENA発現は、早期乳癌、肺の扁平上皮癌、子宮頸癌、大腸癌及び膵臓癌を有する患者におけるがん転移のリスク増加と関連する。MENAは、選択的にスプライシングされて複数のタンパク質アイソフォームが腫瘍進行中に差次的に発現する。最も特徴付けられたアイソフォームのうちの2つは、もっぱら浸潤性腫瘍細胞において発現するMENAINV、及び原発性乳癌において発現し、かつ浸潤性腫瘍細胞においてダウンレギュレートされる上皮特異的アイソフォームであるMENA11aである。MENAINV発現は、乳癌細胞において発現する場合に、上皮増殖因子(EGF)に対する乳癌細胞の走化性応答を増強することによって強力な転移促進性表現型を付与し、それによってマクロファージによる乳癌細胞のパラクリンシグナル伝達の増加を介して効率的な流動運動を行う乳癌細胞の能力を高める。種及び異なる腫瘍型にわたる浸潤性腫瘍細胞におけるMENAアップレギュレーションの保存は、それが転移進行において決定的な役割を果たすことを示唆する。
【0009】
MENAは、局在化を促進するEVH1、LERERモチーフ、続いてプロフィリン結合に関与するプロリンリッチ配列、続いてEVH2ドメイン内の、オリゴマー化モチーフが後に続く一連のアクチン結合モチーフを含む、少なくとも4つの一般に認識されているドメインからなる。これらのドメインの配置を図1に示す。MENAINVアイソフォームは、タンパク質のEVH1ドメインの直後の116位に19アミノ酸セグメントの挿入をもたらすMENA mRNA転写物へのエクソンの選択的スプライシングによって形成される。MENA11aアイソフォームは、MENAタンパク質のEVH2ドメイン内の513位に21アミノ酸セグメントを挿入するMENA mRNA転写産物へのエクソンの選択的スプライシングによって生成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、攻撃的ながんを促進して原発腫瘍から遠隔の転移部位まで広げるMENA及びMENAアイソフォームの活性を低下させて、線維性疾患に関連する過剰な線維形成を阻止する。本発明は、MENAINVアイソフォームの存在または活性を低下させ、MENA11aアイソフォームの存在または活性を増大させることによって、及び/または、Ras-Raf-MEK-MAPK/ERK及びPI3K-AKT/mTOR 経路からのキナーゼ能力を阻害し、MENAまたはMENAアイソフォーム活性を調節することによって、がん転移、腫瘍細胞薬剤耐性及び線維形成に関連するMENA依存性表現型を弱める。本発明はまた、MENAまたはMENAINVアイソフォームの存在または活性を低下させ、MENA11aアイソフォームの存在または活性を増大させる薬物と組み合わせて投与した場合、及び/または、Ras-Raf-MEK-MAPK/ERK及びPI3K-AKT/mTOR 経路からのキナーゼ能力を阻害し、MENAまたはMENAアイソフォーム活性を調節する薬物と組み合わせて投与した場合、抗腫瘍チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)及び/または抗微小管薬物の有効性を高める。
【0011】
MENAタンパク質は、腫瘍細胞の浸潤及び転移、アクチン重合、接着、ならびにEGF誘発運動性応答にとって重要である複数のプロセスを介して作用する。高度に遊走性及び浸潤性の腫瘍細胞亜集団は、MENAの選択的スプライシング形態を含むMENA mRNAを産生する。そのような選択的スプライシング形態の1つであるMENAINVは、がん転移のリスクについての予後的なものであり、米国特許出願公開第2012/0028252号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の選択的スプライシング形態であるMENA11aは、米国特許出願公開第2010/0047240号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。種々のMENAアイソフォームを同定し、一方を他方と区別するための方法及び組成物は、米国特許出願公開第2010/0033258号に記載されており、これもまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
MENAタンパク質は、腫瘍細胞の浸潤及び転移、アクチン重合、接着、ならびにEGF誘発運動性応答にとって重要である複数のプロセスを介して作用する。高度に遊走性及び浸潤性の腫瘍細胞亜集団は、MENAの選択的スプライシング形態を含むMENA mRNAを産生する。そのような選択的スプライシング形態の1つであるMENAINVは、がん転移のリスクについての予後的なものであり、米国特許出願公開第2012/0028252号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の選択的スプライシング形態であるMENA11aは、米国特許出願公開第2010/0047240号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。種々のMENAアイソフォームを同定し、一方を他方と区別するための方法及び組成物は、米国特許出願公開第2010/0033258号に記載されており、これもまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0013】
MENAタンパク質は、腫瘍細胞の浸潤及び転移、アクチン重合、接着、ならびにEGF誘発運動性応答にとって重要である複数のプロセスを介して作用する。高度に遊走性及び浸潤性の腫瘍細胞亜集団は、MENAの選択的スプライシング形態を含むMENA mRNAを産生する。そのような選択的スプライシング形態の1つであるMENAINVは、がん転移のリスクについての予後的なものであり、米国特許出願公開第2012/0028252号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の選択的スプライシング形態であるMENA11aは、米国特許出願公開第2010/0047240号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。種々のMENAアイソフォームを同定し、一方を他方と区別するための方法及び組成物は、米国特許出願公開第2010/0033258号に記載されており、これもまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0014】
本発明は、MENAが、ホスホチロシン受容体シグナル伝達制御において役割を果たすという観察から部分的に生じる。いくつかのがんは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含む治療に対して全く反応しないか、または弱い反応しかしない。多くのがんは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含む治療に対する耐性を発生させ、チロシンキナーゼ阻害剤を含む治療は、最初は腫瘍細胞の成長及び増殖を低下させるが、最終的には効力を失う。PTP1Bなどの内因性脱リン酸化酵素がTKI標的受容体をその同族リガンドによる刺激に対して脱感作させる能力を制限することによって、MENAINVが少なくとも1つのTKI標的受容体タンパク質(EGFR)の脱リン酸化を阻止するという発見は、MENAINVアイソフォームが、浸潤性がんの表現型と非常に相関している理由のモデルを示唆している。このモデルでは、MENAINVは、デホスホリラーゼ複合体と標的受容体との会合を破壊することにより、脱リン酸化により誘導される受容体の通常のダウンレギュレーションを破壊して、腫瘍細胞を増殖因子刺激に対して感受性にする。対照的に、MENA11aアイソフォームは、浸潤性腫瘍細胞においてダウンレギュレートされており、MENA11aの発現は、凝集性腫瘍の形態と相関している。MENAまたはMENAINVアイソフォームの存在または活性を低下させるか、あるいはMENA11aアイソフォームの存在または活性を増大させるための任意の治療は、転移性がん及び/または線維性疾患表現型の発症を制限または根絶するための方法を提供し得る。さらに、MENAまたはMENAINVの存在または活性を低下させることにより、及び/またはMENA11aの存在または活性を増大させることにより、現在のTKIに基づく療法の有効性を改善及び延長する可能性がある。MENAアイソフォーム活性を調節するための1つの可能性のある方法は、MENAキナーゼ活性を阻害することによってMENA及び/またはMENAアイソフォームのリン酸化及び脱リン酸化を制御することによる。
【0015】
本発明はまた、MENAのセリン125(Ser125)リン酸化部位及びMENAINVの相当するセリン144(Ser144)リン酸化部位に近いペプチド配列が、MAPKAPK2/MK2キナーゼの強力な基質であるという発見にも部分的に基づく。MENA中のSer125及び/またはMENAINV中のSer144をリン酸化不能なアミノ酸で置き換えると、ペプチド基質がMAPKAPK2/MK2キナーゼの有効なペプチド阻害剤に変わる。Hayess及びBenndorfは、ペプチド配列KKKALHRQLGVAA(配列番号30)がMAPKAPK2/MK2の強力な阻害剤であり、MAPKAPK2/MK2基質熱ショックタンパク質HSP25/27のコンセンサス配列結合ドメインに基づいていることを発見した。MAPKAPK2/MK2依存性リン酸化の質量分析ホスホプロテオミクス分析は、MENA/MENAINVがHSP27と比較してより強力なMAPKAPK2/MK2基質であることを実証した。ドキソルビシン処理細胞では、MENA Ser125リン酸化部位はHSP27 Ser82リン酸化部位(約2.5倍増強)よりも強くリン酸化される(約8倍増強)。Ser125/Ser144セリン残基を、リン酸化不能グリシン残基と置き換えて、MENA/MENAINV基質ペプチドを、有効なMENAキナーゼ阻害剤に転換した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】個々のドメインの機能を同定したMENAタンパク質アイソフォームのアラインメントを表す。MENAINVに特徴的な19アミノ酸挿入の相対位置は
【化1】
で示し、MENA11aの23アミノ酸挿入の相対位置は
【化2】
で示す。
図2】Ser125リン酸化MENA(pSer125 MENA)、リン酸化P38(pP38)、リン酸化HSP27(pHSP27)、及びチューブリンの存在に対する特異的な抗体でプローブした組換え細胞株MVD7-MENAINVから回収したタンパク質のウエスタンブロットを示す。示しているように、実験サンプルをTNF-αで刺激し、阻害剤で処理した。
図3】MENAのリン酸化Ser125(pSer125 MENA)及びチューブリンに対する抗体でプローブしたMVD7-MENAINVの組換え細胞株から回収したタンパク質のウエスタンブロットを表す。示しているように、実験サンプルをTNF-αで刺激し、阻害剤で処理した。
図4】MENAのリン酸化Ser125(pSer125 MENA)、チューブリン、及びリン酸化HSP27(pHSP27)に対する抗体でプローブしたMDA-MB-231 MENAINVの組換え細胞株から回収したタンパク質のウエスタンブロットを表す図である。示しているように、実験サンプルをTNF-αで刺激し、阻害剤で処理した。
図5】種々の阻害剤で処理した種々の組換えMVD7細胞株の細胞拡散アッセイの顕微鏡写真のコレクションである。パネル(a)MENA欠損GFP対照、パネル(b)GFP-MENA(Ser144A)、パネル(c)非処理MVD7-MENAINV、パネル(d)Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(PI3K-Ly02)10uMで処理したMVD7-MENAINV、パネル(e)p38MAPKキナーゼ阻害剤(LY2228820)10uMで処理したMVD7-MENAINV、パネル(f)MAPKAPK2/MK2(PF-3644022)10uMで処理したMVD7-MENAINV、パネル(g)MEK1/MEK2阻害剤(PD0325901)1uMで処理したMVD7-MENAINV、パネル(h)MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド(100uM)で処理したMVD7-MENAINV
図6図5の細胞拡散アッセイの結果のプロットであり、MVD7-GFPはパネル(a)に対応し、MVD-Ser144Aはパネル(b)に対応し、0はパネル(c)に対応し、Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(PI3K-Ly02)10uMはパネル(d)に対応し、p38MAPKキナーゼ阻害剤(P38-Ly820)10uMは、パネル(e)に対応し、MEK1/MEK2キナーゼ阻害剤(ERK1/2-PD)1uMは、パネル(f)に対応し、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤Pfizer PF-3644022 10uM は、パネル(g)に対応し、H&B-100は100uMのKKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド阻害剤を表し、パネル(h)に対応する。H&B-300は、300uMのKKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド阻害剤を表す(図5には示していない)。
図7】種々の阻害剤で処理し、DNA(DAPI)ならびにアクチンフィラメント(ファロイジン)及びフィブロネクチン沈着について染色した、組換えMVD7-MENAINV細胞株(パネル(a)及び(b)に示すものを除く)のフィブロネクチン原線維形成アッセイの顕微鏡写真のコレクションである。それぞれ、パネル(a)MVD7-GFP、パネル(b)MVD7-MENAINV(Ser144A)、パネル(c)Pi3Kキナーゼ阻害剤(LY294002)10uM、パネル(d)p38 MAPKキナーゼ阻害剤(LY2228820) 10uM、パネル(e)MAPKAPK2/MK2(PF-3644022) 10uM、パネル(f)MEK1/MEK2阻害剤(PD0325901) 1uM、及びパネル(g)MAPKAPK2/MK2 キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(SEQ ID NO:30)ペプチド100及び300uM。
図8図7のフィブロネクチン原線維形成アッセイ(相対フィブロネクチン沈着)の結果のプロットであり、MVD7-GFPはパネル(a)に対応し、MVD7-Ser144Aはパネル(b)に対応し、0は非処理のMVD7-MENAINV細胞によって沈着したフィブロネクチンを表し、Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(PI3K-Ly02)10uMはパネル(c)に対応し、p38キナーゼ阻害剤LY2228820(P38-Ly820)10uMはパネル(d)に対応し、MEK1/MEK2阻害剤PD0325901(ERK1/2-PD)1uMはパネル(e)に対応し、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤(PF-3644022)10uMはパネル(f)に対応し、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド(H&B-100) 100uMはパネル(g)に対応し、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド(H&B-300) 300uMはパネル(h)に対応する。信頼水準は、P=0.0022の場合**、P=0.0002の場合***、P<0.0001の場合****で示す。
図9】種々の阻害剤で処理したMDA-MB-231-MEANINV細胞の創傷アッセイにおける細胞遊走の顕微鏡写真のコレクションである。創傷閉鎖の推定割合は、各パネルの上に提示する。パネル(a)は処理前の細胞、パネル(b)は阻害剤を含まない培地中の18時間後の細胞、パネル(c)はPi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(10uM)を補足した培地中の18時間後の細胞、パネル(d)はp38キナーゼ阻害剤LY2228820(10uM)を補足した培地中の18時間後の細胞、パネル(e)はMAPKAPK2/MK2 キナーゼ阻害剤PF-3644022(10uM)を補足した培地中の18時間後の細胞、パネル(f)はMEK1/MEK2キナーゼ阻害剤PD0325901(1uM)を補足した培地中の18時間後の細胞、パネル(g)はMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド(H&B-100) 100uMを補足した培地中の18時間後の細胞、及び(h)はMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド(H&B-100) 300uMを補足した培地中の18時間後の細胞、である。
図10】細胞浸潤及び走化性マトリゲルアッセイの結果のプロットである。Pi3KキナーゼLY294002 10uM、p38キナーゼ阻害剤LY2228820(P38-Ly820)10uM、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤(PF-3644022)10uM、MEK1及びMEK2阻害剤PD0325901(ERK1/2-PD)1uM、ならびにKKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド阻害剤100uM及び300uMを用いてインキュベーションを行った後、MENAキナーゼ阻害剤は、MDA-MD-231-MENAINV腫瘍細胞におけるMENA依存性浸潤及び走化性表現型を逆転させた。MDA-MB-231-ΔMENA CRISPR mena-欠損細胞株は、EGFへ遊走する細胞はほとんど観察されず、有意な細胞浸潤及び走化性表現型を示さなかった。信頼水準は、P<0.04の場合*で示す。
図11】ボイデンチャンバーアッセイにおける細胞遊走及び走化性の結果のプロットである。Pi3K キナーゼ阻害剤LY294002(PI3K-Ly02) 10uM、p38 MAPKキナーゼ阻害剤(LY2228820) 10uM、MAPKAPK2/MK2(PF-3644022) 10uM、MEK1/MEK2阻害剤PD0325901(ERK1/2-PD) 1uM及びMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド100uM及び300uMを用いてインキュベーションを行った後、MENAキナーゼ阻害剤は、MDA-MD-231-MENAINV腫瘍細胞におけるMENA依存性遊走及び走化性表現型を逆転させた。MDA-MB-231-ΔMENA CRISPR mena-欠損細胞株もリン酸化不能MENA-Ser144A細胞株も、EGFへ遊走する細胞はほとんど観察されず、有意な細胞浸潤及び走化性表現型を示さなかった。信頼水準は、P<0.04の場合**、P<0.0004の場合***で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
対象におけるMENA及び/またはMENAのアイソフォームであるMENAINVの存在または活性を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患者においてがんを治療するための方法を提供し、さらに、この方法は、対象におけるMENA11aアイソフォームの存在または活性を増大させることを含み得る。この方法は、MENAキナーゼによるMENA及び/またはMENAINVアイソフォーム基質中のセリン、スレオニン、及び/またはチロシン残基への、リン酸基の転移を阻害する薬物の投与によって、MENA及び/またはMENAINVタンパク質アイソフォームのリン酸化または脱リン酸化を阻害することを伴う。同様に、この方法は、MENA11aアイソフォーム基質のリン酸化または脱リン酸化の活性化を伴う。この方法は、本明細書に記載のMENA及び/またはMENAINV及びMENA11a特異的薬物の投与を含み、同時にMENA及び/またはMENAINVの存在または活性を低下させ、MENA11aの存在または活性を増大させる。本明細書中で使用する場合、「MENAキナーゼ阻害剤」という用語は、MENA、MENAINV、及びMENA11aを含むがこれらに限定されない、MENAアイソフォームのリン酸化または脱リン酸化を阻害する任意の組成物を指す。
【0018】
本発明の一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、RNAアプタマー、リボザイム、またはsiRNAである。
【0019】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はATP競合阻害剤である。別の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はATP非競合阻害剤である。
【0020】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は可逆的阻害剤である。別の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は非可逆的共有結合阻害剤である。
【0021】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、Ras-Raf-MEK-ERK及び/またはPI3K-PTEN-ATk-mTOR経路の阻害剤である。Raf、p38 MAP、MEK、MAPK、PKD-1、PI3K、Akt、及びmTOR阻害剤、または当業者によく知られている同様のプロテインキナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない。
【0022】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MAPK活性化プロテインキナーゼ(MAPKキナーゼ)の阻害剤である。本明細書中で使用する場合、「MAPKキナーゼ」という用語は、MAPK活性化プロテインキナーゼ2(MAPKAPK2またはMK2)阻害剤、MAPK活性化プロテインキナーゼ3(MAPKAPK3またはMK3)阻害剤、MAPK活性化プロテインキナーゼ5(MAPKAPK5またはMK5)阻害剤、または当業者によく知られている類似のMAPK活性化プロテインキナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない、いくつかのMAPK活性化プロテインキナーゼのそれぞれ及びすべてを指す。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMAPKAPK2(MK2)を特異的に阻害する。
【0023】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA(配列番号1)のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser449、Ser463、Thr464、Thr467、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Thr517、Ser520、Ser523、Tyr534、Ser550、Ser565、Ser567、またはThr569アミノ酸のうちの1つまたは複数のリン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAタンパク質のSer125のリン酸化を排除する。
【0024】
別の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA(配列番号1)のリン酸化Ser2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser449、Ser463、Thr464、Thr467、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Thr517、Ser520、Ser523、Tyr534、Ser550、Ser565、Ser567、またはThr569アミノ酸のうちの1つまたは複数の脱リン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAタンパク質のリン酸化Ser125の脱リン酸化を排除する。
【0025】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENAINVエクソン(配列番号2)のSer3、Thr6、Thr8、Ser11、Thr12のうちの1つまたは複数のリン酸化、またはMENAINVタンパク質(配列番号3)の117~135位のMENAINVエクソン配列に隣接するアミノ酸のリン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAINVタンパク質アイソフォームのSer144のリン酸化を排除する。
【0026】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MEANINV(配列番号3)のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Ser119、Thr122、Thr124、Ser127、Thr128、Thr138、Ser144、Ser155、Ser284、Ser285、Ser306,Thr294、Ser303、Ser304、Ser306、Ser134、Thr319、Ser321、Ser346、Ser363、Thr364、Ser394、Ser400、Ser402、Ser409、Ser424、Thr429、Ser430、Ser433、Ser442、Ser444、Ser445、Thr447、Thr449、Ser461、Ser468、Ser482、Thr483、Thr486、Ser496、Thr500、Ser501、Ser504、Ser505、Thr506、Ser507、Thr508、Thr512、Thr519、Thr521、Ser525、Ser527、Ser531、Ser535、Thr536、Ser539、Ser542、Thr548、Tyr553、Thr569、ser584、Ser586、またはThr588アミノ酸のうちの1つまたは複数のリン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAINVタンパク質アイソフォームのSer144のリン酸化を排除する。
【0027】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENAINVエクソン(配列番号2)のSer3、Thr6、Thr8、Ser11、Thr12のうちの1つまたは複数の脱リン酸化、またはMENAINV(配列番号3)タンパク質の117~135位のMENAINVエクソン配列に隣接するアミノ酸の脱リン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAINVタンパク質アイソフォームのリン酸化Ser144の脱リン酸化を低減または排除する。
【0028】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENAINV(配列番号3)のリン酸化Ser2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Ser119、Thr122、Thr124、Ser127、Thr128、Thr138、Ser144、Ser155、Ser284、Ser285、Ser306,Thr294、Ser303、Ser304、Ser306、Ser134、Thr319、Ser321、Ser346、Ser363、Thr364、Ser394、Ser400、Ser402、Ser409、Ser424、Thr429、Ser430、Ser433、Ser442、Ser444、Ser445、Thr447、Thr449、Ser461、Ser468、Ser482、Thr483、Thr486、Ser496、Thr500、Ser501、Ser504、Ser505、Thr506、Ser507、Thr508、Thr512、Thr519、Thr521、Ser525、Ser527、Ser531、Ser535、Thr536、Ser539、Ser542、Thr548、Tyr553、Thr569、ser584、Ser586、またはThr588アミノ酸のうちの1つまたは複数のリン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENAINVタンパク質アイソフォームのリン酸化Ser144の脱リン酸化を排除する。
【0029】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA11aエクソン(配列番号4)のSer3、Ser15、Tyr16、Ser18のうちの1つまたは複数のリン酸化、またはMENA11aタンパク質の514~534位のMENA11aエクソン配列(配列番号5)に隣接するアミノ酸のリン酸化、または配列番号5のリン酸化Ser125のリン酸化を低減または排除する。
【0030】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA11a(配列番号5)のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser463、Thr464、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Ser528、Tyr529、Ser531、Ser537、Thr538、Ser541、Ser544、Thr550、Tyr555、Thr571、Ser586、Ser588、またはThr590アミノ酸のうちの1つまたは複数のリン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENA11aタンパク質アイソフォームのSer125のリン酸化を排除する。
【0031】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA11aエクソン(配列番号4)のリン酸化Ser3、Ser15、Tyr16、Ser18のうちの1つまたは複数の脱リン酸化、配列番号5の514~534位のMENA11aエクソン配列に隣接するリン酸化アミノ酸の脱リン酸化、または配列番号5のSer125の脱リン酸化を低減または排除する。
【0032】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA11a(配列番号5)のリン酸化Ser2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser463、Thr464、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Ser528、Tyr529、Ser531、Ser537、Thr538、Ser541、Ser544、Thr550、Tyr555、Thr571、Ser586、Ser588、またはThr590アミノ酸のうちの1つまたは複数の脱リン酸化を低減または排除する。好ましい実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤はMENA11aタンパク質のリン酸化Ser125の脱リン酸化を排除する。
【0033】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENAまたはMENAアイソフォームキナーゼのリン酸化または脱リン酸化を特異的に阻害する小分子阻害剤である。
【0034】
いくつかの実施形態では、小分子MENAキナーゼ阻害剤は、アミノシアノピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリジン、カルボリン、ピロロピリミドン、及びCMPD1などの足場に基づく。好ましい実施形態では、小分子阻害剤は、MENAキナーゼによるMENA及び/またはMENAアイソフォームのリン酸化または脱リン酸化を特異的に阻害する。
【0035】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENAキナーゼによるMENA及び/またはMENAアイソフォームのリン酸化または脱リン酸化を特異的に阻害するペプチド阻害剤である。
【0036】
本発明の一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、ペプチドLPRQNGQLP(配列番号6)、LARQNGQLP(配列番号7)、KALPRQNGQLP(配列番号8)、及びKALARQNGQLP(配列番号9)のうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、HIV TATペプチド配列が挙げられるが、これに限定されない細胞透過性ペプチド担体配列に連結されて、取り込み及び送達を促進する。ある種の実施形態では、HIV TATペプチド配列に基づく細胞透過性担体配列は、ペプチドYARAAARQARA(配列番号10)、及びYGRKKRRQRRR(配列番号11)のうちの少なくとも1つを含む。他の細胞透過性担体形態が明確に企図されている。例えば、アンチトロンビンIIIヘパリン結合ドメインに基づくKAFAKLAARLYR(配列番号12)及びFAKLAARLYR(配列番号13)。
【0038】
ある種の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、ペプチドYARAAARQARALPRQNGQLP(配列番号14)、YARAAARQARALARQNGQLP(配列番号15)、YARAAARQARAKALPRQNGQLP(配列番号16)、YARAAARQARAKALARQNGQLP(配列番号17)、YGRKKRRQRRRLPRQNGQLP(配列番号18)、YGRKKRRQRRRLARQNGQLP(配列番号19)、YGRKKRRQRRRKALPRQNGQLP(配列番号20)、YGRKKRRQRRRKALARQNGQLP(配列番号21)、KAFAKLAARLYRKALPRQNGQLP(配列番号22)、KAFAKLAARLYRKALARQNGQLP(配列番号23)、KAFAKLAARLYRKAKALPRQNGQLP(配列番号24)、KAFAKLAARLYRKAKALARQNGQLP(配列番号25)、FAKLAARLYRKALPRQNGQLP(配列番号26)、FAKLAARLYRKALARQNGQLP(配列番号27)、FAKLAARLYRKAKALPRQNGQLP(配列番号28)、及びFAKLAARLYRKAKALARQNGQLP(配列番号29)のうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
樹脂上でFMOCによりアミノ酸を保護して行う標準的な固相ペプチド化学を用いてペプチドを合成した。HBTU/HOBt及びDIEAを用いてアミノ酸活性化及びカップリングを実施した。FMOC基は、DMF中の20%ピペリジンを用いて除去する。次いで、樹脂結合配列を、水、チオアニソール、エチルメチルスルフィド、及びエタンジチオール、及び/またはトリイソプロピルシランを含み得る種々の捕捉剤を含有する80~90%TFAで切断及び脱保護した。ペプチドをエーテル中に沈殿させ、次いで遠心分離により単離した。乾燥ペプチドペレットを水とアセトニトリルの混合物中で再構成し、凍結乾燥した後、C18カラムでの逆相HPLCにより、0.1%TFAを含有するアセトニトリル-水緩衝液で溶出して精製を行った。各ペプチドを分析し、純粋画分をプールし、凍結乾燥する。分析用HPLCデータを5ミクロンのC18分析用カラムで、0.1%TFAを含有する水-アセトニトリル緩衝液で溶出して得た。分子量はMALDI-TOF分析により確認した。
【0040】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤を含む医薬は、それを必要とする対象に予防的に投与して、転移性がんの発症または線維性疾患の進行を予防する。MENAキナーゼ阻害剤を含む医薬はまた、既存の転移性がんの転移を低減させるために治療的に投与し得る。
【0041】
他の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、EGF受容体(EGFR)、HER2/neu、c-SRC、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、血小板由来増殖因子受容体、血管内皮増殖因子受容体、及び当業者に既知の他のがん関連標的を標的とするチロシンキナーゼ受容体に特異的なTKI治療薬の投与の前に、TKI治療薬の投与と同時に、またはTKI治療薬の投与後に投与して、TKI治療薬の有効性を改善または延長することができる。さらに、MENAキナーゼ阻害剤は他のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0042】
一実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、MENA媒介性疾患または障害を治療するために投与し、MENA媒介性疾患または障害は自己免疫疾患、慢性または急性の炎症性障害、自己炎症性障害、線維性障害、代謝性障害、腫瘍形成、または心血管障害もしくは脳血管障害である。
【0043】
さらなる実施態様では、線維性障害は、全身性硬化症/強皮症、ループス腎炎、結合組織病、創傷治癒、外科的瘢痕化、脊髄損傷、CNS瘢痕化、急性肺損傷、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、薬剤性肺障害、糸球体腎炎、慢性腎臓病、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、消化管または胃腸管線維症、腎線維症、肝または胆道線維症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、C型肝炎、肝細胞癌、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、脂肪性肝疾患による肝硬変、アルコール性脂肪性肝疾患による肝硬変、非アルコール性脂肪症/非アルコール性脂肪性肝疾患による肝硬変、放射線誘発線維症、頭頸部線維症、消化管線維症、肺線維症、原発性硬化性胆管炎、再狭窄、心臓線維症、心筋内線維症、心房性線維症、眼部瘢痕化、線維性硬化症、線維性癌、筋腫、線維腫、線維腺腫、線維肉腫、移植性動脈病変(transplant mteriopathy)、ケロイド、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、及び腎性全身性線維症からなる群から選択される。
【0044】
さらなる実施形態では、腫瘍形成は、血管新生障害、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性及び慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、前骨髄球性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、肥満細胞腫、ホジキン病、非ホジキン病、骨髄異形成症候群、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫、黒色腫、セミノーマ、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞癌、カポジ肉腫、黒色腫、奇形腫、横紋筋肉腫、転移性及び骨性疾患、骨、口/咽頭、食道、喉頭、胃、腸、結腸、直腸、肺、肝臓、膵臓、神経、脳、頭頸部、のど、卵巣、子宮、前立腺、精巣、膀胱、腎臓、乳房、胆嚢、頸部、甲状腺、前立腺、及び皮膚のがん、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠腫、及び多形性膠芽腫からなる群から選択される。
【0045】
さらなる実施形態では、心血管障害または脳血管障害は、アテローム性動脈硬化症、アテローム性冠状動脈の再狭窄、急性冠症候群、心筋梗塞、心臓同種移植片血管症、脳卒中、炎症性またはアポトーシス性成分を伴う中枢神経系障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、神経性虚血及び末梢神経障害からなる群から選択される。
【0046】
他の実施形態では、MENAキナーゼ阻害剤は、タキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセルまたは当業者に既知の他の任意の抗微小管関連薬を含むがこれらに限定されるものではない、抗微小管薬の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与し得る。
【実施例0047】
以下の実施例は本発明を説明する。実施例の特定の要素は説明の目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の範囲内で同等の方法を開発し、それらの材料を利用することができるであろう。
【0048】
実施例1
MENAアイソフォームリン酸化ならびに関連試薬及びアッセイ
MENAアイソフォームは差次的にリン酸化する。TMEM(腫瘍転移微小環境)に見られる腫瘍細胞中のMENAINVの分析は、このタンパク質が活発にリン酸化されていることを示している。MENAINVとMENAとの間のリン酸化の相違は、リン酸化アミノ酸が、MENAには存在しないMENAINVに特徴的な19アミノ酸と関連していることを示唆している。MENA11aを発現する非転移性腫瘍細胞の分析からの同様の観察は、MENAのそのアイソフォームに特徴的な21アミノ酸も、リン酸化のための標的を表し得ることを示している。重要なことに、(MENAに対する、)MENAアイソフォームの挿入それぞれのリン酸化への影響は、MENAINV及びMENA11a配列内のアミノ酸のリン酸化によるだけでなく、及びMENA11a配列に近接している(空間的にまたは隣接する配列において)MENAアミノ酸のリン酸化に影響を及ぼし得る。
【0049】
MENAINV及びMENA11a挿入に関連するか、またはそれに近接する、潜在的アミノ酸残基のうちのどれがリン酸化され得るかを判定するために、一連の組換えMENAINV及びMENA11a構築物を作製して、修飾MENAアイソフォームバリアントを発現させ、候補残基をリン酸化できないアミノ酸に変化させる。一例では、アラニンは、類似のR基を有するが、ホスホリル転移に必要なヒドロキシル基を欠くアラニンで置換されている。他の例では、チロシンはフェニルアラニンで置換されてもよい。トレオニンは、リン酸化を阻止するためにアラニンまたはアスパラギンのいずれかで置換されてもよい。そのような変異体を生成するための材料及び方法は当業者に周知である(例えば、Gene Art(商標)Site Directed Mutagenesis System (Life Technologies Corp., Grand Island, NY)、Q5(登録商標)Sire-Directed Mutagenesis Kit(New England Biolabs Inc., Beverly,
MA)、及び the Quick-change(登録商標) Site-Directed Mutagenesis Kit (Strata gene, La Jolla, CA)を参照のこと)。修飾MENAINV及びMENA11aバリアントタンパク質をリン酸化する腫瘍細胞抽出物の能力を調べた。リン酸化レベルが有意に低下したバリアントは、腫瘍細胞キナーゼ(複数可)によりリン酸化される標的アミノ酸(複数可)を表す。そのような腫瘍細胞キナーゼは、MENAアイソフォームキナーゼと考えられ得る。
【0050】
マウスMENA Ser125リン酸化残基117~133を含有し、KLH(Covance Research Products, Denver, PA)にコンジュゲートしたペプチドを動物に注射して、MENA/MENAINVにおけるSer125/Ser144リン酸化部位に特異的な抗リン酸化MENA抗体を産生させた。Archuletaらのプロトコール(Archuleta, Stutzke, Nixon, 及びBrowning, Optimized protocol to make phospho-specific antibodies that work. Methods Mol. Biol. 717:69-88, 2011)に従って、pSer125MENA抗体の精製を行った。精製のために使用したペプチド(リン酸化ペプチド:Ac-CKKGPTLPRQN(pS)QLPAQVQN(配列番号32)及び脱リン酸化:CKKGPTLPRQNSQLPAQVAN(配列番号32))を、Covance Research Products (BioLegend, San Diego, CA) 及びThermo Scientific, Grand Island, NY、からそれぞれ入手した。製造元の指示に従って、ペプチドをSulfoLink Coupling Resin Column(Thermo Scientific)にカップリングさせた。血清を、脱リン酸化ペプチドを含むカラムに、次いでリン酸化ペプチドを含むカラムに順次通した。第二カラムに結合した抗体は、IgG溶出緩衝液(Thermo Scientific)を用いて溶出した。
【0051】
MENA及び/またはMENAアイソフォームのリン酸化は、Ras-Raf-MEK-MAPK/ERK及びPI3K-AKT/mTOR経路からのMENAキナーゼ阻害剤によって阻害する。ATP競合MAPKAPK2/MK2阻害剤PF-3644022((10R)-9,10,11,12-テトラヒドロ-10-メチル-3-(6-メチル-3-ピリジニル)-8H-[1,4]ジアゼピノ[5’,6’:4,5]チエノ[3,2-f]キノリン-8-オン水和物)(TOCRIS, Bristol, UK)、ATP非競合MAPKAPK2/MK2 Hayess及びBenndorf HSP25ペプチドキナーゼ阻害剤(KKKALNRQLGVAA(配列番号30))(Abcam,
Cambridge, UK)、p38MAPKキナーゼ阻害剤LY2228820(5-[2-tert-ブチル-4-(4-フルオロフェニル)-1H-イミダゾール-5-イル]-3-(2,2-ジメチルプロピル)イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン;メタンスルホン酸)(Selleckchem, Houston TX)、ATP非競合MEK1/MEK2阻害剤PD0325901(N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-ベンズアミド)(Selleckchem, Houston TX)、及びPi3K阻害剤LY294002(2-モルホリン-4-イル-8-フェニルクロメン-4-オン)(Selleckchem, Houston TX)をそれぞれ、MENA及びMENAINVのSer125及びSer144のMENAキナーゼ依存性リン酸化を阻止する能力について、変異型MVD7及びMDA-MB-231細胞株それぞれにおいて、インビトロで評価した。MENA/MENAINVのSer125/Ser144におけるリン酸化に特異的なMENA抗体を用いた定量的免疫ブロットアッセイによって、リン酸化を測定した。MENAキナーゼを、10ng/mlのTNF-αを用いて処理し、活性化した。これらの条件下で、MENAはSer125においてMENAキナーゼ依存性リン酸化を受け、MENAINVはSer144においてMENAキナーゼ依存性リン酸化を受ける。市販のリン酸化特異的HSP27抗体(CellSignalling, Danvers, MA)を用いて、内部標準としてHSP27のMENAキナーゼ依存性リン酸化を監視した。
【0052】
図2に示すように、pSer125特異的抗体は、非リン酸化MENA/MENAINVとリン酸化MENA/MENAINVとを明確に区別する。「培地」と表示されたレーンと「砒酸ナトリウム」と表示されたレーンにおける抗体結合の程度の比較は、MENAINVを発現するように遺伝子操作した組換えマウス胚性線維芽細胞MVD7細胞株(MVD7-MENAINV)において、pSer125 MENA抗体は、MENAINVのリン酸化が最小の細胞(「培地」)由来のタンパク質においてシグナルをほとんど生成しないことを示している。この同じ細胞は、MENAINVのリン酸化可能部位を化学的に修飾するために砒酸ナトリウム(浸透圧ストレス誘導剤)で処理すると、pSer125 MENA抗体でプローブした場合に、異なるシグナルを生成する。MENAINVのSer144部位は、MENAのSer125に相当し、位置の違いは単にMENAINV中のINVエクソンの存在によるものである。pSer125 MENA抗体は、それがMENAのSer125位置に結合するのと同様に、MENAINVのSer144位置に結合する。さらに、図2における非刺激及び非処理(培地)と刺激された非処理(0)サンプルとの比較は、TNF-αによる細胞の刺激もまた、MENAINVのリン酸化を上昇させることを示す。図2に示すように、p38MAPKキナーゼ阻害剤LY2228820(1uM、レーン「P38-Ly820 1uM」)、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤PF-3644022(10uM、レーン「Pfizer10uM」)、及びMEK1/MEK2阻害剤PD0325901(1uM、レーン「ERK1/2-PD-1uM」)を用いて刺激細胞を処理すると、MENAINVリン酸化のレベルが有意に低下する。
【0053】
図3はこの観察を確認し、図2の阻害剤のパネルを拡大して、Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(それぞれ1及び10uM、レーン「P38-Ly820 1uM」及び「P38-Ly820 1uM」)、及び50、100、及び300uMのMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチド、所定阻害剤濃度で「H&B」と表示されたレーン、を含むようにする。図4に示すように、MENAINVを発現するように操作したヒト乳癌MDA-MB-123細胞(MDA-MB-231-MENAINV)は、明らかにSer144のリン酸化レベルが上昇したことを表し、これは上記の抗体を用いて検出でき、非刺激及び非処理の細胞由来のタンパク質を含有する(0)レーンに示す通りである。「Pl3K-Ly02-10uM」と表示されたレーンは、10uMのp38 MAPKキナーゼ阻害剤LY2228820で処理した刺激細胞由来のタンパク質である。「PI3K-Ly02-10uM」及び「PI3K-Ly02-1uM」と表示されたレーンは、それぞれ10uM及び1uMのPi3Kキナーゼ阻害剤LY294002で処理した刺激細胞由来のタンパク質を含む。「Pfizer 10uM」と表示されたレーンは、10uMのMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤PF-3644022で処理した刺激細胞由来のタンパク質を含む。ERK1/2-PD-1uMと表示されたレーンは、1uMのMEK1/MEK2阻害剤PD0325901で処理した刺激細胞由来のタンパク質を含み、「H&B」と表示されたレーンは、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤である所定濃度のペプチドKKKALHRQLGVAA(配列番号30)で処理した刺激細胞由来のタンパク質を含む。
【0054】
MENAキナーゼ阻害剤は、MENAアイソフォーム組換え細胞株の細胞拡散を制限する。MENAINV組換え型MVD7(MVD7-MENAINV)細胞株の細胞拡散を制限する上記の種々のMENAキナーゼ阻害剤の能力を、細胞拡散アッセイを用いて評価した。このアッセイは、図5に示す濃度のMENAキナーゼ阻害剤を用いてまたは用いないで、1時間細胞株を前処理することを伴っていた。前処理後、MVD7-MENAINV細胞をフィブロネクチンに付着させて20分間拡散させた。20分後、細胞を固定し、透過処理し、ファロイジンで染色してアクチンフィラメントを可視化した。imageJソフトウェアを使用して画像を取得し、分析した(anova、n=5)。図6に示すように、処理群を対照MVD7-GFP細胞と比較し、S.E.M.を用いた平均としてプロットした。
【0055】
図5パネル(c)に示すMVD7-MENAINV細胞は、MVD7-GFP MENA欠損対照に対してもリン酸化不能MVD7-MENAINV(Ser144A)細胞(図5、パネル(a)及び(b)それぞれ)に対しても観察されなかったMENA依存性の拡散及び接着表現型を示した。所定濃度でのMENAキナーゼ阻害剤とのインキュベーション後に、MENA依存性の拡散及び接着表現型の統計的に有意な減少が観察された(図6)。MENA依存性の拡散及び接着表現型の統計的に有意な減少は、すべてのMENAキナーゼ阻害剤を用いて生じた(図6)。MENA欠損とMENA Ser125Aリン酸化不能変異体陰性対照との間には、拡散及び接着について統計的に有意な差はなかった(図6)。
【0056】
MENAキナーゼ阻害剤は、MENA依存性原線維形成を逆転させた。MENA依存性原線維形成を逆転させる上記の種々のMENAキナーゼ阻害剤の能力を、MVD7-MENAINV細胞株を用いたフィブロネクチン原線維形成アッセイにおいて評価した。細胞をMENAキナーゼ阻害剤で図8に示す濃度で1時間前処理し、標識化フィブロネクチンを補足したフィブロネクチン枯渇血清を含有する培地中で培養した。4時間後、フィブロネクチンフィブリル形成を、定量的免疫染色により、imageJソフトウェアを使用してフィブリルフィブロネクチンの存在量及び分布を測定して(anova、n=3)評価した。結果を、図8において、対照MVD7-GFP細胞に対してプロットした。
【0057】
非処理のMVD7-MENAINV細胞は、かなりの量のフィブリルフィブロネクチンを集合させる(図7、パネル(a))。しかし、MVD7-GFP細胞及びリン酸化不能変異体MENAINV(Ser144A)(それぞれ図8及び図7パネル(b))は、有意な量のフィブロネクチンを集合させることができない。MENA依存性フィブロネクチン原線維形成表現型の用量依存的減少は、100及び300uMの濃度のMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)ペプチドで、濃度が増加する場合に観察された(図7、パネル(g)及び図8)。試験した全てのMenaキナーゼ阻害剤について、MENA依存性フィブロネクチン原線維形成表現型の統計的に有意な減少が観察された。Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002、MEK1/MEK2キナーゼ阻害剤PD0325901、及びMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)は、MENA欠損対照と比較して、MENA依存性フィブロネクチン原線維形成表現型を有意に減少させた(図8)。MENA欠損陰性対照とMENA Ser144Aリン酸化不能変異体との間には、フィブロネクチン沈着について統計的に有意な差はなかった。
【0058】
MENAキナーゼ阻害剤は、創傷治癒アッセイにおいてMENA依存性細胞遊走を阻止する。MDA-MB-231-MENAINV細胞のMENA依存性細胞遊走を阻止する上記の種々のMENAキナーゼ阻害剤の能力を、CySelect創傷治癒アッセイキット(Cell Biolabs, Inc., San Diego, CA)を用いてアッセイした。製造元のプロトコールに従って、単層が創傷インサートの周囲に形成されるまで、細胞をフィブロネクチンコーティングウェル中で培養した。次いでインサートを除去し、細胞を、完全に補足された培地中で図9の所定濃度の阻害剤の存在下で培養した。18時間後、細胞を固定し、染色し、インサートにより生じた創傷を閉じる能力を蛍光顕微鏡により評価した。
【0059】
図9に示すように、MDA-MB-231-MENAINV細胞は、完全に補足された培地中でMENA依存性浸潤表現型を示す(パネル(b))。完全補足培地中で増殖させた細胞にMENAキナーゼ阻害剤を添加すると、創傷治癒アッセイにおいて乳癌細胞株が移動する能力が低下する(パネル(c) - (h))。パネル(a)は処理開始時の創傷サイズを表す。薬物を含まない完全補足培地中で一晩培養した細胞(パネル(b))は創傷の50%を閉じることができた。Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(10uM)の添加は、わずか15%の創傷閉鎖をもたらした(パネル(c))。p38 MARKキナーゼ阻害剤LY2228820(10uM)は、わずか20%の閉鎖をもたらした(パネル(d))。MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤PF-3644022(10uM)は、創傷閉鎖を10%まで減少させた(パネル(e))。MEK1/MEK2キナーゼ阻害剤PD0325901(1uM)は、創傷閉鎖を15%まで減少させた(パネル(f))。MAPKAPK2 / MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)は、300uMで使用した場合、創傷閉鎖を創傷の15%まで減少させた(パネル(h))。MENAキナーゼ阻害剤は、MENA依存性細胞浸潤及び走化性を阻害する。MDA-MB-123-MENAINV腫瘍細胞浸潤を阻害する上記の種々のMENAキナーゼ阻害剤の能力を、BioCoat Matrigel浸潤チャンバーアッセイ(Corning, Tewksbury, MA)を用いて試験した。製造元のプロトコールに従って、MDA-MB-123-MENAINV細胞を、図10の所定濃度の阻害剤で1時間前処理した後、マトリゲルマトリックス膜インサートの層上に播種した。インサートを、基本培地(陰性対照)及び化学誘引物質EGFを含有するウェルに、各MENAキナーゼ阻害剤を添加してまたは添加せずに移した。18時間後、膜の下部細胞表面に侵入した細胞を固定し、染色し、そしてimageJソフトウェアを用いた定量的免疫染色により評価した。ANOVA(n=3)を用いてデータを分析し、MENAキナーゼ阻害剤の非存在下における陰性対照EGF刺激細胞(0)と比較して報告した。図10に平均及び平均の標準誤差としてプロットした。
【0060】
MDA-MB-231-MENAINV細胞は、全ての内因性MENA発現が、CRISPRに基づく手法を用いて細胞株から削除されているMDA-MB-231-ΔMENA細胞株と比較して、EGFを含有する基本培地中で侵襲性及び走化性表現型を示す(図10)。MENAキナーゼ阻害剤を添加する場合、マトリゲルインサート膜を通ってEGF化学誘引物質に侵入するMDA-MB-231-MENAINV細胞の相対数が有意に減少する。Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(10uM)(P<0.028)、p38 MARKキナーゼ阻害剤LY2228820(10uM)(P<0.019)、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤PF-3644022(10uM)(P<0.040)、MEK1/MEK2 PD0325901(1uM)(P<0.040)、及びMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30)(100及び300uM)(それぞれP<0.019及びP<0.020)を用いたインキュベーションの効果を、図10に示す。MENAキナーゼ阻害剤は、MDA-MB-231-MENAINV細胞におけるMENA依存性浸潤表現型を、陰性対照である基本培地のみで処理したMDA-MB-231-MENAINV(基本培地)と同様のレベルまで有意に逆転させた。
【0061】
MENAキナーゼ阻害剤は、ボイデンチャンバーアッセイにおけるMENA依存性細胞遊走及び走化性を逆転させる。MDA-MB-123-MENAINV腫瘍細胞を、上記のMENAキナーゼ阻害剤で1時間前処理し、Boyden Chamber(Cell
Biolabs、Inc。)のフィブロネクチンコーティング8um孔ポリカーボネート膜インサートに充填した。次に、フィブロネクチンコーティングチャンバーを、基本培地(陰性対照)、EGF、及び図11の所定濃度のMENAキナーゼ阻害剤を含むウェルに移した。基本陰性対照を除くすべての処理条件において、化学誘引物質としてEGFを使用した。18時間後、孔を通って化学誘引物質に向かって遊走した細胞を、上記のimageJソフトウェアを用いて定量的免疫染色によって評価した。ANOVA(n=2)を用いてデータを分析し、図11に平均の誤差を伴う平均として、阻害剤を全く含まないEGF刺激細胞陽性対照(0)と比較して報告した。
【0062】
MDA-MB-231-MENAINV細胞は、EGFを含有する基本培地中で、遊走及び走化性MENA依存性表現型を示す。この表現型は、同様の実験条件を使用して、MDA-MB-231-ΔMENA及びリン酸化不能MENA-Ser144A細胞株では観察されなかった(図11)。MENAキナーゼ阻害剤の添加により、フィブロネクチンコーティングインサート膜を通ってEGF化学誘引物質に向かって遊走したMDA-MB-231-MENAINV細胞の相対数が、有意に減少した。Pi3Kキナーゼ阻害剤LY294002(10uM)(P<0.028)、p38 MARKキナーゼ阻害剤LY2228820(10uM)(P<0.0018)、MAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤PF-3644022(10uM)(P<0.0018)、MEK1/MEK2キナーゼ阻害剤PD0325901(1uM)(P<0.0031)及びMAPKAPK2/MK2キナーゼ阻害剤KKKALHRQLGVAA(配列番号30) 100及び300uM(P<0.0004)、(P<0.0004)を用いたインキュベーションは、MDA-MB-231-MENAINV細胞におけるMENA依存性浸潤表現型を、陰性対照である基本培地のみで処理したMDA-MB-231-MENAINVと同様のレベルまで有意に逆転させた。
【0063】
実施例2
小分子MENAアイソフォームキナーゼ阻害剤の同定
小分子MENAアイソフォームキナーゼ阻害剤は、実施例1に記載したのと同じ(または同類の)インビトロアッセイのパネルを使用して同定する。MENAキナーゼの小分子阻害剤を同定するために、アミノシアノピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリジン、カルボリン、ピロロピリミドン、及びCMPD1のなどの既知のプロテインキナーゼ阻害剤構造(足場)に基づく化合物の市販のコンビナトリアルケミカルライブラリーからの単一分子または分子プールを、上記のアッセイを使用して、それぞれのMENAアイソフォーム基質のリン酸化を低下させるそれらの能力についてアッセイする。そのような方法は、当業者には周知である(on Ohsen and Bomer, 2005, Wang及びMa, 2015によって概説されている)。潜在的なキナーゼ阻害剤のライブラリーは市販されており(SYNkinase, Parkville, Victoria, Australiaを参照のこと)、商業的サービス(例えば、Patricelli, et al., 2011に記載されているKiNativ(商標)サービス)の下でスクリーニングを行うことができる。アッセイにおいて同定された阻害剤は、当該技術分野において周知の方法により修飾して、それらの阻害特性を最適化し、薬効を改善することができる。最も有利な阻害剤プロファイルを示すものを、下記のさらなるインビボ試験のために選択する。
【0064】
実施例3
MENAアイソフォームキナーゼペプチド阻害剤の同定
ペプチドMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤は、実施例1に記載したのと同じ(または類似の)インビトロアッセイのパネルを使用して同定する。配列番号14~29を含むペプチドをアッセイし、本明細書中のさらなる実施例に記載されたさらなるインビボ試験のために最良の阻害剤プロファイルを有するものを選択する。
【0065】
実施例4
MENAキナーゼ阻害剤はインビボPyMTマウスモデルにおいて転移性がんの発生率を低下させる
(Harney, et al., 2015によって詳細に記載されている、)PyMTマウス乳癌モデルにおける転移を減少させるMENAキナーゼ阻害剤の能力は、有効量の阻害剤を、以前に樹立された異種移植腫瘍を有するマウスに投与することによってアッセイする。阻害剤の適切な用量は、当該分野において周知の方法によって決定し得る。これらの実験では、循環腫瘍細胞の基準レベル及び腫瘍細胞播種を樹立し、次いでMENAキナーゼ阻害剤をマウスに投与する。転移部位、循環腫瘍細胞数、及び肺転移のその後の変化を監視する。転移部位、循環腫瘍細胞数、及び肺転移のレベルの低下は、MENAキナーゼ阻害剤が既存の転移性腫瘍におけるがん転移を減少させることを示している。
【0066】
追加の実験を実施して、腫瘍転移を抑制するためのMENAINVキナーゼ阻害剤の有効性を判定する。これらのさらなる実験には、異種移植腫瘍の導入前のMENAINVキナーゼ阻害剤による対象マウスの処置、及び腫瘍発生の過程を通じての転移部位密度及び循環腫瘍細胞のレベルの判定が含まれる。対応する非処置対照マウスにおいて樹立された基準数に対する転移部位密度及び腫瘍細胞循環の減少は、MENA11aキナーゼ阻害剤が転移表現型の樹立を効果的に阻害することを示している。
【0067】
実施例5
MENAキナーゼ阻害剤は、マウスモデルにおいて転移性がんの発生率を低下させる
MENAキナーゼ阻害剤が、ヒトトリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞株MDA-MB-231を移植したnod/skidマウスにおいて転移を減少させる能力(Odin et al., 2017により詳細に記載されている)を判定する。これらの実験は、転移性病変と血液の存在を考慮せず循環腫瘍細胞(CTC)の数の増加について臓器を評価することを伴う。循環腫瘍細胞及び肺転移のレベルの低下は、MENAキナーゼ阻害剤が、がん転移を減少させることを示している。
【0068】
実施例6
MENAキナーゼ阻害剤とパクリタキセルとの組合わせ治療は、パクリタキセル感受性を回復させパクリタキセル誘発腫瘍細胞播種を減少させる
タキサンの使用を含む細胞傷害性化学療法は、進行がん及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)などの侵攻性がんの治療のための標準的な治療法であり続けている。細胞傷害性化学療法に関連する利点にもかかわらず、奏効率は低い場合があり、例えばTNBCは治療の1年以内に耐性になる場合がある。パクリタキセルによる治療も腫瘍細胞の播種を誘発する場合がある。パクリタキセルなどのタキサンは、微小管を安定化させ、分裂中期の間の分解を阻害して有糸分裂停止及び細胞死を引き起こすことによって分裂期細胞死をもたらす。MENAINV発現は、パクリタキセル処理した腫瘍細胞における動的及び安定微小管集団の比率を変化させる。MENA発現はまた、パクリタキセル治療に応答してMAPKシグナル伝達を増加させる。MENAキナーゼ阻害剤との併用治療によるMENAINVのリン酸化の減少によって、微小管安定化が促進されて、パクリタキセル感受性を回復することができる。
【0069】
実施例7
MENAアイソフォームキナーゼ阻害剤とゲフィチニブとの組合わせ治療は、ゲフィチニブに対する自然発生的耐性を低下させる
EGFR特異的TKI、ゲフィチニブは、多くのがん、特に非小細胞肺癌の初期治療に有効であるが、EGFR内または補助受容体経路内の互助的突然変異のためにしばしば効力を失う[Kosaka, et al., 2011に概説されている]。本発明の実施における好適な他の薬物としては、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)、Tykerb(登録商標)(ラパチニブ)、Cometriq(登録商標)(カボザンチニブ)、Xalkori(登録商標)(クリゾチニブ)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)、及びGioreif(登録商標)(アファチニブ)が挙げられるが、これに限定されない。本発明の実施における使用に適している現在開発中の薬物としては、チバンチニブ(ARQ197)、リロツムマブ(AMG102)、AMG479(IGF-1R阻害剤)、AMG337(c-MET阻害剤)、フィクラツズマブ(AV-299)、チバンチニブ(ARQ197)及びオナルツズマブ(c-MET阻害剤)が挙げられるが、これらに限定されない。PTP1bキナーゼ/デホスホリラーゼをEGFRに動員することにおけるMENAの役割[Hughes、et al.、2015を参照のこと]は、EGFRのリン酸化を、ゲフィチニブにより直接的にかつMENAを介して間接的に調節する組み合わせ効果により、ゲフィチニブに対する自然発生的耐性の発生率が低下し得ることを示唆する。ゲフィチニブに対する自然発生的耐性の発生率を低下させるためのMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤の能力を試験するために、ゲフィチニブ及びMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤を、上記のように異種移植腫瘍の樹立後に個々に及び組み合わせて、PyMTマウス乳癌モデルマウスに投与する。転移部位密度及び循環腫瘍細胞のレベルは、腫瘍発生の過程を通して監視する。ゲフィチニブまたはMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤単独を投与したマウスと比較して、ゲフィチニブ及びMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤の両方を投与したマウスにおける全体的な転移部位密度及び循環腫瘍細胞の有意な減少は、組合わせ療法が有効であることを示す。転移部位発生の動態及び循環腫瘍細胞の観察されたレベルは、ゲフィチニブ耐性の発生を遅らせるためのMENAアイソフォームキナーゼ阻害剤の能力に対する洞察を提供する。ゲフィチニブのみを投与したマウスと比較して、組合わせ療法を投与されたマウスにおける有意な転移部位発生レベル及び循環腫瘍細胞の増加の有意な遅延は、MENAアイソフォームキナーゼ阻害剤がゲフィチニブ耐性の発生を抑制することを示す。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
MENAアイソフォーム基質上のセリン、スレオニン、及び/またはチロシン残基におけるリン酸の転移を阻害するためのMENAキナーゼ阻害剤を含む、治療を必要とするがん患者において、MENAアイソフォームの活性を低下させるための医薬。
(項目2)
前記MENAアイソフォーム基質が、MENAタンパク質(配列番号1)である、項目1に記載の医薬。
(項目3)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号1のSer2、 Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Th
r345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser449、Ser463、Thr464、Thr467、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Thr517、Ser520、Ser523、Tyr534、Ser550、Ser565、Ser567、またはThr569の群から選択される1つまたは複数のアミノ酸のリン酸化を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目4)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号1のSer125へのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目5)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号1のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser449、Ser463、Thr464、Thr467、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Thr517、Ser520、Ser523、Tyr534、Ser550、Ser565、Ser567、またはThr569の群から選択されるリン酸化アミノ酸の脱リン酸化を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目6)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号1のSer125からのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目7)
前記MENAアイソフォーム基質が、MENAINVタンパク質(配列番号3)である、項目1に記載の医薬。
(項目8)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号3のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Ser119、Thr122、Thr124、Ser127、Thr128、Thr138、Ser144、Ser155、Ser284、Ser285、Ser306、Thr294、Ser303、Ser304、Ser306、Ser134、Thr319、Ser321、Ser346、Ser363、Thr364、Ser394、Ser400、Ser402、Ser409、Ser424、Thr429、Ser430、Ser433、Ser442、Ser444、Ser445、Thr447、Thr449、Ser461、Ser468、Ser482、Thr483、Thr486、Ser496、Thr500、Ser501、Ser504、Ser505、Thr506、Ser507、Thr508、Thr512、Thr519、Thr521、Ser525、Ser527、Ser531、Ser535、Thr536、Ser539、Ser542、Thr548、Tyr553、Thr569、ser584、Ser586、またはThr588の群から選択されるアミノ酸のリン酸化を阻害する、項目1に記載の医
薬。
(項目9)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号3のSer144へのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目10)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号3のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Ser119、Thr122、Thr124、Ser127、Thr128、Thr138、Ser144、Ser155、Ser284、Ser285、Ser306,Thr294、Ser303、Ser304、Ser306、Ser134、Thr319、Ser321、Ser346、Ser363、Thr364、Ser394、Ser400、Ser402、Ser409、Ser424、Thr429、Ser430、Ser433、Ser442、Ser444、Ser445、Thr447、Thr449、Ser461、Ser468、Ser482、Thr483、Thr486、Ser496、Thr500、Ser501、Ser504、Ser505、Thr506、Ser507、Thr508、Thr512、Thr519、Thr521、Ser525、Ser527、Ser531、Ser535、Thr536、Ser539、Ser542、Thr548、Tyr553、Thr569、ser584、Ser586、またはThr588の群から選択されるリン酸化アミノ酸の脱リン酸化を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目11)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号3のSer144からのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目12)
前記MENAアイソフォーム基質が、MENA11a(配列番号5)である、項目1に記載の医薬。
(項目13)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号5のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser463、Thr464、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Ser528、Tyr529、Ser531、Ser537、Thr538、Ser541、Ser544、Thr550、Tyr555、Thr571、Ser586、Ser588、またはThr590の群から選択される1つまたは複数のアミノ酸のリン酸化を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目14)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号5のSer125へのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目15)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号5のSer2、Ser5、Tyr16、Ser29、Thr30、Ser33、Tyr38、Thr41、Thr45、Tyr70、
Thr74、Thr76、Tyr87、Ser93、Ser102、Ser113、Thr116、Thr119、Ser125、Ser136、Ser265、Ser266、Ser272、Thr275、Ser279、Ser284、Ser285、Ser287、Ser295、Thr300、Ser302、Ser327、Ser344、Thr345、Ser375、Ser381、Ser383、Thr390、Ser405、Thr410、Ser411、Ser414、Ser423、Ser425、Ser426、Thr428、Thr430、Ser442、Ser444、Ser463、Thr464、Ser477、Thr481、Ser482、Ser485、Ser486、Thr487、Ser488、Thr489、Thr493、Thr500、Thr502、Ser506、Ser508、Ser512、Ser516、Ser528、Tyr529、Ser531、Ser537、Thr538、Ser541、Ser544、Thr550、Tyr555、Thr571、Ser586、Ser588、またはThr590の群から選択されるリン酸化アミノ酸の脱リン酸化を阻害する、項目1に記載の医薬。(項目16)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、配列番号5のSer125からのリン酸の転移を阻害する、項目1に記載の医薬。
(項目17)
前記MENAキナーゼが、Ras-Raf-MEK-MAPK-ERK及び/またはPI3K-AKT/mTOR経路のメンバーである、項目1に記載のMENAキナーゼ。
(項目18)
前記MENAキナーゼ阻害剤がATP非競合阻害剤である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目19)
前記MENAキナーゼ阻害剤がATP競合阻害剤である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目20)
前記MENAキナーゼ阻害剤が可逆的阻害剤である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目21)
前記MENAキナーゼ阻害剤が共有結合阻害剤である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目22)
前記MENAキナーゼ阻害剤がMAPKキナーゼ(MK)阻害剤である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目23)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、MAPKAPK2/MK2阻害剤、p38MAPK阻害剤、及びMEK阻害剤のうちの少なくとも1つである、項目17に記載のRas-Raf-MEK-MAPK-ERK経路阻害剤。
(項目24)
前記MENAキナーゼ阻害剤が、Pi3K阻害剤の少なくとも1つである、項目17に記載のPI3K-AKT/mTOR経路阻害剤。
(項目25)
前記MENAキナーゼ阻害剤が小分子である、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目26)
前記小分子が、アミノシアノピリジン、ピラゾロピリミジン、ピロロピリジン、カルボリン、ピロロピリミドン、及びCMPD1からなる群から選択される、項目25に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目27)
前記MENAキナーゼ阻害剤がペプチドである、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害
剤。
(項目28)
前記阻害剤が、配列番号6~9のペプチド配列のうちの少なくとも1つを含む、項目27に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目29)
前記阻害剤が、膜貫通ドメインをさらに含む、項目27に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目30)
前記膜貫通ドメインが、配列番号10~13のペプチド配列のうちの少なくとも1つを含む、項目27に記載の膜貫通ドメイン。
(項目31)
前記阻害剤が、配列番号14~29のペプチド配列のうちの少なくとも1つを含む、項目27に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目32)
前記MENAキナーゼ阻害剤がタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、RNAアプタマー、リボザイム、またはsiRNAである、項目1に記載のMENAキナーゼ阻害剤。
(項目33)
前記MENAキナーゼ阻害剤を、経口的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、肺内に、腫瘍内に、鼻腔内に、髄腔内に、または皮下に投与する、項目1に記載の医薬。
(項目34)
前記MENAキナーゼ阻害剤を、他の薬物と併用投与する、項目1に記載の医薬。
(項目35)
前記他の薬物がチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である、項目34に記載の医薬。
(項目36)
他の薬物が抗微小管薬である、項目34に記載の医薬。
(項目37)
MENA媒介性疾患または障害を治療する方法であって、前記MENA媒介性疾患または障害が、自己免疫疾患、慢性または急性の炎症性障害、自己炎症性障害、線維性障害、代謝性障害、腫瘍形成、または心血管障害もしくは脳血管障害である、前記方法。
(項目38)
前記線維性障害が、全身性硬化症/強皮症、ループス腎炎、結合組織病、創傷治癒、外科的瘢痕化、脊髄損傷、CNS瘢痕化、急性肺損傷、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、薬剤性肺障害、糸球体腎炎、慢性腎臓病、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、消化管または胃腸管線維症、腎線維症、肝または胆道線維症、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、C型肝炎、肝細胞癌、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、脂肪性肝疾患による肝硬変、アルコール性脂肪性肝疾患による肝硬変、非アルコール性脂肪症/非アルコール性脂肪性肝疾患による肝硬変、放射線誘発線維症、頭頸部線維症、消化管線維症、肺線維症、原発性硬化性胆管炎、再狭窄、心臓線維症、心筋内線維症、心房性線維症、眼部瘢痕化、線維性硬化症、線維性癌、筋腫、線維腫、線維腺腫、線維肉腫、移植性動脈病変(transplant mteriopathy)、ケロイド、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、及び腎性全身性線維症、からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記腫瘍形成が、血管新生障害、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性及び慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、前骨髄球性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、肥満細胞腫、ホジキン病、非ホジキン病、骨髄異形成症候群、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫、黒色腫、セミノーマ、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞癌、カポジ肉腫、
黒色腫、奇形腫、横紋筋肉腫、転移性及び骨性疾患、骨、口/咽頭、食道、喉頭、胃、腸、結腸、直腸、肺、肝臓、膵臓、神経、脳、頭頸部、のど、卵巣、子宮、前立腺、精巣、膀胱、腎臓、乳房、胆嚢、頸部、甲状腺、前立腺、及び皮膚のがん、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、神経膠腫、及び多形性膠芽腫からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記心血管障害または脳血管障害が、アテローム性動脈硬化症、アテローム性冠状動脈の再狭窄、急性冠症候群、心筋梗塞、心臓同種移植片血管症、脳卒中、炎症性またはアポトーシス性成分を伴う中枢神経系障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、神経性虚血及び末梢神経障害からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目41)
項目1に記載の医薬を、転移性がんを有する患者に治療的に投与することを含む、患者における転移を軽減するための方法。
(項目42)
前記医薬を、タキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びカバジタキセルを含むがこれらに限定されない抗微小管薬の投与の前に、抗微小管薬の投与と組み合わせて、または抗微小管薬の投与後に投与する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記医薬を、EGF受容体(EGFR)HER2/neu、c-SRC、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体、線維芽細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、及びVEGF受容体からなる群から選択される、チロシンキナーゼ受容体の群に特異的なTKI治療薬の投与の前に、TKI治療薬の投与と組み合わせて、またはTKI治療薬の投与後に投与する、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記医薬を、ゲフィチニブの投与の前に、ゲフィチニブの投与と組み合わせて、またはゲフィチニブの投与後に投与する、項目41に記載の方法。
(項目45)
項目1に記載の医薬を、それを必要とする患者に予防的に投与することを含む、患者における転移を予防するための方法。
(項目46)
前記医薬を、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びカバジタキセルを含むがこれらに限定されない、抗微小管薬の投与の前に、抗微小管薬の投与と組み合わせて、または抗微小管薬の投与後に投与する、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記医薬を、EGF受容体(EGFR)HER2/neu、c-SRC、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン様増殖因子1受容体(IGFR-1)、線維芽細胞増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、及びVEGF受容体からなる群から選択される、チロシンキナーゼ受容体の群に特異的なTKI治療薬の投与の前に、TKI治療薬の投与と組み合わせて、またはTKI治療薬の投与後に投与する、項目45に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022140789000001.app
【外国語明細書】