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特開2022-142139非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池
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  • 特開-非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142139
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220922BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220922BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220922BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220922BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220922BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/13
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042166
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中野 和城
(72)【発明者】
【氏名】茅原 静佳
(72)【発明者】
【氏名】山村 英行
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM01
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ17
5H029HJ18
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB08
5H050DA03
5H050HA04
5H050HA09
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】合材内の活物質以外の空孔の体積比率と、活物質中の空孔の体積比率とに基づいて、イオンの析出を抑制可能な非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る活物質112を含む合材110,120を有する負極シート100を備える非水電解液二次電池の製造方法は、電位差ΔVが、非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない値となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110,120を製造する工程を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む合材を有する負極シートを備える非水電解液二次電池の製造方法であって、
第1の体積比率Vaは、前記合材の体積に対する、前記活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、前記合材の体積に対する、前記活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第1の比率((Va+Vb)/Va)は、前記第1の体積比率Vaに対する、前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和の比率であり、
前記第1の比率((Va+Vb)/Va)に比例する負極シートの電位差ΔVが、前記非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない値となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材を製造する工程を含む、非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記合材を製造する工程は、前記電位差ΔVを最小化する前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材を製造する工程を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項3】
第2の比率(Va/(Va+Vb))は、前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和に対する前記第1の体積比率Vaの比率であり、
前記合材を製造する工程は、前記第2の比率(Va/(Va+Vb))が、前記イオンが析出しない最大の電流値に対応する値以下となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材を製造する工程を含む、請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項4】
活物質を含む合材を有する負極シートを備える非水電解液二次電池の製造方法であって、
第1の体積比率Vaは、前記合材の体積に対する、前記活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、前記合材の体積に対する、前記活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の比率(Va/(Va+Vb))は、前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和に対する前記第1の体積比率Vaの比率であり、
前記第2の比率(Va/(Va+Vb))が、前記非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない最大の電流値に対応する値以下となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材を製造する工程を含む、非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記合材を製造する工程は、
前記第2の比率(Va/(Va+Vb))が0.6以下となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材を製造する工程を含む、請求項3又は4に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記第1の体積比率Vaは、前記第2の体積比率Vb以上であり、
前記第1の体積比率Vaは、20~40%であり、
前記第2の体積比率Vbは、20~30%であり、
前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和は、40~60%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記電位差ΔVは、前記負極シートの電流密度、イオン伝導率、輸率、前記第1の比率((Va+Vb)/Va)、及び前記合材の厚みによって規定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項8】
活物質を含む合材を有する負極シートを備えた非水電解液二次電池であって、
第1の体積比率Vaは、前記合材の体積に対する、前記活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、前記合材の体積に対する、前記活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和に対する前記第1の体積比率Vaの比率(Va/(Va+Vb))が0.6以下となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材が製造された、非水電解液二次電池。
【請求項9】
活物質を含む合材を有する負極シートを備えた非水電解液二次電池であって、
第1の体積比率Vaは、前記合材の体積に対する、前記活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、前記合材の体積に対する、前記活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
前記第1の体積比率Vaが前記第2の体積比率Vb以上となり、前記第1の体積比率Vaが20~40%となり、前記第2の体積比率Vbが20~30%となり、前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和が40~60%となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材が製造された、非水電解液二次電池。
【請求項10】
前記第1の体積比率Vaが前記第2の体積比率Vb以上となり、前記第1の体積比率Vaが20~40%となり、前記第2の体積比率Vbが20~30%となり、前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbの和が40~60%となる前記第1の体積比率Va及び前記第2の体積比率Vbに基づいて、前記合材が製造された、請求項8に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水溶系有機電解液を含む非水電解液二次電池及び当該非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等では、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池が採用されている。非水電解液二次電池では、インカレータとして機能するイオンが析出することがあり、そのようなイオンの析出を抑制する種々の技術が提案されている。
【0003】
非水電解液二次電池におけるイオンの析出を抑制する技術の一例として、例えば、特許文献1は、負極の合材中の細孔の体積が、負極の空隙の体積全体の既定の比率以上を占める非水電解液二次電池を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-50298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する非水電解液二次電池は単に、負極の空隙の体積全体に対する負極の合材中の細孔の体積の比率に基づいて、二次電池を製造するものである。そのため、合材内の活物質以外の空孔の体積比率と、活物質中の空孔の体積比率とに基づいて、イオンの析出を抑制する二次電池を製造することができない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、合材内の活物質以外の空孔の体積比率と、活物質中の空孔の体積比率とに基づいて、イオンの析出を抑制可能な非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る活物質を含む合材を有する負極シートを備える非水電解液二次電池の製造方法は、
第1の体積比率Vaは、合材の体積に対する、活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、合材の体積に対する、活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第1の比率((Va+Vb)/Va)は、第1の体積比率Vaに対する、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和の比率であり、
第1の比率((Va+Vb)/Va)に比例する負極シートの電位差ΔVが、非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない値となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材を製造する工程を含む。
【0008】
また、合材を製造する工程は、電位差ΔVを最小化する第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材を製造する工程を含むことができる。
【0009】
さらに、第2の比率(Va/(Va+Vb))は、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和に対する第1の体積比率Vaの比率であり、
合材を製造する工程は、第2の比率(Va/(Va+Vb))が、イオンが析出しない最大の電流値に対応する値以下となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材を製造する工程を含むことができる。
【0010】
さらに、合材を製造する工程は、
第2の比率(Va/(Va+Vb))が0.6以下となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材を製造する工程を含むことができる。
【0011】
さらに、第1の体積比率Vaは、第2の体積比率Vb以上であり、
第1の体積比率Vaは、20~40%であり、
第2の体積比率Vbは、20~30%であり、
第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和は、40~60%とすることができる。
【0012】
さらに、電位差ΔVは、負極シートの電流密度、イオン伝導率、輸率、第1の比率((Va+Vb)/Va)、及び合材の厚みによって規定することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る活物質を含む合材を有する負極シートを備える非水電解液二次電池の製造方法は、
第1の体積比率Vaは、合材の体積に対する、活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、合材の体積に対する、活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の比率(Va/(Va+Vb))は、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和に対する第1の体積比率Vaの比率であり、
第2の比率(Va/(Va+Vb))が、非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない最大の電流値に対応する値以下となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材を製造する工程を含む。
【0014】
本発明の他の態様に係る活物質を含む合材を有する負極シートを備えた非水電解液二次電池は、
第1の体積比率Vaは、合材の体積に対する、活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、合材の体積に対する、活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和に対する第1の体積比率Vaの比率(Va/(Va+Vb))が0.6以下となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材が製造される。
【0015】
本発明の他の態様に係る活物質を含む合材を有する負極シートを備えた非水電解液二次電池は、
第1の体積比率Vaは、合材の体積に対する、活物質以外の部分に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第2の体積比率Vbは、合材の体積に対する、活物質内に存在する全ての空孔の体積の比率であり、
第1の体積比率Vaが第2の体積比率Vb以上となり、第1の体積比率Vaが20~40%となり、第2の体積比率Vbが20~30%となり、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和が40~60%となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材が製造される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、合材内の活物質以外の空孔の体積比率と、活物質中の空孔の体積比率とに基づいて、イオンの析出を抑制可能な非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池が備える負極シート100を示す平面図である。
図2図1に示すI-I断面線に沿った垂直断面図である。
図3】第1の体積比率Vaと負極シートの電流値の増減との関係、第2の体積比率Vbと負極シートの電流値の増減との関係、第2の比率と負極シートの限界電流値との関係を示す図である。
図4】第2の比率と限界電流値との関係、及び第2の比率と電位差ΔVとの関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る二次電池の第1の体積比率Vaと限界電流値との関係、及び従来の二次電池の第1の体積比率Vaと限界電流値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池(以下、単に「二次電池」と称する。)は、正極シートと、負極シートと、正極シート及び負極シートを絶縁するセパレータとを備える。正極シート、負極シート及びセパレータは、二次電池内で積層されて配置される。正極シートは、正極集電体として機能する金属箔(アルミニウム等)と、金属箔の両面に塗布される合材とを含む。正極の合材は、活物質(コバルト酸リチウム等)や導電剤、バインダを含むスラリーで構成される。負極シートは、集電体として機能する金属箔(銅等)と、金属箔の両面に塗布される合材とを含む。負極の合材は、活物質(グラファイト等)や導電剤、バインダを含むスラリーで構成される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池が備える負極シート100を示す平面図である。図2は、図1に示すI-I断面線に沿った垂直断面図である。図2に示すように、負極シート100は、金属箔130と、金属箔130の各面に塗布された合材110,120とを有する。以下、合材110の構成について説明する。なお、合材120も合材110と同様の構成を有する。
【0020】
合材110には、活物質112が含まれる。活物質112の具体例としては、黒鉛等が挙げられる。合材110内の活物質112以外の部分111には、複数の空孔(図示せず)が存在する。以下、合材110の体積に対する、当該活物質112以外の部分111に存在する全ての空孔の体積の比率を、第1の体積比率Vaとする。
【0021】
各活物質112には、複数の空孔113が存在する。以下、合材110の体積に対する、活物質112内に存在する全ての空孔113の体積の比率を、第2の体積比率Vbとする。
【0022】
合材110は、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて製造される。具体的には、負極シート100の電位差ΔVが、非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオン(例えば、リチウムイオン二次電池の場合はリチウムイオン)が析出しない値となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110を製造することができる。電位差ΔVは、合材110の表面の電位Vと、合材110の金属箔130付近の電位Vとの差である。電位差ΔVは、下記数式1で規定することができる。数式1は、第1の体積比率Vaと第2の体積比率Vbの比率が電位差ΔVに関係することを意味する。
【数1】
ここで、Iは負極シート100の電流密度(mA/cm)を表す。kは、負極シート100内の有機電解液中のイオン伝導率(mS/cm)を表す。tは、負極シート100内の有機電解液中の輸率を表す。Tは、合材110の厚み(cm)を表す。(Va+Vb)/Vaは、第1の体積比率Vaに対する、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和の比率である。以下、この比率を第1の比率とする。
【0023】
電位差ΔVは、数式1に示すように、負極シート100の電流密度I、イオン伝導率k、輸率t、第1の比率、及び合材110の厚みTによって規定される。また、数式1は、電位差ΔVが、第1の比率に比例することを意味する。
【0024】
図3は、第1の体積比率Vaと負極シート100の電流値の増減との関係、第2の体積比率Vbと負極シート100の電流値の増減との関係、第2の比率(Va/(Va+Vb))と負極シート100の限界電流値との関係を示す図である。第2の比率とは、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和に対する第1の体積比率Vaの比率である。限界電流値とは、インカレータとして機能するイオンが析出しない最大の電流値である。この計測試験では、5組の第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbについて限界電流値を計測した。この計測試験では、和(Va+Vb)が50%となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbを採用した。なお、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和は、この値に限定されるものではない。
【0025】
図3の第1の体積比率Vaと負極シート100の電流値の増減との関係を示すグラフは、第1の組における負極シート100の電流値を基準とする負極シート100の電流値の増減を示している。第1の組から第5の組の第1の体積比率Vaは、それぞれ約24%、約26%、約28%、約30%、約32%であった。このグラフが示すように、第1の体積比率Vaが大きい程、負極シート100の電流値も大きくなった。従って、第1の体積比率Vaは大きい方が好ましい。
【0026】
図3の第2の体積比率Vbと負極シート100の電流値の増減との関係を示すグラフは、第1の組における負極シート100の電流値を基準とする負極シート100の電流値の増減を示している。第1の組から第5の組の第2の体積比率Vbは、それぞれ約27%、約25%、約22%、約20%、約18%であった。このグラフが示すように、第2の体積比率Vbが小さい程、負極シート100の電流値も小さくなった。特に、第2の体積比率Vbが20%未満の場合、負極シート100の電流値は急激に減少することが判明した。これは、活物質中の空孔の体積が減少することにより、イオン伝導が低下したことが原因と考えられる。従って、第2の体積比率Vbは、20%以上であることが好ましい。
【0027】
図3の第2の比率(Va/(Va+Vb))と負極シート100の限界電流値との関係を示すグラフを参照すると、第1の組の第2の比率は約0.47であり、対応する限界電流値は約38(mA/cm)であった。また、第2の組の第2の比率は約0.52であり、対応する限界電流値は約42(mA/cm)であった。さらに、第3の組の第2の比率は約0.56であり、対応する限界電流値は約45(mA/cm)であった。さらに、第4の組の第2の比率は約0.6であり、対応する限界電流値は約50(mA/cm)であった。さらに、第5の組の第2の比率は約0.65であり、対応する限界電流値は約41(mA/cm)であった。
【0028】
この結果から、本発明者らは、第1の体積比率Vaと第2の体積比率Vbの比率が限界電流値に関係することを発見した。より詳細には、第1の組から第4の組にかけて限界電流値が徐々に増加し、第4の組の第2の比率(約0.6)に対応する限界電流値が最も高かった。一方、第5の組の限界電流値から分かるように、第2の比率が0.6を超えると、限界電流値が急激に減少することが判明した。これは、上述した活物質中の空孔の体積の減少に伴うイオン伝導の低下が原因と考えられる。従って、限界電流値の観点から、第2の比率は、約0.6以下であることが好ましいことが判明した。また、第1の体積比率Vaが第2の体積比率Vb未満である場合、限界電流値が低くなることから、第1の体積比率Vaは、第2の体積比率Vb以上であることが好ましいことが判明した。
【0029】
また、第1の体積比率Vaは、20~40%であることが好ましい。さらに、第2の体積比率Vbは、20~30%であることが好ましい。第2の体積比率Vbは、20~25%であることがより好ましい。従って、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和は、40~60%であることが好ましい。なお、第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和が60%を超えると、合材110の密度が低くなり過ぎるため、負極シート100の強度が低下する。
【0030】
図4は、第2の比率(Va/(Va+Vb))と限界電流値との関係、及び第2の比率(Va/(Va+Vb))と電位差ΔVとの関係を示す図である。図4に示す第2の比率(Va/(Va+Vb))と限界電流値との関係は、図3に示す第2の比率(Va/(Va+Vb))と限界電流値のグラフと同じである。第2の比率(Va/(Va+Vb))と電位差ΔVのグラフは、第1の組から第5の組の第2の比率(Va/(Va+Vb))について、負極シート100の電流密度を30(mA/cm)にした場合の電位差ΔVと、電流密度を40(mA/cm)にした場合の電位差ΔVを示している。
【0031】
図4に示す結果から、限界電流値が高い程、電位差ΔVが低くなり、限界電流値が低い程、電位差ΔVが高くなることが判明した。一般に、電位差ΔVが低い程、イオンが析出し難い。換言すると、電位差ΔVが高い程、イオンが析出し易い。例えば、活物質として黒鉛を使用するリチウムイオン電池の場合、電位差ΔVが0.1以上になると、リチウムイオンが析出した。従って、電位差ΔVを最小化する第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて合材110,120を製造することが好ましい。
【0032】
この結果から、本発明者らは、第1の体積比率Vaと第2の体積比率Vbの比率が電位差ΔVにも関係することを発見した。より詳細には、図4に示すように、第1の組から第4の組にかけて電位差ΔVが徐々に減少し、第4の組の第2の比率(約0.6)に対応する電位差ΔVが最も小さかった。一方、第5の組の電位差ΔVから分かるように、第2の比率が0.6を超えると、電位差ΔVが急激に増加することが判明した。従って、電位差ΔVの観点からも、第2の比率は、約0.6以下であることが好ましいことが判明した。
【0033】
図5は、本発明の一実施形態に係る二次電池の第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和と限界電流値との関係、及び従来の二次電池の第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和と限界電流値との関係を示す図である。第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbの和が50%における限界電流値に着目すると、本発明の一実施形態に係る二次電池の方が、従来の二次電池よりも限界電流値が高いことが判明した。換言すると、本発明の一実施形態に係る二次電池は、イオンを析出させることなく、従来の二次電池よりも多くの電流を流すことができる。
【0034】
上述した実施形態では、非水電解液二次電池の製造方法は、負極シート100の電位差ΔVが、非水電解液二次電池のインカレータとして機能するイオンが析出しない値となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110,120を製造する工程を含む。このように合材110,120を製造することにより、非水電解液二次電池におけるイオンの析出を防ぐことができる。
【0035】
合材110,120を製造する工程は、電位差ΔVを最小化する第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110,120を製造する工程を含むことができる。上述した通り、電位差ΔVが低い程、イオンが析出する可能性が低くなる。従って、電位差ΔVを最小化する第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて合材110,120を製造することにより、非水電解液二次電池におけるイオンが析出するリスクをより低減できる。
【0036】
さらに、非水電解液二次電池の製造方法は、第2の比率(Va/(Va+Vb))が、イオンが析出しない最大の電流値に対応する値以下となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110,120を製造する工程を含むことができる。このように合材110,120を製造することにより、非水電解液二次電池におけるイオンの析出を防ぐことができる。特に、第2の比率(Va/(Va+Vb))が限界電流値に対応する値となる第1の体積比率Va及び第2の体積比率Vbに基づいて、合材110,120を製造することにより、イオンを析出させることなく、非水電解液二次電池を流れる電流値を最大化することができる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
100 負極シート
110 合材
112 活物質
113 空孔
120 合材
130 金属箔
図1
図2
図3
図4
図5