(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142280
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】撮像素子、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220922BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N5/369
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042400
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周太郎
(72)【発明者】
【氏名】船水 航
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 修
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA10
4M118BA14
4M118CA04
4M118DD04
4M118FA06
4M118FA27
4M118FA28
4M118FA38
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4M118GB03
4M118GB07
4M118GB11
4M118GC07
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4M118GD03
4M118GD04
4M118HA25
5C024CX03
5C024GX01
5C024GX03
5C024GX15
5C024GX16
5C024GX18
5C024GX24
5C024GY39
5C024GY41
(57)【要約】
【課題】画素間のスペースを有効活用することができる撮像素子を提供する。
【解決手段】撮像素子は、半導体基板を有する撮像素子であって、半導体基板は、光を光電変換する第1光電変換部と、第1光電変換部の隣に設けられ、光を光電変換する第2光電変換部と、第1光電変換部と第2光電変換部との間に設けられる複数の分離部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を有する撮像素子であって、
前記半導体基板は、
光を光電変換する第1光電変換部と、
前記第1光電変換部の隣に設けられ、光を光電変換する第2光電変換部と、
前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との間に設けられる複数の分離部と、
を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記分離部は、前記半導体基板において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部とを電気的または光学的に、もしくは電気的かつ光学的に分離する領域である、撮像素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像素子において、
前記半導体基板において、複数の前記分離部のうちの2つの分離部の間の半導体領域に設けられ、前記第1光電変換部または前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく信号を処理するための信号処理回路を備える、撮像素子。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部と前記第2光電変換部とは第1方向に設けられ、
複数の前記分離部は、前記第1方向に設けられるとともに、
複数の前記分離部のそれぞれの少なくとも一部は、前記第1方向と交差する方向に延在している、撮像素子。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像素子において、
複数の前記分離部の1つは、前記半導体基板において前記第1光電変換部を取り囲み、
複数の前記分離部の他の1つは、前記半導体基板において前記第2光電変換部を取り囲む、撮像素子。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記半導体領域に入射する光を遮光する遮光部を備える、撮像素子。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はn型半導体の導電特性を有し、
前記半導体領域は、p型半導体の導電特性を有する撮像素子。
【請求項8】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はn型半導体の導電特性を有し、
前記半導体領域は、n型半導体の導電特性を有する撮像素子。
【請求項9】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はn型半導体の導電特性を有し、
前記半導体領域は、前記分離部により、複数の部分領域に分割されているとともに、複数の前記部分領域のうちの少なくとも1つはp型半導体の導電特性を有する、撮像素子。
【請求項10】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部はn型半導体の導電特性を有し、
前記半導体領域は、前記分離部により、複数の部分領域に分割されているとともに、複数の前記部分領域のうちの少なくとも1つはn型半導体の導電特性を有する、撮像素子。
【請求項11】
請求項3から請求項7まで、または請求項9から請求項10までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記信号処理回路は、前記第1光電変換部または前記第2光電変換部で生成された電荷が転送される蓄積部を含む、撮像素子。
【請求項12】
請求項3から請求項9までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記半導体基板に積層され、前記信号処理回路で処理された信号を処理する第2信号処理回路が設けられる第2半導体基板を備える、撮像素子。
【請求項13】
請求項12に記載の撮像素子において、
前記第2信号処理回路は、前記第1光電変換部または前記第2光電変換部で生成された電荷に基づくアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路の少なくとも一部を含む、撮像素子。
【請求項14】
請求項13に記載の撮像素子において、
前記半導体基板の前記信号処理回路は、前記AD変換回路の一部を含む、撮像素子。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記分離部の、前記半導体基板に垂直な方向の長さは、前記半導体基板の厚さの2/3以上である、撮像素子。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記分離部の、前記半導体基板に垂直な方向の長さは1μm以上である、撮像素子。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号に基づいて画像データを生成する生成部と、
を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市松状の一方の位置に相対的に感度の高い大面積の画素を配置し、市松状の他方の位置に相対的に感度の低い小面積の画素を配置した撮像素子が知られている(例えば特許文献1)。従来より、画素間のスペースを有効活用することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、撮像素子は、半導体基板を有する撮像素子であって、前記半導体基板は、光を光電変換する第1光電変換部と、前記第1光電変換部の隣に設けられ、光を光電変換する第2光電変換部と、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部との間に設けられる複数の分離部と、を備える。
本発明の第2の態様によると、撮像装置は、第1の態様の撮像素子と、前記撮像素子から出力された信号に基づいて画像データを生成する生成部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態の撮像装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図10】第6実施形態の撮像素子の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(撮像装置の第1実施形態)
図1は、撮像装置の第1実施形態であるカメラ1の構成例を示す図である。
図1に矢印で示したX方向、Y方向、およびZ方向は、その矢印の指し示す方向を+方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、相互に直交する方向である。また、以降の各図に示したX方向、Y方向、およびZ方向も、
図1に示したX方向、Y方向、およびZ方向と同一の方向である。
【0007】
カメラ1は、撮影光学系(結像光学系)2、撮像素子3、撮像制御部4、メモリ6、表示部7、及び操作部8を備える。撮影光学系2は、焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)を含む複数のレンズ及び開口絞りを有し、撮像素子3に被写体像を結像する。なお、撮影光学系2は、カメラ1から着脱可能にしても良い。
【0008】
撮像素子3は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等の撮像素子である。撮像素子3は、撮影光学系2を通過した光束を受光し、撮影光学系2により形成される被写体像を撮像する。後述するように、撮像素子3には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に配置される。光電変換部は、フォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子3は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号を撮像制御部4に出力する。
【0009】
メモリ6は、メモリカード等の記録媒体である。メモリ6には、画像データ、制御プログラム等が記録される。メモリ6へのデータの書き込み、及びメモリ6からのデータの読み出しは、撮像制御部4によって制御される。表示部7は、画像データに基づく画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部8は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチ等の各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に基づく信号を撮像制御部4へ出力する。
【0010】
撮像制御部4は、CPU、FPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROM、RAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づきカメラ1の各部を制御する。撮像制御部4は、撮像素子3を制御する信号を撮像素子3に供給して、撮像素子3の動作を制御する。撮像制御部4は、静止画撮影を行う場合、動画撮影を行う場合、または表示部6に被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示する場合等において、撮像素子3に被写体像を撮像させて信号を出力させる。
【0011】
撮像制御部4は、撮像素子3から出力される信号に各種の画像処理を行って画像データを生成する生成部5を備えている。画像処理には、階調変換処理、色補間処理等の画像処理が含まれる。
【0012】
(撮像素子の第1実施形態)
図2を参照して、第1実施形態の撮像素子3の構成について説明する。
図2(a)は、第1実施形態の撮像素子3を撮像面側から、すなわち+Z側から見た図である。撮像素子3は、X方向およびY方向に配列される複数の画素9を有している。画素9は、X方向およびY方向にそれぞれ、例えば1000個以上に渡って配列されていても良い。
【0013】
複数の画素9が配列された領域(画素領域)の、-X方向の端部には水平制御部HCが設けられ、+Y方向の端部には垂直制御部VCが設けられている。水平制御部HCと垂直制御部VCを合わせて、素子制御部CUとも呼ぶ。
複数の画素9のそれぞれは、一例として、いわゆるベイヤー配列で規定される分光感度特性を有していても良い。あるいは、ベイヤー配列とは異なる分光感度特性を有していても良い。
また、いくつかの画素9は、いわゆる像面位相差式のフォーカス検出用の画素であっても良い。フォーカス検出用の画素の構成は公知であるので、本明細書では説明を省略する。
【0014】
以下では、画素9のうち、X方向の2行およびY方向の2列に隣合わせて配置されている、一例として破線の四角で囲って示した4つの画素(4画素)9Qを例にとって、その構造を説明する。
【0015】
図3(a)は、撮像素子3の4画素9Qの部分のXY断面を拡大して示した断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるAA切断線におけるXZ断面を示した断面図である。
なお、
図3(a)は、
図3(b)におけるBB切断線におけるXY断面を示しているが、理解を容易にするために、
図3(a)には、
図3(b)におけるBB切断線に対応するXY断面よりも-Z側に存在する、後述する信号処理回路13a~13dも示している。
以下では、4画素9Qに含まれる4つの画素9を、それぞれ画素9a~9dとも呼ぶ。
【0016】
撮像素子3は、シリコン等の半導体から成り、XY面に概ね平行に配置されている半導体基板10を有している。そして、半導体基板10の内部に、光を光電変換する一例としてフォトダイオードから成る複数の光電変換部11a~11dを備えている。以下では、光電変換部11a~11dを総称して、または個々に、単に光電変換部11とも呼ぶ。
光電変換部11は、一例として、概ね+Z方向から半導体基板10に入射した光を光電変換する。それぞれの画素9は、少なくとも1つの光電変換部11を備えている。以下では、画素9a~9dは、それぞれ光電変換部11a~11dを備えているものとする。
【0017】
一例として、画素9aは、光電変換部11a、マイクロレンズ14、カラーフィルタ15、転送トランジスタTX、蓄積部FD、信号処理回路13aを有している。一例として、半導体基板10は不純物原子の濃度が比較的低いp型半導体からなり、光電変換部11aは、p型の半導体基板10の一部に形成されたn型半導体の導電特性を有する領域である。
【0018】
光電変換部11aは、いわゆる埋め込みフォトダイオードとして機能する。マイクロレンズ14は、半導体基板10に光が入射する側(+Z側)に設けられ、半導体基板10に入射する光を光電変換部11aに集光させる。カラーフィルタ15は、光電変換部11aとマイクロレンズ14との間に設けられ、光電変換部11aに入射する光の波長特性を規定する。
【0019】
光電変換部11aに入射した光により生成された電荷は、転送トランジスタTXにより蓄積部FDに転送される。蓄積部FDに転送された電荷により形成される電圧は、第1トランジスタTr1により電流信号に変換され、第2トランジスタTr2および配線W3、W4を経て、不図示の読出し回路により読み出される。従って、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2は、光電変換部11aで生成された電荷に基づく信号を処理する信号処理回路13aの一部を構成している。
【0020】
光電変換部11aで生じた電荷の蓄積部FDへの転送は、転送トランジスタTXのゲートG0に印加する制御信号の電圧により、制御する。同様に、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2の導通は、それぞれのゲートG1、G2に印加する制御信号の電圧により制御する。
【0021】
上述した各トランジスタのソース領域、およびドレイン領域(以下、総称して「ソース・ドレイン領域」と呼ぶ)は、p型半導体の半導体基板10の-Z側の表面の近傍に、リンまたはヒ素等の所定の原子を注入して形成されたn型半導体の導電特性を有する領域である。
配線W2は、信号処理回路13a内に形成されている第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2等の間を電気的に繋ぐ配線である。配線W1は、蓄積部FDと第1トランジスタTr1のドレインとの間を電気的に繋ぐ配線である。
信号処理回路13a、配線W3、および配線W4は、相互に電気的な接続が必要な部分を除いて、絶縁膜18により覆われている。
【0022】
転送トランジスタTX、および信号処理回路13aの回路構成は、一例として、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、および選択トランジスタを含む一般的な4トランジスタ型のCMOS撮像素子における回路構成と同じであっても良い。蓄積部FDの構成は、一般的なフローティング・ディフュージョン部の構成であっても良い。
さらに、信号処理回路13aは、一般的な4トランジスタ型のCMOS撮像素子における回路構成よりも多くの構成を含んでいても良い。例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータ―回路の一部を含んでいても良い。
【0023】
画素9a以外の他の画素9b~9dの構成も、カラーフィルタ15の波長選択特性が異なる点以外は、上述した画素9aの構成と同様である。そして、他の画素9b~9dも、光電変換部11b~11dで生成された電荷に基づく信号を処理する信号処理回路13b~13dをそれぞれ有している。以下では、信号処理回路13a~13dを総称して、または個々に、単に信号処理回路13とも呼ぶ。
【0024】
図3(b)に示したように、半導体基板10とカラーフィルタ15との間の隣り合う画素9a~9dの境界部には、遮光部17が設けられている。遮光部17により、1つの画素9a~9dのマイクロレンズ14およびカラーフィルタ15を透過した光の、隣の画素への混入を低減することができる。
【0025】
遮光部17は、一例として、タングステン等の金属膜で形成しても良い。あるいは、カーボン等の吸光部材を含む膜で形成しても良い。
また、半導体基板10とカラーフィルタ15との間であって遮光部17が設けられていない部分には、平坦化のために、遮光部17とほぼ同じ厚さ(Z方向の長さ)の透光部16が設けられている。
【0026】
第1実施形態の撮像素子3においては、半導体基板10に平行な面内(XY面内)で、それぞれの画素9a~9dに含まれる光電変換部11a~11dを取り囲むように、分離部12a~12dが配置されている。以下では、分離部12a~12dのそれぞれを総称して、または個々に、単に分離部12とも呼ぶ。
【0027】
分離部12は、例えば、ディープトレンチアイソレーション(DTI)であり、半導体基板10のうち、分離部12の一方の側と他方の側とを、電気的に分離する。第1実施形態の撮像素子3においては、分離部12は、光電変換部11を取り囲んで配置されているので、半導体基板10のうちのそれぞれの分離部12の内側にある光電変換部11およびその近傍の第1領域10aと、それぞれの分離部12の外側にある半導体領域である第2領域10bとが、電気的に分離される。本明細書では、半導体基板10のち、分離部12により光電変換部11およびその近傍の第1領域10aから分離された第2領域10bを、単に「半導体領域」とも呼ぶ。
【0028】
分離部12は、一例として、半導体基板10に、その-Z側の面から、または+Z側の面から部分的に彫り込み(溝)を形成し、形成した彫り込みの内部にSiO2等の絶縁部材を埋め込んで形成しても良い。分離部12を構成する絶縁部材内にタングステンメタルなどをさらに埋め込むことにより、電気的な分離に加えて、遮光、すなわち光学的な分離を行うこともできる。
【0029】
画素9aの光電変換部11aを第1光電変換部ということもできる。また、画素9bの光電変換部11bを、第1光電変換部である光電変換部11aの隣に設けられた第2光電変換部ということもできる。
従って、第1実施形態の撮像素子3は、第1光電変換部11aと、第1光電変換部11aの隣に設けられた第2光電変換部11bと、第1光電変換部11aと第2光電変換部11bとの間に設けられる複数の分離部12a、12bを備えるということもできる。
【0030】
第1実施形態の撮像素子3においては、分離部12aおよび分離部12bとの間の第2領域10bに、光電変換部11aで生成された電荷に基づく信号を処理する信号処理回路13aが配置されている。同様に、他の光電変換部11b~11dで生成された電荷に基づく信号をそれぞれ処理する信号処理回路13b~13dも、分離部12により第1領域10aから分離された第2領域10bに配置されている。
【0031】
一般に、信号処理回路13は、それを構成するトランジスタTr1、Tr2のゲートG1、G2に印加される電圧の変動等により半導体基板10の電圧を変動させる電気的なノイズのノイズ源である。しかし、第1実施形態の撮像素子3においては、信号処理回路13と光電変換部11との間に、分離部12が配置されている。このため、信号処理回路13が配置されている第2領域10bの電圧が変動しても、光電変換部11が配置されている第1領域10aの電圧の変動は低減できる。従って、信号処理回路13で生じる電気ノイズによる光電変換部11への悪影響を低減することができる。
【0032】
一例として、半導体基板10のZ方向の厚さは、3μm程度以上である。分離部12は、半導体基板10の-Z側の端面から+Z側の端面に渡って形成されていても良く、半導体基板10の-Z側の端面から半導体基板10内に、例えば1μm以上、または2μm以上の深さに渡って形成されていても良い。
一例として、半導体基板10の-Z側の端面からの分離部12のZ方向の長さ(深さ)を、半導体基板10の厚さの2/3以上として、信号処理回路13で生じる電気ノイズによる光電変換部11への悪影響を一層低減しても良い。
【0033】
なお、信号処理回路13の構成によっては、その内部に可視光または赤外光を発光する素子を含む場合がある。例えば、信号処理回路13が電流源回路を含む場合、その電流源回路が意図せず発光する場合がある。例えば上述したように、分離部12を構成する絶縁部材内にタングステンメタルなどをさらに埋め込むことにより、信号処理回路13内で発光した光(光学ノイズ)による光電変換部11への悪影響を低減することができる。
【0034】
信号処理回路13内の発光素子が発する光により光電変換部11に生じるノイズの低減が重要な場合には、分離部12を例えば、金属のような遮光性の高い材質で形成しても良い。この場合、分離部12は、半導体基板10の電気的な分離の機能は低下するが、遮光、すなわち光学的な分離の機能が高まる。また、分離部12として、例えば塗布により形成された絶縁膜の中に金属を埋めこむことにより、電気的および光学的な分離を行う分離部12とすることができる。
なお、分離部12は、それぞれの光電変換部11を多重に取り囲んで配置されていても良い。
【0035】
(撮像素子の変形例1)
以下、
図4を参照して、撮像素子3の変形例1について説明する。撮像素子3の変形例1の構成は
図2、および
図3に示した第1実施形態の撮像素子3と同様であるが、分離部12の構成が、第1実施形態の撮像素子3とは異なっている。
【0036】
図4は、撮像素子3の変形例1における4画素9Q(
図2参照)の部分のXY断面を拡大して示した断面図であり、上述した第1実施形態の撮像素子3を示す
図3(a)と同様の図である。以下では、第1実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0037】
図4に示したとおり、撮像素子3の変形例1においては、X方向に隣り合う2つの光電変換部11a、11bの間、およびX方向に隣り合う2つの光電変換部11c、11dの間に、Y方向に延びる2つの分離部12a、12bが配置されている。なお、
図4のAA切断線における変形例1のXZ断面は、
図3(b)に示した第1実施形態の撮像素子3のXZ断面図と同様である。
【0038】
変形例1における分離部12a~12dの材質およびZ方向の長さは、上述した第1実施形態の撮像素子3における分離部12と同様である。従って、光電変換部11が配置されている第1領域10aは、分離部12により第2領域10bから電気的または光学的に分離されている。
【0039】
変形例1においても、上述した信号処理回路13は、半導体基板10の第2領域10bに配置されている。従って、信号処理回路13に含まれるトランジスタ等から発生する電気ノイズまたは光学ノイズが光電変換部11に及ぼす悪影響は、分離部12により低減される。
【0040】
なお、X方向に隣り合う2つの光電変換部11a、11bの間、およびX方向に隣り合う2つの光電変換部11c、11dの間に配置される分離部12の数は、上述した2個に限られるわけではなく、より多数であっても良い。
【0041】
以上の第1実施形態および変形例1の撮像素子3においては、複数の分離部12は、1つの光電変換部11aに対して別の光電変換部11bが配置されている方向であるX方向に沿って、複数配置されているともいえる。そして、複数の分離部12のそれぞれの少なくとも一部は、X方向と交差する方向であるY方向に沿って延在しているともいえる。
なお、複数の分離部12のそれぞれの少なくとも一部は、必ずしもY方向に沿って延在している必要は無く、X方向と交差する方向に延在していればよい。
【0042】
(撮像素子の変形例2)
以下、
図5を参照して、撮像素子3の変形例2について説明する。撮像素子3の変形例2の構成は
図2、および
図3に示した第1実施形態の撮像素子3と同様であるが、分離部12の構成が、第1実施形態の撮像素子3とは異なっている。以下では、第1実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0043】
図5は、撮像素子3の変形例2における4画素9Q(
図2参照)の部分のXY断面を拡大して示した断面図であり、上述した第1実施形態の撮像素子3を示す
図3(a)と同様の図である。
図5に示したとおり、撮像素子3の変形例2においては、光電変換部11a~11dで生成された電荷に基づく信号を処理する信号処理回路13a~13dのそれぞれを取り囲んで、分離部12a~12dが配置されている。変形例2における分離部12a~12dの材質およびZ方向の長さは、上述した第1実施形態の撮像素子3における分離部12と同様である。従って、光電変換部11が配置されている第1領域10aは、分離部12により第2領域10bから電気的または光学的に、もしくは電気的かつ光学的に分離されている。
【0044】
これにより、変形例2においても、信号処理回路13に含まれるトランジスタ等から発生する電気ノイズまたは光学ノイズが光電変換部11に及ぼす悪影響は、分離部12により低減される。
なお、分離部12は、それぞれの信号処理回路13を多重に取り囲んで配置されていても良い。
【0045】
以上の第1実施形態および変形例1、変形例2の撮像素子3は、隣り合って配置されている第1光電変換部11aと第2光電変換部11bとの間に設けられている複数の分離部12を備えている、ともいえる。
【0046】
なお、以上の第1実施形態および変形例1、変形例2の撮像素子3は、半導体基板10の第2領域10bに信号処理回路13が配置されているものとしたが、必ずしも、第2領域10bに信号処理回路13が配置されなくても良い。例えば、信号処理回路13は、半導体基板10と積層して第2の半導体基板を配置し、信号処理回路は、この第2の半導体基板上に配置しても良い。
この場合であっても、分離部12により、配線W3、W4を流れる電気信号に伴う電気ノイズが光電変換部11に及ぼす悪影響を低減することができる。
【0047】
(第1実施形態および変形例1、変形例2の撮像素子の効果)
(1)第1実施形態および変形例1、変形例2の撮像素子3は、半導体基板10を有する撮像素子であって、半導体基板10は、光を光電変換する第1光電変換部11aと、第1光電変換部11aの隣に設けられ、光を光電変換する第2光電変換部11bと、第1光電変換部11aと第2光電変換部11bとの間に設けられる複数の分離部12と、を備えている。
この構成により、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bに混入するノイズを低減することができ、ノイズの少ない撮像素子3を実現することができる。
【0048】
(2)分離部12は半導体基板10において第1光電変換部11aと第2光電変換部11bとを電気的または光学的に、あるいは電気的かつ光学的に分離する領域であるとしても良い。この場合、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bに混入する電気ノイズまたは光学ノイズを低減することができ、ノイズの少ない撮像素子3を実現することができる。
【0049】
(3)半導体基板10において、複数の前記分離部12のうちの2つの分離部の間の半導体領域(第2領域10b)に設けられ、第1光電変換部11aまたは第2光電変換部11bで生成された電荷に基づく信号を処理するための信号処理回路13aを備える構成としても良い。この場合、分離部12により、信号処理回路13aで発生する恐れのある電気ノイズ、または光学ノイズ(発光)が第1光電変換部11aに及ぼす悪影響を低減することができ、ノイズの低減された撮像素子3を実現することができる。
【0050】
(4)第1光電変換部11aと第2光電変換部11bとは第1方向(X方向)に設けられ、複数の分離部12は、第1方向(X方向)に設けられるとともに、複数の分離部12のそれぞれの少なくとも一部は、第1方向(X方向)と交差する方向(Y方向)に延在している構成であっても良い。この場合、複数の分離部12の第1方向(X方向)の間にある半導体領域(第2領域10b)を、第1光電変換部11aまたは第2光電変換部11bが配置されている第1領域10aからより効果的に分離することができるため、ノイズの一層低減された撮像素子3を実現することができる。
【0051】
(5)複数の分離部12の1つ(12a)は、半導体基板10において第1光電変換部11aを取り囲み、複数の分離部12の他の1つ(12b)は、半導体基板10において第2光電変換部11bを取り囲む構成としても良い。この場合、半導体領域(第2領域10b)を、第1光電変換部11aまたは第2光電変換部11bが配置されている第1領域10aから、さらに効果的に分離することができるため、ノイズの一層低減された撮像素子3を実現することができる。
【0052】
(第2実施形態の撮像素子)
以下、
図6を参照して、第2実施形態の撮像素子3について説明する。第2実施形態の撮像素子3の構成は
図2、および
図3に示した第1実施形態の撮像素子3と概ね同様であるが、遮光部17aの形状が第1実施形態の撮像素子3の遮光部17とは異なっている。以下では、第1実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0053】
図6は、第2実施形態の撮像素子3における4画素9Q(
図2参照)の部分のXZ断面を拡大して示した断面図であり、上述した第1実施形態の撮像素子3における
図3(b)と同様の図である。なお、
図6のBB切断線における第2実施形態の撮像素子3のXY断面は、
図3(a)に示した第1実施形態の撮像素子3のXY断面図と同様である。
【0054】
図6に示したとおり、第2実施形態の撮像素子3においては、遮光部17aは、半導体基板10の+Z側面に、第2領域10bの全面を覆うように配置されている。従って、撮像素子3の+Z側からマイクロレンズ14を介して入射した光は、カラーフィルタ15および透光部16を経て第1領域10a内の光電変換部11には入射できるが、遮光部17aにより遮光されるため、第2領域10bには入射できない。これにより、+Z側から入射した光は、第2領域10bに配置されている信号処理回路13に到達しない。
【0055】
第2実施形態の撮像素子3においては、遮光部17aにより信号処理回路13への光の入射が遮断されるため、信号処理回路13における、光電変換による不要な電荷、すなわちノイズの発生を低減できる。これにより、ノイズの少ない撮像素子3を実現することができる。
【0056】
なお、第2実施形態の撮像素子3における分離部12のXY面内の形状は、第1実施形態の撮像素子3の分離部12と同様の形状に限られるわけではなく、変形例1または変形例2における分離部12と同様の形状であっても良い。
【0057】
(第2実施形態の撮像素子の効果)
(6)第2実施形態の撮像素子3は、上述した第2実施形態の撮像素子3の構成に加えて、半導体領域(第2領域10b)に入射する光を遮光する遮光部17aを備えている。この構成により、実施形態の撮像素子3の効果に加えて、半導体領域(第2領域10b)に配置されている信号処理回路13における光電変換により生じる不要な電荷、すなわちノイズの発生を低減することができ、ノイズの一層少ない撮像素子3を実現することができる。
【0058】
(第3実施形態の撮像素子)
以下、
図7を参照して、第3実施形態の撮像素子3について説明する。第3実施形態の撮像素子3の構成は上述した第1実施形態および第2実施形態の撮像素子3と概ね同様であるため、以下では、第1実施形態および第1実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0059】
図7(a)は、第3実施形態の撮像素子3の4画素9Q(
図2参照)の部分のXY断面を拡大して示した断面図であり、上述した
図3(a)と同様の図である。
図7(b)は、
図7(a)におけるAA切断線におけるXZ断面を示した断面図であり、上述した
図3(b)と同様の図である。
図7(a)は、
図7(b)におけるBB切断線におけるXY断面を示し、合わせて信号処理回路13a~13dも示している。
【0060】
第3実施形態の撮像素子3は、半導体基板10の第2領域10bのp型またはn型半導体の導電特性が、光電変換部11が配置されている第1領域10aとは逆である点が、上述した第1実施形態および第2実施形態の撮像素子3とは異なっている。
【0061】
すなわち、
図7に示した第3実施形態の撮像素子3においては、一例として第1領域10aは不純物原子の濃度が比較的低いp型半導体であり、第2領域10bは不純物原子の濃度が比較的低いn型半導体である。第1領域10aに形成されている第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bはn型半導体の導電特性を有している。
【0062】
第2領域10bのp型またはn型半導体の導電特性は、例えば、半導体基板10の-Z側の面から所定の不純物原子を注入(イオン注入)することにより付与する。
なお、必ずしも第2領域10bの全体のp型またはn型半導体の導電特性が、第1領域10aの導電特性と逆である必要はない。例えば、第2領域10bの-Z側の半分程度の厚さの部分のp型またはn型半導体の導電特性が、第1領域10aの導電特性と逆であっても良い。
【0063】
第3実施形態の撮像素子3においては、p型(またはn型)の半導体基板10に、n型(またはp型)のウェルとしての第2領域10bが形成されているということもできる。
第3実施形態の撮像素子3においては、転送トランジスタTXとは逆特性のトランジスタTr1、Tr2を第2領域10bに形成することができる。すなわち、一例として、転送トランジスタTXがNMOSトランジスタであるとき、トランジスタTr1、Tr2をPMOSトランジスタとすることができる。これにより、信号処理回路13の設計の自由度が増し、例えば信号処理回路13の小型化等を図ることができる。
【0064】
また、第1領域10aと第2領域10bとを分離部12により電気的に分離することにより、両者のうち一方のp型半導体の領域から他方のn型半導体の領域への電流の流れを抑止することができる。これにより、第1領域10aの基板電圧と第2領域10bの基板電圧の関係の自由度が向上し、信号処理回路13の設計の自由度が一層向上し、信号処理回路13の一層の小型化等を図ることができる。
【0065】
以上の説明では、第3実施形態の撮像素子3は、第2実施形態の撮像素子3と同様の遮光部17aを備えるものとしたが、第1実施形態の撮像素子3と同様の遮光部17を備えていても良い。また、第3実施形態の撮像素子3における分離部12のXY面内の形状についても、上述した変形例1または変形例2における分離部12と同様の形状であっても良い。
【0066】
(第3実施形態の撮像素子の効果)
(7)第3実施形態の撮像素子3は、上述した第1実施形態の撮像素子3の構成に加えて、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bはn型半導体の導電特性を有し、半導体領域(第2領域10b)は、n型半導体の導電特性を有する。すなわち、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bが配置される第1領域10aはp型半導体の導電特性を有し、半導体領域(第2領域10b)は、逆特性のn型半導体の導電特性を有している。この構成により、上述した第1実施形態の撮像素子3の効果に加えて、第1領域10aに配置する信号処理回路13の設計の自由度が増し、例えば信号処理回路13の小型化等を図ることができる。
【0067】
(第4実施形態の撮像素子)
以下、
図8を参照して、第4実施形態の撮像素子3について説明する。第4実施形態の撮像素子3においても、一例として第1領域10aは不純物原子の濃度が比較的低いp型半導体であり、第1領域10aに形成されている第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bはn型半導体の導電特性を有している。第4実施形態の撮像素子3の構成は上述した各実施形態の撮像素子3と概ね同様であるため、以下では、上述した各実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0068】
図8は、第4実施形態の撮像素子3の4画素9Q(
図2参照)の部分のXY断面を拡大して示した断面図であり、上述した
図3(a)および
図7(a)と同様の図である。なお、
図8のAA切断線における第4実施形態の撮像素子3のXZ断面は、
図7(b)に示した第3実施形態の撮像素子3のXZ断面図と同様である。また、
図8には、信号処理回路13a~13dも示している。
【0069】
図8に示したとおり、第4実施形態の撮像素子3においては、分離部12は、XY面内で2次元の格子状に形成されている。分離部12は、光電変換部11が含まれる半導体基板10の第1領域10aを、半導体領域(第2領域10b)から分離するとともに、半導体領域(第2領域10b)を、複数の部分領域10b1~10b3に分割する。そして、複数の部分領域10b1~10b3のうちの少なくとも1つ(
図8に示した例では、部分領域10b1と部分領域10b2の2つ)のp型またはn型半導体の導電特性は、第1領域10aのp型またはn型半導体の導電特性とは逆である。
【0070】
そして、信号処理回路13も分割されて、一例として信号処理回路13aの場合には、複数の部分領域10b1~10b3のそれぞれに、信号処理回路13a1~13a3として配置されている。なお、信号処理回路13a1~13a3のそれぞれは、上述した
図7(b)に示した配線W1のように、半導体基板10の-Z側の面に複数の部分領域10b1~10b3を跨いで配置される不図示の配線により電気的に接続されている。
【0071】
第4実施形態の撮像素子3においては、第2領域10bに含まれる複数の部分領域10b1~10b3には、その部分領域がp型半導体であるかn型半導体であるかに応じて、それぞれNMOSトランジスタまたはPMOSトランジスタを配置することができる。これにより、信号処理回路13の設計の自由度が増し、例えば、半導体基板10内に、CMOSで構成された信号処理回路13を配置することができる。
【0072】
以上の説明では、第4実施形態の撮像素子3は、第2実施形態の撮像素子3と同様の遮光部17aを備えるものとしたが、第1実施形態の撮像素子3と同様の遮光部17を備えていても良い。
なお、
図8に示した分離部12は、X方向に延在する複数の分離部と、Y方向に延在する複数の分離部とを含む、複数の分離部であるということができる。
【0073】
(第4実施形態の撮像素子の効果)
(8)第4実施形態の撮像素子3は、上述した第1実施形態の撮像素子3の構成に加えて、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bはn型半導体の導電特性を有し、半導体領域(第2領域10b)は、分離部12により複数の部分領域10b1~10b3に分割されている。そして、複数の部分領域10b1~10b3のうちの少なくとも1つは、のp型半導体の導電特性を有する。この構成により、第2領域10bに含まれる複数の部分領域10b1~10b3に、その部分領域がp型半導体であるかn型半導体であるかに応じて、それぞれNMOSトランジスタまたはPMOSトランジスタを配置することができる。これにより、上述した第1実施形態の撮像素子3の効果に加えて、信号処理回路13の設計の自由度が増し、例えば半導体基板10内にCMOSで構成された信号処理回路13を配置することができる。
【0074】
(9)第4実施形態の撮像素子3は、別の観点からは、上述した第1実施形態の撮像素子3の構成に加えて、第1光電変換部11aおよび第2光電変換部11bはn型半導体の導電特性を有し、半導体領域(第2領域10b)は、分離部12により複数の部分領域10b1~10b3に分割されている。そして、複数の部分領域10b1~10b3のうちの少なくとも1つは、のn型半導体の導電特性を有する。この構成により、上述した(8)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第5実施形態の撮像素子)
以下、
図9を参照して、第5実施形態の撮像素子3について説明する。第5実施形態の撮像素子3の構成は上述した第2実施形態の撮像素子3と概ね同様であるが、分離部12の構造が第1実施形態の撮像素子3とは異なっている。以下では、第2実施形態の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0076】
図9は、第5実施形態の撮像素子3における4画素9Q(
図2参照)の部分のXZ断面を拡大して示した断面図であり、上述した第1実施形態の撮像素子3における
図3(b)と同様の図である。なお、
図9のBB切断線における第5実施形態の撮像素子3のXY断面は、
図3(a)に示した第1実施形態の撮像素子3のXY断面図と同様である。
【0077】
第5実施形態の撮像素子3においては、分離部12により分離される半導体基板10の第1領域10aと第2領域10bとは、ともにp型半導体またはともにn型半導体である。
図9に示したとおり、分離部12は半導体基板10の-Z側の表面付近においては、第1領域10aと第2領域10bとを分離していない。そして、第5実施形態の撮像素子3においては、光電変換部11で生成された電荷を蓄積する蓄積部FDを、第1領域10aではなく、第2領域10bに配置している。換言すれば、第2領域10bに配置されている信号処理回路13は、蓄積部FDを含んでいる。
【0078】
上述したとおり、撮像素子3の+Z側からマイクロレンズ14を介して入射した光は、遮光部17aにより遮光されるため、第2領域10bには入射しない。従って、第5実施形態の撮像素子3においては、第2領域10bに配置された蓄積部FDには、+Z側から半導体基板10に入射する光が照射されないため、蓄積部FDにおいて不要な光電変換により発生するノイズが低減される。これにより、ノイズがさらの少ない撮像素子3を実現することができる。
【0079】
(第5実施形態の撮像素子の効果)
(10)第5実施形態の撮像素子3は、上述した第2実施形態の撮像素子3の構成に加えて、半導体領域(第2領域10b)の信号処理回路13は、第1光電変換部11aまたは第2光電変換部11bで生成された電荷が転送される蓄積部FDを含んでいる。この構成により、上述した第2実施形態の撮像素子3の効果に加えて、蓄積部FDにおいて不要な光電変換により発生するノイズが低減され、ノイズがさらの少ない撮像素子3を実現することができる。
【0080】
(第6実施形態の撮像素子)
以下、
図10を参照して、第6実施形態の撮像素子3について説明する。第6実施形態の撮像素子3は、上述した各実施形態または各変形例のいずれかの撮像素子3の構成を含むものである。以下では、上述した各実施形態または各変形例の撮像素子3と同一の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0081】
図10は、第6実施形態の撮像素子3における4画素9Q(
図2参照)の部分のXZ断面を拡大して示した断面図である。第6実施形態の撮像素子3は、上述した各実施形態または各変形例の撮像素子3の構成に加えて、半導体基板10に平行して配置された第2半導体基板20を備えている。第2半導体基板20には、2点鎖線で囲って示した第2信号処理回路23が配置されている。第6実施形態の撮像素子3は、半導体基板10の信号処理回路13の少なくとも一部と、第2半導体基板20に配置されている第2信号処理回路23の少なくとも一部とを電気的に接続する接続部22とをさらに備えている。
【0082】
第2信号処理回路23は、第2半導体基板20に形成されている複数のトランジスタTr3と、一例として複数層の配線W4、W5を含んでいる。トランジスタTr3、配線W4、および配線W5は、相互に電気的な接続が必要な部分を除いて、第2絶縁膜21により覆われている。
【0083】
接続部22は、一例として銅等の金属から成る。接続部22は、不図示の垂直配線(Z方向に延びる配線)により、配線W3または配線W4、および配線W5または配線W6と電気的に接続されている。
【0084】
図10に示した第6実施形態の撮像素子3の構成のうち、絶縁膜18および絶縁膜18よりも+Z側の構成は、一例として、
図3(b)に示した第1実施形態の撮像素子3の構成と同様である。また、
図10のBB切断線における第6実施形態の撮像素子3のXY断面は、
図3(a)に示した第1実施形態の撮像素子3のXY断面図と同様である。
【0085】
第6実施形態の撮像素子3においては、1つの光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を、半導体基板10の信号処理回路13と第2半導体基板20に配置されている、第2信号処理回路23とによって、処理することができる。従って、第2半導体基板20および第2信号処理回路23が無い場合には、半導体基板10の信号処理回路13に配置する回路要素の一部を、第2半導体基板20の第2信号処理回路23に配置することができる。これにより、信号処理回路13のXY面内の大きさを小型化することができる。そして、これにより、画素9のXY面内の大きさを小型化することができ、撮像素子3における画素9の集積度を高めることができる。
【0086】
信号処理回路13と第2信号処理回路23とは、全体として、1つの光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を増幅する増幅回路と、増幅したアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路を構成しても良い。AD変換回路は一例として、スロープ型(傾斜型)のAD変換回路であっても良く、逐次比較型のAD変換回路であっても良い。
【0087】
さらに、信号処理回路13と第2信号処理回路23は、増幅回路に電流を供給する電流源を含んでも良い。撮像素子3に含まれる複数の光電変換部11のそれぞれに対して、個別の増幅回路およびAD変換回路を設けることにより、撮像素子3から、より高速に画像信号を読み出すことができる。
【0088】
この場合、例えば、AD変換回路を構成するトランジスタ等の回路要素の少なくとも一部を、半導体基板10の信号処理回路13内に設けても良い。例えば、AD変換回路のうちのコンパレータ回路を半導体基板10の信号処理回路13内に設けても良い。
あるいは、増幅回路を構成するトランジスタ等の回路要素の少なくとも一部を、第2半導体基板20の第2信号処理回路23に設けても良い。
【0089】
第6実施形態の撮像素子3の構成のうち、絶縁膜18および絶縁膜18よりも+Z側の構成は、上述した第1実施形態の撮像素子3と同様の構成に限られるわけではなく、上述した各実施形態または各変形例の撮像素子3と同様の構成であっても良い。
例えば、第6実施形態の撮像素子3の構成のうち、絶縁膜18および絶縁膜18よりも+Z側の構成を、上述した第3実施形態または第4実施形態の撮像素子3と同様の構成とすると、信号処理回路13内にPMOSトランジスタを設けることができ、回路設計の自由度が一層向上する。
なお、第6実施形態の撮像素子3においては、
図2に示した素子制御部CUについても、半導体基板10と第2半導体基板20とに分割されて配置されていても良い。
【0090】
(第6実施形態の撮像素子の効果)
(11)第6実施形態の撮像素子3は、上述した各実施形態および各変形例のいずれか1つの撮像素子3の構成に加えて、半導体基板10に積層され、信号処理回路13で処理された信号を処理する第2信号処理回路23が設けられる第2半導体基板20を備えている。
この構成により、上述した各実施形態および各変形例のいずれか1つの効果に加えて、各光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を処理する回路の回路要素の一部を、第2半導体基板20の第2信号処理回路23に配置することができる。これにより、信号処理回路13のXY面内の大きさを小型化することができる。
【0091】
なお、上述した第1実施形態の撮像装置1は、撮像素子3として、上述した各実施形態および各変形例のいずれの撮像素子3を備えていても良い。
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1:撮像装置、2:撮像レンズ、3:撮像素子、4:撮像制御部、5:生成部、9:画素、10:半導体基板、10a:第1領域、10b:第2領域(半導体領域)、11a~11d:光電変換部、12,12a~12d:分離部、13a~13d:信号処理回路、TX:転送トランジスタ、FD:蓄積部、W3~W5:配線層、14:マイクロレンズ、15:カラーフィルタ、17,17a:遮光部、20:第2半導体基板、22:接続部、23:第2信号処理回路