(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014252
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】インプラント発注装置、インプラント発注方法及びインプラント受発注システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20120101AFI20220112BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20220112BHJP
【FI】
G06Q30/06 300
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116480
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】520221143
【氏名又は名称】iSurgery株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049BB58
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができるものとする。
【解決手段】
インプラント発注装置10が、複数のインプラントの情報を記憶するインプラント情報記憶部11と、患者情報を記憶する患者情報記憶部12と、インプラント情報を表示するインプラント情報表示部13と、手術において採用される可能性のあるインプラントのサイズを予測するサイズ予測部14と、通信ネットワークNを介して発注情報を送信する発注情報送信部15と、を有するものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインプラントの情報を記憶するインプラント情報記憶部と、
患者の性別および身長を含む患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するインプラント情報表示部と、
前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するサイズ予測部と、
前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークを介してインプラント受注装置へ送信する発注情報送信部と、を有するインプラント発注装置。
【請求項2】
前記サイズ予測部は、過去の手術で採用されたインプラントの種類及びサイズのデータと、前記過去の手術を受けた患者の性別および身長を含む患者データを教師データとして、機械学習により生成した学習モデルを用いて、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測する請求項1に記載のインプラント発注装置。
【請求項3】
前記患者情報記憶部に記憶される患者情報に前記患者の患部画像を更に含み、
前記患者データに前記過去の手術を受けた患者の患部画像データを更に含む請求項2に記載のインプラント発注装置。
【請求項4】
前記発注情報送信部が送信した前記発注情報に含まれる前記インプラントの種類と、手術で採用された前記インプラントのサイズを特定する情報とを、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報と関連付けて、又は、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報と共に、記憶する採用情報記憶部を更に有する請求項1又は2に記載のインプラント発注装置。
【請求項5】
インプラント情報記憶部と、患者情報記憶部と、インプラント情報表示部と、サイズ予測部と、発注情報送信部とを有するインプラント発注装置が実行するインプラント発注方法であって、
前記インプラント情報記憶部が、複数のインプラントの情報を記憶するステップと、
前記患者情報記憶部が、患者の性別および身長を含む患者情報を記憶するステップと、
前記インプラント情報表示部が、前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するステップと、
前記サイズ予測部が、前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するステップと、
前記発注情報送信部が、前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークを介してインプラント受注装置へ送信するステップと、を含むインプラント発注方法。
【請求項6】
複数のインプラントの情報を記憶するインプラント情報記憶部と、
患者の性別および身長を含む患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するインプラント情報表示部と、
前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するサイズ予測部と、
前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む受注情報を表示する受注情報表示部と、を有するインプラント受発注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科の手術に用いられるインプラントの発注を支援するインプラント発注装置、インプラント発注方法及びインプラント受発注システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整形外科の手術に用いられるインプラントは、手術の担当医、看護師等が、インプラントのメーカー、卸売業者等に発注し、メーカー又は卸売業者から病院や診療所に納入されている。
【0003】
整形外科に用いられるインプラントは、取り付ける身体の部位等に応じて様々な種類のものがあり、また、インプラントのサイズも患者の体格等に応じて様々である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発注の手続においては、例えば、患者に外傷がある等、時間的制約があるために術前計画を十分に作成できない場合であっても、手術において必要なインプラントが納入されていないことは許されないため、必要十分な数を超える様々なサイズのインプラントが納入されている。手術で採用されるインプラントは納入されたインプラントの一部であり、大部分のインプラントが未使用のまま返却されている。
【0005】
そこで、本願発明は、必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができるインプラント発注装置、インプラント発注方法及びインプラント受発注システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明のインプラント発注装置は、
複数のインプラントの情報を記憶するインプラント情報記憶部と、
患者の性別および身長を含む患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するインプラント情報表示部と、
前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するサイズ予測部と、
前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークを介してインプラント受注装置へ送信する発注情報送信部と、を有するものとする。
【0007】
本願発明のインプラント発注方法は、インプラント情報記憶部と、患者情報記憶部と、インプラント情報表示部と、サイズ予測部と、発注情報送信部とを有するインプラント発注装置が実行するインプラント発注方法であって、
前記インプラント情報記憶部が、複数のインプラントの情報を記憶するステップと、
前記患者情報記憶部が、患者の性別および身長を含む患者情報を記憶するステップと、
前記インプラント情報表示部が、前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するステップと、
前記サイズ予測部が、前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するステップと、
前記発注情報送信部が、前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークを介してインプラント受注装置へ送信するステップと、を含むものとする。
【0008】
本願のインプラント受発注システムは、
複数のインプラントの情報を記憶するインプラント情報記憶部と、
患者の性別および身長を含む患者情報を記憶する患者情報記憶部と、
前記インプラント情報記憶部に記憶された複数のインプラントの情報を表示するインプラント情報表示部と、
前記インプラント情報表示部が表示した前記複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、前記患者情報記憶部に記憶された前記患者情報に基づき、手術において採用される可能性のある前記インプラントのサイズの範囲を予測するサイズ予測部と、
前記発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、前記サイズ予測部が手術において採用される可能性があると予測した前記インプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む受注情報を表示する受注情報表示部と、を有するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができるインプラント発注装置、インプラント発注方法及びインプラント受発注システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願の実施形態に係るインプラント受発注システムを示すブロック図である。
【
図2】本願の実施形態に係るインプラント受発注システムに用いられる学習モデルを生成するためのニューラルネットワークの例を示す図である。
【
図3】本願の実施形態に係るインプラント発注方法を示すフローチャートである。
【
図4】本願の実施形態に係るインプラント受発注システムの実施例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本願の実施形態に係るインプラント受発注システム100を示すブロック図である。インプラント受発注システム100は、インプラント発注装置10と、インプラント受注装置20とを有する。
【0012】
<インプラント発注装置>
インプラント発注装置10は、インプラント情報記憶部11と、患者情報記憶部12と、インプラント情報表示部13と、サイズ予測部14と、発注情報送信部15とを有する。インプラント発注装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバー装置、タブレット端末装置、スマートフォン、携帯電話等の電子計算機、又は、互いに通信可能に接続されたこれらの組み合せから構成することができる。
【0013】
インプラント情報記憶部11は、整形外科の手術において使用される複数のインプラントの情報を記憶する。インプラントの情報としては、インプラントの品番、名称、サイズ、材質、メーカー、対象となる身体の部位、価格などがある。インプラント情報記憶部11へのインプラントに関する情報の入力は、例えば、インプラント発注装置10の管理者がインプラントメーカーから情報を入手し、公知の入力手段を用いて行うことができる。公知の入力手段としては、例えば、キーボード、マウス等の操作、タッチパネルによるフリック入力、音声入力、記憶媒体からのファイルの複製、ネットワークからのダウンロード等を採用することができる。インプラント情報記憶部11は、ハードディスクドライブ、CD-ROM、CD-R、MO、DVD、USBメモリ、フラッシュメモリ、フロッピーディスクなどの公知の記憶媒体から構成することができる。
【0014】
患者情報記憶部12は、性別および身長を含む患者情報を記憶する。その他の患者情報としては、例えば、患者の年齢、体重、手術の日時、患部画像、術前計画等がある。患部画像としては、例えば、超音波(エコー)検査、X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(核磁気共鳴画像)検査等により撮影したものが考えられる。患者情報記憶部12への患者情報の入力は、例えば、医師、看護師等の発注者が、公知の入力手段を用いて行うことができる。患者情報記憶部12への患部画像の入力は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介した検査装置からの入力、記憶媒体を介した入力、ディスプレイに表示された患部画像の撮像装置(カメラ)による撮影等、公知の入力手段を用いることができる。患者情報記憶部12は、インプラント情報記憶部11と同様に公知の記憶媒体から構成することができる。インプラント情報記憶部11と患者情報記憶部12は、1つの記憶媒体から構成しても良いし、それぞれ1つの記憶媒体から構成しても良いし、それぞれ複数の記憶媒体から構成しても良い。
【0015】
インプラント情報表示部13は、インプラント情報記憶部11に記憶された複数のインプラントの情報を表示する。インプラント情報表示部13は、公知のディスプレイ、モニター、プロジェクタ、プリンタ等の公知の表示装置から構成することができる。インプラント情報表示部13は、複数のインプラントの中から手術において使用するインプラントの種類を、医師等の発注者が選択可能に、インプラントの情報を表示することが好ましい。インプラントの種類としては、例えば、人工関節、プレート、髄内釘などがある。例えば、同じ人工関節であっても、メーカー、名称、使用する部位が異なれば、別の種類のインプラントとする。
【0016】
サイズ予測部14は、インプラント情報表示部13が表示した複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、患者情報記憶部12に記憶された患者情報に基づき、手術において採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲を予測する。インプラント情報表示部13は、サイズ予測部14が予測したインプラントのサイズの範囲を表示することが好ましい。サイズ予測部14は、例えば、サイズ予測のための命令を記憶するメモリと、その命令に従ってインプラントのサイズの範囲を予測する演算を実行する中央処理装置(CPU)とから構成することができる。具体的な予測方法については後述する。
【0017】
発注情報送信部15は、発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、サイズ予測部14が手術において採用される可能性があると予測したインプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークNを介してインプラント受注装置20へ送信する。発注情報送信部15は、サイズ予測部14が手術において採用される可能性があると予測したインプラントのサイズの範囲に加えて、発注者がインプラント発注装置10を操作して選択したインプラントのサイズを特定する情報もインプラント受注装置20へ送信しても良い。また、発注情報送信部15は、サイズ予測部14が手術において採用される可能性があると予測したインプラントのサイズの範囲の中から、発注者がインプラント発生装置10を操作して除外したインプラントのサイズを除いて、残りのインプラントのサイズを特定する情報をインプラント受注装置20へ送信しても良い。発注情報送信部15としては、公知の通信インターフェースを用いることができる。インプラントの種類を特定する情報としては、インプラント情報記憶部11にインプラントの情報として記憶されたものの中から、任意のもの、又は、任意の組み合わせを採用することができる。発注情報送信部15が送信する発注情報には、例えば、インプラントを特定する情報を送信した日時、発注者に関する情報、担当医に関する情報、納入日、手術予定日等の情報などを含めても良い。通信ネットワークNとしては、例えば、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)等を用いることができる。インプラント発注装置10は、発注情報送信部15が送信した発注情報を記憶する不図示の発注情報記憶部を有することが好ましい。発注情報記憶部は、インプラント情報記憶部11と同様に、公知の記憶媒体から構成することができる。
【0018】
以上に説明したインプラント発注装置10によれば、必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができる。また、発注者と受注者との間のコミュニケーションエラーの発生を防ぐことができる。
【0019】
サイズ予測部14は、過去の手術で採用されたインプラントの種類及びサイズのデータと、過去の手術を受けた患者の性別および身長を含む患者データを教師データとして機械学習により生成した学習モデルを用いて、採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲を算出することが好ましい。これにより、医師、看護師等が手術に必要なインプラントのサイズを検討することなく、患者情報をインプラント発注装置10に入力することで、手術に必要なインプラントのサイズの範囲を予測し、発注することが可能となる。患者の性別および身長とインプラントのサイズの間には相関関係があり、女性よりも男性の方がインプラントのサイズが大きくなりやすく、身長が高い方がインプラントのサイズが大きくなりやすい。患者の年齢、体重については、交絡因子として予測の精度向上に利用することができる。
【0020】
学習モデルは、例えば、
図2に示すニューラルネットワーク30を用いて生成することができる。ニューラルネットワーク30は、入力層31と、中間層32と、出力層33とを有する。中間層32の数は2つに限られない。入力層31、中間層32、出力層33は、それぞれ円で示すノード34で構成され、入力層31、中間層32、出力層33の各ノード34は隣り合う層のノード34とシナプス35で結ばれる。入力層31には、過去に手術を受けた患者の患者情報とインプラントの種類が入力され、出力層33からは、手術において採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲が出力される。出力層33から出力されるインプラントのサイズの範囲が、過去の手術で採用されたインプラントのサイズの範囲に近づくようにシナプス35の重みを調整する機械学習を行うことで、学習モデルを生成することができる。機械学習は、TensorFlow(登録商標)等の既存のソフトウェアによって行うことができる。なお、学習モデルは、更に、インプラントの各サイズについて、手術において採用される確率を算出するものとしても良い。この場合、入力層31には、過去に手術を受けた患者の患者情報とインプラントの種類及びサイズが入力され、出力層33からは、入力層31に入力されたインプラントのサイズが手術において採用される確率が出力される。出力層33から出力される確率が、過去の手術における採用確率に近づくようにシナプス35の重みを調整する機械学習を行うことで、学習モデルを生成することができる。
【0021】
ただし、サイズ予測部14によるサイズの予測は、学習モデルを用いたものに限られない。例えば、サイズ予測部14が、過去に手術を受けた患者の患者データから、手術で採用するインプラントの種類と手術を受ける患者の性別が一致し、身長の差が所定の範囲内にある過去の患者に採用されたインプラントのサイズの範囲と所定の付加範囲内にあるサイズを、採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲として予測しても良い。例えば、手術で採用するインプラントの種類と手術を受ける患者の性別が一致し、身長の差が所定の範囲内にある過去の患者の手術で採用されたインプラントのサイズの範囲が50mmから60mmであれば、これに対して上下10%の付加範囲も含めて、45mmから66mmのサイズのインプラントが採用される可能性があると予測するものとしても良い。手術で採用するインプラントの種類と手術を受ける患者の性別が一致し、身長の差が所定の範囲内にある過去の患者のデータの数が少ない場合には付加範囲をより大きくし、当該過去の患者のデータの数が多い場合には付加範囲を小さくすることもできる。付加範囲を定めることができる点は、学習モデルを使用した場合も同様である。
【0022】
学習モデルによってインプラントのサイズの範囲を予測する場合、患者情報記憶部12に記憶される患者情報に患者の患部画像を更に含み、教師データとしての患者データに過去の手術を受けた患者の患部画像データを更に含むことが好ましい。これにより、患者情報と患部画像データを学習モデルの生成に利用し、患者情報と患部画像に基づくインプラントのサイズの範囲の予測が可能となり、インプラントのサイズの範囲の予測精度を高めることができる。
【0023】
インプラント発注装置10は、発注情報送信部15が送信した発注情報に含まれるインプラントの種類を特定する情報と、手術で採用されたインプラントのサイズを特定する情報とを、患者情報記憶部12に記憶された患者情報と関連付けて、又は、当該患者情報と共に、記憶する採用情報記憶部16を更に有することが好ましい。これにより、サイズ予測部14によるサイズ予測の精度を高めるために使用可能なデータを蓄積することができる。採用情報記憶部16は、インプラント情報記憶部11と同様に公知の記憶媒体から構成することができる。インプラント情報記憶部11、患者情報記憶部12、及び、採用情報記憶部16は、1つの記憶媒体から構成しても良いし、それぞれ1つの記憶媒体から構成しても良いし、それぞれ複数の記憶媒体から構成しても良い。
【0024】
<インプラント発注方法>
次に、インプラント発注装置10を使用したインプラントの発注方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るインプラント発注方法を示すフローチャートである。インプラント発注方法は、上述のインプラント発注装置10によって実行され、以下のステップを含む。
【0025】
ステップS41において、インプラント情報記憶部11が、複数のインプラントの情報を記憶する。ステップS42において、患者情報記憶部12が、患者の性別および身長を含む患者情報を記憶する。ステップS43において、インプラント情報表示部13が、インプラント情報記憶部11に記憶された複数のインプラントの情報を表示する。ステップS44において、サイズ予測部14が、インプラント情報表示部13が表示した複数のインプラントのうち発注者によって選択されたインプラントの種類について、患者情報記憶部12に記憶された患者情報に基づき、手術において採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲を予測する。ステップS45において、発注情報送信部15が、発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、サイズ予測部14が手術において採用される可能性があると予測したインプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む発注情報を、通信ネットワークNを介してインプラント受注装置20へ送信する。
【0026】
以上に説明したインプラント発注方法によれば、必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができる。また、発注者と受注者との間のコミュニケーションエラーの発生を防ぐことができる。
【0027】
<インプラント受発注システム>
次にインプラント受発注システム100について説明する。インプラント受発注システム100は、
図1に示すように、上述の情報記憶部11と、上述の患者情報記憶部12と、上述のインプラント情報表示部13と、上述のサイズ予測部14と、受注情報表示部23と、を有する。受注情報表示部23は、発注者によって選択されたインプラントの種類を特定する情報と、サイズ予測部14が手術において採用される可能性があると予測したインプラントのサイズの範囲を特定する情報とを含む受注情報を表示する。受注情報表示部23は、受注情報受信部21及び受注情報記憶部22と共に、インプラント受注装置20に設けることができる。受注情報表示部23は、インプラント情報表示部13と同様に、公知の表示装置から構成することができる。
【0028】
以上に説明したインプラント受発注システム100によれば、必要十分なインプラントの発注を容易に行うことができる。また、発注者と受注者との間のコミュニケーションエラーの発生を防ぐことができる。
【0029】
図4は、本願の実施形態に係るインプラント受発注システム100の実施例を説明するためのブロック図である。
図4は、複数の発注者端末装置2、サーバー装置3、複数の受注者端末装置4、及び、これらを接続する通信ネットワークNを示している。発注者端末装置2及び受注者端末装置4としては、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話等を用いることができる。サーバー装置3は、
図4に示すように、単一のサーバー装置であっても良いが、複数のサーバー装置から構成されても良い。
【0030】
インプラント発注装置10は、サーバー装置3によって構成されることが好ましいが、発注者端末装置2によって構成されても良いし、発注者端末装置2とサーバー装置3とによって構成されても良いし、発注者端末装置2とサーバー装置3と受注者端末装置4とによって構成されても良い。発注者端末装置2、サーバー装置3、受注者端末装置4の数もそれぞれ1つに限られない。つまり、インプラント発注装置10は、1つの筐体に収容された装置として構成しても良いが、通信ネットワークNを介して相互に接続された複数の装置、あるいは、無線通信又は有線通信によって相互に接続された複数の装置によって構成しても良い。具体的には、インプラント情報記憶部11、患者情報記憶部12、インプラント情報表示部13、サイズ予測部14、発注情報送信部15、及び、採用情報記憶部16を、通信ネットワークN又は無線通信又は有線通信によって接続された装置のいずれかに配置すれば良い。したがって、本願発明の実施例としては様々な態様が考えられるが、ここでは、発注者端末装置2とサーバー装置3をインプラント発注装置10とした第1実施例と、発注者端末装置2をインプラント発注装置10とした第2実施例と、について説明する。
【0031】
<第1実施例>
第1実施例として、
図4に示す発注者端末装置2とサーバー装置3をインプラント発注装置10とした例について説明する。本第1実施例においては、
図1に示すインプラント情報表示部13が発注者端末装置2に設けられ、インプラント情報記憶部11と、患者情報記憶部12と、サイズ予測部14と、発注情報送信部15と、採用情報記憶部16とがサーバー装置3に設けられる。
【0032】
サーバー装置3のインプラント情報記憶部11には、インプラントメーカーなどから提供されたインプラントの情報が記憶される。医師、看護師等の各発注者は、発注者端末装置2にインストールされたアプリケーションソフトウェアの所定のログイン画面、または、ウェブブラウザ上に表示された所定のログイン画面から、サーバー装置3によって割り当てられた識別符号によりシステムにログインする。各発注者の識別符号はサーバー装置3に構築された発注者データベースに記憶され、管理される。識別符号としては、ID及びパスワードを採用することができる。
【0033】
発注者が患者情報を発注者端末装置2に入力し、通信ネットワークNを介してサーバー装置3へ送信すると、サーバー装置3が患者情報を患者情報記憶部12に記憶する。発注者端末装置2は、発注者の操作に基づいて、通信ネットワークNを介してサーバー装置3のインプラント情報記憶部11からインプラントの情報を受信し、インプラント情報表示部13にインプラントの情報を表示する。発注者が、インプラント情報表示部13に表示されたインプラントの情報から、手術において使用するインプラントの種類を選択すると、発注者端末装置2は、選択したインプラントを特定する情報を、通信ネットワークNを介してサーバー装置3へ送信する。サーバー装置3のサイズ予測部14は、発注者が選択したインプラントの種類について、患者情報記憶部12に記憶された患者情報に基づいて、採用される可能性のあるサイズを予測する。サーバー装置3は、発注者が選択したインプラントの種類を特定する情報と、サイズ予測部14が採用される可能性があると予測したサイズの範囲を特定する情報とを発注情報として、通信ネットワークNを介して受注者端末装置4へ送信する。
【0034】
インプラントメーカーの担当者、卸売業者の担当者等は、受注者端末装置4にインストールされたアプリケーションソフトウェアのログイン画面、又は、ウェブブラウザ上に表示されたログイン画面から、サーバー装置3によって割り当てられた識別符号によりシステムにログインする。各受注者の識別符号はサーバー装置3に構築された受注者データベースに記憶され、管理される。サーバー装置3が発注情報を送信する先の受注者端末装置4は、発注者の識別符号と関連付けられた受注者の識別符号によりシステムにログインした受注者端末装置4とすることができる。
【0035】
受注者端末装置4は、
図1に示すインプラント受注装置20としての役割を果たす。インプラント受注装置20は、受注情報受信部21と、受注情報記憶部22と、受注情報表示部23とを有する。受注情報受信部21は、サーバー装置3によって送信された発注情報を受注情報として受信する。受注情報受信部21としては、公知の通信インターフェースを用いることができる。受注情報記憶部22は受注情報を記憶する。受注情報記憶部22は、インプラント情報記憶部11と同様に、公知の記憶媒体から構成することができる。受注情報表示部23は受注情報を表示する。受注者は、受注情報表示部23に表示された受注情報に基づいて、インプラントを納入することができる。
【0036】
手術の後、システムにログインした発注者が、手術で採用したインプラントのサイズを発注者端末装置2に入力すると、発注者端末装置2は、採用されたインプラントのサイズを特定する情報を、通信ネットワークNを介してサーバー装置3へ送信する。サーバー装置3の採用情報記憶部16は、受信したインプラントのサイズを特定する情報を、患者情報記憶部12に記憶された患者情報と関連付けて、又は、当該患者情報と共に、記憶する。
【0037】
<第2実施例>
第2実施例として、発注者端末装置2をインプラント発注装置10とした例について説明する。
【0038】
発注者端末装置2に所定のアプリケーションソフトウェアがインストールされ、発注者端末装置2が、インプラント情報記憶部11、患者情報記憶部12、インプラント情報表示部13、サイズ予測部14、発注情報送信部15、及び、採用情報記憶部16としての役割を果たす。
【0039】
インプラント情報記憶部11は複数のインプラントを特定する情報を記憶する。発注者端末装置2は、発注者の操作に基づき、患者情報を患者情報記憶部12に記憶する。インプラント情報表示部13は、発注者による発注者端末装置2の操作に基づき、インプラント情報記憶部11に記憶されたインプラントの情報を表示する。サイズ予測部14は、患者情報記憶部12に記憶された患者情報から、手術において採用される可能性のあるインプラントのサイズの範囲を予測する。発注情報送信部15は、発注者による発注者端末装置2の操作に基づき、採用確率が所定の範囲内にあるインプラントを特定する情報を、通信ネットワークNを介してインプラント受注装置20としての受注者端末装置4へ送信する。
【0040】
受注者端末装置4への送信は、電子メール、チャット等の公知のコミュニケーションツールを用いることができる。発注情報は、インプラント受注装置20の受注情報受信部21によって受注情報として受信され、受注情報記憶部22に記憶される。受注情報記憶部22に記憶された受注情報は、受注情報表示部23によって表示される。受注者は、受注情報表示部23に表示された情報に基づいて、インプラントを納入することができる。
【0041】
手術の後、発注者は、手術で採用したインプラントを特定する情報を発注者端末装置2に入力する。発注者端末装置2の採用情報記憶部16は、入力されたインプラントのサイズを特定する情報を記憶する。採用情報記憶部16に記憶されたインプラントのサイズを特定する情報は、サイズ予測部14によるサイズ予測の精度を高めるために用いることができる。
【0042】
以上、具体的な実施形態を示して本願発明の実施形態を説明したが、本願発明はこれに限られるものではなく、種々の変更が可能である。なお、上記説明においてインプラント情報記憶部、患者情報記憶部など、各装置の部分を表す用語は、インプラント情報記憶手段、患者情報記憶手段など、手段を表す用語に置き換えることができる。また、インプラント発注装置、インプラント受注装置は、インプラント発注システム、インプラント受注システムと表すことができる。また、上述のインプラント発注方法は、
図3に示すものに限られず、上述のインプラント発注装置の好ましい態様のいずれかを用いて発注する方法とすることもできる。また、上述のインプラント受発注システムは、上述のインプラント発注装置の好ましい態様を備えることができる。
【符号の説明】
【0043】
2 発注者端末装置
3 サーバー装置
4 受注者端末装置
10 インプラント発注装置
11 インプラント情報記憶部
12 患者情報記憶部
13 インプラント情報表示部
14 サイズ予測部
15 発注情報送信部
16 採用情報記憶部
20 インプラント受注装置
21 受注情報受信部
22 受注情報記憶部
23 受注情報表示部
30 ニューラルネットワーク
31 入力層
32 中間層
33 出力層
34 ノード
35 シナプス
100 インプラント受発注システム
N 通信ネットワーク