(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145133
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】給湯器の故障推定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20220926BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
H04M11/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046417
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】玉井 淳基
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 福郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】牟田 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】長江 悠介
【テーマコード(参考)】
5K201
5L049
【Fターム(参考)】
5K201AA02
5K201BA02
5K201CB11
5K201CC01
5K201CC04
5K201CC09
5K201DC02
5K201DC04
5K201EC06
5K201ED08
5K201FA08
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多種多様の給湯器に対して適切なタイミングで部品交換を促せる給湯器の故障推定システムを提供する。
【解決手段】給湯器の故障推定システムにおいて、管理コンピュータ2は、複数の給湯器の夫々の使用環境を記憶するデータ格納部22と、複数の給湯器の夫々からデータ通信網DNを介して基本情報データ及び運転情報データを取得するデータ取得部21と、複数の給湯器の夫々の仕様情報と、診断対象の給湯器1から取得した仕様情報に対応するグループデータに設定された基準値と、診断対象の給湯器1から取得した運転情報データと、を比較することによって診断対象の給湯器1のメンテナンスを診断する診断部23Aと、診断部の診断結果に基づいて給湯器1のメンテナンス時期を報知する報知部24と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各家庭に設置された給湯器の故障推定システムであって、
複数の前記給湯器の夫々の仕様情報及び使用環境を記憶するデータ格納部と、
前記複数の給湯器の夫々からデータ通信網を介して、前記仕様情報と、前記給湯器の運転状態に関する運転情報データと、を取得するデータ取得部と、
前記データ格納部に格納された前記仕様情報と前記使用環境との少なくとも一方に基づいて複数のグループデータを生成するグループデータ生成部と、
診断対象の前記給湯器から取得した前記仕様情報に対応する前記グループデータに設定された基準値と、前記診断対象の給湯器から取得した前記運転情報データと、を比較することによって前記診断対象の給湯器のメンテナンスを診断する診断部と、
前記診断部の診断結果に基づいて前記給湯器のメンテナンス時期を報知する報知部と、が備えられている給湯器の故障推定システム。
【請求項2】
前記複数のグループデータの夫々は、二次元以上の配列テーブルによって構成され、
複数の前記基準値が、前記使用環境に応じて区分けされた状態で前記配列テーブルに配列され、
前記診断部は、前記データ通信網を介して前記給湯器から取得した基本情報データに基づいて前記給湯器の前記使用環境を特定し、特定された前記使用環境に応じた前記基準値を前記複数の基準値から選択するように構成されている請求項1に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項3】
前記診断部は、前記運転情報データの値が前記基準値を超える時期を前記メンテナンス時期と推定するように構成されている請求項1または2に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項4】
前記報知部は、前記メンテナンス時期が作業者の繁忙期と重なる場合、前記メンテナンス時期を前記繁忙期よりも前の時期にずらして報知するように構成されている請求項3に記載の給湯器の故障推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器の故障推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2に示されるように、IoTを活用した給湯器の管理システムが知られている。特許文献1に開示された給湯器のデータ送信システムでは、多数の給湯器の夫々からデータがクラウドシステムに送信され、クラウドシステムに送信されたデータのAI解析によって給湯器の故障推定が行われる。また、特許文献2に開示された温水システムでは、給湯器(文献では「給湯装置」)の部品ごとの使用限度が外部サーバに予め記憶され、外部サーバは使用限度間近の交換部品を自動的に発注する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-120505号
【特許文献2】特開2020-52709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、世の中には多種多様の給湯器が出回っており、給湯器の中には設置台数が少なくてAI解析のためのデータを十分に取得できない機種の物も存在する。また、特許文献2に開示された外部サーバの構成であると、例えば一度に大量販売された大規模住宅の夫々に給湯器が設置されている場合、使用限度を迎える部品の交換タイミングが多数の給湯器で重なることが考えられる。特に、交換タイミングが作業者の繁忙期と重なってしまうと、実際に給湯器が故障するまで給湯器のメンテナンスが遅れてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、多種多様の給湯器に対して適切なタイミングで部品交換を促せる給湯器の故障推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各家庭に設置された給湯器の故障推定システムであって、複数の前記給湯器の夫々の仕様情報及び使用環境を記憶するデータ格納部と、前記複数の給湯器の夫々からデータ通信網を介して、前記仕様情報と、前記給湯器の運転状態に関する運転情報データと、を取得するデータ取得部と、前記データ格納部に格納された前記仕様情報と前記使用環境との少なくとも一方に基づいて複数のグループデータを生成するグループデータ生成部と、診断対象の前記給湯器から取得した前記仕様情報に対応する前記グループデータに設定された基準値と、前記診断対象の給湯器から取得した前記運転情報データと、を比較することによって前記診断対象の給湯器のメンテナンスを診断する診断部と、前記診断部の診断結果に基づいて前記給湯器のメンテナンス時期を報知する報知部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
給湯器の寿命は、仕様や使用環境によって大きく変化する場合が多いが、仕様や使用環境が共通する給湯器同士であれば、機種の違いがあっても似たような寿命になる場合も多いものと考えられる。本発明によると、給湯器の仕様情報と使用環境とに基づいて複数のグループデータが生成され、複数のグループデータの夫々に基準値が設定されている。このことから、メーカーや機種の異なる給湯器同士であっても、仕様情報と使用環境とが共通する給湯器同士を一つのグループデータに含ませることが可能となる。そして、給湯器から送られてくる基本情報データに含まれる仕様情報に対応するグループデータが選択され、選択されたグループデータに設定された基準値と、給湯器から送られてくる運転情報データと、が比較されることによって、給湯器の故障診断が行われる。このことから、設置台数が少なくてAI解析のためのデータを十分に取得できない機種の給湯器であっても、仕様や使用環境が共通する給湯器と合わせて部品等の使用限度を診断できる。つまり、本発明であれば、給湯器の仕様や使用環境に合わせて適切なメンテナンス時期が報知部によって報知される。また、例えば一度に大量販売された大規模住宅の夫々に給湯器が設置されている場合であっても、使用環境が異なれば、メンテナンス時期が異なる。このため、本発明であれば、使用限度を迎える部品の交換タイミングが多数の給湯器で重なる虞が軽減される。これにより、多種多様の給湯器に対して適切なタイミングで部品交換を促せる給湯器の故障推定システムが実現される。
【0008】
本発明において、前記複数のグループデータの夫々は、二次元以上の配列テーブルによって構成され、複数の前記基準値が、前記使用環境に応じて区分けされた状態で前記配列テーブルに配列され、前記診断部は、前記データ通信網を介して前記給湯器から取得した基本情報データに基づいて前記給湯器の前記使用環境を特定し、特定された前記使用環境に応じた前記基準値を前記複数の基準値から選択するように構成されていると好適である。
【0009】
給湯器の使用環境が異なると、給湯器の部品等の寿命も異なるため、本構成であれば、使用環境に応じて基準値を多種多様に設定できるため、使用環境に応じて部品等の使用限度をきめ細かく診断できる。
【0010】
本発明において、前記診断部は、前記運転情報データの値が前記基準値を超える時期を前記メンテナンス時期と推定するように構成されていると好適である。
【0011】
本構成によって、給湯器のメンテナンス時期が適切に予測され、例えば作業者は交換部品の手配を適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0012】
本発明において、前記報知部は、前記メンテナンス時期が作業者の繁忙期と重なる場合、前記メンテナンス時期を前記繁忙期よりも前の時期にずらして報知するように構成されていると好適である。
【0013】
本構成によって、メンテナンス時期が繁忙期と重なることが回避され、実際に給湯器が故障するまで給湯器のメンテナンスが遅れてしまう虞が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】各世帯に配備された給湯器と管理コンピュータとの接続を示す図である。
【
図2】給湯器の故障推定システムを示すブロック図である。
【
図3】グループデータ生成部によって生成される配列テーブルを示す図である。
【
図4】給湯器の故障推定の処理を示すフローチャート図である。
【
図5】燃焼ファンの回転数の経時的な変化に基づいて故障推定を行うグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
故障推定システムは、給湯器1におけるメンテナンス時期を推定する。故障推定システムは、例えば、ガスサービスセンタに設置されている管理コンピュータ2に構築されている。
図1に示されるように、戸建住宅や集合住宅の夫々に給湯器1が配備されている。なお、
図1では、集合住宅における給湯器1が図示されていないが、集合住宅の各世帯に給湯器1が配備されている。各世帯に配備された給湯器1の夫々の制御ユニットと、管理コンピュータ2と、はインターネットや公衆回線などからなるデータ通信網DNを通じて接続されている。これにより、給湯器1の制御ユニットと管理コンピュータ2との間で種々の情報が送受信可能である。
【0016】
図2に示されるように、管理コンピュータ2に、データ取得部21と、データ格納部22と、故障診断ユニット23と、報知部24と、が備えられている。
【0017】
複数の給湯器1の夫々の運転状態データ及び仕様情報が、給湯器1からデータ通信網DNを介してデータ取得部21へ送られる。つまり、データ取得部21は、複数の給湯器1の夫々からデータ通信網DNを介して、給湯器1の仕様情報と、給湯器1の運転状態に関する運転情報データと、を取得する。給湯器1からデータ取得部21へ送られる頻度は、一時間に一回であっても良いし、一日に一回であっても良い。そして、運転状態データは、運転状態データ群の一部としてデータ格納部22に格納される。データ格納部22に格納されるデータに、運転状態データ群と、基本情報データ群と、が含まれている。
【0018】
運転状態データ群は、給湯器1からデータ通信網DNを介してデータ取得部21へ送られた運転状態データの集合体である。運転状態データ群に、主に給湯器1の故障の予兆となるデータが含まれる。運転状態データ群に、給湯器1の累積使用時間、給湯器1の累積給湯使用量、給湯器1の燃焼ファンの回転数(瞬時値)、給湯器1の燃焼ファンの電流値(瞬時値)、風呂ポンプの回転数(瞬時値)、制御ユニットにおけるPWM比(瞬時値)、給湯器1に備えられたサーミスタの温度(瞬時値)、等の時系列データが含まれる。なお、給湯器1の燃焼ファンは、給湯器1のガスバーナーに燃焼用の空気を供給するファンである。また、給湯器1が、例えば床暖房機能と浴室乾燥暖房機能とを有する場合、給湯器1の使用時間は、例えば、給湯用バーナーの使用時間と、床暖房用バーナーの使用時間と、浴室乾燥暖房用バーナーの使用時間と、に分けられても良い。給湯器1が床暖房機能や浴室乾燥暖房機能を有する場合、熱媒用ポンプの回転数が運転状態データ群に含まれても良い。
【0019】
基本情報データ群は、給湯器1の仕様情報、給湯器1の使用環境等である。給湯器1の仕様情報は、例えば給湯器1の出湯号数、構造(例えば1缶2水、2缶3水等)、機能(給湯・ふろ自動・追い炊き・床暖房・浴室暖房)、燃料の種類(13A、LPG、灯油等)、排気バリエーション、潜熱回収機構の有無、ドレン排水方式の有無、メーカー、製造年月日、等である。給湯器1の使用環境は、例えば給湯器1の設置年月日(使用年数)、給湯器1が使用される家庭の家族構成、世帯人数、住宅の延床面積、住宅の断熱性能及び機密性能、住宅の区分(戸建住宅/集合住宅、新築物件/既築物件、所有物件/賃貸物件等の区分)、給湯器1の使用される地域情報等である。地域情報は、
図1に地域A,B,Cで例示される給湯器1の設置場所、給湯器1の設置場所における水道水の水質情報、給湯器1の設置場所における海岸からの距離等である。水質情報に、塩素濃度分布、地域ごとの水質要因による不具合の有無、水素イオン指数、不純物濃度等が含まれる。このように、データ格納部22は、複数の給湯器1の夫々の使用環境を記憶する。加えて、基本情報データ群には、複数の給湯器1の夫々のメンテナンス履歴(例えば部品の交換履歴等)も記憶される。
【0020】
基本情報データ群は、データ通信網DNを介してデータ取得部21で取得される仕様情報と、データ通信網DNを介さずに取得されたオフラインデータと、の集合体である。オフラインデータは、例えば、給湯器1の設置時に作業者が取得した情報であっても良いし、ユーザーが記入したアンケート用紙から取得した情報であっても良い。
【0021】
故障診断ユニット23に、診断部23Aとグループデータ生成部23Bとが備えられている。故障診断ユニット23は、グループデータ生成部23Bによって生成されたグループデータ(本実施形態では配列テーブル)に基づいて、給湯器1から取得した運転状態データが故障の基準に達しているかどうかを診断する。
【0022】
グループデータ生成部23Bは、データ格納部22に格納されるデータに基づいて、
図3に示されるような複数の配列テーブルを作成し、当該配列テーブルを記憶する。即ち、グループデータ生成部23Bは、複数の給湯器1の夫々の仕様情報と、複数の給湯器1の夫々の使用環境と、に基づいて複数のグループデータを生成する。
図3に、複数のグループデータとして、二次元の配列テーブルが4つ示される。つまり、複数のグループデータの夫々は、二次元の配列テーブルによって構成されている。
図3では、集合住宅に設置された1缶2水の給湯器1の場合の配列テーブル(a)と、戸建住宅に設置された1缶2水の給湯器1の場合の配列テーブル(b)と、集合住宅に設置された2缶3水の給湯器1の場合の配列テーブル(c)と、戸建住宅に設置された2缶3水の給湯器1の場合の配列テーブル(d)と、が示される。夫々の配列テーブルでは、行方向に使用年数が示され、列方向に家族の人数(世帯人数)が示される。
【0023】
つまり、給湯器1の仕様情報、給湯器1の設置場所における世帯情報等に基づいて、同じような使用条件と想定される複数の給湯器1が、配列テーブルにおける行列のマスごとにグループ化される。一つのマス内でグループ化された給湯器1の劣化具合は同等と仮定される。
【0024】
配列テーブルにおける行列のマスの夫々に給湯器1の故障を診断するための閾値(基準値)が設定されている。配列テーブルにおける行列のマスの夫々に設定された閾値は、例えば過去の故障履歴の統計情報に基づいて設定されたり、人工知能を用いた機械学習によって設定されたりして良い。また、一つのマスには、一つの閾値が設定されても良いし、部品の種類ごとに複数の閾値が設定されても良い。
【0025】
診断部23Aは、診断対象の給湯器1から取得した仕様情報に対応する配列テーブルに設定された基準値と、診断対象の給湯器1から取得した運転情報データと、を比較することによって診断対象の給湯器1のメンテナンスを診断する。診断部23Aの詳細に関しては後述する。
【0026】
報知部24は、故障診断ユニット23の診断結果に基づいて、診断対象の給湯器1の故障に関する情報及び(または)メンテナンス時期を報知する。具体的には、報知部24からの報知信号が、データ通信網DNを介して外部端末3へ送信される。外部端末3は、報知用に予め設定された端末であって、例えば、メンテナンス会社のコンピュータであっても良いし、ユーザーまたはメンテナンス担当者の所有する端末であっても良い。
【0027】
〔故障診断ユニットの診断手法について〕
図4及び
図5に基づいて、故障診断ユニット23の診断手法を説明する。
図4に示されるフローチャートは、例えば1日単位等の周期処理で行われる。まず、故障診断ユニット23は、診断対象の給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報と、データ格納部22に格納された基本情報データ群と、を照合する(ステップ#01)。データ格納部22に格納された基本情報データ群には、給湯器1の仕様情報に加えて、当該型番の給湯器1の設置場所や設置時期、設置場所における建物の情報(例えば戸建住宅、集合住宅、持家、賃貸、築年数、断熱性能等の情報)、設置場所における世帯情報(家族構成、世代別情報)、等の使用環境の情報が含まれる。つまり、基本情報データ群に給湯器1の仕様情報が含まれ、各家庭の給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報が、データ格納部22に格納された基本情報データ群に紐付けられる。そして、各家庭の給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報に基づいて、当該仕様情報と紐付けられた基本情報データがデータ格納部22から読み出される。このように、診断部23Aは、データ通信網DNを介して給湯器1から取得した基本情報データに基づいて給湯器1の使用環境を特定する。
【0028】
給湯器1の仕様情報と紐付けられた基本情報データがデータ格納部22から読み出されると、診断部23Aは、グループデータ生成部23Bに記憶された複数の配列テーブルのうち、読み出された基本情報データと最も適合する配列テーブルを選択する(ステップ#02)。例えば、読み出された基本情報データに、給湯器1の構造として1缶2水型の情報が存在し、給湯器1の設置場所における建物の情報に戸建住宅の情報が存在すると仮定する。この場合、診断部23Aは、
図3に示される配列テーブルのうち、(b)の「1缶2水、戸建住宅」の配列テーブルを選択する。
【0029】
診断部23Aは、選択された配列テーブルにおいて、データ格納部22から読み出された基本情報データに該当するマスを選択する(ステップ#03)。読み出された基本情報データに、給湯器1の設置時期が存在すると、給湯器1の使用年数が算出される。例えば、給湯器1の設置場所における世帯情報に4人家族の情報が存在し、給湯器1の使用年数が7年であると仮定する。この場合、
図3に示される配列テーブルでは、3行目かつ4列目のマスが選択される。ステップ#02で、
図3の「1缶2水、戸建住宅」の配列テーブルが選択されていると、ステップ#03で、
図3の「B47」のマスが選択される。マスには閾値が設定されている。診断部23Aは、配列テーブルに配列された複数の閾値から、特定された使用環境に応じた閾値を選択するように構成されている。
【0030】
診断部23Aは、運転状態データの数値が、選択したマスに設定された基準に達しているかどうかを判定する(ステップ#04)。給湯器1に、バーナーに空気を送り込む燃焼ファンが備えられ、例えば
図5に示されるような燃焼ファンの回転数の閾値が、
図3に示される配列テーブルの各マスに設定されている。
【0031】
図5には、燃焼ファンの回転数の経時的な変化を示すグラフが示されている。
図5のグラフにおける横軸は時間軸であって、縦軸は燃焼ファンの実測最大回転数である。時間軸には、給湯器1が設置された時点からの経過時間が示される。選択されたマスに設定された閾値が、燃焼ファンの回転数の閾値として
図5のグラフにおける縦軸に示されている。
【0032】
給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた運転状態データに、燃焼ファンの実測最大回転数が含まれる。
図5のグラフでは、時間ごとにおける燃焼ファンの実測最大回転数がプロットされている。例えば燃焼ファンや吸排気の配管に埃等が堆積すると、バーナーに供給される空気の量が減少するため、燃焼ファンの回転数が上昇する。このため、
図5のグラフでは、年月の経過に伴って、燃焼ファンの実測最大回転数が上昇している。
【0033】
診断部23Aは、
図5のグラフに示されるように、過去の実績データに基づいて、未来の推測データを算出し、燃焼ファンの実測最大回転数が閾値に達すると予測されるメンテナンス時期を算出する。そして診断部23Aは、燃焼ファンの実測最大回転数が閾値に達している場合、または、燃焼ファンの実測最大回転数がもうすぐ閾値に達しそうな場合に、運転状態データの数値が、当該基準に達していると判定する(ステップ#04:Yes)。なお、メンテナンス時期は、給湯器1が故障すると推定される時期であっても良いし、給湯器1が故障に至らなくても、給湯器1のメンテナンスが必要と推定される時期であっても良い。このように、診断部23Aは、運転情報データの値が基準値を超える時期をメンテナンス時期と推定するように構成されている。
【0034】
ステップ#04でYesの判定が行われると、報知部24による報知処理が行われ(ステップ#05)、報知部24からの報知信号が、データ通信網DNを介して外部端末3へ送信される。これにより、例えばユーザーまたはメンテナンス担当者は、給湯器1の部品交換やメンテナンスを行うように促される。
【0035】
燃焼ファンの実測最大回転数が閾値に達しておらず、ステップ#04でNoの判定が行われた場合、診断部23Aは、メンテナンス時期に基づいて、運転状態データの数値が閾値を越えると予測される時期は繁忙期であるかどうかを判定する(ステップ#06)。繁忙期とは、例えば給湯器1の故障が多発する等の理由によって、作業者のスケジュールが過密になりがちな時期である。
【0036】
繁忙期は、例えば過去の傾向などに基づいて管理コンピュータ2に人為的に設定されても良いし、複数の給湯器1におけるメンテナンス時期が同時に重なる時期に設定されても良い。メンテナンス時期と繁忙期とが重なる場合(ステップ#06:Yes)、報知部24は、メンテナンス時期を繁忙期よりも前の時期にずらして報知処理を行う(ステップ#07)。例えば報知部24は、過去の傾向から繁忙期になる時期を避けて報知処理を行っても良いし、他の給湯器1に対する報知処理と多く重ならない時期に報知処理を行っても良い。メンテナンス時期と繁忙期とが重ならない場合(ステップ#06:No)、そのまま処理は終了する。
【0037】
このように、故障診断ユニット23は、給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報に基づいて配列テーブルを選択し、更に配列テーブル内のマスを選択する。また、故障診断ユニット23は、給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた運転状態データの数値が当該マスに設定された基準に達しているかどうかを判定する。一つのマス内でグループ化された給湯器1の劣化具合は同等と仮定される。このため、設置台数が少なくて十分な解析が行われていない機種の給湯器1に対しても、同じマス内における他の給湯器1と同じ診断が可能となる。これにより、多種多様な給湯器1に対する故障診断が可能となる。
【0038】
データ通信網DNに接続されていない給湯器1も数多く存在するが、そのような給湯器1に対しても出来るだけ精度よくメンテナンス時期を推定できる構成が望ましい。給湯器1がデータ通信網DNに接続されていない場合、データ格納部22に格納された基本情報データ群のオフラインデータ(家族構成、床暖房機能の有無、浴室乾燥暖房機能の有無、住宅の断熱性能等)に基づいて、グループデータ生成部23Bに記憶された複数の配列テーブルから最も適合した配列テーブルが選択される。そして、実際にデータ通信網DNに接続されている給湯器1の運転状態データに基づいて一般的な使用状態が推定される。これにより、給湯器1がデータ通信網DNに接続されていない場合であっても、診断部23Aは、給湯器1の使用年数に基づいてメンテナンス時期を推定できる。
【0039】
メンテナンス対象の給湯器1の基本情報データ群がデータ格納部22に記憶されている。メンテナンス時期において給湯器1において部品交換などのメンテナンス作業が行われると、メンテナンス対象の給湯器1の基本情報データ群が更新され、当該基本情報データ群に給湯器1のメンテナンス履歴が上書き保存される。診断部23Aは、当該メンテナンス履歴に基づいて、給湯器1の次のメンテナンス時期に関する推定値を再計算する。なお、基本情報データ群の更新処理は、作業者が管理コンピュータ2や外部端末3を人為操作することによって実行されても良いし、給湯器1の制御ユニットによって交換部品の製造番号が自動的に読み出されて当該製造番号の変化が検知されることによって自動的に実行される構成であっても良い。
【0040】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0041】
(1)上述の実施形態では、複数のグループデータの夫々は二次元の配列テーブルとして構成されているが、配列テーブルは三次元以上に構成されても良い。また、グループデータは、例えばハッシュテーブルで構成されても良い。
【0042】
(2)
図3に示された4つの配列テーブルでは、1缶2水/2缶3水の場合と、戸建住宅/集合住宅の場合と、の組合せで構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、複数の配列テーブルは、メーカー、給湯器1の出湯号数、新築物件/既築物件、給湯器1における潜熱回収機構の有無、燃料の種類、給湯器1の給湯方式(瞬間式/貯湯式)、設置場所の水質、等の組合せによって構成されても良い。つまり、グループデータ生成部23Bは、データ格納部22に格納された仕様情報と使用環境との少なくとも一方に基づいて複数のグループデータを生成すれば良い。
【0043】
(3)
図3に示された4つの配列テーブルでは、行方向に使用年数が示され、列方向に家族の人数が示されるが、この実施形態に限定されない。例えば、行方向に給湯器1の設置場所における海岸からの距離が示されても良いし、列方向に給湯器1のユーザーの年齢層が示されても良い。つまり、複数の基準値が、給湯器1の使用環境に応じて区分けされた状態で配列テーブルに配列されていれば良い。
【0044】
(4)
図5のグラフには、燃焼ファンの実測最大回転数が縦軸で示されているが、この縦軸に、例えば燃焼ファンを回転させるモータの電流値が示されても良いし、風呂ポンプの回転数や床暖房のポンプの回転数、制御ユニットにおけるPWM比、給湯器1に備えられたサーミスタの温度、等が示されても良い。
【0045】
(5)上述の実施形態では、基本情報データ群と運転状態データ群とが管理コンピュータ2のデータ格納部22に格納されているが、この実施形態に限定されない。例えば、基本情報データ群と運転状態データ群とは、管理コンピュータ2とは別のクラウドサーバに格納されても良い。
【0046】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、給湯器の故障推定システムに適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 :給湯器
21 :データ取得部
22 :データ格納部
23A :診断部
23B :グループデータ生成部
24 :報知部
DN :データ通信網